説明

グラフトポリマーパターン形成方法、グラフトポリマーパターン材料、導電性パターン材料の製造方法、及び導電性パターン材料

【課題】 平滑な絶縁基板との密着性が良好であり、且つ、微細な導電性パターンを形成しうる導電性パターン材料の製造方法、及び該製造方法により製造された導電性パターン材料を提供すること。
また、本発明の導電性パターン材料の製造方法に好適なグラフトポリマーパターン形成方法、及びそれにより得られたグラフトポリマーパターン材料を提供すること。
【解決手段】 エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を単体で、又は、溶媒に分散或いは溶解させた状態で接触させ、紫外線を用いてパターン露光し、露光領域に、該基板表面と直接結合するグラフトポリマーを生成させることを特徴とするグラフトポリマーパターン形成方法、及びそれにより得られたグラフトポリマーパターン材料。
前記グラフトポリマーパターン形成方法にて得られたグラフトポリマーに導電性素材を付与する工程を有することを特徴とする導電性パターン材料の製造方法、及び該製造方法により製造された導電性パターン材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフトポリマーパターン形成方法、グラフトポリマーパターン材料、導電性パターン材料の製造方法、及び導電性パターン材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固体表面のポリマーによる表面修飾は、固体表面のぬれ性、汚れ性、接着性、表面摩擦、細胞親和性などの性質を変えることができるため、工業的な分野で幅広く研究されている。その中でも、固体表面にパターン状にグラフトポリマーを生成させて表面修飾する方法は、グフトポリマーの有する特異的な性質がパターン状に反映されるため、印刷原板、区画培養、及び色素画像形成などの各分野で用いられている。
【0003】
また、このようなグラフトポリマーパターンを応用したものとして、支持体表面に、親水性を示すグラフトポリマーによるパターンを形成し、その親水性パターンに導電性素材層を形成してなる導電性パターン材料が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このような導電性パターン材料は、高解像度で、断線のない微細な導電性パターンが得られることがから、種々の微細回路をはじめ、様々な用途に適用することができる。
【0004】
微細回路を作製する上で、配線が微細であることに加え、基板と導電性パターンとの密着性に優れることが望まれる。また、その基板としては、熱的特性、機械的特性、電気特性に優れ、かつ、コストも安価であるため、エポキシ樹脂を用いた絶縁が好ましく用いられる。
このような絶縁基板と導電性パターンとの密着性を向上させる目的で、絶縁基板表面の粗面化が行われる。通常は、その表面にJIS B 0601に準じて測定した表面の十点平均粗さ(Rz値)換算で3〜5μm程度の凹凸が付与される。このような絶縁基板表面の凹凸は、形成される回路パターンのライン/スペースの値が30/30μm以上である場合には比較的問題となりにくいが、これより精細なパターン、例えば、25/25μm以下の線幅の回路パターン形成においては、高密度の極細線回路線が、絶縁基板表面の凹凸の影響をうけるため、大きな懸念となる。
【0005】
このため、ライン/スペースの値が25/25μm以下であるような高精細の回路パターンの形成には、表面平滑性の高い絶縁基板、例えば、Rz値換算で3μm以下、更に望ましくは1μm以下の平滑性を有する絶縁基板であっても、高強度の接着性を有する導電性パターンを形成しうる技術が切望されている。
特に、配線分野において多く使用されているエポキシ樹脂基板を用いた微細配線基板において、表面が平滑な基板に対し接着性の高い導電性パターンを備えることは、将来の技術として重要な位置付けにある。
【特許文献1】特開2003−114525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の技術の欠点を考慮してなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
本発明の目的は、平滑な絶縁基板との密着性が良好であり、且つ、微細な導電性パターンを形成しうる導電性パターン材料の製造方法、及び該製造方法により製造された導電性パターン材料を提供することである。
また、本発明の目的は、本発明の導電性パターン材料の製造方法に好適なグラフトポリマーパターン形成方法、及びそれにより得られたグラフトポリマーパターン材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記従来における問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明のグラフトポリマーパターンの形成方法は、エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を単体で、又は、溶媒に分散或いは溶解させた状態で接触させ、紫外線を用いてパターン露光し、露光領域に、該基板表面と直接結合するグラフトポリマーを生成させることを特徴とする。
また、本発明の導電性パターン材料の製造方法は、エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を単体で、又は、溶媒に分散或いは溶解させた状態で接触させ、紫外線を用いてパターン露光し、露光領域に、該基板表面と直接結合するグラフトポリマーを生成させる工程と、該グラフトポリマーに導電性素材を付与する工程と、を有することを特徴とする。
これらの本発明において用いられる分子内に重合性基を有する化合物としては、マクロモノマー又は側鎖及び末端の少なくとも1箇所に重合性基を有するポリマーが好ましい。
また、このような重合性基を有する化合物を組成物として基板表面に接触させる場合、該組成物中には、分子内に重合性基を有する化合物及び分散媒又は溶媒以外に、重合反応に関与する化合物を含まないことが好ましく、特に、重合開始能を有する化合物を含有しないことが好ましい。
【0008】
本発明の導電性パターン材料の製造方法において、グラフトポリマーに導電性素材を付与する工程は、該グラフトポリマーの側鎖官能基に無電解メッキ触媒若しくはその前駆体を吸着させ、その後、無電解メッキを行う工程であることが好ましい態様である。
また、エポキシ樹脂を主成分とする基板として、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した平均粗さ(Rz)が3μm以下であるものを用いることも好ましい。このような平均粗さを達成するために、エポキシ樹脂を主成分とする基板表面には、電子線照射、プラズマ照射、グロー処理などの高エネルギー付与による表面活性化処理や、機械的粗面化処理等の前処理(表面処理)を施さないことが好ましい。
【0009】
本発明のグラフトポリマーパターン材料は、エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を重合開始剤の非存在下で接触させ、紫外線にてパターン露光することで、該基板表面にグラフトポリマーをパターン状に生成させてなることを特徴とする。
また、本発明の導電性パターン材料は、エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を重合開始剤の非存在下で接触させ、紫外線にてパターン露光することで、該基板表面にグラフトポリマーをパターン状に生成させた後、該グラフトポリマーに導電性素材を付与してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、平滑な絶縁基板との密着性が良好であり、且つ、微細な導電性パターンを形成しうる導電性パターン材料の製造方法、及び該製造方法によりえら得た導電性パターン材料を提供することができる。
また、本発明の導電性パターン材料の製造方法に好適なグラフトポリマーパターン形成方法、及びそれにより得られたグラフトポリマーパターン材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
