説明

エンコーダ

【課題】スケール上に汚れ等がある場合、およびスケール上のパターンが統合パターンのような場合においても、検出精度の低下を抑制するとともに検出ヘッドをコンパクトに維持でき当該エンコーダが装着される制御機械のエラー止まりを少なくすることが可能となる。
【解決手段】検出ヘッド120は相対変位可能な方向に並ぶ複数の受光アレイ部PDi(i=1〜4)を備え、受光アレイ部PDiから出力される出力信号で検出ヘッド120の位置xを示す位置信号xiがそれぞれ算出され、複数の位置信号xiを合成しスケール110に対する検出ヘッド120の位置xを決定するのに、受光アレイ部PDi毎の位置信号xiに出力信号の大きさに従う重みづけ(信頼性係数Ri)がそれぞれ行われ、重みづけされた位置信号xiの平均が取られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケールと該スケールに対して相対変位可能な検出ヘッドとを備えるエンコーダに係り、特にスケール上に汚れやごみや欠損等(汚れ等で総称)がある場合、およびスケール上のパターンが後述するアブソリュートパターン(ABSパターン)とインクリメンタルパターン(INCパターン)とによる統合パターンのような場合においても検出精度の低下を抑制するとともに検出ヘッドをコンパクトに維持できエラー止まりの少なくすることが可能なエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スケールと該スケールに対して相対変位可能な検出ヘッドとを備えるエンコーダが、その装着された制御機械を精密に位置制御するために用いられている。しかし、光電式エンコーダを例にとるならば、スケール上に光をさえぎるような汚れ等がスケールに付着していると、その検出ヘッドに配置された受光アレイ部における信号検出効率が低下してしまい、検出ヘッドの位置を示す位置信号に誤差が生じてしまう。そのため、検出ヘッドによるスケール上の検出領域を拡げ、該検出領域中で汚れの付いた領域の割合を減らすことで、信号検出効率の低下の割合を低減する手法が用いられる。若しくは、特許文献1、2の如く、汚れの付いた領域における受光アレイ部からの出力信号の正誤判定を行い、誤りの場合には、該当する出力信号を排除することで信号検出効率の低下の割合を低減する手法が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−229717号公報
【特許文献2】特開2003−65803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの手法では、ある程度の信号検出効率を確保するために、受光アレイ部をより多く備えるように検出ヘッドを相対変位可能な方向に長くしなければならない。即ち、これらの手法では、検出ヘッドが大型化してしまうおそれがある。
【0005】
また、スケールに汚れの付いた領域が広い時などは受光アレイ部からの出力信号の大多数がその正誤判定のために設けられた閾値よりも小さくなってしまう場合もある。その場合には、悪くすれば全ての出力信号がなくなり、スケールに対する検出ヘッドの位置決めが不可能となるおそれもある。そのような場合には、頻繁に前述の制御機械にエラー止まりを生じさせるおそれも出てくる。
【0006】
更には、特開2009−2702号公報(図6)に記載されたような、疑似ランダム符号に基づくABSパターンとINCパターンとを1トラックに統合した統合パターンにおいては、もともとパターンのない部分では受光アレイ部からの出力が小さい。このような場合には、汚れの有無にかかわらずスケールに対する検出ヘッドの位置決めが不可能となって上述のエラー止まりを引き起こしやすく、従来技術での対応が困難であった。
【0007】
本発明は、前記問題点を解消するべくなされたもので、スケール上に汚れ等がある場合、およびスケール上のパターンがABSパターンとINCパターンとによる統合パターンのような場合においても、検出精度の低下を抑制するとともに検出ヘッドをコンパクトに維持でき当該エンコーダが装着される制御機械のエラー止まりを回避することが可能なエンコーダを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に係る発明は、スケールと該スケールに対して相対変位可能な検出ヘッドとを備えるエンコーダにおいて、前記検出ヘッドは前記相対変位可能な方向に並ぶ複数の検出アレイ部を備え、該検出アレイ部から出力される出力信号で該検出ヘッドの位置を示す位置信号がそれぞれ算出され、該複数の位置信号を合成し前記スケールに対する該検出ヘッドの位置を決定するのに、前記検出アレイ部毎の該位置信号に前記出力信号の大きさに従う重みづけをそれぞれ行い、重みづけされた該位置信号の平均を取ることにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
