説明

コンプライアントシールの方法及び装置

【課題】タービン又は圧縮機のコンプライアントプレートシールの振動を減衰させる方法及び装置を提供する。
【解決手段】シール組立体40は、固定ハウジング18の内側表面に取り付けられた複数のコンプライアントプレート部材42を含む。コンプライアントプレート部材は、固定ハウジング18とロータ20との間にシールリングを定め、部材の各々は、スロット74を含む。シール組立体は更に、固定ハウジングの内側表面に取り付けられ且つコンプライアントプレート部材内のスロットに半径方向に延びた少なくとも1つの弓形静的リング72を含む。少なくとも1つの弓形静的リングの各々は、複数のコンプライアントプレート部材間を通って円周方向に延びる。シール組立体は、複数のコンプライアントプレート部材に隣接して配置されるか又はその上に設けられた振動ダンパーを含み、複数のコンプライアントプレート部材の振動を減衰させるよう構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、ターボ機械で使用されるシールの分野に関する。より詳細には、本明細書で開示される主題は、タービン又は圧縮機におけるロータのような回転構成要素と、ケーシング又はステータのような固定構成要素との界面部に適用するためのコンプライアントプレートシールの振動を減衰させる方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転構成要素と固定構成要素との間の動的シールは、ターボ機械における重要な関心事である。幾つかのシール方法がこれまで使用されてきた。詳細には、コンプライアントプレートシール及び/又はブラシシールなどのシール部材を含む、可撓性部材ベースのシールが使用されてきた。ブラシシールは通常、緊密にパックされたほぼ円筒形のブリストルを含み、漏洩を低減するために交互配列で構成されている。ブリストルは、半径方向剛性が低く、定常状態運転中に緊密なクリアランスを維持しながらロータが偏位したときに移動できるようにする。しかしながら、ブリストルシールは、一般に、シールにわたる限定的な圧力差を下回るときにのみ効果的である。ブリストルの幾何形状がほぼ円筒形であることに起因して、ブラシシールは、軸方向の剛性が低い傾向があり、これにより公知のブラシシールにおける最大作動圧力差が制限される。
【0003】
対照的に、少なくとも一部のコンプライアントプレートシールは、同等の半径方向剛性に対して有意に高い半径方向剛性を有するプレート状幾何形状を有し、従って、このようなシールは、既知のブラシシールよりも大きな圧力差で用いる能力を有する。しかしながら、コンプライアントプレートシールは、隣接するコンプライアントプレート間の軸方向漏洩を生じる可能性があり、これによりコンプライアントプレートの流動誘起の振動又はフラッターを引き起こす場合がある。このような振動は、コンプライアントプレートの耐用年数を短縮する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,651,101号明細書
【発明の概要】
【0005】
第1の実施形態において、ターボ機械は、固定ハウジングと、軸線の周りを回転するロータとを含む。ターボ機械用のシール組立体は、固定ハウジングの内側表面に取り付けられた複数のコンプライアントプレート部材を含む。コンプライアントプレート部材は、固定ハウジングとロータとの間にシールリングを定める。コンプライアントプレート部材の各々は、少なくとも1つのスロットを含む。シール組立体は更に、固定ハウジングの内側表面に取り付けられ且つコンプライアントプレート部材内の少なくとも1つのスロットに半径方向に延びた少なくとも1つの弓形静的リングを含む。少なくとも1つの弓形静的リングの各々は、複数のコンプライアントプレート部材間を通って円周方向に延びて、該複数のコンプライアントプレート部材間の少なくとも幾らかの軸方向漏洩に対する障壁としての役割を果たすようになる。最後に、シール組立体は、複数のコンプライアントプレート部材に隣接して配置されるか又はその上に設けられた振動ダンパーを含む。振動ダンパーは、複数のコンプライアントプレート部材の振動を減衰させるよう構成される。
【0006】
第2の実施形態において、ターボ機械の固定ハウジングと、ターボ機械の軸線の周りを転回する回転要素との間のガス経路をシールする方法は、固定ハウジングの内側表面上に複数のコンプライアントプレート部材を配置する段階を含む。コンプライアントプレート部材の各々は、少なくとも1つのスロットを含む。本方法は更に、固定ハウジングの内側表面上にあり、コンプライアントプレート部材内の少なくとも1つのスロットに半径方向に延びる少なくとも1つの弓形静的リングを配置する段階を含む。最後に、本方法は、複数のコンプライアントプレート部材に隣接して配置されるか又はその上に設けられた振動ダンパーを配置する段階を含む。
【0007】
第3の実施形態において、タービン又は圧縮機は、軸線の周りを回転するロータと、ロータを囲む固定ハウジングと、ロータと固定ハウジングとの中間に配置された円周方向にセグメント化されたシール組立体とを含む。シール組立体の各セグメントは更に、固定ハウジングの内側表面に取り付けられた複数のコンプライアントプレート部材を含む。コンプライアントプレート部材は、固定ハウジングとロータとの間にシールリングを定める。コンプライアントプレート部材の各々は、少なくとも1つのスロットを含む。シール組立体の各セグメントは更に、固定ハウジングの内側表面に取り付けられ、コンプライアントプレート部材内の少なくとも1つのスロットに半径方向に延びる少なくとも1つの弓形静的リングを含む。少なくとも1つの静的リングの各々は、複数のコンプライアントプレート部材間を通って円周方向に延びて、該複数のコンプライアントプレート部材間の少なくとも幾らかの軸方向漏洩に対する障壁としての役割を果たすようになる。最後に、シール組立体の各セグメントは、複数のコンプライアントプレート部材に隣接して配置されるか又はその上に設けられた振動ダンパーを含む。振動ダンパーは、複数のコンプライアントプレート部材の振動を減衰させるよう構成される。
【0008】
本発明のこれら及び他の特徴、態様、並びに利点は、図面全体を通じて同様の参照符号が同様の要素を示す添付図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むと更に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本開示の1つの実施形態によるタービンシステムの断面図。
