説明

シリコン含有膜堆積用の前駆体及びその製造及び使用方法

【課題】シリコン含有膜を堆積させるためのアミノシラン前駆体、およびこれらのアミノシラン前駆体からシリコン含有膜を堆積させる方法を提供すること。
【解決手段】シリコン含有膜を堆積させるための次式(I):
(RN)SiR4−n (I)
(式中、置換基RおよびRはそれぞれ独立にC1〜20のアルキル基およびC6〜30のアリール基から選択され、置換基RおよびRの少なくとも1つはF、Cl、Br、I、CN、NO、PO(OR)、OR、RCOO、SO、SO、SORから選択される電子吸引性置換基を含み、そしてRはH、C1〜20のアルキル基、又はC6〜12のアリール基から選択され、そしてnは1〜4の範囲の数である。)から成るアミノシラン前駆体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、前駆体、特に、限定されないが窒化ケイ素、酸化ケイ素、シリコンカーボナイトライド、および酸窒化ケイ素を含む、シリコン含有膜の堆積に用いられるアミノシラン前駆体が記載されている。本明細書では、1つの態様においてアミノシラン前駆体の製造方法が記載されている。さらに他の態様において、本明細書では集積回路素子製造におけるシリコン含有誘電膜を堆積させるためのアミノシラン前駆体の使用方法が記載されている。これら又は他の態様において、アミノシラン前駆体は、限定されないが原子層成長(“ALD”)、化学蒸着(“CVD”)、プラズマ化学気相成長法(“PECD”)、低圧化学蒸着(“LPCVD”)、および常圧化学蒸着を含む様々な堆積法に用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
シリコン含有誘電体膜は半導体素子又は集積回路の製造において重要な役割を果たしている。半導体素子の製造において、化学的に不活性な誘電体材料、例えば窒化ケイ素の不動態薄層は必須であり得る。窒化ケイ素の1つ以上の薄層は素子内で、例えば拡散マスク又は拡散障壁、酸化障壁、トレンチ分離のためのゲート絶縁物、キャパシタ誘電体、高絶縁破壊電圧を有する金属間材料、および/又はパッシベーション層としての役割を果し得る。同様に、窒化ケイ素は金属酸化物半導体の側壁スペーサーとして素子、例えばグループIVおよび11−Vのトランジスタに単独で又は酸化ケイ素および/又は酸窒化ケイ素誘電体と組み合わせて用いられ得る。シリコン含有誘電体、例えば窒化ケイ素膜の他の応用は、例えば非特許文献1に見い出される。
【0003】
いくつかの種類のシリコン含有化合物はシリコン含有膜、例えば窒化ケイ素膜の前駆体として用いられ得る。前駆体としての使用に適したこれらシリコン含有化合物の例として、シラン、クロロシラン、ポリシラザン、アミノシラン、およびアジドシランが挙げられる。不活性ガス又は希釈剤、例えば限定されないがヘリウム、水素、窒素などが同様に用いられる。
【0004】
低圧化学蒸着(LPCVD)法は、シリコン含有膜の堆積のために半導体産業により用いられ幅広く受け入れられている方法の1つである。アンモニアを用いる低圧化学蒸着(LPCVD)は適度な成長速度および均一性を得るために750℃より高い堆積温度を必要とし得る。改良された膜特性を提供するために典型的にはさらに高い堆積温度が用いられる。窒化ケイ素又は他のシリコン含有膜を成長させるためのさらに一般的な工業的な方法の1つは前駆体のシラン、ジクロロシラン、および/又はアンモニアを用いて>750℃の温度の高温壁反応器での低圧化学蒸着による。しかしながら、この方法を用いるといくつかの欠点がある。例えば、ある種の前駆体、例えばシランおよびジクロロシランは自然発火性である。これは、取り扱いおよび使用におけるいくつかの問題を与える。同様に、シランおよびジクロロシランから堆積した膜はある種の不純物を含み得る。例えば、ジクロロシランを用いて堆積した膜はある種の不純物、例えば堆積工程の間に副生成物として形成される塩素および塩化アンモニウムを含み得る。シランを用いて堆積した膜は水素を含み得る。
【0005】
特許文献1は一般式(RN)SiH4−nを有する有機シランを用いてアンモニア又は窒素の存在下のプラズマ化学気相成長又は熱的化学蒸着のいずれかによる窒化ケイ素膜の形成方法を記載している。これらの有機シラン前駆体は第3アミンでありNH結合を含まない。堆積実験は単一ウエハー反応器内で400℃、80〜100トールの範囲の圧力で行われた。
【0006】
非特許文献2は、LPCVD法においてジクロロシランとアンモニアとを用いる窒化ケイ素の蒸着を記載している。この方法における主要な生成物はアミノクロロシラン、窒化ケイ素および塩化アンモニウムである。上記の通り、塩化アンモニウムの形成は、Si−Cl含有前駆体を用いる主要な欠点であり得る。塩化アンモニウムの形成は、チューブの後端並びに配管ライン及びポンプ装置における塩化アンモニウムの粒子形成及び堆積を招き得る。同様に、前駆体に塩素を含む方法はNHClの形成をもたらし得る。これらの方法は度々の清浄化が必要でありそして反応器の多くの停止時間をもたらし得る。
【0007】
非特許文献3は、基材温度を200〜500℃に維持しつつ、500〜800℃の範囲のガス温度での均一CVD法によるシランとアンモニアとを用いた窒化ケイ素の蒸着を記載している。上記のように、前駆体としてのシランの使用は膜中に水素不純物を導入させ得る。
【0008】
非特許文献4は、600〜700℃の範囲の温度を用いてLPCVD法によりジ第3ブチルシランとアンモニアとを用いる窒化ケイ素の蒸着を記載している。蒸着した窒化ケイ素膜はほぼ10原子量%の炭素不純物で汚染された。