本願の請求項2に係る発明は、前記位置信号への重みづけを、前記出力信号である前記検出アレイ部を構成する個々の検出素子から出力される信号強度のデータで隣接する該データの差分の絶対値若しくは該差分の2乗値の該検出アレイ部毎の総和を、前記位置信号の係数とすることでなしたものである。
【0010】
本願の請求項3に係る発明は、前記位置信号への重みづけを、前記出力信号である前記検出アレイ部を構成する個々の検出素子から出力される信号強度のデータに正弦波フィッティングを行い、該フィッティングで求められた正弦波の振幅値と前記検出アレイ部のアレイ幅との積を、前記位置信号の係数とすることでなしたものである。
【0011】
本願の請求項4に係る発明は、前記位置信号への重みづけを、前記出力信号である2相正弦波信号から求められるリサージュ波形の直径と前記検出アレイ部のアレイ幅との積を、前記位置信号の係数とすることでなしたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スケール上に汚れ等がある場合、およびスケール上のパターンがABSパターンとINCパターンとによる統合パターンのような場合においても、検出精度の低下を抑制するとともに検出ヘッドをコンパクトに維持でき当該エンコーダが装着される制御機械のエラー止まりを回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1〜第3実施形態に係るエンコーダの一例の概略を示す図
【図2】図1で示された検出ヘッドの模式図とブロック図
【図3】検出ヘッドの受光アレイ部と出力信号との関係を示す模式図
【図4】スケール上に汚れ等がある場合を示す模式図
【図5】本発明の第3実施形態に係るリサージュ波形の一例を示す模式図
【図6】本発明の第4実施形態に係るスケールの一例を示す模式図
【図7】本発明の第5実施形態に係るスケール等の一例を示す模式図
【図8】本発明の第6実施形態に係るスケールと受光アレイ部との関係の一例を示す模式図
【図9】本発明の第7実施形態に係るスケールと受光アレイ部との関係の一例を示す模式図
【図10】本発明の第8実施形態に係るスケールと受光アレイ部との関係の一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。
【0015】
本発明の第1実施形態に係わるエンコーダについて、図1〜図4を用いて以下に説明する。なお、図1は、本実施形態のエンコーダ100の概略を示している。図2(A)は検出ヘッド120のトラック112に対向する面における受光アレイ部PDi(図ではi=1〜4)の配置を示し、図2(B)は検出ヘッド120のブロック図を示している。図3(A)は、トラック112を構成する光学格子114の並びを示している。図3(B)は、トラック112に対峙する受光アレイ部PDi、PDi+1を示している。図3(C)は、受光アレイ部PDi、PDi+1を構成する個々の受光素子から出力される信号強度(黒丸で表記)と正弦波フィッティングした曲線SW等とを示している。図4は、スケール上に汚れ等がある場合のスケールと受光アレイ部との関係を示す模式図を示している。
【0016】
最初に、本実施形態のエンコーダ100の構成について説明する。
【0017】
エンコーダ100は、リニアエンコーダであり、図1に示す如く、スケール110とスケール110に対して相対変位可能な検出ヘッド120とを備える。
【0018】
前記スケール110には、図1に示す如く、X方向(相対変位可能な方向)に延びるトラック112が設けられている。トラック112は、X方向に一定間隔で配置された光学格子114で構成されている(INCパターンが施されたINCトラック)。そして、光学格子114のあるところで光を反射するようにされている(図3)。
【0019】
前記検出ヘッド120は、図1に示す如く、スケール110のトラック112に非接触で対峙して配置されている。検出ヘッド120は、図示せぬ光源と、図示せぬレンズと、図2(A)に示す如く、トラック112に対峙する面にX方向に並ぶ複数の受光アレイ部PDi(i=1〜4)(検出アレイ部)と、を備えている。光源から出た光はトラック112の光学格子114で反射され、レンズを介して複数の受光アレイ部PDiで検出されるように配置されている。
【0020】
受光アレイ部PDiは、それぞれアレイ幅wi(i=1〜4)を備えており、互いの間に間隔Tが設けられている(本実施形態では、間隔Tが一定であるが、互いに異なってもよい)。受光アレイ部PDiはそれぞれ、やはりX方向に並ぶ複数の受光素子(検出素子)から構成されている。本実施形態では、全ての受光素子のX方向における幅は等しく、受光アレイ部PDiを構成する受光素子の数は等しい。このため、各アレイ幅wiは全て等しくされている。
【0021】
そして、検出ヘッド120は、図2(B)に示す如く、受光アレイ部PDi以外に、ノイズフィルタ・増幅回路124と、A/D回路126と、処理回路128と、を備える。
