説明

コンポジット構造を有するナノ球状粒子、粉末、及び、その製造方法

【課題】希望する組成を有し、かつ、使用特性に優れ、材料組成の選択により、各種機能を有する高効率の素子、デバイスを実現するのに好適なナノ球状粒子、粉末、工業的利用性を充分に満たす捕集率を実現しえるナノ球状粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】アルゴン不活性ガス雰囲気中で、原料金属の溶融物を高速回転する皿ディスク上に供給し、遠心力を作用させて小滴として飛散させ、ガス雰囲気との接触により急冷して球状粒子とした後、得られた球状粒子に対し、プラズマ旋回流内でアルゴンイオンと衝突反応させて、原料金属の成分をナノサイズに分解すると同時に反応性のあるガス成分又は蒸気成分と接触させるプラズマ反応結晶化処理をする。これにより、1μm未満の粒径を有し、真球度20%以内のナノコンポジット構造を有するナノ球状粒子、粉末が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンポジット構造を有する微小球状粒子、及び、その製造方法に関するもので、真球度が約20%以下、粒径1μm未満のナノコンポジット構造を有するナノ球状粒子、粉末及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の金属、金属酸化物、金属窒化物、金属珪化物、又は、これらの混合物などの粉末粒子は、磁石、触媒、電極材、電池材、保冷材、耐火材、焼結金属などの様々な分野において使用されている。
【0003】
これらの材料においては、その使用特性を向上させるための研究開発が、日々たゆまなく進められており、使用特性に対する組成、形状及び粒度に関わる研究の成果として、上記の粉末粒子は、より真球に近い形状をもち、ナノ単位の微小なサイズを有する粒子が、使用特性の向上に極めて有効であることがわかってきた。また、一般的に結晶構造に対して、非結晶構造は、使用特性が劣ることもわかってきた。更に、ナノ球状粒子の工業的利用性を考慮したとき、最終生成物の捕集率(投入原料に対する目的粒径を持つナノ粒子の割合)が、あるレベルになければならない。
【0004】
しかし、従来の技術では、粒子の微小化に限界がある上、微小化しても、真球の形状を有する粒子を得ることができなかった。しかも、微小化の過程で、結晶構造の破壊が起こるため、得られる粒子は非結晶構造のものに限定されていた。
【0005】
更に、使用特性を向上させる要素として、粒子の組成、形状及び粒度だけでなく、原料粉末の顕微鏡的微細構造、特に2種類以上の成分が複合された微細構造(コンポジット構造)を有する粉末が注目され、多くの分野で研究が進められている。コンポジット構造の中でも、結晶構造を有するものが、良好な使用特性が得られることが報告されている。
【0006】
多結晶構造(コンポジット)を有する粒子に関して、例えば本出願の発明者自身の特許文献である特許文献1にシリコン微粒子の製造方法が記載されている。
【0007】
ところが、特許文献1には、コンポジット構造を有す微粒子の記載はあるもののその粉末粒子の大きさは10μm〜50nmで、且つ各々粉末粒子は歪(いびつ)な形状で、し
かも、最終生成物はシリコン微粒子に限定され、それ以外の各種の金属、金属酸化物、金属窒化物、金属珪化物、及び、これらの混合物などの微小球状粉末を得ることまでは開示されていない。又、非結晶構造は開示されているが、結晶構造については開示がない。
【0008】
また、特許文献2は、原料をプラズマ処理して微細化する技術であるが原料をアーク火炎域の外側でプラズマ反応処理を利用させているが生成物の粒子の直径は20μm〜100nmとアンバランスで生成物が幅広い粒度分布を有し、工業的利用性のある捕集率を満たすことができない。
【0009】
コンポジット構造を有し、真球に近い形状を有する粒子に関して、本出願の発明者自身の特許文献である、特許文献3にはナノコンポジット構造を有する金属粒子が記載されている。しかし、特許文献3には、1μm〜300μmの粒子を以下、第一生成物とミクロ
ン球状について開示されているに留まり、より微細な粒子に関しての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−320195
【特許文献2】特開2004−35398
【特許文献3】米国特許第6808568
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、希望する組成を有し、かつ、使用特性に優れた大きさがミクロンオーダーで無く更に小さいナノオーダーの球状粒子、粉末、及び、その製造方法を提供することである。
【0012】
本発明のもう一つの課題は、材料組成の選択により、各種機能を有する高効率の素子、デバイスを実現するのに好適なナノ球状粒子、粉末を提供することである。
【0013】
本発明の更にもう一つの課題は、工業的利用性を充分に満たす捕集率を実現しえるナノ球状粒子、粉末の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するため、本発明に係るコンポジット構造を有するナノ球状粒子は、単一金属、合金、酸化物、珪素化物、窒化物、炭化物、硫化物のいずれかであり、多結晶又は単結晶の少なくとも一種を含み、粒径が1μm未満であり、真球度が約20%以内である。
【0015】
上記した第一生成物に対して本発明のコンポジット構造を有し、しかも、粒径が300μm未満で、かつ、真球度が20%以内である球状粒子は、本発明以前には実在しなかった。本発明は、後で写真及びデータで実証するとおり、このようなナノ球状粒子を実現したのである。したがって、本発明の上記数値は、単に、希望的数値を述べたものでないことは明らかであり、物自体に新規性が認められる。そして、このような新規性のある球状粒子によれば、以下に述べる有用な工業的効果を奏するのであるから、進歩性をも満たす。粉末についても同様である。
