説明

シリコン単結晶の製造方法

【課題】 シリコン単結晶の引上げ育成中に有転位化した場合にその単結晶を高効率に再溶融し、シリコン単結晶を高生産性で低コストに製造する。
【解決手段】 シリコン融液12が充填された石英ルツボ13、サイドヒータ15およびボトムヒータ16、シリコン単結晶18に対してサイドヒータ15からの輻射熱を遮蔽する輻射シールド19、電磁石20,21等を備えたMCZ法によるシリコン単結晶の製造方法において、引上げ育成中のシリコン単結晶18が有転位化した場合に、単結晶引上げ条件よりも輻射シールド19下端とシリコン融液12面のギャップXを大きくし、無磁場の状態にして有転位化したシリコン単結晶18を降下させシリコン融液12に溶融する。その後、磁場を印加するとともに上記ギャップXを単結晶引上げ条件に戻しシリコン単結晶の再引上げを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶の製造方法に関し、特にシリコン単結晶が引上げ育成中に有転位化した場合にその単結晶を高効率に再溶融し、その後に再び単結晶を引上げ育成して、シリコン単結晶を高生産性で低コストに製造するシリコン単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコンウェーハとして半導体デバイスに使用されるシリコン単結晶の多くは、チョクラルスキー法(CZ法)といわれる引上げ方法により育成され製造される。このCZ法では、装置の育成炉内に設置した有底円筒状の石英ルツボに原料シリコン(通常、多結晶シリコン)を装填し、その炉内を不活性雰囲気ガスで減圧下にした後、加熱ヒータで上記原料シリコンを溶融してシリコン融液にする。そして、融液面に種結晶を着液しこれを成長核にしてシリコン結晶を所定速度で引上げ育成する。この引上げ育成において、シリコン単結晶および石英ルツボは引上げ方向をその回転軸としそれぞれに所定方向および所定速度で回転させる。
【0003】
上記引上げ育成の工程では、種結晶に元々に含まれている転位、着液時の熱ショック等により導入される転位を除去するために、はじめに、いわゆるダッシュ・ネッキング工程で種結晶を例えば直径3〜4mm程度まで細く絞りネック部を形成する。その後、徐々に所望の結晶径まで増径するショルダー部を形成し、続いてシリコン単結晶の直胴部となる定径のボディ部を所要の長さに形成する。そして、最後に減径してテール部を形成して融液シリコンから切り離す。
【0004】
しかし、上記CZ法によるシリコン単結晶の引上げ育成では、その他に種々の外乱によりショルダー部形成の工程で転位の発生(以下、有転位化という)することがある。この有転位化が生じると、その後に育成されるボディ部の単結晶化が損なわれ製品としての価値は無くなる。そこで、シリコン単結晶製造工程の比較的に早い段階で、単結晶に有転位化が生じた場合には、育成した単結晶を溶融し直し(以下、再溶融あるいはメルトバックという)、再度ネッキング工程からの単結晶の育成(以下、再育成という)が行われる。
【0005】
一方、シリコン単結晶から作製されるシリコンウェーハを基板として使用する半導体デバイスは、その半導体素子の微細化に伴う高集積化および高機能化が進み、例えばデバイス性能を劣化させる金属不純物のゲッタリング機能、あるいは格子空孔、格子間シリコン等の点欠陥起因の結晶欠陥を低減させた高品位結晶、更には、デバイス製造コスト低減を容易にする大口径化を要求する。
【0006】
上記ニーズに対応するために、近年、従来のCZ法を発展させ上記融液に磁場を印加しながら単結晶を育成する、いわゆるMCZ法(Magnetic field applied CZ法:磁界下チョクラルスキー法)が多用されるようになってきている。このMCZ法としては、これまでにHMCZ法(Horizontal MCZ法)、VMCZ法(Vertical MCZ法)、CMCZ法(Cusp MCZ法)が開発され、現在その中でHMCZ法およびCMCZ法の有用性が経験的に明らかになり実用化されている。このMCZ法は、育成炉の外壁に電磁石あるいは永久磁石を配置させ、シリコン融液に対し適宜な磁場を印加することにより、石英ルツボ内における融液の対流を効果的に抑制する。そして、石英ルツボの内壁面から融液中に溶出する酸素が引上げ中のシリコン単結晶の固液界面に達するのを抑制し、シリコン単結晶中に取り込まれ固溶する酸素濃度を制御する。
【0007】
この固溶酸素は、シリコン単結晶の格子間あるいはシリコン置換に入り込み、その後の半導体デバイス製造時の熱処理過程で析出物、積層欠陥、転位ループ等(以下、BMD(Bulk Micro Defect)という)を生成させる。このBMDは半導体素子が作製されるウェーハ表面に生成すると、半導体デバイス性能あるいはその歩留まりを低下させるようになるが、他方、半導体素子が形成されないウェーハ内部あるいは裏面側に生成すると、金属不純物のゲッタリングに有効に機能する。
【0008】
また、この固溶酸素はサーマルドナーを形成しウェーハの導電率を変化させる一方で、半導体デバイス基板のシリコンウェーハの機械的強度を向上させるようになる。このように、シリコン結晶中の固溶酸素は熱処理条件により種々の挙動を示すことから、半導体デバイスの種類あるいはその製造熱プロセス等によって、必要とされる酸素濃度が種々異なり、それと共に濃度の制御およびウェーハ内の濃度均一性の制御が極めて重要になる。