【0009】
非特許文献5は、350℃近くでのヘキサクロロジシランとヒドラジンとを用いるケイ素−窒素膜の低温蒸着を記載している。膜は空気中で不安定でありそしてゆっくりとケイ素−酸素膜に変化した。
【0010】
非特許文献6は、ジエチルシランをアンモニアおよび酸化窒素とともに用いたLPCVDによる窒化ケイ素および酸窒化ケイ素膜の形成を記載している。蒸着は650℃〜700℃の温度範囲で行われる。蒸着は、低い温度では蒸着速度が4オングストローム/分以下に落ちるということで一般的には650℃の温度に制限される。LPCVD法では、直接Si−Cの炭素結合を含有する前駆体は膜に炭素汚染をもたらす。炭素を含まない蒸着は5:1より大きいNH対前駆体の比を必要とする。低いアンモニア濃度では、膜が炭素を含有することが見出された。ジエチルシランとアンモニアとのプロセスはウエハー全面での均一性を改良するために典型的にはフタ付のボート又は温度上昇を必要とする。
【0011】
特許文献2(“869特許”)は、反応剤としてSi(N(CHとアンモニアとを用いた700℃そして0.5トールの圧力でのLPCVDによる窒化ケイ素の形成を記載している。同様に、アンモニア又は窒素と組み合わせた、SiH(N(CH、SiH(N(CHおよびSiH(N(CH)からなる群から選択される他の反応剤も反応剤として提案された。同様に、‘869特許は、紫外線ビームを放射することによってガスから又はガスを励起して生成したプラズマの使用による蒸着温度300℃までへの低減を開示している。
【0012】
非特許文献7は、アミノシラン、例えばテトラキス(ジメチルアミノ)シランを含有する窒化ケイ素膜における炭素量を低減するための他の試みを開示している。この文献は、前駆体テトラキス(ジメチルアミド)シランSi(NMeとアンモニアを用いて600−750℃の範囲の蒸着温度でAPCVDによる窒化ケイ素膜の堆積を開示している。また、この文献は、アンモニアを用いないでSi(NMe4−nを用いた750℃の堆積温度での膜蒸着は低い成長速度および多量の炭素(22−30%の)と酸素(15−17%)との汚染で得られる膜をもたらしたことを教示している。
【0013】
特許文献3(“368特許”)は、500〜800℃の温度範囲でのLPCVD法による窒化ケイ素を蒸着するためのビス(第3ブチルアミノ)シラン((t−CNH)SiH)とアンモニアとの使用を記載している。
【0014】
窒化ケイ素膜の堆積に用いられる前駆体、例えばBTBASおよびクロロシランは通常550℃より高い温度で膜を堆積させる。半導体素子の微細化および低熱量の傾向はさらに低いプロセス温度とさらに高い堆積速度とを必要としている。窒化ケイ素膜が堆積される温度は、格子内での、特に金属化層を含む基材に対しておよび多くのIII−VおよびII−VI群の素子でのイオン拡散を防止するために低減しなければならない。現在、入手可能な窒化ケイ素前駆体のなかで、550℃未満の温度でCVD又はALDによって膜蒸着が起ることを可能とする化学的に十分活性的なものはない。従って、当業界では、550℃以下の温度で、CVD、ALD又は他の方法によって膜堆積を可能とする化学的に十分活性的である窒化ケイ素又は他のシリコン含有膜の堆積用前駆体を提供することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平6−132284号公報
【特許文献2】米国特許第5,234,869号明細書
【特許文献3】米国特許第5,874,368号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Gary E.McGuire編、Semiconductor and Process Technology Handbook、ニュージャージー州、Noyes Publication,(1988)、pp.289−301
【非特許文献2】Sorita et al.,Mass Spectrometric and Kinetic Study of Low−Pressure Chemical Vapor Deposition of Si3N4 Thin Films From SiH2Cl2 and NH3,J.Electro.Chem.Soc.,Vol.141、No.12(1994)、pp3505〜3511
【非特許文献3】B.A.Scott et al.,Preparation of Silicon Nitride with Good Interface Properties by Homogeneous Chemical Vapour Deposition、Chemtronics、1989,Vol.4、Dec.,pp.230−234
【非特許文献4】J.M.Grow et al.,Growth Kinetics and Characterization of Low pressure Chemically Vapor Deposited Si3N4 Films from (C4H9)2SiH2 and NH3, Materials Letters,23,(1995),pp.187〜193
【非特許文献5】W−C.Yeh,R.Ishihara,S.Moishita,and M.Matsumura,Japan.J.Appl.Phys.,35,(1996)pp.1509−1512
【非特許文献6】A.K.Hochberg and D.L.O’Meara,Diethysilane as a Silicon Source for the Deposition of Silicon Nitride and Silicon Oxynitride Films By LPCVD,Mat.Res.Soc.Symp.Proc.,Vol.204,(1991),pp.509−514