【0016】
まず、本発明に係るナノ球状粒子は、コンポジット構造を有するため、そうでないものと比較すると、良好な材料特性を有している。コンポジット構造に含まれる多結晶、又は、単結晶は、200nm以下であると良好な作用効果を得ることができる。本発明において、コンポジット構造は、微細な多結晶、又は、単結晶の集合体を意味し、アモルファスを含んでいてもよい。集合体は、単結晶、又は、多結晶のみで構成されていてもよく、単結晶と多結晶が混在していてもよい。本発明に係るナノ球状粒子は1μm未満であり、内部構造が200nm以下の結晶構造を有するため、断面を観察すると、0.3nm間隔の格子状縞である事で結晶構造を確認することができる。コンポジット構造は、材料の特性に大きな影響を与えることは既に述べた通りである。
【0017】
次に、本発明に係るナノ球状粒子は、粒径が1μm未満である。このような微小な粒子であるため、良好な使用特性を得ることができる。粒径は、好ましくは、200nm以下である。
【0018】
更に、本発明に係るナノ球状粒子は、真球度(絶対値)が約20%以内であり、極めて真球に近い形状である。そのため、表面のエネルギー状態が安定し、優れた使用特性が得られる。真球度は、好ましくは、約10%以内である。
【0019】
本発明に係るナノ球状粒子は、材料組成の選択により、各種機能を有する高効率の素子、デバイスを実現することができる。例えば、電気電子機器の微細配線や貫通電極の実現、太陽電池や撮像素子等の半導体光電変換素子の高効率化、高硬度の反射板、ノンオイルグリス、高輝度の発光物質の実現など、多岐にわたる。
【0020】
本発明に係るナノ球状粒子の製造方法は、アルゴン不活性ガス雰囲気中で、原料金属の溶融物を高速回転する皿ディスク上に供給し、遠心力を作用させて小滴として飛散させ、ガス雰囲気との接触により急冷して球状粒子(第一生成物)とする第一の工程の後、第一の工程で得られた第一生成物の球状粒子を、プラズマ旋回流内でアルゴンイオンと衝突反応させて、第一生成物をナノサイズに分解すると同時に反応性のあるガス成分又は蒸気成分と接触させるプラズマ反応結晶化処理により、真球度20%以内の球状粒子(第二生成物)とする。即ち、プラズマ旋回流内反応により、第一生成物を真球ナノ粒子に近い球状に変化させる。又、反応条件に依存して第一生成物に化学変化を生じさせ、必要な第二生成物を生じさせる。本発明において、化学変化の種類は、反応ガス等の反応環境に依存し、好ましくは、硫素化、窒素化、炭素化、酸化である。
【0021】
第二生成物(即ち、本発明に係るナノ球状粒子)を得るために用いられる第一生成物は、単一金属、合金、酸化物、珪素化物、窒化物、炭化物、硫化物のいずれかである。更に、炭素、又は、炭素の同素体であってもよい。単一金属、又は、合金は、好ましくは、融点が20〜2300℃である。第一生成物は、好ましくは、Snを主成分とする合金、Siを含む半導体金属、希土類金属を含む合金、B金属などである。
【0022】
第一生成物を得る第一の工程には、本発明者の米国特許第6808568号明細書に記載された技術を適用できる。この技術の適用により、第二の工程におけるプラズマ反応させた後の第二生成物は、確実にコンポジット構造となりえる。出発物質は、金属、又は、合金である。出発材料は、第一工程で溶融されるため、サイズは問わない。
【0023】
前記第一の工程で得られる球状粒子の粒径は、1μm〜300μmの範囲、好ましくは
1μm〜20μmの範囲、更に、好ましくは、20μmである。上述した粒径であれば、前記第2の工程を経て得られる球状粒子を、高度の捕集率を持って、ナノサイズ化することができる。又、この粒径を有する第一生成物を使用することで、微小なサイズを有する第二生成物を、確実に得ることができる。第一生成物は、金属から構成され、単一金属、合金を含む。好ましくは、Snを主体とする合金、Si、B、希土類金属を含む合金である。
【0024】
第二の工程では、第一の工程で得られた第一生成物を、プラズマ旋回流内でアルゴンイオンと衝突反応させて、第一の工程に投入された原料金属の成分をナノサイズに分解すると同時に反応性のあるガス成分又は蒸気成分と接触させるプラズマ反応結晶化処理により、真球度約20%以内の球状粒子とする。上述した要件を満たす限り、第二の工程において、プラズマ反応に用いられる装置は、特に限定はしない。なお、好ましい装置は後で図面をもって詳細に説明する。
【0025】
この第二の工程によれば、プラズマ旋回流火炎内域において、アルゴンイオンを材料に繰り返し衝突させ、第一生成物の投入材料を90%以上ナノ化させることができる。また、プラズマ出力を調整することにより、目的サイズも調整できる。更に、金属化合物の生成も主に反応ガスの種類に依存するので、反応ガスの成分を選択調整することにより、金属の元素組成を化合物として変化させることができる。反応ガスは、活性化ガス、不活性化ガスを含む。好ましくは、酸素ガス、シランガス、窒素ガス、メタンガス、硫化水素ガス、又は、アルゴンガスから選択される1種類以上から独立して選択される。
【0026】
好ましくは、水素ガス、酸素ガス、シランガス、窒素ガス、メタンガス、硫化水素ガス、又は、アルゴンガスから選択される1種類以上から独立して選択される。
【0027】
プラズマ内反応は、少なくとも2段階で行われることが好ましい。1段階目の反応は、
第一生成物と反応ガスの接触によって起こり、2段階目の反応は、1段階目の反応物を更
に、反応ガスに接触させることによって起こる。少なくとも2段階で行うことで、第一生成物を第二生成物へ確実に化学変化させることができる。この製造方法を適用することにより、ナノ球状粒子(第二生成物)の捕集率を90%以上という、極めて高い値に高めることができる。
