ガスセンサ装置
【課題】素子形状等による感度及びガス検知の応答性への影響を抑制するセンサ装置を提供する。
【解決手段】素子300をケース200内に収容して備え特定ガスを検出する装置100であって、ケース200は素子300を収容している凹形状をなす収容部211を有するケース本体部210と、天板221を有すると共に本体部210に装着されて収容部を閉塞している内蓋部220と、内蓋部220を覆って内蓋部の天板の外表面との間に対象ガスを導く間隙を形成している外蓋部230とを備え、内蓋部220の天板221は、収容部221内に収容された素子300に向かって突出して形成されると共に素子300に近い側の端部に測定対象ガスを導くガス流通口を形成してなる筒状部222を備え、その端部に、ガス流通口を閉塞する形態でフィルタ224が配置されている。
【解決手段】素子300をケース200内に収容して備え特定ガスを検出する装置100であって、ケース200は素子300を収容している凹形状をなす収容部211を有するケース本体部210と、天板221を有すると共に本体部210に装着されて収容部を閉塞している内蓋部220と、内蓋部220を覆って内蓋部の天板の外表面との間に対象ガスを導く間隙を形成している外蓋部230とを備え、内蓋部220の天板221は、収容部221内に収容された素子300に向かって突出して形成されると共に素子300に近い側の端部に測定対象ガスを導くガス流通口を形成してなる筒状部222を備え、その端部に、ガス流通口を閉塞する形態でフィルタ224が配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスセンサ装置に関する。更に詳しくは、測定対象ガス中の特定ガスを検出及び/又は測定対象ガス中の特定ガスの濃度変化を検知するガスセンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ケース内にガスセンサ素子を収容し、そのケース内に測定対象となる測定対象ガスを流通させて、測定対象ガス中の特定ガスを検出するガスセンサ装置が知られている。
例えば、このガスセンサ装置は、自動車の車両内に外気を取り入れるか、内気を循環させるかを制御する空調制御装置等に接続されて利用に供される。この用途においては、ガスセンサ装置は、例えば、自動車のフロントグリルの内側等に取り付けられ、フロントグリルを通った外気(測定対象ガス)をケース内に誘導し、流路に従ってガスセンサ素子まで到達させて特定ガスの濃度変化の検出を行い、その後、排出口からケース外に外気を排出して利用される。
そして、このガスセンサ装置としては、ガスセンサ素子を収容するケース本体と、ケース本体部に装着されて収容部を閉塞する内蓋部と、内蓋部を覆う外蓋部を有するケースを備えた構成のもの、具体的には下記特許文献1及び特許文献2に開示されたものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−341348号公報
【特許文献2】特開2003−344339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなガスセンサ装置では、内部に収容されたガスセンサ素子の形状及び大きさによってセンサ感度及び応答性等が変化するおそれがあることが分かった。即ち、ケース本体部内に収容されるガスセンサ素子と内蓋の測定対象ガスを通気させるガス流通口を覆うフィルタとの間の距離が隔たった場合には、フィルタを拡散した測定対象ガスが速やかにガスセンサ素子に到達しにくく、センサ感度及びガス検知の応答性が低下するおそれがあることが分かった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ガスセンサ素子の形状及び大きさによるセンサ感度及びガス検知の応答性等への影響を抑制できるガスセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ガスセンサ素子の形状及び大きさによるセンサ感度及び応答性等への影響を抑制できるガスセンサ装置について検討を行った。その結果、例えば、図8(従来例)に示すように、ガスセンサ素子300(ガスセンサ素子300の内部構成については図示を省略)の高さが高く、内蓋部220のガス流通口を覆うフィルタ224との距離が近接している場合には、十分なセンサ感度及びガス検知の応答性が得られる。しかし、例えば、図9(参考例)に示すように、ガスセンサ素子300の高さが低く、内蓋部220のガス流通口を覆うフィルタ224との距離が離間された場合にはセンサ感度及びガス検知の応答性等が低下する傾向があることが分かった。
【0006】
しかし、高さの低いガスセンサ素子300に対応してケース本体部210自体の高さを低く形成したり、ケース本体部210に係合される内蓋部220の位置を相対的に低く抑えたりすることは、種々の条件から困難である。即ち、例えば、図9に例示するように、回路基板500上に他の電子部品600を備え、その電子部品600の高さがガスセンサ素子300よりも高いために、内蓋部220の位置を低下させることができない場合や、同じケース本体部210を用いて異なる(素子高さが異なる)2種以上のガスセンサ素子に対応させたい場合や、同じ製造ラインにおいて異なる(素子高さが異なる)2種以上のガスセンサ素子を流し、2種以上のガスセンサ装置を製造する場合等では、ケース本体部210の収容部211の形状を設計変更することができない。
そこで、本発明者らは、これらの状況にも対応できるガスセンサ装置について、鋭意検討を行った。その結果、ケース本体部に収容されたガスセンサ素子に向かって突出するように形成され、測定対象ガスをガスセンサ素子まで導くガス流通口が形成された筒状部を内蓋部の天板に形成することで上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は以下に示す通りである。
(1)ガスセンサ素子をケース内に収容して備え、且つ測定対象ガス中の特定ガスを検出及び/又は該特定ガスの濃度変化を検知するガスセンサ装置であって、
該ケースは、該ガスセンサ素子を収容している凹形状をなす収容部を有するケース本体部と、
天板を有すると共に該ケース本体部に装着されて該収容部を閉塞している内蓋部と、
該内蓋部を覆って該内蓋部の該天板の外表面との間に該測定対象ガスを導く間隙を形成している外蓋部と、を備え、
該内蓋部の該天板は、該収容部内に収容された該ガスセンサ素子に向かって突出して形成されると共に、該ガスセンサ素子に近い側の端部に該測定対象ガスを該ガスセンサ素子まで導くガス流通口を形成してなる筒状部を備え、
前記筒状部内に、前記通気口を閉塞する形態で通気性及び撥水性を有するフィルタが配置されていることを特徴とするガスセンサ装置。
(2)上記筒状部は、上記ガス流通口が形成された上記端部から更に延設されて、上記ガスセンサ素子を囲う囲繞部を備える上記(1)に記載のガスセンサ装置。
(3)上記ガスセンサ素子は、上記収容部内に収容された回路基板上に実装されており、
上記囲繞部は、弾性材料からなり且つ一端側が該回路基板の実装面に当接されている上記(1)又は(2)に記載のガスセンサ装置。
(4)上記筒状部は、上記ガスセンサ素子に近い側に向かって狭窄されている上記(1)乃至(3)のうちのいずれかに記載のガスセンサ装置。
(5)上記ケース本体部は、上記収容部の外側面から外側に向かって突出されて該ケース本体部を取付け場所に取り付けるためのブラケット部を有し、
該ブラケット部は、取付部材を挿通するための取付孔が厚み方向に形成された板状をなす板片部と、該収容部の該外側面及び該板片部を接続し且つ該外側面側で該板片部よりも肉厚に形成されると共に該板片部側へ向けて徐々に肉薄に形成された補強部と、を有し、該補強部には、その厚み方向に該測定対象ガスを通気するための通気孔が形成されており、
上記外蓋部は、該ブラケット部の該通気孔と対応する位置に、該通気孔内を通過してきた該測定対象ガスの流れを遮り且つ該内蓋部及び該外蓋部で形成された上記間隙へ向かって該測定対象ガスの流れを変化させる張出部を備えている上記(1)乃至(4)のうちのいずれかに記載のガスセンサ装置。
(6)上記ガスセンサ素子は、上記収容部内に収容された回路基板上に実装されており、
該回路基板は、該ガスセンサ素子より高さが高い他の電子部品を更に備え、上記筒状部は、上記端部が上記電子部品の高さよりも低位に配置されるように前記内蓋部の前記天板から突出している上記(1)乃至(5)のうちのいずれかに記載のガスセンサ装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガスセンサ装置によれば、内蓋(220)の天板(221)にガスセンサ素子(300)へ向かって突出したガス流通口付きの筒状部(222)を設け、この筒状部の端部にガス流通口を覆うフィルタを配置したため、この筒状部(222)を介して測定対象ガスをガスセンサ素子(300)まで確実に、かつ速やかに流通させることができるようになり、ガスセンサ素子の形状及び大きさ等によってセンサ感度及びガス検知の応答性が影響を受けることを抑制できる。
筒状部(222)がガスセンサ素子(300)を囲う囲繞部(225)を備える場合は、囲繞部(225)を備えない場合に比べて、より速やかにフィルタを通過(拡散)した測定対象ガスをガスセンサ素子(300)に到達させることができる。従って、ガスセンサ素子の形状及び大きさ等によってセンサ感度及びガス検知の応答性が影響を受けることをより効果的に抑制できる。
ガスセンサ素子(300)が収容部(211)内に収容された回路基板(500)上に実装され、囲繞部(225)が弾性材料からなり且つ囲繞部(225)の一端側が回路基板(500)の実装面に当接されている場合は、回路基板(500)と囲繞部(225)との密着性を向上させることができ、囲繞部内の気密性を高め、より高い検出精度を得ることができる。
筒状部(222)がガスセンサ素子(300)に近い側に向かって狭窄されている場合は、狭窄されていない場合に比べて、より小さく的を絞って効果的に、かつ速やかに測定対象ガスをガスセンサ素子(300)まで流通させることができる。従って、ガスセンサ素子の形状及び大きさ等によってセンサ感度及びガス検知の応答性が影響を受けることを効果的に抑制できる。また、狭窄されていない場合に比べて、より少ない量の測定対象ガスで応答性よく特定ガスの検知を行うことができる。
ブラケット部(212)の補強部(215)に測定対象ガスを通気するための通気孔(216)を有し、外蓋部(230)が測定対象ガスの流れを遮り且つ間隙(400)へ向かって流れを変化させる張出部(231)を備える場合は、測定対象ガスは、ブラケット部の通気孔(216)内を経由して、張出部(231)に突き当たり、内蓋部(220)と外蓋部(230)とで形成された間隙(400)へ向かって流路変更されて流通される。これにより、測定対象ガス中に異物が含まれたとしても、通気口(216)及び張出部(231)を通過できない大きさ及び形状の異物は、通気口(216)及び張出部(231)から侵入できず、異物がガスセンサ装置(100)内へ到達することを抑制することができる。特にガスセンサ装置(100)が車両前方部に装着される場合には、走行中に流入される測定対象ガスに雨粒及び砂粒等の異物が含まれる場合であってもこれらの異物のガスセンサ装置(100)内への侵入を抑制できる。この結果、測定対象ガス中に含まれる異物が筒状部内に滞留したり、異物によりフィルタが損傷したりするのを有効に防ぐことができる。
