説明

カーナビゲーション装置、自立航法用誤差補正係数算出方法および誤差補正係数算出プログラム

【課題】 長時間自立航法で走行した後に、GPSレシーバを用いることなく自動車の正確な位置、方向および速度を検出することを可能とすること。【解決手段】 自動車の速度および角速度を使用して自立航法に基づいて自動車の座標を推測し、自動車が道路上の第1の位置および第2の位置に到達したかどうかを検知し、自動車が該第1の位置から該第2の位置に移動する間自立航法に基づいて推定された自動車の座標を所定のタイミングで記録し、この記録された座標および予め記憶されている道路の座標に基づいて、自立航法に使用される速度および角速度の誤差を補正する誤差補正係数を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立航法を有するカーナビゲーション装置および、この自立航法に使用される自動車の速度および角速度を補正する為の誤差補正係数を求める方法および誤差補正係数を求めるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーション装置とは、自動車に搭載され、その自動車の現在位置を測定すると共に、地図が表示されたモニタに測定された自動車の位置を示す機能を有する装置である。典型的なカーナビゲーション装置においては、モニタ上に現在位置周辺の地図を表示し、この地図上の現在位置に相当する座標に自車を示すアイコンを表示させる。自動車の現在位置の測定は周期的(例えば30秒に一回)行われ、カーナビゲーション装置のユーザは、常に自動車の現在位置を参照できる。
【0003】
一般的なカーナビゲーション装置においては、GPSレシーバ等の、自動車の絶対位置を測定する手段を有する。GPSレシーバは、複数の位置計測用の人工衛星からの信号を受信し、この信号から現在位置を求めるものである。しかしながら、GPSレシーバを用いて自動車の現在位置を正確(誤差数メートル以内)に測定する為には、ある程度の時間自動車を静止させる必要がある。
【0004】
そのため、通常のカーナビゲーション装置は、自動車の速度を検知する速度センサと、ハンドル操作による自動車の角速度を検出する角速度センサ(レーザージャイロなど)を用いて自動車の変位を推定する自立航法を併用して、自車の位置を求める。具体的には、角速度センサの出力を時間で積分することによって現在の自動車の進行方向を取得し、この進行方向と速度センサの出力から得られる速度ベクトルを時間で積分することによって、自動車の変位を求める。このように、自立航法においては、速度や角速度を積分することによって現在の位置を推定する方法である。
【0005】
ここで、速度センサは、例えば、車軸の回転数を検出し、これに自動車のタイヤの径によって決まる所定の係数を掛けることによって自動車の速度を算出する。従って、タイヤの径の誤差が速度の測定誤差になる。タイヤ自身の磨耗の程度やエア圧の高低によって、タイヤの径には1〜2センチメートル程度が生じる。このため、速度センサによる速度検出結果には、数パーセント程度の誤差が発生しうる。
【0006】
また、レーザージャイロなどの角速度センサの出力は、センサの水平面に対する取り付け角に応じて変化する。このため、センサを正確に位置決めして取り付けないと、角速度センサの出力から算出される角速度に誤差が発生する。
【0007】
このため、速度センサや角速度センサの出力に大きな誤差がある状態で、自立航法を長時間続ける(例えば高速道路等の自動車専用道路を長時間走行する)と、この誤差が累積され、推定航法によって推定された自車位置と、実際の自車の位置との間に大きな差が発生する。この結果、ナビゲーション装置のユーザは、自車がどの道路を走行しているのかの判断を誤ってしまう可能性があった。
【0008】
この問題を回避する為、特許文献1に示されるような構成が開示されている。この構成においては、ETCシステムの料金所を自動車が通過する際に、どの料金所を通過したのかを取得し、この取得結果を用いて自動車の現在位置を修正するものである。
【特許文献1】特開2000−186939号公報
【0009】
