説明

サインオブジェクト表示システム

【課題】従来、サインオブジェクトのサインデータを用いて、前記サインオブジェクトを表示する場合、写真のように表示する工夫が行われていたが、観察者に複雑な表示で、見難いあるいは検索などでは見つけ難いといった問題があって、これらの改良が望まれていた。更には、データ量の削減、表示速度の向上等が望まれていた。
【解決手段】 立体オブジェクトのオブジェクトデータと、サインオブジェクトに関する複数のサインデータとをリンクさせて、前記オブジェクトデータの表示情報に関連して、前記複数のサインデータの中から特定のサインデータを選択する手段を含み、前記立体オブジェクトと前記選択されたサインデータとを前記立体オブジェクトの所定の位置で結合して表示する手段を含むサインオブジェクト表示システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体オブジェクトが表示されるときに、前記立体オブジェクトに付帯されて表示されるサインオブジェクトに関して、観察しやすく改良された表示システムと前記表示システムに従った表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、カーナビゲーション、携帯ナビゲーション、携帯電話のナビゲーション等において、3次元表示(3D表示)がされるようになってきて、観察者に位置の把握、行動方向が理解しやすく種々改良されてきている。
【0003】
3D表示の場合、写真を例えば部分的に用いた表示は、作成に時間と労力が必要なために、データ作成が高価であるばかりでなく、データ量が莫大で、記憶メモリー容量の関係もあり、また、処理時間がかかることもあって、一般的ではなく、コスト競争の激しいナビゲーションシステムの領域では、簡易に、安価に扱えるように、コンピュータグラフィックス(CG)画像データの活用が多い。
【0004】
かかるCG画像の領域では、出来る限り写真に近い印象を与えるように工夫されていて、建物等の建造物などの立体オブジェクトのみならず、前記立体オブジェクトに付随する広告、表示等のサインオブジェクトも、写真に近い工夫がされている。そのために、場合によっては、前記サインオブジェクトが煩雑で、全体の画像の印象を実際の現場の印象と異なるものになるあるいは細かく複雑に重なり合って、返って観察しにくい欠点もある場合もでてくる。
【0005】
本発明において、サインオブジェクトとは、広告、建物名、道路名あるいは店名等の表示、交通標識等の文字、絵、色、模様等を単独あるいは組み合わせたサインを表示するオブジェクトである。一方、立体オブジェクトとは、3D表示画面から、前記サインオブジェクトを除いたオブジェクトであって、例えば、建物、橋、道路、川等が例である。前記サインオブジェクトを表示する場合に、例えば、特開2001−34160号公報(特許文献1)には、前記サインオブジェクトの重なりを防止するための改良が記載されていて、3D画面表示の改良が種々試みられている。
【特許文献1】 特開2001−34160号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の3D画面表示方法では、写真あるいは写真のように構成されたサインオブジェクトのデータを用いて、遠近を表示するときには、前記サインオブジェクトを距離情報に基づいて計算された大きさに表示することが行われ、更には、観察方向の情報によって、3D変換して、例えば、斜め表示になるようにデータ変換して表示するような工夫がされていたが、前記したように、返って、観察者に複雑な表示で、見難いあるいは検索などでは見つけ難いといった問題があって、これらの改良が望まれていた。更には、データ量の削減、表示速度の向上等が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、立体オブジェクトのオブジェクトデータと、サインオブジェクトに関する複数のサインデータとをリンクさせて、前記オブジェクトデータの表示情報に関連して、前記複数のサインデータの中から特定のサインデータを選択する手段を含み、前記立体オブジェクトと前記選択されたサインデータとを前記立体オブジェクトの所定の位置で結合して表示する手段を含むサインオブジェクト表示システムを請求項1とした。
【0008】
本発明においては、前記立体オブジェクトの一個に対して、これに付随するサインオブジェクトに関して異なる複数のデータ(サインデータ)を用意することをひとつの特徴としており、使用頻度の高い少なくとも一個の立体オブジェクトに関して、異なる複数のサインデータを用いる。
【0009】
例えば、通行量の多い交差点の角の建物あるいはモニュメント等の立体オブジェクトは、3D表示がナビゲーションシステムで、数多く表示される確率が高いので、少なくともかかる立体オブジェクトに関して、付帯されている広告、表示等のサインオブジェクトに関して、異なる複数のサインデータを用意する。
