説明

コンポーネントの相対変位をモニタするためのシステム

【課題】巻線端部コンポーネント対の相対変位をモニタするためのシステムの提供。
【解決手段】巻線端部コンポーネント102,104に取り付けられる構造体と構造体の非湾曲面126に取り付けられるファイバ・ブラッグ回折格子116を備える。ファイバ・ブラッグ回折格子116は、ファイバ・ブラッグ回折格子116の歪みに基づくそれぞれの波長にピーク強度を有する入射放射を反射するように構成されている。構造体は、巻線端部コンポーネント対102,104の相対変位の全範囲に渡って、構造体に生じる歪みがファイバ・ブラッグ回折格子116の歪みの大きさを所定の範囲に限定するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、コンポーネントの相対変位をモニタするためのシステムに関し、より詳細には、発電機の巻線端部コンポーネントの相対変位をモニタするためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンまたはガス・タービンによって駆動される発電機などの回転機械は、それらのステータ巻線内に数千アンペアの電流を流す能力がある。ステータ巻線は一般的に、伝導性バー(ステータ・コア内の対応するスロット内に固定されている)とステータ・コアを越えて延びる巻線端部とを備えている。巻線端部コンポーネントは、巻線端部の変位を誘発する動電的および機械的な力にさらされる。動電的な力は、たとえば、開始およびピーク負荷状態の間に巻線端部を通る大電流によって生じる。機械的な力は、回転機械の通常の機械的な熱膨張および振動によって生じる。巻線端部が過度に変位すると、いくつかの望ましくない影響があることが分かっている。たとえば、巻線端部における巻線絶縁が破壊されて、巻線端部間で起こる誘電体の絶縁破壊に至る場合がある。また巻線端部が、電気機械的な力に起因する磨耗を被って回転機械の初期故障に至る場合がある。当該技術分野において、巻線端部状態をモニタすることが求められており、巻線端部緩みの早期かつ正確な検出を行なうことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,323,678号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、巻線端部コンポーネントの変位を検出するために、種々のシステムが提案されている。しかし電子ベースのシステムでは、金属部品が、巻線端部コンポーネントの付近では高電磁界があるために使用できず、光学的振動測定システムでは、費用対効果の高い用途に対しては高価すぎる。したがって、これらの欠点に対処するモニタリング・システムを提供することは優位であろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的実施形態によれば、巻線端部コンポーネント対の相対変位をモニタするためのシステムが提供される。本システムは、巻線端部コンポーネントに取り付けられる構造体を備える。本システムはさらに、構造体の非湾曲面に取り付けられるファイバ・ブラッグ回折格子を備える。ファイバ・ブラッグ回折格子は、ファイバ・ブラッグ回折格子の歪みに基づくそれぞれの波長にピーク強度を有する入射放射を反射するように構成されている。構造体は、巻線端部コンポーネント対の相対変位の全範囲に渡って、構造体に生じる歪みがファイバ・ブラッグ回折格子の歪みの大きさを所定の範囲に限定するように構成されている。
【0006】
本明細書で開示する別の例示的実施形態によれば、発電装置が提供される。発電装置は、発電装置の動作中に相対変位を受けるように構成された巻線端部コンポーネント対を備えている。発電装置はさらに、巻線端部コンポーネントに取り付けられる構造体と、構造体の非湾曲面に取り付けられるファイバ・ブラッグ回折格子とを備えている。ファイバ・ブラッグ回折格子は。ファイバ・ブラッグ回折格子の歪みに基づくそれぞれの波長にピーク強度を有する入射放射を反射するように構成されている。ファイバ・ブラッグ回折格子の歪みは、巻線端部コンポーネント対の相対変位に起因する構造体の歪みから生じる。構造体は、巻線端部コンポーネント対の相対変位の全範囲に渡って、構造体に生じる歪みがファイバ・ブラッグ回折格子の歪みの大きさを所定の範囲に限定するように構成されている。
【0007】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および優位性は、以下の詳細な説明を添付図面を参照して読むことでより良好に理解される。なお図面の全体に渡って同様の文字は同様の部品を表わす。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の例示的実施形態により巻線端部コンポーネント対に取り付けられる構造体およびファイバ・ブラッグ回折格子の部分側断面図である。
