説明

コンテンツ送受信装置

【課題】伝送路における著作権保護方式によるコンテンツ転送中の送受信機に物理的移動が行われた場合にも著作権保護対象コンテンツの宅外流出を防止する。
【解決手段】本発明は、伝送路による著作権保護方式によるコンテンツファイルの転送を行なう著作権保護機能2aと、無線通信レイヤのハンドオーバーを検出するハンドオーバー検出機能2cと、上記ハンドオーバーを検出したときにRTTテストを実施するRTTテスト機能2bと、RTTテストの結果、得られたRTT値が所定の閾値以下である場合にはコンテンツ転送を継続し、一方、RTT値が所定の閾値より大きい場合には、伝送路による著作権保護方式によるコンテンツファイルの転送を中止するよう制御する主制御機能2dと、を具備するコンテンツ送受信装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツファイルの送受信を行う装置に係り、特に著作権保護方式としてDTCP−IP(Digital Transmission Content Protection over Internet Protocol)を用いたコンテンツ送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンテンツファイルを暗号化し、その著作権を保護しつつ、IPネットワーク経由で伝送路に転送する著作権保護方式としてDTCP−IPがある。このDTCP−IPは、IEEE1394などのデジタル・インタフェースに実装されていたコンテンツ保護のための規格であるDTCP(Digital Transmission Content Protection)をIPネットワーク上に展開したものであり、地上デジタル放送などのデジタル放送受信機の映像インタフェースとして推奨されている。DTCP−IPでは、コンテンツ送信デバイス(Sourceデバイス)と、コンテンツ受信デバイス(Sinkデバイス)間で認証・鍵交換を行い、コンテンツファイルを暗号化してIPパケット中に格納し、転送する。コンテンツファイルの転送範囲としては、宅内ネットワークに限定しており、宅内外の判定にはRTT(Round Trip Time)を計測し、RTT値が閾値(例えば7ms)以下であるか否かで行う。このRTTは、往復応答時間、つまり、あるデバイスから別のデバイスまでパケットが往復する時間を意味している。RTT計測は、認証・鍵交換時に行うことになっており、コンテンツファイルの転送中のRTT計測は任意となっている。尚、DTCP−IPでは、鍵長128ビットのAES(Advanced Encryption Standard)が採用されている。
【0003】
ここで、DTCP−IPを用いた技術として、例えば特許文献1では、コンテンツファイルの転送命令を受けると、外部装置が転送先往復応答時間の計測判断機能の有無を判断し、無い場合にはコピー制御情報をコピー不可に書き換え、往復応答時間が所定時間以内であることを確認した上で転送する記録再生装置に関する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2006−157734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ローカル通信機能が搭載されているコンテンツ送受信装置で、伝送路における著作権保護方式でコンテンツファイルを転送した場合、当該コンテンツファイルの転送開始時(RTT計測時)には宅内であった場合であっても、コンテンツ送受信装置の物理的な移動によりローカル通信無線レイヤのハンドオーバーが実施されると、その結果として、宅外での再生が可能となるので、著作権保護対象のコンテンツファイルが宅外に流出する脆弱性がある。
【0005】
本発明の目的とするところは、伝送路における著作権保護方式によるコンテンツファイルの転送中にコンテンツ送受信装置の物理的移動があった場合でも、著作権保護対象であるコンテンツファイルの宅外流出を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、伝送路で著作権保護方式によるコンテンツファイルの転送を行う著作権保護手段と、無線通信レイヤのハンドオーバーを検出するハンドオーバー検出手段と、上記ハンドオーバーを検出したときにRTTテストを実施するRTTテスト手段と、このRTTテスト手段によるRTTテストの結果を判定し、当該RTTテストの結果、得られたRTT値が所定の閾値以下である場合には伝送路による著作権保護方式によるコンテンツファイルの転送を継続し、一方、RTT値が所定の閾値より大きい場合には、伝送路による著作権保護方式によるコンテンツファイルの転送を中止するよう制御する、主制御手段と、を具備することを特徴とするコンテンツ送受信装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、伝送路における著作権保護方式によるコンテンツファイルの転送中に物理的移動があった場合でも、著作権保護対象であるコンテンツファイルの宅外流出を防ぐことが可能なコンテンツ送受信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の第1乃至第3の実施の形態について説明する。
