説明

サポートプレート、ウエハを剥離する方法、及びウエハを薄くする方法

【課題】ウエハを研削するため、貫通孔を有するサポートプレートを使用してサポートプレート裏面をチャックに真空吸着してした場合、ウエハ研削時或いはウエハ剥離の際にウエハの表面にディンプルが生じることがあり、当該ディンプルの発生を抑えるように構成したサポートプレートを提供すること。
【解決手段】ウエハを接着部材で接着して面サポートするサポートプレート1のウエハ接着範囲Wに、未貫通部10−3を有する孔10を構成するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハを面サポートするサポートプレートの構造と、そのサポートプレートの使用方法、特にそのサポートプレートからウエハを剥離する方法とそのウエハを薄くする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機器の薄型化、小型化、又は軽量化の開発が進むにつれ、機器に組み込まれる半導体チップの更なる薄板化が求められてきている。この半導体チップに利用されるウエハは現状は厚みが125μm〜150μmであるが、25μm〜50μmの薄板化の開発も進められている。
【0003】
このように薄板化されるウエハは、ウエハの厚みを薄くする研削/研磨工程やウエハの裏面処理を行う工程などを経て製造され、最終的に複数の半導体チップに分割される。ウエハが薄板化されるにつれ、それ自体で形状を維持することができず、例えば折れ曲がるなどによりハンドリングが困難になる。
【0004】
そのため、通常は、そのウエハを硬い支持板(以下、サポートプレートと呼ぶこととする)に貼り付け、このサポートプレートごと各工程で上記ウエハをハンドリングするようにしている。
【0005】
ウエハを薄板化する場合に使用されるサポートプレートとして、例えば貫通孔を有するものや孔自体を有しないものがある。
この内、サポートプレートとウエハの貼り合わせを接着剤などの接着部材を間に薄く延ばして行う場合、貫通孔を有するサポートプレートを使用する方法が最適である。この貫通孔は、ウエハが貼り合わされる面のウエハの貼り合わせ範囲内でその一端が開口し、もう一端はその貫通孔を通じてサポートプレートの反対側の面で開口している。
【0006】
このため、サポートプレートとウエハの貼り合わせ後に再びこれらを分離(剥離)する際、その貫通孔を通じて剥離液を接着部材に接触させることができる。こうして、ウエハのエッジよりも内側の範囲にある接着部材の接着能力を直接低下させることができる(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−191550 号公報(段落「0021」、段落「0026」、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一連の薄板化工程におけるウエハの位置固定方式、例えばウエハを研削/研磨する装置などにおけるウエハの位置固定方式に、サポートプレートの裏面(ウエハを貼り合わせた面の反対面)をチャックと呼ばれる真空引き用の装置上に引きつけて吸着固定する方式がある。
【0008】
しかし、そのような方式で位置固定する装置に上述の貫通孔を有するサポートプレートを使用した場合、研削時にウエハにディンプルが生じることがあり、問題であった。
図9は、ディンプルが生じている薄板化されたウエハの斜視図である。図9に示されるように薄板化されたウエハ9の表面9−1に無数のディンプル90が発生する。
【0009】
このディンプル90の発生原因としては次のことが考えられる。
先ず第一に、サポートプレート裏面をチャックに真空吸着させてウエハを位置固定することにより、ウエハとサポートプレートとの間の接着部材がそのサポートプレートの貫通孔を通じて貫通孔の開口部に引き込まれる。その結果、剥離の際にその反動でウエハの表面(図9の9−1)側にディンプル(図9の90)が生ずるということである。
【0010】
第二に、研削/研磨装置が、例えば不図示の貫通孔つきサポートプレートが表面(図9の9−1)に貼り付けられている状態でその露出面(ウエハ裏面、図9の9−2)上に研削ホイールを押し付ける構成をとる場合である。
【0011】
