説明

ガラス瓶型の積層材料、ガラス瓶型の積層方法、ならびに積層を施されたガラス瓶型

【課題】危険がなく、しかもガラス瓶点滴の滞りの無い運び入れならびにバケットの離型を可能にする積層材料を提供する。
【解決手段】ガラス瓶型に直接塗布される第一ゴブ6aとその第一ゴブに塗布される第二ゴブ6bから成る積層材料6において、a) 第一ゴブは、シリコン樹脂伝達体層を形成するための、室温よりも高い温度で硬化することができるシリコン樹脂基結合剤、および硬化中に酸化可能である、シリコン樹脂マトリックスに結合される填料を含んでおり、b)第二ゴブは、シリコン樹脂伝達体層を形成するための、室温よりも高い温度で硬化することができるシリコン樹脂基結合剤、および硬化の際にシリコン樹脂伝達体層に塗布される、この積層位置と接触するガラス塊に対して潤滑作用をおこなう潤滑剤を含んでいる状態である積層材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス瓶の型、特に粗型の積層材料に関する。
【背景技術】
【0002】
瓶または貯蔵瓶のようなガラス容器の生産は、通常、ガラス瓶機械において2段階の工程でおこなわれる。溶解されたガラスの点滴が条溝システムを通り個々の生産ステーションに導かれ、いわゆる粗型に落とし込まれる。この工程は「押し込み」と呼ばれている。この工程では、いわゆるバケットがすでに仕上がっている瓶口と共に吹き膨らまされる。仕上げ型へのトランスファーのあと、瓶はその最終的な形状に吹き膨らまされる。離型および機械コンベアへの送り出しで成形工程が終了する。点滴装入においては、点滴が型の壁面による摩擦のために変形せず、そして装入しわが発生しないことが重要である。
【0003】
これを確実にするために、一般に、ガラス瓶型、特にその粗型は離型剤によって処理される。そうした処理は「潤滑」という考え方でおこなわれることが知られている。そうした処理としては、鉱油をベースとする伝達体および硫黄またはグラファイトのような潤滑物質から成る潤滑剤混和体を5分から45分までの間隔をおいて手で型に塗布するのである。潤滑剤混和体は、滑らかな点滴装入ならびにガラス瓶表面に亀裂形成が無い優れた離型を可能にする。同時に、型の表面は溶融ガラス瓶による腐食作用から守られる。
【0004】
このような方法は、手を使っておこなわれるわけで、どうしても相当の手間がかかるという理由だけで既に欠点である。潤滑頻度もかなり激しくなる。つまり、型を始終潤滑しなければならない。層形成の均一性も保証されない。さらに、潤滑剤の伝達材料が高い型温度により炭化するが、これも機械を操作する作業員の労働災害防止の観点からマイナスである。
【0005】
さらに別の型処理方法が特許文献1により公知となっている。この方法は半永久的なセラミックスまたはセラミックス状の積層をもつ型の積層形成の方法である。この積層は、填料としてのアルミ粉と無機質の結合剤とから成るが、この結合剤はCrCO3およびH3PO4から成る水溶液により構成される。層構成体は少なくとも2つの別々の層である、擬似セラミックス下地を形成するいわゆるベースコートと、例えば、グラファイト、BNまたはMoS2の形態の固体潤滑剤を含むいわゆるトップコートとから成る。ベースコートは硬い、構築されたベース層を形成し、その上にトップコートがしっかりと付着している。全体としては、この層構成体はあたかも一体の層であるかのような、大きい硬度、付着力、そして耐剥離性を有する。
【0006】
しかし、この積層の問題点は、大部分が酸化クロムVIおよびリン酸から成る無機結合剤である。これら二つの化学品の組合せは激しい毒性があり、環境を汚染し、腐食性があり、酸化性があり、ガンを惹き起こす。この理由から、利用者は労災防止ならびに環境保護の点から十分な安全対策をとらざるをえない。積層の塗布を担当する作業者にとってもクロムによる職場汚染の危険が大きい。
【特許文献1】WO98/57804
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、まず危険がなく、しかもガラス瓶点滴の滞りの無い運び入れならびにバケットの離型を可能にする積層材料を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、ガラス瓶型に直接塗布される第一ゴブとその第一ゴブに塗布される第二ゴブから成る、ガラス瓶型、特に粗型の積層材料が提案され、
