説明

エンジンの燃料供給装置

【課題】燃圧センサの故障時であっても、要求よりも実際の燃料噴射量が不足してリーン空燃比で運転されてしまうことを抑制できるようにする。
【解決手段】燃圧センサで検出された燃圧と目標値とに基づいて燃料ポンプの通電を制御するデューティ比を決定するエンジンの燃料供給装置において、前記燃圧センサの異常時に、燃料ポンプのデューティ比を前記目標値に相当する値に固定すると共に、前記目標値に相当するデューティ比で燃料ポンプを駆動する状態において、燃料供給量が不足する惧れがある高負荷時には、燃料カットを行うか、スロットル弁の開度を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃圧センサを備えたエンジンの燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧力センサで検出された燃料圧力と要求された燃料供給に基づく基準圧力との関数として燃料ポンプを駆動する燃料供給装置において、前記圧力センサの異常を検出した場合に、要求燃料量とエンジン回転速度とに基づき燃料ポンプを駆動することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000−511992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの要求燃料流量に応じて燃料ポンプを駆動制御する場合、燃圧を制御することができない。
このため、例えば、目標圧付近まで昇圧する過程で燃圧センサが故障して、要求燃料流量に応じたポンプ制御に移行させた場合、燃圧を目標付近まで昇圧することができず、かつ、燃圧が不定となるため、燃料噴射弁による噴射量の制御精度が大きく低下し、過剰にリーンな空燃比でエンジンが運転されてしまう可能性があった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、燃圧センサの故障時であっても、要求よりも実際の燃料噴射量が不足してリーン空燃比で運転されてしまうことを抑制できるエンジンの燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本願発明は、燃圧センサの異常を診断したときに、燃料ポンプの操作量を予め記憶されている目標燃圧が得られる操作量に設定すると共に、該設定された目標燃圧で燃料が燃料噴射弁に供給されている状態での高負荷時にエンジンへの燃料噴射を停止させるようにした。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によると、燃圧センサの故障時であっても、リーン空燃比で運転されてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態における燃料供給装置のシステム図である。
【図2】燃圧センサ故障時におけるフェイルセーフ機能を示すフローチャートである。
【図3】燃圧センサ故障時におけるフェイルセーフ機能を示すフローチャートである。
【図4】前記図3に示したフェイルセーフ機能と同時に実行される燃料カット制御を示すフローチャートである。
【図5】前記図3に示したフェイルセーフ機能と同時に実行されるスロットル開度の上限値処理を示すフローチャートである。
【図6】燃圧センサ故障時におけるフェイルセーフ機能を示すフローチャートである。
【図7】燃圧センサの故障診断処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、実施形態における車両用エンジンの燃料供給装置を示す図である。
図1において、燃料タンク1は、エンジン(内燃機関)10の燃料(ガソリン)を貯留するタンクであり、例えば車両の後部座席の下などに配置される。
前記燃料タンク1には、給油キャップ2で閉塞される給油口3が開口されており、給油キャップ2を外して前記給油口3から燃料が補給される。
【0010】
前記燃料タンク1内には、図示省略したブラケットによって電動式の燃料ポンプ4が設置されている。
前記燃料ポンプ4は、燃料タンク1内のガソリンを吸い込み口から吸い込んで吐出口から吐き出す、例えばタービン式のポンプであり、前記吐出口には、燃料パイプ5aの一端が接続されている。