【0022】
ノイズフィルタ・増幅回路124は、受光アレイ部PDiから出力された信号それぞれのノイズを除去した後に増幅して出力する。
【0023】
A/D回路126は、ノイズフィルタ・増幅回路124が出力するアナログ出力信号をデジタル信号に変換する。
【0024】
処理回路128は、当該デジタル信号(受光アレイ部PDiから出力される出力信号)で、受光アレイ部PDi毎に検出ヘッド120の位置xを示す位置信号xiを算出する(なお、原理的には全ての位置信号xiは同一位置を示すようにされている)。そして、処理回路128は、得られた複数(4つ)の位置信号xiを合成し、スケール110に対する検出ヘッド120の位置xを決定する。検出ヘッド120の位置xを決定するのに、式(1)に示す係数Ri(信頼性係数と称する)を導入する。信頼性係数Riは、受光アレイ部PDi毎の位置信号xiに、受光アレイ部PDiから出力される出力信号の大きさに従う重みづけを行う。そして、検出ヘッド120の位置xは、重みづけされた位置信号xiの平均から求められる。なお、本実施形態では符号Nは受光アレイ部PDiの数(4)となる。
【0025】
【数1】

【0026】
本実施形態では、信頼性係数Riが式(2)から求められる。即ち、受光アレイ部PDiにおけるj番目の受光素子の信号強度(出力信号)をYi,j、受光アレイ部PDiで得られたデータの数をni(i=1〜4)とする。そして、図3(C)の左図で示す如く、出力信号である受光アレイ部PDiを構成する個々の受光素子から出力される信号強度Yi,jのデータで、隣接するデータの差分の絶対値(=|Yi,j―Yi,j+1|)を求める。更にその値について受光アレイ部PDiでの総和を取ることで、信頼性係数Riが求められる。これはいわば、受光アレイ部PDiによって得られたトラック112の1次元像のコントラストが大きければ、信頼性係数Riが大きくなる、言い換えれば信頼性が高くなることを意味している。
【0027】
【数2】

【0028】
次に、本実施形態のエンコーダ100の動作について説明する。
【0029】
検出ヘッド120の光源から光がスケール110に照射される。すると、スケール110の光学格子114により、光が反射され、レンズを介して、検出ヘッド120の各受光アレイ部PDiの各受光素子に入射する。受光アレイ部PDiからは、受光素子への光の入射強度に応じた出力がなされる。そして、その出力はノイズフィルタ・増幅回路124、A/D回路126を介して処理回路128に入力する。
【0030】
処理回路128では、受光アレイ部PDi毎に検出ヘッド120の位置xを示す位置信号xiを算出する。そして、式(1)、(2)の関係を用いて、得られた複数(4つ)の位置信号xiを合成し、スケール110に対する検出ヘッド120の位置xを決定する。
【0031】
このように、本実施形態では、検出ヘッド120の位置を決定するのに、信頼性係数Riを導入することで、それぞれの受光アレイ部PDiから得られた位置信号xiの合成時の寄与率を制御することが可能となる。概略的には、図4に示すように、受光アレイ部PD1とPD2のアレイ幅が等しいとき(w1=w2)には、汚れStnに係る受光アレイ部PD2の信頼性係数R2は、受光アレイ部PD1の信頼性係数R1よりも小さくなる(ちなみに、スケール110の受光アレイ部PD1、PD3の対向面のいずれにも汚れがなく、もしアレイ幅w3がアレイ幅w1よりも短ければ、図4に示すように、信頼性係数R3は信頼性係数R1よりも低くなる)。即ち、位置信号の合成時には信頼性の低い位置信号xiの寄与率を下げ、一方、信頼性の高い位置信号xiの寄与率を上げることで、効率の良い位置信号xiの合成が行なわれる。つまり、スケール110に汚れ等が付着した状態であっても求められる検出ヘッド120の位置xの検出精度の低下を抑制でき、位置xの精度(信頼性)を向上することができる。
【0032】
そして、本実施形態では、受光アレイ部PDiによって得られたトラック112の1次元像のコントラストが大きいときには信頼性が高いとし、信頼性係数Riを導く。このときの信頼性係数Riは、式(2)で示すように簡素な計算式であるため、計算が単純で且つ記憶容量を多く必要としないので、処理時間が短く且つ低コストで実現することができる。なお、信頼性係数Riが、式(3)で示されるように、隣接する信号強度のデータの差分の2乗値の検出アレイ部PDi毎の総和であっても同様の効果を生じする。
【0033】
【数3】

【0034】
また、本実施形態では、位置信号xiの重みづけ平均で検出ヘッド120の位置xが求められる。即ち、基本的に受光アレイ部PDiから得られたそれぞれの位置信号xiの寄与率を変化させるだけであり、あえて特定の位置信号xiを排除するというわけではない。このため、本実施形態では、検出ヘッドを相対変位可能な方向(X方向)に従来技術の如く長く伸ばして受光アレイ部PDiを多く備える必要がないので、検出ヘッド120をコンパクトに維持することができる。