【0028】
本発明の中心は、上述したナノ球状粒子にあるが、そのようなナノ球状粒子による粉末も、本発明の請求内容をなす。
【発明の効果】
【0029】
以上述べたように、本発明によれば、希望する組成を有し、且つコンポジット構造を有するナノ球状粒子、粉末及びその製造方法を提供することができる。また、工業的利用性を充分に満たす捕集率を実現しえるナノ球状粒子、粉末の製造方法を提供することができる。更に、本発明に係るナノ球状粒子、粉末は、材料組成の選択により、各種機能を有する高効率の素子、デバイスを実現することができる。例えば、電気電子機器の微細配線や貫通電極の実現、太陽電池や撮像素子等の半導体光電変換素子の高効率化、高硬度の反射板、ノンオイルグリス、高輝度の発光物質の実現など、多岐にわたる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明に係る第1生成物を製造する際に用いられる遠心式粒状化装置の構造例である。
【図2】本発明に係る第2生成物を製造する際に用いられる装置の構造例である。
【図3】図2の一部拡大図である。
【図4】図3の一部拡大図である。
【図5】実施例1の第1生成物の断面によるSEM像である。
【図6】実施例1の第2生成物のSEM像である。
【図7】実施例1の第2生成物のEDXによるデータである。
【図8】実施例1の第2生成物の粒度分布を示すグラフである。
【図9】実施例1の第2生成物の粒度分布表である。
【図10】実施例2の第2生成物のTEM像である。
【図11】実施例2の第2生成物の断面によるTEM像である
【図12】実施例2の第2生成物のEDXによるデータである。
【図13】実施例2の第2生成物の粒度分布を示すグラフである。
【図14】実施例2の第2生成物の粒度分布表である。
【図15】実施例3の第2生成物のTEM像である。
【図16】実施例3の第1生成物のEDXによるデータである。
【図17】実施例3の第2生成物のEDXによるデータである。
【図18】実施例4の第2生成物のTEM像である。
【図19】実施例4の第1生成物のEDXによるデータである。
【図20】実施例4の第2生成物のEDXによるデータである。
【図21】実施例5の第2生成物のTEM像である。
【図22】実施例5の第1生成物のEDXによるデータである。
【図23】実施例5の第2生成物のEDXによるデータである。
【図24】実施例6の第2生成物のTEM像である。
【図25】実施例6の第1生成物のEDXによるデータである。
【図26】実施例6の第2生成物のEDXによるデータである。
【図27】比較例1の最終生成物のTEM像である。
【図28】比較例1の第2生成物の粒度分布を示すグラフである。
【図29】比較例1の第2生成物の粒度分布表である。
【図30】比較例2の最終生成物のTEM像である。
【図31】比較例2の第2生成物の粒度分布を示すグラフである。
【図32】比較例2の第2生成物の粒度分布表である。
【図33】比較例3の最終生成物のSEM像である。
【図34】比較例3の第2生成物の粒度分布を示すグラフである。
【図35】比較例3の第2生成物の粒度分布表である。
【図36】比較例4の最終生成物のTEM像である。
【図37】比較例4の第2生成物の粒度分布を示すグラフである。
【図38】比較例4の第2生成物の粒度分布表である。
【図39】比較例5の最終生成物のTEM像である。
【図40】比較例5の第2生成物の粒度分布を示すグラフである。
【図41】比較例5の第2生成物の粒度分布表である。
【図42】比較例6の最終生成物のTEM像である。
【図43】比較例6の第2生成物の粒度分布を示すグラフである。
【図44】比較例6の第2生成物の粒度分布表である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<第一生成物を製造する装置>
図1は、本発明に係る第1生成物を製造する際に用いられる遠心式粒状化装置の構成を概略的に示す図である。この遠心式粒状化装置では、アルゴン不活性ガス雰囲気中で、原料金属の溶融物を高速回転する皿ディスク上に供給し、遠心力を作用させて小滴として飛散させ、ガス雰囲気との接触により急冷して球状粒子とする第1の工程が実行される。図を参照し、更に具体的に説明すると、粒状化室5は上部が円筒状、下部がコーン状になっており、上部に蓋6を有する。蓋6の中心部には垂直にノズル4が挿入され、ノズル4の直下には皿形回転ディスク7が設けられている。符号8は皿形回転ディスク7を上下に移動可能に支持する機構である。また、粒状化室5のコーン部分の下端には生成した粒子の排出管9が接続されている。ノズル4は、粒状化する金属を溶融する電気炉(高周波炉)2と、高周波加熱機3を接続し、更に、高周波加熱機3と、粒状化室5を接続する。
【0032】
電気炉(高周波炉)2は、原料供給器1から原料の供給を受け、融解を行う。混合ガスタンク12、13、14で所定の成分に調整された雰囲気ガスは配管により粒状化室5内部及び電気炉2上部にそれぞれ供給される。
【0033】
粒状化室5内の圧力は弁16、17及び排気装置19、電気炉2内の圧力は弁15及び排気装置18によりそれぞれ制御される。電気炉2の内圧を大気圧より若干高めに、粒状化室5の内圧を大気圧より若干低めに維持すれば、電気炉2で溶融した金属は差圧によりノズル4から皿形回転ディスク7上に供給される。供給された金属は皿形回転ディスク7による遠心力の作用で微細な液滴状になって飛散し、冷却されて固体粒子になる。生成した固体粒子は排出管9から自動フィルター10に供給され分別される。符号11は微粒子回収装置である。
【0034】
