説明

カーボン摩擦材料

焼結前に樹脂で含浸された繊維状材料から焼結カーボン摩擦材料を作製する。好ましくは、不織繊維状材料をフェノール樹脂で含浸させて、400〜800℃で焼結する。得られる材料は、50体積パーセント超の開放多孔度を有する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2005年11月2日出願の米国仮特許出願第60/732,765号明細書に基づく特典を請求する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、焼結により作製されるカーボン摩擦材料に関する。より特定的には、焼結カーボン摩擦材料は、樹脂含浸繊維状材料を焼結することにより作製される。
【背景技術】
【0003】
連続スリップトルクコンバーターとシフティングクラッチシステムとを有する新しい先進的な連続トルクトランスミッションシステムが、自動車業界により開発されている。この新しいシステムは、多くの場合、高エネルギー要件を伴う。したがって、この先進的なシステムの漸増するエネルギー要件を満たすべく、摩擦材料技術も同様に開発しなければならない。
【0004】
詳細には、新しい高性能耐久性摩擦材料が必要とされる。新しい摩擦材料は、高速度に耐えることができなければならない。この場合、表面速度は、約65m/秒までである。また、摩擦材料は、約1500psiまでの高いフェーシングライニング圧力に耐えることができなければならない。摩擦材料が制限された潤滑条件下で有用であることもまた重要である。
【0005】
摩擦材料は、先進的なシステムで有用なものとするために、耐久性がありかつ高耐熱性を有していなければならない。摩擦材料は、高温で安定状態を維持しなければならないだけでなく、運転状態で発生する高熱を迅速に散逸することもできなければならない。
【0006】
新しいシステムの係合時および係合解除時に高速度が発生するということは、摩擦材料が係合中終始にわたり比較的一定した摩擦を保持することができなければならないことを意味する。制動時の材料の「シャダリング」または1つのギヤから別のギヤへのパワーシフト時のトランスミッションシステムの「シャダリング」を最小限に抑えるために、広範囲の速度および温度にわたり摩擦係合が比較的一定していることが重要である。摩擦係合時に摩擦材料がノイズや「スクォーク」を生じることがないように、摩擦材料が所望のトルク曲線形状を有することもまた重要である。
【0007】
フェノール樹脂は、湿式クラッチ用途で湿式摩擦材料の含浸剤として慣例的に使用されるが、フェノール樹脂には、種々の制約がある。フェノール樹脂摩擦材料は、新しい高エネルギートランスミッションシステムで使用するのに必要な高耐熱性を有していない。特定的には、フェノール樹脂は、高エネルギー用途で有用なものとするには低すぎる約300℃の温度で分解する。そのほか、フェノール樹脂は、剛性材料であるので、フェノール樹脂を摩擦材料に使用した場合、均一な接触が得られないときに不均一なライニングの摩耗およびセパレータープレートの「ホットスポット」を生じる可能性が高くなる。
【0008】
より良好な摩擦材料の必要性を考慮した広範にわたる研究の結果として、改良された特性を有する摩擦材料が本発明により開発された。本湿式摩擦材料は、使用時にブレーキフルードやオートマチックトランスミッションフルードのような液体で摩擦材料が「湿潤」または含浸される「湿式」用途に有用である。「湿式」摩擦材料の使用時、フルードは、摩擦材料から究極的にスクイズされるかまたは摩擦材料を含浸する。湿式摩擦材料は、その組成および物理的特性のいずれにおいても「乾式」摩擦材料と大きく異なる。
【0009】
「湿式」摩擦材料の多孔度を増大すべく探索を継続する必要性が存在する。製紙プロセスにより作製される既存の「湿式」摩擦材料の開放細孔は、約50体積パーセントである。圧縮成形により作製されるような他の「湿式」摩擦材料の多孔度は、50体積パーセント未満である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
ユニークなカーボン摩擦材料が、400C〜800Cの温度範囲で繊維状材料を焼結することにより作製される。これらの繊維状材料は、充填材および粒子の有無を問わず種々の繊維から構成可能である。材料は、焼結前に最初に樹脂で含浸される。得られる材料は、焼結多孔性カーボン体である。好ましくは、繊維状材料は、紙繊維状材料および不織繊維状材料であり、好ましくは、樹脂はフェノール樹脂である。
【0011】