【0010】
前記サインオブジェクトは、観察者が容易に認識できるような範囲で、特徴を捉え、簡素化されたサインデータを複数用意する。例えば、サインオブジェクトが特定の著名な銀行名を記載したものである場合は、サインデータのひとつは、フルネームの銀行名が表示されるデータであり、他のひとつは、簡易化され通称で呼ばれる銀行名が表示されるデータであり、他の一つは、ハウスカラーが表示されるデータであり、また別のものは、銀行のロゴが表示されるデータであるように複数のサインデータが用意される。
【0011】
このようにして、例えば、交通量の多い角地に建てられた銀行(立体オブジェクト)に関して、複数のサインデータが関連付けられ、リンクが張られる。そして、前記銀行が表示されるときの表示情報(例えば、建物の大きさ、表示方向等および/または看板等のサインオブジェクトの重なり情報等)によって、最適なサインデータが選択(特定のサインデータが選択)される。
【発明の効果】
【0012】
前記選択されたサインデータは、前記建物の見やすい位置に添付(所定の位置での結合)されて表示される。従って、従来のような写真に近い表示ではないが、充分識別可能な情報の表示がされるので、観察者に見やすく、かつデータ量が少なくて済むので、処理が簡単で、表示速度が改善される。更に、準備のための労力も少なくて済むので、安価に提供できる利点を有する。更には、同一銀行の場合は、各地に存在する銀行の建物に同一のサインデータが使用できるので、データ量を著しく軽減できて、記憶容量を減らすことも可能となる。その他種々の効果を有するが、それは下記の記載から明確にされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
前記したように、請求項1の最良の形態での説明に加え、前記選択されたサインデータを常に正対された関係に保持する手段を含む請求項1のサインオブジェクト表示システムを請求項2としているが、これは他の好ましい形態である。特許文献1に記載のように、3D画像表示では、サインオブジェクトも観察方向に対して、立体オブジェクトとともに同様な3次元変換をして表示することが、自然であるがために、返って、角度を持って表示した場合、識別がしにくくなる傾向にあるが、本形態では、少なくともある範囲、好ましくは、常に正対させるように構成されている。
【0014】
本発明において、正対とは、ナビゲーションシステムが表示する観察方向に対して、前記サインオブジェクト面が直交あるいはほぼ直交するような表示であって、場合によっては不自然な形態に見えるが、例えば、大きさの変更で、不自然さを減少させ、識別を優先させる表示方法である。これによって、サインオブジェクトの3D変換時間を短縮できる上に、識別しやすい効果がある。
【0015】
更に好ましい実施の形態として、請求項3に記載したように、入力された検索情報に基づいて、前記サインオブジェクトを選択し、前記サインオブジェクトにリンクされ表示される前記立体オブジェクトデータの表示情報に関連して、前記複数のサインデータの中から前記特定のサインデータを選択する手段を含む請求項1またな2に記載のサインオブジェクト表示システムであり、検索条件として例えば「銀行」と入力したときには、サインオブジェクトの中から銀行の条件式に当てはまるものを選択し、それにリンクした立体オブジェクトを選択し、GPSからの位置情報と観察者の向かっている方向の情報等に基づいて、その近郊にある立体オブジェクト位置を2次元地図として表示する。ついで、観察者の選択情報で、3D表示を行って、前記観察者を誘導する表示を行う。勿論、選択される前記立体オブジェクトが単数であって、前記観察者に選択余地が無い場合は、2次元地図の表示をすることなく、3D表示を行うこともできる。
【0016】
本発明の更に別の好ましい形態によれば、請求項4に記載したように、前記立体オブジェクトあるいは複数の前記立体オブジェクトに関連して表示される前記サインデータが複数である場合で、前記複数のサインデータの表示が重なる場合には、重なりを避けて表示する手段を含む請求項1乃至3のいずれかに記載のサインオブジェクト表示システムであるが、例えば、特許文献1に記載の重なり防止の方法が利用できるばかりでなく、選択されるサインオブジェクトのデータの選択を大きさ表示との見合いにかけ、重なり具合を再計算させて好ましいサインオブジェクトの組み合わせを選択することによって、重なり防止表示をすることもできる。
【0017】
更には、前記の重なる場合に、重なり具合によっては、表示しなくても識別可能な立体オブジェクトの場合には、或るサインオブジェクトを表示しない方法の選択もできる。この場合は、サインオブジェクトの組み合わせに優先順位の情報を予め入力しておく方法がとれる。
