説明

コンテンツ記録再生装置

【課題】
ネットワーク越しに著作権保護対象コンテンツを記録/ムーブする場合に、他の装置からの過剰なコネクション確立要求やデータ転送によりネットワーク機能不能状態に陥ることをユーザの負担なく防止する。
【解決手段】
通常は、認証要求およびコンテンツ転送要求を受付けるために2つのTCPソケットをリスニングモードで生成し、常に該ソケットをオープン状態とする。録画あるいはムーブを行う場合には、コンテンツ転送用ソケットのリスニングモードを解除し、ネットワーク上の他の装置からの該ソケットに対する要求を受付けないようにする。そして、録画あるいはムーブ専用のTCPソケットをリスニング・ソケットとしてオープンし、ムーブ先あるいはムーブ元装置とのデータ転送のみを受付ける。録画あるいはムーブ終了後は、前記コンテンツ転送ソケットのリスニングモードを再設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、著作権保護対象のデジタルコンテンツをハードディスク装置(以下、HDDと呼ぶ)に記録および再生する大容量記録装置に係り、特にHDD上の記録コンテンツを着脱可能な記録装置へ移動(以下、ムーブと呼ぶ)する機能に関する。
【背景技術】
【0002】
近年デジタル映像信号処理技術の発展に伴い、デジタル放送を受信するデジタルチューナ内蔵テレビ(以下、DTV)や、デジタル放送番組を録画・再生するデジタル記録装置(例えば、HDDレコーダやDVDレコーダ等)のデジタルAV装置が次々と製品化されている。
また、ブロードバンド/インターネットの普及により、これらのデジタルAV装置は通信機能を常備し、有線/無線LAN(Local Area Network)を用いてデジタルコンテンツを伝送することが可能である。この場合、伝送路上での不正コピーを防止する技術としてDTCP(Digital Transmission Contents Protection)方式が規定されている。
【0003】
DTCP方式では、(1)コンテンツ暗号/復号プロトコル、(2)暗号/復号処理に必要な鍵の共有プロトコル(認証処理)、(3)各コンテンツに付加するコピー制御情報(例えば、"Copy Free"(コピー無制限)、"Copy Never"(コピー禁止)、"Copy One Generation"(コピー1世代可)、"No More Copies"(コピー不可)等)を規定している。
前記DTCP方式に準拠するデジタル記録装置は、"Copy Free"または" Copy One Generation"のコンテンツのみを記録することができ、" Copy One Generation"のコンテンツを記録した場合にはコピー制御情報を"No More Copies"に変更し、それ以上記録することを禁止する。また、一度記録媒体に記録した" No More Copies"のコンテンツは、他の記録媒体に“ムーブ(移動)”することができ、元の記録媒体のコンテンツは削除あるいは再生不能化する。
【0004】
現在のデジタル放送では、大部分のコンテンツを"Copy One Generation"として運用しており、デジタル出力可能なインタフェースとしてはIEEE1394、有線/無線LAN(TCP/IP転送のみ)が許可されている。
IEEE1394で著作権保護対象のコンテンツを転送する場合、Asynchronous転送方式で前記認証処理を実行した後、Isochronous転送方式で前記コンテンツを暗号化して送受信を行う。同様に、有線/無線LAN(以下、IPネットワーク)でコンテンツ転送する場合、前記認証処理と前記コンテンツ転送は別々のTCPコネクションを使用し、最初に認証処理用のTCPコネクション上で認証処理を実施した後、コンテンツ転送用のTCPコネクション上で暗号化したコンテンツの転送を実行する。
【0005】
DTCP方式については、例えば下記非特許文献1で説明されている。上記ムーブ機能を実装する技術としては、例えば下記特許文献1に記載されているものがある。上記IPネットワーク上でコンテンツ転送を実装する技術としては、例えば下記特許文献2に記載されているものがある。
【0006】
【非特許文献1】「IEEE1394、AV機器への応用」、高田信司監修、日刊工業新聞社
【特許文献1】特開2004−326892号公報
