説明

ゴムロールの製造方法

【課題】クロスヘッドダイから排出した芯金に被覆されたゴム材料が芯金から浮き離れてしまう等の不具合がなく、一体物が端部まで芯金にゴムが密着した状態でロール1本毎に切り離され、スムーズに安定して後工程の加硫工程に搬送することができるゴムロールの製造方法を提供する。
【解決手段】芯金3をクロスヘッド押出し機のクロスヘッドダイ1を通過させ、該芯金の外周上にゴム押出し機5によりゴム材料を供給してゴムロールを成形した後、該押出し機から排出した該ゴムロールを該芯金長に切断するゴムロールの製造方法において、該ゴムロール排出時に該芯金両端部相当部位を、順次、加熱された把持冶具11,12で挟み込むことを特徴とするゴムロールの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンター等に組み込まれる給紙ロール、帯電ロール、転写ロール、現像ロール、トナー供給ロール、クリーニングロール等のゴムロールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なクロスヘッド押出し機を使ったゴムロールの製造方法において、連続的に芯金を投入しながらゴム材料を被覆していく成形工程では、図1(A)に示すようなクロスヘッド本体1内で、ゴム押出し機5により円柱状にゴム材料を押出するその中心部分に、芯金ガイド4によって挿入位置を決定された芯金3が芯金送りロール2により連続的且つ断続的(芯金間のスペーサーを含めない場合)に送り込まれてくることで、該芯金外周上にゴム材料6が一体的に被覆される。一体的に被覆され先端ダイス7より排出した芯金・ゴムの円柱状一体物は押出し機に併設される引取り切断機によりロール1本ずつの長さに引き離され後工程へと搬送される。
【0003】
従来、この引取り切断機の構造は図に示すように排出してきた芯金−ゴム一体物を凹形状ガイドピン8で受け、該ガイドピンは芯金の排出時の押出し力を利用して芯金の供給速度aで後退し、ロール一本分の長さが排出したところで、半円形状に凹みをつけた切断刃9が芯金をクランプし、該切断刃とガイドピンとでロールを保持しながら芯金供給速度以上bで後退しロール一本分に引き離す機構(図1(B))をもつ(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、クロスヘッド押出しによる芯金へのゴム材料被覆成形では、未加硫ゴム材料が切断機構で上手く切断できなかったり、また、排出した直後からゴム材料のストレス開放による収縮が始まり、図3に示すような芯金の端部まで被覆されていたゴム材料が円錐ラッパ状に縮んだり芯金から浮いてしまう現象が発生する。これらは後工程でのハンドリングのトラブル、例えば位置ズレによる着脱ミスや寸法が一定でないための搬送中の落下等、また寸法精度の低下といった不具合を引き起こす主原因となっている。
【0005】
上記問題を解決する為、芯金をクロスヘッドダイを通過させ、該芯金の外周上にゴム押出し機によりゴム材料を供給してなるゴムロールを排出する工程、該ゴムロールを該芯金長に切断する工程を有するロール製造方法において、該ゴムロール排出時に該ゴムロールの該芯金両端部相当部位を、順次、把持冶具で挟み込み引取ることが有効である。
【0006】
しかしながら、上記工程においても、例えば収縮率の高いゴム材料を用いてゴムロールを製造した場合、本来、把持冶具で挟み込む必要があるゴム部分だけ押さえた場合でも、把持冶具の周囲もつられて変形してしまい、ゴム材料が芯金から浮いてしまう等の不具合を起こす場合があった。
【特許文献1】特開2002−248668公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明は、クロスヘッドダイから押出された芯金に被覆されたゴム材料が芯金から浮き離れてしまうことが無い引取り切断機構によって、ゴム粘度が高かったり、未加硫ゴム硬さが硬かったりした場合においても、クロスヘッドダイより押出され、排出したロールを把持する際に芯金−ゴム把持冶具の周囲もつられて変形してしまい、ゴム材料が芯金から浮いてしまう等の不具合がなく、一体物が端部まで芯金にゴムが密着した状態でロール1本毎に切り離され、スムーズに安定して後工程の加硫工程に搬送することができるゴムロールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、以下により達成される。
【0009】
第一に、芯金をクロスヘッド押出し機のクロスヘッドダイを通過させ、該芯金の外周上にゴム押出し機によりゴム材料を供給してゴムロールを成形した後、該押出し機から排出した該ゴムロールを該芯金長に切断するゴムロールの製造方法において、該ゴムロール排出時に該芯金両端部相当部位を、順次、加熱された把持冶具で挟み込むことを特徴とするゴムロールの製造方法。
【0010】
第二に、上記加熱方法がセラミックヒーターであることを特徴とする第一のゴムロールの製造方法。
【0011】
第三に、上記加熱温度が60℃以上150℃以下であることを特徴とする第一または第二のゴムロールの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、クロスヘッドダイより押出され、排出した芯金−ゴム一体物が端部まで芯金にゴムが密着した状態でロール1本毎に切り離され、スムーズに安定して後工程の加硫工程に搬送できることで、ゴムの芯金からの浮き不良、ハンドリングのトラブル、といった製造上の不具合を劇的に改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明につき、図を参照して詳しく説明する。
【0014】
本発明のゴムロールの製造方法では、ゴムコンパウンドと芯金を連続的に被覆可能なクロスヘッドタイプの押出し機を使用し、ゴム部分と接着をするために部分的に樹脂を主成分としたプライマーを塗布した芯金を、断続的に芯金を供給する芯金送りロールを用い芯金ガイドに供給する。
【0015】
該芯金3はクロスヘッド本体1内部のゴム被覆エリアでゴム材料が被覆され、円筒形の口金ダイス7からロール形状で排出する(図2(A))。
【0016】
排出した該ロールは直後に引取り装置のガイドピン10にガイドされ同時に先端が半円筒形状で加熱された冶具11により上下に挟まれ、ゴム収縮による芯金からの浮き上がりを防止する(図2(A))。
【0017】
該半円筒形状冶具11の半径rは排出したロール形状のゴムの半径に対し、5〜50%小さく設計されており、長さLはゴムロールとして使用するゴム部にかからない長さに設計される。また、挟み込むゴムロール対向部位の形状が、ゴムロールを挟み込むに足りる円弧状部位を有する形状ならば、その外側の形状は問わない(図4)。
【0018】
また、加熱方法としては、特に方法は問わないが、昇温速度が速いことや、コンパクトにできるといった点から、セラミックヒーターが好ましい。
【0019】
加熱温度は、排出するゴム温度より低くなければ差支えないが、温度が低い場合は効果が低く、温度が高い場合は、押された部分のゴム材料が可塑化されすぎてしまい、その部分の強度が落ち、ラッパ状に縮む等の不具合が起こりやすくなる可能性がある。
【0020】
該ガイドピン及び加熱された半円筒形状冶具はロールの排出速度aに合わせスライドし、ロール1本の長さが排出した時点で切り離し用の切断刃9及び前方端部の挟み込み冶具同様の加熱された半円筒形状の冶具12によりゴム部の切り離しと後方端部の収縮を抑える。同時に芯金供給速度以上の速度bで引き離され、1本のロールとされる(図2(B))。
【0021】
上記方法により引取られたロールは後工程に搬送され加硫または加硫がなされ芯金とゴム材料とが全面的に密着した安定品質のロールとして成形される。
【0022】
以下、具体的に本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0023】
軸体となる金属芯金は鉄材を押出し成形により直径約6mmの棒材に押出し、長さ258mmに切断後、これに化学メッキを厚さ約3μm施したものを用意した。
【0024】
該芯金にスチレン樹脂を主成分とするホットメルトタイプの導電性プライマーを端部から14mmを除き一様に厚さ約10μm塗布した。
【0025】
該芯金は押出し機ヘッドに付帯された芯金供給装置及びクロスヘッド本体内の芯金ガイドによりクロスヘッド内部のゴム被覆エリアへ搬送される。
【0026】
押出し機はφ60スクリューを持つ一軸ベント式押出し機にクロスヘッドタイプの芯金、ゴム被覆機能を備え、ゴム突出部のダイス径はφ10.0とし、ヘッド全体は約40℃に温度調整がなされる。
【0027】
押出すゴム材料として、表1の通り、エチレンプロピレンゴムを主成分とした、ムーニー粘度の違うゴム材料を調整した。
【0028】
【表1】