【非特許文献7】R.G.Gordon and D.M.Hoffman,Silicon Dimethylamido Complexes and Ammonia as Precursors for the Atmospheric Pressure Chemical Vapor Deposition of Silicon Nitride Thin Films,Chem.Mater.,Vol.2,(1990)pp480−482
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本明細書に記載されるものは、シリコン含有膜の堆積に用いられるアミノシラン前駆体、前記アミノシラン前駆体の製造方法、および前記アミノシラン前駆体の、例えばシリコン含有膜の堆積での使用方法である。1つの態様において、シリコン含有膜を堆積させるためのものであって、次式(I):
(RN)SiR4−n (I)
(式中、置換基RおよびRはそれぞれ独立に1〜20個の炭素原子を含むアルキル基および6〜30個の炭素原子を含むアリール基から選択され、置換基RおよびRの少なくとも1つはF、Cl、Br、I、CN、NO、PO(OR)、OR、RCOO、SO、SO、SORから選択される少なくとも1つの電子吸引性置換基を含みそして少なくとも1つの電子吸引性置換基におけるRはアルキル基又はアリール基から選択され、Rは水素原子、1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、又は6〜12個の炭素原子を含むアリール基から選択され、そしてnは1〜4の範囲の数である。)から成るアミノシラン前駆体が提供される。
【0018】
さらに他の態様において、化学蒸着法によって基材上にシリコン含有膜を堆積させる方法であって、
処理室内に基材を提供すること、そして
処理室にアミノシラン前駆体を、それを反応させそして基材上にシリコン含有膜を堆積させるのに十分な温度および圧力で導入すること、
を含み、その際にアミノシラン前駆体が次式(I):
(RN)SiR4−n (I)
(式中、置換基RおよびRはそれぞれ独立に1〜20個の炭素原子を含むアルキル基および6〜30個の炭素原子を含むアリール基から選択され、置換基RおよびRの少なくとも1つはF、Cl、Br、I、CN、NO、PO(OR)、OR、RCOO、SO、SO、SORから選択される少なくとも1つの電子吸引性置換基を含みそして少なくとも1つの電子吸引性置換基におけるRはアルキル基又はアリール基から選択され、Rは水素原子、1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、又は6〜12個の炭素原子を含むアリール基から選択され、そしてnは1〜4の範囲の数である。)により表される方法が提供される。
【0019】
さらなる態様において、シリコン含有膜を堆積させるためのものであって、次式(II):
AnSiR4−n (II)
(式中、Aは次の(a)〜(j)のアミノ基群から選択される少なくとも1つの基で、Rは1〜20個の炭素原子を含むアルキル基又は6〜12個の炭素原子を含むアリール基から選択され、nは1〜4の範囲の数である。)から成るアミノシラン前駆体が提供される。
【0020】
【化1】

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本明細書に記載の特定のアミノシラン前駆体1〜6に対する実験的に測定した堆積温度と活性化障壁レベルとの相関を示すグラフである。
【0022】
【図2】図2は、本明細書に記載のアミノシラン前駆体1〜6に対する実験的に測定した堆積温度と算出した反応熱との相関を示すグラフである。
【0023】
【図3】図3は、本明細書に記載のアミノシラン前駆体1〜6に対する活性化障壁レベルと算出した反応熱との相関を示すグラフである。
【0024】
【図4】図4は、アミノシラン前駆体のビス(第3ブチルアミノ)シランに対するおよびビス(第3ブチルアミノ)シラン前駆体内の1個、2個、又は3個のメチル基を実施例1に記載のように少なくとも1個の電子吸引性基CFで置換したアミノシラン前駆体に対する1モル当たりのキロカロリー(kcal/mol)で表示した算出反応エネルギーを示すグラフである。
【0025】
【図5】図5は、アミノシラン前駆体のビス(第3ブチルアミノ)シランに対するおよびビス(第3ブチルアミノ)シラン前駆体内の1個、2個、又は3個のメチル基を実施例2に記載のように少なくとも1個の電子吸引性基CNで置換したアミノシラン前駆体に対するkcal/molで表示した算出反応エネルギーを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書に開示されているものは、例えば窒化ケイ素又は他のシリコンおよび/又は窒素含有膜の化学蒸着に用いられ得るアミノシラン類である。これらのアミノシラン前駆体は、550℃以下の温度でシリコン含有膜、例えば窒化ケイ素膜の堆積を可能にし得る前駆体を提供することによって当業界における少なくとも1つの要求を満足する。本明細書に記載のアミノシラン前駆体は少なくとも1つの電子吸引性置換基を含有する。前駆体に少なくとも1つの電子吸引性置換基が存在するとアミノシラン前駆体の堆積に関して反応エネルギー、活性化エネルギー、又はそれらの両方の低減を引き起こすと考えられる。特定の1つの態様において、反応エネルギーは本明細書では式(2)で規定される。この又は他の態様において、反応エネルギーと活性化エネルギーとの相関は図3で示される。反応エネルギー、活性化エネルギー、又はそれらの両方の低減は、少なくとも1つの電子吸引性置換基を含有しない類似のアミノシラン前駆体に比べて本明細書に記載の前駆体が化学的により反応性であることを可能とし得ると考えられる。より好適なエネルギー論の結果として、アミノシラン前駆体はシリコン含有膜、例えば窒化ケイ素膜をより低い堆積温度(例えば、550℃以下)で堆積させるために用いられ得る。