【図2】本発明の別の例示的実施形態により巻線端部コンポーネントに取り付けられる複数の構造体およびファイバ・ブラッグ回折格子の部分側断面図である。
【図3】設計段階の間の図1の構造体の部分断面側面図である。
【図4】設計段階の間に、ファイバ・ブラッグ回折格子の歪み対巻線端部コンポーネントのたわみを、図3に例示した構造体のそれぞれの高さおよび固定厚さに対して取ったプロットである。
【図5】設計段階の間に、ファイバ・ブラッグ回折格子の歪み対巻線端部コンポーネントのたわみを、図3に例示した構造体のそれぞれの厚さおよび固定高さに対して取ったプロットである。
【図6】ファイバ・ブラッグ回折格子の歪みを、図1に例示した巻線端部コンポーネントの変位の全範囲に渡って取ったプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の例示的実施形態を、巻線端部コンポーネントの相対変位を測定するための光ファイバ検知ケーブルを用いたステータ巻線端部モニタリング・システムであって、巻線端部コンポーネントは、たとえば(これらに限定されないが)ステータ巻線端部を直接または間接的に支持または接続する支持または接続コンポーネントであり、たとえば(これらに限定されないが)接続リングおよびステータ・バーであるシステムに関連して説明する。巻線端部コンポーネント間の相対変位は、ステータ巻線端部状態を示すものである。「相対変位」は、以下において、2つの巻線端部コンポーネント間の距離のシフトを指す。2つの巻線端部コンポーネントは、互いに直接隣接していても良いし、その間に配置された1または複数の巻線端部コンポーネントによって分離されていても良い。本明細書で用いる場合、用語「a」、「an」、および「the」は、数量を限定することを意味してはおらず、むしろ参照した物品の少なくとも1つが存在することを意味している。同様に、本明細書で用いる場合、「2つの巻線端部コンポーネント」は、少なくとも2つの巻線端部コンポーネントを意味する。
【0010】
図1に、巻線端部コンポーネント対102、104の相対変位124をモニタするためのシステム100の例示的実施形態を例示する。例示的応用例では、システム100を、パワー発生装置(たとえば発電機)内で用いても良く、コンポーネント102、104は、たとえば発電機の巻線端部コンポーネントであっても良い。別の例示的応用例では、コンポーネント102、104は、たとえば容易にアクセス可能ではない場合がある高電圧および/または高磁界領域内(たとえば圧力容器内)に配置されていても良い。コンポーネント102、104は、発電機の動作中に相対変位124を受ける。本発明の1つの例示的実施形態においては、システム100は、コンポーネント102、104の相対変位124が確実に閾値または最大相対変位を超えないように、また相対変位の全範囲に渡ってコンポーネント102、104の相対変位124を検出することができるセンサを構成するように、構成されている。たとえば、コンポーネント102、104の最大相対変位は1.27mmであっても良い。しかし本発明の実施形態は、特定の数値で示したどんな最大相対変位にも限定されない。コンポーネント102、104の1.27mmの相対変位は、たとえば、静止したままのあるコンポーネントと1.27mmだけシフトする別のコンポーネントとから生じても良いし、各コンポーネントが0.635mmだけ互いの方へまたは互いから離れて同時に変位することによって生じても良い。
【0011】
図1に例示したように、ファイバ・ブラッグ回折格子116は光ファイバ115内に作られている。光ファイバ115のファイバ・ブラッグ回折格子116部分は、非湾曲面126にしっかりと取り付けられている。すなわち、当業者であれば分かるように、標準製造公差および/または公称偏差を別にすれば、平坦面である。保護するために、ジャケット119が光ファイバ115を囲んでいても良い。ジャケット119を外部から非湾曲面126に、張力逃がしコンポーネント131をファイバ・ブラッグ回折格子116の各端部166、168に設けた状態で取り付けて、付加的な機械的リンク強度を実現し、ファイバ・ブラッグ回折格子116が光ファイバ115から外れることを防止するようにしても良い。
【0012】
当然のことながら、ファイバ・ブラッグ回折格子116を表面126に外部から取り付けられることによって、構造体の設計段階において、相対移動量に対する歪み量の割合を正確に設定することができる。この割合は、設計段階において、構造体のパラメータ(たとえば高さおよび厚さ)を適切に選択することによって設定しても良いため優位である。さらに、当業者であれば分かるように、この割合は、製造する各構造体に対して実質的に一定となるように選んでも良い。なぜならば、構造体の寸法は、標準製造公差および/または公称偏差内で制御することができるからである。
【0013】
