説明

ステージ装置及びそれを有する露光装置

【課題】迅速、低衝撃かつ低回転力で停止可能なステージ装置及びそれを有する露光装置を提供する。
【解決手段】リニアモータ4、5によって可動部2を移動し、リニアモータ4、5が備える少なくとも一つのコイル4C1U〜Wを含む閉回路を構成してブレーキを働かせることによって可動部2を減速させるステージ装置は、閉回路内においてコイル4C1U〜Wに接続可能で、抵抗値の異なる複数の抵抗R1〜R3と、可動部2の移動速度を検出する速度検出部9と、速度検出部9の検出結果に基づいてコイル4C1U〜Wと複数の抵抗R1〜R3とを接続又は切断する切換スイッチ27と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステージ装置及びそれを用いた露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
露光装置は、原版(レチクル又はマスク)とウエハや液晶ディスプレイなどの基板をそれぞれ専用のステージ装置に可動部として搭載し、可動部を駆動及び位置決めすることによって原版のパターンを基板に露光する。ステージ装置は、リニアモータを使用し、停電時、非常時、位置計測の異常時、その他の異常発生時に迅速に停止することが規格上又は安全上必要となる。しかし、制動時に可動部に過大な制動力や回転力(ヨーイング)が加わると可動部の摺動部が損傷するおそれがある。
【0003】
そこで、特許文献1は、リニアモータのコイルを含む閉回路を構成してダイナミックブレーキを働かせるステージ装置に、コイルに流れる電流を制限する制限手段を設けている。そして、制限手段は、抵抗値の異なる複数の抵抗と、その中からコイルに接続する抵抗を選択する選択器を有している。選択器は可動部の位置に応じてコイルに流れる電流を異ならせている。
【特許文献1】特開2006−237069号公報(請求項1、4、段落0030−0034)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、特許文献1は、ステージ装置の制動力と回転力を抑えるために、可動部の位置に応じてコイルに接続される抵抗値を変更している。しかし、ステージ装置の様々な動作状態に応じて制動力と回転力をより効果的に抑えるためには、特許文献1の制動制御を改良する余地がある。
【0005】
本発明は、迅速、低衝撃かつ低回転力で停止可能なステージ装置及びそれを有する露光装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としてのステージ装置は、リニアモータによって可動部を移動し、前記リニアモータが備える少なくとも一つのコイルを含む閉回路を構成してブレーキを働かせることによって前記可動部を減速させるステージ装置において、前記閉回路内において前記コイルに接続可能で、抵抗値の異なる複数の抵抗と、前記可動部の移動速度を検出する速度検出部と、前記速度検出部の検出結果に基づいて前記コイルと前記複数の抵抗とを接続又は切断する切換スイッチと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、迅速、低衝撃かつ低回転力で停止可能なステージ装置及びそれを有する露光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明のステージ装置及びそれを有する露光装置について説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、実施例1のステージ装置の平面図である。ステージ装置は、リニアモータによって可動部を移動し、リニアモータが備える少なくとも一つのコイルを含む閉回路を構成してダイナミックブレーキを働かせることによって可動部を減速させるステージ装置である。ダイナミックブレーキは、リニアモータの端子を短絡することによって制動力を加えるブレーキである。
【0010】