【0027】
1つの態様において、一般式(I)を有するアミノシランが提供される。
(RN)SiR4−n (I)
式(I)において、置換基RおよびRはそれぞれ独立に1〜20個の炭素原子を含むアルキル基および6〜30個の炭素原子を含むアリール基から選択され、置換基RおよびRの少なくとも1つはF、Cl、Br、I、CN、NO、PO(OR)、OR、RCOO、SO、SO、SORから選択される少なくとも1つの電子吸引性基を含み、そして少なくとも1つの電子吸引性置換基中のRはアルキル基又はアリール基から選択され、RはH原子、1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、又は6〜12個の炭素原子を含むアリール基から選択され、そしてnは1〜4の範囲の数である。本明細書で用いられるとき、用語“アルキル基”とは1〜20個、又は1〜12個、又は1〜6個の炭素原子を有する置換又は非置換のアルキル基を言いそして直鎖、分岐又は環状の基を含み得る。適したアルキル基の例として、限定されないが、メチル、エチル、イソプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、tert−アミル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられる。本明細書で用いられるとき、用語“アリール”基とは6〜30個又は6〜12個又は6〜10個の炭素原子を有する置換又は非置換のアリール基を言う。アリール基の例として、限定されないが、フェニル、ベンジル、トリル、メシチル、およびキシリルが挙げられる。
【0028】
式(I)から選択される電子吸引性置換基を有するアミノシランの更なる例は式(II):
SiR4−n (II)
として示される。式(II)において、Aは次のアミノ基(a)〜(j)から選択され、Rは1〜20個の炭素原子を含むアルキル基又は6〜12個の炭素原子を含むアリール基から選択され、nは1〜4の範囲の数である。アミノ基(a)〜(j)は示されるようにSi原子に結合されている。
【0029】
【化2】

【0030】
特定の態様において、R、R、R、R、Rの任意の1つ又はすべておよび少なくとも1つの電子吸引性置換基は置換されている。この又は他の態様において、R、R、R、R、Rの任意の1つ又はすべておよび少なくとも1つの電子吸引性置換基はヘテロ原子、例えば、限定されないが、N、S、P、Oで置換されている。他の態様において、R、R、R、R、Rの任意の1つ又はすべておよび少なくとも1つの電子吸引性置換基は非置換である。
【0031】
本明細書で用いられるとき、用語“電子吸引性置換基”とはSi−N結合から電子を引き離す作用をする原子又はその基を言う。適した電子吸引性置換基の例として、限定されないが、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、ニトリル(CN)、カルボン酸(COOH)、およびカルボニル(CO)が挙げられる。特定の態様において、電子吸引性置換基は式(I)のNに隣接して又は近接してあり得る。
【0032】
特定の態様において、置換基RおよびRは式(I)において環構造を形成するために結び付いている。他の態様において、置換基RおよびRは式(I)において結び付いていない。
【0033】
理論には束縛されないが、低温(例えば、550℃以下の温度)で堆積されるための窒化ケイ素前駆体にとっての必要条件の1つは、基材表面にSi−Nの堆積を促進するために通常90kcal/molより弱いアミノシラン前駆体内のSi−N結合を有していることであり得る。このためには、それぞれの前駆体のSi−N結合エネルギーを評価することが必要である。しかしながら、均一の結合解離モデルに基く厳格な結合エネルギー計算は、結合エネルギーの弱い感度に起因して堆積温度にほぼ比例していると予想される結合強度と堆積温度との間の定性的な関係を確実に特徴付けることに失敗する可能性がある。結合エネルギー計算に対する代替案として、次式(1):
(RN)SiR4−n+NH
(RN)n−1Si(NH)R4−n+RNH (1)
に従ってSi−N結合の相対的強弱度を定量化するために用いられるSi−N形成エネルギーがここに規定される。
上記式(1)において、RおよびRは一般に用いられる当業界で周知の前駆体の置換基であり、アミノシラン、β−アミノエチルシラン、環状シラザン、イミノシラン、ビシクロシラザン、ヒドロジノシラン、擬似ハロシラン、およびヘテロ環状置換シランであり得る。Si−N形成エネルギーはカリフォルニア州、サンジェゴのAccelyrs社により提供の表題がDMolの、マテリアルスタジオv.4.2.0.2の化学モデリングソフトウエアープログラムで式(I)を用いて計算した。式(I)を適用しそして前記モデリングソフトウエアーを用いて形成エネルギーを決めると、強いSi−N結合はより高い反応エネルギーそしてそれ故により高い堆積温度(550℃より高い)をもたらすであろう。低い処理温度(例えば、550℃以下)で堆積させるアミノシラン前駆体を開発するためには、Si−N結合の近傍に電子吸引性基を導入してSi−N結合から電子密度を除去することによりSi−N結合を弱めることを望んでもよい。