高速回転体が円盤状又は円錐状の場合は、溶融金属が回転体のどの位置に供給されるかによって溶融金属にかかる遠心力が大きく異なるので、粒の揃った球状粉体を得にくい。高速回転する皿形ディスク上に供給した場合は、その皿形の周縁位置における均一な遠心力を受け粒の揃った小滴に分散して飛散する。飛散した小滴は雰囲気ガス中で急速に冷却し、固化した小粒となって落下し、回収される。得られた生成物は、1μm未満の粒子であり、好ましくは、1〜300nmの粒子である。
【0035】
上記のような装置を用いて溶融物を粉末化する研究を行うことにより、溶融物は急速冷却固化中に自己組織化され、個々の微小粒子が点在物、或いは空隙などにより相互に隔離されているコンポジット構造を有する微小粒子の集合体になること、及び原料の組成及び雰囲気ガスの種類によって、個々の微小粒子は、点在物、或いは空隙などにより相互に隔離されたものとなることが知られている。なお自己組織化とは、均一相である溶融物が、その分散、急速冷却固化過程で、自動的にコンポジット構造を形成することを言う。
【0036】
皿形ディスクの回転数が高くなるほど、得られた粒子の径は小さくなる。内径35mm、深さ5mmの皿形ディスクを用いた場合、平均粒径200μm以下の粒子を得るためには毎分30,000回転以上とすることが望ましい。
【0037】
粒状化室に供給する雰囲気ガスの温度は室温でよいが、長時間連続操業する場合には、溶融物の小滴の急冷効果を維持するため、粒状化室内温度が100℃以下になるように通気量を制御することが望ましい。
【0038】
<第二生成物を製造する装置>
図2は、本発明に係る第2生成物を製造する際に用いられる装置の構造例を示す。図2において、図1に示した遠心式粒状化装置の大部分がそのまま用いられ、ただ、電気炉(高周波炉)2の部分が、プラズマ反応装置20に置き換わっている。なお、第二生成物は、本発明に係るナノ球状粒子と同義である。
【0039】
図3は、図2に含まれているプラズマ反応装置20の構成を概略的に示す図である。プラズマ反応装置20は、第一の工程で得られた球状粒子を、プラズマ旋回流内でアルゴンイオンと衝突反応させて、原料金属の成分をナノサイズに分解すると同時に反応性のあるガス成分又は蒸気成分と接触させるプラズマ反応結晶化処理により、真球度約20%以内、好ましくは10%以内の球状粒子とするために用いられる。図3を参照すると、図示されたプラズマ反応装置20は、主トーチ30、副トーチ33、反応ガス供給手段34、35を有する。
【0040】
主トーチ30は、プラズマガスPLの供給手段、第1生成物の供給手段301及び陽極302を有している。副トーチ33は、プラズマガスPLの供給手段、及び、陽極331を有している。主トーチ30の陽極302と副トーチ33の陰極331との間にプラズマが発生すると、プラズマガスPLは、互いの中心軸に沿って放出され、交差する。プラズマガスPLは導電性であるため、副トーチ33の先端から主トーチ30の先端に至る導電路が形成される。
【0041】
第一生成物は、材料供給口301から供給され、中心軸32に沿って放出される。その際、第1生成物と同時に、反応ガス供給手段34より、アルゴン等の不活性化反応ガスが放出されると、不活性化反応ガスは中心軸32に収束するように保護ガスとして作用する。このため、第1生成物は飛散することがなく、100%に近い確率で処理される。プラズマガスPLは、図3に拡大して示すように、プラズマガス流31として、中心軸32の放出流を取り巻くように旋回流出される。第1生成物の好ましい材料送入流量は1〜30L/minである。
【0042】
上述のようにして、1段目のプラズマ反応が行われた後、反応ガス供給手段35で、二段階目のプラズマ反応が実行される。これにより、第1生成物に対する化学変化が促進され、化学変化率が更に向上することになる。
【0043】
反応ガスは、水素、酸素、シラン、窒素、メタン、又は、硫化水素から選択させる1種類以上の活性ガスとアルゴンガスの混合ガスと用いることが好ましい。又、混合ガスは、
アルゴンに対し、活性ガスが各30vol%以内で混合されたものが好ましい。更に、反応ガスは、流量1〜30L/minの速度で使用されることが望ましい。
【0044】
この後、反応生成物は、粒状化室5に送られ、図1を参照して説明した粒状化作用が実行され、第2生成物が得られる。
【0045】
次に実施例及び比較例を挙げて、本発明の内容を具体的に説明する。
【0046】
実施例1
a.第一生成物の製造
第一生成物の製造には、図1に示された遠心式粒状化装置(米国特許6808568号に記載されたものと同じ)を用いた。また、出発物質として、4元素から構成される下記の合金(出発物質)を使用した。
【0047】
まず、上述した遠心式粒状化装置の高周波炉2に合金(In、Sn、Ga、Bi)を混入し、溶融させた。溶融した金属は、ノズル4を通過し、粒状化室5に到達する。粒状化室5では、円型ディスク上に供給された金属溶融物を、高速回転により強制的に作られた遠心場内に、遠心力を作用させて小滴として飛散させ、急冷する事により、コンポジット構造を有する合金A粒子を得た。粒状化室5での工程は、アルゴンガスを使用し、内圧−0.3MPaで行われた。円型ディスクは、内径35mm深さ5mmのものを用いた。
【0048】
得られたコンポジット構造を有する第一生成物は、平均粒径が15μmであった。図5は、実施例1の第1生成物の走査型顕微鏡(scanning electron microscope 以下SEM像と称する。)による球状断面SEM像である。図5より、第一生成物がナノコンポジット構造を有しているのが確認できる。
【0049】
b.第二生成物の製造
第二生成物の製造には、上述のようにして得られた第一生成物を、図2に記載した装置により処理した。反応ガスは、アルゴンガスを使用した。
【0050】