【図2】本開示の1つの実施形態によるシール組立体の斜視図。
【図3】本開示の1つの実施形態によるシール組立体の軸方向断面図。
【図4】本開示の1つの実施形態によるシール組立体の軸方向断面図。
【図5】本開示の1つの実施形態によるシール組立体の軸方向断面図。
【図6】本開示の1つの実施形態によるシール組立体の軸方向断面図。
【図7】本開示の1つの実施形態によるシール組立体の軸方向断面図。
【図8】本開示の1つの実施形態によるシール組立体の軸方向断面図。
【図9】本開示の1つの実施形態によるシール組立体の軸方向断面図。
【図10】本開示の1つの実施形態によるシール組立体の軸方向断面図。
【図11】本開示の1つの実施形態によるシール組立体の軸方向断面図。
【図12】本開示の1つの実施形態によるシール組立体の軸方向断面図。
【図13】本開示の1つの実施形態によるシール組立体の軸方向断面図。
【図14】本開示の1つの実施形態によるシール組立体の軸方向断面図。
【図15】本開示の1つの実施形態によるシール組立体の軸方向断面図。
【図16】本開示の1つの実施形態によるシール組立体の軸方向断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、種々の修正形態及び代替形態が可能であるが、図面及び表において例証として特定の実施形態が示されおり、本明細書において詳細に説明している。しかしながら、これらの実施形態は開示された特定の形態に限定されるものではない点は理解されたい。むしろ、本開示は、添付の請求項によって定義される本開示の技術的思想及び範囲内にある全ての修正形態、均等形態、及び代替形態を保護されるべきである。更に、個々の実施形態は、説明を簡素化するように本明細書で検討されているが、本開示は、これらの実施形態の全ての組み合わせを保護するものとする。
【0011】
図1は、種々の構成要素を含むタービンシステム10の1つの実施形態の断面図であり、簡単にするためにその一部は図示されていない。図示の実施形態において、ガスタービンシステム10は、圧縮機セクション12、燃焼器セクション14、及びタービンセクション16を含む。タービンセクション16は、固定ハウジング18と、軸線22の周りを回転する回転要素20とを含む。回転要素20には可動ブレード24が取り付けられ、固定ハウジング18には固定ブレード26が取り付けられている。可動ブレード24及び固定ブレード26は、軸方向に交互に配列されている。シュラウド付き可動ブレード24と固定ハウジング18との間の位置28、回転要素20と固定ブレード26との間の位置30、又は回転要素20と固定ハウジング18との間の端部パッキンシール位置32など、種々の実施形態による振動ダンパーを備えたコンプライアントプレートシール組立体を設置することができる幾つかの可能な位置がある。
【0012】
本明細書で説明される改善されたコンプライアントプレートシール組立体は、コンプライアントプレート部材の振動を減衰する構造体を提供し、これによりコンプライアントプレートシール組立体の寿命を延ばすことができる。本明細書で説明されるコンプライアントプレートシール組立体は、限定ではないが、図1のタービンシステム10などの何らかの好適な回転機械と共に用いることができる。図2は、コンプライアントプレートシール組立体40の斜視図である。図3から9及び図10から15は、線3−3に沿ったシール組立体40の種々の実施形態の軸方向断面図である。図示の実施形態において、コンプライアントプレートシール組立体40は、回転要素20と固定ハウジング18との間の軸方向漏洩の低減を可能にする。より具体的には、例示的な実施形態において、回転要素20は、固定ハウジング18に対して回転する。
【0013】
図2を参照すると、シール組立体40は、根元44において対向関係で(すなわち、向かい合って)固定ハウジング18に固定される複数のコンプライアントプレート部材42を備える。本明細書で使用される用語「対向関係」とは、1つのコンプライアントプレート部材42の第1の側面が最隣接のコンプライアントプレート部材42の第2の側面48に隣接している位置付け状態を意味する。コンプライアントプレート部材42は、回転要素20の周りで円周方向に配列され、半径方向に対して傾斜することができる。加えて、コンプライアントプレート部材42は、ブラシシールのブリストルと比べて、軸方向剛性と半径方向剛性の比が有意に高い。各側面46、48は、各コンプライアントプレート部材42の高圧側部52の前表面50から低圧側部56の後表面54に延び、また、各コンプライアントプレート部材42の根元44から先端58に延びる。例示的な実施形態において、各コンプライアントプレート部材42は、各側面46、48に沿って実質的に平面又は平坦である。或いは、コンプライアントプレート部材42は、実質的に平面以外とすることができる。例えば、コンプライアントプレート部材42は、1又は複数の位置において曲線状又は湾曲し、或いは様々な厚みとすることができる。
【0014】
例示的な実施形態において、コンプライアントプレート部材42が実質的に一定の厚み60を有するときには、先端58付近よりも根元44付近でより広くなるように、隣接するコンプライアントプレート部材42間にギャップ62が定められる。その結果、ギャップ62は、コンプライアントプレート部材42の根元44から先端58に向かってテーパーが付けられる。従って、コンプライアントプレート部材42の根元44は、「緩やかにパックされた」とみなすことができ、先端58は、「緊密にパックされた」とみなすことができる。本明細書で使用される用語「緊密にパックされた」は、隣接するプレート先端58が互いに接触していないが近接して離間されており、例えば、限定ではないが、約0.005mmだけ離間している配置を指す。ギャップ62により、隣接するコンプライアントプレート部材42が半径方向で自由に移動できるようになる。代替の実施形態において、コンプライアントプレート部材42の厚み60は、根元44から先端58まで変化することができ、ギャップ62がこれに応じて変化することになる。
【0015】
例示的な実施形態において、コンプライアントプレート部材42は、各コンプライアントプレート部材42が回転要素20のそれぞれの接平面66に対して角度64(「カント角」とも呼ばれる)の向きになるように、固定ハウジング18に結合される。より具体的には、側面46及び/又は48の少なくとも1つは、接平面66に対して角度64の向きにされる。例示的な実施形態において、カント角64は約90度よりも小さい。1つの実施形態において、カント角64は、約30度と60度の間とすることができる。例示的な実施形態において、カント角64は、コンプライアントプレート部材42が回転要素20の回転方向68から離れる角度になるように選択され、このようなカント角64により、シール組立体40内の回転要素20の回転が可能になる。