【0034】
量子力学の密度汎関数理論を用いて、様々な少なくとも1つの電子吸引性置換基で順次置換された種々のSiN前駆体の反応エネルギーを系統的に評価するためにコンピューターモデリングソフトウエアーを用いて多数の計算が行われた。それらの計算は、Perdew−Wang(PW91)により提案された交換相関汎関数を分極関数で補強した倍数的原子基準一式との組み合わせで用いる汎用勾配近似(GGA)で行った。すべての分子構造はエネルギー的に最も好ましい配列を得るために十分に最適化された。続いて、反応エネルギーは次式(2)を用いて評価された:
△E=−[E((RN)n−1Si(NH)R4−n)+
E(RNH)−E(NH)−E(RN)SiR4−n](2)
式(2)において、△E値が小さければ小さいほど、Si−N結合は弱くそしてそれ故により低い堆積温度が達成され得る。
【0035】
図1は、後述の特定のアミノシラン前駆体1〜6、すなわち、トリス(1,1−ジメチルヒドラジノ)−tert−ブチルシラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)エチルシラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)シラン、トリス(イソ−プロピルアミノ)シラン、およびトリス(tert−ブチルアミノ)シランの各々に対して実験的に測定された堆積温度とコンピューターモデリングソフトウエアーを用いて計算した活性化バリヤーレベルとの相関のグラフ表示を示している。図1は活性化バリヤーが堆積温度と共に増加することを示す。図2はアミノシラン前駆体1〜6に対する実験的に測定した堆積温度およびコンピューターモデリングソフトウエアーを用いて計算した反応熱のグラフ表示を示している。図2は堆積温度が反応熱と共に増加することを示す。図3はアミノシラン前駆体1〜6に対する実験的に測定した活性化エネルギーとコンピューターモデリングソフトウエアーを用いて計算した反応熱の相関のグラフ表示を示している。この例は活性化バリヤーが反応熱と共に増加することを示している。図1〜図3の結果の検討により、特定の態様においては、前駆体の堆積温度は上述の式(2)を適用することによる反応熱によりコンピューター的に予測され得る。特定の態様において、アミノシラン前駆体の活性化エネルギーは約45kcal/mol以下、又は約40kcal/mol以下、又は約35kcal/mol以下、又は約30kcal/mol以下、又は約25kcal/mol以下が望ましい。この又は他の態様において、アミノシラン前駆体の反応エネルギーは約5.5kcal/mol以下、又は約4.0kcal/mol以下、又は約3.5kcal/mol以下、又は約3.0kcal/mol以下、又は約2.5kcal/mol以下が望ましい。
【0036】
図1〜図3で用いた前駆体1〜6、すなわち、トリス(1,1−ジメチルヒドラジノ)−tert−ブチルシラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジン)エチルシラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)シラン、トリス(イソ−プロピルアミノ)シラン、およびトリス(tert−ブチルアミノ)シランの構造を以下に示す。
【0037】
【化3】

【0038】
1つの態様において、式(I)又は(II)で示されるように少なくとも1つの電子吸引性置換基を有するアミノシラン前駆体はクロロシランと対応するアミンとのアミノ化反応によって製造され得る。反応に良く適した代表的なアミンはアルキル、環式、およびヘテロ環式である。好適なアミンは低級アルキル、例えばエチル、イソ−プロピル、t−ブチル、およびシクロヘキシルアミンである。さらに、アミンは望まれる生成物に依存して、1級又は2級であり得る。アミン化反応は典型的には室温以下で行われる。炭化水素溶媒、例えばヘキサンおよびペンタンが通常反応媒体として用いられる。1つの特定の態様において、式(I)又は(II)を有するアミノシラン前駆体は次の典型的な反応(A)、(B)、および(C)によって示されるように製造され得る。
NH+ClSiH→RN−SiH+RNH−HCl(A)
4RNH+HSiCl→RN−SiH−NR
+2RNH−HCl(B)
6RNH+HSiCl→(RN)SiH
+3RNH−HCl(C)
【0039】
他の態様において、式(I)のアミノシラン前駆体は本明細書の実施例4、5、および6に記載されている方法を用いて製造される。これら又は他の態様において、本明細書に記載されたアミノシラン前駆体はより一般的に入手可能であるアミノシランからのアミノ基転移反応により製造され得る。
【0040】
前述したように、本明細書に記載の式(I)又は(II)のアミノシラン前駆体は基材にシリコン含有膜、例えば限定されないが窒化ケイ素、酸化ケイ素、シリコンカーボナイトライド、および酸窒化ケイ素の膜の堆積用前駆体として用いられ得る。適した基材の例として、限定されないが半導体材料、例えばガリウムヒ化物(“GaAs”)、窒化ホウ素(“BN”)、シリコン、およびシリコン含有組成物、例えば結晶シリコン、ポリシリコン、アモルファスシリコン、エピタキシャルシリコン、二酸化ケイ素(“SiO”)、炭化ケイ素(“SiC”)、シリコンオキシカーバイド(“SiOC”)、窒化ケイ素(“SiN”)、シリコンカーボナイトライド(“SiCN”)、有機ケイ酸塩ガラス(“OSG”)、有機フルオロケイ酸塩ガラス(“OFSG”)、フルオロケイ酸塩ガラス(“FSG”)、および他の適した基材又はそれらの混合物が挙げられる。基材は、さらに膜が適用される種々の層、例えば反射防止塗膜、フォトレジスト、有機ポリマー、多孔質の有機および無機材料、金属、例えば銅およびアルミニウム、又は拡散バリヤー層を含み得る。式(I)のアミノシラン前駆体は本明細書に記載の又は当業界で周知の任意の技術を用いて堆積され得る。例示的な堆積技術として、限定されないが化学蒸着(“CVD”)、原子層成長法(“ALD”)、パルスCVD、プラズマ補助化学蒸着(“PACVD”)およびプラズマ化学気相成長法(“PECD”)が挙げられる。