本発明に係る焼結カーボン摩擦材料は、実質的に50体積%超の開放多孔度を有する。繊維/充填材タイプの摩擦材料を550C未満で処理した場合、材料は、十分な可撓性および強度を保持する。細孔サイズは、処理温度の上昇と共に増大し、そのうえ、表面は、より開放された状態になる。摩擦係数は、処理温度の上昇と共に増大し、摩擦−速度曲線は、より正の状態/より望ましい状態になる。
【0012】
本発明の他の目的および利点は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明および添付の図面を精査すれば当業者に明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に有用な種々の樹脂としては、フェノール樹脂およびフェノール系樹脂が挙げられる。当然のことながら、エポキシ、ブタジエン、シリコーン、キリ油、ベンゼン、カシューナッツ油などのような他の調整用成分を樹脂ブレンド中に含む種々のフェノール系樹脂は、本発明に有用であると考えられる。フェノール変性樹脂の場合、フェノール樹脂は、一般的には、樹脂ブレンドの約50重量%以上(存在するいかなる溶媒をも除外する)で存在する。しかしながら、特定の実施形態では、含浸剤樹脂ブレンドが、シリコーン−フェノール樹脂混合物(溶媒および他のプロセス酸を除外する)の重量を基準にして、約5〜約80重量%、特定の目的では約15〜約55%、特定の実施形態では約15〜約25重量%のシリコーン樹脂を含有する場合、摩擦材料を改良しうることを見いだした。
【0014】
一般的には、焼結多孔体は、実質的な比表面積を有する。さらに、焼結多孔体は、細孔空隙を有し、かつ実質的な体積の細孔空隙を有する。これは、開放細孔構造を有するユニークな焼結多孔体を提供する。
【0015】
本発明によれば、摩擦材料は、ベース材料全体にわたり樹脂の均一ディスパージョンを有する。特定の実施形態では、樹脂材料は、摩擦材料100重量部あたり約45〜約65重量部を構成する。
【0016】
特定の実施形態では、樹脂材料をベース材料に適用してベース材料を樹脂混合物で含浸した後、含浸ベース材料を所定の時間にわたり所望の温度に加熱して摩擦材料を形成する。その後、硬化摩擦材料を好適な手段により所望の基材に接着させる。
【0017】
図1は、本発明に係る炭化サンプルの側面図である。図は、炭化前および炭化後のサンプルを示している。
【0018】
図2は、本発明に係る炭化により圧縮率が増大されたことを示すグラフである。炭化繊維状ベース材料は、増大された圧縮率を有していた。これにより耐ホットスポット性および摩擦特性が改良される。
【0019】
図3は、細孔サイズに及ぼす増大された炭化効果を示すグラフである。グラフは、炭化により細孔サイズが増大することを示している。グラフはまた、炭化温度が高いほど構造がより開放された状態になることを示している。
【0020】
図4は、耐熱性に及ぼす改良された炭化効果を示すグラフである。炭化材料は、元の非炭化材料よりも高いエネルギー容量を有する。
【0021】
特定の実施形態では、ベース材料による樹脂の目標含浸率(pick up)は、重量基準で、約25〜約120%、他の実施形態では約40〜約100%、特定の実施形態では約60〜少なくとも80%の範囲の全フェノール樹脂材料であることが好ましい。ベース材料を樹脂で飽和した後、ベース材料をある時間(特定の実施形態では約1/2時間)にわたり160〜250℃の範囲内の温度で硬化させることにより樹脂材料を硬化させて摩擦材料を形成する。摩擦材料の最終厚さは、ベース材料の初期厚さに依存する。
【0022】
さらに、樹脂ブレンドの調製および繊維状ベース材料の調製の両方に有用であることが公知である他の成分およびプロセス助剤を組み込むことが可能でありかつこれらは本発明の意図される範囲内にあると考えられる。
【0023】
焼結は、典型的には、窒素と水素との混合物や同様に一酸化炭素(CO)を含有するガス混合物のような不活性または還元性の雰囲気下で行われる。その際、焼結物品を加熱段階に付し、その段階でマイクロ構造の変換を引き起こすことが可能である。窒素と10体積%の水素との混合物のようなそれ自体は炭素化合物を含有していない還元性ガス下で焼結を行うことが可能である。
【0024】
本発明に係るプロセスは、自己支持性焼結体、たとえば、自己支持性骨格を有する焼結体の製造に使用可能である。
【0025】
ベース材料
種々のベース材料、たとえば、布材料、織成材料、および/または不織材料などを含む非アスベスト繊維状ベース材料などは、本発明に係る摩擦材料に有用である。好適な繊維状ベース材料は、たとえば、繊維と充填材とを含む。繊維は、有機繊維、無機繊維、およびカーボン繊維でありうる。有機繊維は、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリアミド繊維、綿/セルロース繊維などでありうる。充填材は、たとえば、シリカ、珪藻土、グラファイト、アルミナ、カシュー粉などでありうる。