【0009】
あるいは、例えばパワートランジスタ、サイリスタ等の高耐圧素子あるいは大電力素子を搭載する半導体デバイスにあっては、通常のCZ法で引上げ育成した場合の1018原子/cmレベルの酸素濃度より低いものが望まれ、例えば1017原子/cmレベルでの酸素濃度の制御が好ましくなる。
【0010】
このように、シリコン単結晶をウェーハ基板として使用する半導体デバイス側からのニーズから、MCZ法によるシリコン単結晶の引上げ育成が多く用いられるようになってきた。
【0011】
MCZ法は、上述したように融液の対流を抑制することから、CZ法に比べ酸素濃度制御性に優れる特性を有している。しかし、一方で、この対流抑制のために、特に強磁場により融液表面の温度が大きく低下し、ネック部やショルダー部の成長時において熱応力集中による単結晶の有転移化が発生し易くなる。
【0012】
更に、上述した点欠陥起因の結晶欠陥を低減させた高品位結晶として、例えば低抵抗率(例えば0.1Ω・cm以下)のp型シリコンウェーハを基体としたシリコンエピタキシャルウェーハのニーズが高まってきている。そこで、いわゆるグローンイン(Grown−in)欠陥の制御や、高温でも安定するBMD形成のための窒素、および従来に較べて高い濃度のボロンを融液に添加し、上記エピタキシャルウェーハ用の基板となる低抵抗率のp型シリコン単結晶を引上げ育成するようになっている。しかし、この場合には育成炉内で窒化ボロンのような異物が発生し易くなる。そして、この異物による単結晶の有転位化が起こり易くなる。
【0013】
また、半導体デバイス側からのシリコンウェーハの大口径化の要求から、シリコン単結晶の直径400mm以上(例えば直径450mm)の大型化および高重量化が避けられない。ここで、引上げ育成においてその大型化に伴う高重量に耐えられるようにすることが必要になる。その方法として、そのネック径の増大、あるいはダッシュ・ネッキング工程を経ることなくそのショルダー部形成を行う引上げ育成が検討されている。しかし、いずれの方法でも、これまでに較べて種結晶からの有転位化が発生し易くなる。
【0014】
上述したようなことから、今後さらに有転位化が発生し易いシリコン単結晶の引上げ育成が多く行われるようになる。そして、このMCZ法によるシリコン単結晶の引上げ育成において上記ネック部やショルダー部の再溶融の頻度が増加する傾向にある。
【0015】
ここで、従来の一般的なメルトバックでは、原料シリコン溶融用の加熱ヒータの出力を増大させ、シリコン単結晶を溶融する方法がとられることから(例えば、特許文献1参照)、石英ルツボは、合成石英製あるいは天然石英製に関係なく例えばクリストバライト結晶化による劣化を起こし易い。そして、この石英ルツボの劣化は、引き続き行われるシリコン単結晶の再育成での有転位化を引き起すようになる。
【0016】
また、再溶融の速度を高めてシリコン単結晶製造の高生産性および低コスト化を可能にするために、加熱ヒータによる石英ルツボの温度を高くすると、石英ルツボの形状変形による融液の漏出、シリコン単結晶の破損、石英ルツボに隣接し配置された各種部材の破損、育成炉内の水蒸気爆発等の恐れが生じる。
【0017】
しかし、これまでに開示されているシリコン単結晶の製造方法では、上述した問題を生じさせないで溶融速度を高め高効率にシリコン単結晶を再溶融し、シリコン単結晶製造の高生産性および低コスト化を可能にする有効な手段は見出せない。また、MCZ法以外の従来技術のシリコン単結晶の育成方法においても簡便で効果的な手段は見出せない。
【特許文献1】特許第3598972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、MCZ法によるシリコン単結晶の製造において、シリコン単結晶の引上げ育成中に有転位化した場合にその単結晶を高効率に再溶融し、その後に再び単結晶を引上げ育成して、シリコン単結晶を高生産性で低コストに製造するシリコン単結晶の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明者は、磁場印加のシリコン単結晶の製造において、シリコン単結晶の引上げ育成中に有転位化した場合の単結晶を高効率に再溶融する方法について種々に検討してきた。その中で、特別の部材あるいは付帯設備を育成炉に取り付けることなく、しかも石英ルツボに対し熱的付加を増大させないで、シリコン単結晶を高効率に再溶融する有効な方法を見出した。本発明はこの知見に基づいてなされたものである。
【0020】