【0041】
特定の態様において、アミノシラン前駆体はCVD又はALD技術を用いて基材に蒸着(堆積)される。特定の態様において、式(I)又は(II)のアミノシラン前駆体の堆積は、550℃以下、又は500℃以下、又は400℃以下、又は300℃以下又は200℃以下、又は100℃以下、又はこれらの端点の任意の範囲、例えば300℃〜550℃の温度で行われ得る。用いられ得る堆積技術に依存して、50mトール〜100トールの圧力が例示される。典型的なCVD堆積法において、アミノシラン前駆体はプロセス室、例えば真空室中に導入される。特定の態様において、式(I)のアミノシラン前駆体以外の他の化学反応剤がアミノシラン前駆体の導入の前、その間、および/又はその後に導入され得る。エネルギー源、例えば、熱的、プラズマ又は他の源はアミノシラン前駆体および任意的な化学反応剤にエネルギーを与え、よって、基材の少なくとも一部に膜を形成する。
【0042】
原子層成長法(ALD)は第1前駆体そして、特定の態様においては第2前駆体のパルスの逐次的導入を含む。ALD法で1種より多い前駆体が用いられる態様においては、第1前駆体のパルスの逐次的導入、それに続くパージガスのパルスおよび/又はポンプ排気があり、続いて第2前駆体のパルスがあり、パージガスのパルスおよび/又はポンプ排気が続く。別々のパルスの逐次的導入は、基材表面での各前駆体よりなる単一層の交互自己限定的化学吸着をもたらしそして各サイクル毎に堆積材料からなる単一層を形成する。サイクルは望ましい厚さの膜を作り出すために必要に応じて繰り返される。ALD処理の間、基材は化学吸着を促進する温度範囲で、すなわち吸着種と下層の基材間の正常な結合を保つために十分低く、しかし前駆体の凝縮を避けるために十分に高く、そして各処理サイクルで望ましい表面反応に十分な活性化エネルギーを提供するために十分な温度範囲に保たれる。処理室温度は0℃から400℃に、又は0℃から300℃に、又は0℃から275℃に及び得る。ALD処理の間の処理室内の圧力は0.1〜1000トール、又は0.1〜15トール、又は0.1〜10トールであり得る。しかしながら、任意の特定のALD処理に対する温度および圧力は含まれる1種以上の前駆体に依存して変わり得ることが理解される。
【0043】
ALDの成長速度は通常のCVD法と比較して低い。ALD法の典型的な成長速度は1〜2Å/サイクルである。成長速度の増加への1つのアプローチはより高い基材温度で堆積を行うことによる。本明細書に記載のアミノシラン前駆体は比較的低い温度でシリコン含有膜を堆積可能であり、それ故に膜の成長速度を増加させ得る。
【0044】
望ましい膜に依存して、シリコン含有膜の堆積法に通常の酸化剤が用いられ得る。代表的な酸化剤として、過酸化水素、亜酸化窒素、オゾン、および分子酸素が挙げられる。典型的には、酸化剤とアミノシラン前駆体との割合は有機アミノシラン前駆体1モルに対して酸化剤が0.1モルより大、好適には0.1〜6モルである。
【0045】
式(I)又は(II)のアミノシラン前駆体の堆積は、活性窒素源、例えばアンモニア、ヒドラジン、アルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジンおよびそれらの混合物の不存在下又は存在下に行われ得る。窒素源とアミノシランとのモル比は通常0:〜>10:1の範囲内と広い。上限は前駆体への希釈効果によって限定されそして希釈効果は堆積速度を大きく減じるであろう。好適な範囲は0.1〜4:1である。また、堆積による膜の形成は不活性ガス、例えば窒素およびヘリウムとともに含む他のガスを用いて又は用いないで行われ得る。対応する前駆体の希釈を達成するための製造装置による複数のガスの使用は堆積の追従性(conformality)を改良するか又は化学蒸気浸透法での浸透を改良し得る。
【0046】
前述のように、特定の態様においては、処理室への式(I)又は(II)のアミノシラン前駆体の導入の前、その間、および/又はその後に追加の化学反応剤又は前駆体を導入し得る。化学反応剤の選択は望ましい最終的に得る膜の組成に依存し得る。典型的な化学反応剤としては、限定されないが酸化剤(すなわち、O、NO、NO、O、CO、CO等)、水、ハロゲン化物、ハロゲン含有シラン、アルキルクロロシラン、アルキルブロモシラン、又はアルキルヨードシラン、シリコンハロゲン化物錯体、例えばシリコンテトラクロライド、シリコンテトラブロマイド、又はシリコンテトラヨーダイド、又はそれらの組み合わせが挙げられる。また、上記錯体の誘導体も用いられ得ると予想される。化学反応剤は、処理室にガスとして直接供給され、反応室中へ蒸気化した液体、昇華した固体として供給されおよび/又は不活性キャリヤーガスによって反応室へ移送され得る。不活性ガスの例として、窒素、水素、アルゴン、キセノン等が挙げられる。
【0047】
