説明

キースイッチ及び端末装置

【課題】 キー押下時の押圧強弱に基づいて量や強弱に関する操作を行う。
【解決手段】 固定電極22を備えた回路基板16と、キートップ12aと、キートップ12aの押下に伴って固定電極22に接触するように設置された可動電極21とを備え、可動電極21と固定電極22とが接触して短絡することによりスイッチング動作を実現するキースイッチにおいて、
キートップ12aを押下して可動電極21と固定電極22が接触した後に、このキートップにさらに強い押圧を与えることで撓んだ回路基板16の変形量を測定する歪みゲージ24を備える回路基板18を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、端末装置に用いられるキースイッチ及びそのキースイッチを使用した端末装置に係るものであり、特に端末装置の利用者に直接的操作感をもたらす技術に関する。
【背景技術】
【0002】
キースイッチは、電流の導通を制御する基本的機構であって、キースイッチのオン・オフを利用して端末装置を操作する操作インターフェースは、改めて文献を紹介するまでもなく広く採用されている。しかしながら、キースイッチは基本的には電流のオンとオフの2つの状態しか持っていないため、単一のキースイッチのみで数値パラメータの選択や速度・強弱の設定(量の制御)までを行うことはできない。
【0003】
ディジタル機器においては、量を制御するインターフェースとしてはキースイッチを複数回操作させるユーザインターフェースや、複数のスイッチを配して量を段階的に選択させるユーザインターフェースが一般的である。一方、ユーザに量を設定させるインターフェースとしてはスライドスイッチのようなアナログコントローラが知られている。しかしこれらの操作インターフェースは大きな設置面積や設置容積を要求することが多く、小型の端末装置などの電子機器には採用が不向きである。
【0004】
省スペースを実現しながら量の制御を行う操作インターフェースとしては、圧力の変化に応じて量の制御する方法が有力であると考えられる。ここで、ユーザが加える圧力に基づいて動作を決定するユーザインターフェースの例を開示した文献としては特許文献1、特許文献2が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−351352 「薄型表示装置」 公報
【特許文献2】特開平10−222291 「位置入力装置」 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの文献に開示された操作インターフェースは、例えば携帯型の端末装置のような小型の電子機器にも適用な可能な程度に小さくすることができない。またクリック感を生じさせないので、ユーザに操作の確実感を与えるものでもない。
【0007】
この発明は、電子機器の大小を問わず広い範囲の電子機器に適用可能であって、確実な操作感とともに処理の量的な制御を可能とする操作インターフェースを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、この発明によるキースイッチは、
固定電極を備えた第1の回路基板と、この固定電極とともに一対のスイッチ端子をなす可動電極と、この可動電極を押下して上記固定電極に接触させるキートップを備えたキースイッチにおいて、
キートップの押下により上記可動電極と上記固定電極とが接触した後に、このキートップにさらに強い押圧を与えることで撓んだ第1の回路基板の変形量を測定する変形量測定手段、
を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係るキースイッチでは、固定電極と可動電極とが接触し短絡した後に、さらにキートップに押圧をかけ続けることによって撓んだ第1の固定基板の変形量を測定することとした。このため、キースイッチのオン・オフによる確実な操作感をユーザにもたらすとともに、押下時の押圧の強弱に基づく量的操作をも可能とするのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1によるキースイッチを適用した電子機器の斜視図である。このような電子機器の例として、ここで携帯電話端末をとりあげて説明する。図に示す携帯電話端末装置1は、画像や文字などを表示する表示部2を有しており、さらに筐体面11上に単純キー12と複合キー13とを配している。
【0011】
単純キー12はスイッチ端子を一対のみ備えるキーである。したがってキーのどの部分に押圧力を作用させても同じスイッチ端子が接触することとなる。一方、複合キー13は複数対のスイッチ端子を備えており、キーに対する押圧力の作用点を変えることでキートップの沈み込み方が異なり、その結果として押圧箇所によって異なるスイッチ端子を選択的に短絡させることのできるキーである。これによって、たった一つの複合キーに複数の機能を割り当てることができる。またカーソルの移動操作やスクロール操作など、操作方向の概念をユーザに喚起させる操作を行う際に、押圧箇所と方向とを対応付けることで直感的で分かりやすい操作を可能とする。