【0016】
例示的な実施形態において、コンプライアントプレート部材42は各々、実質的に矩形の断面形状を有する。しかしながら、他の実施形態では、コンプライアントプレート部材42は、T形断面形状、台形断面形状、及び/又はシール組立体40が本明細書で記載されるように機能することが可能になる他の何れかの形状など、非矩形断面形状を有することができる。或いは、各コンプライアントプレート部材42は、根元44から先端58に収束又はテーパーが付けられた断面、弓形断面、及び/又はシール組立体40が本明細書で記載されるように機能することが可能になる他の何れかの断面形状を有することができる。
【0017】
軸方向流れ抵抗部材70がコンプライアントプレート部材42を少なくとも部分的に通って延び、ギャップ62間の軸方向漏洩流を阻止することができる。より具体的には、例示的な実施形態において、抵抗部材70は、固定ハウジング18の周りを円周方向に延び、更に、固定ハウジング18から回転要素20に向かって半径方向内向きに延びる。例示的な実施形態において、抵抗部材70は、固定ハウジング18に結合され、各コンプライアントプレート部材42内に定められる円周方向スロット74内に半径方向に延びる。環状リング72は、回転要素20と同心の連続した360度リングとすることができる。他の実施形態において、環状リング72は、各々が60度の6セグメント、又は各々が90度の4セグメントなど、複数のセグメントに分割することができる。代替の実施形態において、抵抗部材70は、シール組立体40が本明細書で記載されるように機能することが可能になる幾つかの環状リング72を含むことができる。
【0018】
本明細書で記載されるコンプライアントプレート部材42の実施形態は、抵抗部材70の周りに漏洩経路を配置することによって、運転中に少なくとも部分的に生じる自己修正作用を示すことができる。コンプライアントプレートシール組立体40のこのような実施形態において、コンプライアントプレート部材42の先端58間のクリアランスが大きくなると、流体静圧ブローダウン力が増大し、これにより先端クリアランスが小さくなる。コンプライアントプレート部材42の先端58間のクリアランスが小さくなると、流体静圧リフトオフ力が増大し、これにより先端クリアランスが大きくなる。これは、先端クリアランスからの受動的フィードバックによって自己修正する流体静圧リフトオフ/ブローダウン力をもたらす。この受動的フィードバックにより、コンプライアントプレート部材42が、コンプライアントプレート部材42とロータ20との間の小さな先端クリアランスを維持するようになり、コンプライアントプレート部材42に作用する効果的な流体静圧リフトオフ/ブローダウン力が、当該先端クリアランスにてバランスされる。従って、先端クリアランスが維持される。このように、以下で詳細に説明される振動ダンパーの幾つかの実施形態は、抵抗部材70の周りの漏洩経路を実質的に妨げず、コンプライアントプレートシール組立体40の自己修正作用を保持するようにする。
【0019】
図3は、本開示の1つの実施形態によるコンプライアントプレートシール組立体40の軸方向断面図を示している。図2に示すシール組立体40とは異なり、簡単にするために図3には1つの環状リング72だけが図示されている。代替の実施形態において、シール組立体40は、様々な寸法を備えた、複数のスロット74及び複数の環状リング72を含み、該環状リング72がそれぞれのスロット74に延びるようにすることができる。加えて、上述の自己修正作用は、複数の環状リング72及びスロット74を備えたシール組立体40に適用可能である。図2に示す要素と共通する図3の要素は、同じ参照符号で表記されている。
【0020】
環状リング72は、高圧側部52に面する前表面92と、低圧側部56に面する後表面94と、先端96とを含む。スロット74は、環状リング72の前表面92に面する第1の表面98と、環状リング72の後表面94に面する第2の表面100と、環状リング72の先端96に面する第3の表面102とを含む。スロット74の第1の表面98と、環状リング72の前表面92との間に環状リング前方ギャップ104が定められる。スロット74の第2の表面100と、環状リング72の後表面94との間に環状リング後方ギャップ106が定められる。スロット74の第3の表面102と、環状リング72の先端96との間にブリッジギャップ108が定められる。
【0021】
シール組立体40は更に、前方リング110及び後方リング112を含み、これらは両方とも固定ハウジング18に結合される。前方リング110は、コンプライアントプレート部材42の前表面50を越えて円周方向に延び、後方リング112は、コンプライアントプレート部材42の後表面54を越えて円周方向に延びている。前方リング110と後方リング112との間に定められるギャップは前方リングギャップ114と呼ばれ、後方リング112と後表面54との間に定められるギャップは後方リングギャップ116と呼ばれる。前方リングギャップ114及び後方リングギャップ116は、小さく又は大きく作ることができる。シール組立体40の作用は、前方リングギャップ114及び後方リングギャップ116に決定的に依存するものではない。
【0022】
図示の実施形態において、振動ダンパー118は、環状リング72の前表面92に取り付けられる。限定ではないが、接着、溶接、ろう付け、又はネジファスナーなどの種々の方法を用いて、振動ダンパー118を環状リング72に取り付けることができる。シール組立体40の作動温度により、振動ダンパー118の材料及び/又は取り付け方法の選択肢が制限される場合がある。例えば、ろう付け又は接着は、極めて高い作動温度の時には適切ではない可能性がある。作動時には、コンプライアントプレート部材42は、隣接するコンプライアントプレート部材42間のギャップ62を通って流れる軸方向漏洩により振動又はフラッターを生じる場合がある。コンプライアントプレート部材42と振動ダンパー118との間の接触により、振動又はフラッターの量を低減することができる。従って、振動ダンパー118の厚みは、環状リング前方ギャップ104の幅とほぼ同じにすることができる。或いは、振動ダンパー118の厚みは、環状リング前方ギャップ104よりも小さくてもよく、流体の高圧側部52から低圧側部56への差圧及び/又は移動は、コンプライアントプレート部材42の第1の表面98を振動ダンパー118の表面に向かって撓ませることができる。
