説明

ギヤ減速装置及び車両用ドア開閉装置

【課題】小型、軽量で製造コストの削減が可能である上、異音、振動の少ないギヤ減速装置及び車両用ドア開閉装置を提供する。
【解決手段】モータ11と、モータ11の回転によって回転される入力軸20と、入力軸20に設けられた入力ギヤと、入力ギヤと噛合する出力ギヤ30と、出力ギヤ30に固定された出力軸31とを備えるギヤ減速装置である。入力ギヤは、入力ギヤの回転軸線21c方向であって、不完全部において出力ギヤ30の噛合面の両端近傍で軸受27により両端支持されたヘリカルギヤ21である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤ減速装置及び車両用ドア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1記載のギヤ減速装置及び車両用ドア開閉装置が知られている。このギヤ減速装置は、モータと、モータの回転によって回転される入力軸と、入力軸に固定された入力ギヤと、入力ギヤと噛合する中間ギヤと、中間ギヤと噛合する出力ギヤと、出力ギヤに固定された出力軸とを備えている。そして、このギヤ減速装置の出力軸とバックドアとが駆動アーム等によって連結されて車両用ドア開閉装置とされている。
【0003】
この車両用ドア開閉装置では、モータが回転すると、ホイルギヤ、電磁クラッチを介して入力軸が回転し、この入力軸の回転が入力ギヤ、中間ギヤ、出力ギヤにより減速されて出力軸に伝達される。そして、出力軸に連結された駆動アーム等を介してバックドアが開閉される。
【特許文献1】特開平2004−162432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のギヤ減速装置及び車両用ドア開閉装置では、減速のために入力ギヤ、中間ギヤ及び出力ギヤの3個のギヤを採用しているため、部品点数が多くなるのみならず、ギヤの噛合い箇所も多くなる。部品点数が多くなることから、装置全体が大型化する上、重くなり、ひいては製造コストが高騰化してしまう。また、ギヤの噛合い箇所が多くなることから、バックラッシュによる異音、振動が発生する。
【0005】
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、小型、軽量で製造コストの削減が可能である上、異音、振動の少ないギヤ減速装置及び車両用ドア開閉装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係るギヤ減速装置の特徴は、モータと、該モータの回転によって回転される入力軸と、該入力軸に設けられた入力ギヤと、該入力ギヤと噛合する出力ギヤと、該出力ギヤに固定された出力軸と、を備えるギヤ減速装置であって、前記入力ギヤはヘリカルギヤであって、その回転軸線方向で、前記入力ギヤの不完全部において前記出力ギヤの噛合面の両端近傍で軸受により両端支持されたことである。
【0007】
請求項2に係るギヤ減速装置の特徴は、請求項1において、前記ヘリカルギヤは、転造により歯部を形成した後、前記不完全部が円柱状に成形されていることである。
【0008】
請求項3に係るギヤ減速装置の特徴は、請求項1又は2において、前記不完全部には、前記軸受の内輪と嵌合する補強部材が嵌着されていることである。
【0009】
請求項4に係るギヤ減速装置の特徴は、請求項1乃至3において、前記モータのモータ出力軸と前記入力軸との間には、該モータ出力軸の回転速度を減速する減速機構と、該減速機構と前記入力軸との接続又は切断を行うクラッチと、を有することである。
【0010】
請求項5に係る車両用ドア開閉装置の特徴は、請求項1乃至4のいずれか1項記載のギヤ減速装置の前記出力軸と車両のドアとが、該出力軸の駆動力を該ドアに伝達して、該ドアを開閉する動力伝達機構によって連結されていることである。
【0011】
請求項6に係る車両用ドア開閉装置の特徴は、請求項5において、前記ヘリカルギヤの歯数は2であることである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係るギヤ減速装置においては、入力軸の回転を減速して出力軸に伝達するために、入力ギヤ(ヘリカルギヤ)と出力ギヤの2個のギヤを用いているだけであり、部品点数を少なくすることができるのみならず、ギヤの噛合い箇所を少なくすることができる。また、入力ギヤ(ヘリカルギヤ)が、入力ギヤ(ヘリカルギヤ)の回転軸線方向であって、不完全部において出力ギヤの噛合面の両端近傍で軸受により両端支持されているため、ギヤ自体の回転軸線方向の長さを短くすることができるのみならず、入力ギヤ(ヘリカルギヤ)の曲げ剛性を向上させることができ、高トルクでの使用が可能となる。したがって、このギヤ減速装置によれば、小型、軽量で製造コストの削減が可能である上、異音、振動を減少させることができる。
【0013】
請求項2に係るギヤ減速装置においては、ヘリカルギヤの不完全部が転造により円柱状に成形されるため、不完全部の歯溝を埋めることができ、ヘリカルギヤの強度を増加させることができる。なお、不完全部は部分的に歯溝が埋まらずに残される場合もある。
【0014】
請求項3に係るギヤ減速装置においては、不完全部に嵌着された補強部材により、ヘリカルギヤの強度を増加させることができる。
【0015】