【0018】
また、別の好ましい形態は、上記各形態のシステムを導入した表示装置であって、請求項5および6に記載した表示装置を含むものである。前記表示装置としては、カーナビゲーション装置、携帯ナビゲーション装置、更に好ましくは、携帯電話がある。特に好ましくは、本発明の各システムを、携帯電話あるいは携帯PC端末に供給するプロバイダーあるいは地図表示提供業者が導入することが端末への負荷を軽減する。
【実施例】
【0019】
以下、本発明を図面により、実施例を挙げながら、更に具体的に詳しく説明する。図1は、3D表示された或る画面1の概念図である。図1において、立体オブジェクト3および4は、簡易表示されている。2は、道路であって、立体オブジェクトのひとつである。
【0020】
図2は、図1の画面1の立体オブジェクト3および4に、サインオブジェクト7および8がそれぞれ貼付された本発明の一実施例の概念図である。サインオブジェクト7および8は、それぞれ、複数のサインデータから選択されたデータを表示したものである。サインデータの表示が加わるだけで、現実味がでてくるし、充分な識別性が付与される。
【0021】
図3は、図2の立体オブジェクト3および4のように、一番手前にある立体オブジェクトをテクスチュア表示したもので、本発明の他の実施例であり、更に現実感が付与される。このように全体にテクスチュア表示をしなくても、大きな面積を占め、および/または印象的な立体オブジェクトを選択して、テクスチュア表示をすることによって、現実的、写実的な印象が加わる。少ないデータ量の処理で、充分目的が達成されることが分かる。また、返って、写実的なCG表示だと複雑な表示となって、識別がしにくくなる問題があったのが解消される利点も有する。
【0022】
図4は、ビル(立体オブジェクト)に入っているテナントのサインオブジェクト13乃至15の例であり、例えばサインオブジェクト13は、D株式会社と横書表示されているが、縦書表示とか、Dとかの簡略表示等が用意されている。サインオブジェクト14および15も同様にそれぞれ、縦書、横書、簡略表示等が用意されていて、前記立体オブジェクトのそれぞれ所定の階に連携されている。
【0023】
前記立体オブジェクトを表示したときに、前記立体オブジェクトに重ならないように縦書、横書、簡略表示の中で、それぞれを組み合わせ、その際に大きさの変更を含め、更に、サインオブジェクト13乃至15に付帯された優先順位を考慮して、それぞれのサインオブジェクトの態様を選択し、立体オブジェクト12の決定された位置に表示する。図3のサインオブジェクト7および8は、このようにして、それぞれ選択されたサインオブジェクト7と8が表示されている。
【0024】
図5は、サインオブジェクトのサインデータの表示例であって、サインデータ9を表示すると三角形の中にC銀行の表示が現れるが、サインデータ10を表示すると三角形の中に文字表示は無い。しかし、C銀行のサインオブジェクトが三角形で充分な識別能力をもっている場合には、サインデータ10の表示でも、充分な識別能力を有する。更に、色の表示は図示されていないが、三角形の形状にも識別性がなくても、あるいは、充分な識別性を有していても、橙色がハウスカラーとして識別性が充分あるあるいは三角形との組み合わせで充分な識別性がある場合には、三角形および/または色の組み合わせのサインデータも複数のサインデータのひとつとして用意することができる。
【0025】
また、いわゆるロゴおよび/または色の組み合わせに充分な識別性を有する場合には、ロゴおよび/または色もサインオブジェクトの複数のサインデータとして用意される。図6は、道路2の立体オブジェクトの適切な位置に、ロゴ、形状等のみで表示したロゴ表示の例であり、本発明の別の実施例であって、建物等の立体オブジェクトが表示されなくても、立体的な感覚で、観察者に目標の位置を表示することもできる。
【0026】
従って、例えば、先ず、銀行、コンビニエンスストア、デパート、ディスカウントショップ、ファーストフード店、飲食店等に関して、共通的に各地で使えるものをひとつのサインオブジェクトに関して、それぞれ複数のサインデータを準備する。あるいは、地方でも、著名なものは同様にそれぞれ複数準備する。前記サインデータの中にロゴ、形状表示等も含み、全体表示が重複あるいは煩雑化のために好ましくない場合は、ロゴ等の簡略表示が選択される。
【0027】
尚、前記用意されたサインデータに関して、それぞれ全体の中で優先順位を付しておくことにより、場合によっては、表示されないものを選択する。前記各地で共通に使えるサインデータは、何種類も同様なものを用意することなく、共通に使用されるので、データ量の削減にきわめて有用である。
【0028】