【0023】
図示の実施形態において、振動ダンパー118は、流体を貫流させることが可能な多孔性材料とすることができ、これによりコンプライアントプレートシール組立体40の自己修正作用を妨げないようにする。例えば、振動ダンパー118は、およそ25パーセント、50パーセント、又は75パーセントよりも大きな多孔率を有する多孔性メッシュとすることができる。振動ダンパー118は、限定ではないが、金属などの様々な多孔性材料から作ることができる。作動時の振動ダンパー118とコンプライアントプレート部材42との間の接触は、振動ダンパー118及び/又はコンプライアントプレート部材42の摩耗を引き起こす可能性がある。幾つかの実施形態において、振動ダンパー118は、摩耗性メッシュとすることができる。換言すると、振動ダンパー118の材料は、コンプライアントプレート部材42の材料よりも耐摩耗性を低くすることができる。例えば、コンプライアントプレート部材42の摩耗防止を助けるために、振動ダンパー118の強度、弾性、及び/又は硬度は、コンプライアントプレート部材42の強度、弾性、又は硬度をそれぞれ下回るようにすることができる。振動ダンパー118は、例示の実施形態では前方ギャップ104のほとんどを占有して示されているが、他の実施形態では、より小さな部分の前方ギャップ104を占有してもよい。換言すると、振動ダンパー118の半径方向高さ119は、特定の用途において所望の量の振動減衰をもたらすよう選択することができる。
【0024】
図4は、本開示の別の実施形態によるコンプライアントシール組立体40の軸方向断面図を示している。図3に示す要素と共通する図4の要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態において、振動ダンパー118は、環状リング72の後表面94に取り付けられる。従って、振動ダンパー118は、環状リング後方ギャップ106を占有する。他の点では、図4に示す振動ダンパー118は、図3に示す振動ダンパー118と同様である。しかしながら、高圧側部52から低圧側部56への流体の流れによって、コンプライアントプレート部材42が振動ダンパー118から離れるようになる可能性があるので、振動ダンパー118は、コンプライアントプレート部材42の先端58ではなく根元44の近くに配置することができる。換言すると、コンプライアントプレート部材42は、根元44付近で固定ハウジング18に取り付けられるので、先端58よりも根元44付近では振動ダンパー118から離れる撓みを少なくすることができる。
【0025】
図5は、上述の実施形態のコンプライアントシール組立体40の組み合わせ要素の軸方向断面図を示している。図3に示す要素と共通する図5の要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態において、コンプライアントシール組立体40に2つの振動ダンパー118が設けられている。第1の振動ダンパー118は、第1の表面98に取り付けられ、第2の振動ダンパー118は後表面94に取り付けられる。2つの振動ダンパー118のこのような配置は、コンプライアントプレート部材42の減衰を更に追加することができる。加えて、振動ダンパー118の1つが摩耗すると、第2の振動ダンパー118が引き続き振動減衰を提供することができる。振動ダンパー118の他の態様は、上記で詳細に説明したものと同様である。
【0026】
図6は、本開示の第1の実施形態によるコンプライアントプレートシール組立体40の軸方向断面図を示している。図3に示す要素と共通する図6の要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態において、振動ダンパー118は、コンプライアントプレート部材42に対面する前方リング118の表面に取り付けられる。図示のように、振動ダンパー118は、前方ギャップ114を占有することができる。振動ダンパー118の上述の実施形態と同様に、半径方向高さ119のような配置は、特定の用途の要求に適うように調整することができる。振動ダンパー118は、多孔性ではないバッキングプレート120を含むことができ、該バッキングプレート120により、流体圧力又は流体流量の一方又は両方が、振動ダンパー118とコンプライアントプレート部材42の前表面50との間の接触を維持する付勢機構としての役割を果たすことができる。加えて、バッキングプレート120は、振動ダンパー118をコンプライアントシール組立体40内で半径方向に整列させることができ、振動ダンパー118の追加の厚み及び/又は安定性を提供することができる。バッキングプレート120は、限定ではないが、金属などの種々の材料から作ることができる。加えて、バッキングプレート120は、連続した360度リング又はより小さなセグメントで構成することができる。種々の実施形態において、前方リング110の半径方向高さは、図6に示したものよりも短く又は長くすることができる。他の実施形態では、前方リング110を含まなくてもよい。図6に示す振動ダンパー118の他の態様は、上記で詳細に説明した振動ダンパー118と同様である。
【0027】
図7は、本開示の別の実施形態によるコンプライアントシール組立体40の軸方向断面図を示している。図3に示す要素と共通する図7の要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態において、環状リング72は、付勢要素スロット122を含み、円周方向及び半径方向で環状リング72内に延びている。付勢要素124は、付勢要素スロット122内に配置される。付勢要素124の上部は、固定ハウジング18又は付勢要素スロット122の上部に取り付けることができる。付勢要素124は、バネ又は他のバネ様装置とすることができる。付勢要素124の下部には、プランジャ126が取り付けられ、これを用いて付勢要素124からの付勢力を振動ダンパー118に伝達することができる。プランジャ126は、付勢要素スロット122を通って円周方向に延びる弓形リングとすることができる。振動ダンパー118の上部は、上部開口128を通って付勢要素スロット122内に延びることができる。同様に、振動ダンパー118の下部は、環状リング72の先端96付近に位置付けられた下部開口130内に延びることができる。振動ダンパー118は、下部開口130内に固定することができ、上部開口128を通って前後に自由に移動することができる。例えば、付勢要素124が軸線22に向かって下向きに移動することにより、振動ダンパー118は、上部開口128を通って外向きに移動することができるようになる。作動中、振動ダンパー118は、摩耗し、薄くなる可能性がある。振動ダンパー118が引き続きコンプライアントプレート部材42と接触するために、付勢要素124は、振動ダンパー118を下向きに押し込むことができ、振動ダンパー118を更に押し込んで上部開口128から外に出すようにする。振動ダンパー118は、前方ギャップ104内に図示されているが、後方ギャップ106内、又は前方ギャップ104及び後方ギャップ106の両方に位置付けることもできる。振動ダンパー118の他の態様は、上記で詳細に説明したものと同様である。