回路基板(500)にガスセンサ素子(300)より高さが高い他の電子部品(600)を備える場合、筒状部(222)を備えることによる効果をより得やすい。内蓋部の天板(221)の高さを他の電子部品(600)に合わせて高くすると、天板(221)からガスセンサ素子(300)までの間に空間が形成されて両者間が隔たり、測定対象ガスがフィルタ(224)を介して収容部(211)内に拡散されて、センサ感度及び応答性等が低下するおそれがある。これに対して、自身の端部(223)が電子部品(600)の高さよりも低位となるように筒状部(222)を内蓋部の天板(221)に設けることで、フィルタ(224)を拡散した測定対象ガスが意図しない場所へまで拡散(流通)されることを防止し、より確実にガスセンサ素子(300)に測定対象ガスを供給できる。このため、センサ感度及び応答性等を他の電子部品(600)の形状及び大きさに影響されることなく維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のガスセンサ装置を図1〜7を参照して説明する。
図1は本発明のガスセンサ装置の一例を示す分解斜視図である。また、図2は本発明のガスセンサ装置の一例を示す断面斜視図であり、図5におけるA−A’断面に相当する。更に、図3は本発明のガスセンサ装置の他例を示す断面斜視図であり、図5におけるA−A’断面に相当する。また、図4は筒状部を拡大して説明する部分断面図である。図5は本発明のガスセンサ装置の一例を示す斜視図である。図6は本発明のガスセンサ装置の一例を示す断面図であり、図5におけるB−B’断面に相当する。図7は本発明のガスセンサ装置のケースを分解して示す平面図である。
【0010】
ガスセンサ装置100は、回路基板500上に実装されたガスセンサ素子300をケース200内に収容して備え、且つ測定対象ガス中の特定ガスの濃度変化を検知するガスセンサ装置であって、
該ケース200は、該ガスセンサ素子を収容している凹形状をなす収容部211を有するケース本体部210と、
天板221を有すると共に該ケース本体部210に装着されて該収容部211を閉塞している内蓋部220と、
該内蓋部220を覆って該内蓋部220の該天板221の外表面との間に該測定対象ガスを導く間隙400を形成している外蓋部230と、を備え、
該内蓋部220の該天板221は、該収容部211内に収容された該ガスセンサ素子300に向かって突出して形成されると共に、該ガスセンサ素子300に近い側の端部(底部)223に該測定対象ガスを該ガスセンサ素子300まで導くガス流通口228を形成してなる筒状部222を備え、上記筒状部223の端部223に、上記ガス流通口228を閉塞する形態で通気性及び撥水性を有する膜状のフィルタ224が配置されてなるものである。
【0011】
上記「ガスセンサ素子(300)」としては、特に限定されず各種ガスセンサ素子を用いることができるが、なかでも、特定ガスと接することにより抵抗変化を生じる酸化スズ等の酸化物半導体を主体とする感応層を備えるガスセンサ素子が好ましい。尚、本実施形態では、感応層を絶縁基板上に形成した素子部を配線が適宜施された支持台に配置し、支持体上にガス導入口付きの保護キャップをかぶせて構成されたガスセンサ素子300を用いており、保護キャップを内蓋部220に向けるようにして、支持台を回路基板300に面実装させることで、このガスセンサ素子300は、回路基板300と電気的に接続される。このガスセンサ素子300の構成は、特開2005−166790号公報等にて公知であるため、その詳述は省略すると共に、各図面においてもその内部構成の図示を省略する。
【0012】
上記「ケース(200)」は、ケース本体部211と、内蓋部220と、外蓋部230と、を備える。
上記「ケース本体部(211)」は、ガスセンサ素子300を収容する部位であって、ガスセンサ素子200を収容する凹形状をなす収容部211を有する。ガスセンサ素子200は、回路基板500を備え、この回路基板500上に実装して備えられる。この回路基板500には、ガスセンサ素子200以外の他の電子部品600を備えることができる。
また、ケース本体部211は、収容部211以外にも他部を備えることができる。他部としては、ブラケット部212、コネクタ部217、内蓋部220をケース本体部211に係合するための内蓋係合爪218等が挙げられる。
【0013】
上記ブラケット部212は、収容部211の外側面から外側に向かって突出されてケース本体部210を取付け場所に取り付けるための部位である。このブラケット部212は、ネジ等の取付部材を挿通するための取付孔213を備えることができる。取付孔213は、ブラケット部212の一部として形成された板状をなす板片部214の厚み方向に貫通して備えることができる。ケース本体部210を取り付け場所に取り付ける際には、この取付孔213に取付部材を挿通して行うことができる。
【0014】
また、この板片部214と収容部211とは補強部215を介して接続できる。補強部215は、収容部211の外側面側で板片部214よりも肉厚に形成されると共に板片部214側へ向けて徐々に肉薄に形成されたブラケット部212の一部である。板状の板片部214と収容部211とはこの補強部215を介することなく直接的に接合されていてもよいが、この補強部215を介することで、収容部211とブラケット部212との結合をより強固にできる。
尚、上記ケース本体部210において収容部211の外側面とブラケット部212とは接合剤を用いて接合されてなってもよく、一体成形されていてもよい。また、ブラケット部212を構成する板片部214及び補強部215についても同様である。
【0015】
また、上記補強部215には、その厚み方向に測定対象ガスを通気するための通気孔216を設けることができる。この通気孔216を備える場合は、図6に例示するように紙面に向かって左側(即ち、外蓋部230に対してケース本体部210が配置されている側)を前方(即ち、測定対象ガスの流入経路においてより上流側)に配置することができる。このように上記左側を前方に配置した場合には、上記通気孔216に測定対象ガスを通過させることで、測定対象ガス内に含まれる通気孔216を通過できない異物の通過を抑制することができる。
このブラケット部212は、中実構造としてもよいが、厚み方向に突設されたリブにより強度を担保するリブ構造とすることもできる。リブ構造とすることで、ブラケット部212の強度は十分に維持しながら、少ない材料使用によりブラケット部212を形成することができる。
【0016】
上記「内蓋部(220)」は、ケース本体部210及び外蓋部230と共にケース200を構成し、更に、ケース本体部210に装着されて収容部211を閉塞する部位である。また、この内蓋部220は天板221を有し、この天板221は、収容部211内に収容されたガスセンサ素子300に向かって突出して形成されると共に、端部223にガス流通口228を形成してなる筒状部222(図2及び図3参照)を備えている。
【0017】
筒状部222の形状は特に限定されず、筒状であればよい。筒状は、その断面形状(測定対象ガスの流通方向に対して直交する断面形状)が限定されず、円形(即ち、円筒状、円錐状など)であってもよく、四角形(即ち、四角管状、四角錐状など)であってもよく、その他の形状であってもよい。これらのうちでは円形が好ましい。即ち、円筒状又は円錐状であることが好ましい。断面形状が円形である場合には、その他の断面形状を有する場合に比べて筒状部222における測定対象ガスの筒状部222における滞留が抑制され、測定対象ガスの流通が得られ易く、ガス検知の応答性に優れたガスセンサ装置が得られる。
【0018】
また、筒状部222は、測定対象ガスの流通方向に向かって略同径である直管形状であってもよいが、ガスセンサ素子300に近い側に向かって狭窄されていることが好ましい。即ち、ガスセンサ素子300へ向かって窄まるように形成された錐形状部を有することが好ましい。この狭窄されている部分は、筒状部222の全部であってもよく、一部のみであってもよい。筒状部222がガスセンサ素子300に近い側に向かって狭窄されていることで、筒状部222内での測定対象ガスの滞留を抑制し、筒状部222まで供給された測定対象ガスをより速やかにガスセンサ素子300まで流通させることができる。また、狭窄されていない場合に比べて、狭窄されている場合には、より少ない量の測定対象ガスであっても応答性よく特定ガスの濃度変化の検知を行うことができる。
【0019】
更に、筒状部222は、フィルタ224を備える(換言すると、ガス流通口228が形成された)端部223から更に延設され、ガスセンサ素子300を囲む囲繞部225(図1、図2、図4及び図6参照)を備えることが好ましい。囲繞部225を備えることで、これを備えない場合に比べてセンサ感度及びガス検知の応答性を更に向上させることができる。囲繞部225は、ガスセンサ素子300を囲んでおればよく、囲繞部225と回路基板500との間は離間されていてもよいが、図4に示すように、回路基板500のガスセンサ素子300の実装面に当接されて、囲繞部225と回路基板500との間が遮蔽されていてもよい。
【0020】
囲繞部225の一端側は回路基板500の実装面501(回路基板500のうちガスセンサ素子300が実装された側の面)から離間されていてもよいが、その一端は実装面501に当接されていることが好ましい。このような形態を採用することで、実装面501と囲繞部225とが密着されて囲繞部225内の気密性が高まり、ガス検知の精度が向上されるからである。尚、以下では、実装面501と当接される側の囲繞部225の一端側を当接側端部2251という。
【0021】
囲繞部225が上記のように実装面501と当接されている場合、当接側端部2251は、直管円筒形状(図2及び図4参照)であってもよく、実装面に向かって狭窄された形状であってもよいが、特に実装面501に向かって裾広がりの形状(即ち、例えば、吸盤様形状など、図10及び図11参照)が好ましい。
当接側端部2251が裾広がり形状であることにより、他の形状に比べて当接側端部2251の柔軟性が向上され、当接側端部2251と実装面501との密着性をよりよくすることができる。これにより、より高い検知精度を得ることができる。また、当接側端部2251が裾広がり形状であれば、囲繞部225と実装面501との間のクリアランスにばらつきを生じていたとしても、囲繞部225と実装面501との密着を確実に得ることができる。この場合、囲繞部225と実装面501との間のばらつきを抑制するために部品の形成精度を上げるよりも安価に上記密着を得ることができる。
【0022】
また、当接側端部2251が裾広がり形状であることにより、実装面501に凹凸を有していたとしても囲繞部225をその凹凸に追従させることができるために、実装面501に対する当接側端部2251の密着性を向上させることができる。更に、使用時の温度変化による各部の熱膨張及び熱収縮による形状変化に対して上記密着を維持することができる。また、当接側端部2251が裾広がり形状であることで、実装面501との当接により囲繞部225の延設元である内蓋部220を押し上げるように生じる応力が軽減され、内蓋部220とケース本体部210との密閉性をより確実に得ることができ、検知精度を向上させることができる。
【0023】
更に、囲繞部225は、筒状部222のうち囲繞部225を除く残部と一体であることが好ましい。この囲繞部225と上記残部とが一体である形態としては、(1)囲繞部225と残部とが一体成形された形態、(2)別体に成形された囲繞部225と残部とが接着された形態、(3)別体に成形された囲繞部225と残部とが嵌合された形態、などが挙げられる。これらの形態のなかでは上記(1)の形態が好ましい。上記(2)及び(3)に比べると、部品点数が削減されて組付工数を低減できるからである。