さらに当然のことながら、ファイバ・ブラッグ回折格子を取り付けるための非湾曲面を有する構造体を設計することによって、歪みはファイバ・ブラッグ回折格子のすべての部分において実質的に同じになる。これは、ピーク強度を有する反射放射のそれぞれの波長が明瞭となるので優位である。ファイバ・ブラッグ回折格子(通常、約1センチメートルの長さ)の異なる部分が異なる歪みを受けると、反射放射は、複数のピーク波長またはスペクトル的に広がった反射スペクトルを有する場合がある。これらの条件の下では、ピークは識別が難しい場合があり、歪みの推定が不明瞭になる。実質的に平坦面で、長さがファイバ・ブラッグ回折格子の長さ以上であれば、回折格子上での一様な歪みおよび明瞭なピーク波長が保証される。
【0014】
図1にさらに例示したように、カバー117が、ファイバ・ブラッグ回折格子116および張力逃がしコンポーネント131の周りに配置されて、付加的な保護が図られている。カバー117は、たとえば非伝導性のポリマー材料から作られている。図1では、光ファイバ内のファイバ・ブラッグ回折格子が例示されているが、任意の光ファイバ検知ケーブルを、巻線端部コンポーネントの相対変位を測定するために用いても良い。
【0015】
図1に例示したように、構造体110は非湾曲面126を備えている。非湾曲面126の上に、ジャケット119(およびファイバ・ブラッグ回折格子116)を外部から取り付けても良い。さらに加えて、図1に例示するように、非湾曲面126の長さは、ファイバ・ブラッグ回折格子116の長さ130に基づく最小長128であっても良い。典型的な実施形態においては、たとえば、最小長128はファイバ・ブラッグ回折格子116の長さ130よりも長く、またファイバ・ブラッグ回折格子116と張力逃がしコンポーネント131とを各端部166、168で合わせた長さより長くても良い。典型的な実施形態においては、ファイバ・ブラッグ回折格子116は、構造体110の非湾曲面126に、好適な接合材を用いて外部から取り付ける。接合材は、たとえば熱硬化性ポリマー、または互いに貼り合わせた物品を表面接着によって保持することができる任意の他の材料である。典型的な実施形態においては、非湾曲面126の長さ128は、たとえば、2センチメートルであっても良い。
【0016】
構造体110はさらに、追加面対152、154を備えている。それぞれの追加面152、154は、コンポーネント102、104のそれぞれの第1の表面またはそれぞれの上面156、157に取り付けられている。図1に例示したように、構造体110はまた、中間部分対158、160を備えている。これらは、それぞれの追加面152、154を、非湾曲面126のそれぞれの外端162、164に結合している。典型的な実施形態においては、それぞれの外端162、164は、ファイバ・ブラッグ回折格子116のそれぞれの外端166、168と、長手方向に位置合わせされている。中間部分158、160は、追加面152、154および非湾曲面126と、多数の角度10〜170度のうちいずれか1つにおいて位置合わせされている。典型的な実施形態においては、中間部分158、160と追加面152、154および/または非湾曲面126との間に形成される角度は、たとえば60度であっても良い。図1に例示したように、構造体110は逆三角形状を取っている。この形状において、中間部分158、160は、非湾曲面126のそれぞれの外端162、164から、ファイバ・ブラッグ回折格子116に対して内側方向に、それぞれの追加面152、154の端部170、172まで延びている。追加面152、154のそれぞれの端部170、172は、非湾曲面126の長さ128よりも短い距離によって分離されている。それぞれの追加面152、154は、それぞれのコンポーネント102、104の上面156、157に、たとえば粘着剤174(二部エポキシなど)を用いて取り付けられている。図2に例示したように、追加面152、154はコンポーネント102、104の上面156、157に、追加面152、154がコンポーネント102、104の上面156、157にそれぞれ取り付けられる高さ176が等しくなるように、それぞれの量の平滑材175を用いて取り付けられている。
【0017】
図1にさらに例示したように、結び用ひも178が、それぞれのコンポーネント102、104(それぞれのコンポーネント102、104の上面156、157を含む)の外部表面の周りに、また構造体110のそれぞれの追加面152、154の周りに巻かれて、コンポーネント102、104の上面156、157への構造体110のそれぞれの追加面152、154の取り付けが強化されている。
【0018】