【0028】
図8は、コンプライアントシール組立体40の別の実施形態の軸方向断面図を示している。図3に示す要素と共通する図8の要素は、同じ参照符号で表記されている。振動ダンパースロット140は、コンプライアントプレート部材42の高圧側部を通って円周方向に延びる。振動ダンパーリング142は、コンプライアントプレート部材42の振動ダンパースロット140を通って円周方向に延びる。作動時には、振動ダンパーリング142は、コンプライアントプレート部材42の振動を減衰することができる振動ダンパースロット140の内側表面と接触する。振動ダンパーリング142は、回転要素20と同心の連続360度リングとすることができ、或いは、より小さなセグメントに分割することができる。振動ダンパーリング142は、図8に示す円形断面を有することができ、或いは、限定ではないが、楕円、方形、矩形、三角形、及びその他など、他の断面形状を有することができる。同様に、図8では楕円断面で示されているが、振動ダンパースロット140は、限定ではないが、方形、矩形、三角形、及びその他などの、他の断面形状を有することができる。
【0029】
図示の実施形態において、振動ダンパースロット140は、コンプライアントプレート部材42を2つの要素に分割しないように、コンプライアントプレート部材42の高圧側部の初めから終わりまでは延びていない。換言すると、振動ダンパースロット140は閉じたスロットである。振動ダンパースロット140の半径方向高さは、コンプライアントプレート部材42の半径方向移動に応答して振動ダンパーリング142が半径方向に移動可能なように、振動ダンパーリング142の半径方向高さよりも大きくすることができる。同様に、振動ダンパースロット140の軸方向幅は、コンプライアントプレート部材42の軸方向移動に応答して振動ダンパーリング142が軸方向に移動可能なように、振動ダンパーリング142の軸方向幅よりも大きくすることができる。振動ダンパースロット140を通って流れる流体が存在しないので、振動ダンパーリング142は多孔性材料である必要はない。しかしながら、振動ダンパースロット140の内側表面の過剰摩耗の低減を助けるために、振動ダンパーリング142の硬度は、コンプライアントプレート部材42の硬度よりも小さくすることができる。振動ダンパースロット140は、コンプライアントプレート部材42の高圧側部上に図示されているが、コンプライアントプレート部材42の低圧側部上に、或いは、高圧側部及び低圧側部の両方に位置付けることもできる。振動ダンパーリング142の他の態様は、上述の振動ダンパー118のものと同様である。
【0030】
図9は、更に別の実施形態によるコンプライアントシール組立体40の半径方向断面図を示している。図3に示す要素と共通する図9の要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態において、コーティング150が、コンプライアントプレート部材42の1つ又はそれ以上の表面上に設けられる。例えば、コーティングは、コンプライアントプレート部材42の第1の側面46上に、第2の側面48上に、又は第1及び第2の側面46、48の両方に設けることができる。コーティング150は、コンプライアントプレート部材42の振動を減衰させることができる。具体的には、コーティング150は、コンプライアントプレート部材42の振動エネルギーを発散させる構造ダンパーとしての役割を果たすことができる。通常、構造減衰は、共振運動のみを抑制する。しかしながら、構造減衰はまた、コンプライアントプレート部材42の剛性及び/又は質量を増大させる作用により、非共振振動をも弱めることができる。コーティング150は、粘弾性材料から作ることができ、変形時に歪みエネルギーを蓄積し、このエネルギーの一部をヒステリシスにより発散させることを可能にする。コーティング150用に使用できる材料の実施例は、限定ではないが、窒化クロム(CrN)、ニッケルチタン(NiTi)、ダイアモンドライクカーボン(DLC)、及びその他を含む。コンプライアントプレート部材42にコーティング150を施工する方法は、限定ではないが、物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)、スプレー、浸漬、ブラッシング、ウェブコーティング、カレンダー加工、及びその他を含む。コーティング150は、コンプライアントプレート部材42の表面全体を覆って図示されているが、他の実施形態では、必要な振動減衰量に基づいてコンプライアントプレート部材42の表面の一部だけを覆うことができる。その上、コーティング150の厚みは、所望の振動減衰量を得るように選択することができる。より厚みのあるコーティング150は、追加の振動減衰をもたらすことができる。しかしながら、コーティング150の厚みは、隣接するコンプライアントプレート部材42間のギャップ62の距離と干渉するほどには大きい訳ではない。加えて、コーティング150の厚みは、各コンプライアントプレート部材42の先端58に向かってテーパーを付けることができる。幾つかの実施形態において、コーティング150は、上述の振動ダンパー118と組み合わせることができる。
【0031】