【0011】
前記燃料パイプ5aの他端には、燃料ポンプ4から後述する燃料噴射弁9に向かう燃料の流れを通過させ、前記燃料噴射弁9から燃料ポンプ4に向かう流れ(逆流)を阻止する逆止弁7の入り口側が接続される。
前記逆止弁7の出口には、燃料パイプ5bの一端が接続され、前記燃料パイプ5bの他端は、燃料ギャラリーパイプ8に接続される。
【0012】
前記燃料パイプ5a,燃料パイプ5b及び燃料ギャラリーパイプ8によって、燃料ポンプ4から燃料噴射弁9に向けた圧送経路(燃料配管)が形成される。
前記燃料ギャラリーパイプ8には、その延設方向に沿って気筒数(本実施形態は4気筒)と同じ数の噴射弁接続部8aが設けられ、各噴射弁接続部8aには、燃料噴射弁9の燃料取り入れ口がそれぞれ接続される。
【0013】
前記燃料噴射弁9は、電磁コイルへの通電によって磁気吸引力が発生すると、スプリングによって閉弁方向に付勢されている弁体がリフトして燃料を噴射する、電磁式燃料噴射弁である。
前記燃料噴射弁9は、エンジン10の各気筒の吸気ポート部にそれぞれ設置され、各気筒に燃料をそれぞれ噴射供給する。
【0014】
また、前記燃料ギャラリーパイプ8内と燃料タンク1内とを連通させるリリーフパイプ12が設けられて、前記リリーフパイプ12の途中には、リリーフ弁13が介装されている。
前記リリーフ弁13は、弾性体により閉弁方向に付勢されており、燃料ギャラリーパイプ8内の燃圧(燃料供給圧)が所定の開弁圧を超えたときに開弁し、燃料ギャラリーパイプ8内の燃料を燃料タンク1内にリリーフする機械式のチェックバルブであり、燃料ギャラリーパイプ8内の燃圧が前記開弁圧(許容上限圧)を超えて大きくなることを阻止するために設けてある。
【0015】
マイクロコンピュータを内蔵する電子制御ユニット(ECU)11は、前記燃料噴射弁9それぞれに対して個別に開弁制御パルス信号を出力して、各燃料噴射弁9による燃料噴射量及び噴射時期を制御する。
更に、前記電子制御ユニット11(制御手段、異常時制御手段、診断手段)は、前記燃料ポンプ4の通電のオン・オフをデューティ制御することで駆動電流を変化させ、燃料ポンプ4の吐出量を制御する。
【0016】
また、前記電子制御ユニット11は、スロットルバルブ(吸気絞り弁)をモータで開閉駆動する電子制御スロットル27に開度制御信号を出力して、エンジン10の吸入空気量を制御する。
前記電子制御ユニット11には、各種センサからの検出信号が入力される。
前記各種センサとしては、エンジン10の吸入空気流量を検出するエアフローメータ21、所定クランク角位置毎に検出信号を出力するクランク角センサ22、エンジン10の冷却水温度Twを検出する水温センサ23、前記燃料ギャラリーパイプ8内における燃料の圧力を検出する燃圧センサ24、前記燃料ギャラリーパイプ8内における燃料の温度を検出する燃温センサ25、エンジン10の空燃比に相関する排気中の酸素濃度を検出する空燃比センサ26などが設けられている。
【0017】
そして、前記電子制御ユニット11は、目標空燃比の混合気を形成させることができる燃料量に見合う噴射パルス幅を、前記エアフローメータ21,クランク角センサ22,水温センサ23,空燃比センサ26などからの検出信号に基づき演算し、前記噴射パルス幅の開弁制御パルス信号を、各燃料噴射弁9に出力する。
また、前記電子制御ユニット11は、前記燃圧センサ24で検出される実際の燃圧が目標燃圧(例えば基準燃圧である350kPa)に近づくように、前記燃料ポンプ4の通電制御デューティ(操作量)をフィードバック制御する。
【0018】
また、前記噴射パルス幅の演算においては、燃料ギャラリーパイプ8内における燃料圧力(燃料供給圧)の条件下で要求燃料量が噴射されるように、換言すれば、そのときの燃圧条件での単位開弁時間当たりの噴射量に基づいて、燃料噴射弁9の噴射パルス幅(噴射時間:開弁時間)を演算する。
ここで、前記電子制御ユニット11は、前記燃圧センサ24の異常を診断し、異常発生時には、前記燃圧センサ24による検出結果を用いずに、前記燃料ポンプ4を駆動制御するフェイルセーフ機能をソフトウェアとして予め備えている。
【0019】
図2のフローチャートは、前記フェイルセーフ機能を示す。