【0012】
図2は、携帯電話端末装置1の分解斜視図である。図において、筐体面11の下には単純キー12及び複合キー13を固定するラバーシート14が配置されている。さらにその下にはドームスプリング15、回路基板16、フレーム17、回路基板18が配置されている。
【0013】
図3は、単純キー12の構造を示す断面図である。図において、単純キー12のキートップ12aは筐体面11の外部に露出するように配置されている。またラバーシート14はキートップ12aを緩やかに支持する部材であり、接着剤などでキートップ12aを固定している。キートップ12aは利用者にクリック感を与えるために、押下時に沈み込むストロークを確保する必要がある。そこでラバーシート14はキートップ12aを固定しつつも、押下時には変形することでキートップ12aの沈み込みを許している。このため、ラバーシート14はその名の通り、ゴムを素材とすることが多いが、ビニールやプラスチックを素材とする部材で代用することも可能である。
【0014】
ドームスプリング15は、復元手段の一例であって、プラスチックやラバー、金属などを初めとする弾性を有する素材で構成された部材である。その第1の目的は、キートップ12aをラバーシート14を介して支持し、それによって筐体面11から単純キー12の一部を露出させて単純キー12を押下しやすくすることである。さらに第2の目的は押下された単純キー12を元の位置に復元する復元力を発生することにある。
【0015】
この結果、単純キー12を押下する際に、ドームスプリング15を変形させるためのわずかな荷重を必要となる。この荷重をかける操作が、いわゆるクリック感をもたらす。従来の圧力センサを用いた操作インターフェースでは、ドームスプリング15に相当する部材がないため、直接的なクリック感が得られない点が大きな問題となっていた。しかしこの発明の実施の形態1によるキースイッチでは、このような問題が発生しない。
【0016】
なお、かかる目的を発揮する復元手段としては、ドームスプリング15の他に、ばねの原理を応用した種々の機構を容易に想到しうる。したがってドームスプリング15以外の構成を採用しても構わない。
【0017】
ドームスプリング15のドーム部分の頂点付近の内側(筐体面11と反対側)の面には可動電極21が固着されている。これに対して、単純キー12の押下によってドームスプリング15が変形し可動電極21が移動した場合に、可動電極21と接触するような状態で固定電極22が回路基板16上に敷設されている。回路基板16は請求項1に記載の発明において第1の回路基板に相当するものである。可動電極21と固定電極22はそれぞれ図示せぬ結線がなされており、スイッチ電極の対をなすようになっている。
【0018】
なおここで、固定電極という語は回路基板16に固着された電極ということを要する意味するものではなく、キートップの押下操作によって圧下されるようになっている可動電極に対して、キートップの押下操作では圧下されるようにはなっていないことを意味するものである。
【0019】
回路基板16は、フレーム部材17によって端部を支持された弾性部材である。このような構造を有しているので、単純キー12の押下により可動電極21が固定電極22に接触したのち、単純キー12にさらに強い押圧を加えると回路基板16に弾性変形が生じる。その結果、フレーム部材17による支持点から離れた回路基板16の中央部分は撓むこととなって変形する。
【0020】
なお固定電極22と回路基板16との組み合わせは、メンブレンスイッチとこのメンブレンスイッチを支持し、剛性を有する板状部材との組み合わせに置換することも容易である。このような構成を採用する場合、メンブレンスイッチが固定電極22に相当し、板状部材が回路基板16に相当する。
【0021】
単純キー12の押圧によって生じる回路基板16の変形量を測定するために、キートップ12aとは反対の回路基板16の面にほぼ平行となるように、回路基板18を配置する。またキートップとは反対の回路基板16の面に保護部材23を設けておき、さらに歪みゲージ24を保護部材23と回路基板18とに嵌合されるように回路基板18上に設ける。これら回路基板16と歪みゲージ24は変形量測定手段の一例をなすものである。
【0022】
この結果、回路基板16の中央部分が撓むことによって、保護部材23と歪みゲージ24が接触して歪みゲージ24を押圧することになる。歪みゲージ24は押圧されることによって変形し、その結果抵抗値などの電気特性が変化する。この電気特性の変化を検出することにより回路基板16の変形量を求めるのである。
【0023】