この場合、ウエハ裏面(図9の9−2)にかかる研削ホイールの押圧力により、上面(図9の9−1)に貼り合わされたサポートプレートの貫通孔の開口部に上記接着部材が入り込む(沈み込む)。その結果、これもまた剥離の際にその反動でウエハの表面(図9の9−1)側にディンプル(図9の90)が生ずるということである。
【0012】
そこで本発明は、上記問題を鑑みてなされた発明であり、サポートプレート、ウエハを剥離する方法、及びウエハを薄くする方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するために以下のように構成する。
本発明のサポートプレートの態様の一つは、ウエハを接着部材で接着して面サポートするものであり、そのサポートプレートに未貫通部を有する孔が形成されている。この孔の上記未貫通部は、上記サポートプレートと一体に構成されているものや、又は上記サポートプレートとは別体である部材が上記孔に埋め込まれるなどして構成されているものなど、形態は様々である。その未貫通部により、サポートプレートの上記孔が未貫通状態に保たれている。
【0014】
なお、上記未貫通部を有する孔が形成されている範囲は、上記サポートプレートの上記ウエハを接着する範囲内とする。例えば、その孔の一端の開口部の形成範囲を上記サポートプレートの上記ウエハを接着する範囲内とする。或いは、上記未貫通部を貫通させて孔を貫通孔にした場合にその貫通により得られた開口部が上記サポートプレートの上記ウエハの接着範囲の内側にあるようにする。
【0015】
また、上記未貫通部は、サポートプレートの厚み方向における厚みが50μm以下(ただし、0より大きい)であることが好ましい。また更に、その厚みは20μm以下(ただし、0より大きい)であるとより好ましい。なお、未貫通部がある以上、その厚みは0よりも大きい。この未貫通部の材質は、例えばガラス、シリコン、セラミック、またはインバース等である。
【0016】
また、上記未貫通部がサポートプレートと一体であり、ガラス物質で形成されている構成のサポートプレートでもよい。
本発明のウエハを剥離する方法の態様の一つは、そのウエハが上述の何れかの態様のサポートプレートに接着部材を介して接着されていることを前提に、上記未貫通部を貫通させて上記孔を貫通孔とした後、所定の剥離液を上記貫通孔を通じて上記接着部材に接触させて上記ウエハを上記サポートプレートから剥離する、ようにする。
【0017】
なお、サポートプレートの厚み方向における上記未貫通部の厚みが50μm以下(ただし、0より大きい)である場合は、上記未貫通部をエッチング(好ましくは、フッ酸によるウェットエッチング)により貫通させて上記孔を貫通孔にする、ようにする。
【0018】
本発明のウエハを薄くする方法の態様の一つは、上述の何れかの態様のサポートプレートにウエハを接着部材を介して接着させた後、上記ウエハを研削/研磨する、ようにする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のサポートプレートは、孔が未貫通状態に保たれている。このため、ウエハを貼り付けたサポートプレートを真空吸着固定しても、その吸引力は未貫通部を超えて接着部材までは及ばない。よって、真空吸着の引き込みによるディンプルの発生を防止できる。
【0020】
また、ウエハを貼り付ける側のサポートプレート面が平面又は略平面になるように上記未貫通部が上記孔に構成されている場合(例えば、貫通孔の端部に未貫通部が構成されている場合)は、更に、研削ホイールの押圧力による接着部材の孔への沈み込みを抑止できる。よって、孔への沈み込みによるディンプルの発生も大幅に低減できる。
【0021】
更に、上記未貫通部は後から貫通させれば、上記接着部材に剥離液を接触させるための貫通孔として使用できるようになる。
加えて、未貫通部を有する孔の位置に貼り付けられたウエハの表面はディンプルが生じないため、その位置のウエハからは扁平率の高い高精度の半導体チップが抽出できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明に係るサポートプレートは、接着部材を介してウエハを面サポートする従来のサポートプレートを前提に、未貫通部を有する孔を更に形成して構成されたものである。
【0023】
図1は、本発明のサポートプレートの構成例である。
同図(a)にそのサポートプレートの斜透視図を示し、同図(b)にその平面図を示し、同図(c)及び(d)にサポートプレートの孔の構造を示している。
【0024】