【0026】
他の実施形態では、ベース材料は、繊維状織成材料、繊維状不織材料、および紙材料を含みうる。さらに、本発明に有用な種々のタイプの繊維状ベース材料の例は、多くのボルグワーナー(BorgWarner)の米国特許に開示されている。しかしながら、当然のことではあるが、本発明の他の実施形態は、さらに異なる繊維状ベース材料を含みうる。
【0027】
たとえば、特定の実施形態では、繊維状ベース材料は、低フィブリル化繊維およびカーボン繊維を繊維状ベース材料に使用して望ましい細孔構造を摩擦材料に提供する場合の繊維状ベース材料を含む。繊維形状は、増大された耐熱性を提供するだけでなく、耐離層性および耐スキール性または耐ノイズ性をも提供する。また、特定の実施形態では、繊維状ベース材料において、カーボン繊維とカーボン粒子とを存在させると、耐熱性の増大、一定した摩擦係数の保持、および耐スキール性の増大に役立つ。繊維状ベース材料中に比較的少量の綿繊維を組み込んで摩擦材料のクラッチ「ならし運転」特性を改良することが可能である。
【0028】
種々の充填材もまた、本発明に係る繊維状ベース材料の主要層に有用である。特定的には、珪藻土のようなシリカ充填剤が有用である。しかしながら、他のタイプの充填材が本発明で使用するのに好適でありかつ充填材の選択が摩擦材料の特定の要件に依存すると考えられる。
【0029】
好ましい実施形態では、焼結摩擦材料は、アラミド繊維から作製される。しかしながら、焼結繊維はまた、アクリル繊維単独またはアクリル繊維とアラミド繊維との併用でありうる。
【0030】
特定の実施形態では、より高い摩擦係数を繊維状材料に付与するために本発明に係る繊維状ベース材料に綿繊維を添加する。特定の実施形態では約5〜20%、また特定の実施形態では約10%の綿を繊維状ベース材料に添加することも可能である。
【0031】
繊維状ベース材料の主要層の処方の一例は、約75重量%〜約85重量%の低フィブリル化アラミド繊維と約15重量%〜約25重量%の充填材とを含む。
【0032】
特定の他の実施形態では、ある特定の処方が有用であることが判明した。この処方は、約35〜約45重量%の低フィブリル化アラミド繊維と、約5〜約15%の綿繊維と、約2〜約20重量%のカーボン繊維と、約25〜約35重量%の充填材と、を含む。
【0033】
さらに他の実施形態では、ベース材料は、約15〜約25%の綿と、約40〜約50%のアラミド繊維と、約10〜約20%のカーボン繊維と、約5〜約15%のセライトと場合により約1〜約3%のラテックス追加物とを含む摩擦調整用粒子と、を含む。
【0034】
繊維状ベース材料がより大きい平均細孔直径および流体浸透性を有する場合、摩擦材料の多孔性構造全体にわたりより良好なオートマチックトランスミッションフルード流動が得られるので、摩擦材料は、より低温の状態すなわちトランスミッションで発生される熱がより低減された状態で動作する可能性が高い。トランスミッションシステムの運転時、フルードは、とくにより高い温度で、時間と共に分解して「油堆積物」を形成する傾向がある。この「油堆積物」は、細孔開口を減少させる。したがって、最初により大きい細孔を有する摩擦材料から始めた場合、摩擦材料の耐用年数の期間にわたりより多くの開放細孔が残存する。
【0035】
繊維状ベース材料のトップ表面上の摩擦調整用粒子は、得られる摩擦材料に改良された三次元構造を提供する。
【0036】
トップ摩擦調整用粒子層上の油またはフルードの層は、油膜を表面上に保持することにより、摩擦材料中への油またはフルードの初期浸透をより起こりにくくする。トップ摩擦調整用材料層は、流体潤滑剤を表面上に保持し、摩擦材料の油保持容量を増大させる。したがって、本発明に係る摩擦材料を用いれば、その表面上に油膜を保持することが可能になる。これはまた、良好な摩擦係数特性および良好なスリップ耐久特性を提供する。
【0037】
特定の実施形態では、トップ層を形成する摩擦調整用粒子の平均被覆面積は、表面積の約80〜約100%の範囲内である。特定の他の実施形態では、平均被覆面積は、約90〜約100%の範囲内である。摩擦調整用粒子は、約35〜200μmの好ましい平均厚さでベース材料のトップ表面上に実質的に残留する。特定の実施形態では、トップ層は、約60〜約100ミクロンの好ましい平均厚さを有する。
【0038】