図10は、本開示の別の実施形態によるコンプライアントシール組立体40の軸方向断面図を示している。図3に示す要素と共通する図10の要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態において、振動ダンパープレート160を用いて、コンプライアントプレート部材42の振動を減衰させることができる。具体的には、振動ダンパープレート160は、接続点162において環状リング72に取り付けることができる。接続点162は、接着、溶接、ろう付け、スクリュー接続、或いは、2つの材料を共に接合する他の何れかの好適な方法を表すことができる。振動ダンパープレート160は、コンプライアントプレート部材42と接触した凸面状外側表面を備えたほぼ凸面形状を有することができる。図示の実施形態において、前方ギャップ104に位置付けられた振動ダンパープレート160は、環状リング72の先端96付近で環状リング72に取り付けることができる。このような配置により、コンプライアントプレート部材42の根元44付近の高圧側部52から流れる流体が、コンプライアントプレート部材42に対して振動ダンパープレート160を押し込むのを助けることができるようになる。同様に、後方ギャップ106内に位置付けられた振動ダンパープレート160は、コンプライアントプレート部材42の根元44に近接した接続点162と共に構成することができる。従って、環状リング72の先端96からコンプライアントプレート部材42の根元44に向かう流体の流れは、コンプライアントプレート部材42に対して振動ダンパープレート160を押し込むのを助けることができる。幾つかの実施形態において、振動ダンパープレート160は、前方ギャップ104内のみ、又は後方ギャップ106内のみ、或いは、前方ギャップ104及び後方ギャップ106の両方に設けることができる。
【0032】
振動ダンパープレート160の硬度は、コンプライアントプレート部材42の硬度よりも小さくすることができる。加えて、振動ダンパープレート160の表面は、振動ダンパー118の表面よりも滑らかにすることができる。上記で詳細に説明された多孔性メッシュの代わりに、振動ダンパープレート160の滑らかな表面により、コンプライアントプレート部材42の摩耗を低減することができる。加えて、振動ダンパープレート160は、一部の流体が振動ダンパープレート160を通って流れることができるように有孔にすることができ、これによりシール組立体40の自己修正作用を可能にすることができる。換言すると、有孔振動ダンパープレート160は、上記で詳細に説明した多孔性振動ダンパー118と類似の手法で機能することができる。振動ダンパープレート160は、単一の360度弓形リングとして構成することができ、或いは、複数の弓形セグメントとして構成することができる。振動ダンパープレート160が複数のセグメントとして構成される場合、セグメントは、シール組立体40の自己修正作用を更に促進するためにギャップによって分離することができる。換言すると、流体は、振動ダンパープレート160のセグメント間のギャップを通って流れることができる。他の実施形態では、振動ダンパープレート160の複数のセグメントは、仲介ギャップなしで構成してもよく、又はセグメントが互いに重なり合ってもよい。
【0033】
図11は、本開示の実施形態によるコンプライアントシール組立体40の軸方向断面図を示している。上述の図に示す要素と共通する図11の要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態において、振動ダンパー118は、環状リング72の先端96付近に位置付けられた付勢要素スロット122内に配置される。加えて、振動ダンパー118に取り付けられる付勢要素124は、コンプライアントプレート部材42に対して振動ダンパー118でを押し込むのを助ける。更に、振動ダンパー118は、コンプライアントプレート部材42の軸方向移動に対応するよう前後に移動可能にすることができる。加えて、振動ダンパー118が摩耗すると、付勢要素124は、振動ダンパー118とコンプライアントプレート部材42との間の接触を引き続き維持するのを助けることができる。幾つかの実施形態において、振動ダンパー、付勢要素スロット122、及び付勢要素124は、前方ギャップ104内のみ、又は後方ギャップ106内のみ、或いは、前方ギャップ104及び後方ギャップ106の両方に配置することができる。振動ダンパー118が前方ギャップ104及び後方ギャップ106の両方に配置されたときには、環状リング72の一部が付勢要素スロット122を分離することができる。換言すると、流体は、前方ギャップ104から付勢要素スロット122を通って後方ギャップ106に通過することができない。上述の実施形態と同様に、振動ダンパー118は、単一の360度弓形リングとして、又は複数の弓形セグメントとして構成することができる。シール組立体40の他の態様は、上記で詳細に説明したものと同様である。
【0034】
図12は、コンプライアントシール組立体40の1つの実施形態の軸方向断面図を示している。上述の図に示す要素と共通する図12の要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態において、2つの振動ダンパー118は、付勢要素124によってのみ分離されており、環状リング72を越えて軸方向に延びる付勢要素スロット122内に配置される。付勢要素124は、両方の振動ダンパー118がコンプライアントプレート部材42と接触を維持するのを助けることができる。加えて、高圧流体導管170は、コンプライアントプレート部材42に対して振動ダンパー118を押し込むのを助けるために設けることができる。具体的には、高圧流体導管170は、固定ハウジング18内で環状リング72を通って設けられ、上流側圧力171の高圧側部52からの流体が振動ダンパー118の位置において圧力173の付勢要素スロット122に流れ得るようにすることができる。幾つかの実施形態において、上流側圧力171は、振動ダンパー118の位置における圧力173よりも遙かに大きいとすることができる。従って、制限オリフィス172を高圧流体導管170内に設け、高圧流体の付勢要素スロット122への流量を制限し、これにより振動ダンパー118をコンプライアントプレート部材42に過剰に付勢するのを避けることができる。振動ダンパー118の過剰付勢により、振動ダンパー118の摩耗の促進が生じる可能性がある。
【0035】