堆積処理を行う際に、本明細書に記載のアミノシランは膜の特性を変えるために他のシリル前駆体と混合され得る。他の前駆体の例として、ビス−tert−ブチルアミノシラン、トリス−イソープロピルアミノシラン、ビスージエチルアミノシラン、トリス−ジメチルアミノシラン、およびビス−イソープロピルアミノシランが挙げられる。
【0048】
本明細書に記載の前述の膜形成の任意の方法ならびに当業界で周知の他の膜形成方法が単独で又は組み合わせて用いられ得る。
【0049】
以下の実施例は本明細書に記載されたアミノシラン前駆体を説明するものであってなんら限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
実施例1(BTBASにおける−CHの−CFによる置換効果)
ビス(tert−ブチルアミノ)シランBTBASのt−ブチル基におけるメチル基の1つを以下の化学構造7に示すように−CF基で逐次的に置換した。
【0051】
【化4】

【0052】
上記分子に対してのおよび置換された2又は3個のメチル基を有する類似の分子に対する反応エネルギーが前記式(2)およびカリフォルニア州サンジェゴのAccelyrs社により提供の表題がDMol、マテリアルスタジオv.4.2.0.2の化学モデリングソフトウエアープログラムを用いて決定されそして結果を図4に示される。図4はメチル基の−CF基への全部の置換が反応エネルギーの低減をもたらすことを示す。特に、分子内の全部のメチル基の−CF基による全置換は反応を吸熱から発熱に変える。それ故、Si−N結合の開裂はBTBAS内におけるよりも大幅に低い温度で起りその際に低い堆積温度を可能とすると予想される。
【0053】
実施例2(BTBASにおける−CHの−CNによる置換効果)
BTBASのt−ブチル基におけるメチル基を−CN基で逐次的に置換した。BTBASに対してのおよび−CN基で置換された1、2又は3個のメチル基を有する式(1)のアミノシラン前駆体に対しての反応エネルギーが前記式(2)およびカリフォルニア州サンジェゴのAccelyrs社により提供の表題がDMol、マテリアルスタジオv.4.2.0.2の化学モデリングソフトウエアープログラムを用いて決定された。結果を図5に示す。置換は、当初は分子内の水素結合の形成に起因して反応エネルギーの増加をもたらす。しかしながら、全部の置換では、反応エネルギーはBTBASに対するよりも約1.6kcal/molほど低い。それ故、Si−N結合の開裂はBTBAS内におけるよりも低い温度で起ると予想される。
【0054】
実施例3(−F置換の効果)
少なくとも1種の電子吸引性置換基又はフッ素を含むアルキル基又はアリール基を有する一連のアミノシラン前駆体が、フッ素を含有しないかそれよりも水素を含有する類似のアミノシラン前駆体と比較された。表1に記載した分子に対してHのFによる置換を調べるために計算が行われ、また、表1には、本明細書に記載の式(2)およびカリフォルニア州サンジェゴのAccelyrs社により提供の表題がDMol、マテリアルスタジオv.4.2.0.2の化学モデリングソフトウエアープログラムを用いて計算した反応熱が示されている。比較の結果を以下の表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
上記の結果は、HのFによる置換によってすべてのケースで反応エネルギーが低下され得ることを示している。特に、温度降下効果はα−サイトで顕著であり、次いでβ−サイトそしてその次にγ−サイトである。より高い水準の置換はより好ましい反応エネルギーを生み出す。
【0057】
実施例4a[ビス(3,3,−ジフルオロピペリジン)シランに至る3,3−ジフルオロピペリジン前駆体の調製]
磁気攪拌棒、Nパージバルブおよびゴム隔膜を備えた240mLのテフロン(登録商標)反応器にCHCl(50mL)中のN−t−ブチル−3−ピペリドン(25g、0.1255mol)溶液を入れそして0℃に冷却した。この溶液に、ビス(2−メトキシエチル)アミノ硫黄トリフルオリド(41.58g、0.1882mol)を加えた。次いで、この混合物を室温とし、16時間にわたって撹拌した。次いで、混合物を250mLのガラスフラスコに注ぎ込みそして1℃の氷水25mLで処理した。有機相を分液ロートで分離した。有機溶液を15%NaOH水を用いてアルカリ性とし次いで乾燥(MgSO)し、ろ過しそして真空で蒸発させた。残部を磁気攪拌棒および窒素注入管を備えた250mLの丸底フラスコ内で3MのHClと混合しそして60℃で90分間加熱した。混合物を15%NaOH水で中和し、ジエチルエーテル中に抽出し、水性相から分離し、乾燥(MgSO)し、ろ過し次いで真空で蒸発させた。3,3−ジフルオロピペリジンの純生成物が40℃(0.1トール)での蒸留によって得られそしてG.C.M.S.マススペクトルで分析した。
【0058】
実施例4b[アミノ基転移反応によるビス(3,3,−ジフルオロピペリジン)シランの調製]
0.1モルの3,3−ジフルオロピペリジンおよび0.1モルのビス(t−ブチルアミノ)シランの量を窒素で保護してフラスコ内で混合しそして攪拌した。毎4時間毎に、混合物はポンプで30分間100トールの真空にした。48時間後、最終の生成物ビス(3,3−ジフルオロピペリジノ)シランが118℃/10トールでの真空蒸留で得られた。
【0059】
実施例5[アミノ基転移反応によるビス[ビス(2−メトキシエチル)]アミノシランの調製]
0.1モルのビス(2−メトキシエチル)アミンおよび0.1モルのビス(t−ブチルアミノ)シランの量を窒素で保護してフラスコ内で混合しそして攪拌した。毎4時間毎に、混合物はポンプで30分間100トールの真空にした。48時間後、生成物ビス[ビス(2−メトキシエチル)アミノ]シランが54℃/10トールでの真空蒸留で得られた。