当業者であれば分かるように、ファイバ・ブラッグ回折格子116は、ファイバ・ブラッグ回折格子116の歪み122(図4〜5を参照のこと)に基づくピーク強度を有するそれぞれの波長における光ファイバ115を通る入射放射を反射するように構成されている。前述したように、歪みは、ファイバ・ブラッグ回折格子116の初期長に対するファイバ・ブラッグ回折格子116の長さの変化(コンポーネント102、104の相対変位124の結果として生じる)の割合に基づいている(また、本発明において説明する他の歪みパラメータに対して同様に規定される)。ファイバ・ブラッグ回折格子116には閾値歪み範囲または最大歪み範囲がある。これらは、製造業者から得ても良い。たとえば、これらを超えると、ファイバ・ブラッグ回折格子116は、機械的に壊れ、および/またはそれがさらされている歪み力を正確に反映する波長データを発生させなくなる。そのため、本発明の実施形態では、(コンポーネント102、104の相対変位124の結果として)ファイバ・ブラッグ回折格子116が受ける歪み122の範囲を小さくして、ファイバ・ブラッグ回折格子116の最大歪み範囲内に入るようにする。典型的な実施形態においては、ミクロン・オプティクス(MicronOptics)os3200ファイバ・ブラッグ回折格子歪みセンサを、本発明の実施形態で用いている。このセンサの最大歪み範囲は、+/−5000ミクロン/mである。しかし本発明の実施形態を、たとえば発電機の接続リングなどのコンポーネントの相対変位をモニタするために用いる任意のファイバ・ブラッグ回折格子とともに用いても良い。
【0019】
コンポーネント102、104は、コンポーネントの典型的な動作中に相対変位124を受けるため、構造体110の非湾曲面126は歪みを受け、その結果、ファイバ・ブラッグ回折格子116は、コンポーネント102、104の相対変位124の結果として歪み122を受ける。構造体110は、コンポーネント102、104の相対変位124の全範囲に渡ってファイバ・ブラッグ回折格子116の歪み122の範囲を小さくして、ファイバ・ブラッグ回折格子の歪み116の最大範囲内であるように設計されている。ファイバ・ブラッグ回折格子116を、構造体110の非湾曲面126に外部から取り付けて、コンポーネント102、104の相対変位124の全範囲に渡るファイバ・ブラッグ回折格子116の歪み122の範囲が、コンポーネント102、104の相対変位124の全範囲に渡る構造体110の非湾曲面126の歪みの範囲内にあるようにしている。ファイバ・ブラッグ回折格子116を非湾曲面126に外部から取り付け、また前述したように、非湾曲面126は非湾曲および/または平坦であることで、コンポーネント102、104の相対変位の全範囲に渡る非湾曲面126の歪みが、非湾曲面126の最小長128に渡って実質的に一様となり、ファイバ・ブラッグ回折格子116が確実に、回折格子116を非湾曲面126に取り付ける最小長128に渡って実質的に一様な歪み122を受けるようにしている。
【0020】
図3〜5に例示するように、構造体110の設計モードの間に、構造体110のパラメータを調整可能に選択して、コンポーネント102、104の相対変位124の全範囲に渡る構造体110の非湾曲面126の歪みの範囲が、ファイバ・ブラッグ回折格子116の歪み122の最大範囲内にあるようにしている。前述したように、コンポーネント102、104の相対変位124の全範囲は分かっていても良く、たとえば、1.27mmなどであっても良い。さらに加えて、ファイバ・ブラッグ回折格子116の歪み122の最大範囲は分かっていても良く、たとえば、2500ミクロン/mであっても良い。図3〜5の設計モードは、コンポーネント102、104の相対変位124の全範囲とファイバ・ブラッグ回折格子116の歪み122の最大範囲との特定の境界条件に対して行なったものであるが、設計モードは、本明細書で説明した方法に基づいて任意の特定の境界条件に対して行なっても良い。図3に例示したように、構造体110の設計モードの間に調整される構造体110のパラメータは、構造体の高さ134、構造体110の厚さ136、および/または非湾曲面126を中間部分158に接続する構造体110の巻き(および、中間部分158を追加面152に接続する同様の巻き)の曲率半径138である。なお、図3の実施形態は構造体110の半対称図を例示しているが、当業者であれば分かるように、構造体110の残りの半分も対称な方法で同様に設計される。
【0021】
図3〜5に例示する構造体110の設計モードでは、CAD(コンピュータ支援設計)モデルを用いている。CADモデルを用いて、当業者であれば分かるように、特定の高さ、厚さ、および各巻きにおける曲率半径を有する構造体110の幾何学的な表現を与える。CADモデルを用いて構造体110の幾何学的なモデルを与えるが、CADモデル単独では、たとえば、コンポーネントの相対変位124に基づく追加面152の相対変位に応答する構造体110内のまたは非湾曲面126に沿ってのモデル歪みまたは力データは与えられない。前述したように、本発明の実施形態が対象にしているのは、構造体110として、非湾曲面126に沿って生じる歪みの範囲が、コンポーネント102、104の相対変位124の全範囲に渡って、ファイバ・ブラッグ回折格子116の歪み122の最大範囲内であるものを構成することである。