説明

ステッチングによるフレキシブル回路の接続

複数のフレキシブル・プリント回路(FPC)タグを接続する方法が説明される。本手段は、電子回路(14、16)が、フレキシブル基板(30、32)の一方の側面にプリントされるなどして付着される所、および2つのこのような基板の回路が電気的に接続されることが必要とされる所に適している。この方法では、ミシン、ステッチまたは刺繍機が、向き合わされた導電性の表面を引張力によって電気的に連続して保持するために使用される。本手段の変形形態では、導電性の糸、ワイヤなどの材料が、2つ以上のこのようなFPCタグの当該導電性の表面の間に導電性のバイアを作成するために使用される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル・プリント回路(FPC)の複数の層を接続する、およびより具体的にはそれらの各回路間の安定な電気的連続性を助長するための手段に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、ポリイミド、コート紙、セルロース・ベースで充填された紙、プラスチック・ベースの(シリカ充填ポリエチレン)紙などのフレキシブル基板の表面上に、プリントなどして実装されたフレキシブル電子回路が、電子部品の組立てのためにますます使用されるようになった。導電性のインクを使用するリソグラフィ・プリントは、コスト効果があり、広く使用されている。フレキシブル「タグ」によって、電子構成部品が最小の空間内で互いに取り付けられ、プリントされたトレース線または回路によって接続される。基板の可撓性によって、FPCタグがそれらの電子的機能に悪影響を与えることなく、それらが変形される状況でも使用することができる。
【0003】
フレキシブル基板の使用は多くの利点を与えるが、問題も生じさせる。FPCの複数の層を、それらの各導電性経路の安定した電気的接続性を維持してどのようにして接続することができるのか。この問題は、導電性経路がフレキシブル基板の一方の表面上にプリントされるということによって悪化する。また、様々な回路が、異なる導電性インクなどの導電性素材(銅、アルミニウム、銀、その他の導体)、および様々な材料(純金属の層、様々な溶媒内での導体のコロイド懸濁液、ポリマー基質内に懸濁された導体など)内の様々な素材を含む。また、このような様々な導体は、様々な膨脹係数、温度、湿度の関数としての様々な抵抗の変化や変形(たとえば曲げおよび折り曲げ)下で、電気的特性が様々に変化する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
剛性のプリント回路基板(PCB)は通常、バイアによって電子的に接合される。バイアはPCBを通して穿孔されるか、あるいは切削された小さな穴である。その穴を通して導電性物質の連続的な層が流れるか、堆積される。FPCが薄いこと、およびフレキシブル基板が変形されたときに中実の導体は亀裂または破壊することがあるため、バイアは、FPCの層を接合するためには有用ではない。リベット留めまたはステープル留めがこの目的のために使用されるが、コストがかかり、高速の生産方法には適さない。
【0005】
提案される発明は、導電性の糸またはワイヤを使用するか、使用しないでステッチング(縫製または刺繍)技術を使用して、FPCの複数の層を接合する手段である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2つ以上のFPCの層を接合するために高速の商業用ミシンまたは刺繍機を使用する。
【0007】
本発明の一態様によると、他のタグ上の対応する回路との電気的に安定な接続を必要とする1つまたは複数の導電性の回路をそれぞれが有する2つ以上のFPCタグを接続するための方法が、説明される。
【0008】
単一のまたは複数の針のミシンまたは刺繍機が、本解決法を実施するために使用されることができる。
【0009】
縫製は、チェーン・ステッチング(ISO#101、401)、ロック・ステッチング(ISO #301)またはジグザグ・バー・タッキング(ISO #304)を含むがそれに限定されない、いずれかのステッチ方法で行われてもよい。
【0010】
ミシンまたは刺繍機は、必要に応じて、非導電性の糸などの材料か、導電性の糸またはワイヤのいずれかを使用してもよい。
【0011】
本発明の他の態様および特徴は、添付の図面とともに好ましい実施形態の以下の詳細な説明の検討から当業者に容易に明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、図面を参照にした以下の説明からさらに理解されるであろう。
【0013】