【0009】
本発明の第1乃至第3の実施の形態に係るコンテンツ送受信装置は、伝送路にて著作権保護方式であるDTCP−IPに基づきコンテンツファイルの転送が行われている場合において、ローカル通信無線レイヤのハンドオーバーが行われたことを検出すると、RTTテストを実施し、RTT値が閾値(例えば7ms)以下でない場合にはネットワークにおける著作権保護対象であるコンテンツファイルの転送を中止するものである。ここで、コンテンツファイルとは、映像、音声などのメディア情報を含む広い概念である。
【0010】
以下、各実施の形態について詳述する。
【0011】
(第1の実施の形態)
先ず、図1には本発明の第1の実施の形態に係るコンテンツ送受信装置の構成を示し説明する。この図1に示されるように、コンテンツ送受信装置100は、アンテナ4を備えた無線部1と、経路制御部2、データベース(以下、DBと称する)3を有している。
【0012】
より詳細には、経路制御部2は、著作権保護機能2a、RTTテスト機能2b、ハンドオーバー検出機能2c、そして主制御機能2dを少なくとも有している。
【0013】
このような構成において、無線部1はアンテナ4を介してローカル無線通信中継器(以下、単に「中継器」と略記する)との通信を実施するものである。より具体的には、アンテナ4から受信された無線信号を周波数変換し、この変換した信号をAD変換によってデジタル信号に変換する。経路制御部2において、著作権保護機能2aはDTCP−IP等の著作権保護方式による通信を制御する機能である。RTTテスト機能2bは、RTTテストを実施する機能であり、ハンドオーバー検出機能2cは、例えば中継器の電界強度等に基づいてハンドオーバーを検出する機能である。そして、主制御機能2dは、コンテンツ送受信装置全体の経路制御を司る機能である。また、DB3は中継器の識別子(ここでは、MACアドレス)を少なくとも管理している。
【0014】
このRTTテストでは、1つの通信パケットが送信元から送信先まで行き、再び送信元に戻ってくるまでに要する時間を計測し、当該時間が予め定められた閾値以下であるか否かを判断する。尚、DTCP−IPでは、IP網経由で情報をやりとりする時に、家庭内に閉じたものであるかの判断基準として、このRTTのほか、TTL(time-to-live)を利用する。TTLは、IPパケットが通過できる中継器の残り数を示す。中継器を通過する度に1ずつ減る。TLLが0になったパケットを受け取った中継器は、該パケットを中継せずに破棄する。例えばTTLは3と規定し、ローカライゼーションを実現する。
【0015】
また、ハンドオーバーとは、コンテンツ送受信装置による通信が途切れないようにするために移動に応じて接続先の中継器を順次切り替える技術である。一般に、コンテンツ送受信装置が、たとえばPHSや携帯電話機である場合には、ある中継器がカバーするエリア(セル)から別のエリアへ移動すると、該エリアをカバーする中継器に接続が切り替わり、通話が中断することなく継続される。また、インターネット接続では、無線LANのアクセスポイント、つまり中継器間でのシームレスな切り替えや高速走行中の車両でのWeb閲覧など、ユビキタス環境を実現することが可能となる。
【0016】
このように、第1の実施の形態に係るコンテンツ送受信装置は、伝送路における著作権保護機能2aによるコンテンツファイルの配信を行うものであり、現在接続中の中継器の識別子(MACアドレス)を保持する手段としてのDB3と、ローカル無線通信レイヤのハンドオーバーを検出する手段としてのハンドオーバー検出機能2c、ハンドオーバーをトリガにRTTテストを行い、コンテンツファイルの転送の継続可否を判断する手段としてのハンドオーバー検出機能2cを有している点に特徴の一つを有する。
【0017】
次に、図2には本発明の第1の実施の形態に係るコンテンツ送受信装置の一例として携帯電話機に適用した例を示し、著作権保護方式でのコンテンツファイルの転送の処理手順を説明する。尚、各携帯電話機100a,100bの主要な構成は図1に示した通りである。携帯電話機100aは、伝送路における著作権保護機能2aにより、著作権保護対象のコンテンツファイルをローカル無線通信経由で携帯電話機100bに転送する。
【0018】