コンプライアントプレートシール組立体40にわたって高い差圧が存在する他の実施形態において、過剰な差圧によって、コンプライアントプレート部材42に対する振動ダンパー118の過剰な付勢が生じる可能性がある。ブリードオフ導管174を低圧側部56に設け、振動ダンパー118の過剰付勢の防止を助けることができる。加えて、ブリードオフ導管174は、振動ダンパー118の付勢量を更に低減するためにブリードオフ制限オリフィス176を含むことができる。他の実施形態において、過剰差圧のブリードオフはまた、振動ダンパー118と付勢要素スロット122との間のギャップを通じて達成することができる。別の実施形態において、高圧流体導管170の上流側開口を図3に示すように環状リング前方ギャップ104内に配置することができる。環状リング前方ギャップ104における圧力178は、高圧側部52の圧力171よりも低くすることができ、これにより高圧流体導管170にわたる差圧を低減し、振動ダンパー118の付勢量を制限することができる。環状リング前方ギャップ104における圧力178は、振動ダンパー118の位置における圧力173よりも大きくすることができ、これによりコンプライアントプレート部材42に対する振動ダンパー118の付勢が可能になる。図12及び13に示すシール組立体40の他の態様は、上記で詳細に説明されたものと同様である。
【0036】
図14は、コンプライアントシール組立体40の1つの実施形態の軸方向断面図を示している。上述の図に示す要素と共通する図14の要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態において、振動ダンパーブリストル180は、コンプライアントプレート部材42の振動を減衰させるために設けることができる。振動ダンパーブリストル180は、コンプライアントプレート部材42の硬度よりも低い硬度を有する、金属のような材料から作ることができる。振動ダンパーブリストル180の直径は、約0.1mmから0.8mm、0.2mmから0.6mm、又は0.4mmから0.5mmの間とすることができる。振動ダンパーブリストル180の直径、振動ダンパーブリストル180間の間隔、及び/又は配列は、流体が振動ダンパーブリストル180を通って流れることが可能になり、振動ダンパーブリストル180が軸方向及び/又は半径方向の両方で自由に移動できるように構成することができる。加えて、振動ダンパーブリストル180は、取付構造182を介して固定ハウジング18に取り付けることができ、該取付構造は、接着、溶接、スクリュー接続、又は2つの物体を接合する他の何れかの好適な方法を含むことができる。振動ダンパーブリストル180は、上述の振動ダンパー118よりも更に自由に移動することができるので、シール組立体40は、前方リング110を含み、これを用いて振動ダンパーブリストル180のヒステリシスの低減を助けることができる。振動ダンパーブリストル180は、コンプライアントプレート部材42の振動を減衰させるために設けられ、シールとして機能していないので、振動ダンパーブリストル180の半径方向長さ119は、環状リング72の半径方向高さよりも小さくすることができる。更に、振動ダンパーブリストル180は、コンプライアントプレート部材42のカント角64とは異なる角度の向きにされ、振動ダンパーブリストル180がコンプライアントプレート部材42に絡まること、又はこれを妨げるのを防ぐようにすることができる。図示の実施形態において、振動ダンパーブリストル180は、前方リング110とコンプライアントプレート部材42との間の空間内及び後方ギャップ106内に配置することができ、これら位置は両方とも、流体の流れが振動ダンパーブリストル180をコンプライアントプレート部材42に向けて押し込むのを促進する位置である。他の実施形態では、振動ダンパーブリストル180は、前方リング110付近のみ、又は後方ギャップ106内のみに配置してもよい。
【0037】
図15は、コンプライアントシール組立体40の1つの実施形態の軸方向断面図を示している。上述の図に示す要素と共通する図15の要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態は、上記で詳細に説明した実施形態からの特徴部を組み合わせている。具体的には、振動ダンパープレート160は、コンプライアントプレート部材42の振動の減衰を助けるのに用いている。振動ダンパープレート160は、2つの接続点162にて環状リング72に取り付けられる。加えて、高圧流体導管170内の高圧流体は、振動ダンパープレート160をコンプライアントプレート部材42に対して押し込むのを助ける。幾つかの実施形態において、上流側圧力171は、コンプライアントプレート部材42に対する振動ダンパープレート160の過剰な付勢を引き起こすほど十分に高い場合がある。従って、ブリードオフ導管174を低圧側部56に設け、振動ダンパープレート160の過剰付勢の防止を助けることができる。加えて、振動ダンパープレート160に対する高圧流体の流量を制限するために、制限オリフィス172及びブリードオフ制限オリフィス176を高圧流体導管170及びブリードオフ導管174内にそれぞれ含めて、これによりコンプライアントプレート部材42に対する振動ダンパープレート160の過剰付勢の防止を助けることができる。他の実施形態では、高圧流体導管170の上流側開口は、図13に示す実施形態と同様に環状リング前方ギャップ104内に配置することができる。振動ダンパープレート160は、限定ではないが、金属のような柔軟な材料から作ることができる。振動ダンパープレート160は前方ギャップ104を占有するので、コンプライアントプレート部材42を通過する漏洩の低減を助けることができる。前述の実施形態と同様に、振動ダンパープレート160は、前方ギャップ104、後方ギャップ106、又は前方ギャップ104及び後方ギャップ106の両方に設けることができる。シール組立体40の他の態様は、上記で詳細に説明されたものと同様である。
【0038】
図16は、コンプライアントシール組立体40の1つの実施形態の軸方向断面図を示している。上述の図に示す要素と共通する図16の要素は、同じ参照符号で表記されている。図示の実施形態では、振動ダンパープレート160がコンプライアントプレート部材42に対して押し込まれ、コンプライアントプレート部材42の振動を減衰させる。振動ダンパープレート160は、ベローズ180により環状リング72に取り付けられ、これによりコンプライアントプレート部材42の軸方向移動に応答して振動ダンパープレート160が軸方向に移動するための柔軟性が提供される。加えて、高圧流体は、コンプライアントプレート部材42に対して振動ダンパープレート160を押し込むのを助けることができる。具体的には、環状リング前方ギャップ104内の圧力178は、ベローズ180付近の圧力よりも高くすることができる。加えて、第2の振動ダンパープレート160及びベローズ180を後方ギャップ106内に含めることができる。後方ギャップの圧力は、ベローズ180付近の圧力よりも高くすることができる。他の実施形態では、高圧流体導管170の上流側開口は、図15に示す実施形態と同様に高圧側部52付近に配置することができる。ベローズ180は、限定ではないが、金属のような柔軟な材料から作ることができる。シール組立体40の他の態様は、上記で詳細に説明されたものと同様である。