得られた第二生成物は、その多くが粒径100nm以上200nm以下の球状の粒子であり、真球度は1%以内であった。出発物質、第1生成物、第2生成物は、In、Sn、Ga、Biより構成され、合金全量に対する比率は、In(6.17wt%)、Sn(67.72wt%)、Ga(0.78wt%)、Bi(25.33wt%)であった。
【0051】
図6は、実施例1における第二生成物のSEM像である。図6より第二生成物が球状であることが確認できる。
【0052】
図7は、実施例1における第二生成物のエネルギー分散型X線分光法(energy dispersive X-ray spectroscopy 以下EDXと称する。)によるデータである。EDXによる第1生成物のデータは、第2生成物と同じであったため、省略する。図7により、第二生成物は化合物でない事が確認でき、第二生成物と組成は同じものであることが確認できる。
【0053】
図8は、実施例1に係る第2生成物の粒度分布を示すグラフである。図8を参照すると、目的粒径(1μm未満)を希望どうり生成できている事が確認できた。図9は実施例1の粒度分布表である。目的粒径を、高い捕集率で生成できている事が確認できた。
実施例1のナノ球状粒子は電気機器の微細配線、貫通電極等に用いるのに好適である。
【0054】
実施例2
a.第一生成物の製造
第1生成物は、出発物質としてSi(純度11ナイン)を使用した以外は、実施例1と同様にして製造した。
得られたコンポジット構造を有するSi粒子(第1生成物)は、平均粒径が15μmであった。
【0055】
b.第二生成物の製造
第二生成物の製造には、上述の第一生成物を、図2に記載した装置により処理した。反応ガスは、アルゴンガスを使用した。
【0056】
得られたSi粒子は、その多くが粒径100nm以下の球状の粒子であり真球度が1%以内であった。第一生成物組成は、Si粒子であり、第二生成物組成もSi粒子であった。
【0057】
図10は、実施例2の第二生成物の透過型顕微鏡(transmission electron microscope 以下TEM像と称する。)によるTEM像である。写真より、個々の粒子がほぼ真
球の形状を有する球状であることが確認できる。
図11は、実施例2の第2生成物の断面のTEM像である。このTEM像から第2生成物が、ナノコンポジット構造を有していることが確認できる。
【0058】
コンポジット構造の確認は、標準Siサンプルの(111)面の格子間隔をリファレンスとする方法によって行った。具体的には、標準Siサンプルの(111)面の格子像を表示倍率(撮影倍率)を算出した。資料の同一箇所を、表示倍率200,000倍の実際の倍率
を基にして倍率補正を行った。これらの値に印画紙引き伸ばし倍率の3、8、10(120,000倍)及び10(290,000倍)をそれぞれ掛けることによって印画紙上の倍率を求めた。このときSi(111)面の格子面間隔はJCPDSカードに記載された値を用いた。なお、標準Siサンプルを用いた結晶構造確認方法は、以下の他の実施例においても適用される。
【0059】
このTEM像の拡大像に見られるように、微粒子内部には格子縞が比較的良好に観察された。格子縞の間隔は0.30nmであることから、Si(111)面の面間隔に対応されると考えられるので結晶性を示している。2nmの非結晶部も見られた事から第2生成物が、ナノコンポジット構造を有していることが確認できる。
【0060】
図12は、実施例2における第2生成物のEDXによる組成データである。EDXによる第1生成物のデータは、第2生成物と同じであったため、省略する。図12により、第2生成物は、化合物組成で無いことが確認出来、第1生成物と組成は同じものであることが確認できる。
【0061】
図13は、実施例2の粒度分布を示すグラフである。目的粒径を100nm以下とし希望どうり生成できている事が確認できた。
図14は実施例2の粒度分布表である。目的粒径100nm以下のものを100%捕集することができた。
【0062】
実施例2のナノ球状粒子は、例えば、効率の極めて高い太陽電池等の半導体光電変換素子を実現するのに、極めて有用である。
【0063】
実施例3
a.第一生成物の製造
第一生成物は、出発物質としてSi(純度11ナイン)を使用した以外は、実施例1と同様にして製造した。得られたコンポジット構造を有するSi粒子(第一生成物)は、粒
径が15μmであった。
【0064】
b.第二生成物の製造
第二生成物の製造には、得られた第一生成物と図2に記載した装置を使用した。反応ガスは、酸素ガスを使用した。得られた酸化ケイ素(SiO)粒子は、その多くが粒径100nm以下の球状の粒子であり、真球度1%以内であった。第一生成物組成は、Si粒子であり、第二生成物組成はSiO粒子であった。
【0065】
図15は、実施例3の第2生成物のTEM像である。写真より、個々の粒子がほぼ真球の形状を有する球状であることが確認できる。特に、中央粒子のAで示した格子の部分が、多結晶構造であり、粒子の不鮮明な部分がアモルファス領域を示す。コンポジット構造の確認ができた。又、写真から粒径が100nm以下であることを確認できた。粒度分布は、実施例2とほぼ同じであるので、その表の添付は省略する。
【0066】
図16は、第1生成物のEDXによる組成データ、図17は、第2生成物のEDXによる組成データであり、酸素ガス反応により酸化物に変化した事が確認できた。
【0067】
実施例3のナノ球状粒子は、効率の高い撮像素子(CCD)等の半導体光電変換素子を実現するのに有用である。
【0068】
実施例4
a.第一生成物の製造
第一生成物は、出発物質としてSi(純度11ナイン)を使用した以外は、実施例1と同様にして製造した。得られたコンポジット構造を有するSi粒子(第1生成物)は、平均粒径が15μmであった。
【0069】
b.第二生成物の製造