繊維状ベース材料の表面上の摩擦調整用粒子の堆積層の均一性は、直径が約1〜約80ミクロン、特定の実施形態では約1〜約50ミクロン、他の特定の実施形態では約1〜約20ミクロンの範囲内でありうる粒子サイズを用いることにより達成される。特定の実施形態では、粒子は、約12μmの平均粒子直径を有する。特定の実施形態では、摩擦調整用粒子のサイズが大きすぎたりまたは小さすぎたりした場合、所望の最適三次元構造が達成されないため、熱散逸およびシャダー防止特性が最適でないことが見いだされた。
【0039】
繊維状ベース材料上の摩擦調整用粒子の被覆量は、摩擦調整用材料の個別粒子と個別粒子間の空隙または間隙とで構成された三次元構造を摩擦調整用粒子の層が有するように十分に厚い。特定の実施形態では、(摩擦調整用粒子の)トップ層は、(繊維状ベース材料の)下部層ほど多孔性ではない。
【0040】
種々のタイプの摩擦調整用粒子が摩擦材料に有用である。一実施形態では、有用な摩擦調整用粒子は、シリカ粒子を含む。他の実施形態は、フェノール樹脂、シリコーン樹脂エポキシ樹脂、およびそれらの混合物のような樹脂粉末のような摩擦調整用粒子を有しうる。さらに他の実施形態は、部分的におよび/または完全に炭化されたカーボン粉末および/または粒子ならびにそれらの混合物、さらには上述の摩擦調整用粒子の混合物を含みうる。特定の実施形態では、珪藻土、セライト(登録商標)、セラトム(Celatom)(登録商標)、および/または二酸化ケイ素のようなシリカ粒子がとくに有用である。シリカ粒子は、ベース材料に結合する安価な無機材料である。シリカ粒子は、摩擦材料に高い摩擦係数を提供する。シリカ粒子はまた、平滑な摩擦表面を有するベース材料を提供し、いかなる「シャダー」も最小限に抑えられるように良好な「シフトフィール」および摩擦特性を摩擦材料に提供する。
【0041】
特定の実施形態では、本発明に係る摩擦において摩擦材料のトップ層を構成する摩擦調整用材料は、不規則形状を有しうる。不規則形状の摩擦調整用粒子は、不規則形状の摩擦調整用粒子の表面上の多くの陥入部の毛管作用に基づいて繊維状ベース材料の表面に所望の量の潤滑剤を保持するように作用する。特定の実施形態では、セライトは不規則表面または粗表面を有するので、セライトのようなシリカ材料は、摩擦調整用材料として有用である。
【0042】
特定の実施形態では、摩擦材料は、内部に複数の空隙または間隙を有する繊維状ベース材料を含む。繊維状ベース材料中の空隙のサイズは、約0.5μ〜約20μmの範囲内でありうる。
【0043】
特定の実施形態では、繊維状ベース材料は、好ましくは、繊維状ベース材料が「多孔性」織成材料と比較して「高密度」であるとみなされるように約50〜約60%の空隙体積を有する。特定の実施形態では、樹脂材料は、繊維状ベース材料中の空隙を少なくとも部分的に満たす。樹脂材料は、ベース材料の厚さ全体にわたり実質的に均一に分散される。
【実施例】
【0044】
以下の実施例は、本発明に係る摩擦材料が従来の摩擦材料よりも優れた改良を提供するというさらなる証拠を提供する。
【0045】
内部に空隙を含む開放三次元構造を有する焼結多孔性カーボンは、次のように作製される。焼結カーボン摩擦材料の製造方法は、焼結前に繊維状材料を樹脂で含浸する工程と、樹脂含浸繊維状材料を焼結する工程と、焼結カーボン摩擦材料を生成する工程と、を含む。含浸は、フェノール樹脂を用いて行われ、焼結は、600℃の温度で行われる。繊維状材料は、不織アラミド繊維であった。
【0046】
その際、焼結多孔性カーボンは、ベース材料と共に使用される。典型的には、ベース材料は、約5〜約75重量%のアラミド繊維と、約5〜約75重量%の綿繊維と、約5〜約75重量%のカーボン繊維と、約5〜約75重量%の充填材と、を含む。
【0047】
焼結プロセスは、より良好な強度が得られるように原料紙シートを圧縮して高密度シートを形成する工程と、より良好な強度が得られるように硬化時または硬化後に紙を圧縮する工程と、より良好な強度が得られるように高い樹脂含浸率(60〜150%)を使用する工程と、を含む。樹脂としては、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、エポキシ樹脂、他のタイプの有機樹脂、セラミック樹脂などが挙げられる。好ましくは、窒素ガス、アルゴン、水蒸気、アンモニア、アミンなどの中において400〜800Cの温度で材料を焼結する。
【0048】
本発明に係るカーボン摩擦材料の用途としては、高圧(20MPaまで)システムおよび高エネルギーシステムが挙げられる。他の用途としては、少量限定油流動システムまたは乾式システムが挙げられる。
【0049】
表Iは、炭化サンプルに対する材料プロセスを示している。
【0050】
【表1】

【0051】
表IIは、湿潤油半乾燥耐久性試験における焼結材料の結果を示している。
【0052】