≪グラフトポリマーパターンの形成方法≫
まず、本発明のグラフトポリマーパターンの形成方法について説明する。
本発明のグラフトポリマーパターンの形成方法は、エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を単体で、又は、溶媒に分散或いは溶解させた状態で接触させ、紫外線を用いてパターン露光し、露光領域に、該基板表面と直接結合するグラフトポリマーを生成させることを特徴とする。
まず、本発明に用いうるエポキシ樹脂を主成分とする基板について説明する。
【0012】
〔エポキシ樹脂を主成分とする基板表面〕
本発明においてエポキシ樹脂を主成分とする基板とは、エポキシ樹脂を30質量%以上含む基板をいう。以下、エポキシ樹脂を主成分とする基板を、単に、「エポキシ樹脂基板」や「基板」と称する場合がある。
本発明におけるエポキシ樹脂基板を構成するエポキシ樹脂は、(A)エポキシ基を1分子中に2個以上を有するエポキシ化合物と(B)エポキシ基と反応する官能基を1分子中に2個以上有する化合物との反応物からなる。(B)における官能基としてはカルボキシル基、水酸基、アミノ基、チオール基などの官能基から選ばれる。
【0013】
(A)エポキシ基を1分子中に2個以上を有するエポキシ化合物(エポキシ樹脂と称されるものを含む)としては、エポキシ基を1分子中に2〜50個有するエポキシ化合物であることが好ましく、エポキシ基を1分子中に2〜20個有するエポキシ化合物であることがより好ましい。ここで、エポキシ基は、オキシラン環構造を有する構造であればよく、例えば、グリシジル基、オキシエチレン基、エポキシシクロヘキシル基等を示すことができる。このような多価エポキシ化合物は、例えば、新保正樹編「エポキシ樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社刊(昭和62年)等に広く開示されており、これらを用いることが可能である。
具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0014】
本発明におけるエポキシ樹脂基板としては、エポキシ樹脂の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、エポキシ樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。これらの材料を添加する場合は、いずれも、エポキシ樹脂に対して、1〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは10〜80質量%の範囲で添加される。この添加量が、1質量%未満である場合は、上記の特性を強化する効果がなく、また、200質量%を超えると場合には、エポキシ樹脂特有の強度などの特性が低下し、更には、グラフト重合反応も進行しなくなる。
【0015】
本発明に適用される特に好ましいエポキシ樹脂基板の一つとして、プリント電気配線分野で使用されるエポキシ樹脂基板が挙げられる。具体的には、例えば、特開2001−181375号公報記載の(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、(B)フェノール系硬化剤、(C)ビスフェノールS骨格を有し、重量平均分子量が5,000乃至100,000であるフェノキシ樹脂、及び(D)硬化促進剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物や、特開2002−179887号公報記載の、(A)フェノキシホスファゼン化合物又は縮合型リン酸エステル化合物、(B)リン含有ポリエポキシド化合物、(C)窒素含有エポキシ樹脂用硬化剤、及び(D)無機充填剤を必須成分とすることを特徴とするハロゲンフリーの難燃性エポキシ樹脂組成物などを挙げることができる。
その他、特開平8−212832号、特開平10−1596号の各公報に記載の感光性を付与されたエポキシ基板、特開2002−171074号、特開2002−179887号、特開2001−49125号、及び、特開2000−198907号などの各公報に記載の難燃性エポキシ基板も本発明に適用することができる。
【0016】
本発明におけるエポキシ樹脂基板の形状としては、目的、用途により異なり、例えば、本発明により得られる導電性パターン材料を回路に適用する場合には、板状に成型されることが好ましい。その場合、基板の厚みは、一般に、1μm〜10mmの範囲であり、10μm〜5mmの範囲であることが好ましい。
【0017】
本発明に用いられるエポキシ樹脂基板は、構成する樹脂の特性により、一般的な樹脂基板を用いる場合しばしば行われる電子線照射、プラズマ照射、グロー処理などの高エネルギー付与による表面活性化処理を行うことなく、重合性化合物を接触させ、紫外線照射するのみで簡易にグラフトポリマーが生成されるという長所を有する。
また、本発明により得られる導電性パターン材料を回路に適用する場合には、微細な回路パターンの形成の観点から、エポキシ樹脂基板表面は平滑であることが好ましく、平滑であっても、上述の如く、グラフトポリマーを簡易に生成させることができる。また、このグラフトポリマーの効果により、基板表面が平滑であっても、後述する導電性パターンと絶縁基板との間に高い密着性を発現させることができる。
これらのことから、本発明におけるエポキシ樹脂基板は、何らの表面処理、前処理を行うことなく使用されることが好ましい。
【0018】
本発明においては、エポキシ樹脂基板として、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した平均粗さ(Rz)が3μm以下であるものを用いることも好ましく、Rzが1μm以下であることがより好ましい。基板の表面平滑性が上記値の範囲内、即ち、実質的に凹凸がない状態であれば、回路が極めて微細な(例えば、ライン/スペースの値が25/25μm以下の回路パターン)プリント配線板を製造する際に、好適に用いられる。
【0019】
〔グラフトポリマーの生成方法〕
本発明におけるグラフトポリマーは、一般的に、表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いて生成される。
表面グラフト重合とは、一般に、固体表面を形成する高分子化合物鎖上に活性種を与え、この活性種を起点として別の単量体を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法である。
本発明では、上記で説明したエポキシ樹脂基板表面に、重合性化合物を接触させ、紫外線をパターン状に照射することで、該エポキシ樹脂基板の露光部に活性点を発生させ、この活性点と重合性化合物の重合性基とが反応し、表面グラフト重合反応が引き起こされる。
【0020】
本発明においては、重合性化合物を単体で、又は、溶媒に分散或いは溶解させた状態でエポキシ樹脂基板表面に接触させる。このように、重合性化合物をエポキシ樹脂基板表面に接触させる際には、所望されないホモポリマーの副生を抑制する観点から、重合開始能を有する化合物の非存在下で行われることが好ましい。即ち、接触が重合性化合物単体で行われる場合には、当然他の化合物が共存しないことになるが、重合性化合物を溶剤に溶解するか、分散媒中に分散させて接触させる場合、その重合性化合物含有の液状組成物中には、重合開始剤などの重合反応に関与しうる他の化合物を含まないことを要する。従って、本発明において用いられる重合性化合物含有の液状組成物は、重合性化合物と溶媒又は分散媒との2つの主成分のみからなる組成物であることが好ましく、例え、他の化合物を含む場合であっても、所望により塗布性や面状性などの液体組成物物性の向上を目的とした界面活性剤などに限ることが好ましい。
【0021】
重合性化合物をエポキシ樹脂基板表面に接触させる方法としては、エポキシ樹脂基板を、重合性化合物含有の液状組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、該重合性化合物をそのまま接触させるか、或いは、重合性化合物含有の液状組成物を塗布・乾燥して、エポキシ樹脂基板表面に重合性化合物を含有する層(グラフトポリマー前駆体層)を形成することにより行うことが好ましい。
【0022】