この伝送路における著作権保護機能2aによるコンテンツファイルの転送中は、携帯電話機100bは、接続先の中継器101の識別子(ここでは、MACアドレス)をDB3に保持しておく。そして、携帯電話機100bが物理的に移動し、ローカル通信無線レイヤにてハンドオーバーを行った際には、携帯電話100bはハンドオーバー検出機能2cにより無線レイヤのハンドオーバーを検出する。後述する第2の実施の形態では、このとき、ハンドオーバー先の中継器102の識別子を確認し、以前に通信していた中継器101と異なるか否かを検出することとなる。続いて、携帯電話100bは、コンテンツファイルの転送中にRTTテスト機能2bによりRTTテストを行う。このRTTテストの際には、パケットの送信先及び受信元が中継器102を経由して、例えばRTT要求、及びRTT応答等を送受信する。こうして、RTT値が閾値以下であった場合、コンテンツファイルの転送を継続する。一方で、閾値以上であった場合には、通信障害が生じたものとして、コンテンツファイルの転送を中止する。
【0019】
以下、図3のフローチャートを参照して、本発明の第1の実施の形態に係るコンテンツ送受信装置によるコンテンツファイルの送信の処理手順を詳細に説明する。
【0020】
さて、経路制御部2が著作権保護機能2aにより、伝送路による著作権保護方式によるコンテンツファイルの転送を行なっているときに(ステップS1)、経路制御部2がハンドオーバー検出機能2cにより無線通信レイヤのハンドオーバーを検出すると(ステップS2)、経路制御部2はRTTテスト機能2bによりRTTテストを実施する(ステップS3)。そして、経路制御部2は、その主制御機能2dにより、このRTTテストの結果を判定し(ステップS4)、当該RTTテストの結果が良好であると判断した場合、即ちRTT値が所定の閾値(例えば7ms)以下である場合には、伝送路による著作権保護方式によるコンテンツファイルの転送を継続する(ステップS5)。その一方、ステップS4にて、当該RTTテストの結果が良好でないと判断した場合、即ちRTT値が所定の閾値より大きい場合には、伝送路による著作権保護方式によるコンテンツファイルの転送を中止し(ステップS6)、こうして処理を終了することになる。
【0021】
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態に係るコンテンツ送受信装置によれば物理的な移動が生じた場合においても、ハンドオーバー検出時にRTTテストを実施するようにしているので、中継器のハンドオーバーによる著作権保護対象コンテンツの宅外流出を効果的に防止することができる。 なお、携帯電話機が複数の中継器が提供しているサービスエリアの境界付近にあるときは、各中継器から受信する信号の品質が刻々と変わり頻繁にハンドオーバーが行われる場合がある。このような場合は、RTTテストも頻繁に行われることになり、携帯電話機に余計な負荷をかけるばかりでなく、電池の持ち時間を短くする原因となってしまう。
【0022】
そこで、このような場合を考慮して、ハンドオーバーが行われた際、それまで接続していた中継器の識別情報を保持するとともに、予め定められた所定時間だけRTTテストを保留し、この所定時間内に再びハンドオーバーが行われ、このハンドオーバーが行われた結果接続された中継器の識別情報が前記保持されている中継器の識別情報に一致する場合は、RTTテストを行わないようにしても良い。
【0023】
(第2の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係るコンテンツ送受信装置の構成は、先に図1で示した構成と同様であるため、ここでは同一構成については図1と同一符号をもって説明する。
【0024】
本発明の第3の実施の形態に係るコンテンツ送受信装置は、経路制御部2が主制御機能2dにより、ハンドオーバー検出機能2cによって中継器のハンドオーバーを検出した直後にはRTTテスト機能2bによるRTTテストを禁止し、ハンドオーバー後の転送速度を計測し、予め定められた所定の閾値の転送速度より高速になった時点で、RTTテスト機能2bによるRTTテストを行うよう制御することを特徴とするものである。
【0025】
以下、図4のフローチャートを参照して、本発明の第3の実施の形態に係るコンテンツ送受信装置によるコンテンツ送信の処理手順を説明する。
【0026】
経路制御部2が著作権保護機能2aにより、伝送路による著作権保護方式によるコンテンツの転送を行なっているときに(ステップS11)、経路制御部2がハンドオーバー検出機能2cにより無線通信例やのハンドオーバーを検出すると(ステップS12)、経路制御部2が主制御機能2dにより転送速度を計測し(ステップS13)、当該転送速度が予め定められた閾値以上であるか否かを判断する(ステップS14)。ここで、転送速度が閾値未満である場合には、上記ステップS23に戻り、上記処理を繰り返す。