a) 直接ガラス瓶型に塗布される第一ゴブは、
- シリコン樹脂伝達体層を形成するための、室温よりも高い温度で硬化することができるシリコン樹脂基結合剤、および
- 硬化中に酸化可能である、シリコン樹脂マトリックスに結合される填料
を含んでおり、
- なお、結合剤および填料は溶剤に溶融されるか、または浮遊状態となっている状態であり、
b)第一ゴブに塗布して重ねられる第二ゴブは、
- シリコン樹脂伝達体層を形成するための、室温よりも高い温度で硬化することができるシリコン樹脂基結合剤、および
- 硬化の際にシリコン樹脂伝達体層に塗布される、この積層位置と接触するガラス塊に対して潤滑作用をおこなう潤滑剤を含んでいる。
- なお、結合剤および填料は溶剤に溶融された状態、または浮遊状態となっている状態である。
【発明の効果】
【0009】
まず危険がなく、しかもガラス瓶点滴の滞りの無い運び入れならびにバケットの離型を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の積層材料は異なる二つのゴブを特徴とする。これらのゴブは、ベースコートまたはベース積層の形成およびトップコートまたは上側の積層形成に用いられる。ただし、両ゴブにおいては、高温で硬化し、そして一種の高温レーキを形成するシリコン樹脂ベース結合剤が使われる。シリコン樹脂は毒性が無く、腐食性が無く、侵食性もなく、そしてそれにもかかわらず十分に安定したマトリックスを形成し、このマトリックスにはそれぞれの物質のそれぞれの混和成分が強固に結合されうる。第一ゴブは非常に硬いベースコート層を形成する。このベースコートにおいては、酸化される填料、好ましくは、硬化中に酸化されてAl2O3になるアルミ粉が硬質のセラミックス成分を形成し、その結果、全体としてセラミックス層またはセラミックス状の層としてのベースコートが形成される。界面の領域において、両充填材、すなわち、第一ゴブから成る填料と第二ゴブから成る潤滑剤は各層の間に流れ込み、全体として比較的安定した一つの複合層が形成される。
【0011】
本発明の積層材料は、WO98/57804による積層で知られ、冒頭に述べた欠点なしに使うことができる。塗布の間に溶剤は若干蒸発し、シリコン樹脂マトリックスの焼成のための次の焼きならし工程の間に全て蒸発する。ということは、危険物質クラスへの分類は使用される溶剤の種類だけに左右される。第一ゴブの溶剤としては、好ましくは、酢酸塩ブチルが使われる。第二ゴブの溶剤も酢酸塩ブチルまたは酢酸塩ブチルとブチルグリコールとの混和体であってもよい。後者の酢酸塩ブチルとブチルグリコールの混和体は、ブチルグリコールが比較的高い沸点を有するので、ブチルグリコールの混和体が硬化するあいだ、従って層が固まるあいだに第二ゴブをやや長く液体状態または粘性状態で保持するので有利である。このことは、潤滑剤が下側の積層層にやや浸透しやすくする。本発明の積層材料は、WO98/57804による積層で知られ、冒頭に述べた欠点なしに使うことができる。塗布の間に溶剤は若干蒸発し、シリコン樹脂マトリックスの焼成のための次の焼きならし工程の間に全て蒸発する。ということは、危険物質クラスへの分類は使用される溶剤の種類だけに左右される。第一ゴブの溶剤としては、好ましくは、酢酸塩ブチルが使われる。第二ゴブの溶剤も酢酸塩ブチルまたは酢酸塩ブチルとブチルグリコールとの混和体であってもよい。後者の酢酸塩ブチルとブチルグリコールの混和体は、ブチルグリコールが比較的高い沸点を有するので、ブチルグリコールの混和体が硬化するあいだ、従って層が固まるあいだに第二ゴブをやや長く液体状態または粘性状態で保持するので有利である。このことは、潤滑剤が下側の積層層にやや浸透しやすくする。
【0012】
填料としては、すでに述べたように、例えば、硬化過程において酸化剤としてのみの目的で使われる空気中酸素によりAl2O3に変化するアルミ粉を使うことができる。このAl2O3粒子はシリコン樹脂マトリックスに確実に定着するので、セラミックスに似たベース層が形成される。このベース層は非常に硬く、その表面構造の故に、トップコートの優れた付着力をもつ、非常に強固で粗い多孔性の表面を形成する。
【0013】
潤滑剤としては、好ましくは、グラファイト、MoS2、BNまたは燃焼すすが使用される。しかし、使用可能な填料または潤滑剤を列挙することで問題が解決されるものではない。適合性が見出される限り、他の物質を使うことを考えてもよい。