ここで回路基板16と回路基板18とを「ほぼ平行」に設けるとは、歪みゲージ24による測定誤差精度が適切な範囲内に保たれるように、回路基板16と回路基板18とを設置した状態を指す。例えば回路基板16に対して回路基板18が傾いた状態で設置されると、キートップ12aを押下する力ベクトルが回路基板16に対して垂直でない場合、力ベクトルの方向によっては歪みゲージ24の歪み方が一様でなくなり、歪みゲージ24の測定誤差が高くなる。回路基板16と回路基板18とを「ほぼ平行」に設けることで、キートップ12aを押下する力ベクトルの方向によらず歪みゲージの歪み方がほぼ一定になり安定した測定が行えるのである。
【0024】
なお、保護部材23を省略し、回路基板16と回路基板18が歪みゲージ24を直接的に嵌合するような構成としても、回路基板16の撓みに基づく変形量を取得することができることはいうまでもない。しかし、保護部材23を設けることで次のような効果を生ずる。まず、歪みゲージ24と接触する回路基板16の損傷を防止するという効果である。これは回路基板16上に精密な電気回路を配置する上で有利である。
【0025】
さらに、保護部材23を設けることで、回路基板の歪みゲージ24側の凹凸の影響を少なくすることができる。またフレーム17の高さ(回路基板16と回路基板18との間隔)と歪みゲージ24の高さとの差を調節する役割をも担う。
【0026】
次に、複合キー13の構造について説明する。図4は、複合キー13の拡大正面図である。図において複合キー13の中央部分130(以下、部位130という)は周囲より若干ドーム状に盛り上がっており、利用者にこの部分の押下操作が可能であることを知らしめている。また部位131、部位132、部位133、部位134には目盛りのような表示が印字ないし刻印されており、部位131〜134のみの押下が可能であることを利用者に知らしめている。複合キー13はキーの一部のみを押下できるような構造を有している。すなわち、例えば部位131付近を力の作用点として複合キー13を押下した場合と、部位133付近を力の作用点として複合キー13を押下した場合とでは、異なる可動電極と固定電極との対が短絡するようになっている。
【0027】
図5は、このような構造を実現するためのキーの内部構造を図示した複合キー13の断面図である。図において、図3と同一の符号を付している部位は、単純キー12と同一の部材あるいは一体に成形された部材であることを意味している。キートップ13aは複合キー13のキートップであって、この図では部位130付近、部位131付近、部位133付近の断面が示されている。
【0028】
図に示されるように、ドームスプリング15において部位130用にドーム150,部位131用にドーム151、部位133用にドーム153が設けられており、部位130、131、133を押下した場合に、それぞれ独立した反復力を発生するようになっている。またドーム150、151、153にはそれぞれ可動電極210、211、213が接着されており、それぞれの可動電極に対応して、固定電極210、211、213が回路基板16に設けられている。このような構造によって、それぞれの部位を押した場合に、独立した電極の対が短絡するのである。
【0029】
なお、キートップ13aの重心点と部位130は近い位置にあるため、部位130付近を作用点とする押下操作を行うと、キートップ13a全体が沈み込むこともありうる。このために、部位130を押した場合は、部位130用の電極210と220の短絡のみならず、他の電極の短絡も生ずることも起こりうる。この場合には、電極210と220の短絡によって発生する信号を優先するように信号処理するか、あるいは可動電極210と固定電極220の高さを他の電極よりもやや高くして、部位130付近を作用点とする押下操作を行った場合に他の電極の短絡が発生しないようにする。
【0030】
また、回路基板16にあっては、固定電極220、221、223のほぼ裏側に保護部材230、231、233がそれぞれ設けられており、さらに部位130、131,133押下時に固定基板16の変形によって、保護部材230、231、233が接触するように歪みゲージ240、241、243が固定基板18上に設けられている。
【0031】
このような構造を有することによって、複合キー13のような一部のみの押下操作によって操作するキーであっても、短絡によるスイッチング操作を各部位独立で行うことができる。さらに各部位独立の短絡後にさらに押圧をかけることによって回路基板16が撓むが、歪みゲージ240〜243がそれぞれの押下操作の変形量を検出することができる。
【0032】
なお、この構成例では歪みゲージを各押下部位に対して独立に設けることとした。しかし、回路基板16が剛性の高い部材である場合は、例えば部位131の押下によって回路基板16は、固定電極211付近のみならず、固定電極210付近も撓むことになる。そこで、歪みゲージ241や243を省略し、歪みゲージ240だけを設けるような構成とし、部位131の押下に伴う固定電極210付近の変形量を検出するようにしてもよい。
