説明

スイッチング回路

【課題】 装置に依存することなく良好なノイズ特性と損失特性を実現することができるスイッチング回路を提供すること。
【解決手段】 フィードバック回路部41を備える規範電圧波形追従駆動部4によりスイッチング素子を駆動して負荷を作動させるスイッチング回路1において、フィードバック回路部41を備える規範電圧波形追従駆動部4へ入力する信号波形を、予めノイズ特性と損失特性を設定した波形にして出力する規範電圧波形生成部3を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング回路の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来のスイッチング回路では、電界効果型出力トランジスタのゲート電圧をフィードバックしている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−218068号公報(第2−7頁、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のスイッチング回路にあっては、ノイズ特性と損失特性が充分ではなかった。
【0004】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、装置に依存することなく良好なノイズ特性と損失特性を実現することができるスイッチング回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、フィードバック構成部によりスイッチング素子を駆動して負荷を作動させるスイッチング回路において、前記フィードバック構成部へ入力する信号波形を、予めノイズ特性と損失特性を設定した波形にして出力する規範電圧波形生成手段を備えた、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、装置に依存することなく良好なノイズ特性と損失特性を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明のスイッチング回路を実現する実施の形態を、請求項1,2,3,4,5に係る発明に対応する実施例1と、請求項1,2,3,4に係る発明に対応する実施例2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1のスイッチング回路のブロック図である。
実施例1のスイッチング回路1は、制御パルス生成部2、規範電圧波形生成部3、規範電圧波形追従駆動部4、負荷5、電源6を主要な構成としている。
制御パルス生成部2は、規範電圧波形追従駆動部4を駆動制御するための波形となる制御パルスを生成し出力する。
規範電圧波形生成部3は、予めノイズと損失が要求される所定の値を満たす入力波形(本明細書において規範波形と呼ぶ)を生成し出力する。
規範電圧波形追従駆動部4は、入力される規範波形によりオンオフのスイッチシングを行う駆動部である。
負荷5は、スイッチングによる電圧のオンオフで駆動するものである。
電源6は、負荷5の駆動のための電源を供給する。
【0009】
実施例1のスイッチング回路の規範電圧波形生成部3について、さらに詳細に説明する。
図2は実施例1のスイッチング回路のブロック図である。
実施例1のスイッチング回路1において、規範電圧波形生成部3は、汎用波形生成部31と固有特性追加部32を主要な構成としている。
汎用波形生成部31は、機器固有の特性に関係なく、汎用的に高調波が少ない波形を、制御パルスから生成する。
固有特性追加部32は、機器固有の特性に合わせて特定の周波数成分が少なくなるよう汎用波形生成部31からの波形に特性の追加を行う。
【0010】
汎用波形生成部31と固有特性追加部32について、さらに具体的な例を説明する。
図3は実施例1のスイッチング回路のブロック図である。
実施例1では、汎用波形生成部31として、RCローパスフィルタ311を設けている。また、固有特性追加部32として、RCツインTノッチフィルタ321を設けている。
【0011】
図4はRCローパスフィルタ311の回路構成を示す図である。
図5はRCローパスフィルタ311の周波数特性を示すグラフ図である。
RCローパスフィルタ311は、信号ラインに設けた抵抗R1と信号ラインとグランドの間に設けたコンデンサC1からなり、図5に周波数特性を示すように高調波の通過を抑制する。
図6はRCツインTノッチフィルタ321の回路構成を示す図である。図7はRCツインTノッチフィルタ321の等価回路を示す説明図である。図8はRCツインTノッチフィルタ321の周波数特性を示すグラフ図である。