【0039】
本明細書は、最良の形態を含む実施例を用いて本発明を開示し、更に、あらゆる当業者があらゆるデバイス又はシステムを実施及び利用すること並びにあらゆる包含の方法を実施することを含む本発明を実施することを可能にする。本発明の特許保護される範囲は、請求項によって定義され、当業者であれば想起される他の実施例を含むことができる。このような他の実施例は、請求項の文言と差違のない構造要素を有する場合、或いは、請求項の文言と僅かな差違を有する均等な構造要素を含む場合には、本発明の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0040】
10 タービンシステム
12 圧縮機セクション
14 燃焼器セクション
16 タービンセクション
18 固定ハウジング
20 回転要素
22 軸線
24 可動ブレード
26 固定ブレード
28 シュラウド付き可動ブレードと固定ハウジングとの間の位置
30 回転要素と固定ブレードとの間の位置
32 端部パッキンシール位置
40 コンプライアントプレートシール組立体
42 コンプライアントプレート部材
44 根元
46 第1の側面
48 第2の側面
50 前表面
52 高圧側部
54 後表面
56 低圧側部
58 先端
60 厚み
62 ギャップ
64 角度
66 接平面
68 回転方向
70 軸流抵抗部材
72 環状リング
74 円周方向スロット
92 前表面
94 後表面
96 先端
98 第1の表面
100 第2の表面
102 第3の表面
104 環状リング前方ギャップ
106 環状リング後方ギャップ
108 ブリッジギャップ
110 前方リング
112 後方リング
114 前方リングギャップ
116 後方リングギャップ
118 振動ダンパー
119 半径方向高さ
120 バッキングプレート
122 付勢要素スロット
124 付勢要素
126 プランジャ
128 上部開口
130 下部開口
140 振動ダンパースロット
142 振動部材リング
150 コーティング
160 振動ダンパープレート
162 接続点
170 高圧流体導管
171 上流側圧力
172 制限オリフィス
173 振動ダンパー位置での圧力
174 ブリードオフ導管
176 ブリードオフ制限オリフィス
178 環状リング前方ギャップ内の圧力
180 振動ダンパーブリストル
182 取付構造
190 ベローズ
192 後方ギャップ圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ハウジング(18)及び軸線(22)周りを回転するロータ(20)を含むターボ機械用のシール組立体(40)であって、
前記固定ハウジング(18)の内側表面に取り付けられ且つ前記固定ハウジング(18)と前記ロータ(20)との間に定められた、各々が内部に少なくとも1つのスロット(74)を有する複数のコンプライアントプレート部材(42)と、
前記固定ハウジング(18)の内側表面に取り付けられ且つ前記コンプライアントプレート部材(42)内の少なくとも1つのスロット(74)に半径方向に延び、各々が前記複数のコンプライアントプレート部材(42)間を通って円周方向に延びて該複数のコンプライアントプレート部材(42)間の少なくとも幾らかの軸方向漏洩に対する障壁(70)としての役割を果たすようになる少なくとも1つの弓形静的リング(72)と、
前記複数のコンプライアントプレート部材(42)に隣接して配置されるか又はその上に設けられ、該複数のコンプライアントプレート部材(42)の振動を減衰させるよう構成された振動ダンパー(118)と、
を備えたシール組立体(40)。
【請求項2】
前記振動ダンパー(118)が、前記少なくとも1つの弓形静的リング(72)に結合された弓形メッシュを含む、請求項1に記載のシール組立体(40)。
【請求項3】
前記振動ダンパー(118)が、前記少なくとも1つの弓形静的リング(72)の上流側側部(52)又は下流側側部(56)に結合され、或いは前記シール組立体(40)の前方リング(110)に結合される、請求項1に記載のシール組立体(40)。
【請求項4】
前記振動ダンパー(118)の硬度が、前記複数のコンプライアントプレート部材(42)の硬度よりも低い、請求項1に記載のシール組立体(40)。
【請求項5】
前記振動ダンパー(118)が、流体の圧力又は流量の一方又は両方を用いて、前記複数のコンプライアントプレート部材(42)に対して前記振動ダンパー(118)を付勢するよう構成されたバッキングプレート(120)を含む、請求項1に記載のシール組立体(40)。
【請求項6】
前記振動ダンパー(118)が、前記振動ダンパー(118)を前記複数のコンプライアントプレート部材(42)と接触した状態に維持するよう構成される付勢装置(124)を含む、請求項1に記載のシール組立体(40)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの弓形静的リング(72)を通り、前記振動ダンパー(118)を前記複数のコンプライアントプレート部材(42)と接触した状態に維持するように流体を配向するよう構成された導管(170、174)を備える、請求項1に記載のシール組立体(40)。
【請求項8】
前記振動ダンパー(118)が、前記複数のコンプライアントプレート部材(42)の少なくとも1つの表面(46、48)上に設けられたコーティング(150)を含む、請求項1に記載のシール組立体(40)。
【請求項9】
前記振動ダンパー(118)が、前記複数のコンプライアントプレート部材(42)内に形成された閉鎖スロット(140)内に配置される、請求項1に記載のシール組立体(40)。
【請求項10】
前記振動ダンパー(118)が、複数のブリストル(180)を含む、請求項1に記載のシール組立体(40)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−52662(P2012−52662A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185513(P2011−185513)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】