【0035】
同時に、本実施形態では、上述の重みづけ平均を用いることから、スケール110の汚れの付いた領域に係る受光アレイ部PDiからの位置信号xiの寄与率は、他の受光アレイ部PDiからの出力信号との相対的な関係で変化するだけである。つまり、全ての受光アレイ部PDiが汚れの付いた領域に係った場合には、互いの位置信号xiの寄与率に大きな違いが出ないことになる。すなわち、本実施形態では、検出ヘッド120の位置xを求めるのに出力信号に基づく位置信号xiがなくなるといったことがなく、エンコーダ100の装着される制御機械でエラー止まりが発生することを回避することができる。
【0036】
また、エンコーダの装着される制御機械は一般に、検出ヘッドの位置xを一定間隔でエンコーダに要求する。このため、従来技術では、スケール上で汚れ等の付いた領域と汚れ等の付いていない領域とでまちまちの信号処理時間をとることで、制御機械の位置決めに誤動作などの制御に不都合を生じさせるおそれがあった。しかし、本実施形態では、スケール110上で汚れ等の付いた領域と汚れ等の付いていない領域とでは、式(1)、(2)(もしくは式(1)、(3))で示される処理が行われる。即ち、本実施形態では、信号処理負荷は一定とされ、検出ヘッド120の位置xを求めるための信号処理時間は均一化されている。このため、本実施形態では、当該制御機械の位置決め制御における不都合を容易に回避することができる。
【0037】
即ち、本実施形態によれば、スケール110上に汚れ等がある場合でも検出精度の低下を抑制するとともに検出ヘッド120をコンパクトに維持できエンコーダ100が装着される制御機械のエラー止まりを回避することが可能となる。
【0038】
本発明について第1実施形態を上げて説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことはいうまでもない。
【0039】
例えば、第1実施形態においては、処理回路128では、信頼性係数Riとして式(2)に示す関係を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、次に説明する第2実施形態の如くでもよい。本実施形態においては、信頼性係数Riとして、式(4)の関係を用いる。即ち、図3(C)の右側の図に示すように、出力信号である受光アレイ部PDiを構成する個々の受光素子から出力される信号強度のデータに正弦波フィッティングSWを行い、フィッティングで求められた正弦波の振幅値Ampと検出アレイ部PDiのアレイ幅wiとの積を、信頼性係数Riとしている。
【0040】
【数4】

【0041】
このように本実施形態では、フィッティングで得られる振幅値Ampが大きく、かつアレイ幅wiが大きいときに位置信号xiの信頼性が高いとし、信頼性係数Riを導く。即ち、フィッティングという処理が入ることで、出力信号に誤差を生じてもその誤差を平均化できるので、検出ヘッド120をより高精度に位置決めすることができる。
【0042】
あるいは、次に説明する第3実施形態のようであってもよい。本実施形態においては、信頼性係数Riとして式(5)を用いる。本実施形態では、処理回路128で得られる出力信号として従来の2相正弦波信号を用いるものである。即ち、受光アレイ部PDiでは、互いに90度位相の異なる出力がなされるように受光素子が配置されている。そして、受光アレイ部PDiから出力される出力信号である2相正弦波信号から求められる図5のリサージュ波形Lsjの直径riと受光アレイ部PDiのアレイ幅wiとの積を、信頼性係数Riとしている。
【0043】
【数5】

【0044】
このため、本実施形態では、リサージュ波形Lsjの直径riが大きく、かつアレイ幅wiが大きいときに位置信号xiの信頼性が高いとするので、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。そして、本実施形態では、従来と同じリサージュ波形Lsjを利用することから処理回路における処理内容の変更を最小限にでき、特に開発期間の短縮化を図ることができる。
【0045】
また、上記実施形態においては、光学格子が等間隔に並ぶINCパターンに本発明が適用されていたが、本発明はこれに限定されない。本発明は、スケール110上のINCパターンに適用した場合のように、受光アレイ部PDiから周期的な出力信号が得られる場合、即ち、スケール上のトラックが一定間隔で配置された光学格子を有する(トラックがINC成分を有する)場合に、特にその作用効果を発揮する。従って、式(2)〜式(5)のいずれの関係も図6に示す第4実施形態で示す疑似ランダム符号に基づくABSパターンとINCパターンとによる統合パターン213(特開2009−2702号公報の図6)に対して適用することが可能である。即ち、統合パターンに対しても、検出精度の低下を抑制するとともに検出ヘッドをコンパクトに維持でき当該エンコーダが装着される制御機械のエラー止まりを回避することが可能となる。