【表2】

【0053】
結果から以下のことが示される。
1.焼結されたCは、焼結されていないものよりも良好な下降曲線を有する。
2.焼結されたCのμレベルは、試験サイクル数と共に増大した。
3.未処理のCは、他の材料よりも多くの摩擦フェードを有する。
以上からわかるように、本発明に係る焼結カーボン摩擦材料は、比較の材料よりも一貫してより良好に動作する。したがって、本発明に係る繊維状ベース材料は、より高速度で比較の材料よりもはるかに良好に動作する。
4.焼結されたCは、対照Cのサンプルよりも良好な耐久性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、クラッチプレート、トランスミッションバンド、ブレーキシュー、シンクロナイザーリング、摩擦ディスク、またはシステムプレートで使用するための高エネルギー摩擦材料として有用である。本発明の好ましい実施形態および他の選択肢の実施形態についての以上の説明は、例示することを意図したものであり、以下の請求項の範囲および内容を限定することを意図したものではない。
【0055】
本発明についての以上の詳細な説明は、解説を目的として与えられている。当業者には自明なことであろうが、本発明の範囲から逸脱することなく多数の変更および修正を加えることが可能である。したがって、以上の説明はすべて、限定的な意味ではなく例示的な意味で解釈されるべきものであり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る炭化サンプルの側面図である。
【図2】本発明に係る炭化により圧縮率が増大されたことを示すグラフである。
【図3】細孔サイズに及ぼす増大された炭化効果を示すグラフである。
【図4】耐熱性に及ぼす増大された炭化効果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結前に樹脂で含浸された繊維状材料から作製される焼結カーボン摩擦材料であって、焼結材料が元の材料よりも大きい開放多孔度を有する、焼結カーボン摩擦材料。
【請求項2】
前記材料が焼結多孔性カーボン体であり少なくとも50体積パーセントの開放多孔度を有する、請求項1に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項3】
焼結多孔性カーボン体が実質的な比表面積を有する、請求項2に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項4】
前記焼結多孔性カーボン体がアラミド繊維から作製される、請求項2に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項5】
前記焼結多孔性カーボン体が細孔空隙を有しかつ実質的な体積の細孔空隙を有する、請求項2に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項6】
前記焼結多孔性カーボン体が開放細孔構造を有する、請求項2に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項7】
前記繊維状材料が、アラミド繊維、セルロース繊維、有機繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、もしくはアクリル繊維、または他の合成繊維である、請求項1に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項8】
40パーセント超の増大された樹脂含浸率を有する、請求項1に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項9】
60パーセント超の増大された樹脂含浸率を有する、請求項1に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項10】
シリカ、珪藻土、グラファイト、アルミナ、カシュー粉、摩擦粒子、カーボン粒子、ニトリル、カシューナッツ油粒子、固体潤滑剤、テフロン(Teflon)、および二硫化モリブデンよりなる群から選択される少なくとも1種の充填材を含む、請求項7に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項11】
前記焼結した繊維状材料が、アラミド繊維、アクリル繊維、またはそれらの組合せである、請求項1に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項12】
前記繊維状材料が、織成タイプ、紙タイプ、または不織タイプの繊維状材料である、請求項1に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項13】