【特許文献2】特開2005−301449号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記IPネットワーク上で前記コンテンツ転送する場合、少なくともコンテンツの送信側の装置は、認証処理用およびコンテンツ転送用のTCPソケットをリスニング・ソケットとして常にオープン状態とし、他の装置からの認証要求およびコンテンツ要求に応える必要がある。そのため、送信装置(A)と受信装置(B)間でコンテンツ転送中に、悪意を持った他の装置(C)が前記リスニング・ソケットに対してコネクション確立要求を連続して要求し、負荷を増大させるデータやネットワーク応答性を阻害するデータを送付し、送信装置(A)と受信装置(B)をサービス提供不能状態に陥れるような状況が発生し得る。コンテンツ視聴の場合は被害が小さいが、コンテンツ録画あるいはムーブ実行時に該状況が発生すると録画が途中で失敗し、特にムーブ実行時は元のコンテンツが削除されるため、ユーザは二度とそのコンテンツを視聴することができなくなる可能性がある。
本発明の目的は、ユーザに対して、可能な限り安全に、確実に、そして簡単にムーブ実行できる機能を備えたコンテンツ記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、
通常は、認証処理要求およびコンテンツ転送要求を受付けるために2つのTCPソケット(A1、A2)をリスニングモードで生成し、常に該ソケット(A1、A2)をオープン状態とする。
コンテンツ録画あるいはムーブを行う場合には、少なくともコンテンツ転送用のソケット(A1)のリスニングモードを解除し、IPネットワーク上の他の装置からの該ソケットに対する要求を受付けないようにする。その後、録画あるいはムーブを実行する送信装置あるいは受信装置は、予めオープン状態にする前記ソケット(A1、A2)とは別のTCPソケット(B1、B2)のポート番号と、お互いを特定する情報を相互に共有する。
そして、送信装置あるいは受信装置はTCPソケット(B1、B2)をリスニング・ソケットとしてオープンし、該送信装置あるいは受信装置のコネクション要求のみ受付ける。前記送信装置/受信装置以外の他の装置からコネクション要求を受信した場合は、エラー返信あるいは無視(無応答)する。
指定時間内に前記送信装置あるいは受信装置からコネクション要求を受信した場合は、該TCPソケット(B1、B2)のリスニングモードを解除し、以降のコネクション要求を受付けない。指定時間内に前記送信装置/受信装置からコネクション要求が来ない場合は、該TCPソケット(B1、B2)をクローズする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンテンツ記録再生装置は、他の装置からの過剰なコネクション確立要求やデータ転送によるネットワーク機能不能状態に陥ることを防ぎ、IPネットワーク経由のコンテンツ録画およびムーブを安全に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は本発明を説明するための一実施例であり、複数のコンテンツ記録再生装置を含むAVシステムの構成を示したものである。AVシステムは家庭内のネットワーク環境下での使用を想定しており、HDD内蔵DTV100、HDDレコーダ200、DTV300A、300Bが互いにEthernet(登録商標)20によりハブ30を介してデジタル接続されているものとし、部屋AにDTV100とHDDレコーダ200、部屋BにDTV300A、部屋CにDTV300Bを設置しているものとする。本実施例ではEthernet(登録商標)(登録商標)を使用しているが、IEEE1394、無線、USB等のデジタルインタフェースを使用することも可能である。
【0011】
DTV100は、アンテナ10にて受信したデジタル放送番組を視聴することができ、内蔵したHDDに該放送番組を蓄積することが可能である。また、他のHDDレコーダ200やDTV300A、300Bに対してEthernet(登録商標)20を介して放送番組のデジタル出力や制御コマンドの送受信を行うことができる。
HDD200は、内蔵あるいは着脱可能なHDDを備え、Ethernet(登録商標)20経由で受信したコンテンツを記録することができる。
DTV300A、300Bは、部屋AにあるDTV100あるいはHDD200に記録したコンテンツをEthernet(登録商標)20経由で視聴することができる。
【0012】
次に、図2を用いて、図1のDTV100の一構成について説明する。