第二生成物の製造には、第一生成物と図2に記載した装置を使用した。反応ガスは、メタンガスを使用した。得られたSiC粒子は、粒径100nm以下の球状の粒子であり、真球度が1%以内であった。第一生成物組成として用いられたSi金属粒子が、第二生成物組成では、SiC炭化粒子に変化する。
【0070】
図18は、実施例4の第二生成物のTEM像である。写真より、個々の粒子がほぼ真球の形状を有する球状であることが確認できる。粒子の不鮮明な輪郭部分がアモルファス領域多結晶域を示す。コンポジット構造の確認ができた。写真から粒径が100nm以下であることが確認できる。粒度分布は、実施例2とほぼ同じであるので、その表の添付は省略する。
【0071】
図19は、第一生成物のEDXによる組成データ、図20は、第二生成物のEDXによる組成データであり、メタンガス反応により炭化物に変化した事が確認できた。
【0072】
実施例4のナノ球状粒子は、高硬度の反射板を構成するのに有用である。
【0073】
実施例5
a.第一生成物の製造
第一生成物は、原料としてボロンを使用した以外は、実施例1と同様にして製造をした。得られたコンポジット構造を有するボロン粒子(第一生成物)は、粒径が15μmであった。
【0074】
b.第二生成物の製造
第二生成物の製造には、第一生成物と図2に記載した装置を使用した。反応ガスは、窒素ガスを使用した。得られたBN粒子は、その多くが粒径100nm以下の球状粒子であり、真球度が1%以内であった。第一生成物組成はB金属粒子であり、第二生成物組成はBN窒化粒子であった。
【0075】
図21は、実施例5の第二生成物のTEM像である。写真より、個々の粒子がほぼ真球の形状を有する球状であることが確認できる。又、写真から粒径が100nm以下であることが確認できる。粒度分布は、実施例2とほぼ同じであるので、その表の添付は省略する。
【0076】
図22は、第一生成物のEDXによる組成データ、図23は、第二生成物のEDXによる組成データであり、窒素ガス反応により窒化物に変化した事が確認できた。
【0077】
実施例5のナノ球状粒子は、ノンオイルグリスを実現するのに有用である。
【0078】
実施例6
a.第一生成物の製造
第一生成物は、原料として6元素から構成される合金B(出発物質)を使用した以外は、実施例1と同様にして製造したが反応ガスにアルゴンガスの酸素混合ガスを使用した。得られたコンポジット構造を有する合金酸化物粒子(第一生成物)は、粒径が、15μmであった。
【0079】
b.第二生成物の製造
第二生成物の製造には、第一生成物と図3に記載した装置を使用した。反応ガスは、硫黄ガス及びアルゴン中3%酸素ガスを使用した。得られた第二生成物は粒径が、粒径100nm以下の球状粒子であり、真球度が1%以内であった。
【0080】
第一生成物は、(O、Mg、Al、Ba、Eu、Zn)より構成され、合金全量に対する比率が、
O(21.62wt%)、Mg(4.59wt%)、Al(42.48)、Ba(21.04wt%)、Eu(2.14wt%)、Zn(8.12wt%)
であった。
【0081】
第二生成物は、(O、Mg、Al、Ba、Eu、Zn)より構成され、合金化合物全量に対する比率が、
O(16.09wt%)、Mg(3.68wt%)、Al(29.98)、S(6.93wt%)Ba(11.57wt%)、Eu(1.08wt%)、Zn(30.68wt%)
であり、第一生成物が硫化されたことが確認できた。
【0082】
図24は、実施例6の第二生成物のTEM像である。写真より、個々の粒子がほぼ真球の形状を有する球状であることが確認できる。コンポジット構造の確認は、実施例2に記載したとおりである。また、写真から粒径が100nm以下であることを確認することができる。粒度分布は、実施例2とほぼ同じであるので、その表の添付は省略する。
【0083】
図25は、第一生成物のEDXによる組成データである酸化反応後であることが確認できた。図26は、第二生成物のEDXによる組成データであり、硫化水素ガス反応により硫化物に変化した事が確認できた。
【0084】
実施例6のナノ球状粒子は、高輝度の発光物質として、有用である。
【0085】
比較例1
原料として、Si(純度11ナイン)の破砕品(粒径15μm)を用いて図2に記載した装置を使用して製造を行った。反応ガスは、アルゴンガスを使用した。得られた最終生成物は、Si粒子であり、歪状の粒子であった。100nm未満の粒子の捕集率は50%であった。
【0086】
図27は、比較例1の最終生成物のTEM像である。図27より、歪な球状であることが確認でき真球度が30%以上と悪く。真球ではないことが確認できた。
【0087】
図28は、比較例1の粒度分布表、図29はそのデータを示す図である。まず、図28を参照すると、200nm〜400nmの間でピークを示す分布特性と、40nm〜150nmの間でピークを示す分布特性の、双峰性粒度分布特性を示している。このことは、目的粒径(希望値)を100nm以下とした場合、捕集率が著しく悪いことを意味する。実際、図29のデータを見ると、目的粒径を100nm以下とした場合、捕集率が50%以下となっている。
【0088】
比較例2
原料として、Si(純度11ナイン)の破砕品(粒径30μm)を使用し特開2005−320195の方法を採用して、粒子の製造を行った。得られた最終生成物は、Si粒子であり、歪状の粒子であった。
【0089】
図30は、比較例2の最終生成物のTEM像、図31は、比較例2の粒度分布グラフ、図32は、比較例2の粒度分布表である。まず、図30を参照すると、最終生成物は多面体であり、真球度を全く有していないことが確認できる。
【0090】
次に、図31を参照すると、4000nm〜15000nmの間でピークを示す分布特性と、40nm〜3000nmの間でピークを示す分布特性の、双峰性粒度分布特性を示している。このことは、目的粒径(希望値)を100nm以下とした場合、捕集率が著しく悪いことを意味する。実際、図32のデータを見ると、目的粒径を100nm以下とした場合、捕集率が約10%以下であることがわかる。