そして、本発明は、上記実施形態で示した反射型のエンコーダだけでなく、図7に示すような透過型エンコーダの配置に対して適用してもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、受光アレイ部PDiのアレイ幅wiが同一で、その受光アレイ部の間隔Tが同一であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、図8に示す第6実施形態の如く、各アレイ幅wiが異なってもよいし、互いの間隔も異なってもよい。更に、図9に示す第7実施形態の如く、一体的に連続した大きな受光アレイを互いに間隔をあけずに分割して受光アレイ部PDiを複数設けるようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、1つの検出ヘッドに対して1つのスケールが配置されていたが、本発明はこれに限定されない。たとえば図10に示す第8実施形態の如く、2つのスケール610A、610Bが測定対象となってもよい。この場合には、各スケール610A、610Bから検出ヘッドの位置xが求められるので、2つの位置の違いから検出ヘッドのヨーイング補正などを行うことも可能となる。
【0048】
また、上記実施形態においては、直線形状のスケールを備える光電式の(リニア)エンコーダを用いて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、エンコーダは検出ヘッドに複数の検出素子を備える検出アレイ部を複数有すればよいので、静電容量式エンコーダや電磁誘導式エンコーダであってもよい。同時に、スケールが直線に限定されることなく円板状で、且つトラックがその円周方向に設けられたロータリーエンコーダに本発明が適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のエンコーダは、検出ヘッドをコンパクトに維持でき当該エンコーダが装着される制御機械のエラー止まりを少なくすることが可能なので、光電式リニアエンコーダだけでなく、静電容量式や電磁誘導式のリニアエンコーダ及びロータリーエンコーダなどに広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
100…エンコーダ
110、210、310、410、510、610A、610B…スケール
112、212、213、312、313…トラック
114…光学格子
120、320…検出ヘッド
124…ノイズフィルタ・増幅回路
126…A/D回路
128…処理回路
302…光源
304…レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケールと該スケールに対して相対変位可能な検出ヘッドとを備えるエンコーダにおいて、
前記検出ヘッドは前記相対変位可能な方向に並ぶ複数の検出アレイ部を備え、該検出アレイ部から出力される出力信号で該検出ヘッドの位置を示す位置信号がそれぞれ算出され、
該複数の位置信号を合成し前記スケールに対する該検出ヘッドの位置を決定するのに、前記検出アレイ部毎の該位置信号に前記出力信号の大きさに従う重みづけがそれぞれ行われ、重みづけされた該位置信号の平均が取られることを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
前記位置信号への重みづけは、前記出力信号である前記検出アレイ部を構成する個々の検出素子から出力される信号強度のデータで隣接する該データの差分の絶対値若しくは該差分の2乗値の該検出アレイ部毎の総和を、前記位置信号の係数とすることでなされることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記位置信号への重みづけは、前記出力信号である前記検出アレイ部を構成する個々の検出素子から出力される信号強度のデータに正弦波フィッティングを行い、該フィッティングで求められた正弦波の振幅値と前記検出アレイ部のアレイ幅との積を、前記位置信号の係数とすることでなされることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記位置信号への重みづけは、前記出力信号である2相正弦波信号から求められるリサージュ波形の直径と前記検出アレイ部のアレイ幅との積を、前記位置信号の係数とすることでなされることを特徴とする請求項1に記載のエンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−83153(P2012−83153A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228310(P2010−228310)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】