重合性化合物含有の液状組成物に使用する溶剤は、主成分である重合性基や相互作用性基を有する化合物、親水性モノマーなどを溶解或いは分散することが可能であれば特に制限はないが、水、水溶性溶剤などの水性溶剤が好ましく、これらの混合物や、溶剤に更に界面活性剤を添加してもよい。
使用できる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテルの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミドの如きアミド系溶剤、などが挙げられる。
【0023】
必要に応じて溶剤に添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0024】
基板表面に組成物を液状のまま接触させてグラフトポリマー生成を行う場合には、任意に行うことができるが、塗布法により基板表面に組成物を適用する場合の塗布量としては、充分な塗布膜を得る観点からは、固形分換算で0.1〜10g/m2が好ましく、特に0.5〜5g/m2が好ましい。
形成されるグラフト膜は、膜厚が0.1〜2.0g/m2の範囲にあることが好ましく、0.3〜1.0g/m2が更に好ましく、最も好ましくは、0.5〜1.0g/m2の範囲である。
【0025】
グラフトポリマーは、エポキシ樹脂基板の片面のみに形成されても、両面に形成されてもよい。本発明においては、エポキシ樹脂基板表面に特段の前処理を施すことなく、グラフトポリマーが生成しうるため、両面へのグラフトポリマーの生成も容易に実施できる。両面にグラフトポリマーを生成しようとする場合、基板の両面に対して同時に表面グラフト重合を行ってもよいし、先ず、一方の面に対して表面グラフト重合を行った後に、他方の面に対して表面グラフト重合を行ってもよい。
【0026】
(重合性化合物)
次に、本発明において用いられる重合性化合物について説明する。
本発明において用いられる重合性化合物としては、モノマー、マクロモノマー、或いは重合性基を有する高分子化合物のいずれも用いることができる。これらの重合性化合物は公知のものを任意に使用することができる。
これらのうち、本発明のグラフトポリマーパターンの形成方法を、後述する、本発明の導電性パターンの製造方法に適用する場合、用いる重合性化合物は、後述する導電性素材付着工程の態様により、適宜、選択される。つまり、生成したグラフトポリマーに対し導電性素材を効率よく、容易に、高密度で、保持させるために、導電性素材と直接相互作用を形成しうる官能基、又は、導電性素材を効率よく保持するために用いる材料と相互作用を形成しうる官能基を有する重合性化合物を用いることが好ましい。
以下、導電性素材と直接相互作用を形成しうる官能基、及び、導電性素材を効率よく保持するために用いる材料と相互作用を形成しうる官能基を、総じて相互作用性基として説明する。
この相互作用性基としては、例えば、極性基が挙げられる。この極性基の中でも、親水性基が好ましく、より具体的には、アンモニウム、ホスホニウなどの正の荷電を有する官能基、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスソン酸基などの負の荷電を有する官能基、その他にも、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基などの非イオン性基が挙げられる。
以下、相互作用性基を有する重合性化合物について具体的に説明する。
【0027】
本発明に用いうる相互作用性基を有する重合性化合物としてのモノマーは、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルチオフェン、スチレン、エチル(メタ)アクリル酸エステル、n-ブチル(メタ)アクリル酸エステルなど炭素数1〜24までのアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。
【0028】
本発明においては、相互作用性基を有する重合性化合物として、導電性素材の付着密度向上の観点から、マクロモノマーや重合性基を有する高分子化合物が好ましく用いられる。
本発明に用いうる重合性化合物としての相互作用性基を有するマクロモノマーは、前記モノマーを用いて公知の方法にて作製することができる。本態様に用いられるマクロモノマーの製造方法は、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されている。
このようなマクロモノマーの有用な重量平均分子量は、500〜50万の範囲であり、特に好ましい範囲は1000〜5万である。
【0029】
本発明に用いうる重合性化合物としての重合性基を有する高分子化合物とは、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)を導入したポリマーを指し、このポリマーは、少なくとも末端又は側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものであり、側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものがより好ましく、末端及び側鎖にエチレン付加重合性不飽和基を有するものが更に好ましい。
この重合性基を有する高分子化合物は、前記したように親水性基等の相互作用性基を有することが好ましい。
このような重合性基を有する高分子化合物の有用な重量平均分子量は、500〜50万の範囲で、特に好ましい範囲は1000〜5万である。
【0030】
重合性基と相互作用性基とを有する高分子化合物の合成方法としては、i)相互作用性基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、ii)相互作用性基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法が挙げられる。
好ましい合成方法は、合成適性の観点から、ii)相互作用性基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により重合性基を導入する方法、iii)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
【0031】
上記i)及びii)の合成方法に用いられる相互作用性基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、より具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン(下記構造)、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニル安息香酸等が挙げられ、一般的には、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、アミド基、ホスフィン基、イミダゾール基、ピリジン基、若しくはそれらの塩、及びエーテル基などの官能基を有するモノマーが使用できる。
【0032】
【化1】

【0033】
上記相互作用性基を有するモノマーと共重合する重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシエチルメタクリレートが挙げられる。
また、上記ii)の合成方法に用いられる重合性基前駆体を有するモノマーとしては、2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜や、特開2003−335814号公報に記載の化合物(i−1〜i−60)が使用することができ、これらの中でも、特に下記化合物(i−1)が好ましい。
【0034】
【化2】

【0035】
更に、上記iii)の合成方法に用いられる相互作用性基を有するポリマー中の、カルボキシル基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、及びエポキシ基などの官能基との反応を利用して、重合性基を導入するために用いられる重合性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどがある。
【0036】
上記ii)の合成方法における、相互作用性基を有するモノマーと重合性基前駆体を有するモノマーとを共重合させた後の、塩基などの処理により重合性基を導入する方法については、例えば、特開2003−335814号公報に記載の手法を用いることができる。