【0033】
この場合、部位131や部位133を押下した場合に回路基板16の固定電極210付近が撓む量と、部位130を押下した場合に回路基板16の固定電極210付近が撓む量とでは、同じ押圧による押下であっても異なる。そこで、短絡された電極の種類、すなわちキーの種類に基づいて、変形量を補正するようにしてもよい。こうすることで、歪みゲージの個数を削減することができるので部品点数の低減につながる。それのみならず、各キーの押圧操作に対する押圧感度を一定に保つことができるので、操作性の向上につながる。なお、変形量の補正については後述する。
【0034】
続いて、このキースイッチ機構を用いて行う携帯電話端末装置1の制御方式について説明する。図6は、この携帯電話端末装置1の回路構成をブロック図で示したものである。図において、入力キースイッチ31は図1〜図5で示した単純キー12、複合キー13の何れかである。このキースイッチの構成としては、すでに説明したように押下によって可動電極と固定電極とが短絡し、それによって回路の電気的状態が変化する。ここでは可動電極と固定電極の短絡によって、押下されたキースイッチの入力キー識別子41が出力されるようになっている。
【0035】
変形量測定手段32は、図3の回路基板18及び歪みゲージ24、あるいは図5における回路基板18及び歪みゲージ240、241、243などのように回路基板16の変形量を測定する部位である。変形量測定手段32が測定した変形量はディジタルデータに変換されて変形量42として出力されるようになっている。なお、図においては入力キースイッチ31と変形量測定手段32はそれぞれ1つずつしか記載されていないが、複数のキーに対してそれぞれ入力キースイッチ31と変形量測定手段32を設ける構成も可能であることはいうまでもない。
【0036】
キーコントローラ33は、入力キースイッチ31と変形量測定手段32の状態を検出する回路又は素子である。入力キースイッチ31の可動電極と固定電極とが接触して短絡したことを検出すると、キーコントローラ33はどのキースイッチが短絡したのかを入力キー識別子41に基づいて判断し、さらに変形量42を取得してキーマップテーブル34に記録するとともに割り込み信号43を発生する。キーマップテーブル34はキースイッチの状態を記憶するための記憶装置である。
【0037】
さらにキーコントローラ33は、最初に入力キースイッチ31の可動電極と固定電極との短絡を検出してから短絡状態が一定時間以上継続している場合には、再び入力キースイッチ31と変形量測定手段32の状態を検出し、その時点での入力キー識別子41と変形量42をキーマップテーブル34に各キーの状態を記録して、割り込み信号43を発生する。このように構成することで、同一の入力キーを所定の時間以上押し続けると、割り込み信号43が複数回発生することになる。これによってキーリピート機能を実現することが可能となる。また入力キースイッチ31の状態とともに、各時間の変形量42も取得することとしたので、利用者が一度の押下操作の間に押圧の強弱に変化を検出することが可能となる。
【0038】
制御手段35は回路基板16あるいは回路基板18などのように基板上に配置されたDSP(Digital Signal Processor)あるいはCPU(Central Processing Unit)で構成された回路であって、割り込み信号43に基づいて、携帯電話端末装置1の備える各種機能、例えば表示部2などの表示手段36、無線通信を行う通信手段37、音楽データの再生を行う音楽再生手段38、カメラなどの撮像手段39、その他の機能を制御するようになっている。
【0039】
変形量補正手段36は、キースイッチの変形量測定手段32が測定する変形量を増減することで変形量の補正を行う部位である。
【0040】
続いて、携帯電話端末装置1の処理について説明する。ここでは動作例の1つとして、利用者が複合キー13の部位133付近を押下した場合に、表示手段37の画面をスクロールする場合の処理について説明する。図7は、利用者による携帯電話端末装置1のキー操作時における携帯電話端末装置1の処理のフローチャートである。
【0041】
利用者が入力キースイッチ31として複合キー13の部位133を押下すると、キーコントローラ33は複合キー13の可動電極213と固定電極223が短絡したことを検出して、入力キー識別子41(部位133が押下されたことを一意に識別する情報)と変形量42(歪みゲージ243の変形量に基づく情報)をキーマップテーブル34に記録する。それと同時に割り込み信号43を発生する。制御手段33は割り込み信号43を受信し、割り込みベクターテーブルなどを参照して割り込み信号43に対応する割り込みハンドラを実行する。割り込みハンドラの処理の内容としては入力キー識別子41を待ち行列に格納して終了するだけの処理としておき、後に図7のフローチャートに示されるような処理を実行するようにしてもいいし、図7のフローチャートの処理を直接割り込みハンドラとして記載してもよい。以下、図7のフローチャートの処理が割り込みハンドラとなっているものとして説明する。