RCツインTノッチフィルタ321は、信号ラインに直列に設けた抵抗R2及び抵抗R3と、抵抗R2,R3と並行に設けたコンデンサC3及びコンデンサC4と、抵抗R2と抵抗R3の間とグランドの間に設けたコンデンサC2と、コンデンサC3及びC4の間とグランドの間に設けた抵抗R4とからなる。
【0012】
RCツインTノッチフィルタ321は、π型等価特性で置き換えると図7のようになり、伝達特性は、以下の数式1、数式2のようになる。
【数1】

【0013】
【数2】

そして、図8に示すようにノッチ周波数近傍の周波数成分の通過を抑制する。
【0014】
図9は、実施例1のRCツインTノッチフィルタ321を組み込んだスイッチング回路の回路構成を示す図である。
図9に示す回路構成では、説明上、RCローパスフィルタ311を組み込んでいないものについて説明する。この図9のスイッチング回路1では、RCツインTノッチフィルタ321、規範電圧波形追従駆動部4として設けたフィードバック回路部41、負荷5として設けたモータの等価回路部51、電源6を主要な構成としている。
フィードバック回路部41は、抵抗R4〜R9、コンデンサC5、ダイオードD1,D2、トランジスタQ1〜Q6、電源V1、インダクタンスL1、パワートランジスタM1を主要な構成とし、フィードバック構成により、設定された波形を安定して出力する。
モータの等価回路部51は、抵抗R10、コンデンサC6,C7、ダイオードD3、インダクタンスL2〜L4、等価回路上の定電流成分K1を主要な構成とし、例えばPWM制御パルスにより回転駆動を行なう。
【0015】
作用を説明する。
[良好なノイズ特性と損失特性の生成作用]
実施例1のスイッチング回路1では、まず、制御パルス生成部2が立上り及び立下りを有するパルス、例えばPWMパルスを出力する。
規範電圧波形生成部3では、立上り又は立下りのタイミングを用いて、規範波形を生成する。より具体的には、例えばRCローパスフィルタ311で折線波形を丸めた波形を生成する。
規範電圧波形追従駆動部4では、例えばフィードバック回路部41により、規範電圧波形と出力電圧波形の差分を求め、差分がなくなるようにスイッチング素子を駆動することで、規範電圧波形に追従した出力電圧波形が得られる。
これにより、ノイズ及び損失の緻密な制御が可能となる。
【0016】
本来、スイッチング回路における電磁ノイズと損失はトレードオフの関係にあり、スイッチング時の出力波形によりほぼ決まるものである。ノイズの少ない波形を実現するために、パワー素子のゲート側を調節するフィードフォワード構成を考えることができる。しかしながら、フィードフォワード構成を考えると、ゲート駆動インピーダンスを増やすことで容易にノイズを規定レベルまで低減できるが、これに伴い損失が増加するため、損失に耐えうる放熱構造をとらざるを得なくなり、装置が大型化してしまう。
また、フィードフォワード構成を考えると、出力波形はスイッチング素子の特性(ミラー効果等)に支配され、ゲート側で出力をきめ細かく制御することは困難であり、構成が複雑になる。
【0017】
実施例1のスイッチング回路1では、フィードバック構成を取る規範電圧波形追従駆動部4を備えるため、スイッチング素子の特性の影響を受けにくくし、規範電圧波形生成部3で生成した規範波形を規範電圧波形追従駆動部4に入力することにより、規範波形との差分を少なくするようにしてスイッチング素子を駆動する。これにより装置に依存しないノイズ特性と損失特性を実現する。
【0018】
さらに、実施例1のスイッチング回路1では、規範電圧波形生成部3を、汎用波形生成部31であるRCローパスフィルタ311と、固有特性追加部32であるRCツインTノッチフィルタ321で構成している。
規範電圧波形生成部3を、汎用波形生成部31であるRCローパスフィルタ311は、機器固有の特性に関係の無い汎用的に高調波が少ない規範波形を生成し(図5参照)、固有特性追加部32であるRCツインTノッチフィルタ321は、機器固有の特性に合わせて特定の周波数成分が少なくなる特性を追加する(図8参照)。
【0019】
これにより、より理想的な波形にフィードバック構成により近づけたスイッチング回路の駆動を行えるのみでなく、それぞれの機器に最適なノイズ特性及び損失特性を持たせる。言い換えると、装置に固有のノイズ伝達特性を対策した細かい制御を行う回路構成にすることができる。よって、さらに良好なノイズ特性と損失特性を実現する。
実施例1のスイッチング回路1に対して、例えば負荷5やスイッチング素子などについて複数種類に対応しなければならない装置に用いられる場合、その設計を含めた製造では、固有特性追加部32であるRCツインTノッチフィルタ321のノッチ周波数の変更のみで対応することが可能となる。
このように実施例1のスイッチング回路1は、多種の生産に非常に有利である。