【0037】
グラフトポリマーを生成する際、重合性化合物として、末端のみならず、側鎖に複数の重合性基(エチレン付加重合性不飽和基)を有するマクロモノマー、ポリマーを用いることで、生成したグラフトポリマーの生成密度やその枝分かれ量が増加する。それに伴って、相互作用性基の量も増加し、その結果、導電性素材の吸着(結合)密度が向上し、優れた導電性を得ることができる。
また、マクロモノマーやポリマーを重合性化合物として用いる場合には、塗布法に好適な粘度を有する重合性化合物含有の液状組成物を調製することが容易であり、また、この液状組成物をエポキシ樹脂基板に塗布・乾燥させることで基板上にグラフトポリマー前駆体層を形成することができる。
一方、重合性化合物としてモノマーを用いた場合には、モノマーを溶解した溶液を基板上に塗布し、その塗膜を保護層で覆ったり、モノマーを溶解した溶液中に基板を浸漬させる方法を用いる。これは、モノマーを溶解した溶液は、粘性が低く、基板表面に均一な塗膜を形成し難く、生成されるグラフトポリマーの膜厚にもバラツキができてしまうためである。
これらのことから、重合性化合物としてマクロモノマーやポリマーを使用すると、上記のような基板への接触方法を用いることができ、塗膜を保護層で被覆する工程や基板を溶液中に浸漬させる工程を必要としないため、均一な膜厚のグラフトポリマーを、容易に、生成させることができる。
【0038】
以上のことから、本発明においては、重合性化合物としてマクロモノマーやポリマーを用い、これらの溶液を、エポキシ樹脂基板表面に塗布・乾燥させてグラフトポリマー前駆体層を形成し、その上から、紫外線をパターン状に照射することで、グラフトポリマーを生成させる方法を用いることが最も好ましい。
【0039】
〔紫外線によるパターン露光〕
本発明においては、エポキシ樹脂基板表面に活性点を発生させ、グラフトを生成させるためのエネルギー付与方法として紫外線の照射を用いる。例えば、UVランプ、ブラックライトなどによる光照射が可能である。
光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。また、g線、i線、Deep−UV光も使用される。
エネルギー付与に要する時間としては、目的とするグラフトポリマーの生成量及び光源により異なるが、通常、10秒〜5時間の間である。
【0040】
本発明により形成されるグラフトポリマーパターンの解像度は露光条件に左右される。
高解像度のパターンを形成するための好ましい露光光源としては、紫外光、深紫外光などが挙げられる。高精細パターン形成のための露光方法としては、光学系を用いた光ビーム走査露光、マスクを用いた露光などが挙げられ、所望のパターンの解像度に応じた露光方法をとればよい。
高精細パターン露光としては、具体的には、i線ステッパー、g線ステッパー、KrFステッパー、ArFステッパーのようなステッパー露光などが挙げられる。
また、紫外線は比較的短波長であるため、平行光源を用いることで、パターン幅100μm以下、好ましくは0.1〜30μmのマスクフィルムを形成することで、そのマスクフィルムのパターンに応じた高精細なパターンを形成することが可能である。
【0041】
以上にような工程を経ることで、エポキシ樹脂基板表面にグラフトポリマーパターンを形成することができる。
【0042】
≪グラフトポリマーパターン材料≫
本発明のグラフトポリマーパターン材料は、エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を重合開始剤の非存在下で接触させ、紫外線にてパターン露光することで、該基板表面にグラフトポリマーをパターン状に生成させてなることを特徴とする。つまり、本発明のグラフトポリマーパターン材料は、エポキシ樹脂基板表面に、パターン状にグラフトポリマーが生成しているものであり、上述の本発明のグラフトポリマーパターン形成方法にて得ることができる。
このようなグラフトポリマーパターン材料は、表面グラフト重合の際の重合性化合物を選択することで、様々な用途に適用することができる。具体的には、例えば、医療分野における区画培養基板として、また、印刷分野における印刷版、更には、画像形成材料としてのカラーフィルターなどとして好適である。
【0043】
≪導電性パターン材料の製造方法≫
次に、本発明の導電性パターン材料の製造方法について説明する。
本発明の導電性パターン材料の製造方法は、エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を単体で、又は、溶媒に分散或いは溶解させた状態で接触させ、紫外線を用いてパターン露光し、露光領域に、該基板表面と直接結合するグラフトポリマーを生成させる工程(以下、「グラフトポリマーパターン形成工程」と称する。)と、
該グラフトポリマーに導電性素材を付与する工程(以下、「導電性素材付与工程」と称する。)と、を有することを特徴とする。
以下、工程ごとに説明する。
【0044】
<グラフトポリマーパターン形成工程>
本発明の導電性パターン材料の製造方法におけるグラフトポリマーパターン形成工程は、上述の本発明のグラフトポリマーパターンの形成方法をそのまま用いることができる。そのため、ここでは、本工程についての詳細を省略する。
なお、既述の如く、本工程において用いる重合性化合物としては、後述する導電性素材付与工程の態様に合わせて、相互作用性基を有する重合性化合物であることが好ましい。
【0045】
<導電性素材付与工程>
本工程では、得られたグラフトポリマーに導電性素材を付与することで、導電性パターンを形成する。具体的な方法としては、以下の2つの態様がある。
第1の態様としては、グラフトポリマーの相互作用性基に対し金属イオン又は金属塩を吸着させた後、該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させて金属微粒子を析出させて金属パターンを形成する方法を用である。
第2の態様としては、グラフトポリマーの相互作用性基に対し無電解メッキ触媒又はその前駆体を吸着させた後、無電解メッキを行いメッキパターンを形成する方法である。
その他、本発明者が提案した、特開2003−114525号公報に記載の、グラフトポリマーの相互作用性基に対し導電性微粒子を付着させる方法を用いてもよいし、特開2003−188498号公報に記載の、グラフトポリマーの相互作用性基に対し導電性モノマーを吸着させた後、重合反応を生起させてパターン状に導電性ポリマー層を形成する方法を用いてもよい。グラフトポリマーの相互作用性基(イオン性基)に対し導電性粒子を吸着させて導電性粒子吸着パターンを形成する方法である。
以下、上記第1の態様及び第2の態様について説明する。
【0046】
(第1の態様:金属パターンの形成)
導電性素材付与工程の第1の態様は、以下に説明する金属イオン又は金属塩を、上記グラフトポリマーが有する相互作用性基、特に好ましくはイオン性基に対し、その極性に応じて、イオン的に吸着させた後、該金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させて金属単体を析出させて金属パターンを形成する方法である。なお、金属単体の析出態様によって、金属薄膜が形成されたり、金属微粒子が分散してなる金属微粒子付着層が形成される。この方法により、導電性パターンとして金属パターンが形成された導電性パターン材料が形成される。なお、
ここで、金属パターンを形成する析出された金属微粒子は、グラフトポリマーの相互作用性基と相互作用を形成しているため、基板と金属パターンとの密着性に優れると共に、充分な導電性を発現できるという利点を有する。
【0047】
(金属イオン及び金属塩)
まず、本態様において用いられる金属イオン及び金属塩について説明する。
本発明において、金属塩としては、グラフトポリマー生成領域に付与するために適切な溶媒に溶解して、金属イオンと塩基(陰イオン)に解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Ag、Cu、Al、Ni、Co、Fe、Pdが挙げられ、導電膜としてはAg、磁性膜としてはCoが好ましく用いられる。