すなわち、上記目的を達成するために、本発明にかかるシリコン単結晶の製造方法は、シリコン融液が充填された石英ルツボと、該石英ルツボを周囲から加熱するヒータと、前記石英ルツボから引上げられるシリコン単結晶に対して前記ヒータからの輻射熱を遮蔽する輻射シールドとを備え、前記シリコン融液に磁場を印加するチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法において、磁場を印加して所定の単結晶製造条件でシリコン単結晶を引上げ育成する工程と、前記育成中のシリコン単結晶が有転位化した場合に、無磁場の状態で前記単結晶製造条件よりも前記輻射シールド下端と前記シリコン融液面との距離を大きくして、前記有転位化したシリコン単結晶を降下させ前記シリコン融液に溶融する工程と、その後再び磁場を印加するとともに前記輻射シールド下端と前記シリコン融液面との距離を前記単結晶製造条件に戻して前記シリコン単結晶を再び引上げる工程と、を有する構成になっている。
【0021】
あるいは、本発明にかかるシリコン単結晶の製造方法は、シリコン融液が充填された石英ルツボと、該石英ルツボを周囲から加熱するヒータと、前記石英ルツボから引上げられるシリコン単結晶に対して前記ヒータからの輻射熱を遮蔽する輻射シールドとを備え、前記シリコン融液に磁場を印加するチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法において、磁場を印加して所定の単結晶製造条件でシリコン単結晶を引上げ育成する工程と、前記育成中のシリコン単結晶が有転位化した場合に、前記単結晶製造条件の前記磁場よりも弱い磁場を印加し、更に前記単結晶製造条件よりも前記輻射シールド下端と前記シリコン融液面との距離を大きくして、前記有転位化したシリコン単結晶を降下させ前記シリコン融液に溶融する工程と、その後再び前記単結晶製造条件の前記磁場を印加するとともに前記輻射シールド下端と前記シリコン融液面との距離を前記単結晶製造条件に戻して前記シリコン単結晶を再び引上げる工程と、を有する構成になっている。
【0022】
上記発明により、有転位化したシリコン単結晶はヒータからの輻射熱を直接に吸熱し高温化され易く、一方で石英ルツボへの熱的負荷が抑制されて、その再溶融の速度が増加する。また、シリコン単結晶がシリコン融液に浸漬する前の予備加熱が促進され、従来技術において再溶融で生じ易かった急加熱によるシリコン単結晶の破損およびその落下が低減する。そして、上記破損および落下に伴うシリコン融液の石英ルツボ上端からの漏出、その充填量の減少、あるいは石英ルツボの破損、その他の各部材の破損等の従来技術で起こり易かった問題が解消する。
【0023】
上記発明における好適な態様では、前記輻射シールド下端と前記シリコン融液面との距離を100mm〜800mmの範囲、好ましくは200mm〜800mmの範囲にする。
【0024】
上記発明において、前記シリコン単結晶を溶融する工程では、前記シリコン単結晶に上下動の振動を加え、一定の平均速度で降下させるとよい。このような上下動の振動を加えたシリコン単結晶の降下により、シリコン融液の対流が活性化し加熱が促進されて、再溶融の速度が増加する。
【0025】
更に、上記発明において、前記シリコン単結晶を溶融する工程では、前記石英ルツボの回転速度を0.1〜3rpmの範囲、好ましくは0.1〜1rpmの範囲にする。
【0026】
あるいは、上記発明において、前記ヒータは、前記石英ルツボを側部から加熱するサイドヒータと前記石英ルツボを底部から加熱するボトムヒータから成り、前記シリコン単結晶を溶融する工程では、前記サイドヒータおよびボトムヒータの総出力が一定の条件下で、石英ルツボの外周面の最高温度が低減するように、前記サイドヒータと前記ボトムヒータのそれぞれの出力を調節する。
【0027】
あるいは、上記発明において、前記シリコン単結晶を溶融する工程では、前記サイドヒータの上端の高さ位置が、前記石英ルツボを収容し支持する黒鉛ルツボの上端の高さ以上の上方位置にあり、前記高さ位置の差が300mm以下である。
【0028】
上記発明により、石英ルツボへの熱的負荷が軽減され、そのクリストバライト結晶化による劣化およびその劣化に伴う有転位化の増加、石英ルツボの形状変形、その破損等が抑制される。そして、シリコン単結晶の再溶融の速度の増加が容易になる。
【0029】
そして、上記発明において、前記シリコン単結晶を溶融する工程では、単結晶製造装置内に供給するアルゴンガス流量を50〜300L/minとし、単結晶製造装置内の圧力を39996.6Pa(300Torr)以下とする。このようにすることにより、有転位化の要因となるSiOを効果的に育成炉の外に排出し、再育成での有転位化を防止することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の構成により、MCZ法によるシリコン単結晶の製造において、シリコン単結晶の引上げ育成中に有転位化した場合にその単結晶を高効率に再溶融し、その後に再び単結晶を引上げ育成して、シリコン単結晶を高生産性で低コストに製造するシリコン単結晶の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本実施形態にかかるシリコン単結晶の製造方法を実施するための単結晶製造装置の模式的な縦断面図である。なお、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は一部省略される。
【0032】