DTV100は、チューナ処理部101、デスクランブラ102、デマルチプレクサ103、デコーダ104、入力処理部105、機器認証処理106、記録/再生処理部107、暗号/復号処理部108、通信処理部109、HDD110、モニタ111、制御部112、デジタル入出力端子114から構成される。
チューナ処理部101は、放送局から受信した複数のチャンネルから所望のチャンネルを選局し、デジタル変調された番組を復調する部分である。
デスクランブラ102は、サービス事業者と契約したチャンネルのみを受信可能とするためにかけられている放送番組のスクランブルを解除する部分である。
デマルチプレクサ103は、放送番組から音声データ、映像データを抽出する部分である。
【0013】
デコーダ104は、放送番組やHDD110に記録されたコンテンツである圧縮された音声データや映像データを復号して、元の音声信号、映像信号に伸長する部分である。これらの信号は、モニタ110へ出力する。
入力処理部105は、リモコンやタッチパネルなどを利用してユーザがDTV100を操作する部分である。
機器認証処理部106は、Ethernet(登録商標)20を介して著作権保護対象のコンテンツを転送するために、Ethernet(登録商標)20上の他のAV装置との間で特定の認証プロトコルに準拠してお互いに正規に認定された装置であるかを認証し、コンテンツの暗号/復号に使用する鍵を共有する部分である。該特定の認証プロトコルは、例えば前記DTCP方式などが挙げられる。
【0014】
記録/再生処理部107は、受信した放送番組をHDD110に記録するための記録制御と、該HDD110に記録した放送番組を再生するための再生制御を行う部分である。
暗号/復号処理部108は、放送番組やHDD110に記録されたコンテンツをEthernet(登録商標)20上で送受信する際に、前記機器認証処理部106で共有した鍵を使用して該コンテンツを暗号化あるいは復号化する部分である。
通信処理部109は、デジタル入出力端子114を介してEthernet(登録商標)20で接続した他のAV装置(例えば、HDD200やDTV300A、300B)との間でコンテンツや制御コマンドを送受信する部分である。
HDD110は、放送番組を記録する内蔵メモリである。その他に着脱可能なHDDや光ディスク、メモリカード、そしてこれらを組み合わせたハイブリッド形態などが考えられる。
【0015】
モニタ111は、放送番組やHDD110に記録されたコンテンツを表示する部分である。内蔵ではなく、DTV100に外付けの形態でも可能である。
制御部112は、DTV100における各部の動作を統括的に制御する部分である。また、本発明の特徴となるTCPソケット管理部113を含む。該TCPソケット管理部113については後述する。
【0016】
同様に、図3を用いて、HDDレコーダ200の一構成について説明する。
HDDレコーダ200は、入力処理部201、機器認証処理部202、記録/再生処理部203、暗号/復号処理部204、通信処理部205、HDD206、制御部207、デジタル入出力端子209から構成される。
入力処理部201は、リモコンやタッチパネルなどを利用してユーザがHDDレコーダ200を操作する部分である。
機器認証処理部202は、Ethernet(登録商標)20を介して著作権保護対象のコンテンツを転送するために、Ethernet(登録商標)20上の他のAV装置との間で特定の認証プロトコルに準拠してお互いに正規に認定された装置であるかを認証し、コンテンツの暗号/復号に使用する鍵を共有する部分である。該特定の認証プロトコルは、例えば前記DTCP方式などが挙げられる。
【0017】
記録/再生処理部203は、デジタル入出力端子209を介して受信したコンテンツをHDD206に記録するための記録制御と、該HDD206に記録したコンテンツを再生するための再生制御を行う部分である。
暗号/復号処理部204は、HDD206に記録されたコンテンツをEthernet(登録商標)20上で送受信する際に、前記機器認証処理部202で共有した鍵を使用して該コンテンツを暗号化あるいは復号化する部分である。
通信処理部205は、デジタル入出力端子209を介してEthernet(登録商標)20で接続した他のAV装置(例えば、DTV100やDTV300A,300B)との間でコンテンツや制御コマンドを送受信する部分である。