【0014】
第一ゴブは本発明では100g中以下の成分を含む。
- 結合剤 15−35g
- 填料 23.5 − 53.5g
- 残りは溶剤
【0015】
これに対して、第二ゴブは100g中以下の成分を含む。
- 結合剤 15−35g
- 填料 15 − 35g
- 残りは溶剤
【0016】
好ましくは、第一ゴブは本発明では100g中以下の成分を含む。
- 結合剤 20 − 30g
- 填料 30 − 45g
- 残りは溶剤
【0017】
これに対して、第二ゴブは100g中以下の成分を含む。
- 結合剤 20 − 40g
- 填料 20 − 30g
- 残りは溶剤
【0018】
特に好ましい構成としては、第一ゴブは100g中以下の成分を含む。
- 結合剤 23 − 28g
- 填料 35 − 43g
- 残りは溶剤
【0019】
これに対して、第二ゴブは100g中以下の成分を含む。
- 結合剤 22 − 27g
- 填料 22 − 27g
- 残りは溶剤
【0020】
一つの具体的な、本発明の構成では、ゴブは100g中以下の成分を含む。
- 結合剤 26.3g
- 填料 40.5g
- 残りは溶剤
【0021】
これに対して、第二ゴブは100g中以下の成分を含む。
- 結合剤 23.8g
- 填料 23.8g
- 残りは溶剤
【0022】
第二ゴブに対する溶剤として、酢酸塩ブチルおよびブチルグリコールを使う場合、両者は1:1の比率で、またはブチルグリコールをやや多くして混和するものとする。
【0023】
本発明の構想をさらに発展させ、第一ゴブまたは第二ゴブあるいはそれらの双方が溶融顔料または分散浮遊顔料を含むようにすることができる。これは、層の塗布のときに、粗型の積層全面が第一ゴブと第二ゴブとによって充填されているかどうかを目視検査することができるという点で優れた構造である。両ゴブに使用される顔料は色が相違していることが適切である。それらの顔料の特性は任意に選んでよいが、もちろん型の硬化の過程で無害でなければならない.添加分量は希望の着色度に応じて決まるが数グラムの範囲内である。分量は前記の100g中の組成分に含ませるものとする。
【0024】
さらに、本発明は積層材料の特性だけでなく、そのような積層材料を使用し、以下の工程、すなわち
- 型壁への第一ゴブの塗布による第一層の形成
- 第一ゴブの層への第二ゴブの塗布による第二層の形成
- 型の焼成による積層形成のためのゴブの硬化
によりおこなわれる、ガラス瓶型、特にガラス瓶粗型の積層方法に関する。
【0025】
第一層または第二層あるいはそれらの双方は、好ましくは、第一ゴブまたは第二ゴブあるいはそれらの双方を各2回塗布することにより形成される。その場合、ベースコートを形成する第一ゴブは2回または複数回塗布することが好ましい。
【0026】
第一ゴブおよび第二ゴブの塗布 − 場合によっては多重塗布となるが、その場合はそれぞれ個々の塗布 − は、40−150μm、特に50−100μm、好ましくは、60−80μmの層厚みに形成し、そして好ましくはなるべく均一に仕上げるものとする。塗布は、優れた方法としては、噴き付け塗装用噴射器を使用した吹き付けによっておこなう。上記の組成は、噴き付けができるような十分に液状化しているゴブの製造を可能にする。これらのゴブは予め混ぜ合わせ、室温で保存して差し支えないが、噴き付けの前には底に溜まっている残滓を分布するためによく振らなくてはならない。しかし、型は非常に長い耐久時間を有し、そして分解した状態での積層は丁寧におこなえば可能である以上、手による塗布も可能である。
【0027】
層はウエット・イン・ウエットで重ね合わせて塗布される。すなわち、第一の層は第二の層の塗布の前には完全に硬化させず、むしろ第二の層の塗布の前に第一の層を少し乾かせば十分である。すなわち、両方の層は硬化開始時にはなお湿っているので、それぞれの成分は問題なく層の間に浸透することができ、溶剤も蒸発することができる。
【0028】
硬化自体は、好ましくは、少なくとも500℃の保持温度で最低60分間おこなうものとする。アルミミウム粉形態の填料の十分な酸化には少なくとも約500℃の温度が必要である。十分な酸化ならびに全溶剤の駆使、そして十分なシリコン樹脂マトリックスの形成のための保持時間は、好ましくは、最低90分をとらなくてはならない。
【0029】