シリコン単結晶製造装置には、有底円筒形状のメインチャンバ11内にシリコン融液12を保持する石英ルツボ13およびその外側の黒鉛ルツボ14が二重構造に配置され、黒鉛ルツボ14から所定の間隔を有して加熱するサイドヒータ15、ボトムヒータ16が設置されている。そして、サイドヒータ15およびボトムヒータ16の外側に位置しメインチャンバ11との間に保温断熱部材17が配置されている。また、引上げられるシリコン単結晶18に対してサイドヒータ15からの輻射熱を遮蔽する輻射シールド19が例えば截頭円錐形状であって保温断熱部材17の上端部に上下動自在に設置されている。
【0033】
更に、メインチャンバ11の外周には、メインチャンバ11の外側にはシリコン融液12に水平磁場を生成する一対の水平磁場生成用の例えば励磁コイルから成る電磁石20,21が対向して配置されている。この水平磁場は、その磁束密度が0〜0.5テスラの範囲で適宜に生成され、時間的にその強度変化ができるようになっている。
【0034】
また、石英ルツボ13および黒鉛ルツボ14の回転および昇降を行う支持軸22が備えられ、この支持軸22は回転/昇降駆動装置(図示せず)により回転自在に制御される。そして、支持軸22は、シリコン単結晶の引上げ軸方向を回転軸として黒鉛ルツボ14と石英ルツボ13を回転させ、また、上方移動させてシリコン融液12の融液面を一定の高さに維持するようになっている。なお、支持軸22とメインチャンバ11間はシール部材(図示せず)により真空気密されている。
【0035】
そして、ワイヤから成る引上げ軸23が、シリコン単結晶18のネック上部の種結晶24を保持するシードチャック25と連結しており、プルチャンバ26からメインチャンバ11内に垂下してシリコン単結晶を所定の速度で引上げるようになっている。
【0036】
上記装置において、メインチャンバ11の例えば底部にアルゴンのような不活性ガスをチャンバ外に排出する排気口(図示せず)が適宜に取り付けられている。また、シリコン単結晶18に例えばボロン、ヒ素、リンなどの有効不純物を添加する機構、部材等が備えられていても構わないが、発明の説明を簡明にするために省略している。
【0037】
次に、この単結晶製造装置を用いてシリコン単結晶を製造する場合について説明する。先ず多結晶シリコンから成る原料シリコンおよび適量の有効不純物の添加剤を石英ルツボ13内に装填した後、メインチャンバ11内に不活性ガス例えばアルゴンガスを流入させ、その雰囲気で原料シリコンを溶融しシリコン融液12を石英ルツボ13内に形成する。なお、上記不活性ガスは、シリコン融液12表面上で整流され、その液面からの揮発物であるSiOを育成炉の外部に効果的に排出する。
【0038】
そして、シードチャック25に取り付けた種結晶24をシリコン融液12に着液する。そして、引上げ軸25を一方向に回転させながら所定の速度で引上げ、同時に支持軸22により石英ルツボ13に回転CRを付与し、引上げ軸23に逆方向あるいは同方向の回転SRを与えて、上述したようにネッキング工程によるネック部の形成からテール部にかけてシリコン単結晶18を育成させる。
【0039】
この引上げ育成において、電磁石20,21により生成する水平磁場は、ネッキング工程からシリコン融液12に所定の磁束密度が付与されるようにしてもよいし、場合によってはショルダー部形成の増径工程から付与されるようになってもよい。ここで、単結晶製造条件での磁束密度は例えば融液面と結晶軸と交差する点で0.2〜0.5テスラ程度になるようにする。
【0040】
このシリコン単結晶の引上げ育成において、上記増径工程あるいはボディ部の形成に入った定径工程で単結晶が有転位化する場合がある。このような有転位化が発生すると、本実施形態では以下のような高効率の再溶融を施す。なお、シリコン単結晶の有転位化は、例えば結晶の晶癖線の乱れをCCDカメラ等により検知することで容易に検出される。
【0041】
上記途中まで引上げられたシリコン単結晶の再溶融では、引上げ軸23により保持されているシリコン単結晶は徐々に降下されシリコン融液12内に浸漬され、その吸熱過程を通して溶解される。ここで、このシリコン単結晶の高効率な吸熱ができる手段により上述した高効率の再溶融を可能して、石英ルツボ13の熱的負荷を抑制する。以下に、本発明の特徴的技術的事項として本実施形態における有効な手段を以下にまとめて説明する。
【0042】
(水平磁場の強度)
有転位化したシリコン単結晶の再溶融では、図1に示した電磁石20,21への電力供給を停止しシリコン融液12を無磁場の状態にすると好適である。この無磁場に伴うシリコン融液12の対流の活性化により、石英ルツボ13底部で高温状態にあるシリコン融液12が、シリコン単結晶18の吸熱で温度低下する固液界面に給熱し、溶融速度が向上するようになる。なお、このような効果は、単結晶製造条件の場合の磁場強度より弱磁場にしても程度の差はあれ生じ、この弱磁場では特に磁束密度にして0.2テスラ未満にするとよい。
【0043】
(輻射シールド)
有転位化したシリコン単結晶の再溶融では、図1に示した輻射シールド19下端とシリコン融液12面との距離(ギャップ)Xは、所定の単結晶製造条件のシリコン単結晶の引上げ育成における場合に比べて増大させる。上記ギャップXを増大させることにより、シリコン単結晶18は、サイドヒータ15からの輻射熱を直接に吸熱して高温になり、シリコン融液12との接触領域での溶融が促進され、その再溶融の速度が増加する。