HDD206は、コンテンツを記録する内蔵あるいは着脱可能なメモリである。その他に光ディスク、メモリカード、そしてこれらを組み合わせたハイブリッド形態などが考えられる。
制御部207は、HDDレコーダ200における各部の動作を統括的に制御する部分である。また、本発明の特徴となるTCPソケット管理部208を含む。該TCPソケット管理部208については後述する。
DTV300A、300Bは、上記DTV100の記録/再生処理部107、HDD110を搭載しない以外は、DTV100と同様の構成とする。
【0018】
次に、図1に示したAVシステムのうち、ホームサーバ的な存在である部屋Aに設置したDTV100のHDD110に記録した放送番組を、Ethernet(登録商標)20経由で部屋Bに設置したDTV300Aで視聴するための手順400について、図4と図7を用いて説明する。
まず、DTV100の制御部112は、電源が投入時あるいはEthernet(登録商標)20が接続された時に、Ethernet(登録商標)20上の他のAV装置(例えば、HDD200やDTV300A、300B)との間で制御コマンドや各種データのやり取りを行うための制御用TCPソケットを生成し、リスニング状態に設定し、他のAV装置からの要求を受信可能な状態にする。そして、制御部112は、TCPソケット管理部113に対して制御用TCPソケットを正常に生成できたことを通知する。TCPソケット管理部113は、以降の該制御用TCPソケット上のコネクションやEthernet(登録商標)20上の他のAV装置に関する情報を管理する。TCPソケット管理部113が管理する情報700の一構成例を図7に示す。
【0019】
該制御用TCPソケットに関するデータは、制御用701として、例えば自装置のソケット情報702、接続先のAV装置のソケット情報703、接続先のAV装置の機器種別704から構成される。該情報以外にメーカー名や型式等の他の情報を付加しても良い。ここで、該制御用TCPソケットは、例えばUPnP(Universal Plug and Play)の各種データを通信するために使用する(ステップ401)。
【0020】
続いて、DTV100の制御部112は、Ethernet(登録商標)20上の他のAV装置との間で機器認証を行うための認証用TCPソケットを生成し、該ソケットをリスニング状態に設定し、他のAV装置からの認証要求を受信可能な状態にする。そして、制御部112は、TCPソケット管理部113に対して認証用TCPソケットを正常に生成できたことを通知する。TCPソケット管理部113は、以降の該認証用TCPソケット上のコネクションやEthernet(登録商標)20上の他のAV装置に関する情報を管理する。
該認証用TCPソケットに関するデータは、認証用710として、例えば鍵情報711、コネクション情報712(自装置のソケット情報713、接続先のAV装置のソケット情報714を含む)から構成される。該情報以外に現在のコネクション状態や機器認証状態等の他の情報を付加しても良い。該ソケット生成時は、該鍵情報711に「なし」を設定する。ここで、該認証用TCPソケットは、例えば前記DTCP方式の機器認証を行うために使用する(ステップ402)。
【0021】
同様に、DTV100の制御部112は、Ethernet(登録商標)20上の他のAV装置との間でコンテンツ転送を行うためのコンテンツ転送用TCPソケットを生成し、該ソケットをリスニング状態に設定し、他のAV装置からのコンテンツ送信要求を受信可能な状態にする。そして、制御部112は、TCPソケット管理部113に対してコンテンツ転送用TCPソケットを正常に生成できたことを通知する。TCPソケット管理部113は、以降の該コンテンツ転送用TCPソケット上のコネクションやEthernet(登録商標)20上の他のAV装置に関する情報を管理する。該コンテンツ転送用TCPソケットに関するデータは、コンテンツ転送用720として、例えばリスニング許可情報721、コネクション情報722(自装置のソケット情報723、接続先のAV装置のソケット情報724、コンテンツの暗号/復号に使用する鍵情報725を含む)から構成される。
【0022】
該情報以外にコンテンツのIDや転送状態等の他の情報を付加しても良い。ここで、TCPソケット管理部113は、該リスニング許可情報721に「開始」と設定する(ステップ403)。
その後、DTV100は、該他のAV装置からの各種要求待ちおよび入力処理部105を介してユーザからの操作待ち状態になる。