【0027】
一方、転送速度が予め定められた閾値以上である場合には、経路制御部2はRTTテスト機能2bによりRTTテストを実施する(ステップS15)。
【0028】
そして、経路制御部2は、その主制御機能2dにより、このRTTテストの結果を判定し(ステップS16)、当該RTTテストの結果が良好であると判断した場合、即ちRTT値が所定の閾値以下である場合には、伝送路による著作権保護方式によるコンテンツ転送を継続し(ステップS17)、一方、当該RTTテストの結果が良好でないと判断した場合、即ちRTT値が所定の閾値より大きい場合には、伝送路による著作権保護方式によるコンテンツ転送を中止し(ステップS18)、こうして処理を終了する。
【0029】
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態に係るコンテンツ送受信装置によれば中継器のハンドオーバー後の輻輳制御により、転送速度が一時的に低下した時点にて、RTTテストを行う事を避けることができる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の改良・変更が可能であることは勿論である。
【0031】
例えば、前述した第1の実施の形態と第2の実施の形態とを適宜組み合わせて実施することは可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るコンテンツ送受信装置の構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係るコンテンツ送受信装置を携帯電話機に適用した例を示し、著作権保護方式でのコンテンツファイルの転送の処理手順を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るコンテンツ送受信装置によるコンテンツファイルの送信の処理手順を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係るコンテンツ送受信装置によるコンテンツファイルの送信の処理手順を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1…無線部、2…経路制御部、2a…著作権保護機能、2b…RTTテスト機能、2c…ハンドオーバー検出機能、2d…主制御機能、3…データベース、4…アンテナ、100…コンテンツ送受信装置、101…中継器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送路で著作権保護方式によるコンテンツファイルの転送を行う著作権保護手段と、
無線通信レイヤのハンドオーバーを検出するハンドオーバー検出手段と、
上記ハンドオーバーを検出したときにRTTテストを実施するRTTテスト手段と、
このRTTテスト手段によるRTTテストの結果を判定し、当該RTTテストの結果、得られたRTT値が所定の閾値以下である場合には伝送路による著作権保護方式によるコンテンツファイルの転送を継続し、一方、RTT値が所定の閾値より大きい場合には、伝送路による著作権保護方式によるコンテンツファイルの転送を中止するよう制御する、主制御手段と、を具備することを特徴とするコンテンツ送受信装置。
【請求項2】
上記主制御手段は、上記ハンドオーバー検出手段が第1のハンドオーバーを検出すると、この第1のハンドオーバーを検出したときからの経過時間を計時し、この計時された経過時間が予め定められた時間を経過する前に上記ハンドオーバー検出手段が第2のハンドオーバーを検出するとともに、この第2のハンドオーバーの後に接続された中継器が上記第1のハンドオーバーが行われる前に接続していた中継器と同じである場合は、上記RTTテスト手段によるRTTテストを行わないように制御することを特徴とする請求項1の記載のコンテンツ受信装置。
【請求項3】
上記主制御手段は、上記ハンドオーバー検出手段によってハンドオーバーを検出した直後には上記RTTテスト手段によるRTTテストを禁止し、ハンドオーバー後の転送速度を計測し、予め定められた所定の閾値の転送速度より高速になった時点で、上記RTTテスト手段によるRTTテストを行うように制御することを更に特徴とする請求項1に記載のコンテンツ送受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−65624(P2008−65624A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243114(P2006−243114)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】