【0044】
また、このギャップXの増大は、シリコン単結晶18の予備加熱を促進することから、従来技術の再溶融で生じ易かった急加熱によるシリコン単結晶18の破損およびその石英ルツボ13への落下を皆無にすることができる。なお、このような破損および落下は、シリコン融液12の石英ルツボ13の上端からの漏出、それに伴うシリコン融液12の充填量の減少を引き起す。あるいは、最悪の場合には、石英ルツボ13等、育成炉内の部材が破損し、単結晶製造装置が停止しその稼働率が低下する。
【0045】
ここで、上記ギャップXは、100mm〜800mmの範囲、好ましくは200mm〜800mmの範囲がよい。このギャップXは、100mmよりも小さいと再溶融におけるサイドヒータ15からの輻射熱を直接に吸熱する効果が小さい。そして、上記ギャップXが200mm以上になると、上述した吸熱の効果および予備加熱の促進効果が顕著になり、溶融速度の増加の効果が顕著に現れてくる。また、800mmを超えてくると上記効果の増大が小さくなる上に、上述した不活性ガスの融液面上で整流が低下し、その流れに乱れ(例えば乱流)が生じ易くなり実用的でなくなる。この不活性ガスの整流が悪くなると上述したSiOの排出効果が低下し、このSiOが育成炉内の部材に付着し固化してシリコン融液12に落下し、再育成において有転位化を引き起こすようになる。
【0046】
なお、上記輻射シールドは、シリコン単結晶の引上げ育成において融液シリコンを固化する際の放熱過程を円滑にする機能を有し、あるいは上述したシリコン単結晶中の酸素濃度の調整、点欠陥に起因する例えばグローンイン(Grown−in)欠陥の制御等の機能を有するものである。そこで、輻射シールドとしては具体的には種々の形態があるが、例えばパージチューブと呼称されるように上記放熱過程を制御する機能を有するものであれば、それ等は本実施形態における輻射シールドに属する。
【0047】
(シリコン単結晶の降下)
有転位化したシリコン単結晶の再溶融では、そのシリコン単結晶は、徐々に降下されシリコン融液12内に浸漬され溶融する。ここで、前記シリコン単結晶18を上下動の振動を加え、一定の平均速度で降下させることが極めて有効である。このような降下の一例について図2に示した。図2は有転位化したシリコン単結晶18の降下の方法の説明に供する概念図であり、その横軸が降下の時間であり、縦軸がシリコン単結晶18の降下位置を示す。引上げ軸23により吊り下げられているシリコン単結晶18のシリコン融液12での固液界面の位置は、図2の実線に示す上下動を繰り返しながら、点線で示す一定の平均速度で降下する。ここで、固液界面は、シリコン融液12内部の浅い位置あるいは深い位置にあってよい。いずれの場合であっても、このような上下動の振動を加えたシリコン単結晶18の降下により、シリコン融液12の対流が活性化し加熱が促進されて、再溶融の速度が増加する。
【0048】
図2に示すように、例えば上下動の振動周期をTとし、その上下動の振動幅をWとすると、振動周期Tは0.1s(秒)〜100sの範囲が好ましく、振動幅は1mm〜200mmの範囲が好ましい。振動周期Tは、0.1sよりも小さくなると通常の引上げ軸23の引上げ・降下を行う引上機として特別の装置が必要になる。また、100sより長い周期になるとシリコン融液12に充分な対流が得られず、再溶融における溶融速度の増加効果が現れてこない。同様に、振動幅Wが1mm未満ではシリコン融液12に充分な対流が得られず、再溶融における溶融速度の増加効果が現れてこない。また、200mmを超えた振動幅になると急加熱によるシリコン単結晶の破損が起こり易くなる。
【0049】
なお、上記シリコン単結晶18の降下では、その上下動の振動は時間的に一定の周期になっていなくても構わない。また、その上下動の振動は一定の振動幅でなくてもよく、その振動幅が時間的に変動してもよい。このような降下であっても、程度の差はあれシリコン融液の対流活性化による同様な効果を奏する。
【0050】
(石英ルツボの回転)
有転位化したシリコン単結晶の再溶融では、石英ルツボ13の回転CRの速度は0.1〜3rpmの範囲、好ましくは0.1〜1rpmの範囲がよい。この回転速度は、0.1rpmよりも小さいと石英ルツボ13内におけるシリコン融液12の遠心力が低減し、融液対流の軸対称性が崩れて不均一な対流による加熱が起こりシリコン単結晶18の破損が生じ易くなる。逆に、回転速度が3rpmを超えてくるとシリコン融液の遠心力による対流が低減し、溶融速度の増加の効果が小さくなる。ここで、上記回転速度が1rpm以下であると、上述した対流による加熱の効果が顕著になり、溶融速度の増加が顕著になる。
【0051】
(ヒータ電力の調節)
有転位化したシリコン単結晶の再溶融では、石英ルツボ13を側部から加熱するサイドヒータ15と底部から加熱するボトムヒータ16の総出力が一定の条件下で、石英ルツボ13の外周面の最高温度が低減するように、サイドヒータ15とボトムヒータ16のそれぞれの出力を調節する。ここで、サイドヒータ15とボトムヒータ16の総出力は、所定の単結晶製造条件のシリコン単結晶の引上げ育成における場合の総出力の1〜8倍の範囲に設定される。