金属塩や金属イオンは1種のみならず、必要に応じて複数種を併用することができる。また、所望の導電性を得るため、予め複数の材料を混合して用いることもできる。
【0048】
(金属イオン及び金属塩の付与方法)
金属イオン又は金属塩をグラフトポリマーに付与する際、(1)グラフトポリマーがイオン性基を有する場合には、そのイオン性基に金属イオンを吸着させる方法を用いる。この場合、上記の金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含むその溶液を、グラフトポリマーパターンを有する基材表面に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトポリマーパターンを有する基材を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、前記イオン性基には、金属イオンがイオン的に吸着することができる。これら吸着を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液の金属イオン濃度は1〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
【0049】
金属イオン又は金属塩をグラフトポリマーに付与する際、(2)グラフトポリマーがポリビニルピロリドンなどのように金属塩に対し親和性の高い場合は、上記の金属塩を微粒子状にして直接付着させる、又は、金属塩が分散し得る適切な溶媒を用いて分散液を調製し、その分散液を、グラフトポリマーパターンを有する基材表面に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトポリマーパターンを有する基材を浸漬すればよい。
グラフトポリマーが相互作用性基として親水性基を有する場合には、グラフトポリマーパターンは高い保水性を有するため、その高い保水性を利用して、金属塩が分散した分散液をグラフトポリマーパターンに含浸させることが好ましい。分散液の含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる分散液の金属塩濃度は1〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
【0050】
金属イオン又は金属塩をグラフトポリマー生成領域に付与する際、(3)グラフトポリマーが親水性基を有する場合、金属塩が分散している分散液、又は、金属塩が溶解した溶液をラフトポリマーパターンを有する基材表面に塗布するか、或いは、その分散液や溶液中にラフトポリマーパターンを有する基材を浸漬すればよい。
かかる方法においても、上述と同様に、グラフトポリマーパターンが有する高い保水性を利用して、分散液又は溶液をそのグラフトポリマーパターンに含浸させることができる。分散液又は溶液の含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる分散液の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は1〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、10秒から24時間程度であることが好ましく、1分から180分程度であることが更に好ましい。
特に、この(3)の方法によれば、グラフトポリマーの有する相互作用性基の特性に関わらず、所望の金属イオン又は金属塩を付与させることができる。
【0051】
(還元剤)
続いて、グラフトポリマーパターンに吸着又は含浸して存在する金属塩、或いは、金属イオンを還元しるために用いられる還元剤について説明する。
本発明において用いられる還元剤は、金属イオンを還元し、金属単体を析出させる物性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、次亜リン酸塩、テトラヒドロホウ素酸塩、ヒドラジンなどが挙げられる。
これらの還元剤は、用いる金属塩、金属イオンとの関係で適宜選択することができるが、例えば、金属イオン、金属塩を供給する金属塩水溶液として、硝酸銀水溶液などを用いた場合にはテトラヒドロホウ素酸ナトリウムが、二塩化パラジウム水溶液を用いた場合には、ヒドラジンが、好適なものとして挙げられる。
【0052】
上記還元剤の添加方法としては、例えば、グラフトポリマーパターンを有する基材表面に金属イオンや金属塩を付与させた後、水洗して余分な金属塩、金属イオンを除去した後、該表面を備えた基材をイオン交換水などの水中に浸漬し、そこに還元剤を添加する方法や、該基材表面上に所定の濃度の還元剤水溶液を直接塗布或いは滴下する方法等が挙げられる。また、還元剤の添加量としては、金属イオンに対して、等量以上の過剰量用いるのが好ましく、10倍当量以上であることが更に好ましい。
【0053】
第1の態様におけるグラフトポリマーの相互作用性基と金属イオン又は金属塩との関係について説明する。
グラフトポリマーの相互作用性基が、負の電荷を有する極性基や、カルボキシル基、スルホン酸基、若しくはホスホン酸基などの如きアニオン性のイオン性基である場合は、グラフトポリマーパターンが選択的に負の電荷を有するようになることから、ここに正の電荷を有する金属イオンを吸着させ、その吸着した金属イオンを還元させることで金属単体を析出される。
また、グラフトポリマーの相互作用性基が、特開平10−296895号公報に記載のアンモニウム基などの如きカチオン性基のイオン性基である場合は、グラフトポリマーパターンが選択的に正の電荷を有するようになり、金属イオンはそのままの形状では吸着しない。そのため、相互作用性基のイオン性基に起因する親水性を利用して、グラフトポリマーパターンに、金属塩が分散した分散液、又は金属塩が溶解した溶液を含浸させ、その含浸させた溶液の中の金属イオン又は金属塩中の金属イオンを還元させることで金属単体を析出させる。
【0054】
析出された金属単体の存在は、表面の金属光沢により目視でも確認することができるが、透過型電子顕微鏡、或いは、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて表面を観察することで、その構造(形態)を確認することができる。また、金属パターンの膜厚は、常法、例えば、切断面を電子顕微鏡で観察するなどの方法により、容易に行なうことができる。
なお、金属単体は金属微粒子として析出する場合がある。この形態を上記の顕微鏡で観察すると、グラフトポリマーパターン中にぎっしりと金属微粒子が分散していること確認される。この時、析出された金属微粒子の大きさとしては、粒径1μm〜1nm程度である。
【0055】
金属微粒子による金属パターンが形成された場合、その金属微粒子が密に分散していて外見上金属薄膜を形成しているような場合には、そのまま用いてもよいが、効率のよい導電性の確保という観点からは、形成された金属パターンを更に加熱処理することが好ましい。
加熱処理工程における加熱温度としては、100℃以上が好ましく、更には150℃以上が好ましく、特に好ましくは200℃程度である。加熱温度は、処理効率や支持体基材の寸法安定性などを考慮すれば400℃以下であることが好ましい。また、加熱時間に関しては、10分以上が好ましく、更には30分〜60分間程度が好ましい。
加熱処理による作用機構は明確ではないが、一部の近接する金属微粒子同士が互いに融着することで導電性が向上するものと考えている。
【0056】
(第2の態様:メッキパターンの形成)
導電性素材付与工程の第2の態様は、上記グラフトポリマーが有する相互作用性基に対し、グラフトポリマーの相互作用性基に対し無電解メッキ触媒又はその前駆体を吸着させた後、無電解メッキを行いメッキパターンを形成する方法である。この方法により、導電性パターンとしてメッキパターンが形成された導電性パターン材料が形成される。
このように、メッキパターンは、グラフトポリマーの相互作用性基に吸着している触媒や前駆体に対し無電解メッキされて形成されることから、メッキパターンとグラフトポリマーとが強固に結合しており、その結果、基板とメッキパターンとの密着性に優れると共に、メッキ条件により導電性を調整することができるという利点を有する。
【0057】
まず、この第2の態様における無電解メッキ触媒又はその前駆体の付与方法について説明する。