【0020】
次に、固有特性を追加する作用について、さらに説明する。
図10は実施例1のRCツインTノッチフィルタ321を組み込んだスイッチング回路の回路構成における各部の信号のタイムチャートである。
図9中に示すA点の信号を図10の線100aとし、B点の信号を線100bとし、C点の信号を線100c、D点の信号を線100d、E点の信号を線100eとする。
【0021】
実施例1のスイッチング回路1では、図10に示すように、制御パルス生成部2から出力される制御パルスに対して、所定の周波数近傍の領域の通過を抑制する。これにより、制御パルス生成部2からの出力波形を、良好なノイズ特性と損失特性をもたらす波形にし、フィードバック回路部41へ出力する(図10の線100a参照)。そして、パワートランジスタM1からのモータ51(等価回路)への出力は、D点からフィードバックにおける帰還を行い(図10の線100d参照)、入力される規範波形との偏差を小さくしつつパワートランジスタM1の駆動を行なう。
これにより、図10の線100b〜100eに示すように、良好な特性を保ちつつ、負荷であるモータ51の制御を行うことができる。
【0022】
また、実施例1のスイッチング回路1では、汎用波形生成部31を図4に示すRCローパスフィルタ311で構成し、固有特性追加部32を図6で示すRCツインTノッチフィルタ321で構成することにより、両方とも、ともにRC、つまり抵抗とコンデンサのみで構成することができ、非常にコストを抑制した構成にすることができる。
【0023】
次に、効果を説明する。
実施例1のスイッチング回路にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0024】
(1)フィードバック回路部41を備える規範電圧波形追従駆動部4によりスイッチング素子を駆動して負荷を作動させるスイッチング回路1において、フィードバック回路部41を備える規範電圧波形追従駆動部4へ入力する信号波形を、予めノイズ特性と損失特性を設定した波形にして出力する規範電圧波形生成部3を備えたため、装置に依存することなく良好なノイズ特性と損失特性を実現することができる。
【0025】
(2)規範電圧波形生成部3は、組み込まれる回路装置のノイズ伝達特性に依存せずに、ノイズと損失を小さくした波形にして出力する汎用波形生成部31と、組み込まれる回路装置のノイズ伝達特性を考慮して、特性の追加加工を波形に行い出力する固有特性追加部32を備えるため、さらに良好なノイズ特性と損失特性を実現することができ、且つ多種の生産に非常に有利なスイッチング回路にすることができる。
【0026】
(3)汎用波形生成部31は、RCローパスフィルタ311で構成したため、抵抗とコンデンサのみの構成でコストを抑制でき、簡素な構造で信頼性を高めることができ、制御パルス生成部2のパルスを丸めるようにして規範波形を生成して、装置に依存することなく良好なノイズ特性と損失特性を実現することができる。
【0027】
(4)及び(5)固有特性追加部32は、RCツインTノッチフィルタ321で構成したため、抵抗とコンデンサのみの構成でコストを抑制でき、簡素な構造で信頼性を高めることができ、特定周波数の近傍における通過を抑制して、装置に依存することなく良好なノイズ特性と損失特性を実現することができる。
【実施例2】
【0028】
実施例2のスイッチング回路は、固有特性追加部を3次LCノッチフィルタで構成した例である。
構成を説明する。
図11は実施例2のスイッチング回路のブロック図である。
実施例2のスイッチング回路1では、固有特性追加部32として、3次LCノッチフィルタ322を設けている。
図12は実施例2における固有特性追加部32である3次LCノッチフィルタ322の回路構成を示す図である。
3次LCノッチフィルタ322は、信号ライン上にコンデンサC21を設け、これと並行にインダクタンスL21を設ける。そして、コンデンサC21及びインダクタンスL21の上流側とグランドの間に、直列にインダクタンスL22とコンデンサC22を設け、コンデンサC21及びインダクタンスL21の下流側とグランドの間に、直列にインダクタンスL23とコンデンサC23を設ける。
その他構成は、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0029】
作用を説明する。
実施例2では、固有特性追加部32として3次LCノッチフィルタ322を用いている。
3次LCノッチフィルタ322でも、ノッチ周波数近傍の通過を抑制するようにして、汎用波形生成部31からの波形に装置固有の特性を合わせて、所望されるノイズ特性及び損失特性を実現する規範波形を生成して、フィードバック構成の規範電圧波形追従駆動部4、例えばフィードバック回路部41へ出力する。