図2のフローチャートにおいて、ステップS101では、燃圧センサ24が正常であるか異常であるかを判断する。
前記燃圧センサ24の正常・異常は、後述するように、センサ出力が正常範囲内であるか否かに基づいて行われるが、異常診断の方法を限定するものではなく、公知の種々の診断方法を用いることができる。
【0020】
そして、燃圧センサ24が正常であれば、ステップS102へ進み、燃料ポンプ24の制御デューティを、通常に、前記燃圧センサ24で検出される実際の燃圧と目標燃圧との比較に基づいて制御する。
次のステップS103では、前記燃圧センサ24による検出燃圧(目標燃圧)に基づいて、燃料噴射弁9の噴射パルス幅を演算し、該噴射パルス幅に基づいて燃料噴射弁9を駆動制御する。
【0021】
一方、ステップS101で前記燃圧センサ24が異常(故障)であると判断されたときには、通常に燃圧センサ24の検出結果に基づいて燃料ポンプ4及び燃料噴射弁9を制御すると、実際の燃圧を目標燃圧に制御できず、また、燃料噴射弁9から要求量の燃料を噴射させることができない。
そこで、燃圧センサ24が異常であると判断されると、ステップS104へ進み、燃圧センサ24の検出結果を用いた燃料ポンプ4のフィードバック制御を禁止し、前記燃料ポンプ4の制御デューティ(操作量)を最大吐出量相当の100%(100%オンデューティ)に固定する。
【0022】
上記のように前記燃料ポンプ4の制御デューティを100%に固定すると、燃料ギャラリーパイプ8内の燃圧(燃料供給圧)が、リリーフ弁13における開弁圧(例えば810kPa)を超えるようになる。
しかし、燃圧が前記開弁圧を超えることで前記リリーフ弁13が開弁して燃料をリリーフするから、結果的に、燃料ギャラリーパイプ8内の燃圧が前記開弁圧付近に保持されることになる。
【0023】
即ち、前記燃料ポンプ4の制御デューティを100%に固定される状態では、燃料ギャラリーパイプ8内の圧力が前記開弁圧付近になっているものと推定できる。
そこで、次のステップS105では、前記開弁圧に燃料ギャラリーパイプ8内の燃圧が保持されているものと見なし、係る燃圧条件下で要求の燃料量を噴射できるように、噴射パルス幅を補正する。
【0024】
即ち、前記開弁圧を予め記憶しておき、通常の目標燃圧と前記開弁圧との比率に基づいて、噴射パルス幅を補正する。
上記フェイルセーフ機能によると、燃圧センサ24が故障した時点での燃圧に影響されることなく、フェイルセーフ実行時には、前記リリーフ弁13の開弁圧付近にまで燃料ギャラリーパイプ8内の燃圧を昇圧して保持させることができ、前記開弁圧に対応する噴射パルス幅で燃料噴射弁9の燃料噴射を行わせることで、エンジン10の要求燃料量を精度良く噴射させることができる。
【0025】
このように、燃圧センサ24が故障しても、実際の燃圧を既知の値に制御して燃料噴射パルス幅を決定させることができるので、エンジン10の要求量の燃料を燃料噴射弁9から噴射させることができ、また、燃料ギャラリーパイプ8内を高圧にするので、燃料蒸発ガスを低減でき、また、エンジンの全運転領域で要求燃料量を安定して噴射させることが可能である。
【0026】
図3のフローチャートは、前記フェイルセーフ機能の別の例を示す。
図3のフローチャートにおいて、ステップS201では、燃圧センサ24が正常であるか異常であるかを判断する。
燃圧センサ24が正常であれば、ステップS202へ進み、通常に、燃料ポンプ24の制御デューティを、前記燃圧センサ24で検出される実際の燃圧と目標燃圧との比較に基づいて制御する。
【0027】
一方、燃圧センサ24の異常時には、ステップS203へ進み、燃圧センサ24の検出結果を用いた燃料ポンプ4のフィードバック制御を禁止し、前記燃料ポンプ4の制御デューティ(操作量)を、予め記憶されている、目標燃圧(例えば350kPa)に相当する基準デューティに固定する。
上記基準デューティに固定すれば、エンジンの負荷・回転による要求燃料流量の変化に対して、実際の燃圧の変動が比較的大きくなるものの、実際の燃圧を目標燃圧付近に昇圧して保持させることができる。
【0028】