請求項4に係るギヤ減速装置においては、減速機構によりモータのモータ出力軸の回転速度が減速されるため、入力ギヤ及び出力ギヤでの減速比を小さくすることができる。また、クラッチにより減速機構と入力軸との切断を行えば、手動で出力軸を回転させる場合、モータが負荷となることはない。
【0016】
請求項5に係る車両用ドア開閉装置においては、上記ギヤ減速装置を採用しているため、小型、軽量で製造コストの削減が可能である上、異音、振動を減少させることができる。
【0017】
請求項6に係る車両用ドア開閉装置においては、ヘリカルギヤの歯数は2であり、この場合、十分な強度及び高い減速比を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係るギヤ減速装置及び車両用ドア開閉装置を具体化した実施形態を図面に基づいて以下に説明する。図1は実施形態の車両用ドア開閉装置7を装着した車両1の斜視図である。車両用ドア開閉装置7は、ギヤ減速装置10と、動力伝達機構としてのアーム6、ジョイント5及びロッド4とを有している。ギヤ減速装置10の後述する出力軸にアーム6が連結され、アーム6はジョイント5によってロッド4を介してバックドア2に連結されている。このアーム6が上下に揺動することによって、バックドア2が車両1の開口部1aを開閉できる。また、バックドア2には、緩衝部材としてのダンパステー3が取付けられている。
【0019】
ギヤ減速装置10は、図2に示すように、第1ケース81及び第2ケース82を備えている。第1ケース81及び第2ケース82は、複数のネジ83により組付けられ、各々の内部に第1室81a、第2室82aが形成されている。第1室81a内には、モータ出力軸11a、ウォームホイールギヤ12、電磁クラッチ13及び駆動軸14が収納されている。また、第2ケース82内には、入力軸20、入力ギヤであるヘリカルギヤ21、補強部材としてのリング25、軸受27、出力ギヤ30及び出力軸31が収納されている。
【0020】
第1ケース81の外側には、モータ11が固定され、モータ11のモータ出力軸11aが第1ケース81内に挿入されている。このモータ出力軸11aの先端部分にはウォームギヤ(図示省略)が設けられ、ウォームギヤの歯部がウォームホイールギヤ12の歯部12aと噛合することによって、モータ出力軸11aの回転速度が減速されてウォームホイールギヤ12に伝達される。ここで、ウォームギヤとウォームホイールギヤ12とにより減速機構を構成する。また、電磁クラッチ13をONすることにより、ウォームホイールギヤ12と駆動軸14とが接続され、ウォームホイールギヤ12と駆動軸14とは同じ回転速度で回転する。また、電磁クラッチ13をOFFすることにより、ウォームホイールギヤ12と駆動軸14とは切断される。この駆動軸14は入力軸20と接続されている。
【0021】
第2室82a内においては、駆動軸14と接続された入力軸20がリング25を介して軸受27により回転可能に軸支されている。入力軸20の外周には、歯部21aの歯数が2である入力ギヤとしてのヘリカルギヤ21が設けられており、図3にも示すように、ヘリカルギヤ21の歯部21aと出力ギヤ30の歯部30aとが噛合している。また、出力ギヤ30には出力軸31が固定されている。これにより、入力軸20と出力軸31との間で高い減速比が得られる。
【0022】
次に、駆動軸14及び入力軸20の構成について詳細に説明する。駆動軸14は、図4(A)に示すように、その一端側において軸方向に孔部15が凹設され、孔部15の内周面にはセレーション15aが形成されている。また、図4(B)に示すように、入力軸20の外周には、歯数が2である歯部21aと不完全部21bとからなるヘリカルギヤ21が設けられている。この不完全部21bには、軸受27の内輪と嵌合するリング25が圧入、焼ばめ等により締結されている。また、入力軸20の一端側には円柱状の軸部22が突設され、軸部22の外周面には孔部15のセレーション15aに対応してセレーション22aが形成されている。この入力軸20のヘリカルギヤ21は、転造により歯部21aを形成した後、さらに転造により不完全部21bが円柱状に成形されるが、不完全部21bを切削により成形してもよい。そして、孔部15のセレーション15aと軸部22のセレーション22aとを嵌合することにより、駆動軸14と入力軸20とが接続される。こうして、入力ギヤであるヘリカルギヤ21は、ヘリカルギヤ21の回転軸線21c方向であって、不完全部21bにおいて出力ギヤ30の噛合面の両端近傍で軸受27により両端支持可能にされている。
【0023】
また、図4の駆動軸14及び入力軸20の代わりに、図5に示す構成の駆動軸14及び入力軸20を採用してもよい。図5(A)に示すように、駆動軸14には、その一端側において軸方向に孔部15が凹設されているだけである。入力軸20の構成は、図5(B)に示すように、図4(B)の構成と同じである。この場合は、入力軸20の軸部22を駆動軸14の孔部15に圧入することによって、駆動軸14と入力軸20とが接続される。その他の構成及びヘリカルギヤ21の製造方法は図4の場合と同様である。
【0024】