しかしながら、特許文献1の構成においては、位置の補正のみが行われ、速度センサによって検出された速度の誤差や角速度センサの積分時の累積誤差によって生じた自動車の方向のずれは補正されない。従って、ETC料金所で位置の補正を行ったとしても、速度や自動車の進行方向にずれが生じる為、その状態からしばらく自動車を走行させると、すぐに推定航法で推測した位置と真の位置とのずれが発生することになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題を解決する為になされたものであり、長時間自立航法で走行した後に、GPSレシーバを用いることなく自動車の正確な位置、方向および速度を検出することを可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の問題を解決する為、本発明においては、自動車の速度および角速度を使用して自立航法に基づいて自動車の座標を推測し、自動車が道路上の第1の位置および第2の位置に到達したかどうかを検知し、自動車が該第1の位置から該第2の位置に移動する間自立航法に基づいて推定された自動車の座標を所定のタイミングで記録し、この記録された座標および予め記憶されている道路の座標に基づいて、自立航法に使用される速度および角速度の誤差を補正する誤差補正係数を演算する。
【0012】
このように、本発明の構成によれば、予め記憶されている道路の座標と自立航法に基づいて推定された自動車の座標とを比較して、自立航法に使用される速度および角速度の誤差を補正することができる。従って検出される速度および角速度に誤差がほとんど内状態で自立航法を行うことができ、長時間自立航法で走行した後に、GPSレシーバを用いることなく自動車の正確な位置、方向および速度を検出することができるようになる。
【0013】
また、自立航法に使用される速度を補正する為の速度誤差補正係数は、例えば、予め記憶されている道路の道のりの長さと、記録された座標に基づいて計算される道のりの長さとを比較することによって、演算される。また、自立航法に使用される角速度を補正する為の角速度誤差補正係数は、例えば、記録された座標に基づいて算出された自動車の方位の変動と、予め記憶されている道路の座標に基づいて算出された自動車の方位の変動とを比較することによって、演算される。
【0014】
なお、好ましくは、第1の位置および第2の位置がETCレーンが設けられた該道路の入口および出口であり、このETCレーンと無線通信を行うETC送受信器が取得したETCレーンの識別情報を用いて自動車が第1の位置および第2の位置に到達したかどうかを検知する。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、長時間自立航法で走行した後に、GPSレシーバを用いることなく自動車の正確な位置、方向および速度を検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態につき説明する。図1は、本実施形態のカーナビゲーション装置1のブロック図である。本実施形態のカーナビゲーション装置1は、カーナビゲーション装置が搭載された自動車の絶対位置をGPSを利用して測定する機能と、自立航法によってこの絶対位置からの変位を求める機能とを備える。
【0017】
自動車の絶対位置は、カーナビゲーション装置1に内蔵されているGPSユニット12によって取得される。GPSユニット12は、複数のGPS衛星からの信号を受信する為のアンテナと、このアンテナが受信した信号に基づいて、自動車の位置(緯度および経度)を算出するGPSレシーバとを有する。GPSユニット12によって取得された自動車の絶対位置は、カーナビゲーション装置1のコントローラ11に送信される。
【0018】
自立航法は、自動車の方位と速度(すなわち、自動車の速度ベクトル)を所定時間ごと(例えば数10ミリ秒ごと)に取得し、絶対位置取得後の速度ベクトルを時間で積分することによって、GPSで自動車の絶対位置を取得した時点から自動車がどの程度移動しているのか推定するものである。
【0019】
自動車の速度は、自動車の車軸に設けられたエンコーダの出力パルスから算出される。すなわちエンコーダの出力パルスはコントローラ11に送信され、コントローラはパルス間の時間を計測し、この計測結果に基づいて自動車の速度を算出する。例えば、車軸の一回転ごとにパルスが出力されるような構成においては、自動車のタイヤの周長をパルス間隔で割った値が自動車の速度となる。
【0020】