【0052】
上記サイドヒータ15とボトムヒータ16の出力調節により、石英ルツボ13の局所的な過熱が抑制され、その過熱部におけるクリストバライト結晶化による劣化、石英ルツボ13の変形およびシリコン融液12の漏出が防止できる。
【0053】
(石英ルツボとヒータの相対位置)
有転位化したシリコン単結晶の再溶融では、図1に示されるように、サイドヒータ15の上端の高さ位置が、石英ルツボ13を収容し支持する黒鉛ルツボ14の上端の高さ以上の上方位置にある。そして、図1に示すそれ等の高さ位置の差である高低差Yは、300mm以下、好ましくは100mm以下にするとよい。ここで、黒鉛ルツボ14の上端の高さ位置が、サイドヒータ15の上端の高さ位置に対して高くなりすぎるとシリコン単結晶18の有効な加熱ができなくなり、逆に低くなりすぎると石英ルツボ13上部の外周面の温度が局所的に上昇し、その変形が起こり易くなる。
【0054】
(不活性雰囲気ガス)
有転位化したシリコン単結晶の再溶融では、育成炉内に供給する不活性ガスであるアルゴンガス流量を50〜300L/minとし、その圧力を39996.6Pa(300Torr)以下とする。これ等によりシリコン融液12表面上を流れるアルゴンガス流速が高速化され、融液面から蒸発するSiOを効果的に育成炉外に容易に排出される。そして、SiOが育成炉内の部材に付着し固化しシリコン融液12に落下して、再育成に有転位化を引き起こすのを防止できる。ここで、アルゴンガス流量が300L/minを超えるようになると、シリコン融液12表面の冷却が顕著になり、シリコン単結晶18の溶融速度が低下する。
【0055】
また、有転位化したシリコン単結晶の再溶融では、引上げ軸23の回転SRの速度は0〜10rpmの範囲、好ましくは0〜5rpmの範囲がよい。この場合も、石英ルツボ13の回転のところで説明したのと同じようにシリコン融液の対流が活性化し、石英ルツボの場合ほどでないものの溶融速度の増加の効果が生じる。
【0056】
上述したような再溶融における手段はそれぞれ個別に実施されても構わないし、また、それ等の複数の手段が適宜に組み合わされて行われるようにしてもよい。そして、上述したような有転位化したシリコン単結晶の再溶融の後に、再度ネッキング工程からのシリコン単結晶の再育成を行うことになる。ここで、この再育成において印加する水平磁場は、メルトバック前の単結晶製造条件における水平磁場に戻してもよいし、適宜な変更を受けてもよい。
【0057】
次に、CMCZ法によりシリコン単結晶を引上げ育成する他の実施形態について図3を参照して説明する。図3はCMCZ法によりシリコン単結晶の製造方法を実施するための単結晶製造装置の模式的な縦断面図である。図3において、カスプ磁場生成用の例えば励磁コイルから成る電磁石27,28以外の装置内の構成およびそれ等の動作は図1で説明したのとほぼ同じである。なお、この電磁石27,28では、磁束密度が0〜0.1テスラの範囲で適宜に生成され、時間的にその強度変化ができるようになっている。
【0058】
図3に示すように、この単結晶製造装置のメインチャンバ11の外周には、単結晶育成装置の中心軸と同芯に、同極対向する2つの磁界を発生させるカスプ磁場発生用の電磁石27,28が配置されている。シリコン単結晶を製造する場合では、これ等の電磁石27,28が、シリコン融液12内に等軸対称的であって水平方向および垂直方向に放射状に広がるカスプ磁場を生成する。そして、この実施形態の単結晶製造条件では、上記カスプ磁場以外は、先の実施形態で説明したのとほぼ同様にしてシリコン単結晶育成する。
【0059】
ここで、カスプ磁場は、例えば石英ルツボ13側壁と交差する位置で、水平方向および垂直方向の磁場の磁束密度が0.02〜0.08テスラの範囲で適宜に生成される。これは、磁束密度が0.02テスラ未満であると、石英ルツボ13の内壁周辺での融液の乱流を抑制する効果が小さくなるからである。また、磁束密度が0.08テスラを越えてくると融液の流動速度が極度に低下し、融液の対流渦の形成が難しくなるからである。そして、これにより融液の対流制御が難くなる。更には、電磁石用装置が大掛かりになり製造コストの点から実用的でなくなる。
【0060】
図3の単結晶製造装置を用いたシリコン単結晶製造の場合に、単結晶が有転位化すると、以下に説明するようなカスプ磁場に対する措置以外は、上述した実施形態において説明した技術事項の手段と同様な措置をとる。そして、このシリコン単結晶の再溶融の後、新たなシリコン単結晶の再育成を行う。
【0061】
(カスプ磁場の強度)
有転位化したシリコン単結晶の再溶融では、図3に示した電磁石27,28への電力供給を停止しシリコン融液12を無磁場の状態にすると好適である。この無磁場に伴う対流の活性化により、石英ルツボ13底部で高温状態にあるシリコン融液12が、シリコン単結晶18の吸熱で温度低下する固液界面に達し易くなり、溶融速度が向上する。なお、このような効果は、単結晶製造条件の場合の磁場強度より弱磁場にしても程度の差はあれ生じ、この弱磁場では特に磁束密度にして0.02テスラ未満にするとよい。