同図(a)に示すように、本例のサポートプレート1は、同図の上下方向に所定の厚みをもつ円盤形状をし、その厚み方向(下面1−2から上面1−1)に未貫通部を有する孔10が形成されている。
【0025】
同図(b)は、同図(a)のサポートプレート1をその上方(実線矢印A側)から作図した平面図であり、その平面図内に、接着部材によるウエハの貼り合わせ範囲(接着範囲ともいう)と孔の位置とを示している。
【0026】
図1(b)の一点鎖線がそのウエハの貼り合わせ範囲の境界を表わし、孔10がその範囲内Wに形成されている。なお本構成ではその孔10はサポートプレートの上面1―1で開口していないため、孔10を破線表示にした。
【0027】
本構成では、サポートプレートの上面1―1はその孔の位置で窪みを有しない平坦な構成をとる。
同図(c)は、同図(a)に示される複数の孔10のうちの例えば範囲Bに示される一つの孔10の構造拡大図であり、同図(d)は、その孔10の頂点位置で縦に割ったときの側方断面図(同図(c)のC−C´方向の断面図)である。
【0028】
本例のサポートプレート1に形成されている孔10は、例えばサポートプレートの下面1−2を基点とする厚み方向(この場合は同図の上方向)の構成物質を下面1−2から除去していくなどの方法により形成される。
【0029】
この孔10は、下側の端面10−2が開口し、上側の端面10−1はサポートプレートに構成物質が少し残された状態をとる。この残った構成物質が未貫通部10−3となるため、本例の未貫通部10−3はサポートプレート1の本体に一体に構成されている。
【0030】
上述した孔の構造は、図1(a)に示される全ての孔10のうちの一つまたはいくつかの孔だけがとるようにしても良い。しかし、ウエハが貼り合わされる範囲内Wのできる限り広い範囲に形成されていることがより好ましく、本例に示したようにウエハが貼り合わされる全範囲Wに形成されていることが望ましい。
【0031】
なお、本例のサポートプレート1の説明で参照した図1には、サポートプレート1上の孔10の数や配置を一列あたり15個にして3列並べて示したが、これは孔を図から読み取りやすくするためであり、実際にはウエハの貼り合わせ範囲Wの全体に亘って規則的に又はランダムにより高い密集密度で多数形成されている。
【0032】
この孔10は、後に詳しく説明するが、ウエハの研削/研磨処理や裏面形成処理などの各種加工処理後にサポートプレート1と不図示のウエハ間の上記の接着部材を溶解するために使用する溶解液(剥離液)の通路として利用される。
【0033】
本例で示すサポートプレート1は、6インチ、8インチ及び12インチのウエハの全てに適用できるように12インチよりも1mm程度大きめの径で設計している。なお、上記サポートプレートは、ウエハサイズと同径もしくは若干大きめ(1mm程度)のサイズであればよい。またその厚みを500〜1000μm程度に、孔10の径を400〜500μm程度に設計している。
【0034】
その材料としては、未貫通部10−3の後の貫通加工が容易であることからガラス板を用いている。更に、その未貫通部10−3の厚さ(孔の頂点P1からサポートプレートの上面1−1までの厚さ)は、上記未貫通部10−3の材質がガラス物質なので、50μm以下にしている。この厚さは、材質が本例のようにガラス物質の場合には、上記設計のように50μm以下とすることが好ましく、更に20μm以下とするとより好ましい。言うまでもないが、未貫通部10−3の厚さは0より大きい。
【0035】
なお、以上の設計情報は一例である。このため、例えば材質は、その他に、鉄-ニッケル合金(ニッケル36%の合金:インバー)や、セラミック板、シリコンなどを利用しても良い。この場合も、未貫通部10−3の厚さは上記設計のように50μm以下とすることが好ましく、更に20μm以下とするとより好ましい。言うまでもないが、未貫通部10−3の厚さは0より大きい。
【0036】
また、その他の設計情報であれば、加工対象のウエハの大きさや、装置で使用する各種薬品や、未貫通部の貫通加工の方法などに応じて適宜設計して良い。
続いて、上記孔10のその他の構造及びその他の構成例を示す。
【0037】
図2は、図1に示した孔10の構造の変形例である。
サポートプレートには図1に示すように複数の孔が形成されている。図2では、その孔の構造のみを図1(c)及び(d)と同じ要領で図2(a)及び(b)に示した。
【0038】