【0091】
比較例3
原料として、Si(純度11ナイン)の破砕品(粒径30μm)を使用し、特開2005−320195の方法を採用して、粒子の製造を行った。
【0092】
図33は、比較例3の最終生成物のSEM像である。図33を参照すると、最終生成物は、数十μmから数百nmまでの幅広い分布を呈している、又球状ではないことが確認できる。
【0093】
図34は、比較例3の粒度分布グラフ、図35は、比較例3の粒度分布表である。まず、図34を参照すると、4μm〜30μmの間でピークを示す分布特性と、40nm〜3000nmの間でピークを示す分布特性の、双峰性粒度分布特性を示している。このことは、目的粒径(希望値)を100nm以下とした場合、捕集率が著しく悪いことを意味する。実際、図35のデータを見ると、目的粒径を100nm以下とした場合、捕集率が約10%以下であることがわかる。
【0094】
比較例4
原料として、Si(純度11ナイン)の破砕品(粒径30μm)を使用し、気相法を採用して、粒子の製造を行った。得られた最終生成物は、Si粒子であり、歪状の粒子であ
った。
【0095】
図36は、比較例4の最終生成物のTEM像である。図36より最終生成物は、歪な形状で、しかも、個々の単位が不明確な連続体状であることが確認できる。
【0096】
図37は、比較例4の粒度分布グラフ、図38は、比較例4の粒度分布表である。図38を参照すると、約180nmの付近にピークを有する分布特性を示している。このことは、目的粒径(希望値)を100nm以下とした場合、捕集率が著しく悪いことを意味する。実際、図38のデータを見ると、目的粒径を100nm以下とした場合、捕集率が約10%以下であることがわかる。
【0097】
比較例5
原料として、Si(純度11ナイン)の破砕品(粒径30μm)を使用し、レーザーアブレーション法を採用して、粒子の製造を行った。
【0098】
得られた最終生成物は、Si粒子であり、歪状の粒子であった。真球度50%の歪状の粒子であった。
【0099】
図39は、比較例5の最終生成物のTEM像である。図39より、最終生成物は、個々の単位が不明確な連続体で、しかも、個々の形状が歪であることが確認できる。
【0100】
図40は、比較例5の粒度分布グラフ、図41は比較例5の粒度分布表である。まず、図40を参照すると、3μm〜14μmの間でピークを示す分布特性と、40nm〜3000nmの間でピークを示す分布特性の、双峰性粒度分布特性を示している。このことは、目的粒径(希望値)を100nm以下とした場合、捕集率が著しく悪いことを意味する。実際、図41のデータを見ると、目的粒径を100nm以下とした場合、捕集率が約10%以下になることがわかる。
【0101】
比較例6
原料として、Si(純度11ナイン)の破砕品(粒径30μm)を使用し、陽極酸化法を採用して、粒子を製造した。得られた最終生成物は、Si粒子であり、歪状の粒子であった。歪状粒子であるため、真球度を測定することができなかった。
【0102】
図42は、比較例6の最終生成物のTEM像である。図42より、最終生成物は、歪な形状で、個々の単位が不明確な連続状であることが確認できる。
【0103】
図43は、比較例6の粒度分布グラフ、図44は、比較例6の粒度分布表である。図43を参照すると、約180nmの付近にピークを有する分布特性を示している。このことは、目的粒径(希望値)を100nm以下とした場合、捕集率が著しく悪いことを意味する。実際、図44のデータを見ると、目的粒径を100nm以下とした場合、捕集率が約30%以下であることがわかる。
【0104】
最後に、上記写真及びデータについて、補足説明を加えておく。
1.実施例と比較例の形状、目的粒径達成度、及び、捕集率についての補足
表1は、実施例1〜6と比較例1〜6の対比表である。
【0105】
【表1】

【0106】
表1の「形状」の欄に表示された「球状」、「歪(いびつ)」、「破砕形」は、電子顕
微鏡を使用し、目視で観察した結果である。
【0107】
表1での真球度は、中心角度が30度で交わる直径2本の長さL1、L2の誤差(L1−
L2)/L1を、百分率で示したものである。
【0108】
表1の目的粒径達成度は、粒径100nm以下の第2生成物の量/第1生成物量百分率で示したものである。
【0109】
表1の捕集率は、第1生成物の量に対して、得られた第2生成物の量の比率を百分率で示したものである。
【0110】
表1より、実施例1〜6はいずれも真球度が1%以内のほぼ真球である粒子であった。対して、比較例1は、球状ではあるが、真球度は、30%以上であるので、真球に近い粒子ではない。比較例2〜6は、歪な形状であり、球状ではないため真球度の計測は不可能であった。
【0111】
2.粒度分布についての補足
実施例1、2、比較例1〜6の粒度分布において、図9、14、29、32、35、38、41、44の粒度分布表のデータは、左から、低部チャネル径(μm)、頻度体積%、累積体積%、低部チャネル径(μm)、頻度体積%、累積体積%、低部チャネル径(μm)、頻度体積%、累積体積%を示している。
【0112】
実施例1、2の第2生成物は、全てが微小な粒子であり、粒度分布もばらつきがない。実施例3〜6に関しても実施例1、2と同様の工程で製造されたため、同程度の結果が得られる。
【0113】
これに対して、比較例2、3は平均径が1μm以上の大きなサイズの粒子である。又、比較例1、2、3、5は、2回のピークを有する粒度分布であり、粒径のばらつきが大きい。
【0114】
以上、ナノ球状粒子を中心に説明したが、上述した説明は、ナノ球状粒子による粉末についても、そのまま敷衍することができる。
【符号の説明】
【0115】