【0024】
また、上記(1)の形態においては、囲繞部225と残部(筒状部222のうちの囲繞部225以外の部分)とは異材料からなってもよく、同材料からなってもよい。
このうち異材料からなる場合とは、囲繞部225が弾性材料からなり、残部が非弾性材料からなる場合が挙げられる。この場合、予め形成された上記残部に対してインサート成形により、囲繞部225となる材料を射出融着して一体に形成された形態が挙げられる。
一方、同材料からなる場合とは、例えば、囲繞部225及び残部が共に弾性材料からなり、一体に成形された形態が挙げられる。尚、後述するように囲繞部225を加硫ゴムから形成する場合、インサート成形により加硫ゴムからなる囲繞部225を得ることができる。
これらのうちでは、前者が好ましい。特に上記インサート成形された構造を有する場合には、筒状部222のうちの囲繞部225のみを弾性材料から形成しつつ、囲繞部225と残部との間での高い密着性を得ることができる。
【0025】
上記囲繞部225を構成する材料は特に限定されず、例えば、非弾性材料を用いることができるが、囲繞部225は上述のように弾性材料が好ましい。
また、囲繞部225が弾性材料からなる場合、弾性材料の種類は特に限定されず種々のものを用いることができる。弾性材料としては、加硫ゴム(硫黄加硫ゴム、及びパーオキサイド等を用いた非硫黄加硫ゴムの両方を含む)及び熱可塑性エラストマーを用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記加硫ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム、ニトリルゴム(例えばアクリロニトリル−ブタジエンゴム等)、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−αオレフィン−非共役ジエンゴム{エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム(即ち、EPDM等)、エチレン−ブテン−非共役ジエンゴムなど}、ポリノルボルネンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0026】
一方、上記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらの弾性材料のなかでは、特に耐熱温度が140℃以上(通常200℃以下)である耐熱弾性材料が好ましく、更には伸展油が含まれない弾性材料がより好ましく、特にSiが含まれない弾性材料が更に好ましい。このような弾性材料としては、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム(とりわけEPDM)が好ましい。
【0027】
また、上記筒状部222のガスセンサ素子300に近い側の端部223には、ガス流通口228を閉塞する形態で膜状のフィルタ224が配置される。フィルタ224は、通気性を有しつつ、水滴は通過させない撥水性を有するものであり、PTFE等の多孔質繊維構造体よりなる。また、フィルタ224は筒状部222のガスセンサ素子300に近い側の端部223に配置されることで、内蓋部220の天板221の位置に設ける場合に比べて、フィルタ224を拡散する測定対象ガスが、ガスセンサ素子300以外の部分に逃げにくく、速やかにガスセンサ素子300に到達することになるため、センサ感度及びガス検知の応答性良好に得る上で好ましい。
尚、フィルタ224の下端とガスセンサ素子300の上端との距離が2mm以下であることが、良好なガス感度及びガス検知の応答性を得る上で好ましい。
【0028】
本発明のガスセンサ装置100では、収容部211内に収容されたガスセンサ素子300よりも高さが高い他の部品(例えば、コンデンサ等の電子部品)を備える場合、この筒状部222を備えることによるセンサ感度及びガス検知の応答性の低下防止作用がより効果的に得られる。即ち、収容部211内にガスセンサ素子300より高さが高い部品が存在することによって、内蓋部220の位置をガスセンサ素子300に近づけてガスセンサ素子300とフィルタ224とを近接させようとしても、上記他の部品がガスセンサ素子300よりも高いことにより困難である(図9参照)。しかし、このままでは、測定対象ガスはフィルタ224までは誘導されるものの、その先は測定対象ガスの自然な拡散に委ねられることとなり、センサ感度及びガス検知の応答性が低下するおそれがある。
これに対して、内蓋部220の天板221とガスセンサ素子300との間は隔たっていても、内蓋部220の天板221からガスセンサ素子300側に向かって筒状部222(図2参照)を突出させ、更にはこの筒状部222のガスセンサ素子300に近い側の端部223にフィルタ224を配置することで測定対象ガスをガスセンサ素子300まで速やかに流通(拡散)させることができる。このため、ガスセンサ素子300の大きさ及び形状に関係なく、また、他の部品との大きさ及び形状の相関に関係なく、ガスセンサ装置100として優れたセンサ感度及びガス検知の応答性を得ることができる。
【0029】
上記ガスセンサ素子300よりも高さが高い他の部品を備える場合としては、ガスセンサ素子300が収容部211内に配設された回路基板500に実装されており、更に、同じ(図2及び3参照)又は異なる回路基板に実装された他の電子部品600を有し、この電子部品600の高さがガスセンサ素子300よりも高いような場合が挙げられる。例えば、ガスセンサ素子の実装状態での回路基板からの高さが5mm以下(通常0.1mm以上)であり、更に、実装状態での回路基板からの高さが5mmを超えるである他の電子部品が実装されている場合が挙げられる。
【0030】
尚、上記ケース本体部210と内蓋部220とは、両者間の密封をより確実にするためにOリング等の密封手段を介在させることができる。Oリングは、例えば、図6に例示するように、ケース本体部210の側壁端に溝部219を設け、その溝部219に、可とう性材料等からなるOリング240を配設することができる。また、内蓋部220の側壁端部に溝部を設け、その溝部にOリングを配置してもよく、更には、その他の構造によりケース本体部210及び/又は内蓋部220に係合させてもよい。
【0031】
上記「外蓋部(230)」は、内蓋部220を覆って内蓋部220の天板221の外表面との間に測定対象ガスを導く間隙400を形成する部位である。外蓋部230と内蓋部220とで形成される間隙400は、外蓋部230のガス導入口232から入った測定ガスをガス排出口233から排出させる流路の一部として機能する。
【0032】
また、外蓋部230は、内蓋部220及び外蓋部230で形成された間隙400へ向かって測定対象ガスの流れを変化させる張出部231を備えることができる。この張出部231を備えることにより、測定対象ガスを張出部231に衝突させて(内蓋部220と外蓋部230とで形成される)間隙400へと導く流路を形成できる。これにより、張出部231を備えない場合に比べて、測定対象ガスをより多く間隙400へ導入でき、間隙400における測定対象ガスの流通が促進される。
【0033】
更に、前述のように、ブラケット部212に通気孔216を備える場合には、この通気孔216と対応した位置に張出部231が配置されることが好ましい。即ち、測定対象ガスが通気孔216によって張出部231へ向けて誘導されるように、通孔216及び張出部231は対応して位置決めされていることが好ましい。これにより、通気孔216内を通過することで異物等が排除された測定対象ガスを効率よく間隙400に取り込むことができる。
【0034】
また、外蓋部230の内蓋部220の天板221に対向する内壁面には、間隙400内での測定対象ガスの流路が筒状部222を直接通過しないように、遮蔽突起234(上流側遮蔽突起234、図5、図6及び図7参照)を備えることが好ましく、更には、遮蔽突起235(下流側遮蔽突起235、図5、図6及び図7参照)を併せて備えることがより好ましい。遮蔽突起は、外蓋部230の側壁とは連設されないように配置(即ち、外蓋部230の側壁と遮蔽突起との間に測定対象ガスの流路が形成されるように配置)された上で、ガス導入口232とガス排出口233との間に直線的な流路(測定対象ガスによる流路)が形成されないように配置されている。即ち、ガス導入口232と筒状部222の外蓋部側開口面226との間の直線流路を遮蔽するように遮蔽突起234は配置されることが好ましく、ガス排出口233と筒状部222の外蓋部側開口面226との間の直線流路を遮蔽するように遮蔽突起234は配置されることが好ましい。遮蔽突起234を備えることにより、通気孔216及び張出部231においても除去できない異物(水滴など)が筒状部222へ侵入することを抑制できる。遮蔽突起235についても同様の効果を発揮である。
【0035】
遮蔽突起234及び235の形状は特に限定されないが、通常、図5に示すように柱状又は板状であることが好ましい。更に、この柱状(又は板状)の遮蔽突起234を備える場合には、遮蔽突起234はガス導入口232の開口面に対して平行に配置されてもよいが、一端が他端よりもガス排出口233に近く且つ他端が一端に対してガス導入口232に近いように配置されることが好ましい。このように上記開口面に対して非平行に配置されることで、通気口216及び張出部231で除去されずに間隙400に侵入された異物があったとしても、この異物が遮蔽突起234に衝突した後に、流路にそってガス排出口233へ効果的に排出させることができる。更に、遮蔽突起234及び遮蔽突起235を併せて備える場合には、各遮蔽突起の各一端側又は各他端側が互いに近づくように「ハ」の字形状に配置されることが好ましい。このように2つの遮蔽突起が「ハ」の字形状に配置されることで、上記のような異物が筒状部222へ侵入されることをより効果的に防止できる。
【0036】
ガスセンサ装置100では、より多くの測定対象ガスを流路内に流入させて、流路内での測定対象ガスの滞留を防止し、流路内の雰囲気をより早く交換することで、ガスセンサ装置100のガス検知の応答性を向上させることができる。しかし、測定対象ガスの流入を促すことと、筒状部222内への水滴等の異物侵入を防止することと、は相反事項となる。このため、測定対象ガスの流入を十分に確保しつつ、筒状部222内への異物の侵入を防止する必要がある。本発明のガスセンサ装置100では、通気孔216、張出部231、遮蔽突起234及び235などの異物侵入を防止するための構成を備えつつ、これらを伴ってケース内に流路(通気孔216からガス排出口233まで等)を形成することで、十分な測定対象ガスの流通を確保でき、且つ筒状部222内への異物の侵入を防止することができる。
【0037】
本発明のガスセンサ装置100を構成する各部はどのような材料から構成されてもよく、特に限定されないが、ケース本体部210、内蓋部220及び外蓋部230は、ポリブチレンテレフタレート樹脂及びABS樹脂、ナイロン樹脂等の各種樹脂に対してガラス繊維(例えば、材料全体の10〜40質量%)を混入した材料からなることができる。また、Oリング240には各種エラストマー素材を用いることができる。本発明のガスセンサ装置を自動車に搭載して用いる場合にはフロントグリル等の熱源である内燃機関の近傍に配置されることがあるため、上記各々部位は、高い強度に加えて高い耐熱性を有することが好ましい。
【0038】