従って、燃圧センサ24を用いて制御デューティをフィードバック制御させる場合に比べて、燃圧の制御精度・応答性は低下するものの、実際の燃圧を目標燃圧付近に制御でき、実際の燃圧が目標燃圧になっているものとして通常に噴射パルス幅を演算させることで、エンジンの要求燃料量を噴射させることができる。
尚、前記基準デューティは、そのときの燃料温度に応じて補正することで、より高精度に燃圧を制御できるようになる。
【0029】
また、制御デューティの固定値は、通常のフィードバック制御における目標燃圧に相当する値に限定されず、予め設定されてフェイルセーフ時用の目標燃圧(中間圧)に相当するデューティに固定させることができる。
ところで、上記のように、中間圧に相当する基準デューティに固定すると、エンジンの高負荷・高回転時で要求燃料流量が多い状態が継続すると、前記要求燃料流量よりも燃料ポンプ4の吐出流量が少ないために、燃圧が目標よりも大きく落ち込んだ状態のままとなり、目標燃圧になっているものとして噴射パルス幅を決定させると、実際に噴射される燃料量が要求量よりも大幅に少なくなり、空燃比が過剰にリーン化してしまうことがある。
【0030】
そこで、燃料ポンプ4の制御デューティを目標燃圧(例えば350kPa)に相当する基準デューティに固定する場合には、図4のフローチャートに従って、エンジンの要求燃料流量に対して燃料ポンプ4の吐出量が不足する条件でのエンジンの運転を制限する。
図4のフローチャートは、燃料ポンプ4の制御デューティが目標燃圧(例えば350kPa)に相当する基準デューティに固定される場合に実行され、まず、ステップS211では、燃料量が不足する条件であるか否かを、燃料噴射弁9における要求燃料噴射量とエンジン回転速度と燃料ポンプ4の吐出量(固定デューティ)とから判断する。
【0031】
ここで、燃料噴射弁9における要求燃料噴射量とエンジン回転速度とから、エンジン10の要求燃料流量を求めることができ、この要求燃料流量に対して燃料ポンプ4の吐出量が不足しているか否かを判断する。
そして、燃料量が不足しない条件であれば、ステップS212へ進み、エンジンの運転を制限することなく、通常に運転させる。
【0032】
一方、燃料量が不足する条件であれば、ステップS213へ進み、燃料噴射弁9による燃料噴射を強制的に停止させる制御(燃料カット)を実行させることで、燃料量が不足しない領域(低負荷・低回転領域)でのみエンジン10を運転させる。
従って、燃圧センサ24が故障したために燃料ポンプ4の制御デューティを基準デューティに固定するフェイルセーフ状態において、燃料ポンプ4の吐出量不足によって燃圧が低下し要求の燃料量を噴射させることができない領域でエンジン10が運転されることがなく、過剰なリーン空燃比での運転を抑制して、必要充分なエンジン運転性を維持できる。
【0033】
図5のフローチャートは、エンジンの要求燃料流量に対して燃料ポンプ4の吐出量が不足する条件でのエンジン運転を制限する処理の別の例を示す。
図5のフローチャートにおいて、ステップS221では、燃料量が不足する条件であるか否かを、燃料噴射弁9における要求燃料噴射量とエンジン回転速度と燃料ポンプ4の吐出量(固定デューティ)とから判断する。
【0034】
そして、燃料量が不足しない条件であれば、ステップS222へ進み、エンジンの運転を制限することなく、通常に運転させる。
一方、燃料量が不足する条件であれば、ステップS223へ進み、そのときの電子制御スロットル27の目標開度が上限値(設定値)を超えているか否かを判断する。
電子制御スロットル27の目標開度が上限値(設定値)を超えている場合には、ステップS224へ進んで、目標開度に前記上限値(設定値)をセットし、電子制御スロットル27の目標開度が上限値(設定値)以下であれば、ステップS224を迂回して進むことで、前記上限値(設定値)を超えるスロットル開度に制御されることを回避する。
【0035】
電子制御スロットル27の目標開度を上限値(設定値)以下に制限することで、エンジン10の吸入空気量が制限され、引いては、燃料噴射弁9における最大噴射量が制限されることになり、これによって、燃料ポンプ4の吐出量不足によって燃圧が低下し要求の燃料量を噴射させることができない領域でエンジン10が運転されることを抑制できる。
従って、上記のように、スロットル開度を制限することによっても、過剰なリーン空燃比での運転を抑制して、必要充分なエンジン運転性を維持できる。