典型的な実施形態においては、設計モードが対象にしているのは、構造体110として、非湾曲面126の歪みの範囲が、相対変位の全範囲の1.27mmに渡って、2500ミクロン/mの範囲内であるものを構成することである。構造体110の幾何学的なCADモデルに対する歪みまたは力データを考慮するために、構造体110の設計モードではFEA(有限要素法解析)モデルを用いる。FEAモデルでは、当業者であれば分かるように、構造体110のCADモデルを複数の別個の要素に分解して、それぞれの力方程式を与えるものである。図3に、相対変位124の全範囲に渡って構造体110の非湾曲面126に沿って生じる歪みを、フォン・ミーゼス歪み尺度135を用いて例示的に示す。図4に例示するように、構造体110のFEAモデルを用いて、非湾曲面126に沿って生じる歪みをたわみの全範囲の1.27mmに渡って算出することを、厚さ136を3.3mmに固定した状態で、種々の高さ134(28.6mm、31.6mm、および34.6mmを含む)を有する多くの構造体に対して行なう。同様に、図5に例示するように、構造体110のFEAモデルを用いて、非湾曲面126に沿って生じる歪みをたわみの全範囲の1.27mmに渡って算出することを、高さ134を28.6mmに固定した状態で、種々の厚さ136(2.3mm、3.3mm、および4.3mmを含む)を有する多くの構造体に対して行なう。図3に例示したように、設計モードの結果、構造体110として、高さ134が24mm、厚さ136が4mm、および巻きにおける曲率半径138が4mmのものが構成され、非湾曲面126に沿って生じる歪みの範囲が2453ミクロン/m、したがってファイバ・ブラッグ回折格子の最大歪みの範囲122である2500ミクロン/m内となる。前述したように、設計モードから設計される構造体110のこれらの特定の歪み範囲および寸法は単に典型的なものである。本発明の実施形態を用いて、構造体として、コンポーネントの相対変位の全範囲に渡ってファイバ・ブラッグ回折格子の歪みを小さくし、ファイバ・ブラッグ回折格子の歪みの最大範囲内に入る任意の構造体を設計することを、本明細書で説明する同じステップに従うことによって行なっても良い。構造体110のFEAモデルの結果、高さ134が24mm、厚さ136が4mm、および曲率半径が4mmになったが、構造体110のパラメータはこれらの数値に限定されず、高さ134の範囲として10〜40mm、厚さ136の範囲として1〜5mm、および曲率半径の範囲として1〜5mmが含まれる。より具体的には、本発明の実施形態には、たとえば、高さ134の範囲として22〜26mm、厚さ136として3.5〜4.5mm、および曲率半径138として3.5〜4.5mmが含まれる。当業者であれば分かるように、構造体のパラメータは、FEAモデルで用いる初期境界条件に基づいて変わる。初期境界条件には、たとえば(これらに限定されないが)、コンポーネントの最大相対変位とともに、ファイバ・ブラッグ回折格子の歪みの最大範囲が含まれる。
【0022】
前述した設計モードに基づいて、ファイバ・ブラッグ回折格子116を、前述したように、高さ134、厚さ136、および巻きの曲率半径138などのパラメータを有するように構成する。図1に例示したように、多波長光源(図示せず)を光ファイバ115に接続して、多波長の光をファイバ・ブラッグ回折格子116に送信する。ファイバ・ブラッグ回折格子116から反射された光は、検出器140まで進む。検出器140では、コンポーネント102、104の相対変位124の全範囲に渡るそれぞれの増分変位においてピーク強度を有する反射放射のそれぞれの波長のシフトが測定される。当業者であれば分かるように、検出器140を初期化して、ファイバ・ブラッグ回折格子116の初期歪み122に対応する中心波長からの反射放射の波長のシフトを測定する。中心波長は、各ファイバ・ブラッグ回折格子に対してカスタマイズしても良く、製造業者から得ても良い。コントローラ142が検出器140に結合されている。コントローラ142は、反射波長データを受け取って、ピーク強度を有する反射放射のそれぞれの波長のシフトを、コンポーネント102、104の相対変位124の全範囲に渡るそれぞれの増分変位に渡ってファイバ・ブラッグ回折格子116の歪み122に変換する。典型的な実施形態においては、コントローラ142は、方程式を用いて、反射放射の波長シフトをファイバ・ブラッグ回折格子116の歪み122に変換しても良い。方程式はたとえば次のようなものである。
【0023】
ε=Δλ/|λ|/G*10 (方程式1)
ここで、εは、ファイバ・ブラッグ回折格子116の歪み122、Δλは、中心波長からの波長の測定シフト、|λ|は、測定波長の絶対値、およびGは、ファイバ・ブラッグ回折格子116に対するゲージ率である。典型的な実施形態においては、ゲージ率は、たとえば0.81である。ゲージ率は、たとえば、各ファイバ・ブラッグ回折格子によって異なっても良く、製造業者から得ても良い。
【0024】