【0042】
制御手段35は、割り込み信号43に基づいて押下された入力キーが部位133か否かを判断する(ステップST101)。部位133でない場合(ステップST101:No)は、スクロール処理を利用者が指定しているわけではないので他の操作の処理に移行する。部位133が押下された場合は、変形量補正手段36から補正済みの変形量44を取得する(ステップST102)。
【0043】
ここで、変形量補正手段36が変形量42から補正済み変形量44を算出する方法としては、まず、変形量42に所定の係数を乗算してその乗算結果を変形量44とする補正方法や変形量42に所定の値を加算あるいは減算して変形量44とする補正方法などが考えられる。
【0044】
ここでは、所定の係数を乗算する方法について詳しく説明する。このような係数として1以上の値を選択し、その係数を変形量42に乗算すると変形量44は変形量42よりも大きな変形量となるし、1未満の係数(ただし正の数)を乗算すると変形量42よりも小さな変形量となる。係数の算出方法は補正の目的に応じて異なる。補正の目的としてまず考えられるのは、キースイッチと回路基板16、フレーム部材17との位置関係によってキースイッチに同一の押圧加重を加えた場合であっても、キースイッチ間で回路基板16の撓み方が異なるので、そのような差異を小さくすることである。
【0045】
いま、フレーム部材17から離れた位置にある第1のキースイッチとフレーム部材17に近い位置にある第2のキースイッチが配置されているものとする。ある所定の押圧荷重を第1のキースイッチに加えた場合に回路基板16が撓む量(第1の変形量)は、この所定の押圧荷重と同一の押圧荷重を第2のキースイッチに加えた場合に回路基板16が撓む量(第2の変形量)よりも大きくなる。利用者からみれば、第1のキースイッチの方が小さな押圧荷重で大きな変形量が得られることとなるので、押しやすくかつ操作しやすいキースイッチと感じられ、第2のキースイッチは相対的に使いづらいキースイッチと感じられる。
【0046】
そこで、変形量補正手段36において、第1の変形量に乗する係数(第1の係数)と第2の変形量に乗する係数(第2の係数)とを、それぞれの乗算結果の差異が第1の変形量と第2の変形量との差異よりも小さくなるように選択する。変形量補正手段36は、第1のキースイッチの変形量を、第1の係数を乗ずることで補正し、また第2のキースイッチの変形量を、第2の係数を乗ずることで補正する。
【0047】
こうすることで、キースイッチの位置によらずに押圧荷重と変形量の対応関係がほぼ一様となるので、キースイッチの配置についての自由度が増すとともに、携帯電話端末装置1を利用者にとって使いやすいものとすることができる。
【0048】
また、操作者が女性や子供、老人のように比較的非力である場合に、十分な押圧加重をキースイッチに加えることができず、うまく操作できないことも考えられる。このような場合、変形量補正手段36は変形量42を一律に増幅するような補正を行うとよい。つまり、1以上の係数を変形量42に乗ずることで変形量44を算出するのである。
【0049】
さらに出荷後に利用者が携帯電話端末装置1を実際に使用して、利用者が主観的に同じ押圧であると感じられる強さで各キーを実際に押圧してみて、その差異の歪み量を基準に補正するようにしてもよい。こうすることで女性や老人のように強い押圧力が体力的に得られない場合であっても、その利用者に合わせた補正が可能となる。
【0050】
さらに筐体の端部に近い位置のキーはフレーム部材17にも近いために回路基板16が撓みにくいというだけでなく、キーを押す指に力が入りづらいということもある。このような場合に、実際に利用者による押圧テスト(キャリブレーション)を行って補正の基準とすれば、利用者のくせに合わせて使用しやすい端末装置を提供することができる。
【0051】
これによって、携帯電話端末装置1を多くの操作者にとり使いやすいものとすることができる。またキースイッチ毎に異なる値を係数に割り当てて、キースイッチの位置による回路基板16の撓みやすさの違いの影響が小さくなるようにしてもよいことはいうまでもない。
【0052】
また押下操作の持続時間に基づいて係数を変更するようにしてもよい。すなわち押下操作の持続時間が長くなるにつれて、徐々に大きな係数を変形量42に乗じて変形量44を求めるのである。押下操作の持続時間が長い場合は、より強い量やより大きな量を利用者が設定したいと考える場合が多い。一方、押下操作が長いと指が疲労して利用者の意識に反して押圧荷重が低くなる場合がある。このような場合、利用者の意識と現実の操作結果が反することとなり、操作性が劣化することとなる。押下操作の持続時間に基づいて係数を変更して補正することでこのような問題を回避することが可能となる。