焼灼しようとする型は、炉がすでに保持温度にまで加熱されているときは、炉に装入しない方が好ましい。型装入時の温度は最大200℃、特に最大150℃でなければならないし、しかしもっと好ましくは、型温度と炉内温度との間の急激な温度上昇による層形成時のトラブルを避けるために室温にするべきである。好ましくは、型が焼灼される炉は、型装入時の温度から保持温度まで毎分5−10℃の率で昇温される。
【0030】
積層を施す型表面は、特にベースコートの最適な付着力を確保するために清潔で、油脂があってはならない。この目的のため型は第一ゴブ塗布前に洗浄されることが好ましい。この洗浄は、例えば、サンドブラスチングにより、特に軟らかい砥粒を使用しておこなうものとする。型は更新して積層しなければならないので、型はガラス瓶機械から取り出した直後に、好ましくは、廃灰汁または、特に硬い砥粒を使用するサンドブラスチング、あるいはその両方の手段によって、洗浄しなければならない。
【0031】
以上を総括すると、本発明は上記の製法によって製造される上記の種類の積層材料から成る積層を備えるガラス瓶の型、特に粗型に関するものである。
【実施例】
【0032】
本発明の利点、特徴および詳細は以下に述べる実施例ならびに図面により明らかとなる。
【0033】
図1a、1b プレス&ブロー(P&B)プロセス(図1a)およびブロー&ブロー(B&B)プロセス(図1b)による中空グラス成形品の成形の原理図、
図2 積層された粗型の部分断面図、
図3 粗型の積層の経過を説明するフローチャート、
図4 750mlのボルドー型瓶の製造における本発明によって被覆される粗型の経過時間のバーグラフ、
図5 本発明の粗型を使用して製造する瓶および手で潤滑される粗型を使用して製造される瓶のセットルウェーブの領域における壁厚み分布を示すバーグラフ、
図6 瓶底におけるガラス瓶厚み分布を図示するための、図5のバーグラフ、
図7 250mlのシュレーゲル型瓶の製造における本発明の粗型の経過時間のバーグラフ。
【0034】
図1aは原理図のかたちでプレス&ブロー(P&B)プロセスによる中空グラスの製造の進行を示す。プレス&ブロー(P&B)プロセスでは液状ガラス瓶からの点滴1が粗型2に落下する。ガラス瓶点滴1は溶融ガラス瓶から詳しくは図示されていない給送溝を通って導入され、粗型はガラス瓶機械の中に組み込まれている。点滴1の滴下は装入と呼ばれる。次に、粗型の上側が閉じられ、点滴1は適切なプレス工具により圧縮され、バケット3が成形される。粗型の開放のあとバケット3が取り出され、仕上げ型4に入れられ、そこでバケットは仕上げ瓶5に吹き伸ばされ、最後に離型される。
【0035】
ブロー&ブロー(B&B)プロセスの工程も類似している(図1b)。この場合でも点滴1は粗型2に落下する。粗型が閉じたあと点滴1は圧縮されないで、吹き込みされ、そしてバケット3に予吹き込み(pre-blow)がおこなわれる。次に、ここでもバケット3は取り出され、仕上がり型4に導入され、そこで吹き込みして仕上げられ、最終的に取り出される。
【0036】
製造される瓶5の無欠陥性の決め手となるのは、特に、粗型2における粗型工程である。点滴1が粗型2に落下するとき、点滴1は粗型内を最小限の摩擦で転がってゆき、底に滑り込むことができることが確実でなければならない。そのため、図2に拡大された部分断面図が示されている、本発明の粗型2に、積層6が設けられる。この積層は、図示の例では、すでに仕上がった状態で硬化している。この積層は、それぞれ特殊なゴブを用いて製造された2つの層6aおよび6bから成る。層6aはいわゆるベースコートを形成し、通常Feから成る粗型2の内面7に直接被さっている。積層6は、酸化された填料9、好ましくはAl2O3が結合されているシリコン樹脂マトリックス8から成る。シリコン樹脂マトリックス8は硬化され、すなわち、中でセラミックス状の填料粒子9が結合されている高温レーキ層を形成している。層6aはその特性としてはひとつのセラミックの層またはセラミック状の層を形成することになる。
【0037】
層6aの上には層6bが設けられている。この層6bもまたシリコン樹脂マトリックス10から成る。両シリコン樹脂マトリックス8、10は、同じシリコン樹脂から成ることが好ましい。シリコン樹脂マトリックス10には潤滑物質11、好ましくはグラファイトが密に分布されている。層6bにはガラス瓶点滴1が直接接触し、層6bの上を滑り、潤滑物質11により潤滑される。潤滑物質11は硬化の際に界面12を超えて層6aの界面付近の領域に浸透する。逆にまた、酸化Al2O3填料9の若干が層6bに浸透することも可能である。