前記繊維状材料が不織繊維状材料である、請求項1に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項14】
前記樹脂がフェノール樹脂である、請求項1に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項15】
前記焼結多孔性カーボン体が、内部に空隙を有する開放三次元構造である、請求項2に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項16】
焼結前に樹脂で含浸された繊維状材料から作製される焼結カーボン摩擦材料であって、焼結材料が、マクロ多孔度を有する焼結多孔性カーボン体である、焼結カーボン摩擦材料。
【請求項17】
前記焼結多孔性カーボン体が、50体積%超〜85体積%の範囲内の平均空隙体積を有し、かつ前記焼結多孔体が、平均サイズ平均値で直径約5〜約100ミクロンの範囲内の細孔を有する、請求項16に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項18】
前記焼結多孔性カーボン体が、60体積%超〜85体積%の範囲内の平均空隙体積を有し、かつ前記焼結多孔体が、平均サイズ平均値で直径5〜約50ミクロンの範囲内の細孔を有する、請求項16に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項19】
前記焼結多孔性カーボン体が、65体積%〜85体積%の範囲内の平均空隙体積を有し、かつ前記焼結多孔体が、平均サイズ平均値で直径約5〜約25ミクロンの範囲内の細孔を有する、請求項16に記載の焼結カーボン摩擦材料。
【請求項20】
約5〜約75重量%のアラミド繊維と、約5〜約75重量%のセルロース繊維と、約5〜約75重量%のカーボン繊維と、約5〜約75重量%の充填材とを含むベース材料と共に使用される、請求項1に記載の摩擦材料。
【請求項21】
トランスミッションバンドの形態である、請求項20に記載の摩擦材料。
【請求項22】
クラッチフェーシングの形態である、請求項20に記載の摩擦材料。
【請求項23】
ブレーキシューライニングの形態である、請求項20に記載の摩擦材料。
【請求項24】
シンクロナイザーの形態である、請求項20に記載の摩擦材料。
【請求項25】
焼結前に繊維状材料を樹脂で含浸する工程と、
400〜800℃の範囲内の温度で前記樹脂含浸繊維状材料を焼結する工程と、
焼結カーボン摩擦材料を生成する工程であって、焼結材料が50体積パーセント超の開放多孔度を有する工程と、
を含む、焼結カーボン摩擦材料の製造方法。
【請求項26】
生成される前記焼結カーボン摩擦材料が焼結多孔性カーボン体である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記含浸がフェノール樹脂を用いて行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記焼結が400℃〜600℃の範囲内の温度で行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記繊維状材料が、不織繊維状材料、織成繊維状材料、または紙繊維状材料である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記焼結多孔性カーボン体が、内部に空隙を有する開放三次元構造である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記焼結多孔性カーボン体が自己支持性骨格である、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記焼結が400℃〜550℃の範囲内の温度で行われる、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−514767(P2009−514767A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538950(P2008−538950)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/042342
【国際公開番号】WO2007/055951
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(500124378)ボーグワーナー・インコーポレーテッド (302)
【Fターム(参考)】