図1に示すステージ装置は、Y方向に移動する可動部2と、X方向に移動する可動部6とを有するXYステージであり、可動部は二次元的に移動することができる。このため、露光装置の基板を移動するステージ、例えば、後述するウエハステージ、に好適である。しかし、本発明は、一次元方向に移動するステージにも適用可能であり、かかるステージは露光装置の原版を移動するステージ、例えば、後述するレチクルステージに好適である。なお、いずれのタイプのステージもZ軸方向に移動することができるが、本実施例では、Z方向(又は光軸方向)に垂直な平面における移動に着目し、Z方向の移動についての説明は省略する。
【0011】
定盤(ベース)1上に、Y可動部2を気体軸受3によって支持する。気体軸受3は、Y可動部2の自重を支持し、Y軸方向にY可動部2が移動する範囲に亘って延びている。定盤1は、XY平面を規定すると共にステージ装置の主要部を支持する剛体部材である。Y可動部2は、それに搭載される対象物をY方向に位置決めする移動体である。
【0012】
定盤1には可動コイル式三相リニアモータ4の固定磁石4M(固定子)を取り付け、可動部側には複数(この例では2個)の可動子4C1、4C2が取り付けてある。また、Y可動部2を挟んで反対側にも、同じ三相リニアモータ5(固定子5M、可動子5C1、5C2)が取り付けてある。一対の固定磁石4M及び5MはY方向に平行に延びるレール部材であり、Y可動部2をY方向に案内する。リニアモータ4、5は複数のコイルと磁石を有し、いわゆる多相型リニアモータとなっている。本実施例では、固定子を磁石とし、可動子をコイルとしているがこれは逆でもよい。磁石はN極とS極を有し、磁石と対面しているコイルに電流を流すことによって、ローレンツ力を発生して推力を得る。なお、可動コイル式三相リニアモータ4は、可動コイル式二相リニアモータとしてもよい。また、三相リニアモータ5の可動子の数は限定されない。
【0013】
Y可動部2には、その移動方向(Y方向)と直交する方向(X方向)に移動するX可動部6と、X可動部6を駆動するX可動部用モータ7を搭載している。X可動部6は、それに搭載される対象物をX方向に位置決めする移動体である。なお、モータ7の構成は特に限定されず、特許文献1のようなリニアモータであってもよい。
【0014】
また、定盤1上には、X方向の位置計測用のレーザ干渉計8と、Y方向の位置計測用のレーザ干渉計9が固定されている。また、可動部6上には、X方向の位置計測用のミラー10とY方向の位置計測用のミラー11を備えている。ミラー10は、レーザ干渉計8から照射される計測光を反射面で−X方向に反射するバーミラーであり、ミラー11は、レーザ干渉計9から照射される計測光を反射面で+Y方向に反射するバーミラーである。レーザ干渉計8とミラー10は、X可動部6のX方向の位置を検出する位置検出部として機能する。レーザ干渉計9とミラー11は、Y可動部2のY方向の移動速度を検出する速度検出部として機能する。レーザ干渉計8、9による検出結果は後述する上位コントローラ12に送られる。なお、後述するように、Y可動部4の移動速度とX可動部6の位置(又は推力比率)を演算するのは上位コントローラ12であるため、上位コントローラ12を位置検出部、速度検出部に含めて観念してもよい。
【0015】
図3は、Y可動部2の制御ブロック図である。
【0016】
上位コントローラ12は、レーザ干渉計8、9による検出結果と目標値に基づいて、可動部2、6の駆動を制御する。具体的には、リニアモータ4、5のコイルに流す電流を制御(位置制御・速度制御・加速度制御・同期制御)したり、モータ7の動作を制御したりする。
【0017】
電源ラック13は、電源コントローラ14、モータ電源15乃至18、ブレーキコントローラ(制御部)19、ブレーキ回路20乃至23、バックアップ電源24を有する。ブレーキ回路21乃至23もブレーキ回路20と同じ構成であるため、以下、ブレーキ回路20を中心に説明する。
【0018】
ブレーキ回路20は、ブレーキ主スイッチ25、複数の抵抗R1、R2及びR3を有する抵抗器26、切換スイッチ27を有する。ブレーキ主スイッチ25が閉じることにより、可動子4C1内のコイル4C1U(U相)、4C1V(V相)、4C1W(W相)を短絡する閉回路が構成される。
【0019】