【0023】
ここで、部屋Bに設置したDTV300Aに対してユーザがDTV100のHDD110に記録したコンテンツの視聴を指示した場合、DTV300Aは、DTV100がステップ401でオープンした制御用TCPソケットとの間にTCPコネクションを確立する。DTV100のTCPソケット管理部113は、必要に応じて該制御用701の情報702〜704を更新する(ステップ404)。
【0024】
そして、DTV300Aは、該コネクション上でHDD110内に記録しているコンテンツの視聴要求をDTV100に対して発行する(ステップ405)。
通信処理部109を介して該要求を受信したDTV100の制御部112は、HDD110に記録したコンテンツに関する情報(例えば、タイトル、時間、画質、フォーマット、コピー制御情報等)と該コンテンツの転送時に使用する認証用/コンテンツ転送用のTCPソケットに関する情報を、DTV300Aに対して返信する(ステップ406)。
そして、DTV300Aは、必要に応じて該コネクションを破棄する(ステップ407)。
続いて、DTV300Aは、ステップ406で取得した認証用TCPソケットとの間にTCPコネクションを確立する(ステップ408)。
【0025】
そして、DTV300Aは、DTV100の機器認証処理106との間で、DTCP方式といった特定の認証プロトコルにしたがって相互に機器認証を実行し、コンテンツの暗号/復号時に使用する鍵を共有する。該機器認証に成功すると、DTV100の機器認証処理106は、TCPソケット管理部113が管理する鍵情報711に共有した鍵に関する一部あるいは全てを設定する。また、該TCPソケット管理部113は、必要に応じて該コネクション情報712を更新する(ステップ409)。
【0026】
そして、DTV300Aは、必要に応じて該コネクションを破棄する(ステップ410)。
続いて、DTV300Aは、ステップ406で取得したコンテンツ転送用TCPソケットとの間にTCPコネクションを確立する(ステップ411)。
その後、DTV300Aは、該コネクション上で、ステップ406で取得したHDD110のコンテンツの中から一つ以上のコンテンツの視聴要求をDTV100に対して発行する(ステップ412)。
【0027】
通信処理部109を介して該要求を受信したDTV100の制御部112は、記録/再生処理部107に対して視聴要求があった該コンテンツの再生を指示する。また、機器認証処理部106と暗号/復号処理部108に対してコンテンツ転送開始と該コンテンツの暗号化を実施するか否かを指示する。TCPソケット管理部113は、必要に応じて該コネクション情報722を更新する。そして、通信処理部109を介して該コンテンツをDTV300Aに転送する(ステップ413)。
【0028】
全てのコンテンツ転送を終了後は、DTV300AあるいはDTV100が必要に応じて該コネクションを破棄する(ステップ414)。
以上の手順で、部屋Bに設置したDTV300Aは、部屋Aに設置したDTV100に内蔵したHDD110のコンテンツをネットワーク越しに視聴することが可能となる。
【0029】
次に、上記DTV300AでDTV100内のコンテンツを視聴中に、DTV100のHDD110内のコンテンツを部屋Aに設置したHDDレコーダ200にムーブするための手順500について、図5と図7を用いて説明する。
ユーザが入力処理部201を介してHDDレコーダ200にDTV100内のコンテンツのムーブを指示した場合、HDDレコーダ200の制御部207は、前記DTV100の制御用TCPソケットとの間にTCPコネクションを確立する。これに伴いDTV100のTCPソケット管理部113は、必要に応じて該制御用701の情報702〜704を更新する(ステップ501)。
【0030】
そして、HDDレコーダ200の制御部207は、該コネクション上でHDD110内に記録しているコンテンツのムーブ要求をDTV100に対して発行する(ステップ502)。
通信処理部109を介して該要求を受信したDTV100の制御部112は、HDD110に記録したコンテンツに関する情報(例えば、タイトル、時間、画質、フォーマット、コピー制御情報等)と該コンテンツのムーブ時に使用するムーブ専用認証用/ムーブ専用コンテンツ転送用のTCPソケットに関する情報を、HDDレコーダ200に対して返信する(ステップ503)。