本発明のガスセンサ装置100(詳細には、ガスセンサ素子300の感応膜)で検知する測定対象ガス中の特定ガスとしては、各種の還元性ガス又は酸化性ガスが挙げられる。
還元性ガスとしては、炭化水素(自動車排ガス内成分、LPG、都市ガス、天然ガス、メタンガス、ハロゲン化炭化水素等)、一酸化炭素等が挙げられる。一方、酸化性ガスとしては、窒素酸化物(いわゆるNOx)等が挙げられる。
ガスセンサ素子300の感応膜を酸化物半導体にて形成した場合には、酸化物半導体上に設ける触媒の材質を適宜調整することで、測定対象ガス中の対象となる還元性ガスに選択的に感応させたり、測定対象ガス中の対象となる酸化性ガスに選択的に感応させたりすることができる。それより、本発明に用いるガスセンサ素子300としては、酸化性ガスに選択的に反応するように構成された感応膜を有する素子部と、還元性ガスに選択的に反応するように構成された感応膜を有する素子部を2つ備えるものであってもよいし、どちらか一方を有するものであってもよい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明のガスセンサ装置について具体的な実施形態を用いて説明する。
ガスセンサ装置100は、酸化性ガスに選択的に反応するように構成された感応膜を有する素子部と、還元性ガスに選択的に反応するように構成された感応膜を有する素子部の両者を備えるガスセンサ素子300と、これを内蔵するケース200と、を備える。また、ケース200は、ケース本体部210、内蓋部220及び外蓋部230を備える。ケース本体部210は、幅約30mm×長さ約45mm×深さ約20mmに形成された凹形状をなす収容部211とブラケット部212とコネクタ部217とが樹脂を用いて一体成形されてなる。
【0040】
そして、収容部211内には、回路基板係合爪510によって固定された回路基板500を備える。回路基板500には、ガスセンサ素子300及びガスセンサ素子300よりも高さの高いコンデンサ等の他の電子部品600が実装されている。回路基板500の配線はコネクタ部217に設けられる図示しない端子ピンと適宜電気的に接続されており、コネクタ部217と接続される外部機器へ回路基板500に実装された電子部品にて処理されたガス検知に関するデータを出力することができるようになっている。
【0041】
更に、ケース本体部210の側壁端部には溝部219が形成されており、この溝部219にはOリング240が填め込まれており、内蓋部220と溝部219との間でOリング240を挟み込むことで、収容部211は内蓋部220によって、フィルタ膜224以外の部分において閉塞される。
【0042】
また、ブラケット部212には、板片部214に2つ開口された取付孔213を備える。そして、この取付孔213にネジを挿通して所定の場所へねじ止めされることとなる。
更に、板片部214と収容部211とは補強部215を介して一体成形されている。補強部215は、収容部211の外側面側で板片部214よりも肉厚に形成されると共に板片部214側へ向けて徐々に肉薄に形成されている。更に、板片部214及び補強部215は図6に示すように、測定対象ガスの侵入方向側は格子状に形成されたリブ250を備えるリブ構造となっている。また、補強部215には、図5及び図7に示すように、厚み方向に測定対象ガスを流通させるための通気孔216を2つ備えている。
【0043】
更に、内蓋部220は、天板221を有し、この天板221に開孔された開口孔周縁226(筒状部の外蓋部側開口面)から収容部211側(ガスセンサ素子300側)に向けて延設された円錐台形状(狭窄された形状である)の筒状部222を備える。筒状部222は、ガスセンサ素子300を備える側の端部223にガス流通口228が形成され、通気性及び撥水性を有する膜状をなしたPTFE製のフィルタ224がガス流通口228を閉塞する形態で端部223に溶着されている。更に、筒状部222の端部223の外周縁からはガスセンサ素子300側へ更に円筒形状に延設され、ガスセンサ素子300を取り囲むように形成された囲繞部225を備える。また、この内蓋部220は、その外側面に形成された合計10ヶ所の係合爪260と、ケース本体部210が備える内蓋部係合爪218とが係合され、前記Oリング240の作用によって内蓋部220は収容部211を閉塞している。
【0044】
また、外蓋部230は係合爪260を合計2ヶ所に備え、内蓋部220にこれと対応して形成されている外蓋部係合爪227と係合されて、内蓋部220と外蓋部230とは、高さ約2mmの間隙400を介して相互に固定されている。そして、固定された際に図6に示すように、ガス導入口232とガス排出口233とが形成されるように、当該部分には側壁を有さない構造となっている。また、ブラケット部212の通気孔216を通過した測定対象ガスの流路を遮る位置に張出部231が配置されている。更に、張出部231には周側壁236が形成されている。
【0045】
更に、外蓋部230の内蓋部220の天板221に対向する側の内壁面には、各々板状に成形された遮蔽突起234(上流側遮蔽突起234)及び遮蔽突起235(下流側遮蔽突起235)を備えている。これらの遮蔽突起234、235は、外蓋部230の側壁とは連設されないように配置された上で、ガス導入口232とガス排出口233との間に直線的な流路が形成されないように配置されている。更に、各遮蔽突起234、235は一端が他端よりもガス排出口233に近く且つ他端が一端に対してガス導入口232に近いように配置されて互いにハの字形状となるように配置されている。
【0046】
上記ガスセンサ装置100は、ブラケット部212の板片部214に開口された2つの取付孔213を挿通されたネジにより、自動車のフロントグリルの内側に図6に示す測定対象ガスの流路AFが形成されるように、紙面左側を前方として配設される。
そして、自動車の走行に伴い、フロントグリルを介して車体内に取り込まれた大気(測定対象ガス)は、ガスセンサ装置100内の通気孔216から流路AFを通り、ガス排出口233へと排出される。
より具体的には、通気孔216を通過した大気(測定対象ガス)は、外蓋部230の張出部231に突き当たり、張出部231及びその周側壁236によって約90°の角度で流路変更されて、ガス導入口232を通って、内蓋部220と外蓋部230との間隙400へと誘導される。更に、間隙400内では、遮蔽突起234に突き当たって、図5に示すように、遮蔽突起234を迂回するように、開口面226へと向い、筒状部222内及びフィルタ224を介して大気がガスセンサ素子300へと拡散される。その後、大気は筒状部222内において次々と流入される大気に押し出されるようにして、ガス排出口233から排出されることとなる。
【0047】
そして、大気に含まれる特定ガスの濃度変化に基づいてガスセンサ素子300から信号(電圧信号)が出力され、回路基板500上の各電子部品によって電算処理され、濃度変化の情報(具体的には、特定ガスによる測定対象ガスの汚染度合を示した情報)が外部回路(ECU等)にコネクタ部217を介して出力される。この検出結果は、自動車の空調制御装置における外気導入又は内気循環を選択するためのフラップの開閉選択の選択条件として利用される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、センサ関連分野において広く利用される。特に自動車関連分野において好適である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のガスセンサ装置の一例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明のガスセンサ装置の一例を示す断面斜視図である。
【図3】本発明のガスセンサ装置の他例を示す断面斜視図である。
【図4】筒状部を拡大して説明する部分断面図である。
【図5】本発明のガスセンサ装置の一例を示す斜視図である。
【図6】本発明のガスセンサ装置の一例を示す断面図である。
【図7】本発明のガスセンサ装置のケースを分解して示す平面図である。
【図8】従来例のガスセンサ装置の一例を示す断面斜視図である。
【図9】参考例のガスセンサ装置の一例を示す断面斜視図である。
【図10】本発明のガスセンサ装置の他例を示す断面図である。
【図11】本発明のガスセンサ装置の他例を示す断面斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
100:ガスセンサ装置、
200;ケース、
210;ケース本体部、211;収容部、212;ブラケット部、213;取付孔、214;板片部、215;補強部、216;通気孔、217;コネクタ部、218;内蓋部係合爪、219;溝部、
220;内蓋部、221;天板、222;筒状部、223;素子に近い側の端部、224;フィルタ、225;囲繞部、2251;囲繞部の当接側端部、226;筒状部の外蓋部側開口面、227;外蓋部係合爪、228;ガス流通口、
230;外蓋部、231;張出部、232;ガス導入口、233;ガス排出口、234及び235;遮蔽突起、236;周側壁(張出部の周側壁)、
240;Oリング、
250;リブ、
260;係合爪、
300;ガスセンサ素子、
400;間隙、
500;回路基板、501;実装面
510;回路基板係合爪、
600;他の電子部品。
【技術分野】
【0001】
本発明はガスセンサ装置に関する。更に詳しくは、測定対象ガス中の特定ガスを検出及び/又は測定対象ガス中の特定ガスの濃度変化を検知するガスセンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ケース内にガスセンサ素子を収容し、そのケース内に測定対象となる測定対象ガスを流通させて、測定対象ガス中の特定ガスを検出するガスセンサ装置が知られている。
例えば、このガスセンサ装置は、自動車の車両内に外気を取り入れるか、内気を循環させるかを制御する空調制御装置等に接続されて利用に供される。この用途においては、ガスセンサ装置は、例えば、自動車のフロントグリルの内側等に取り付けられ、フロントグリルを通った外気(測定対象ガス)をケース内に誘導し、流路に従ってガスセンサ素子まで到達させて特定ガスの濃度変化の検出を行い、その後、排出口からケース外に外気を排出して利用される。
そして、このガスセンサ装置としては、ガスセンサ素子を収容するケース本体と、ケース本体部に装着されて収容部を閉塞する内蓋部と、内蓋部を覆う外蓋部を有するケースを備えた構成のもの、具体的には下記特許文献1及び特許文献2に開示されたものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−341348号公報
【特許文献2】特開2003−344339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなガスセンサ装置では、内部に収容されたガスセンサ素子の形状及び大きさによってセンサ感度及び応答性等が変化するおそれがあることが分かった。即ち、ケース本体部内に収容されるガスセンサ素子と内蓋の測定対象ガスを通気させるガス流通口を覆うフィルタとの間の距離が隔たった場合には、フィルタを拡散した測定対象ガスが速やかにガスセンサ素子に到達しにくく、センサ感度及びガス検知の応答性が低下するおそれがあることが分かった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ガスセンサ素子の形状及び大きさによるセンサ感度及びガス検知の応答性等への影響を抑制できるガスセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ガスセンサ素子の形状及び大きさによるセンサ感度及び応答性等への影響を抑制できるガスセンサ装置について検討を行った。その結果、例えば、図8(従来例)に示すように、ガスセンサ素子300(ガスセンサ素子300の内部構成については図示を省略)の高さが高く、内蓋部220のガス流通口を覆うフィルタ224との距離が近接している場合には、十分なセンサ感度及びガス検知の応答性が得られる。しかし、例えば、図9(参考例)に示すように、ガスセンサ素子300の高さが低く、内蓋部220のガス流通口を覆うフィルタ224との距離が離間された場合にはセンサ感度及びガス検知の応答性等が低下する傾向があることが分かった。