ブレーキ主スイッチ25は、コイル4C1U(U相)、4C1V(V相)、4C1W(W相)を含む閉回路を構成する閉回路構成スイッチとして機能する。ブレーキ主スイッチ25の開閉はブレーキコントローラ19によって制御される。
【0020】
本実施例は3つの抵抗R1、R2及びR3を抵抗器26に設けているが、本発明は複数の抵抗の数を限定するものではない。複数の抵抗R1、R2及びR3は閉回路内においてコイル4C1U(U相)、4C1V(V相)、4C1W(W相)に接続可能で抵抗値が異なる。本実施例では、R1<R2<R3の関係が成立するが、これに限定されるものではない。閉回路内に抵抗器26を入れることで、ブレーキ時の可動子コイルに発生する逆起電力を、抵抗器26で熱エネルギーとして消費して制動力を低減することができる。尚、ブレーキ回路20は、電源15内に構成することも可能であり、また、電源ラック13の外に構成することも可能である。
【0021】
切換スイッチ27は、レーザ干渉計8、9の検出結果に基づいてコイルと複数の抵抗R1乃至R3とを接続又は切断する。即ち、切換スイッチ27は、複数の抵抗R1乃至R3のいずれか一つを対応するコイルに接続するか、いずれの抵抗も対応するコイルに接続しない。なお、切換スイッチ27の動作の詳細については、表1を参照して後述する。
【0022】
正常にステージ装置が動作している時には、上位コントローラ12から、ブレーキ開放信号28Aがブレーキコントローラ19に与えられ、ブレーキ主スイッチ25は開放され、閉回路にはならないので、ブレーキが働かない。次に、上位コントローラ12から、リニアモータ4用の電流指令29、リニアモータ5用の電流指令30が、電源コントローラ14に与えられる。これにより、電源15乃至18から可動子4C1、4C2、5C1、5C2に電流が供給され、Y可動部2が駆動する。
【0023】
上位コントローラ12は、レーザ干渉計9の現在位置からY可動部2の現在の移動速度31を演算する。また、レーザ干渉計8の現在位置からY可動部のX方向の重心位置(図2に示す6a)を求め、Y可動部に回転力(ヨーイング)が働かないようにするための、2本のリニアモータの推力比率32を演算する。上位コントローラ12は、移動速度31と推力比率32を、ブレーキコントローラ19に伝達する。推力比率32は、全体推力に対するリニアモータ4の推力の比率を示す。
【0024】
ブレーキ回路20乃至23が働く場合は、停電時やレーザ干渉計9に異常が発生した時などである。停電時においても、電源ラック13が有するバックアップ電源24によってブレーキコントローラ19は動作可能であり、Y可動部2が停止するまでの間は、ブレーキを働かせることが可能である。また、ブレーキコントローラ19内の記憶部33に、過去の移動速度31、推力比率32をある一定時間保存させる。これにより、停電時、レーザ干渉計の異常時においても、記憶部33の内容を現在の状態(移動速度31、推力比率32)として認識させて、ブレーキをかけることができる。記憶部33は、EEROMなどから構成することができる。
【0025】
ブレーキ動作時は、まず、ブレーキコントローラ19にブレーキ信号28Bが伝達される。ブレーキコントローラ19は、移動速度31、推力比率32に応じて、切換スイッチ27を操作して複数の抵抗R1乃至R3の一つを選択すると共に、ブレーキ主スイッチ25を閉じる。ブレーキ回路21乃至23に対しても同じ動作となる。これらにより、ブレーキが働き、Y可動部2は減速して停止する。
【0026】
予めブレーキコントローラ19には、想定される移動速度、想定される推力比率に対するブレーキ設定34(ブレーキ回路20、21、22、23内のブレーキ主スイッチの開閉状態、抵抗切換スイッチの設定)を、記憶部33に保存しておく。ブレーキ設定34は、上位コントローラ12又はその他の場所にある記憶部に格納されていてもよい。
【0027】
表1はブレーキ設定34の一例である。移動速度31は、Y方向のY可動部2の移動速度であり、例えば、「1」は低速、「2」は中速、「3」は高速を表す。推力比率32は、X方向のX可動部6の位置を表し、例えば、「30」は図1において左寄り、「50」は中央、「70」は図2に示すように右寄りを表す。Sw1はブレーキ主スイッチ25を表し、Sw2は切換スイッチ27を表す。「−」はいずれの抵抗も選択しないことを表す。Sw1がOFFの場合にはブレーキ回路が働かない。