【0038】
積層6の製造方法は図3に示すとおりである。工程aではまず積層される型を洗浄する。この洗浄は、好ましくは、軟性の砥粒を用いてサンドブラスチングによりおこなう。すなわち、それぞれの型の、積層すべき内面9を清潔に、特に油脂の付着がないように洗浄する。積層しない型領域はシールでカバーしておくことが好ましい。
【0039】
工程bでは第一ゴブを使ってベースコート、そして第二ゴブを使ってトップコートを形成するという両ゴブの塗布がおこなわれるが、ベースコートは最終的に層6aを、そしてトップコートは最終的に層6bを形成する。粗型の内面には、好ましくは、60−80μmの層厚みをもつベースコートを形成するために第一ゴブを均一に吹き付ける。その場合、塗布はいま述べた層厚みが出来るまで2層に分けて前後しておこない、重ね合わせるようにすることが好ましい。垂れまたは凹凸などの塗布ミスを避けなければならない。
【0040】
塗布された積層層を少々乾かしてから第二ゴブを塗布し、トップコートを形成する。この塗布も2層に分けておこなう。
【0041】
次に、工程cで塗布された層の硬化をおこなう。塗布された型は溶融炉に入れる。溶融炉は型を装入するときは、好ましくは、室温で、ただし最大約150℃とし、過大な高温を避けなければならない。装入後、溶融炉は毎分5−10℃の率で約500℃の持続温度にまで加熱する。この温度で型は、好ましくは、90分焼成または焼鈍される。溶融炉内ではゴブの液化に使われる溶剤が蒸発し、それぞれの単独層はそれぞれのシリコン樹脂マトリックス8、10を形成し、層6aの填料が酸化される。この酸化は溶融炉雰囲気の中に存在する空気中酸素だけによりおこなわれ、その結果として酸化填料粒子9が形成される。
【0042】
工程cの終了後、型は溶融炉から取り出され、工程dで生産ラインに運ばれる。工程eで型はガラス瓶機械に装入される。このガラス瓶機械はいわゆるISマシン(IS=インデペンデント・セクション/Independent Section)を使うことができる。
【0043】
本発明による粗型積層により、従来技術の手による潤滑を伴う、粗型装入中の頻繁に繰り返される積層形成は必要でなくなる。本発明の粗型は数時間、応用形態によっては100時間以上にまで装入することができる。粗型により生産された瓶の出来具合により判定した結果、粗型を取替えが必要であることが確認されれば、粗型は工程fで機械から取り出し、なおも粗型内に残存している積層6を廃灰汁または硬い砥粒を使うサンドブラスチングあるいはそれらの両方により除去する。工程gでは、場合によっては、型の修理をおこなう。そのあとその型は工程hで型置き場に送られるか、またはすぐに工程aに戻すことも可能である。もちろん同様な行動で型置き場から新たに準備される型を取り出すこともできる。修理が不要であれば、工程fで処理された粗型は直接工程aまたは型置き場に戻してもよい。
【0044】
図4は、本発明にもとづいて積層された粗型の安定性を明らかにするバーグラフである。合計16個の粗型が一台のガラス瓶機械において使われたが、このガラス瓶機械は8つのステーションを有する61/4”二重点滴ISマシン(ハーフタンデム)のことである。重量450gの750mlボルドー瓶はブロー&ブロー(B&B)プロセスで製造された。
【0045】
使用された粗型は以下の組成の積層材料で積層された:
層6a(ベースコート)を形成するための第一ゴブ
26.3gのシリコン樹脂顆粒(長鎖フェーニール変成シリコン樹脂)を溶剤としての酢酸塩ブチル33.2gに溶かした。シリコン樹脂顆粒が完全に溶融したあと、40.5アルミ粉(粒度<20μm)を添加し、攪拌器で均質化した。
【0046】
ゴブは粗型へ噴霧させて塗布した。第一ゴブは約60−80μmの層厚みをもつ、互いに重なり合う層として形成したが、第二ゴブは約60−80μmの層厚みの一重層で形成した。
【0047】
続いて、両方の層は焼成炉で500℃にて90分硬化させた。硬化が終わると型は予加熱炉で予加熱を施し、次いで機械に装入された。
【0048】