前記サインデータとは別に、立体オブジェクトの簡易化されたCG表示を用意しておき、また、CG表示も用意しておく、これは、CGですでに行われているので、省略するが、各立体オブジェクトと前記サインオブジェクトを関連付ける(リンクを張る)ことによって、前記サインデータと関連付けられる。その際に、立体オブジェクトの属性との関連ももたせ、例えば、立体オブジェクトの何階と、サインオブジェクトが関係するかの関連性も持たせる。
【0029】
例えば或る銀行を或る位置で検索したときに、図3の表示になったときには、検索している銀行の表示がサインオブジェクト7であったときには、サインオブジェクト8を表示しないように構成し、サインオブジェクト7を特徴づけることもできる。尚、サインオブジェクトが重なった場合の検知は、特許文献1に記載の方法も取り得る。
【0030】
また、図3のような表示で、観察者の向かう方向を変更させて、GPSの信号がそれを捉えたときには、図3の表示方向が変更され、立体オブジェクトの表示が変更されるが、その場合も、サインオブジェクト7および8は、観察者の方向に正対した関係で表示されるので、識別能力は保たれる。写実的な表示の場合は、角度が付いて見難くなって、識別が困難になることが生じる。
【0031】
本発明は、以上のように構成されるので、作成の時間を短縮化するだけでなく、表示の即応性も向上させ、更に、サインオブジェクトの変更が不要であることが多いので、メンテナンスすることにおいて、立体オブジェクトのみの変更になることが多く、メンテナンス性も向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】 3D表示の一例の概念図である。
【図2】 本発明にかかる3D表示の一例の概念図である。
【図3】 本発明にかかり、3D表示の他例の概念図である。
【図4】 立体オブジェクトとサインオブジェクトの関係図の例である。
【図5】 サインオブジェクトの複数のサインデータの表示例である。
【図6】 本発明にかかる3D表示の別例の概念図である。
【符号の説明】
【0033】
1 3D表示画面
2 道路
3 建物
7 サインオブジェクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体オブジェクトのオブジェクトデータと、サインオブジェクトに関する複数のサインデータとをリンクさせて、前記オブジェクトデータの表示情報に関連して、前記複数のサインデータの中から特定のサインデータを選択する手段を含み、前記立体オブジェクトと前記選択されたサインデータとを前記立体オブジェクトの所定の位置で結合して表示する手段を含むことを特徴とするサインオブジェクト表示システム。
【請求項2】
前記選択されたサインデータを常に正対された関係に保持する手段を含むことを特徴とする請求項1のサインオブジェクト表示システム。
【請求項3】
入力された検索情報に基づいて、前記サインオブジェクトを選択し、前記サインオブジェクトにリンクされ表示される前記立体オブジェクトデータの表示情報に関連して、前記複数のサインデータの中から前記特定のサインデータを選択する手段を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のサインオブジェクト表示システム。
【請求項4】
前記立体オブジェクトあるいは複数の前記立体オブジェクトに関連して表示される前記サインデータが複数である場合で、前記複数のサインデータの表示が重なる場合には、重なりを避けて表示する手段を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のサインオブジェクト表示システム。
【請求項5】
立体オブジェクトのオブジェクトデータと、サインオブジェクトに関する複数のサインデータとをリンクさせて、前記オブジェクトデータの表示情報に関連して、前記複数のサインデータの中から特定のサインデータを選択する手段を含み、前記立体オブジェクトと前記選択されたサインデータとを前記立体オブジェクトの所定の位置で結合して表示する手段を含むことを特徴とするサインオブジェクト表示装置。
【請求項6】
前記選択されたサインデータを常に正対された関係に保持する手段を含むことを特徴とする請求項5のサインオブジェクト表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−102467(P2008−102467A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309669(P2006−309669)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(390023249)国際航業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】