【0028】
各ブレーキ回路内に接続する抵抗は、必要な制動力、リニアモータの推力比率、Y可動部2の重量、移動速度31、推力比率32から求めることができる。ブレーキ設定34のとおりに、各ブレーキ回路で抵抗が選択されて、ブレーキがかかるので、どのような移動速度であったとしても、所望した値に近い制動力でブレーキをかけることができる。
【0029】
【表1】

【0030】
特許文献1では、推力比率32(又はX可動部6の位置)のみを考慮して抵抗を選択しており、Y可動部2の移動速度を考慮していなかった。しかし、移動速度が小さければ制動時に可動部の摺動部に加わる制動力は小さく、移動速度が大きければ制動時に可動部の摺動部に加わる制動力は大きくなる。本実施例は、かかる制動力の相違を考慮して抵抗を選択している。
【0031】
小さい抵抗値を有する抵抗を選択すると抵抗による熱消費が小さいためより大きな制動力が残ることになる。また、大きな抵抗値を有する抵抗を選択すると抵抗による熱消費が大きいため、制動力はより小さくなる。
【0032】
移動速度31が低速(「1」)の場合には制動力は小さいから、例えば、X可動部6が中央にある(「50」)場合に、抵抗R1を選択して制動力を確保して迅速な制動を図っている。一方、移動速度31が高速(「3」)の場合には制動力は大きいから大きな制動力を残すと可動部の摺動部が損傷するおそれがある。そこで、例えば、X可動部6が中央にある(「50」)場合に、抵抗R1よりも大きな抵抗R2を選択して制動力を低減し、安全性を確保している。
【0033】
また、図2のように、Y可動部2の重心位置6aが、2本の固定子4M、5Mの中心位置からずれている場合は、推力比率32に従って、リニアモータ4とリニアモータ5で異なる抵抗を選択することができる。これにより、2本のリニアモータの制動力に差を設けることができ、ブレーキ時にY可動部2に働く回転力(ヨーイング)を抑制できる。例えば、移動速度31が高速(「3」)の場合で、図2に示すように、推力比率が右寄り(「70」)の場合、コイル4C1に抵抗R3を接続し、コイル5C1に抵抗R3を接続している。また、コイル4C2と5C2には抵抗が接続されていない。しかし、これは単なる例であり、左右の固定子4M、5Mにおいて抵抗に接続されるコイルは対角関係のペア(例えば、コイル4C1と5C2のペア)であってもよい。
【実施例2】
【0034】
図4は、実施例2のY可動部2の制御ブロック図である。
【0035】
実施例2は、実施例1の構成に、ある一定時間(制御周期)内で、ブレーキ主スイッチ25の開閉を繰り返すことができる機能を加えている。ブレーキ主スイッチ25の開閉時間は、ある一定時間(制御周期)T内における、開時間To、閉時間Tcを設定する。ブレーキ主スイッチ25を開閉するタイミングは、ブレーキコントローラ19が制御する。
【0036】
ブレーキ動作時は、まず、ブレーキコントローラ19にブレーキ信号28Bが伝わる。ブレーキコントローラ19は、移動速度に応じて、切換スイッチ27を操作して接続する抵抗を選択する。また、ブレーキコントローラ19は、移動速度31、推力比率32に応じて、必要なブレーキ主スイッチ25の開閉時間を選択し、ブレーキ主スイッチ25の開閉を繰り返す。ブレーキ回路21、22、23に対しても同じ動作となる。これらにより、ブレーキが働き、Y可動部2は減速して停止する。
【0037】
予めブレーキコントローラ19には、想定される移動速度、想定される推力比率に対するブレーキ設定34(各ブレーキ回路20乃至23内の切換スイッチ27の設定と、ブレーキ主スイッチ25の開閉時間)を、記憶部33に保存しておく。
【0038】