図4において、型の耐久時間をそれぞれのセクションにおいて示すバーが示すように、使用されたほとんど全ての粗型が数時間の領域に収まる耐久時間を示し、一部の粗型が摩滅してしまうような100時間を越える極端な耐久時間にまで達した。型の耐久時間はそれぞれのバー区分の長さにより示され、バー区分を区切っている立て線は型交換を示す。摩滅した粗型は、やはり本発明に基づいて積層された粗型の新品と交換した − 粗型の摩滅はその粗型によって製造された瓶を点検して確認した。図4は耐久時間の推移を展望できるように示すもので、最大200時間がプロットされている。それぞれのバーグラフは、最大経過時間の200時間以内に摩滅してしまった粗型の耐久時間のみを示す。このバーグラフには、200作業時間の経過前に投入されたが、それまでに摩滅していなかった粗型は含まれていない。
【0049】
以下の表1に、個々の粗型の経過時間(フルタイムで示す)の一覧をそれぞれのセクションに対して掲げる。使用されたほとんど全ての粗型は、説明したように、非常に長い耐久時間を達成した。僅かの粗型が、3時間未満という著しく短い耐久時間のあと交換されたが、それらの粗型は、通常いろいろな要因により、中でも点滴落下によって惹き起こされた要因による障害を惹き起こし、交換せざるをえなかったものである。
【表1】

【0050】
図4には、表1と同様、各ステーションが2つのセクションを有する。2つのセクションは表と同じく「a」(=外)および「i」(=内)が付いた数字で区別されている。すなわち、セクション9a−16iが示されている。セクション1a−8iには、比較の目的のために これについては以下にさらに説明するが − 従来の技術と同様に手で繰り返して鉱油ベースの潤滑剤で潤滑された粗型が使われた。
【0051】
図5はバーグラフの形態で製造された瓶のセットルウェーブの領域の、すなわち、瓶の胴体部分の領域のガラス瓶厚みの粗型を基準とした値を示す。それぞれの厚みは「XPAR」カメラシステムを用いるホットエンド試験機において検出した。このホットエンド試験は、余熱のある物体の熱放射に対する壁厚みの連続的検出を可能にする。グラフ表示されているのは、同じ時間帯で製造された瓶100本のそれぞれのガラス瓶厚みのインターバルである。本発明の粗型の交換はこの時間帯においてはおこなわれなかった。ステーション1−8(および、従ってセクション1a−8i)において投入された粗型は、従来の技術を踏襲して、この時間帯において鉱油ベースのグラファイト潤滑剤を手でもって刷毛で一回だけ潤滑を施した。
【0052】
横軸には0%のところに基準値が表示されている。左右に向かってそれぞれのパーセンテージ誤差が示される。バーが短いほど、瓶100本のインターバル誤差は少なくなる。表示値は統一されている。
【0053】
本発明による粗型を使用したときのガラス瓶壁厚みは、従来の技術に基づいて潤滑された粗型を使用した場合よりもはるかに均等であり、かつ均一であることが明らかである。従来の技術による粗型では部分的に極度の変動が生じる。すなわち、本発明による粗型を使用すると、長期間にわたって連続作業ができるだけでなく、高い均質性をもつ製品を得ることもできる。
【0054】
図6は図5と類似したバーグラフを示すが、こちらでは瓶底の領域のガラス瓶壁厚みが示されている。この場合もまた、本発明による型を使用した場合の壁厚み変動は、手で潤滑された粗型を使用した場合に比べて非常に少ないことが示されている。これはすでに述べたように、型の長い耐久時間により高度のプロセス安定性が与えられているからである。
【0055】
最後に、図7は、本発明の粗型の経過時間を読み取ることができる、図4に等しいバーグラフを示す。ここでも、8つのステーションを有する61/4”二重点滴ISマシン(ハーフタンデム)において、重量155gの250mlシュレーゲル瓶がナローネック・プレス&ブロー法(narrow neck press and blow process)によって製造された。使われた粗型、先に図4の粗型に関して説明した積層材料を使用して積層されたものである。作業は合計288時間の経過時間での12日間の操業日を目標に開始され、使用された粗型は最大経過時間に達したときも未だ摩滅していなかったにもかかわらず、最大経過時間の経過後に中断された。このバーグラフでも、バー区分の長さはそれぞれの型の耐久時間を示し、立て線は型交換を示す。
【0056】
以下の表2から読み取れるように、ここでも非常に長い、一部では100時間を越える耐久時間を含む極度に長い経過時間(1時間間隔で)が記録された。