本変形例に示す孔11は、例えばサポートプレートの上面1―1及び下面1−2を基点とするそれぞれの厚み方向にある構成物質(この場合は、上面1―1から下方向にある構成物質及び下面1−2から上方向にある構成物質)を各基点の面から除去していくなどの方法により形成される。
【0039】
本変形例の孔11は、上側の端面11−1及び下側の端面11−2が開口し、サポートプレート1の厚み方向の中間位置の構成物質がサポートプレート1の本体に残された状態をとる。この残った構成物質がその孔11の未貫通部11−3となるため、本例の未貫通部11−3は、図1の構成と同様にサポートプレートの本体に一体に構成されている。
【0040】
この未貫通部11−3の厚さ(上面1―1側から形成された穴の頂点P2と下面1―2側から形成された穴の頂点P3との間の厚さ)は、上記未貫通部11−3の材質がガラス物質(この他、シリコン、セラミック、インバーなど)である場合は50μm以下とすることが好ましい。また更に、その厚みは20μm以下であるとより好ましい。
【0041】
繰り返しになるが、未貫通部11−3の厚さは0より大きい。
このように、本変形例に示す孔11は図1の例と異なりサポートプレートの上面1―1で開口している。念のため書き添えるが、その上面における孔11の状態は図1(b)の孔10を実線表示に替えることで示される。
【0042】
図3は、図1に示した孔10のその他の構成例である。
本図も、図2と同様の要領で示されている。
本例に示す孔12は、貫通孔12に部材12―3を埋め込んだ構成をとる。例えばサポートプレートの上面1―1又は下面1−2を基点とする厚み方向にある構成物質を一つの基点面から一方向に除去していく又は両方の基点面から除去していくなどの方法により、サポートプレートの上面1―1から下面1−2までを貫通させた貫通孔12が形成される。
【0043】
そして、その貫通孔12の内部に部材12―3が埋め込まれるなどして、その貫通孔12に未貫通部12−3を構成している。この部材12−3は孔の上方と下方を隔てるようにして後から埋め込まれるため、サポートプレート本体とは一体ではない。
【0044】
上記未貫通部12−3を構成する部材としては、例えば、貫通孔12の内壁に接着され乾燥により固まる接着剤や、これにサポートプレートの構成物質(例えばガラス物質など)を混合したものや、例えば内壁からの反発力や摩擦力などによりその貫通孔12の内部で止まる嵌入部材(ガラス物質を使用しても良い)などを、適宜使用できる。
【0045】
なお、この未貫通部12−3の厚さは、この未貫通部12−3の材質をガラス物質(この他には、シリコン、セラミック、インバーなど)とした場合は50μm以下とすることが好ましい。また更に、その厚みは20μm以下であるとより好ましい。言うまでもないが、未貫通部の厚さは0よりも大きい。
【0046】
以上の各例では孔の開口部がサポートプレートの上面または下面に形成されるものについて説明した。以下でもこの例を元に説明することとする。ただし、例えばサポートプレートに厚みがあり、その側面に開口部を形成できるサポートプレートを使用する場合には、その側面の開口部とウエハの貼り合わせ範囲の開口部を繋ぐ孔の通路内(ウエハの貼り合わせ範囲の開口部の位置も含む)に上述した各種の未貫通部を構成するようにすれば良い。
(実施例1)
本実施例では、未貫通部を有する孔が形成されているサポートプレートの使用方法を示す。
【0047】
図4は、本発明のサポートポートプレートを使用してウエハを薄板化する薄板化工程の全体フロー説明図である。同図には、その実施の順にアルファベット(a)から(i)が付与されている。
【0048】
本例では、一例として図1のサポートプレート1を使用する。そして、そのサポートプレート1は、その未貫通部の厚みが20μmのガラス物質で構成されているものとする。この未貫通部の材質は上記ガラス物質の他に、シリコン、セラミック、インバーなどでも同様に実施できる。なお、その未貫通部の厚みは、ディンプル発生を抑止する程度と後の貫通加工の容易さが関係している。
【0049】
その未貫通部が例えばガラス物質(或いは、シリコン、セラミック、インバーなど)の場合、その厚みが50μm以下であればディンプル発生の抑止効果がより良く得られると共に、未貫通部の後の貫通加工も不都合を生じない。また、その厚みを20μm以下にすることにより更に後の貫通加工が容易になる。本例は、厚みを20μmとしたことにより両方の効果を良好に享受できる構成である。