また、自動車の方位は、カーナビゲーション装置1に内蔵されたジャイロスコープ13によって計測される自動車の角速度に基づいて算出される。すなわち、ジャイロスコープ13から出力させる角速度は周期的にコントローラ11に送られ、コントローラはこの角速度を時間で積分することによって、基準方位に対する自動車の相対方向を算出する。ここで、基準方位は、2箇所で測定した自動車の絶対位置と、この2箇所間を自動車が移動する際の角速度および速度の変化から算出される。
【0021】
このようにして取得した自動車の速度および方位から、自動車の速度ベクトルが算出される。自立航法を行う際は、コントローラ11は、この速度ベクトルを時間で積分することにより、自動車の変位をベクトル量として取得する。前回計測された自動車の絶対位置の位置ベクトルに、この変位のベクトルを加算することによって、自動車の現在の位置を取得することができる。
【0022】
GPSユニット12または自立航法を用いて取得した自動車の現在位置は、表示部14を用いてカーナビゲーション装置1のユーザに報知される。表示部14は、LCDモニタおよびこのモニタに所定の画像を表示させる為のビデオ回路等を備えている。コントローラ11は、取得した自動車の現在位置に基づいて、現在位置周辺の地図および自動車の位置を示す為のアイコンを表示部14のモニタに表示させる。表示部14のモニタに表示させるべき地図に対応する地図データは、ハードディスク15に記憶されており、コントローラ11は自動車の現在一周編の地図データをハードディスク15から適宜読み出し、これに自動車の地位を示すアイコンを重畳した画像を生成し、これを表示部14のビデオ回路に送信するようになっている。また、ハードディスク15には、コントローラ11によって実行されるプログラムが格納されており、コントローラ15はハードディスク15内のプログラムを読み出してメモリ16に展開し、これを実行することによって所望の制御動作を行う。また、メモリ16は、このプログラムを実行する時のワークエリアとしても使用される。
【0023】
自立航法とは、上記のように自動車の速度と角速度を積分することによって自動車の位置を推定するものである。このため、計測される自動車の速度と角速度に誤差がある場合、この誤差が累積されて、自立航法による自動車の推定位置と自動車の真の位置との間に大きなずれが生じることになる。
【0024】
従って、自動車の速度および角速度をより正確に検出することが求められる。本実施形態においては、自動車の速度および角速度を補正する為の係数を、高速道路の出入口に設けられたETCレーンを利用して算出する。以下、その方法につき説明する。
【0025】
ETCとは、高速道路などの有料道路の代金を自動的に精算する為の機構である。ETCに対応した自動車にはETCレーンと無線で通信する為のETC送受信器が備えられている。ETC送受信器は、自動車がETCレーンを通過する際にETCレーンと通信を行って、ETCレーンを特定する為の識別情報を取得する。自動車が高速道路の入口と出口のETCレーンを通過することによって、自動車がどの有料道路の、どの区間を走行したかをETC送受信器は判別し、これによって有料道路の走行に必要な料金を算出することができる。算出された料金は、例えばクレジットカード決済によって自動的に精算される。
【0026】
本実施形態のカーナビゲーション装置1においては、このETC送受信器からETCレーンの識別情報を取得するようになっている。ハードディスク15内には、この識別情報から走行している道路およびETCレーンの座標を得る為のルックアップテーブルが記憶されている。
【0027】
コントローラ11は、図2に示すルーチンを常時実行しており、このルーチンによって自動車の速度および角速度を補正する。本ルーチンが実行されると、ステップS1が実行される。
【0028】
ステップS1では、コントローラ11は、ETC送受信器から得られる情報をもとに、自動車が有料道路入口のETCレーンを通過したかどうかの判定を行う。自動車が有料道路入口のETCレーンを通過したと判断された場合は(S1:YES)、ステップS2に進む。一方、自動車が有料道路入口のETCレーンを通過していないと判断された場合は(S1:NO)、ステップS1が引き続き実行される。すなわち、ステップS1は、自動車が有料道路入口のETCレーンを通過するまで待機するステップである。
【0029】