また、3次LCノッチフィルタ322は、コンデンサとインダクタンスのみで構成され、コストを抑制し、簡素な構成により信頼性を高くする。
【0030】
効果を説明する。
実施例2のスイッチング回路においては、上記(1)〜(3)に加えて以下の効果を有する。
(4)´固有特性追加部32は、3次LCノッチフィルタ322で構成したため、コンデンサとインダクタンスのみの構成でコストを抑制でき、簡素な構造で信頼性を高めることができ、特定周波数の近傍における通過を抑制して、装置に依存することなく良好なノイズ特性と損失特性を実現することができる。
【0031】
以上、本発明のスイッチング回路を実施例1、実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
実施例1では、負荷の例としてモータを挙げているが、照明や他の動作装置など、他のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1のスイッチング回路のブロック図である。
【図2】実施例1のスイッチング回路のブロック図である。
【図3】実施例1のスイッチング回路のブロック図である。
【図4】RCローパスフィルタの回路構成を示す図である。
【図5】RCローパスフィルタの周波数特性を示すグラフ図である。
【図6】RCツインTノッチフィルタの回路構成を示す図である。
【図7】RCツインTノッチフィルタの等価回路を示す説明図である。
【図8】RCツインTノッチフィルタの周波数特性を示すグラフ図である。
【図9】実施例1のRCツインTノッチフィルタを組み込んだスイッチング回路の回路構成を示す図である。
【図10】実施例1のRCツインTノッチフィルタを組み込んだスイッチング回路の回路構成における各部の信号のタイムチャートである。
【図11】実施例2のスイッチング回路のブロック図である。
【図12】実施例2における固有特性追加部である3次LCノッチフィルタの回路構成を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 スイッチング回路
2 制御パルス生成部
3 規範電圧波形生成部
31 汎用波形生成部
311 RCローパスフィルタ
32 固有特性追加部
321 RCツインTノッチフィルタ
322 3時LCノッチフィルタ
4 規範電圧波形追従駆動部
41 フィードバック回路部
5 負荷
51 モータの等価回路部
6 電源
100a〜100e (信号波形の状態を示す)線
C1〜C7 コンデンサ
C21〜C23 コンデンサ
D1〜D3 ダイオード
L1〜L4 インダクタンス
L21〜L23 インダクタンス
M1 パワートランジスタ
Q1〜Q6 トランジスタ
R1〜R10 抵抗
V1 電源
K1 (等価回路上の)定電流成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードバック構成部によりスイッチング素子を駆動して負荷を作動させるスイッチング回路において、
前記フィードバック構成部へ入力する信号波形を、予めノイズ特性と損失特性を設定した波形にして出力する規範電圧波形生成手段を備えた、
ことを特徴とするスイッチング回路。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング回路において、
前記規範電圧波形生成手段は、
組み込まれる回路装置のノイズ伝達特性に依存せずに、ノイズと損失を小さくした波形にして出力する汎用波形生成手段と、
組み込まれる回路装置のノイズ伝達特性を考慮して、特性の追加加工を波形に行い出力する固有特性追加手段と、
を備えることを特徴とするスイッチング回路。
【請求項3】
請求項2に記載のスイッチング回路において、
前記汎用波形生成手段は、ローパスフィルタで構成したことを特徴とするスイッチング回路。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のスイッチング回路において、
前記固有特性追加手段は、ノッチフィルタで構成したことを特徴とするスイッチング回路。
【請求項5】
請求項2又は請求項3に記載のスイッチング回路において、
前記固有特性追加手段は、ツインT型フィルタで構成したことを特徴とするスイッチング回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−16998(P2009−16998A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174011(P2007−174011)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】