【0062】
上述した実施形態のHMCZ法およびCMCZ法によりシリコン単結晶製造をする場合において、シリコン単結晶の引上げ育成中に有転位化した場合に、石英ルツボへの過熱を低減制御しながら、その単結晶の再溶融での溶融速度を容易に増加させることができる。この石英ルツボの熱的負荷の低減により、従来技術で生じ易くなっていた石英ルツボのクリストバライト結晶化による劣化、石英ルツボの形状変形による融液の漏出、シリコン単結晶の破損、石英ルツボに隣接し配置された各種部材の破損、育成炉内の水蒸気爆発等の問題は解消される。このようにして、シリコン単結晶の再溶融・再育成において、溶融速度を高め高効率にシリコン単結晶を再溶融し、シリコン単結晶製造の高生産性および低コスト化が可能になる。
【実施例】
【0063】
次に、実施例により本発明の効果について具体的に説明する。実施例1ないし実施例4において、比較例の場合と共に、図1に示したようなHMCZ法のシリコン単結晶製造装置を用いた。ここで、石英ルツボ13はその内径32インチであり、その原料シリコン(多結晶シリコン)のチャージ量が400kgである。そして、石英ルツボ13に充填した原料シリコンにより、そのボディ部である直胴部の直径が310mm、長さが700mmとなるシリコン単結晶を引上げ育成できる。このシリコン単結晶製造装置において、ネック部、ショルダー部、そしてボディ部の所定長さまで引上げ育成した後に、シリコン単結晶の再溶融を行った。そして、それ等の溶融速度の結果を表1にまとめている。
【0064】
【表1】

【0065】
(比較例)
上記シリコン単結晶の再溶融では、シリコン融液12の磁束密度は零で無磁場にし、輻射シールド19においてギャップX=30mmとした。そして、シリコン単結晶の降下は、従来技術の場合に同じで上下動の振動は加えなかった。また、石英ルツボ13の回転CRの速度は5rpmである。その他の条件としては、引上げ軸23の回転SRの速度は回転CRの逆方向の−10rpm、石英ルツボ13の上端の高さ位置はサイドヒータ15の上端の高さ位置と同じであり、Y=0としている。また、育成炉内のアルゴンガス流量は150L/min、炉内圧力は2666.44Pa(20Torr)である。そして、サイドヒータ15とボトムヒータ16の総出力は、シリコン単結晶の引上げ育成の場合の総出力とし、伝熱解析プログラムを用いたシミュレーションにより石英ルツボ13の外周面の最高温度が最も低くなるように、サイドヒータ15とボトムヒータ16のそれぞれの出力を調節し固定した。
【0066】
(実施例1)
上記シリコン単結晶の再溶融では、輻射シールド19においてギャップX=200mmとした。そして、それ以外の条件は比較例と同じである。実施例1では、比較例の場合の再溶融の速度を1として規格化すると、その溶融速度は3.0であり従来技術の3倍と大幅に溶融速度が増加した。
【0067】
(実施例2)
上記シリコン単結晶の再溶融では、石英ルツボ13の回転CRの速度は0.5rpmと実施例1の場合の1/10にした。また、引上げ軸23の回転SRの速度は−5rpmとした。そして、それ以外の条件は実施例1と同じである。実施例2では、比較例の場合の再溶融の速度を1として規格化して、その溶融速度は4.0であり従来技術の4倍に溶融速度が増加した。
【0068】
(実施例3)
上記シリコン単結晶の再溶融では、実施例2の条件において弱磁場を印加し、磁束密度が0.1テスラの水平磁場を印加した。それ以外の条件は実施例2と同じである。実施例3では、比較例の場合の再溶融の速度を1として規格化して、その溶融速度は4.5であった。
【0069】
(実施例4)
上記シリコン単結晶の再溶融では、実施例3の条件において、シリコン単結晶の降下に上下動の振動を加えた。ここで、振動周期T=1s、振動幅T=20mmである。それ以外の条件は実施例3と同じである。実施例4では、比較例の場合の再溶融の速度を1として規格化して、その溶融速度は5.5と比較的に大きな増加を示した。
【0070】
以上のことから、本実施形態で説明したような高効率の再溶融を可能する手段として、輻射シールドのギャップXの増大、シリコン単結晶の上下動の振動を加えた降下、石英ルツボの回転速度の低減等の有効性が確認された。そして、特に輻射シールドのギャップXの増大がきわめて効果的になることが確認できた。
【0071】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものでない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施形態にかかるシリコン単結晶の製造方法を実施するための単結晶製造装置の模式的な縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態の有転位化したシリコン単結晶の再溶融におけるシリコン単結晶の降下の方法の説明に供する概念図である。
【図3】本発明の他の実施形態にかかるシリコン単結晶の製造方法を実施するための単結晶製造装置の模式的な縦断面図である。
【符号の説明】
【0073】
11 メインチャンバ
12 シリコン融液
13 石英ルツボ
14 黒鉛ルツボ