ステップS2では、コントローラ11は、ETC送受信器から得られる情報をもとに、通過したETCレーンの識別IDを取得する。次いで、ステップS3に進む。
【0030】
ステップS3では、コントローラ11は、ハードディスク15内に記憶されたルックアップテーブルを参照して、この識別IDを備えたETCレーンを有する有料道路に関する情報がハードディスク15内に格納されているかどうかの判定を行う。この有料道路に関する道路情報がハードディスク15内に格納されているのであれば、計測される自動車の速度および角速度を、この道路を走行することによって補正可能であるということを意味する。この場合は(S3:YES)、ステップS4に進む。一方、この識別IDを備えたETCレーンを有する有料道路に関する情報がハードディスク15内に格納されていないのであれば、この有料道路を走行しても、計測される自動車の速度および角速度を補正することは出来ないということを意味する。よって、この場合は(S3:NO)、ステップS1に戻り、自動車が他の有料道路の入口のETCレーンを通過するまで待機する。
【0031】
ステップS4では、変数mに0が代入される。次いで、ステップS5に進む。
【0032】
ステップS5では、コントローラ11はハードディスク15に記憶されたデータを参照することによって、ステップS2で取得した識別IDに対応するETCレーンの座標を取得する。この取得された座標の経度は変数xに、緯度は変数yに格納される。また、以降はこの取得した座標を原点として、自立航法が行われる。次いで、ステップS6に進む。
【0033】
ステップS6では、変数mに1が加算される。次いで、ステップS7に進む。
【0034】
ステップS7では、コントローラ11は、ETC送受信器から得られる情報をもとに、自動車が有料道路出口のETCレーンを通過したかどうかの判定を行う。自動車が有料道路入口のETCレーンを通過していないと判断された場合は(S7:NO)、ステップS8に進む。
【0035】
ステップS8では、ステップS5またはS9(後述)が実行されてから一定時間が経過したかどうかの判定が行われる。一定時間が経過したのであれば(S8:YES)、ステップS7に進む。一方、ステップS5またはS9が実行されてからまだ一定時間が経過していないのであれば(S8:NO)、ステップS7に戻る。すなわち、ステップS7、S8は、一定時間が経過するか、自動車が道路で口のETCレーンを通過するまで待機するステップである。
【0036】
ステップS9では、自立航法による現在の自動車の位置の座標を取得する。この取得された座標の経度は変数xに、緯度は変数yに格納される。次いで、ステップS6に戻る。
【0037】
ステップS7において、自動車が道路出口のETCレーンを通過したと判断された場合は(S7:YES)、ステップS10に進む。ステップS10では、変数mに1が加算される。次いで、ステップS11に進む。
【0038】
ステップS11では、自立航法による現在の自動車の位置(すなわち、道路出口のETCレーンの位置)の座標を取得する。この取得された座標の経度は変数xに、緯度は変数yに格納される。次いで、ステップS12に進む。
【0039】
ステップS12では、道路出口のETCレーンの識別IDを取得する。次いでステップS13にて後述する補正処理を行った後、ステップS1に戻る。なお、ステップS12で取得した道路出口のETCレーンの識別IDを用いてハードディスク15に記憶されたデータを参照することによって、この識別IDに対応するETCレーンの座標を取得し、この取得した座標を原点として以降の自立航法が行われるようにしてもよい。
【0040】
以上のように、上記ルーチンにより、自動車が有料道路の入口側のETCレーンを通過後、自立航法によって推測された自動車の位置の座標を一定時間ごとに記録する。この位置の記録は、自動車が有料道路の出口側のETCレーンを通過するまで行われる。本実施形態では、記録された位置情報を用いて自動車の速度および角速度を補正する為の係数を算出する。また、上記ルーチン内で取得した道路入口側および出口側のETCレーンの識別IDを用いて、ハードディスク15に格納されている道路情報を参照して、自動車が走行した道路の座標を得ることができる。ステップS13においては、自立航法時に記録された自動車の座標と、ハードディスク15から取り出した自動車が走行した道路の座標データとを用いて、自動車の速度および角速度の補正係数を取得する。