本態様において用いられる無電解メッキ触媒とは、主に0価金属であり、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。本発明においては、特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。0価金属を相互作用性領域に固定する手法としては、例えば、グラフトポリマーの相互作用性基と相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、グラフトポリマー表面に供する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように荷電を調節した金属コロイドを、ググラフトポリマーが有する相互作用性基と相互作用させることで、グラフトポリマーに金属コロイド(無電解メッキ触媒)を付着させることができる。
【0058】
本態様において用いられる無電解メッキ触媒前駆体とは、化学反応により無電解メッキ触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には上記無電解メッキ触媒で用いた0価金属の金属イオンが用いられる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解メッキ触媒である0価金属になる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンはグラフトポリマー表面に付与した後、無電解メッキ浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解メッキ触媒としてもよいし、無電解メッキ触媒前駆体のまま無電解メッキ浴に浸漬し、無電解メッキ浴中の還元剤により金属(無電解メッキ触媒)に変化させてもよい。
【0059】
実際には、無電解メッキ前駆体である金属イオンは、金属塩の状態でグラフトポリマーパターンに付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、Agイオン、Pdイオンが触媒能の点で好ましい。
【0060】
無電解メッキ触媒である金属コロイド、或いは、無電解メッキ前駆体である金属塩をグラフトポリマーパターンに付与する方法としては、金属コロイドを適当な分散媒に分散、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その溶液をグラフトポリマーパターンを有する基板表面に塗布するか、或いは、その溶液中にグラフトポリマーパターンを有する基板を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、グラフトポリマーが有する相互作用性基に、イオン−イオン相互作用、又は、双極子−イオン相互作用を利用して金属イオンを付着させること、或いは、相互作用性領域に金属イオンを含浸させることができる。このような付着又は含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液中の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は0.01〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、1分〜24時間程度であることが好ましく、5分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0061】
次に、この第2の態様における無電解メッキ方法について説明する。
無電解メッキ触媒又はその前駆体が付与された基板に対して、無電解メッキを行うことで、無電解メッキパターンが形成される。
無電解メッキとは、メッキとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解メッキは、例えば、無電解メッキ触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解メッキ触媒(金属)を除去した後、無電解メッキ浴に浸漬して行なう。使用される無電解メッキ浴としては、一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
また、無電解メッキ触媒前駆体が付与された基板を、無電解メッキ触媒前駆体がグラフトポリマーに付着又は含浸した状態で無電解メッキ浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解メッキ浴中へ浸漬される。この場合には、無電解メッキ浴中において、前駆体の還元とこれに引き続き無電解メッキが行われる。ここ使用される無電解メッキ浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
【0062】
一般的な無電解メッキ浴の組成としては、1.メッキ用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このメッキ浴には、これらに加えて、メッキ浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
無電解メッキ浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解メッキの浴は、銅塩としてCu(SO42、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤が含まれている。また、CoNiPの無電解メッキに使用されるメッキ浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解メッキ浴は、金属イオンとして(Pd(NH34)Cl2、還元剤としてNH3、H2NNH2、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのメッキ浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0063】
このようにして形成される無電解メッキパターンの膜厚は、メッキ浴の金属塩又は金属イオン濃度、メッキ浴への浸漬時間、或いは、メッキ浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、メッキ浴への浸漬時間としては、1分〜3時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0064】
以上のようにして得られる無電解メッキパターンは、SEMによる断面観察により、グラフトポリマー層中に無電解メッキ触媒やメッキ金属の微粒子がぎっしりと分散しており、更にその上に比較的大きな粒子が析出していることが確認された。界面はグラフトポリマーと微粒子とのハイブリッド状態であるため、基板表面の平均粗さ(Rz)が3μm以下であっても、基板(有機成分)と無機物(無電解メッキ触媒又はメッキ金属)との密着性が良好であった。
【0065】
また、導電性素材付与工程の第2の態様では、無電解メッキ終了後、電気メッキを行うこともできる。即ち、電気メッキは、前述の無電解メッキにより得られた無電解メッキパターンを電極として行う。これにより基板との密着性に優れた無電解メッキパターンをベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつメッキパターンを容易に形成することができる。この工程を付加することにより、導電性膜を目的に応じた厚みに形成することができる。
本態様における電気メッキの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、電気メッキに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0066】
電気メッキにより得られるメッキパターンの膜厚については、用途に応じて異なるものであり、メッキ浴中に含まれる金属濃度、浸漬時間、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、メッキパターンの膜厚は、導電性の観点から、0.3μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0067】