システム100の較正モードの間に、ピーク強度を有する反射放射のそれぞれの波長シフトを、それぞれの増分変位124に渡る推定歪みデータ184(方程式1)に変換する。さらに加えて、図6に例示するように、ファイバ・ブラッグ回折格子116の歪み122を含む推定歪みデータ184を、コンポーネント102、104の増分変位124に対してプロットする。図6に例示したように、推定歪みデータ184は、FEA構造体の設計モードの間に収集した歪みデータに基づいて、FEAモデル・データ180に非常に良く合っている。さらに加えて、図6に歪みゲージ・データ182を例示する。歪みゲージ・データ182は、非湾曲面126の歪みゲージ123(図1)の測定歪みを、相対変位124の全範囲に渡って表したものである。当業者であれば分かるように、歪みゲージ123は、金属箔材料から作られたゲージであり、その電気特性は、歪み(すなわち、長さの変化)とともに変化する。したがって、歪みゲージ123からは、非湾曲面126の歪みの独立したな測定値が、コンポーネント102、104の相対変位124の全範囲に渡って得られる。図6に例示したように、FEAモデル・データ180(ここから、構造体110の高さ134、厚さ136、および曲率半径138のパラメータの選択が選ばれた)は、相対変位124の全範囲に渡って収集された推定歪みデータ184および歪みゲージ・データ182の2つの独立した組に非常に近い。このように、設計モードの間に選択された構造体110のパラメータは、コンポーネント102、104の相対変位124の全範囲に渡って、ファイバ・ブラッグ回折格子116の歪み122の範囲を小さくして、ファイバ・ブラッグ回折格子の歪み116の最大範囲内に入るようにすることに対して効果的であった。その結果、ファイバ・ブラッグ回折格子116は、コンポーネント102、104の相対変位をそれらの相対変位124の全範囲に渡ってモニタするように動作する。
【0025】
モニタリング・モードの間に、システム100を用いて、コンポーネント102、104の相対変位124が確実に最大閾値の相対変位124を超えないようにしても良い。前述の較正モードの場合と同様に、検出器140によって、反射放射からピーク強度を有するそれぞれの波長のシフトを測定する。コントローラ142は、波長シフト・データを受け取り、メモリ143から、ピーク強度を有するそれぞれの波長の測定シフトに対応するコンポーネント102、104の記憶された相対変位124データを取り出す。コントローラ142は、記憶された相対変位124をコンポーネント102、104の最大相対変位と比較して、コンポーネント102、104が最大閾値および/または安全閾値を超えて変位したか否かを判定する。コントローラ142は、記憶された相対変位がコンポーネント102、104の最大相対変位を超えた場合に、警報装置150に信号を出力する。たとえば、警報装置150は音響装置であっても良く、コンポーネント102、104を収容する設備内の作業者に警報を出して、コンポーネント102、104が危険な量だけ変位したかも知れないこと、および推奨される後続行為(たとえば相対変位のさらなる調査)を伝えても良い。
【0026】
図2に例示したように、システム100を、複数のコンポーネント対(102、104)(104、106)(106、108)とともに用いて、コンポーネント102、104、106の相対変位をモニタしても良い。システム100は、各それぞれのコンポーネント対(102、104)(104、106)(106、108)に外部から取り付けられるそれぞれの構造体110、112、114を備える。これらの構造体は、三角形の蛇行したネットワークを効果的に形成する。システム100はさらに、各構造体110、112、114に外部から取り付けられるそれぞれのファイバ・ブラッグ回折格子116、190、192を備える。それぞれのファイバ・ブラッグ回折格子116、190、192は、それぞれのファイバ・ブラッグ回折格子116、190、192の歪みに基づくそれぞれの波長においてピーク強度を有する放射を反射する。ファイバ・ブラッグ回折格子116、190、192は、同じ光ファイバ115に光学的に結合されているが、それらは、初期歪みに対応する特有の中心波長を有しているため、第1のファイバ・ブラッグ回折格子116のピーク強度における反射波長が、第2のファイバ・ブラッグ回折格子190の動作に影響することはない。それぞれの構造体110、112、114は、それぞれのコンポーネント対(102、104)(104、106)(106、108)の相対変位の全範囲に渡って、それぞれのファイバ・ブラッグ回折格子116、190、192の歪みの範囲を小さくして、それぞれのファイバ・ブラッグ回折格子116、190、192の最大歪みの範囲内に入るようにしている。それぞれの構造体110、112、114を、前述したモデル・モードとともに特定の境界条件を用いて決定しても良い別個のパラメータを有するように設計しても良い。