【0036】
図6のフローチャートは、前記フェイルセーフ機能の別の例を示す。
図6のフローチャートにおいて、ステップS301では、燃圧センサ24が正常であるか異常であるかを判断する。
そして、燃圧センサ24が正常であれば、ステップS302へ進み、燃料ポンプ24の制御デューティを、前記燃圧センサ24で検出される実際の燃圧と目標燃圧との比較に基づいて制御する。
【0037】
次のステップS303では、前記燃圧センサ24による検出燃圧(目標燃圧)に基づいて、燃料噴射弁9の噴射パルス幅を演算し、該噴射パルス幅に基づいて燃料噴射弁9を駆動制御する。
一方、ステップS301で前記燃圧センサ24の異常が判断されると、ステップS304へ進み、エンジン10の要求燃料流量が所定量以下の運転領域であるか否かを、燃料噴射弁9における要求燃料噴射量とエンジン回転速度とから判断する。
【0038】
そして、エンジン10の要求燃料流量が所定量以下の運転領域(低負荷・低回転領域)であれば、ステップS305へ進む。
ステップS305では、燃圧センサ24の検出結果を用いた燃料ポンプ4のフィードバック制御を禁止し、前記燃料ポンプ4の制御デューティ(操作量)を、予め記憶されている、目標燃圧(例えば350kPa)に相当する基準デューティに固定する。
【0039】
次のステップS306では、実際の燃圧が目標燃圧になっているものと見なして、通常に燃料噴射弁9の噴射パルス幅を算出させる。
一方、エンジン10の要求燃料流量が所定量を超える運転領域(高負荷・高回転領域)であるときには、ステップS307へ進む。
ステップS307では、燃圧センサ24の検出結果を用いた燃料ポンプ4のフィードバック制御を禁止し、前記燃料ポンプ4の制御デューティ(操作量)を最大吐出量相当の100%に固定する。
【0040】
次のステップS308では、予め記憶されているリリーフ弁13の開弁圧に燃料ギャラリーパイプ8内の燃圧が保持されているものと見なし、係る燃圧条件下で要求の燃料量を噴射できるように、噴射パルス幅を補正する。
上記制御によると、エンジン10の要求燃料流量が比較的少ない低負荷・低回転領域に限定し、燃料ポンプ4を目標燃圧(例えば350kPa)に相当する基準デューティで駆動するから、燃料ポンプ4における電力消費を抑制しつつ、要求燃料流量よりも燃料ポンプ4の吐出量が不足する条件でエンジンが運転されることを抑制できる。
【0041】
更に、低負荷・低回転領域で燃圧を低く抑えることで、最小噴射燃料量を通常と同様に設定でき、噴射量のダイナミックレンジを確保できる。
一方、エンジン10の要求燃料流量が比較的多い高負荷・高回転領域において、前記燃料ポンプ4の制御デューティ(操作量)を最大吐出量相当の100%に固定するから、高負荷・高回転領域での要求燃料流量を上回る吐出量を確保でき、全運転領域でエンジン10を運転させることができる。
【0042】
尚、図6のフローチャートでは、エンジン10の要求燃料流量が多いか少ないかに基づいて、基準デューティに固定するか、最大デューティに固定するかを切り替えたが、例えば、最大デューティに固定する条件として、エンジン10の始動時を含めることができ、要求燃料流量に基づく切り替え制御に限定されない。
図7のフローチャートは、燃圧センサ24の異常診断を示すものである。
【0043】
ステップS511では、燃圧センサ24の検出結果を読み込む。
ステップS512では、エンジン10のスタータスイッチのオン・オフを判別する。
そして、スタータスイッチがオフであるエンジン10の始動後(運転中)であるときには、ステップS513へ進んで、ステップS511で読み込んだ検出結果が設定値1以上であるか否かを判別する。
【0044】
前記設定値1は、燃圧センサ24の正常時には、燃圧センサ24の検出結果が下回ることのない値として予め記憶されている。
ここで、ステップS511で読み込んだ検出結果が設定値1未満であるときには、ステップS514へ進んで、設定値1を下回る状態が所定時間以上継続しているか否かを判別する。
【0045】
そして、燃圧センサ24の検出結果が、前記所定時間以上設定値1を下回っている場合には、ステップS517へ進んで、燃圧センサ24の異常を判定する。