【0060】
実施例6[アミノ基転移反応によるビス(2−メトキシエチル)アミノシランの調製]
0.1モルのビス(2−メトキシエチル)アミンおよび0.1モルのジエチルアミノシランの量を窒素で保護してフラスコ内で混合しそして攪拌した。毎4時間毎に、混合物はポンプで30分間100トールの真空にした。48時間後、生成物ビス[ビス(2−メトキシエチル)アミノ]シランが40℃/10トールでの真空蒸留で得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
(RN)SiR4−n (I)
(式中、置換基RおよびRはそれぞれ独立に1〜20個の炭素原子を含むアルキル基および6〜30個の炭素原子を含むアリール基から選択され、
置換基RおよびRの少なくとも1つはF、Cl、Br、I、CN、NO、PO(OR)、OR、RCOO、SO、SO、SORから選択される少なくとも1つの電子吸引性置換基を含みそして少なくとも1つの電子吸引性置換基におけるRはアルキル基又はアリール基から選択され、
はH、1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、又は6〜12個の炭素原子を含むアリール基から選択され、そして
nは1〜4の範囲の数である。)
から成るシリコン含有膜を堆積させるためのアミノシラン前駆体。
【請求項2】
およびRが結合して環構造を形成している請求項1に記載のアミノシラン前駆体。
【請求項3】
前記前駆体が、トリス(1,1−ジメチルヒドラジノ)−tert−ブチルシラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジン)エチルシラン、ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)メチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)シラン、トリス(イソプロピルアミノ)シラン、トリス(tert−ブチルアミノ)シランおよびビス(3,3−ジフルオロピペリジン)シランから選択される請求項1に記載のアミノシラン前駆体。
【請求項4】
トリス(1,1−ジメチルヒドラジノ)−tert−ブチルシランを含む請求項3に記載のアミノシラン前駆体。
【請求項5】
ビス(1,1−ジメチルヒドラジン)エチルシランを含む請求項3に記載のアミノシラン前駆体。
【請求項6】
ビス(1,1−ジメチルヒドラジノ)メチルシランを含む請求項3に記載のアミノシラン前駆体。
【請求項7】
ビス(ジエチルアミノ)シランを含む請求項3に記載のアミノシラン前駆体。
【請求項8】
トリス(イソ−プロピルアミノ)シランを含む請求項3に記載のアミノシラン前駆体。
【請求項9】
トリス(tert−ブチルアミノ)シランを含む請求項3に記載のアミノシラン前駆体。
【請求項10】
ビス(3,3−ジフルオロピペリジン)シランを含む請求項3に記載のアミノシラン前駆体。
【請求項11】
化学蒸着によって基材にシリコン含有膜を堆積させるための方法であって、下記の工程:
処理室内に基材を提供すること、
アミノシラン前駆体を、反応させそして基材にシリコン含有膜を堆積させるのに十分な温度および圧力で処理室に導入すること、
を含み、その際にアミノシラン前駆体が次式(I):
(RN)SiR4−n (I)
(式中、置換基RおよびRはそれぞれ独立に1〜20個の炭素原子を含むアルキル基および6〜30個の炭素原子を含むアリール基から選択され、
置換基RおよびRの少なくとも1つはF、Cl、Br、I、CN、NO、PO(OR)、OR、RCOO、SO、SO、SORから選択される少なくとも1つの電子吸引性置換基を含みそして少なくとも1つの電子吸引性置換基におけるRはアルキル基又はアリール基から選択され、
はH、1〜20個の炭素原子を含むアルキル基、又は6〜12個の炭素原子を含むアリール基から選択され、そして
nは1〜4の範囲の数である。)
を有する、方法。
【請求項12】
前記導入工程が、アンモニア、窒素およびヒドラジンから選択される窒素源をさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記窒素源が、アンモニア又は窒素であり且つ窒素源が窒素源:前駆体が0.1〜4:1の範囲で存在している請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記温度が、約400℃〜約700℃の範囲である請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記圧力が、約20mトール〜約20トールの範囲である請求項11に記載の方法。
【請求項16】
次式(II):
AnSiR4−n (II)
(式中、Aは次の(a)〜(j)
【化1】

のアミノ基の群から選択される少なくとも1つの基であり、Rは1〜20個の炭素原子を含むアルキル基又は6〜12個の炭素原子を含むアリール基から選択され、そしてnは1〜4の範囲の数である。)
から成るシリコン含有膜を堆積させるためのアミノシラン前駆体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−43081(P2010−43081A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184479(P2009−184479)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】