【0041】
自動車の速度の補正係数Rsおよび、角速度の補正係数Rrを求める為の手順につき、以下説明する。なお、実際の自動車の速度をa、カーナビゲーション装置1によって算出された自動車の速度をa、実際の自動車の角速度をa、カーナビゲーション装置1によって算出された自動車の速度をaとすると、aおよびaとRs、aおよびaとRrとの関係は、数1に示されるようなものとなる。
【0042】
【数1】

【0043】
すなわち、係数Rs、Rrを求めた後、カーナビゲーション装置1によって算出された自動車の速度および角速度に夫々Rs、Rrを掛けることにより、自動車の真の速度および角速度を求めることかできるようになる。
【0044】
最初に、速度の補正係数Rsを求める。速度Rsは、有料道路の入口側ETCレーンから出口側ETCレーンまでの距離について、自立航法の結果得られた距離と、ハードディスク15内に保存された道路情報から得られる距離とを比較することによって求められる。
【0045】
ハードディスク15内に保存された道路情報から得られる有料道路の距離Lは既知である。これに対して、自立航法の結果得られる有料道路の距離L’は、ステップS5、S9、S11で取得された座標群(x, y)を以下の数2に代入することによって演算される。なお、定数Mは、図2のステップS11が実行された時点でのmの値である。すなわち、有料道路の入口側ETCレーンから出口側ETCレーンまでの間にM+1回自動車の位置の取得が行われたことになる。
【0046】
【数2】

【0047】
この距離L’は、カーナビゲーション装置1が計測した速度を時間で積分した結果に相当するものである。従って、実際の速度とカーナビゲーション装置1が計測した速度との比である係数Rsは、数3によって算出される。
【0048】
【数3】

【0049】
続いて、係数Rrの算出が行われる。まず、座標(xm−1, ym−1)から(x, y)に至る為のベクトルu=(ux,uy)(m=1,2,・・,M)を得る。なお、このベクトルuの長さは、先立って求めたRsを用いて補正されている。ベクトルuは、下記の数4によって算出される。
【0050】
【数4】

【0051】
次いで、ハードディスク15内に格納された道路情報に基づいて、座標(x, y)の各々を得た時点での真の座標(xr, yr)を算出する。
【0052】
本実施形態においては、ハードディスク15内に格納されている道路の座標情報を関数x(l)、y(l)として得ることができる。関数x(l)は有料道路入口のETCレーンから距離l進んだ位置の経度であり、関数y(l)は有料道路入口のETCレーンから距離l進んだ位置の緯度である。従って、有料道路出口のETCレーンの座標は(x(L),y(L))となる。ここで、xr,yrは、数5を用いて演算される。
【0053】
【数5】

【0054】
さらに、数6を用いて、xr、yrを用いて、座標(xrm−1, yrm−1)から(xr, yr)に至る為のベクトルv=(vx,vy)(m=1,2,・・,M)を算出する。
【0055】
【数6】

【0056】
ここで、ベクトルuからum+1に至る傾きの変動θuと、ベクトルvからvm+1に至る傾きの変動θvとの間には、理論的にはRr=θv/θuの関係がmの値に関わらず成立する。ただし、実際は、座標(x,y)取得時にハンドルを切っている(すなわちある量の角速度が発生している)場合には、この角速度成分がベクトルuに加算されてしまう為、Rr=θv/θuは厳密には成立しない。しかしながら全てのmに対してθv/θuを演算し、この平均値をとることによって、係数Rrがほぽ正確に求められる。θu、θvは、夫々数7によって算出される。
【0057】
【数7】

【0058】
このθu、θvから、係数Rrは数8を用いて算出される。
【0059】
【数8】

【0060】
以上のように、本実施形態においては、カーナビゲーション装置1が算出する速度および角速度を補正する為の係数Rs、Rrを求め、この係数に基づいて補正された速度および角速度に基づいて自立航法を行うようになっている。従って、本実施形態のカーナビゲーション装置1は、自立航法時であっても自動車の推定位置と真の位置との差をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態のカーナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態のカーナビゲーション装置のコントローラによって実行される、自動車の位置の座標を一定時間ごとに記録するためのルーチンである。