通信処理部205を介して該情報を受信したHDDレコーダ200の制御部207は、必要に応じて該コネクションを破棄する(ステップ504)。
【0031】
ステップ503でムーブ要求を受信したDTV100の制御部112は、前記ステップ403で生成したコンテンツ転送用TCPソケットのリスニング状態を解除し、現在のDTV100とDTV300A間のコンテンツ転送以外のコンテンツ送信要求を受付けない状態にする。そして、TCPソケット管理部113は、前記リスニング許可情報721に「停止」と設定する(ステップ505)。
【0032】
次に、DTV100の制御部112は、ムーブ先であるHDDレコーダ200との間で機器認証を行うためのムーブ専用認証用TCPソケットを生成し、該ソケットをリスニング状態に設定し、HDDレコーダ200からの認証要求を受信可能な状態にする。ここで、該ソケットがHDDレコーダ200以外の他の装置からコネクション要求を受信した場合は、該要求を破棄し無視する(コネクションが確立できないようにする)。また、制御部112はタイマーを起動し、所定の時間に達するまでの間HDDレコーダ200からの認証要求待ち状態にする。該時間内に認証要求を受信しなかった場合は、該ソケットを破棄する(ステップ506)。
【0033】
同様に、DTV100の制御部112は、ムーブ先であるHDDレコーダ200との間でムーブ対象のコンテンツ転送を行うためのムーブ専用コンテンツ転送用TCPソケットを生成し、該ソケットをリスニング状態に設定し、HDDレコーダ200からのコンテンツ送信要求を受信可能な状態にする。ここで、該ソケットがHDDレコーダ200以外の他の装置からコネクション要求を受信した場合は、該要求を破棄し無視する(コネクションが確立できないようにする)。また、制御部112はタイマーを起動し、所定の時間に達するまでの間HDDレコーダ200からのコンテンツ要求待ち状態にする。該時間内にコンテンツ要求を受信しなかった場合は、該ソケットを破棄する(ステップ507)。
HDDレコーダ200の制御部207は、ステップ503で取得したムーブ専用認証用TCPソケットとの間にTCPコネクションを確立する(ステップ508)。
【0034】
DTV100の制御部112は、ステップ508でHDDレコーダ200との間でコネクションが確立できると、該ムーブ専用認証用TCPソケットのリスニング状態を解除し、タイマーを停止する(ステップ509)。
その後、DTV100の機器認証処理部106は、HDDレコーダ200の機器認証処理部202との間で、特定の認証プロトコルにしたがって相互に機器認証を実行し、ムーブ対象のコンテンツを暗号/復号する際に使用する鍵を共有する。該機器認証に成功すると、DTV100の機器認証処理106は、TCPソケット管理部113が管理するムーブ専用認証用730の鍵情報733に共有した鍵に関する一部あるいは全てを設定する。また、該TCPソケット管理部113は、必要に応じて該コネクション情報731〜732を設定する(ステップ510)。
【0035】
ステップ510で機器認証に成功すると、HDDレコーダ200の制御部207は、ステップ503で取得したムーブ専用コンテンツ転送用TCPソケットとの間にTCPコネクションを確立する(ステップ511)。
DTV100の制御部112は、ステップ511でHDDレコーダ200との間でコネクションが確立できると、該ムーブ専用コンテンツ転送用TCPソケットのリスニング状態を解除し、タイマーを停止する(ステップ512)。
【0036】
その後、HDDレコーダ200の制御部207は、該コネクション上で、ステップ504で取得したHDD110のコンテンツの中から一つ以上のコンテンツのムーブ要求をDTV100に対して発行する(ステップ513)。
通信処理部109を介して該要求を受信したDTV100の制御部112は、記録/再生処理部107に対してムーブ要求があった該コンテンツの再生を指示する。また、機器認証処理部106と暗号/復号処理部108に対してコンテンツ転送開始と該コンテンツのムーブ実施を指示する。TCPソケット管理部113は、必要に応じてムーブ専用コンテンツ転送用情報740のコネクション情報741〜744を更新する。
そして、通信処理部109を介して該コンテンツをHDDレコーダ200に転送する(ステップ514)。
以上の手順で、別の部屋にあるDTV300AでDTV100内のコンテンツを視聴中に、DTV100のHDD110内のコンテンツを部屋Aに設置したHDDレコーダ200へムーブすることが可能となる。