【表2】

【0057】
図4−7に掲げる例は、まず、本発明による粗型は長い耐久時間を有し、次にこれらの耐久時間はさまざまな中空物体の製造においても達成されることを示す。手による潤滑をおこなう従来技術に比べ、まず一方においては、長時間の連続操業を実現でき、他方においては、頻繁で、手間のかかる手による潤滑手順を廃止できるわけである。酸化剤としてCr2O3を含む積層に比べ、本発明による積層は問題なく製造と処理とが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1a】プレス&ブロー(P&B)による中空グラス成形品の成形の原理図、
【図1b】ブロー&ブロー(B&B)による中空グラス成形品の成形の原理図、
【図2】積層された粗型の部分断面図、
【図3】粗型の積層の経過を説明するフローチャート、
【図4】750mlのボルドー型瓶の製造における本発明によって被覆される粗型の経過時間のバーグラフ、
【図5】本発明の粗型を使用して製造する瓶および手で潤滑される粗型を使用して製造される瓶のセットルウェーブの領域における壁厚み分布を示すバーグラフ、
【図6】瓶底におけるガラス瓶厚み分布を図示するための、図5のバーグラフ、
【図7】250mlのシュレーゲル型瓶の製造における本発明の粗型の経過時間のバーグラフ。
【符号の説明】
【0059】
1 点滴 2 粗型 3 バケット 4 仕上げ型
6 積層 7 内面 8 樹脂マトリックス
9 填料 10 樹脂マトリックス 11 潤滑物質
12 界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス瓶型に直接塗布される第一ゴブとその第一ゴブに塗布される第二ゴブから成る積層材料において、
a) 直接ガラス瓶型に塗布される第一ゴブは、
- シリコン樹脂伝達体層を形成するための、室温よりも高い温度で硬化することができるシリコン樹脂基結合剤、および
- 硬化中に酸化可能である、シリコン樹脂マトリックスに結合される填料
を含んでおり、
- なお、結合剤および填料は溶剤に溶融されるか、または浮遊状態となっている状態であり、
b)第一ゴブに塗布して重ねられる第二ゴブは、
- シリコン樹脂伝達体層を形成するための、室温よりも高い温度で硬化することができるシリコン樹脂基結合剤、および
- 硬化の際にシリコン樹脂伝達体層に塗布される、この積層位置と接触するガラス塊に対して潤滑作用をおこなう潤滑剤を含んでおり、
- なお、結合剤および填料は溶剤に溶融された状態、または浮遊状態となっている状態である積層材料。
【請求項2】
請求項1に掲げる積層材料において、填料はアルミ粉であることを特徴とする積層材料。
【請求項3】
請求項1または2に掲げる積層材料において、潤滑剤はグラファイト、MoS2、BNまたは燃焼すすであることを特徴とする積層材料。
【請求項4】
前記の請求項のうちの一つに掲げる積層材料において、第一ゴブの溶剤は酢酸塩ブチルであることを特徴とする積層材料。
【請求項5】
前記の請求項のうちの一つに掲げる積層材料において、第二ゴブの溶剤は酢酸塩ブチルまたは酢酸塩ブチルとブチルグリコールとの混和体であることを特徴とする積層材料。
【請求項6】
前記の請求項のうちの一つに掲げる積層材料において、
第一ゴブは100g中以下の成分
- 結合剤 15−35g
- 填料 23.5 − 53.5g
- 残りは溶剤を含み、
第二ゴブは100g中以下の成分
- 結合剤 15−35g
- 填料 15 − 35g
- 残りは溶剤
を含むことを特徴とする積層材料。
【請求項7】
請求項6に掲げる積層材料において、
第一ゴブは100g中以下の成分
- 結合剤 20 − 30g
- 填料 30 − 45g
- 残りは溶剤を含み、
第二ゴブは100g中以下の成分
- 結合剤 20 − 30g(本文では40g)
- 填料 20 − 30g
- 残りは溶剤
を含むことを特徴とする積層材料。
【請求項8】
請求項7に掲げる積層材料において、
第一ゴブは100g中以下の成分
- 結合剤 23 − 28g
- 填料 35 − 43g
- 残りは溶剤を含み、
第二ゴブは100g中以下の成分
- 結合剤 22 − 27g
- 填料 22 − 27g
- 残りは溶剤
を含むことを特徴とする積層材料。
【請求項9】
請求項8に掲げる積層材料において、
ゴブは100g中以下の成分
- 結合剤 26.3g