以上の工程を経ることで、導電性パターン材料を得ることができる。得られた導電性パターン材料には、その基板表面に、擦りなどの機械的な操作によっても剥がれることがない強固で均質な導電性パターンが形成されている。
【0068】
また、本発明の導電性パターンの製造方法では、グラフトポリマーパターン形成工程(本発明のグラフトポリマーパターン形成方法)において、重合性化合物としてマクロモノマーやポリマーを用いた場合、上述のように、均一な膜厚のグラフトポリマーパターンが生成されるため、導電性素材付与工程を経て得られた導電性パターンは、均一性に優れ、太りや細りがなく、更に、断線もしない、高周波特性に優れるものを、簡易な方法で作製することができる。これにより、本発明の導電性パターンの製造方法において、重合性化合物としてマクロモノマーやポリマーを用いた場合には、製造性に優れるという効果も有する。
【0069】
≪導電性パターン材料≫
本発明の導電性パターン材料は、エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を重合開始剤の非存在下で接触させて紫外線にてパターン露光することで、該基板表面にグラフトポリマーをパターン状に生成させた後、該グラフトポリマーに導電性素材を付与してなることを特徴とする。つまり、本発明の導電性パターン材料は、エポキシ樹脂基板表面に形成されたグラフトポリマーパターン上に導電性素材を付与させてなるもので、上述の本発明の導電性パターン材料の製造方法により得られる。
【0070】
このような導電性パターン材料は、種々の回路形成用途に使用でき、特に、微細な導電性パターンを形成することができるため、マイクロマシンや超LSIなどの回路形成、特に、プリント配線基板、多層配線板、ビルトアップ型配線板を含む広い用途が期待される。また、これ以外にも、電磁波シールド、微細電気配線、高密度磁性ディスク、磁気ヘッド、磁気テープ、磁気シート、磁気ディスクなど、各種の用途が期待でき、その応用範囲は広い。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明の権利範囲は特に以下の実施例の記載のみに限定されるものではない。
【0072】
〔エポキシ樹脂基板Aの作製〕
重量平均分子量50,000のビスフェノールA型高分子エポキシ樹脂〔エピコート1256(油化シェル社製商品名、エポキシ当量7900、樹脂固形分40質量%)〕75部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂〔エピコート1001(油化シェル社製商品名、エポキシ当量475)〕28部、ノボラック型フェノール樹脂〔BRG−558(昭和高分子社製商品名、水酸基当量106)〕6.3部に、メチルセロソルブを加えて樹脂固形分50質量%のエポキシ樹脂ワニスを調製した。このワニスを厚さ100μmのSUS基板の片面に連続的に塗布し,150℃の温度で5分間乾燥することにより厚さ50μmのエポキシ樹脂基板Aを得た。
このエポキシ樹脂基板Aの平均粗さ(Rz)を原子間力顕微鏡(AFM)で測定したところ、0.5μmであった。
【0073】
〔エポキシ樹脂基板Bの作製〕
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185、油化シェルエポキシ(株)製エピコート828)20質量部(以下、配合量は全て質量部で表す)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量215、大日本インキ化学工業(株)製エピクロンN−673)45部、フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量105、大日本インキ化学工業(株)製フェノライト)30部をエチルジグリコールアセテート20部、ソルベントナフサ20部に攪拌しながら加熱溶解させ室温まで冷却した後、そこへエピコート828とビスフェノールSからなるフェノキシ樹脂のシクロヘキサノンワニス(油化シェルエポキシ(株)製YL6747H30、不揮発分30質量%、重量平均分子量47,000)30部と2−フェニル−4、5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール粉砕品0.8部、更に微粉砕シリカ2部、シリコン系消泡剤(M501、東レダウコーニングシリコーン(株)製)0.5部を添加しエポキシ樹脂ワニスを作製した。このワニスを厚さ100μmのSUS基板の片面に連続的に塗布し、150℃の温度で5分間乾燥することにより厚さ50μmのエポキシ樹脂基板Bを得た。
このエポキシ樹脂基板Bの平均粗さ(Rz)を原子間力顕微鏡(AFM)で測定したところ、0.3μmであった。
【0074】
〔実施例1〕
<グラフトポリマー生成工程>
〔重合性化合物含有の液状組成物の塗布〕
前記のようにして得られたエポキシ樹脂基板A表面に、表面処理や前処理を行うことなく、重合性化合物としてのアクリル基と相互作用性基としてのカルボキシル基とを有するポリマー(側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー:P−1、下記合成例により得る)を含む下記組成の液状組成物1をスピンコーターで塗布した。スピンコーターは、まず300rpmで5秒間、その後1000rpmで20秒間回転させた。塗布後のエポキシ樹脂基板Aを、100℃で2分間乾燥して、膜厚2μmのグラフトポリマー前駆体層を得た。
【0075】
(重合性化合物含有の液状組成物1)
・側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー(P−1) 0.5g
・水 2.0g
【0076】
(重合性化合物:側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー(P−1)の合成)
ポリアクリル酸(平均分子量25,000)18gを、ジメチルアセトアミド(DMAC)300gに溶解し、そこに、ハイドロキノン0.41gと、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート19.4gと、ジブチルチンジラウレート0.25gと、を添加し、65℃、4時間反応させた。得られたポリマーの酸価は7.02meq/gであった。その後、1mol/l(1N)の水酸化ナトリウム水溶液でカルボキシル基を中和し、酢酸エチルを加えポリマーを沈殿させ、よく洗浄して、側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー(P−1)を18.4g得た。
【0077】
〔紫外線によるパターン露光〕
得られたグラフトポリマー前駆体層に、パターンマスク(NC−1、凸版印刷社製)を密着させるようにクリップで留め、露光機(UVX−02516S1LP01、ウシオ電機社製)を使用し、1分間、パターン露光を行った。
紫外線照射後、グラフトポリマー前駆体層を純水でよく洗浄した。
これにより、エポキシ樹脂基板A上に、上記側鎖に重合性基を持つ親水性ポリマー(P−1)が、パターン状に表面グラフト重合してなるグラフトポリマーパターンG1が形成される。
【0078】
<導電性素材付与工程>
グラフトポリマーパターンが形成されたエポキシ樹脂基板Aを、硝酸銀(和光純薬製)15質量%の水溶液に12時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、100mlの蒸留水に当該基板を浸漬し、その蒸留水中に、0.2mol/lのテトラヒドロホウ素酸ナトリウムを30ml滴下することにより、吸着している銀イオンを還元したところ、グラフトポリマーパターンの表面に均一なAg金属膜(金属微粒子分散膜)が形成された。形成されたAg金属膜は、厚さ0.1μmであった。
これにより、Ag金属パターン(導電性パターン)が形成された導電性パターン材料P1を得た。
得られたこの導電性パターン材料P1の表面を電子顕微鏡で観察したところ、ライン幅8μm、スペース幅8μmの良好なAg金属パターンが形成されていることが判明した。
【0079】
〔実施例2〕
実施例1におけるエポキシ樹脂基板Aをエポキシ樹脂基板Bに代えた以外は実施例1と同様にしてグラフトポリマーパターンG2を形成した。そして、グラフトポリマーパターンG2を用いて、実施例1と同様にして導電性パターン材料P2を得た。