境界条件は、たとえばファイバ・ブラッグ回折格子の最大歪み、ファイバ・ブラッグ回折格子116、190、および192間のファイバにおける緩み193、195の量、ならびに各コンポーネント対の相対の全範囲である。加えて、ファイバ・ブラッグ回折格子116、190、192の歪みおよび波長変化の量を小さくすることによって、より多くのトランスデューサを波長分割多重化方式を有する同じファイバ上に配置することができる。なぜならば、利用できる波長スペクトルのうち、各ファイバ・ブラッグ回折格子116、190、192が必要とする部分は小さくなるからである。図1の構造体110に関して前述したように、それぞれの追加面152、154、153、155は、それぞれのコンポーネント102、104、106、108の上面156、157、159、161に、それぞれ、粘着剤174(たとえば二部エポキシなど)を用いて取り付けられている。図2に例示したように、それぞれの追加面152、154、153、155は、それぞれのコンポーネント102、104、106、108の上面156、157、159、161に、ファイバ115に対する、追加面152、154、153、155がコンポーネント102、104、106、108の上面156、157、159、161に取り付けられる高さ176が等しくなるように、それぞれの量の平滑材175(たとえばパテなど)を用いて、それぞれ取り付けられている。たとえば、上面157の場合よりも多い量の平滑材175を上面156上に配置して、上面156、157の高さを等しくしても良い。
【0027】
本発明を典型的な実施形態に関して説明してきたが、当業者であれば分かるように、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変形を施しても良く、また本発明の要素に対して均等物を代用しても良い。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、多くの変更を施して、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させても良い。したがって本発明は、本発明を行なうために考えられたベスト・モードとして開示された特定の実施形態には限定されず、本発明には、添付の請求項の範囲に含まれるすべての実施形態が含まれることが意図されている。
【0028】
当然のことながら、必ずしも前述したすべての目的または優位性が、いずれかの特定の実施形態によっては実現されない場合がある。その結果、たとえば、当業者であれば分かるように、本明細書で説明したシステムおよび技術の具体化または実行を、本明細書で教示した1つの優位性または一群の優位性を達成または最適化する仕方で、必ずしも本明細書で教示または示唆する場合がある他の目的または優位性を実現することなく、行なっても良い。
【0029】
さらに、当業者であれば分かるように、異なる実施形態からの種々の特徴には互換性がある。説明した種々の特徴とともに各特徴に対する他の既知の均等物を、当業者が併用および整合させて、本開示の原理によるさらなるシステムおよび技術を構成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線端部コンポーネント対(102、104)の相対変位(124)をモニタするためのシステム(100)であって、
巻線端部コンポーネント対(102、104)に取り付けられる構造体(110)と、
構造体(110)の非湾曲面(126)に取り付けられるファイバ・ブラッグ回折格子(116)であって、前記ファイバ・ブラッグ回折格子(116)は、入射放射を反射するように構成され、前記反射放射は、ファイバ・ブラッグ回折格子(116)の歪み(122)に基づくそれぞれの波長にピーク強度を有し、ファイバ・ブラッグ回折格子(116)の前記歪み(122)は、巻線端部コンポーネント対(102)の相対変位(124)に起因する構造体(110)の歪みから生じる、ファイバ・ブラッグ回折格子(116)と、を備え、
構造体(110)は、巻線端部コンポーネント対(102)の相対変位(124)の全範囲に渡って、構造体に生じる歪み(110)がファイバ・ブラッグ回折格子(116)の歪み(122)の大きさを所定の範囲に限定するように構成される、システム(100)。
【請求項2】
巻線端部コンポーネント対(102、104)は発電機における隣接する接続リング対である請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