さらに、図6に示す構成の駆動軸16と入力軸20を採用することもできる。図6(A)に示すように、駆動軸16の一端側には円柱状の軸部17が突設され、軸部17の外周面にはセレーション17aが形成されている。また、図6(B)に示すように、入力軸20の一端側の不完全部21bには、リング25よりも回転軸線21c方向に長いリング26が圧入、焼ばめ等により締結されている。このリング26の内周面には軸部17のセレーション17aに対応してセレーション26aが形成されている。そして、軸部17のセレーション17aとリング26のセレーション26aとを嵌合することにより、駆動軸16と入力軸20とが接続される。なお、軸部17又はリング26の一方にのみセレーション17a、26aを設けて、図5に示す場合と同様に、圧入することによって駆動軸16と入力軸20とを接続してもよい。その他の構成及びヘリカルギヤ21の製造方法は図4の場合と同様である。
【0025】
以上の構成をした車両用ドア開閉装置7を装着した車両1では、操作スイッチ(図示省略)が押されると、バックドア2の開閉状況に応じてモータ11が正転又は逆転し、それによりモータ出力軸11aが正転又は逆転する。モータ出力軸11aの回転は、モータ出力軸11aのウォームギヤの歯部がウォームホイールギヤ12の歯部12aと噛合することによって、減速されてウォームホイールギヤ12に伝達される。そして、電磁クラッチ13がONされ、ウォームホイールギヤ12と駆動軸14とが接続される。駆動軸14と入力軸20とは接続されているため、ウォームホイールギヤ12と駆動軸14及び入力軸20とは同じ回転速度で回転する。入力軸20が回転すると、入力軸20の外周に設けられたヘリカルギヤ21の歯部21aと出力ギヤ30の歯部30aとが噛合することによって、入力軸20の回転が高い減速比で減速されて出力軸31に伝達される。出力軸31が回転すると、出力軸31に連結されたアーム6が出力軸31の軸回りに揺動する。アーム6はジョイント5によってロッド4を介してバックドア2に連結されているため、アーム6が出力軸31の軸回りに揺動することにより、バックドア2が車両1の開口部1aを開閉できる。
【0026】
なお、本実施形態においては、ヘリカルギヤ21の歯部21aの歯数が2であるギヤ減速装置10を用いたが、歯部の歯数が1〜5のヘリカルギヤであれば、十分な強度と高い減速比を得ることができるギヤ減速装置とすることができる。
【0027】
以上において、本発明のギヤ減速装置及び車両用ドア開閉装置を実施形態に即して説明したが、本発明はこれらに制限されるものではなく、本発明の技術的思想に反しない限り、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施形態の車両用ドア開閉装置を装着した車両の斜視図。
【図2】実施形態の車両用ドア開閉装置に係り、ギヤ減速装置の断面図。
【図3】実施形態の車両用ドア開閉装置に係り、図2のI−I矢視断面図。
【図4】実施形態の車両用ドア開閉装置に係り、駆動軸と入力軸との断面図。
【図5】実施形態の車両用ドア開閉装置に係り、駆動軸と入力軸との断面図。
【図6】実施形態の車両用ドア開閉装置に係り、駆動軸と入力軸との断面図。
【符号の説明】
【0029】
1…車両、2…ドア(バックドア)、4、5、6…動力伝達機構(4…ロッド、5…ジョイント、6…アーム)、7…車両用ドア開閉装置、10…ギヤ減速装置、11…モータ、12…減速機構(ウォームホイールギヤ)、13…クラッチ(電磁クラッチ)、20…入力軸、21…入力ギヤ(ヘリカルギヤ)、21a…歯部、21b…不完全部、21c…回転軸線、25…補強部材(リング)、27…軸受、30…出力ギヤ、31…出力軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、該モータの回転によって回転される入力軸と、該入力軸に設けられた入力ギヤと、該入力ギヤと噛合する出力ギヤと、該出力ギヤに固定された出力軸と、を備えるギヤ減速装置であって、
前記入力ギヤはヘリカルギヤであって、その回転軸線方向で、前記入力ギヤの不完全部において前記出力ギヤの噛合面の両端近傍で軸受により両端支持されたことを特徴とするギヤ減速装置。
【請求項2】
請求項1において、前記ヘリカルギヤは、転造により歯部を形成した後、前記不完全部が円柱状に成形されていることを特徴とするギヤ減速装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記不完全部には、前記軸受の内輪と嵌合する補強部材が嵌着されていることを特徴とするギヤ減速装置。
【請求項4】
請求項1乃至3において、前記モータのモータ出力軸と前記入力軸との間には、該モータ出力軸の回転速度を減速する減速機構と、該減速機構と前記入力軸との接続又は切断を行うクラッチと、を有することを特徴とするるギヤ減速装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のギヤ減速装置の前記出力軸と車両のドアとが、該出力軸の駆動力を該ドアに伝達して、該ドアを開閉する動力伝達機構によって連結されていることを特徴とする車両用ドア開閉装置。
【請求項6】
請求項5において、前記ヘリカルギヤの歯数は2であることを特徴とする車両用ドア開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−139038(P2007−139038A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332338(P2005−332338)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】