【符号の説明】
【0062】
1 カーナビゲーション装置
11 コントローラ
12 GPSユニット
13 ジャイロスコープ
14 表示部
15 ハードディスク
16 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載されるカーナビゲーション装置であって、
該自動車の速度を計測する速度計測手段と、
該自動車の角速度を計測する角速度計測手段と、
前記速度計則手段および角速度計測手段によって計測された該自動車の速度および角速度を使用して自立航法に基づいて該自動車の座標を推測する座標推測手段と、
第1の位置から第2の位置に至る道路の座標を記憶した道路情報記憶手段と、
該自動車が該第1の位置および該第2の位置に到達したかどうかを検知する、絶対位置検出手段と、
該自動車が該第1の位置から該第2の位置に移動する間、座標推測手段が推定する該自動車の座標を所定のタイミングで記録する座標記録手段と、
前記道路情報記憶手段に記憶された該道路の座標および前記座標記録手段に記録された座標に基づいて、前記速度計測手段が計測した速度の誤差を補正する速度誤差補正係数および前記角速度計測手段が計測した角速度の誤差を補正する角速度誤差補正係数を演算する、補正係数演算手段と、
を有する、カーナビゲーション装置。
【請求項2】
前記補正係数演算手段は、前記道路情報に記憶された該道路の座標に基づく第1の位置から第2の位置までの道のりの長さと、前記座標記録手段に記録された座標に基づいて計算される第1の位置から第2の位置までの道のりの長さとを比較することによって、該速度誤差補正係数を演算する、ことを特徴とする請求項1に記載のカーナビゲーション装置。
【請求項3】
前記補正係数演算手段は、前記座標記録手段に記録された座標に基づいて算出された該自動車の方位の変動と、前記道路情報記憶手段に記憶されている座標に基づいて算出された該自動車の方位の変動とを比較することによって、該角速度誤差補正係数を演算する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のカーナビゲーション装置。
【請求項4】
該第1の位置および該第2の位置が、ETCレーンが設けられた該道路の入口および出口であり、
前記絶対位置検出手段は、該ETCレーンと無線通信を行うETC送受信器が取得した該ETCレーンの識別情報を用いて該自動車が該第1の位置および該第2の位置に到達したかどうかを検知する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカーナビゲーション装置。
【請求項5】
前記座標記録手段は、該自動車が該第1の位置から該第2の位置に移動する間、一定時間おきに座標推測手段が推定する該自動車の座標記録する、ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のカーナビゲーション装置。
【請求項6】
自動車に搭載されるカーナビゲーション装置において、自立航法に使用される該自動車の速度および角速度の誤差を補正するための誤差補正係数を算出する方法であって、
計測された該自動車の速度および角速度を使用して自立航法に基づいて該自動車の座標を推測する座標推測ステップと、
該自動車が道路上の第1の位置および第2の位置に到達したかどうかを検知する、絶対位置検出ステップと、
該自動車が該第1の位置から該第2の位置に移動する間、座標推測ステップによって推定された該自動車の座標を所定のタイミングで記録する座標記録ステップと、
予め記憶されている該第1の位置から該第2の位置に至る該道路の座標および前記座標記録ステップによって記録された座標に基づいて、自立航法に使用される該自動車の速度の誤差を補正する速度誤差補正係数および角速度の誤差を補正する角速度誤差補正係数を演算する、補正係数演算ステップと、
を有する、誤差補正係数算出方法。
【請求項7】
前記補正係数演算ステップは、予め記憶されている該道路の座標に基づく第1の位置から第2の位置までの道のりの長さと、前記座標記録ステップによって記録された座標に基づいて計算される第1の位置から第2の位置までの道のりの長さとを比較することによって、該速度誤差補正係数を演算する、ことを特徴とする請求項6に記載の誤差補正係数算出方法。