また、得られたこの導電性パターン材料P2の表面を電子顕微鏡で観察したところ、ライン幅8μm、スペース幅8μmの良好なAg金属パターンが形成されていることが判明した。
【0080】
≪評価≫
上記実施例1及び実施例2で得られた導電性パターン材料P1及びP2について以下の用に評価した。
【0081】
(1.導電性の評価)
上記により得られた導電性パターン材料P1及びP2におけるAg金属パターン部分の表面導電性をLORESTA−FP(三菱化学(株)製)を用いて四探針法により測定したところ、それぞれ以下の結果が得られた。
導電性パターン材料P1: 8Ω/□
導電性パターン材料P2: 7Ω/□
【0082】
(2.導電性パターン(Ag金属パターン)の評価)
2.1 膜強度(密着性)
導電性パターン材料P1及びP2のAg金属パターンが形成された面を、JIS 5400に順じて碁盤目テープ法により膜密着性を評価した。カットした碁盤目に対するテープの引き剥がしテストを行ったところ、導電性パターン材料P1及びP2のどちらも1目の剥離も見られず、基板とAg金属パターンとの密着性が良好であることが確認された。
【0083】
2.2 耐久性
導電性パターン材料P1及びP2のAg金属パターンが形成された面を、水で湿らせた布(BEMCOT、旭化成工業(株)製)を用いて手で往復30回摺擦した。摺擦後に、目視にて表面を観察したところ、導電性パターン材料P1及びP2のいずれについても、Ag金属パターンの剥がれなどは見られなかった。
また、摺擦後の試料を、前記2.1と同様にして碁盤目テープ法により膜密着性を評価したところ、導電性パターン材料P1及びP2のどちらも、1目の剥離も見られず、摺擦後においても、Ag金属パターンと基板との密着性は低下せず、耐久性に優れることが確認された。
【0084】
〔実施例3、4〕
<導電性素材付与工程>
〔無電解メッキ〕
実施例1、2と同様にして得られたグラフトポリマーパターンG1及びG2がそれぞれ形成された基板を、硝酸パラジウム(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、下記組成の無電解メッキ浴に20分間浸漬し、導電性パターン材料P3及びP4を得た。
【0085】
(無電解メッキ浴成分)
・OPCカッパ−H T1(奥野製薬(株)製) 6mL
・OPCカッパ−H T2(奥野製薬(株)製) 1.2mL
・OPCカッパ−H T3(奥野製薬(株)製) 10mL
・水 83mL
【0086】
得られた導電性パターン材料P3及びP4の表面を、それぞれ、光学顕微鏡(ニコン製、OPTI PHOTO−2)を用いて観察したところ。導電性パターン材料P3及びP4には、いずれも、ライン幅8μm、スペース幅8μmの良好な銅メッキパターンが確認された。
【0087】
(1.導電性の評価)
上記により得られた導電性パターン材料P3及びP4における銅メッキパターン部分の表面導電性をLORESTA−FP(三菱化学(株)製)を用いて四探針法により測定したところ、それぞれ以下の結果が得られた。
導電性パターン材料P3: 7Ω/□
導電性パターン材料P4: 5Ω/□
【0088】
(2.導電性パターン(銅メッキパターン)の評価)
2.1 膜強度(密着性)
導電性パターン材料P3及びP4の銅メッキパターンが形成された面を、JIS 5400に順じて碁盤目テープ法により膜密着性を評価した。カットした碁盤目に対するテープの引き剥がしテストを行ったところ、導電性パターン材料P3及びP4のどちらも1目の剥離も見られず、基板と銅メッキパターンとの密着性が良好であることが確認された。
【0089】
2.2 耐久性
導電性パターン材料P3及びP4の銅メッキパターンが形成された面を、水で湿らせた布(BEMCOT、旭化成工業(株)製)を用いて手で往復30回摺擦した。摺擦後に、目視にて表面を観察したところ、導電性パターン材料P3及びP4のいずれについても、銅メッキパターンの剥がれなどは見られなかった。
また、摺擦後の試料を、前記2.1と同様にして碁盤目テープ法により膜密着性を評価したところ、導電性パターン材料P3及びP4のどちらも、1目の剥離も見られず、摺擦後においても、銅メッキパターンと基板との密着性は低下せず、耐久性に優れることが確認された。
【0090】
以上、実施例1〜4によれば、本発明の導電性パターン材料の製造方法にて得られた導電性パターン材料は、ライン幅及びスペース幅が共に8μmである、非常に微細な導電性パターンが形成されていることが明らかとなった。
また、これらの導電性パターンは、表面導電性にも優れ、かつ、基板との密着性やその耐久性にも優れていることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を単体で、又は、溶媒に分散或いは溶解させた状態で接触させ、紫外線を用いてパターン露光し、露光領域に、該基板表面と直接結合するグラフトポリマーを生成させることを特徴とするグラフトポリマーパターンの形成方法。
【請求項2】
前記分子内に重合性基を有する化合物が、マクロモノマー又は側鎖及び末端の少なくとも1箇所に重合性基を有するポリマーであることを特徴とする請求項1記載のグラフトポリマーパターンの形成方法。
【請求項3】
前記分子内に重合性基を有する化合物を含む分散液又は溶液に、重合開始能を有する化合物を含有しないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグラフトポリマーパターンの形成方法。
【請求項4】
エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を単体で、又は、溶媒に分散或いは溶解させた状態で接触させ、紫外線を用いてパターン露光し、露光領域に、該基板表面と直接結合するグラフトポリマーを生成させる工程と、
該グラフトポリマーに導電性素材を付与する工程と、
を有することを特徴とする導電性パターン材料の製造方法。
【請求項5】
前記分子内に重合性基を有する化合物が、マクロモノマー又は側鎖及び末端の少なくとも1箇所に重合性基を有するポリマーであることを特徴とする請求項4記載の導電性パターン材料の製造方法。
【請求項6】
前記分子内に重合性基を有する化合物を含む分散液又は溶液に、重合開始能を有する化合物を含有しないことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の導電性パターン材料の製造方法。
【請求項7】
前記グラフトポリマーに導電性素材を付与する工程が、該グラフトポリマーの側鎖官能基に無電解メッキ触媒若しくはその前駆体を吸着させ、その後、無電解メッキを行う工程であることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれか一項に記載の導電性パターン材料の製造方法。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂を主成分とする基板の、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した平均粗さ(Rz)が、3μm以下であることを特徴とする請求項4〜請求項7のいずれかの1項に導電性パターン材料の製造方法。
【請求項9】
エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を重合開始剤の非存在下で接触させ、紫外線にてパターン露光することで、該基板表面にグラフトポリマーをパターン状に生成させてなることを特徴とするグラフトポリマーパターン材料。
【請求項10】
エポキシ樹脂を主成分とする基板表面に、分子内に重合性基を有する化合物を重合開始剤の非存在下で接触させて紫外線にてパターン露光することで、該基板表面にグラフトポリマーをパターン状に生成させた後、該グラフトポリマーに導電性素材を付与してなることを特徴とする導電性パターン材料。

【公開番号】特開2006−58797(P2006−58797A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242987(P2004−242987)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】