【0050】
先ず、ウエハ2の表面(回路が形成されている面)に接着液(接着部材)4を落とし、不図示のスピンナーで回転させるなどしてその接着液4をウエハ2の表面上に薄く広げる(図2a)。この接着液4としては、例えばノボラックタイプのフェノール樹脂系材料を使用する。
【0051】
次に、ウエハ2の表面上の接着液4を予備乾燥させて流動性を低減させ、その接着液の層4にサポートプレート1を貼り付ける(図2b)。サポートプレート1の貼り付け方法は、その孔10がウエハ2の接着範囲に収まるように配置し、且つウエハ2に未貫通部10(図1の10−3)が対面するように配置して、貼り付けを行う。
【0052】
つまり、サポートプレートの上面1−1及び下面1―2のうちの、窪みのない平坦な方の面1−1(図1(b)の上面1−1)が、ウエハ2と貼り合わせられる。上記予備乾燥にはオーブンを用いて例えば80℃で5分間加熱する。また接着層4の厚みはウエハ2の表面に形成した回路の高さに応じて決定する。
【0053】
次に、サポートプレート1を反転し(つまりウエハ2の露出面が上向きになるようにし)、その露出面(本明細書では裏面と呼んでいる)を研削/研磨する(図2c)。
この工程では、ウエハ2の露出面の上方から研削ホール100を下ろし、その露出面を研削ホール100で押し付けながら薄く削っていく。
【0054】
図5は、模式的な研削/研磨装置の断面図である。
同図に示されているように、ウエハ2の露出面2−2が上向きになる向きで当該サポートプレート1が台110上に置かれ、その露出面2−2上に研削ホール100が押し下げられている。本例ではこの台110に、一般的にチャックと呼ばれる吸着台が使用されている。この吸着台110は、真空引き用の孔(110−1〜110−4)が形成されておりサポートプレート1の下面1−2をその孔(110−1〜110−4)を通じて同図破線矢印の方向へ真空引きして台110の上面にそのサポートプレート1を吸着固定する。
【0055】
上記研削ホール100は、回転軸100−1を中心軸にして回転しながらウエハの露出面2−2に同図の実線矢印に示す方向へ所定の押圧力を加えてその露出面2−2を一様に研削していく。こうして、ウエハ2の厚みを例えば125μm〜150μmのオーダー、要求に応じては25μm〜50μmのオーダーに薄くする。なお、研削時はウエハ2と研削ホール100の間に摩擦熱が生じるため、ウエハの露出面2−2に水を供給するなどしてその熱を抑える。
【0056】
本サポートプレート1に形成されている孔10は、未貫通部10−3を有してなる未貫通状態の孔である。このため、サポートプレートの下面1−2にかかる吸引力はその孔10の未貫通部10−3の下部までで、その上部つまり接着部材4やウエハ2までは及ばない。
【0057】
また本例で使用したサポートプレート1の場合、その未貫通部10−3がサポートプレートの上面1−1に構成され、サポートプレートの上面1−1は窪みのない平坦な面であるため、研削ホール100より押圧力が加えられても上記接着部材4やウエハ2がその孔10に沈み込むことはない。
【0058】
さて、図4に戻り、引き続き研削/研磨に続く工程の説明をする。
次の工程では、研削/研磨処理により薄板化したウエハ2を裏面処理する(図2d)。
この裏面処理としては、例えば、バックメタライズ加工(図2d−1)や回路形成処理(図2d−2)などがあり、これらの工程が不要であれば省くこともできる。
【0059】
次に、サポートプレート1の孔10を、その未貫通部10−3を貫通して貫通孔にする(図4e)。
未貫通部10−3を貫通させる方法(貫通加工の方法)は、例えば、ドライエッチング、ウェットエッチング、又はサンドブラストなどの微細加工技術が利用できる。
【0060】
本例では、特にその未貫通部10−3がガラス物質で構成されているため、フッ酸によるウェットエッチングの方法でその未貫通部10−3を貫通させている。
図4(e)及び図6は、その未貫通部の貫通方法の説明図である。
【0061】
図6は、図4(e)の範囲Dに形成されている一つの孔10の状態変化図(拡大図)である。
本構成では、孔10の特に未貫通部10−3の物質のみを除去すればよい。この除去方法としては、未貫通部10−3をエッチング液(フッ酸)3に曝してウェットエッチング除去する方法がある。
【0062】