【0037】
次に、ムーブ終了時の手順600について、図6と図7を用いて説明する。
ムーブ対象のコンテンツ転送が全て終了した場合、HDDレコーダ200の制御部207は、前記ステップ511で確立したコネクションを破棄する。TCPソケット管理部113は、ムーブ専用コンテンツ転送用情報740のコネクション情報741〜744を削除する(ステップ601)。
同様に、HDDレコーダ200の制御部207は、前記ステップ508で確立したコネクションを破棄する。TCPソケット管理部113は、ムーブ専用認証用情報730のコネクション情報731〜734を削除する(ステップ602)。
その後、DTV100の制御部112は、ムーブ専用コンテンツ転送用TCPソケットを削除し(ステップ603)、ムーブ専用認証用TCPソケットを削除する(ステップ604)。
【0038】
そして最後に、DTV100の制御部112は、前記ステップ505でリスニング状態解除したコンテンツ転送用TCPソケットをリスニング状態に設定し、他の装置からのコンテンツ送信要求を受信可能な状態にする。そして、TCPソケット管理部113は、前記リスニング許可情報721を「開始」と設定する(ステップ605)。
以上の手順で、ムーブ終了後は、DTV300AでDTV100内のコンテンツを視聴中に、他のAV装置(例えば、HDDレコーダ200、DTV300B)からのコンテンツ視聴要求を受付けることができる。
【0039】
以上から、本発明のコンテンツ記録再生装置は、ネットワーク越しのコンテンツ視聴を実現するために、認証用およびコンテンツ転送用のTCPソケットをリスニング状態に設定し、通常はネットワーク上の他の装置からの視聴要求をいつでも対応可能にする。そして、コンテンツのムーブ要求を受信した際には該コンテンツ転送用のTCPソケットのリスニング状態を解除し、現在視聴中のコンテンツ転送以外の視聴要求を受付けないように設定し、ムーブ専用の認証用およびコンテンツ転送用のTCPソケットを生成し、リスニング状態に設定する。
【0040】
そして、該TCPソケットではムーブ先装置からの要求のみに対応し、それ以外の装置からの要求は全て破棄する。また、該ムーブ先装置からの要求を受付けた後は、該TCPソケットのリスニング状態を解除し、ムーブが終了するまで該ソケットは1対1のコネクションのみ許可した状態とする。
ムーブが終了すると、前記コンテンツ転送用のTCPソケットをリスニング状態に戻し、再度他の装置からの視聴要求を対応可能とする。ムーブだけでなく、コンテンツ録画時も同様の手段を用いることができる。
これにより、他の装置からの過剰なコネクション確立要求やデータ転送によるネットワーク機能不能状態に陥ることを防ぎ、ネットワーク経由のコンテンツ録画およびムーブを安全に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態であるシステムの一構成例である。
【図2】本発明の実施形態であるHDD内蔵DTVの一ブロック構成例である。
【図3】本発明の実施形態であるHDDレコーダの一ブロック構成例である。
【図4】本発明の実施形態であるHDD内蔵DTVのコンテンツをIPネットワーク越しにDTVで視聴する手順を示す一シーケンス図である。
【図5】本発明の実施形態であるHDD内蔵DTVとHDDレコーダとの間のムーブ処理実行手順を示す一シーケンス図である。
【図6】本発明の実施形態であるHDD内蔵DTVとHDDレコーダとの間のムーブ処理終了手順を示す一シーケンス図である。
【図7】本発明の実施形態であるHDD内蔵DTVのTCPソケット管理部で管理するデータの一構成例である。
【符号の説明】
【0042】
10…アンテナ
20…Ethernet(登録商標)
30…ハブ
100…HDD内蔵DTV
200…HDDレコーダ
300A、300B…DTV
104…デコーダ
105、201…入力処理部
106、202…機器認証処理部
107、203…記録/再生処理部
108、204…暗号/復号処理部
109、205…通信処理部
110、206…HDD
111…モニタ
112、207…制御部
113、208…TCPソケット管理部
114、209…デジタル端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツを記録および再生するための記録媒体を備えたコンテンツ記録再生装置であって、