1 原料供給器
2 電気炉(高周波炉)
5 粒状化室
12〜14 混合ガスタンク
20 プラズマ反応装置
30 主トーチ
33 副トーチ
34、35 反応ガス供給手段
PL プラズマガス



【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンポジット構造を有するナノ球状粒子であって、該当ナノ球状粒子は、
a.単一金属、合金、酸化物、珪素化物、窒化物、炭化物、硫化物のいずれかであり、
b.多結晶又は単結晶の少なくとも一種を含み、
c.球状粒子径が1μm未満であり、真球度が20%以内である、
ナノ球状粒子。
【請求項2】
コンポジット構造を有するナノ球状粒子を含む粉末であって、前記ナノ球状粒子は、
a.単一金属、合金、酸化物、珪素化物、窒化物、炭化物、硫化物のいずれかであり、
b.多結晶又は単結晶の少なくとも一種を含み、
c.球状粒子径が1μm未満であり、真球度が20%以内である、
粉末。
【請求項3】
原料金属を溶融し、遠心力を作用させて微細液滴状として飛散させ、そして急冷凝固化させた粒子径が1μm〜300μmの球状粒子の第一生成物を生成し、第一工程の該第一生成物を、プラズマガス内で分解、反応させて、第二生成物を製造する第二工程を含む製造方法であって、
該第二生成物は、多結晶又は単結晶から選別される少なくとも一種以上の金属及び金属化合物を含み、粒子径が約1μm未満であり、且つ真球度が約20%以内であるナノ球状粒子を含む粉末を完成させる方法。
【請求項4】
前記第二工程においてプラズマガスと共に反応ガスを供給し、第二生成物は第一生成物と異なる生成物を製造する請求項2の製造方法。
【請求項5】
原料金属をアルゴン不活性ガス雰囲気中で、高速回転する皿ディスク上に供給し、遠心力を作用させて小滴として飛散させ、ガス雰囲気との接触により急冷して球状粒子とする第1の工程の後、前記第1の工程で得られた球状粒子を、プラズマ旋回流内でアルゴンイオンと衝突反応させて、前記原料金属の成分を粒径約1μm未満のナノサイズに分解すると同時に反応性のあるガス成分又は蒸気成分と接触させるプラズマ反応結晶化処理により、真球度20%以内の球状粒子とする第2の工程を経て得られたナノ球状粒子製造方法。
【請求項6】
前記第一工程で得られる球状粒子の粒径を、1μm〜300μmの範囲に限定して、前記第2の工程を経て得られる目的とする球状粒子の粒径がナノサイズである、請求項5に記載のナノ球状粒子の製造方法。
【請求項7】
第二工程で得られるナノ球状粒子は、ナノコンポジット構造を有し、単一金属、合金、酸化物、珪素化物、窒化物、炭化物、硫化物のいずれかであり、多結晶又は単結晶から選択される1種以上を含む請求項5に記載のナノ球状粒子製造方法。
【請求項8】
第二工程で得られるナノ球状粒子には、プラズマ旋回流内アルゴンイオン衝突反応におけるプラズ反応結晶化処理は、少なくとも2段階で行われる、ナノコンポジット構造を有する多結晶又は単結晶の何れかを含む請求項5に記載のナノ球状粒子製造方法。
【請求項9】
請求項6に記載されたナノ球状粒子であって、前記プラズマ旋回流内反応は、少なくても2段階の化合物化反応を含み、1段階目の反応は、前記金属化合物粒子と第1反応ガスの接触による反応であり、2段階目の反応は、前記1段階目の反応によって得られた反応物と、第2反応ガスの接触による反応である、ナノ球状粒子製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載されたナノ球状粒子であって、前記第1反応ガス、及び、第2反応ガス
は、水素ガス、酸素ガス、シランガス、窒素ガス、メタンガス、硫化水素ガス、又は、アルゴンガスから独立して選択される1種類以上を含む、ナノ球状粒子製造方法。
【請求項11】
請求項5に記載されたナノ球状粒子の製造方法であって、コンポジット構造を有する金属粒子を、プラズマ旋回流内反応によって化合物化させ、前記ナノ球状粒子を得る工程を含む、ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
請求項5に記載されたナノ球状粒子の製造方法であって、前記プラズマ旋回流内反応は、少なくても2段階の化合物化反応を含み、
1段階目の反応は、前記金属粒子と第1反応ガスの接触による反応であり、
2段階目の反応は、前記1段階目の反応によって得られた反応物と、第2反応ガスの接触による反応である、ナノ球状粒子の製造方法
【請求項13】
請求項5に記載された微小球状粒子の製造方法であって、前記第1反応ガス、及び、第2反応ガスは、酸素ガス、シランガス、窒素ガス、メタンガス、硫化水素ガス、又は、アルゴンガスから独立して選択される1種類以上を含む、ナノ球状粒子の製造方法。
【請求項14】
請求項5に記載されたナノ球状粒子の製造方法であって、
第1工程、及び、第2工程を含み、
第1工程は、コンポジット化された金属粒子、を得るための工程であり、
第2工程は、第1工程で得られたコンポジット構造組成物をプラズマ旋回流内で反応させる工程である、ナノ球状粒子の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【公開番号】特開2009−215653(P2009−215653A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105947(P2009−105947)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【分割の表示】特願2006−210361(P2006−210361)の分割
【原出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(504034585)有限会社ナプラ (55)
【Fターム(参考)】