【0029】
まず、押出し機により上記(1)〜(3)のゴム材料について、温調を40℃に調整した押出し機で、1分約200gの突出量で押出し、合わせて芯金を2.0m/minで断続的に供給した。
【0030】
被覆エリアで芯金外周にゴム材料を被覆したロールは2.0m/minの速度でロール半径4.5mmで排出し、引取り装置のガイドピンにガイドされる。
【0031】
直後に半径4.0mm、長さ10mmの半円筒形状の前端部把持冶具により上下に挟み込まれる。
【0032】
該ロール、ガイドピン及び端部把持冶具は2.0m/minで引取り方向に後退し、ワーク長さ258mm後退した時点で半径6.1mmの半円形状の凹加工をした引き離し刃(切断刃)及び前端部把持冶具同様寸法の後端部押さえ冶具によって上下に挟みこまれ、直後に5.0m/minで後退しワークを1本に引き離す。引き離したワークは次工程に搬送されガイドピン及び単部押さえ冶具は次ワークの引取りを繰り返す。その後、次工程に搬送されたワークは連設する熱風炉にて加硫がなされる。実施例として、把持冶具をセラミックヒーターで加熱したもの、比較例として、把持冶具を加熱しないものを用意し、各2000本の引き離し実験を行い、ゴム材料の芯金からの浮き不良を調査した。
【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
実施例1〜9、比較例1〜3でわかるように、把持冶具を加熱したものはゴム材料粘度が上昇しても不良が発生しない、または不良の発生率が低いのに対し、加熱しないものは、材料粘度が上昇した場合、不良の発生率が高い。また、把持冶具の温度条件としては60℃以上150℃以下が好ましいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来のクロスヘッド押出し機と芯金供給及び引取り機構の断面概略図。
【図2】挟み込み冶具を備えた引取り機構の断面概略図。
【図3】ゴム排出時の収縮概念図。
【図4】端部把持冶具(前端部用・後端部用)。
【符号の説明】
【0037】
1;クロスヘッド本体
2;芯金送りロール
3;芯金(プライマー付)
4;芯金ガイド
5;ゴム押出し機
6;ゴム材料
7;先端ダイス(口金ダイス)
8;ガイドピン(凹形状)
9;切断刃
10;ガイドピン(凸形状)
11;端部押さえ冶具(前端部)
12;端部押さえ冶具(後端部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金をクロスヘッド押出し機のクロスヘッドダイを通過させ、該芯金の外周上にゴム押出し機によりゴム材料を供給してゴムロールを成形した後、該押出し機から排出した該ゴムロールを該芯金長に切断するゴムロールの製造方法において、該ゴムロール排出時に該芯金両端部相当部位を、順次、加熱された把持冶具で挟み込むことを特徴とするゴムロールの製造方法。
【請求項2】
上記加熱に用いられる加熱手段がセラミックヒーターであることを特徴とする請求項1に記載のゴムロールの製造方法。
【請求項3】
上記加熱温度が60℃以上150℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のゴムロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−123256(P2006−123256A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312423(P2004−312423)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】