例えばサポートプレート下面1−2の孔10を上方に向けこの孔10に、エッチング液であるフッ酸3を注入する(図6(a))。その未貫通部10−3の物質はフッ酸3に曝されることにより、溶解され、最終的に接着部材4との境界までの物質が除去され、貫通孔が形成される(図6(b))。ここで、接着部材4には、フッ酸に耐性のあるものであることが好ましい。これにより、エッチング液が基板2まで達することを防止でき、基板2が劣化することを防止することができる。
【0063】
未貫通孔10−3が除去されサポートプレートに貫通孔が形成された後、エッチング液3を除去する。こうして、ウエハ2付きのサポートプレート1の孔10を貫通孔にする。エッチング液3の除去は、例えば、水等の洗浄液による洗浄により行わればよい。
【0064】
上記では、孔10に上方からエッチング液を注入し、未貫通部10−3にエッチング液を接触させる構成を記載しているが、孔10の開口部を下方に向け、例えばエッチング液を下方から噴射して未貫通部10−3に接触させてもよい。
また、別の構成では、 本構成では、孔10の特に未貫通部10−3の物質のみを分解すればよいため、未貫通部10−3の位置に開口部をもつパターンのマスク(不図示)を表面に構成し、その開口位置にある物質を予め決められた時間及び温度でエッチング液(フッ酸)3に曝してウェットエッチング除去する。
【0065】
例えばサポートプレート下面1−2の孔10の開口位置が開口しているマスク(不図示)を構成し、その他の表面は全てマスキングするなどして、エッチング液であるフッ酸3にそのサポートプレート1をつけ込む(図6(a))。その未貫通部10−3の物質は予め決められた時間及び温度でフッ酸3に曝されることにより、その曝されている表面からその厚み方向の物質が分解され、最終的に接着部材4との境界までの物質が除去される(図6(b))。
【0066】
未貫通孔10−3が除去されサポートプレートに貫通孔が形成された後、そのウエハ2付きのサポートプレート1をエッチング液3から取り出し、ウェットエッチングのために表面に付けたマスクを除去する。こうして、ウエハ2付きのサポートプレート1の孔10を貫通孔にする。 このように未貫通部10−3を貫通させることにより、未貫通状態に保たれていた孔10が、サポートプレートの下面1−2からサポートプレートの上面1−1のウエハ2の貼り合わせ範囲内にかけて貫通し、後の工程で剥離液の通路として利用できるようになる。
【0067】
次に、ウエハ2の露出面側を粘着性を有するダイシングテープ6に貼りつける(図2f)。
次に、上記貫通加工を施した孔(貫通孔)10を通じてそのサポートプレートの上面1−1とウエハ2の表面の間の接着層4に剥離液7を満たす(図2g)。
【0068】
図7は上記接着層4にサポートプレート1の貫通孔10を通じて剥離液7が浸入する様子を示した図である。同図のサポートプレート1の上面1−1が未貫通部が構成されていた面で、下面1−2がウエハ2を密着させている接着層4に当接する面である。
【0069】
前工程で未貫通部を貫通加工したため、その貫通孔10を通じて上記接着層4へ剥離液7が浸入できるようになる。この剥離液7はその接着部材4に接触することによりその接着力を低下させ、その接着層4の一部に接触、または接着層4の全体に満たされればより確実に、ウエハ2とサポートプレート1を分離する。
【0070】
なお、上記剥離液7としては、例えばアルコール(特にエタノールやメタノールなどの分子量が小さいもの)、ケトン、またはアルコールとケトンとの混合溶液などを使用する。
【0071】
次に、ウエハ2とサポートプレート1間の接着力が十分に低下したら、ダイシングテープ6に貼り付けられているウエハ2からサポートプレート1を剥がす(図2h)。
そして、ダイシング装置によってウエハ2をチップサイズに分割する(図2i)。分割された各半導体チップは、ダイシングテープ6に紫外線を照射してその粘着力を低下せしめることで、個々に取り出すことができる。
【0072】
本例では、未貫通孔の貫通加工を裏面処理とダイシングテープへの貼り付け処理の間に行った。しかし、その貫通加工の順序は、研削/研磨処理の後からサポートプレートの剥離処理の前の間であれば、何れのタイミングで行っても良い。
【0073】
図8は、薄板化したウエハ2のサポートプレート剥離後の表面状態を示した図である。同図に示されるように、当該ウエハ2の表面はディンプルのない滑らかな面になり、後の工程で扁平率の高い高精度の半導体チップをウエハの全面から抽出できるようになる。