15 サイドヒータ
16 ボトムヒータ
17 保温断熱部材
18 シリコン単結晶
19 輻射シールド
20,21 水平磁場生成用の電磁石
22 支持軸
23 引上げ軸
24 種結晶
25 シードチャック
26 プルチャンバ
27,28 カスプ磁場生成用の電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン融液が充填された石英ルツボと、該石英ルツボを周囲から加熱するヒータと、前記石英ルツボから引上げられるシリコン単結晶に対して前記ヒータからの輻射熱を遮蔽する輻射シールドとを備え、前記シリコン融液に磁場を印加するチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法において、
磁場を印加して所定の単結晶製造条件でシリコン単結晶を引上げ育成する工程と、
前記育成中のシリコン単結晶が有転位化した場合に、
無磁場の状態で前記単結晶製造条件よりも前記輻射シールド下端と前記シリコン融液面との距離を大きくして、前記有転位化したシリコン単結晶を降下させ前記シリコン融液に溶融する工程と、
その後再び磁場を印加するとともに前記輻射シールド下端と前記シリコン融液面との距離を前記単結晶製造条件に戻して前記シリコン単結晶を再び引上げる工程と、
を有することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
【請求項2】
シリコン融液が充填された石英ルツボと、該石英ルツボを周囲から加熱するヒータと、前記石英ルツボから引上げられるシリコン単結晶に対して前記ヒータからの輻射熱を遮蔽する輻射シールドとを備え、前記シリコン融液に磁場を印加するチョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法において、
磁場を印加して所定の単結晶製造条件でシリコン単結晶を引上げ育成する工程と、
前記育成中のシリコン単結晶が有転位化した場合に、
前記単結晶製造条件の前記磁場よりも弱い磁場を印加し、更に前記単結晶製造条件よりも前記輻射シールド下端と前記シリコン融液面との距離を大きくして、前記有転位化したシリコン単結晶を降下させ前記シリコン融液に溶融する工程と、
その後再び前記単結晶製造条件の前記磁場を印加するとともに前記輻射シールド下端と前記シリコン融液面との距離を前記単結晶製造条件に戻して前記シリコン単結晶を再び引上げる工程と、
を有することを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
【請求項3】
前記シリコン単結晶を溶融する工程では、前記輻射シールド下端と前記シリコン融液面との距離を100mm〜800mmの範囲、好ましくは200mm〜800mmの範囲にすることを特徴とする請求項1又2に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項4】
前記シリコン単結晶を溶融する工程では、前記シリコン単結晶に上下動の振動を加え、一定の平均速度で降下させることを特徴とする請求項1,2又は3に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項5】
前記シリコン単結晶を溶融する工程では、前記石英ルツボの回転速度を0.1〜3rpmの範囲、好ましくは0.1〜1rpmの範囲にすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項6】
前記ヒータは、前記石英ルツボを側部から加熱するサイドヒータと前記石英ルツボを底部から加熱するボトムヒータから成り、前記シリコン単結晶を溶融する工程では、前記サイドヒータおよびボトムヒータの総出力が一定の条件下で、石英ルツボの外周面の最高温度が低減するように、前記サイドヒータと前記ボトムヒータのそれぞれの出力を調節することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項7】
前記シリコン単結晶を溶融する工程では、前記サイドヒータの上端の高さ位置が、前記石英ルツボを収容し支持する黒鉛ルツボの上端の高さ以上の上方位置にあり、前記高さ位置の差が300mm以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法。
【請求項8】
前記シリコン単結晶を溶融する工程では、単結晶製造装置内に供給するアルゴンガス流量を50〜300L/minとし、単結晶製造装置内の圧力を39996.6Pa以下とすることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載のシリコン単結晶の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−132552(P2009−132552A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309243(P2007−309243)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)
【Fターム(参考)】