一方、燃圧センサ24の検出結果が前記設定値1を下回っている状態であっても、その継続時間が所定時間に達していない場合には、ステップS518を迂回してそのまま本ルーチンを終了させる。
【0046】
また、ステップS513において、燃圧センサ24の検出結果が前記設定値1以上であると判断されたときには、ステップS515へ進む。
ステップS515では、ステップS511で読み込んだ検出結果が設定値2以下であるか否かを判別する。
前記設定値2は、燃圧センサ24の正常時には、燃圧センサ24の検出結果が超えることのない値として予め記憶されており、設定値1<設定値2である。
【0047】
ステップS515で燃圧センサ24の検出結果が前記設定値2未満であると判断されたときには、燃圧センサ24の検出結果が前記設定値1と設定値2(>設定値1)とで挟まれる正常範囲内に含まれていることになるので、燃圧センサ24は正常であるものと判断し、そのまま本ルーチンを終了させる。
一方、ステップS515において、燃圧センサ24の検出結果が前記設定値2以上であると判断されたときには、ステップS516へ進み、設定値2以上である状態が所定時間以上継続しているか否かを判別する。
【0048】
そして、燃圧センサ24の検出結果が、前記所定時間以上設定値2以上である場合には、ステップ5217へ進んで、燃圧センサ24の異常を判定する。
一方、燃圧センサ24の検出結果が前記設定値2以上であっても、その継続時間が所定時間に達していない場合には、ステップS517を迂回してそのまま本ルーチンを終了させる。
【0049】
次に、上記の記載から把握し得る請求項に記載以外の発明について、以下にその作用効果と共に記載する。
(イ)電動式の燃料ポンプと、燃料噴射弁に供給される燃料の圧力を検出する燃圧センサと、エンジンの運転状態に基づいてエンジンへの燃料供給量を制御する制御手段と、を含むエンジンの燃料供給装置において、
前記燃圧センサが正常であるか異常であるかを判断する診断手段と、
前記診断手段が前記燃圧センサの異常を診断したときに、前記燃料ポンプの操作量を予め記憶されている目標燃圧が得られる操作量に設定すると共に、該設定された目標燃圧で燃料が前記燃料噴射弁に供給されている状態において、前記目標燃圧に応じたエンジン負荷を超える高負荷時にエンジンへの燃料噴射を停止させる異常時制御手段と、
を設けたエンジンの燃料供給装置。
上記発明によると、燃圧センサの異常時に、目標燃圧に応じたエンジン負荷を超える高負荷になると、燃料が不足する惧れがあるものとしてエンジンへの燃料噴射を停止させる。
【符号の説明】
【0050】
1…燃料タンク、4…燃料ポンプ、5a,5b…燃料パイプ、7…逆止弁、8…燃料ギャラリーパイプ、9…燃料噴射弁、10…内燃機関、11…電子制御ユニット、12…リリーフパイプ、13…リリーフ弁、24…燃圧センサ、25…燃温センサ、26…空燃比センサ、27…電子制御スロットル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式の燃料ポンプと、燃料噴射弁に供給される燃料の圧力を検出する燃圧センサと、エンジンの運転状態に基づいてエンジンへの燃料供給量を制御する制御手段と、を含むエンジンの燃料供給装置において、
前記燃圧センサが正常であるか異常であるかを判断する診断手段と、
前記診断手段が前記燃圧センサの異常を診断したときに、前記燃料ポンプの操作量を予め記憶されている目標燃圧が得られる操作量に設定すると共に、該設定された目標燃圧で燃料が前記燃料噴射弁に供給されている状態での高負荷時にエンジンへの燃料噴射を停止させる異常時制御手段と、
を設けたエンジンの燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−189083(P2012−189083A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−127576(P2012−127576)
【出願日】平成24年6月4日(2012.6.4)
【分割の表示】特願2011−17880(P2011−17880)の分割
【原出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】