【0006】
しかし、高さの低いガスセンサ素子300に対応してケース本体部210自体の高さを低く形成したり、ケース本体部210に係合される内蓋部220の位置を相対的に低く抑えたりすることは、種々の条件から困難である。即ち、例えば、図9に例示するように、回路基板500上に他の電子部品600を備え、その電子部品600の高さがガスセンサ素子300よりも高いために、内蓋部220の位置を低下させることができない場合や、同じケース本体部210を用いて異なる(素子高さが異なる)2種以上のガスセンサ素子に対応させたい場合や、同じ製造ラインにおいて異なる(素子高さが異なる)2種以上のガスセンサ素子を流し、2種以上のガスセンサ装置を製造する場合等では、ケース本体部210の収容部211の形状を設計変更することができない。
そこで、本発明者らは、これらの状況にも対応できるガスセンサ装置について、鋭意検討を行った。その結果、ケース本体部に収容されたガスセンサ素子に向かって突出するように形成され、測定対象ガスをガスセンサ素子まで導くガス流通口が形成された筒状部を内蓋部の天板に形成することで上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は以下に示す通りである。
(1)ガスセンサ素子をケース内に収容して備え、且つ測定対象ガス中の特定ガスを検出及び/又は該特定ガスの濃度変化を検知するガスセンサ装置であって、
該ケースは、該ガスセンサ素子を収容している凹形状をなす収容部を有するケース本体部と、
天板を有すると共に該ケース本体部に装着されて該収容部を閉塞している内蓋部と、
該内蓋部を覆って該内蓋部の該天板の外表面との間に該測定対象ガスを導く間隙を形成している外蓋部と、を備え、
該内蓋部の該天板は、該収容部内に収容された該ガスセンサ素子に向かって突出して形成されると共に、該ガスセンサ素子に近い側の端部に該測定対象ガスを該ガスセンサ素子まで導くガス流通口を形成してなる筒状部を備え、
前記筒状部内に、前記通気口を閉塞する形態で通気性及び撥水性を有するフィルタが配置されていることを特徴とするガスセンサ装置。
(2)上記筒状部は、上記ガス流通口が形成された上記端部から更に延設されて、上記ガスセンサ素子を囲う囲繞部を備える上記(1)に記載のガスセンサ装置。
(3)上記ガスセンサ素子は、上記収容部内に収容された回路基板上に実装されており、
上記囲繞部は、弾性材料からなり且つ一端側が該回路基板の実装面に当接されている上記(1)又は(2)に記載のガスセンサ装置。
(4)上記筒状部は、上記ガスセンサ素子に近い側に向かって狭窄されている上記(1)乃至(3)のうちのいずれかに記載のガスセンサ装置。
(5)上記ケース本体部は、上記収容部の外側面から外側に向かって突出されて該ケース本体部を取付け場所に取り付けるためのブラケット部を有し、
該ブラケット部は、取付部材を挿通するための取付孔が厚み方向に形成された板状をなす板片部と、該収容部の該外側面及び該板片部を接続し且つ該外側面側で該板片部よりも肉厚に形成されると共に該板片部側へ向けて徐々に肉薄に形成された補強部と、を有し、該補強部には、その厚み方向に該測定対象ガスを通気するための通気孔が形成されており、
上記外蓋部は、該ブラケット部の該通気孔と対応する位置に、該通気孔内を通過してきた該測定対象ガスの流れを遮り且つ該内蓋部及び該外蓋部で形成された上記間隙へ向かって該測定対象ガスの流れを変化させる張出部を備えている上記(1)乃至(4)のうちのいずれかに記載のガスセンサ装置。
(6)上記ガスセンサ素子は、上記収容部内に収容された回路基板上に実装されており、
該回路基板は、該ガスセンサ素子より高さが高い他の電子部品を更に備え、上記筒状部は、上記端部が上記電子部品の高さよりも低位に配置されるように前記内蓋部の前記天板から突出している上記(1)乃至(5)のうちのいずれかに記載のガスセンサ装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガスセンサ装置によれば、内蓋(220)の天板(221)にガスセンサ素子(300)へ向かって突出したガス流通口付きの筒状部(222)を設け、この筒状部の端部にガス流通口を覆うフィルタを配置したため、この筒状部(222)を介して測定対象ガスをガスセンサ素子(300)まで確実に、かつ速やかに流通させることができるようになり、ガスセンサ素子の形状及び大きさ等によってセンサ感度及びガス検知の応答性が影響を受けることを抑制できる。
筒状部(222)がガスセンサ素子(300)を囲う囲繞部(225)を備える場合は、囲繞部(225)を備えない場合に比べて、より速やかにフィルタを通過(拡散)した測定対象ガスをガスセンサ素子(300)に到達させることができる。従って、ガスセンサ素子の形状及び大きさ等によってセンサ感度及びガス検知の応答性が影響を受けることをより効果的に抑制できる。
ガスセンサ素子(300)が収容部(211)内に収容された回路基板(500)上に実装され、囲繞部(225)が弾性材料からなり且つ囲繞部(225)の一端側が回路基板(500)の実装面に当接されている場合は、回路基板(500)と囲繞部(225)との密着性を向上させることができ、囲繞部内の気密性を高め、より高い検出精度を得ることができる。
筒状部(222)がガスセンサ素子(300)に近い側に向かって狭窄されている場合は、狭窄されていない場合に比べて、より小さく的を絞って効果的に、かつ速やかに測定対象ガスをガスセンサ素子(300)まで流通させることができる。従って、ガスセンサ素子の形状及び大きさ等によってセンサ感度及びガス検知の応答性が影響を受けることを効果的に抑制できる。また、狭窄されていない場合に比べて、より少ない量の測定対象ガスで応答性よく特定ガスの検知を行うことができる。
ブラケット部(212)の補強部(215)に測定対象ガスを通気するための通気孔(216)を有し、外蓋部(230)が測定対象ガスの流れを遮り且つ間隙(400)へ向かって流れを変化させる張出部(231)を備える場合は、測定対象ガスは、ブラケット部の通気孔(216)内を経由して、張出部(231)に突き当たり、内蓋部(220)と外蓋部(230)とで形成された間隙(400)へ向かって流路変更されて流通される。これにより、測定対象ガス中に異物が含まれたとしても、通気口(216)及び張出部(231)を通過できない大きさ及び形状の異物は、通気口(216)及び張出部(231)から侵入できず、異物がガスセンサ装置(100)内へ到達することを抑制することができる。特にガスセンサ装置(100)が車両前方部に装着される場合には、走行中に流入される測定対象ガスに雨粒及び砂粒等の異物が含まれる場合であってもこれらの異物のガスセンサ装置(100)内への侵入を抑制できる。この結果、測定対象ガス中に含まれる異物が筒状部内に滞留したり、異物によりフィルタが損傷したりするのを有効に防ぐことができる。
回路基板(500)にガスセンサ素子(300)より高さが高い他の電子部品(600)を備える場合、筒状部(222)を備えることによる効果をより得やすい。内蓋部の天板(221)の高さを他の電子部品(600)に合わせて高くすると、天板(221)からガスセンサ素子(300)までの間に空間が形成されて両者間が隔たり、測定対象ガスがフィルタ(224)を介して収容部(211)内に拡散されて、センサ感度及び応答性等が低下するおそれがある。これに対して、自身の端部(223)が電子部品(600)の高さよりも低位となるように筒状部(222)を内蓋部の天板(221)に設けることで、フィルタ(224)を拡散した測定対象ガスが意図しない場所へまで拡散(流通)されることを防止し、より確実にガスセンサ素子(300)に測定対象ガスを供給できる。このため、センサ感度及び応答性等を他の電子部品(600)の形状及び大きさに影響されることなく維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のガスセンサ装置を図1〜7を参照して説明する。
図1は本発明のガスセンサ装置の一例を示す分解斜視図である。また、図2は本発明のガスセンサ装置の一例を示す断面斜視図であり、図5におけるA−A’断面に相当する。更に、図3は本発明のガスセンサ装置の他例を示す断面斜視図であり、図5におけるA−A’断面に相当する。また、図4は筒状部を拡大して説明する部分断面図である。図5は本発明のガスセンサ装置の一例を示す斜視図である。図6は本発明のガスセンサ装置の一例を示す断面図であり、図5におけるB−B’断面に相当する。図7は本発明のガスセンサ装置のケースを分解して示す平面図である。
【0010】
ガスセンサ装置100は、回路基板500上に実装されたガスセンサ素子300をケース200内に収容して備え、且つ測定対象ガス中の特定ガスの濃度変化を検知するガスセンサ装置であって、
該ケース200は、該ガスセンサ素子を収容している凹形状をなす収容部211を有するケース本体部210と、
天板221を有すると共に該ケース本体部210に装着されて該収容部211を閉塞している内蓋部220と、
該内蓋部220を覆って該内蓋部220の該天板221の外表面との間に該測定対象ガスを導く間隙400を形成している外蓋部230と、を備え、
該内蓋部220の該天板221は、該収容部211内に収容された該ガスセンサ素子300に向かって突出して形成されると共に、該ガスセンサ素子300に近い側の端部(底部)223に該測定対象ガスを該ガスセンサ素子300まで導くガス流通口228を形成してなる筒状部222を備え、上記筒状部223の端部223に、上記ガス流通口228を閉塞する形態で通気性及び撥水性を有する膜状のフィルタ224が配置されてなるものである。
【0011】
上記「ガスセンサ素子(300)」としては、特に限定されず各種ガスセンサ素子を用いることができるが、なかでも、特定ガスと接することにより抵抗変化を生じる酸化スズ等の酸化物半導体を主体とする感応層を備えるガスセンサ素子が好ましい。尚、本実施形態では、感応層を絶縁基板上に形成した素子部を配線が適宜施された支持台に配置し、支持体上にガス導入口付きの保護キャップをかぶせて構成されたガスセンサ素子300を用いており、保護キャップを内蓋部220に向けるようにして、支持台を回路基板300に面実装させることで、このガスセンサ素子300は、回路基板300と電気的に接続される。このガスセンサ素子300の構成は、特開2005−166790号公報等にて公知であるため、その詳述は省略すると共に、各図面においてもその内部構成の図示を省略する。
【0012】
上記「ケース(200)」は、ケース本体部211と、内蓋部220と、外蓋部230と、を備える。
上記「ケース本体部(211)」は、ガスセンサ素子300を収容する部位であって、ガスセンサ素子200を収容する凹形状をなす収容部211を有する。ガスセンサ素子200は、回路基板500を備え、この回路基板500上に実装して備えられる。この回路基板500には、ガスセンサ素子200以外の他の電子部品600を備えることができる。