【0074】
以上に述べたように、本発明のサポートプレートは、孔が未貫通状態に保たれている。このため、ウエハを貼り付けたサポートプレートを真空吸着固定しても、その吸引力は未貫通部を超えて接着部材までは及ばない。よって、真空吸着の引き込みによるディンプルの発生を防止できる。
【0075】
また、ウエハを貼り付ける側のサポートプレート面が平面又は略平面になるように上記未貫通部が上記孔に構成されている場合(例えば、貫通孔の端部に未貫通部が構成されている場合)は、更に、研削ホールの押圧力による接着部材の孔への沈み込みを抑止できる。よって、孔への沈み込みによるディンプルの発生も大幅に低減できる。
【0076】
更に、上記未貫通部は後から貫通させれば、上記接着部材に剥離液を接触させるための貫通孔として使用できるようになる。
加えて、未貫通部を有する孔の位置に貼り付けられたウエハの表面はディンプルが生じないため、その位置のウエハからは扁平率の高い高精度の半導体チップが抽出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明のサポートプレートの構成例である。
【図2】孔10のその他の構造例である。
【図3】孔10のその他の構成例である。
【図4】本発明のサポートポートプレートを使用してウエハを薄板化する薄板化工程の全体フロー説明図である。
【図5】模式的な研削/研磨装置の断面図である。
【図6】孔10の状態変化図である。
【図7】貫通孔10を通じて剥離液7が浸入する様子を示した図である。
【図8】ウエハの表面状態を示した図である。
【図9】従来のディンプルが生じている薄板化されたウエハの斜視図である。
【符号の説明】
【0078】
1 サポートプレート
2 ウエハ
3 エッチング液
4 接着部材
10 孔
10−3 未貫通部
W ウエハの接着範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハを接着部材で接着して面サポートするサポートプレートであって、
未貫通部を有する孔が形成されている、
ことを特徴とするサポートプレート。
【請求項2】
前記孔は、前記サポートプレートの前記ウエハを接着する範囲内に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のサポートプレート。
【請求項3】
前記未貫通部は、
サポートプレートの厚み方向における厚みが50μm以下である、
ことを特徴とする請求項2に記載のサポートプレート。
【請求項4】
前記未貫通部は、ガラス物質であることを特徴とする請求項1〜3の内のいずれか1つに記載のサポートプレート。
【請求項5】
前記未貫通部がサポートプレートと一体であり、ガラス物質で形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載のサポートプレート。
【請求項6】
請求項1〜5の内の何れか一つに記載のサポートプレートに接着部材を介して接着されたウエハを剥離する方法であって、
前記未貫通部を貫通させて前記孔を貫通孔とした後に、所定の剥離液を前記貫通孔を通じて前記接着部材に接触させて前記ウエハを前記サポートプレートから剥離する、
ことを特徴とするウエハを剥離する方法。
【請求項7】
前記サポートプレートは請求項3に記載のサポートプレートであって、
前記未貫通部をエッチングにより貫通させて前記孔を貫通孔とする、
ことを特徴とする請求項6に記載のウエハを剥離する方法。
【請求項8】
前記エッチングは、フッ酸によるウェットエッチングである、
ことを特徴とする請求項6に記載のウエハを剥離する方法。
【請求項9】
請求項1〜5の内の何れか一つに記載のサポートプレートにウエハを接着部材を介して接着させた後に、前記ウエハを研削/研磨する、
ことを特徴とするウエハを薄くする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−41780(P2008−41780A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211442(P2006−211442)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】