【請求項8】
前記補正係数演算ステップは、前記座標記録ステップによって記録された座標に基づいて算出された該自動車の方位の変動と、予め記憶されている該道路の座標に基づいて算出された該自動車の方位の変動とを比較することによって、該角速度誤差補正係数を演算する、ことを特徴とする請求項6または7に記載の誤差補正係数算出方法。
【請求項9】
該第1の位置および該第2の位置が、ETCレーンが設けられた該道路の入口および出口であり、
前記絶対位置検出ステップは、該ETCレーンと無線通信を行うETC送受信器が取得した該ETCレーンの識別情報を用いて該自動車が該第1の位置および該第2の位置に到達したかどうかを検知する、
ことを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の誤差補正係数算出方法。
【請求項10】
前記座標記録ステップは、該自動車が該第1の位置から該第2の位置に移動する間、一定時間おきに座標推測手段が推定する該自動車の座標記録する、ことを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の誤差補正係数算出方法。
【請求項11】
自動車に搭載されるカーナビゲーション装置において、自立航法に使用される該自動車の速度および角速度の誤差を補正するための誤差補正係数を算出するために該カーナビゲーション装置によって実行されるプログラムであって、
計測された該自動車の速度および角速度を使用して自立航法に基づいて該自動車の座標を推測する座標推測ステップと、
該自動車が道路上の第1の位置および第2の位置に到達したかどうかを検知する、絶対位置検出ステップと、
該自動車が該第1の位置から該第2の位置に移動する間、座標推測ステップによって推定された該自動車の座標を所定のタイミングで記録する座標記録ステップと、
予め記憶されている該第1の位置から該第2の位置に至る該道路の座標および前記座標記録ステップによって記録された座標に基づいて、自立航法に使用される該自動車の速度の誤差を補正する速度誤差補正係数および角速度の誤差を補正する角速度誤差補正係数を演算する、補正係数演算ステップと、
を有する、誤差補正係数算出プログラム。
【請求項12】
前記補正係数演算ステップは、予め記憶されている該道路の座標に基づく第1の位置から第2の位置までの道のりの長さと、前記座標記録ステップによって記録された座標に基づいて計算される第1の位置から第2の位置までの道のりの長さとを比較することによって、該速度誤差補正係数を演算する、ことを特徴とする請求項11に記載の誤差補正係数算出プログラム。
【請求項13】
前記補正係数演算ステップは、前記座標記録ステップによって記録された座標に基づいて算出された該自動車の方位の変動と、予め記憶されている該道路の座標に基づいて算出された該自動車の方位の変動とを比較することによって、該角速度誤差補正係数を演算する、ことを特徴とする請求項11または12に記載の誤差補正係数算出プログラム。
【請求項14】
該第1の位置および該第2の位置が、ETCレーンが設けられた該道路の入口および出口であり、
前記絶対位置検出ステップは、該ETCレーンと無線通信を行うETC送受信器が取得した該ETCレーンの識別情報を用いて該自動車が該第1の位置および該第2の位置に到達したかどうかを検知する、
ことを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の誤差補正係数算出プログラム。
【請求項15】
前記座標記録ステップは、該自動車が該第1の位置から該第2の位置に移動する間、一定時間おきに座標推測手段が推定する該自動車の座標記録する、ことを特徴とする請求項11から14のいずれかに記載の誤差補正係数算出プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−263831(P2007−263831A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90832(P2006−90832)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】