また、ケース本体部211は、収容部211以外にも他部を備えることができる。他部としては、ブラケット部212、コネクタ部217、内蓋部220をケース本体部211に係合するための内蓋係合爪218等が挙げられる。
【0013】
上記ブラケット部212は、収容部211の外側面から外側に向かって突出されてケース本体部210を取付け場所に取り付けるための部位である。このブラケット部212は、ネジ等の取付部材を挿通するための取付孔213を備えることができる。取付孔213は、ブラケット部212の一部として形成された板状をなす板片部214の厚み方向に貫通して備えることができる。ケース本体部210を取り付け場所に取り付ける際には、この取付孔213に取付部材を挿通して行うことができる。
【0014】
また、この板片部214と収容部211とは補強部215を介して接続できる。補強部215は、収容部211の外側面側で板片部214よりも肉厚に形成されると共に板片部214側へ向けて徐々に肉薄に形成されたブラケット部212の一部である。板状の板片部214と収容部211とはこの補強部215を介することなく直接的に接合されていてもよいが、この補強部215を介することで、収容部211とブラケット部212との結合をより強固にできる。
尚、上記ケース本体部210において収容部211の外側面とブラケット部212とは接合剤を用いて接合されてなってもよく、一体成形されていてもよい。また、ブラケット部212を構成する板片部214及び補強部215についても同様である。
【0015】
また、上記補強部215には、その厚み方向に測定対象ガスを通気するための通気孔216を設けることができる。この通気孔216を備える場合は、図6に例示するように紙面に向かって左側(即ち、外蓋部230に対してケース本体部210が配置されている側)を前方(即ち、測定対象ガスの流入経路においてより上流側)に配置することができる。このように上記左側を前方に配置した場合には、上記通気孔216に測定対象ガスを通過させることで、測定対象ガス内に含まれる通気孔216を通過できない異物の通過を抑制することができる。
このブラケット部212は、中実構造としてもよいが、厚み方向に突設されたリブにより強度を担保するリブ構造とすることもできる。リブ構造とすることで、ブラケット部212の強度は十分に維持しながら、少ない材料使用によりブラケット部212を形成することができる。
【0016】
上記「内蓋部(220)」は、ケース本体部210及び外蓋部230と共にケース200を構成し、更に、ケース本体部210に装着されて収容部211を閉塞する部位である。また、この内蓋部220は天板221を有し、この天板221は、収容部211内に収容されたガスセンサ素子300に向かって突出して形成されると共に、端部223にガス流通口228を形成してなる筒状部222(図2及び図3参照)を備えている。
【0017】
筒状部222の形状は特に限定されず、筒状であればよい。筒状は、その断面形状(測定対象ガスの流通方向に対して直交する断面形状)が限定されず、円形(即ち、円筒状、円錐状など)であってもよく、四角形(即ち、四角管状、四角錐状など)であってもよく、その他の形状であってもよい。これらのうちでは円形が好ましい。即ち、円筒状又は円錐状であることが好ましい。断面形状が円形である場合には、その他の断面形状を有する場合に比べて筒状部222における測定対象ガスの筒状部222における滞留が抑制され、測定対象ガスの流通が得られ易く、ガス検知の応答性に優れたガスセンサ装置が得られる。
【0018】
また、筒状部222は、測定対象ガスの流通方向に向かって略同径である直管形状であってもよいが、ガスセンサ素子300に近い側に向かって狭窄されていることが好ましい。即ち、ガスセンサ素子300へ向かって窄まるように形成された錐形状部を有することが好ましい。この狭窄されている部分は、筒状部222の全部であってもよく、一部のみであってもよい。筒状部222がガスセンサ素子300に近い側に向かって狭窄されていることで、筒状部222内での測定対象ガスの滞留を抑制し、筒状部222まで供給された測定対象ガスをより速やかにガスセンサ素子300まで流通させることができる。また、狭窄されていない場合に比べて、狭窄されている場合には、より少ない量の測定対象ガスであっても応答性よく特定ガスの濃度変化の検知を行うことができる。
【0019】
更に、筒状部222は、フィルタ224を備える(換言すると、ガス流通口228が形成された)端部223から更に延設され、ガスセンサ素子300を囲む囲繞部225(図1、図2、図4及び図6参照)を備えることが好ましい。囲繞部225を備えることで、これを備えない場合に比べてセンサ感度及びガス検知の応答性を更に向上させることができる。囲繞部225は、ガスセンサ素子300を囲んでおればよく、囲繞部225と回路基板500との間は離間されていてもよいが、図4に示すように、回路基板500のガスセンサ素子300の実装面に当接されて、囲繞部225と回路基板500との間が遮蔽されていてもよい。
【0020】
囲繞部225の一端側は回路基板500の実装面501(回路基板500のうちガスセンサ素子300が実装された側の面)から離間されていてもよいが、その一端は実装面501に当接されていることが好ましい。このような形態を採用することで、実装面501と囲繞部225とが密着されて囲繞部225内の気密性が高まり、ガス検知の精度が向上されるからである。尚、以下では、実装面501と当接される側の囲繞部225の一端側を当接側端部2251という。
【0021】
囲繞部225が上記のように実装面501と当接されている場合、当接側端部2251は、直管円筒形状(図2及び図4参照)であってもよく、実装面に向かって狭窄された形状であってもよいが、特に実装面501に向かって裾広がりの形状(即ち、例えば、吸盤様形状など、図10及び図11参照)が好ましい。
当接側端部2251が裾広がり形状であることにより、他の形状に比べて当接側端部2251の柔軟性が向上され、当接側端部2251と実装面501との密着性をよりよくすることができる。これにより、より高い検知精度を得ることができる。また、当接側端部2251が裾広がり形状であれば、囲繞部225と実装面501との間のクリアランスにばらつきを生じていたとしても、囲繞部225と実装面501との密着を確実に得ることができる。この場合、囲繞部225と実装面501との間のばらつきを抑制するために部品の形成精度を上げるよりも安価に上記密着を得ることができる。
【0022】
また、当接側端部2251が裾広がり形状であることにより、実装面501に凹凸を有していたとしても囲繞部225をその凹凸に追従させることができるために、実装面501に対する当接側端部2251の密着性を向上させることができる。更に、使用時の温度変化による各部の熱膨張及び熱収縮による形状変化に対して上記密着を維持することができる。また、当接側端部2251が裾広がり形状であることで、実装面501との当接により囲繞部225の延設元である内蓋部220を押し上げるように生じる応力が軽減され、内蓋部220とケース本体部210との密閉性をより確実に得ることができ、検知精度を向上させることができる。
【0023】
更に、囲繞部225は、筒状部222のうち囲繞部225を除く残部と一体であることが好ましい。この囲繞部225と上記残部とが一体である形態としては、(1)囲繞部225と残部とが一体成形された形態、(2)別体に成形された囲繞部225と残部とが接着された形態、(3)別体に成形された囲繞部225と残部とが嵌合された形態、などが挙げられる。これらの形態のなかでは上記(1)の形態が好ましい。上記(2)及び(3)に比べると、部品点数が削減されて組付工数を低減できるからである。
【0024】
また、上記(1)の形態においては、囲繞部225と残部(筒状部222のうちの囲繞部225以外の部分)とは異材料からなってもよく、同材料からなってもよい。
このうち異材料からなる場合とは、囲繞部225が弾性材料からなり、残部が非弾性材料からなる場合が挙げられる。この場合、予め形成された上記残部に対してインサート成形により、囲繞部225となる材料を射出融着して一体に形成された形態が挙げられる。
一方、同材料からなる場合とは、例えば、囲繞部225及び残部が共に弾性材料からなり、一体に成形された形態が挙げられる。尚、後述するように囲繞部225を加硫ゴムから形成する場合、インサート成形により加硫ゴムからなる囲繞部225を得ることができる。
これらのうちでは、前者が好ましい。特に上記インサート成形された構造を有する場合には、筒状部222のうちの囲繞部225のみを弾性材料から形成しつつ、囲繞部225と残部との間での高い密着性を得ることができる。
【0025】
上記囲繞部225を構成する材料は特に限定されず、例えば、非弾性材料を用いることができるが、囲繞部225は上述のように弾性材料が好ましい。
また、囲繞部225が弾性材料からなる場合、弾性材料の種類は特に限定されず種々のものを用いることができる。弾性材料としては、加硫ゴム(硫黄加硫ゴム、及びパーオキサイド等を用いた非硫黄加硫ゴムの両方を含む)及び熱可塑性エラストマーを用いることができる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記加硫ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム、ニトリルゴム(例えばアクリロニトリル−ブタジエンゴム等)、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−αオレフィン−非共役ジエンゴム{エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム(即ち、EPDM等)、エチレン−ブテン−非共役ジエンゴムなど}、ポリノルボルネンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム、エピクロロヒドリンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ポリウレタンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0026】
一方、上記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
これらの弾性材料のなかでは、特に耐熱温度が140℃以上(通常200℃以下)である耐熱弾性材料が好ましく、更には伸展油が含まれない弾性材料がより好ましく、特にSiが含まれない弾性材料が更に好ましい。このような弾性材料としては、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム(とりわけEPDM)が好ましい。
【0027】
また、上記筒状部222のガスセンサ素子300に近い側の端部223には、ガス流通口228を閉塞する形態で膜状のフィルタ224が配置される。フィルタ224は、通気性を有しつつ、水滴は通過させない撥水性を有するものであり、PTFE等の多孔質繊維構造体よりなる。また、フィルタ224は筒状部222のガスセンサ素子300に近い側の端部223に配置されることで、内蓋部220の天板221の位置に設ける場合に比べて、フィルタ224を拡散する測定対象ガスが、ガスセンサ素子300以外の部分に逃げにくく、速やかにガスセンサ素子300に到達することになるため、センサ感度及びガス検知の応答性良好に得る上で好ましい。