図1から6は、その一方の表面に一連の導電性のトレース線がプリントされている、フレキシブル・カードボード基板に取り付けられているFPCタグを示している。図面は、プリントなどの手段によって導電性経路がその表面上に実装されている、いずれのタイプのフレキシブル基板を等しく記述している。
【0014】
図1を参照すると、2つのフレキシブル基板が示されている。小さいほうは、その表面の一方の上に2入力/出力(i/o)接続タブ(14、16)を備えるFPCタグ(12)である。大きいほうは、その一方の表面上に一連の導電性のトレース線(20)が設けられた、フレキシブル・カードボード基板(18)である。これは、銀などの導電性のインクをプリント、箔押しすること、金属堆積またはその他のいずれかの手段による。
【0015】
FPCタグ(12)は、タグ(12)のi/oタブ(14、16)が、カードボード(18)上のプリントされたトレース線(20)と電気的に連続されるような方法で接続することを必要とする。
【0016】
フレキシブル基板の変形が、接触点でせん断力を発生させることがあり、システムの電気的な特性に悪影響を与えるおそれがあるため、接続の強度は重要である。
【0017】
位置合わせプロセスの精度もまた、大量生産環境でのFPCの接続を容易にするために重要である。
【0018】
図2では、FPCタグ(12)とカードボード(18)を、それぞれの導電性表面が向き合うように並べて、タグのi/oタブ(14、16)がカードボード上の対応する導電性のトレース線(20)と位置合わせされるように配置させる。
【0019】
図3は、導電性の表面が向き合わされておらず、そのため、導電性の表面の間に誘電性のバリア(カードボード)が挟まれている、FPCタグ(12)とプリント・カードボード基板(18)の断面図を示している。
【0020】
図2、3は、3つ以上のFPCタグまたはその他のフレキシブル基板の接続に影響を及ぼす限界を示している。3つ以上の導電性の表面を向き合わせることはできない。3つ以上のFPCタグでは、必然的に誘電性のバリアがいくつかのタグの間に挟まれる。
【0021】
図4では、一般的なシャトル・フック・ボビン・ミシンが、FPCタグ(12)をプリント・カードボード基板(18)と接続するために使用され、ここでは導電性の表面は向き合わされている。針(22)が、FPCタグ(12)とカードボード基板(18)を貫通し、バイアを作成する。針(22)が、連結された糸(24)を針とともにボビン(28)内にある別の糸(26)に運び、機械が動いて事前設定された引張力が付加され、プロセスが繰り返される。このようにして、ステッチが、接近されたi/oタブ(14、16)と適切な導電性のインク・トレース線(20)を電気的に連続させて固定する。
【0022】
針は、導電性のi/oタブと電気トレース線を通過してもしなくてもよい。
【0023】
この方法は、いかなる方法のミシンまたはデバイスによっても達成される。
【0024】
本発明の変形形態では、導電性の糸またはワイヤが、ステッチ・プロセスで使用されてもよい。ステッチが、当該基板上のそれぞれの導電性経路を通過する場合、2つの導電性表面の間に引張力を発生させる直接的な物理的接触を与え、基板の間に連続的な電気経路を作成するという追加の利点を有する。導電性の糸またはワイヤの使用は、以下の図7で説明するように、バー・タッキング縫い(ISO #304)のためにより適している。
【0025】
図5は、チェーン・ステッチング(34)によってプリント・カードボード基板(32)に接続されたFPCタグ(30)を示している。この例では、基板の導電性の表面は向き合わされている。
【0026】
図6は、非導電性の糸によるステッチの連続的な列(36)が、その導電性の表面が向き合わされた2つの基板を横切る複数対の導電性経路を接続するためにどのように使用できるかを示している。ジグザグなどの方法のステッチの単一の列が、単一の機械操作で当該接続ペアを横切って走ることができ、組立てプロセスを単純化し、大量生産に適する。
【0027】
FPCの間の電気的な接続が頑丈であることを確実にするために、導電性の糸、ワイヤなどの導電性の材料で接続部をステッチすることが望ましい。導電性の糸またはワイヤが使用される所では、連続的なジグザグ縫いは、電気的に絶縁された接点のペアを短絡させることがある。
【0028】
導電性の糸またはワイヤによるバー・タッキング(ISO #304)などのその場で繰り返すステッチ(38)を、図7に示すように、導電性経路のペアまたは組を接合するために使用できる。
【0029】
導電性の糸またはワイヤの使用は、直接的な導電性経路がそれぞれの導電性経路であるとすれば、バー・タッキング縫いが当該経路を貫通している所のFPCまたはその他の基板の導電性経路の間の最大の電気的接続性を確実にする。
【0030】