巻線端部コンポーネント(102)の相対変位(124)の全範囲に渡るファイバ・ブラッグ回折格子(116)の歪み(122)の範囲は、巻線端部コンポーネント(102、104)の相対変位(124)の全範囲に渡る構造体(110)の非湾曲面(126)の歪みの範囲である請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記非湾曲面(126)の長さ(128)は、ファイバ・ブラッグ回折格子(116)の長さ(130)に基づいており、巻線端部コンポーネント(102、104)の相対変位(124)の全範囲に渡る非湾曲面(126)の前記歪みは、非湾曲面(126)の長さ(128)に渡って一様である請求項3に記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記ファイバ・ブラッグ回折格子(116)は、接合材を用いて構造体(110)の非湾曲面(126)に取り付けられる請求項3に記載のシステム(100)。
【請求項6】
巻線端部コンポーネント(102、104)の相対変位(124)の全範囲に渡るそれぞれの増分変位(124)においてピーク強度を有する反射放射のそれぞれの波長のシフトを測定するように構成された検出器(140)と、
検出器(140)に結合されたコントローラ(142)であって、ピーク強度を有する反射放射のそれぞれの波長のシフトを、巻線端部コンポーネント(102、104)の相対変位(124)の全範囲に渡るそれぞれの増分変位(124)に渡ってファイバ・ブラッグ回折格子(116)の歪み(122)に変換するように構成された、コントローラ(142)と、をさらに備え、
較正モードの間に、それぞれの増分変位(124)に渡るピーク強度を有する反射放射のそれぞれの波長シフトとそれぞれのファイバ・ブラッグ回折格子(116)の歪み(122)とが、コントローラ(142)のメモリ(143)に記憶される請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項7】
モニタリング・モードの間に、
前記検出器(140)は、反射放射からピーク強度を有するそれぞれの波長のシフトを測定するように構成され、
前記コントローラ(142)は、メモリ(143)から、ピーク強度を有するそれぞれの波長の測定シフトに対応する巻線端部コンポーネント(102)の記憶された相対変位(124)を取り出すように構成され、
前記コントローラ(142)は、記憶された相対変位(124)を巻線端部コンポーネント(102、104)の所定の相対変位と比較して、コンポーネント(102、104)が安全閾値を超えて変位したか否かを判定するように構成され、
前記コントローラ(142)は、記憶された相対変位(124)が巻線端部コンポーネント(102、104)の所定の相対変位(124)を超えたことに基づいて、警報装置(150)に信号を出力するように構成される請求項6に記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記構造体(110)はさらに追加面対(152、154)を備え、
それぞれの追加面(152、154)は、それぞれの巻線端部コンポーネント(102、104)の第1の表面(156、157)に取り付けられ、
前記構造体(110)はさらに中間部分対(158、160)を備え、それぞれ、それぞれの追加面(152、154)を非湾曲面(126)のそれぞれの外端(162、164)に結合するように構成され、前記それぞれの外端(162、164)は、ファイバ・ブラッグ回折格子(116)のそれぞれの外端(166、168)と位置合わせされており、
前記中間部分(158、160)は、追加面(152、154)および非湾曲面(126)と非直角の角度で位置合わせされている請求項3に記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記構造体(110)は逆三角形状からなり、前記中間部分(158、160)は、非湾曲面(126)のそれぞれの外端(162、164)から、ファイバ・ブラッグ回折格子(116)に対して内側方向に、それぞれの追加面(152、154)の端部(170、172)まで延び、追加面(152、154)の前記それぞれの端部(170、172)は、非湾曲面(126)の長さ(128)よりも短い距離によって分離されている請求項8に記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記それぞれの追加面(152、154)は、それぞれの巻線端部コンポーネント(102、104)の第1の表面(126)に、前記追加面対(152、154)が巻線端部コンポーネント(102、104)の第1の表面対(156、157)に取り付けられる高さ(176)が等しくなるように、それぞれの量の平滑材(175)を用いて取り付けられている請求項8に記載のシステム(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−217599(P2011−217599A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−62670(P2011−62670)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】