尚、フィルタ224の下端とガスセンサ素子300の上端との距離が2mm以下であることが、良好なガス感度及びガス検知の応答性を得る上で好ましい。
【0028】
本発明のガスセンサ装置100では、収容部211内に収容されたガスセンサ素子300よりも高さが高い他の部品(例えば、コンデンサ等の電子部品)を備える場合、この筒状部222を備えることによるセンサ感度及びガス検知の応答性の低下防止作用がより効果的に得られる。即ち、収容部211内にガスセンサ素子300より高さが高い部品が存在することによって、内蓋部220の位置をガスセンサ素子300に近づけてガスセンサ素子300とフィルタ224とを近接させようとしても、上記他の部品がガスセンサ素子300よりも高いことにより困難である(図9参照)。しかし、このままでは、測定対象ガスはフィルタ224までは誘導されるものの、その先は測定対象ガスの自然な拡散に委ねられることとなり、センサ感度及びガス検知の応答性が低下するおそれがある。
これに対して、内蓋部220の天板221とガスセンサ素子300との間は隔たっていても、内蓋部220の天板221からガスセンサ素子300側に向かって筒状部222(図2参照)を突出させ、更にはこの筒状部222のガスセンサ素子300に近い側の端部223にフィルタ224を配置することで測定対象ガスをガスセンサ素子300まで速やかに流通(拡散)させることができる。このため、ガスセンサ素子300の大きさ及び形状に関係なく、また、他の部品との大きさ及び形状の相関に関係なく、ガスセンサ装置100として優れたセンサ感度及びガス検知の応答性を得ることができる。
【0029】
上記ガスセンサ素子300よりも高さが高い他の部品を備える場合としては、ガスセンサ素子300が収容部211内に配設された回路基板500に実装されており、更に、同じ(図2及び3参照)又は異なる回路基板に実装された他の電子部品600を有し、この電子部品600の高さがガスセンサ素子300よりも高いような場合が挙げられる。例えば、ガスセンサ素子の実装状態での回路基板からの高さが5mm以下(通常0.1mm以上)であり、更に、実装状態での回路基板からの高さが5mmを超えるである他の電子部品が実装されている場合が挙げられる。
【0030】
尚、上記ケース本体部210と内蓋部220とは、両者間の密封をより確実にするためにOリング等の密封手段を介在させることができる。Oリングは、例えば、図6に例示するように、ケース本体部210の側壁端に溝部219を設け、その溝部219に、可とう性材料等からなるOリング240を配設することができる。また、内蓋部220の側壁端部に溝部を設け、その溝部にOリングを配置してもよく、更には、その他の構造によりケース本体部210及び/又は内蓋部220に係合させてもよい。
【0031】
上記「外蓋部(230)」は、内蓋部220を覆って内蓋部220の天板221の外表面との間に測定対象ガスを導く間隙400を形成する部位である。外蓋部230と内蓋部220とで形成される間隙400は、外蓋部230のガス導入口232から入った測定ガスをガス排出口233から排出させる流路の一部として機能する。
【0032】
また、外蓋部230は、内蓋部220及び外蓋部230で形成された間隙400へ向かって測定対象ガスの流れを変化させる張出部231を備えることができる。この張出部231を備えることにより、測定対象ガスを張出部231に衝突させて(内蓋部220と外蓋部230とで形成される)間隙400へと導く流路を形成できる。これにより、張出部231を備えない場合に比べて、測定対象ガスをより多く間隙400へ導入でき、間隙400における測定対象ガスの流通が促進される。
【0033】
更に、前述のように、ブラケット部212に通気孔216を備える場合には、この通気孔216と対応した位置に張出部231が配置されることが好ましい。即ち、測定対象ガスが通気孔216によって張出部231へ向けて誘導されるように、通孔216及び張出部231は対応して位置決めされていることが好ましい。これにより、通気孔216内を通過することで異物等が排除された測定対象ガスを効率よく間隙400に取り込むことができる。
【0034】
また、外蓋部230の内蓋部220の天板221に対向する内壁面には、間隙400内での測定対象ガスの流路が筒状部222を直接通過しないように、遮蔽突起234(上流側遮蔽突起234、図5、図6及び図7参照)を備えることが好ましく、更には、遮蔽突起235(下流側遮蔽突起235、図5、図6及び図7参照)を併せて備えることがより好ましい。遮蔽突起は、外蓋部230の側壁とは連設されないように配置(即ち、外蓋部230の側壁と遮蔽突起との間に測定対象ガスの流路が形成されるように配置)された上で、ガス導入口232とガス排出口233との間に直線的な流路(測定対象ガスによる流路)が形成されないように配置されている。即ち、ガス導入口232と筒状部222の外蓋部側開口面226との間の直線流路を遮蔽するように遮蔽突起234は配置されることが好ましく、ガス排出口233と筒状部222の外蓋部側開口面226との間の直線流路を遮蔽するように遮蔽突起234は配置されることが好ましい。遮蔽突起234を備えることにより、通気孔216及び張出部231においても除去できない異物(水滴など)が筒状部222へ侵入することを抑制できる。遮蔽突起235についても同様の効果を発揮である。
【0035】
遮蔽突起234及び235の形状は特に限定されないが、通常、図5に示すように柱状又は板状であることが好ましい。更に、この柱状(又は板状)の遮蔽突起234を備える場合には、遮蔽突起234はガス導入口232の開口面に対して平行に配置されてもよいが、一端が他端よりもガス排出口233に近く且つ他端が一端に対してガス導入口232に近いように配置されることが好ましい。このように上記開口面に対して非平行に配置されることで、通気口216及び張出部231で除去されずに間隙400に侵入された異物があったとしても、この異物が遮蔽突起234に衝突した後に、流路にそってガス排出口233へ効果的に排出させることができる。更に、遮蔽突起234及び遮蔽突起235を併せて備える場合には、各遮蔽突起の各一端側又は各他端側が互いに近づくように「ハ」の字形状に配置されることが好ましい。このように2つの遮蔽突起が「ハ」の字形状に配置されることで、上記のような異物が筒状部222へ侵入されることをより効果的に防止できる。
【0036】
ガスセンサ装置100では、より多くの測定対象ガスを流路内に流入させて、流路内での測定対象ガスの滞留を防止し、流路内の雰囲気をより早く交換することで、ガスセンサ装置100のガス検知の応答性を向上させることができる。しかし、測定対象ガスの流入を促すことと、筒状部222内への水滴等の異物侵入を防止することと、は相反事項となる。このため、測定対象ガスの流入を十分に確保しつつ、筒状部222内への異物の侵入を防止する必要がある。本発明のガスセンサ装置100では、通気孔216、張出部231、遮蔽突起234及び235などの異物侵入を防止するための構成を備えつつ、これらを伴ってケース内に流路(通気孔216からガス排出口233まで等)を形成することで、十分な測定対象ガスの流通を確保でき、且つ筒状部222内への異物の侵入を防止することができる。
【0037】
本発明のガスセンサ装置100を構成する各部はどのような材料から構成されてもよく、特に限定されないが、ケース本体部210、内蓋部220及び外蓋部230は、ポリブチレンテレフタレート樹脂及びABS樹脂、ナイロン樹脂等の各種樹脂に対してガラス繊維(例えば、材料全体の10〜40質量%)を混入した材料からなることができる。また、Oリング240には各種エラストマー素材を用いることができる。本発明のガスセンサ装置を自動車に搭載して用いる場合にはフロントグリル等の熱源である内燃機関の近傍に配置されることがあるため、上記各々部位は、高い強度に加えて高い耐熱性を有することが好ましい。
【0038】
本発明のガスセンサ装置100(詳細には、ガスセンサ素子300の感応膜)で検知する測定対象ガス中の特定ガスとしては、各種の還元性ガス又は酸化性ガスが挙げられる。
還元性ガスとしては、炭化水素(自動車排ガス内成分、LPG、都市ガス、天然ガス、メタンガス、ハロゲン化炭化水素等)、一酸化炭素等が挙げられる。一方、酸化性ガスとしては、窒素酸化物(いわゆるNOx)等が挙げられる。
ガスセンサ素子300の感応膜を酸化物半導体にて形成した場合には、酸化物半導体上に設ける触媒の材質を適宜調整することで、測定対象ガス中の対象となる還元性ガスに選択的に感応させたり、測定対象ガス中の対象となる酸化性ガスに選択的に感応させたりすることができる。それより、本発明に用いるガスセンサ素子300としては、酸化性ガスに選択的に反応するように構成された感応膜を有する素子部と、還元性ガスに選択的に反応するように構成された感応膜を有する素子部を2つ備えるものであってもよいし、どちらか一方を有するものであってもよい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明のガスセンサ装置について具体的な実施形態を用いて説明する。
ガスセンサ装置100は、酸化性ガスに選択的に反応するように構成された感応膜を有する素子部と、還元性ガスに選択的に反応するように構成された感応膜を有する素子部の両者を備えるガスセンサ素子300と、これを内蔵するケース200と、を備える。また、ケース200は、ケース本体部210、内蓋部220及び外蓋部230を備える。ケース本体部210は、幅約30mm×長さ約45mm×深さ約20mmに形成された凹形状をなす収容部211とブラケット部212とコネクタ部217とが樹脂を用いて一体成形されてなる。
【0040】
そして、収容部211内には、回路基板係合爪510によって固定された回路基板500を備える。回路基板500には、ガスセンサ素子300及びガスセンサ素子300よりも高さの高いコンデンサ等の他の電子部品600が実装されている。回路基板500の配線はコネクタ部217に設けられる図示しない端子ピンと適宜電気的に接続されており、コネクタ部217と接続される外部機器へ回路基板500に実装された電子部品にて処理されたガス検知に関するデータを出力することができるようになっている。
【0041】
更に、ケース本体部210の側壁端部には溝部219が形成されており、この溝部219にはOリング240が填め込まれており、内蓋部220と溝部219との間でOリング240を挟み込むことで、収容部211は内蓋部220によって、フィルタ膜224以外の部分において閉塞される。
【0042】
また、ブラケット部212には、板片部214に2つ開口された取付孔213を備える。そして、この取付孔213にネジを挿通して所定の場所へねじ止めされることとなる。
更に、板片部214と収容部211とは補強部215を介して一体成形されている。補強部215は、収容部211の外側面側で板片部214よりも肉厚に形成されると共に板片部214側へ向けて徐々に肉薄に形成されている。更に、板片部214及び補強部215は図6に示すように、測定対象ガスの侵入方向側は格子状に形成されたリブ250を備えるリブ構造となっている。また、補強部215には、図5及び図7に示すように、厚み方向に測定対象ガスを流通させるための通気孔216を2つ備えている。
【0043】