図8に見られるように、導電性の糸またはワイヤ(40)の使用はまた、導電性の表面(44)を向き合わせることができない3つ以上のFPC(42)の接続を可能とする。ステッチが、その方向がそれらを誘電体として作用させるいずれかの基板を通る導電性のバイア(46)を形成する。
【0031】
本発明の特定の実施形態が図示され説明されたが、本発明の実際の範囲を逸脱することなく、変更および修正がこのような実施形態に対して行われてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】接続を必要とするフレキシブル・カードとFPCタグを示すブロック図である。
【図2】それぞれの導電性の表面が向き合わされている、接続されるカードボードとFPCタグを示す概略断面図である。
【図3】それぞれの導電性の表面が向き合わされていない、接続されるカードボードとFPCタグを示す概略断面図である。
【図4】向き合わされた導電性の表面を備えるカードとFPCタグを接合する縫製デバイスの概略断面図である。
【図5】チェーン・ステッチング(ISO #101、401)によって接続された向き合わされた導電性の表面を備えるカードとFPCタグの概略断面図である。
【図6】非導電性の糸を使用したジグザグ縫いの連続的な列によって接続されている2組のi/oタブとそれらの対応する導電性のトレース線を示す図である。
【図7】バー・タッキング縫い(ISO #304)によって個々に接続された2組のi/oタブとそれらの対応する導電性のトレース線を示す図である。
【図8】導電性のバー・タッキング縫い(ISO #304)によって接続されたFPCの3つの層の概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の非導電性のフレキシブル基板を用意するステップと、
前記基板の一方の少なくとも1つの導電性経路を、前記基板の他方の少なくとも1つの導電性経路と電気的に接触させるように、前記基板を並べて配置させるステップと、
前記基板を、互いに電気的に接触している前記導電性経路を維持するように互いに縫製するステップとを含む、
各導電性経路の間の電気的連続性が必要とされる所で、少なくとも1つの導電性経路を有するフレキシブル・プリント回路(FPC)の2つ以上の層を接続する方法。
【請求項2】
前記縫製するステップが、ステッチ、縫製または刺繍機械またはデバイスによって行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2つのFPCタグの向き合わされた導電性の表面を引張力によって導電的に接触させて保持するために非導電性の糸が使用される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
導電性の糸、ワイヤなどの材料が、各FPCの当該導電性の表面を通って繰り返しステッチすることによって、2つ以上の向き合わされたまたは向き合わされていないFPCタグの導電性の表面の間に導電性経路またはバイアを作成するために使用される請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
2つ以上の非導電性のフレキシブル基板を用意するステップと、
前記基板の一方が前記基板の他方の少なくとも1つの導電性経路に接触し、誘電体として作用するように、前記基板を並べて配置するステップと、
前記一方の基板の少なくとも1つの導電性経路と前記他方の基板の少なくとも1つの導電性経路の間に導電性経路を作成するように、導電性の糸、ワイヤなどの材料を使用して前記基板を互いに縫製するステップとを含む、
各導電性経路の間の電気的連続性が必要とされる所で、少なくとも1つの導電性経路を有するフレキシブル・プリント回路(FPC)の2つ以上の層を接続する方法。
【請求項6】
前記縫製が、チェーン・ステッチング、ロック・ステッチング、ジグザグ縫いを含むグループから選択される請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−528842(P2006−528842A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521355(P2006−521355)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【国際出願番号】PCT/CA2004/001081
【国際公開番号】WO2005/013652
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(504397295)インテリジェント・デバイシーズ・インコーポレーテッド (3)
【Fターム(参考)】