前記記録媒体にコンテンツをデジタル記録する記録部と、
前記記録媒体に記録した前記コンテンツを再生する再生部と、
前記コンテンツをIPネットワーク接続された他の装置に対して出力する出力部と、
前記ネットワーク接続された他の装置との間でお互い正規に認定された装置であることを認証し、前記コンテンツの暗号化および復号化に使用する鍵を共有する機器認証処理部と、
前記認証処理部において共有した鍵を用いて前記コンテンツを送信時に暗号化し、受信時に復号化する暗号/復号処理部と、
前記ネットワーク接続された他の装置との間で制御コマンドや各種データ、コンテンツをやり取りするための通信コネクションを生成および管理し、該通信コネクション上で該記録媒体に記録したコンテンツの転送制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記他の装置からの制御コマンドを受信するための第1のTCPソケットを生成し、常に該他の装置からの要求を受信可能な状態に設定し、
前記他の装置からのコンテンツ転送要求を受信するための第2のTCPソケットを生成し、常に該他の装置からの要求を受信可能な状態に設定し、
前記第1のTCPソケットを介して前記他の装置との間で通信コネクションを確立し、第1の装置から前記コンテンツの視聴要求を受信した際は、前記第2のTCPソケットに関する情報を該他の装置に通知し、
前記第2のTCPソケットを介して前記他の装置との間で通信コネクションを確立し、該他の装置から前記視聴コンテンツの転送要求を受信した際は、必要に応じて前記暗号/復号処理部にて該コンテンツを暗号化して前記出力部を介して送出し、
前記第1のTCPソケットを介して前記他の装置から前記コンテンツのムーブ要求を受信した際は、前記第1と第2のTCPソケットとは異なるムーブ実行時のみ使用する機器認証を行うための第3のTCPソケットとムーブ実行時のみ使用するコンテンツ転送用の第4のTCPソケットに関する情報を該他の装置に通知し、
前記第1のTCPソケットに対する前記他の装置からの要求を受信不可状態に設定し、現在実行中のコンテンツ転送以外のコンテンツ転送要求を受付けないようにし、
前記第3のTCPソケットおよび前記第4のTCPソケットを生成し、該他の装置からの要求を受信可能な状態に設定し、
前記第3のTCPソケットを介して前記ムーブ要求を発行した前記他の装置との間で通信コネクションを確立し、該第3のTCPソケットに対する前記他の装置からの要求を受信不可状態に設定し、前記機器認証処理部との間で機器認証処理を行い、ムーブ対象コンテンツの暗号化および復号化に使用する鍵を共有し、
前記第4のTCPソケットを介して前記ムーブ要求を発行した前記他の装置との間で通信コネクションを確立し、該第4のTCPソケットに対する前記他の装置からの要求を受信不可状態に設定し、該他の装置から前記ムーブ対象コンテンツの転送要求を受信した際は、前記共有した鍵を使用して暗号/復号処理部にて該コンテンツを暗号化して前記出力部を介して送出し、
ムーブを実行することを特徴とするコンテンツ記録再生装置。
【請求項2】
前記第3のTCPソケットを生成した際にタイマーを起動し、所定の時間以内に該第3のTCPソケットと前記ムーブ要求を発行した前記他の装置との間で通信コネクションが確立できなかった場合には、該第3のTCPソケットを削除することを特徴とした請求項1記載のコンテンツ記録再生装置。
【請求項3】
前記第4のTCPソケットを生成した際にタイマーを起動し、所定の時間以内に該第4のTCPソケットと前記ムーブ要求を発行した前記他の装置との間で通信コネクションが確立できなかった場合には、該第4のTCPソケットを削除することを特徴とした請求項1又は2のいずれかに記載のコンテンツ記録再生装置。
【請求項4】
前記ムーブの終了時は、前記第3のTCPソケットおよび前記第4のTCPソケットを破棄した後、前記第2のTCPソケットを常に該他の装置からの要求を受信可能な状態に再設定することを特徴とした請求項1記載のコンテンツ記録再生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−28497(P2008−28497A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196411(P2006−196411)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】