更に、内蓋部220は、天板221を有し、この天板221に開孔された開口孔周縁226(筒状部の外蓋部側開口面)から収容部211側(ガスセンサ素子300側)に向けて延設された円錐台形状(狭窄された形状である)の筒状部222を備える。筒状部222は、ガスセンサ素子300を備える側の端部223にガス流通口228が形成され、通気性及び撥水性を有する膜状をなしたPTFE製のフィルタ224がガス流通口228を閉塞する形態で端部223に溶着されている。更に、筒状部222の端部223の外周縁からはガスセンサ素子300側へ更に円筒形状に延設され、ガスセンサ素子300を取り囲むように形成された囲繞部225を備える。また、この内蓋部220は、その外側面に形成された合計10ヶ所の係合爪260と、ケース本体部210が備える内蓋部係合爪218とが係合され、前記Oリング240の作用によって内蓋部220は収容部211を閉塞している。
【0044】
また、外蓋部230は係合爪260を合計2ヶ所に備え、内蓋部220にこれと対応して形成されている外蓋部係合爪227と係合されて、内蓋部220と外蓋部230とは、高さ約2mmの間隙400を介して相互に固定されている。そして、固定された際に図6に示すように、ガス導入口232とガス排出口233とが形成されるように、当該部分には側壁を有さない構造となっている。また、ブラケット部212の通気孔216を通過した測定対象ガスの流路を遮る位置に張出部231が配置されている。更に、張出部231には周側壁236が形成されている。
【0045】
更に、外蓋部230の内蓋部220の天板221に対向する側の内壁面には、各々板状に成形された遮蔽突起234(上流側遮蔽突起234)及び遮蔽突起235(下流側遮蔽突起235)を備えている。これらの遮蔽突起234、235は、外蓋部230の側壁とは連設されないように配置された上で、ガス導入口232とガス排出口233との間に直線的な流路が形成されないように配置されている。更に、各遮蔽突起234、235は一端が他端よりもガス排出口233に近く且つ他端が一端に対してガス導入口232に近いように配置されて互いにハの字形状となるように配置されている。
【0046】
上記ガスセンサ装置100は、ブラケット部212の板片部214に開口された2つの取付孔213を挿通されたネジにより、自動車のフロントグリルの内側に図6に示す測定対象ガスの流路AFが形成されるように、紙面左側を前方として配設される。
そして、自動車の走行に伴い、フロントグリルを介して車体内に取り込まれた大気(測定対象ガス)は、ガスセンサ装置100内の通気孔216から流路AFを通り、ガス排出口233へと排出される。
より具体的には、通気孔216を通過した大気(測定対象ガス)は、外蓋部230の張出部231に突き当たり、張出部231及びその周側壁236によって約90°の角度で流路変更されて、ガス導入口232を通って、内蓋部220と外蓋部230との間隙400へと誘導される。更に、間隙400内では、遮蔽突起234に突き当たって、図5に示すように、遮蔽突起234を迂回するように、開口面226へと向い、筒状部222内及びフィルタ224を介して大気がガスセンサ素子300へと拡散される。その後、大気は筒状部222内において次々と流入される大気に押し出されるようにして、ガス排出口233から排出されることとなる。
【0047】
そして、大気に含まれる特定ガスの濃度変化に基づいてガスセンサ素子300から信号(電圧信号)が出力され、回路基板500上の各電子部品によって電算処理され、濃度変化の情報(具体的には、特定ガスによる測定対象ガスの汚染度合を示した情報)が外部回路(ECU等)にコネクタ部217を介して出力される。この検出結果は、自動車の空調制御装置における外気導入又は内気循環を選択するためのフラップの開閉選択の選択条件として利用される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、センサ関連分野において広く利用される。特に自動車関連分野において好適である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のガスセンサ装置の一例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明のガスセンサ装置の一例を示す断面斜視図である。
【図3】本発明のガスセンサ装置の他例を示す断面斜視図である。
【図4】筒状部を拡大して説明する部分断面図である。
【図5】本発明のガスセンサ装置の一例を示す斜視図である。
【図6】本発明のガスセンサ装置の一例を示す断面図である。
【図7】本発明のガスセンサ装置のケースを分解して示す平面図である。
【図8】従来例のガスセンサ装置の一例を示す断面斜視図である。
【図9】参考例のガスセンサ装置の一例を示す断面斜視図である。
【図10】本発明のガスセンサ装置の他例を示す断面図である。
【図11】本発明のガスセンサ装置の他例を示す断面斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
100:ガスセンサ装置、
200;ケース、
210;ケース本体部、211;収容部、212;ブラケット部、213;取付孔、214;板片部、215;補強部、216;通気孔、217;コネクタ部、218;内蓋部係合爪、219;溝部、
220;内蓋部、221;天板、222;筒状部、223;素子に近い側の端部、224;フィルタ、225;囲繞部、2251;囲繞部の当接側端部、226;筒状部の外蓋部側開口面、227;外蓋部係合爪、228;ガス流通口、
230;外蓋部、231;張出部、232;ガス導入口、233;ガス排出口、234及び235;遮蔽突起、236;周側壁(張出部の周側壁)、
240;Oリング、
250;リブ、
260;係合爪、
300;ガスセンサ素子、
400;間隙、
500;回路基板、501;実装面
510;回路基板係合爪、
600;他の電子部品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサ素子をケース内に収容して備え、且つ測定対象ガス中の特定ガスを検出及び/又は該特定ガスの濃度変化を検知するガスセンサ装置であって、
該ケースは、該ガスセンサ素子を収容している凹形状をなす収容部を有するケース本体部と、
天板を有すると共に該ケース本体部に装着されて該収容部を閉塞している内蓋部と、
該内蓋部を覆って該内蓋部の該天板の外表面との間に該測定対象ガスを導く間隙を形成している外蓋部と、を備え、
該内蓋部の該天板は、該収容部内に収容された該ガスセンサ素子に向かって突出して形成されると共に、該ガスセンサ素子に近い側の端部に該測定対象ガスを該ガスセンサ素子まで導くガス流通口を形成してなる筒状部を備え、
上記筒状部の上記端部に、上記ガス流通口を閉塞する形態で通気性及び撥水性を有するフィルタが配置されていることを特徴とするガスセンサ装置。
【請求項2】
上記筒状部は、上記ガス流通口が形成された上記端部から更に延設されて、上記ガスセンサ素子を囲う囲繞部を備える請求項1に記載のガスセンサ装置。
【請求項3】
上記ガスセンサ素子は、上記収容部内に収容された回路基板上に実装されており、
上記囲繞部は、弾性材料からなり且つ一端側が該回路基板の実装面に当接されている請求項1又は2に記載のガスセンサ装置。
【請求項4】
上記筒状部は、上記ガスセンサ素子に近い側に向かって狭窄されている請求項1乃至3のうちのいずれかに記載のガスセンサ装置。
【請求項5】
上記ケース本体部は、上記収容部の外側面から外側に向かって突出されて該ケース本体部を取付け場所に取り付けるためのブラケット部を有し、
該ブラケット部は、取付部材を挿通するための取付孔が厚み方向に形成された板状をなす板片部と、該収容部の該外側面及び該板片部を接続し且つ該外側面側で該板片部よりも肉厚に形成されると共に該板片部側へ向けて徐々に肉薄に形成された補強部と、を有し、該補強部には、その厚み方向に該測定対象ガスを通気するための通気孔が形成されており、
上記外蓋部は、該ブラケット部の該通気孔と対応する位置に、該通気孔内を通過してきた該測定対象ガスの流れを遮り且つ該内蓋部及び該外蓋部で形成された上記間隙へ向かって該測定対象ガスの流れを変化させる張出部を備えている請求項1乃至4のうちのいずれかに記載のガスセンサ装置。
【請求項6】
上記ガスセンサ素子は、上記収容部内に収容された回路基板上に実装されており、
該回路基板は、該ガスセンサ素子より高さが高い他の電子部品を更に備え、上記筒状部は、上記端部が上記電子部品の高さよりも低位に配置されるように上記内蓋部の上記天板から突出している請求項1乃至5のうちのいずれかに記載のガスセンサ装置。
【請求項1】
ガスセンサ素子をケース内に収容して備え、且つ測定対象ガス中の特定ガスを検出及び/又は該特定ガスの濃度変化を検知するガスセンサ装置であって、
該ケースは、該ガスセンサ素子を収容している凹形状をなす収容部を有するケース本体部と、
天板を有すると共に該ケース本体部に装着されて該収容部を閉塞している内蓋部と、
該内蓋部を覆って該内蓋部の該天板の外表面との間に該測定対象ガスを導く間隙を形成している外蓋部と、を備え、
該内蓋部の該天板は、該収容部内に収容された該ガスセンサ素子に向かって突出して形成されると共に、該ガスセンサ素子に近い側の端部に該測定対象ガスを該ガスセンサ素子まで導くガス流通口を形成してなる筒状部を備え、
上記筒状部の上記端部に、上記ガス流通口を閉塞する形態で通気性及び撥水性を有するフィルタが配置されていることを特徴とするガスセンサ装置。
【請求項2】
上記筒状部は、上記ガス流通口が形成された上記端部から更に延設されて、上記ガスセンサ素子を囲う囲繞部を備える請求項1に記載のガスセンサ装置。
【請求項3】
上記ガスセンサ素子は、上記収容部内に収容された回路基板上に実装されており、
上記囲繞部は、弾性材料からなり且つ一端側が該回路基板の実装面に当接されている請求項1又は2に記載のガスセンサ装置。
【請求項4】
上記筒状部は、上記ガスセンサ素子に近い側に向かって狭窄されている請求項1乃至3のうちのいずれかに記載のガスセンサ装置。
【請求項5】
上記ケース本体部は、上記収容部の外側面から外側に向かって突出されて該ケース本体部を取付け場所に取り付けるためのブラケット部を有し、
該ブラケット部は、取付部材を挿通するための取付孔が厚み方向に形成された板状をなす板片部と、該収容部の該外側面及び該板片部を接続し且つ該外側面側で該板片部よりも肉厚に形成されると共に該板片部側へ向けて徐々に肉薄に形成された補強部と、を有し、該補強部には、その厚み方向に該測定対象ガスを通気するための通気孔が形成されており、
上記外蓋部は、該ブラケット部の該通気孔と対応する位置に、該通気孔内を通過してきた該測定対象ガスの流れを遮り且つ該内蓋部及び該外蓋部で形成された上記間隙へ向かって該測定対象ガスの流れを変化させる張出部を備えている請求項1乃至4のうちのいずれかに記載のガスセンサ装置。
【請求項6】
上記ガスセンサ素子は、上記収容部内に収容された回路基板上に実装されており、
該回路基板は、該ガスセンサ素子より高さが高い他の電子部品を更に備え、上記筒状部は、上記端部が上記電子部品の高さよりも低位に配置されるように上記内蓋部の上記天板から突出している請求項1乃至5のうちのいずれかに記載のガスセンサ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−249684(P2008−249684A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246162(P2007−246162)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]