【0053】
なお、ここまでの説明では変形量42に係数を乗じて変形量44に補正する方法について説明したが、変形量42に所定の値を加算あるいは減算して変形量44とする補正方法における所定の値の決定において考慮すべき点や期待される効果も係数を乗ずる補正方法の場合と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0054】
続いて制御手段35は、変形量補正手段36から取得した変形量に基づいてスクロール量を決定する(ステップST103)。変形量が大きければスクロール量を大きくする。変形量が小さければスクロール量を小さくする。最小のスクロール量は表示手段37(表示部2)に表示される文字高さを基準に決定される。次に現在の表示をスクロールし(ステップST104)、画面の表示に伴ってカーソルを移動する(ステップST105)。
【0055】
なお、この例では画面のスクロールの速度をキーの押圧で調整する処理を示したが、撮像手段40のカメラのズームの程度、音楽再生手段39の音量の調節や再生位置の選択(早送りや巻き戻し)など、このユーザインターフェースは機能の強さや量を選択する上で幅広く活用できることはいうまでもない。
【0056】
このように変形量の大小に基づいて操作の量を決定することとしたので、押下の途中で押圧を強めたり弱めたりすることで処理の速度や程度を利用者が自在に調節できるようになる。
【0057】
なお、以上においては、この発明のキースイッチの適用例として携帯電話端末装置を中心に説明したが、このキースイッチの適用例は携帯電話端末装置に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0058】
実施の形態2.
この発明の実施の形態1では、回路基板18上に歪みゲージ24を配して回路基板16が変形した場合に歪みゲージ24が嵌合されるようにしておき、キー12の押下に伴う回路基板16の変形量を検出することとした。このような構成の他にも、キーの押圧を取得する構成は可能である。例えば回路基板18と歪みゲージ24の組み合わせに替えて、変形量計測手段として静電容量センサを用いる方法もある。
【0059】
図8はこのようなキースイッチの構成例を示すものとして単純キー12についての断面図である。図において、図3と同一の符号を付した構成要素については実施の形態1と同様であるので説明を省略する。静電容量センサ回路基板25は、回路基板16を挟んでキートップ12aとは反対側に配置されている。また静電容量センサ回路基板25は回路基板16とフレーム部材17を挟むことによってわずかな隙間を確保している。これによって回路基板16はキートップ12aの押下に伴って可動電極21と固定電極22とが接触し、さらなる押圧によって静電容量センサ回路基板25側に撓むこととなる。
【0060】
静電容量センサ回路基板25はキートップ12aを押下する導体の接近によって生じる静電容量の変化に基づいて、導体までの距離を検出するデバイスである。例えば、利用者の指は導体であるので、可動電極21と固定電極22とが接触した位置の電圧を基準としておく。そして可動電極21と固定電極22とが接触した状態において、さらに押圧を強めて回路基板16が撓むと、利用者の指などの導体と静電容量センサ回路基板25との距離が変化するので、その変化量を検出して回路基板16の変形量に換算して押圧を算出する。
【0061】
このように静電容量センサ回路基板25を用いれば、回路基板16の撓みを導体の接近という形で検出することができるのである。実施の形態2の構成においても、図6で示したような回路構成によって回路基板16の変形量、すなわちキースイッチの押圧に基づく操作を実現できることはいうまでもない。また単純キーだけでなく、複合キー13のような構成であっても静電容量センサ回路基板25を通じて押圧を取得できることは明らかである。
【0062】
さらに、静電容量センサ回路基板25を用いた場合も、同じ押圧でありながらキーの位置で回路基板16の撓み方が異なるという点は変わらない。そこで変形量補正手段36のような部位を設けることで、歪みゲージによる変形量検出と同じように、キーによって押圧に対する距離の変化の仕方が異なっても補正して同一の操作感を実現することが可能となるのである。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明は、キースイッチやキーボード装置、端末装置に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明の実施の形態1による携帯電話端末装置の斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1による携帯電話端末装置の分解斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1による単純キーの断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1による複合キーの拡大正面図である。