- 填料 40.5g
- 残りは溶剤を含み、
第二ゴブは100g中以下の成分
- 結合剤 23.8g
- 填料 23.8g
- 残りは溶剤
を含むことを特徴とする積層材料。
【請求項10】
前記の請求項のうちの一つに掲げる積層材料において、
第一ゴブまたは第二ゴブあるいはそれらの双方は溶融顔料または分散浮遊顔料を含むことを特徴とする積層材料。
【請求項11】
請求項1から10の一つに掲げる積層材料を使用し、以下の工程、すなわち
- 型壁への第一ゴブの塗布による第一層の形成
- 第一ゴブの層への第二ゴブの塗布による第二層の形成
- 型の焼成による積層形成のためのゴブの硬化
によりおこなわれる、ガラス瓶型、特にガラス瓶粗型の積層方法。
【請求項12】
請求項11に掲げる方法において、第一層または第二層あるいはそれらの双方は、第一ゴブまたは第二ゴブあるいはそれらの双方を各2回塗布することにより形成されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11または12に掲げる方法において、第一ゴブおよび第二ゴブの塗布 − 場合によってはそれぞれの塗布において、40−150μm、特に50−100μm、好ましくは、60−80μmの層厚みに形成されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11から13の一つに掲げる方法において、ゴブが噴き付けられることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11から14の一つに掲げる方法において、第二の層の塗布の前に第一の層がすこし乾かされることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項11から15の一つに掲げる方法において、塗布された層は型の焼成の前にすこし乾かされることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項11から16の一つに掲げる方法において、型は少なくとも500℃の保持温度で最低60分間加熱されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に掲げる方法において、型が焼灼される炉は、型装入時の温度から保持温度まで毎分5−10℃の率で昇温されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に掲げる方法において、型装入時の温度は最大200℃、特に最大150℃であることを特徴とする方法。
【請求項20】
前記の請求項のうちの一つに掲げる方法において、型は第一ゴブ塗布前に洗浄されることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に掲げる方法において、型はサンドブラスチングにより、特に軟らかい砥粒を使用して処理されることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項11から21の一つに掲げる方法において、型はガラス瓶機械から取り出した直後に洗浄されることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に掲げる方法において、型は廃灰汁または、特に硬い砥粒を使用するサンドブラスチング、あるいはその両方の手段により処理されることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項11から23の一つに掲げる方法により製造されるガラス瓶型(2)、特にガラス瓶粗型。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−45056(P2006−45056A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205033(P2005−205033)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(505267717)アイピージーアール インターナショナル パートナーズ イン グラス リサーチ (1)
【氏名又は名称原語表記】IPGR International Partners in Glass Research
【Fターム(参考)】