【図5】この発明の実施の形態1による複合キーの断面図である。
【図6】この発明の実施の形態1による携帯電話端末装置の構成を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態1による携帯電話端末装置の処理のフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態2による単純キーの断面図である。
【符号の説明】
【0065】
11 筐体面、
12a キートップ、
15 ドームスプリング、
16 回路基板、
17 フレーム部材、
18 回路基板、
21 可動電極、
22 固定電極、
24 歪みゲージ、
25 静電容量センサ、
33 キーコントローラ、
35 制御手段、
36 変形量補正手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極を備えた第1の回路基板と、この固定電極とともに一対のスイッチ端子をなす可動電極と、この可動電極を押下して上記固定電極に接触させるキートップを備えたキースイッチにおいて、
キートップの押下により上記可動電極と上記固定電極とが接触した後に、このキートップにさらに強い押圧を与えることで撓んだ第1の回路基板の変形量を測定する変形量測定手段、
を備えたことを特徴とするキースイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のキースイッチにおいて、
変形量測定手段は、
キートップとは反対側の第1の回路基板の面にほぼ平行となるように配置された第2の回路基板と、
第1の回路基板と第2の回路基板とにより嵌合される歪みゲージと、
を備えたことを特徴とするキースイッチ。
【請求項3】
請求項1に記載のキースイッチにおいて、
変形量測定手段は、
キートップとは反対側の第1の回路基板の面にほぼ平行となるように静電容量センサを備えた第2の回路基板を配置して、キートップを押下する導体が第1の回路基板を撓ませながら静電容量センサに接近することを静電容量の変化に基づいて検出することを特徴とするキースイッチ。
【請求項4】
請求項1に記載のキースイッチにおいて、
押下されたキートップが押下前の位置に戻るように復元力を発生する復元手段を備えたことを特徴とするキースイッチ。
【請求項5】
請求項3のキースイッチにおいて、
復元手段は、キートップと可動電極との間に介在させたドームスプリングであることを特徴とするキースイッチ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のキースイッチを備えたことを特徴とする端末装置。
【請求項7】
請求項6に記載の端末装置において、
キースイッチの変形量測定手段が測定した変形量を増減する変形量補正手段、
を備えたことを特徴とする端末装置。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のキースイッチを、第1のキースイッチと第2のキースイッチとして少なくとも2個備えるとともに、
上記第1及び第2のキースイッチに加えられた同一の押圧荷重に対してこれらのキースイッチの変形量測定手段が測定する変形量をそれぞれ第1の変形量及び第2の変形量とした場合に、これら第1の変形量と第2の変形量との差が小さくなるように第1及び第2の変形量のいずれか一方又は双方を増減する変形量補正手段、
を備えたことを特徴とする端末装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の端末装置において、
キートップの押下に伴ってキースイッチの変形量測定手段によって測定される変形量を取得して出力するとともに、押下操作が一定時間以上継続する場合に、その時点において前記変形量測定手段によって測定される変形量を取得して出力するキーコントローラと、
前記キーコントローラが出力する変形量に応じてパラメータ値を増減するとともに、押下されたキースイッチに対応するコマンドを選択し、前記パラメータ値に基づいて選択したコマンドを実行する、
ことを特徴とする端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−120550(P2006−120550A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309255(P2004−309255)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】