表2はブレーキ設定34の一例である。移動速度31は、Y方向のY可動部2の移動速度であり、例えば、「1」は低速、「2」は中速、「3」は高速を表す。推力比率32は、X方向のX可動部6の位置を表し、例えば、「30」は図1において左寄り、「50」は中央、「70」は図2に示すように右寄りを表す。Sw1はブレーキ主スイッチ25を表し、Sw2は切換スイッチ27を表す。Tは制御周期(スイッチング周期)であり、Tcは制御周期T内のブレーキ主スイッチ25の閉時間である。各ブレーキ回路内に接続する抵抗は、必要な制動力、リニアモータの推力比率32、Y可動部2の重量、移動速度31から決定することができる。
【0039】
表2では、表1と異なり、移動速度が低速(「1」)の場合には抵抗R1を選択し、中速(「2」)の場合には抵抗R2を選択し、高速(「3」)の場合には抵抗R3を選択している。このように、本実施例では、移動速度に応じて切換スイッチ27が選択する抵抗が固定されている。しかし、これは単なる例であり、表1のように推力比率32に応じて抵抗を区別してもよい。
【0040】
【表2】

【0041】
抵抗器だけでの制動力の制御(実施例1)に、ブレーキ主スイッチ25の連続開閉機能を追加することで、実施例1よりも制動力の制御性能を高めることができ、所望した制動力により近い制動力で、ブレーキをかけることができるようになる。
【0042】
また、図2に示すように、Y可動部2の重心位置6aが、2本のリニアモータの中心位置からずれている場合は、推力比率32に従って、リニアモータ4とリニアモータ5でブレーキ主スイッチの開閉時間を異なる設定とする。これにより、2本のリニアモータの制動力に差を設けることができ、ブレーキ時にY可動部2に働く回転力(ヨーイング)を抑制できる。
【0043】
実施例1及び2のステージ装置により、停電時、非常停止時その他の異常が発生した時においても、その際の可動部の移動速度に拘らず、ブレーキをかけて、ステージを減速させ、停止させることができる。これにより、ステージ装置が損傷する可能性が低くなる。リニアモータが可動部を挟んで二対で配置される場合においては、可動部の重心位置に応じて、2本のリニアモータに働く制動力を異ならせてブレーキをかけることができる。このため、可動部に働く回転力(ヨーイング)を抑制することができる。この結果、ステージ装置の損傷の可能性が低くなる。
【実施例3】
【0044】
以下、上述のステージ装置を適用可能な露光装置について説明する。露光装置500は、図5に示すように、照明装置501、レチクルを搭載したレチクルステージ502、投影光学系503、ウエハを搭載したウエハステージ504と、を有する。510は定盤であり、図3及び図4の定盤1に相当する。露光装置は、レチクルのパターンをウエハに露光する。本実施例の露光装置は、ステップアンドリピート方式を使用するが、本発明は、露光装置がステップアンドスキャン方式を使用することを許容する。
【0045】
照明装置501は回路パターンが形成されたレチクルを照明し、光源部と照明光学系とを有する。光源部は、例えば、光源としてレーザや水銀ランプを使用する。レーザは、波長約193nmのArFエキシマレーザ、波長約248nmのKrFエキシマレーザ、波長約153nmのFレーザなどを使用する。照明光学系はマスクを照明する光学系であり、レンズ、ミラー、ライトインテグレーター、絞り等を含む。
【0046】
投影光学系503は、屈折光学系、反射屈折光学系(カタディオプトリック光学系)、反射光学系などを使用し、レチクルパターンをウエハに投影する。
【0047】
実施例1又は2のステージ装置はレチクルステージ502やウエハステージ504に適用することができる。これにより、安全性と信頼性が高い露光装置を提供することができる。なお、レチクルステージ502に適用する場合には、上述したように、例えば、Y方向にのみ移動することになる。この場合には、表1及び表2において、推力比率32は、例えば、50で固定される。
【実施例4】
【0048】
次に、図6及び図7を参照して、上述の露光装置500を利用したデバイス製造方法の実施例を説明する。ここで、図6は、半導体デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、あるいは液晶パネルやCCDセンサ等)の製造を説明するためのフローチャートである。
【0049】
ステップ1(回路設計)では、半導体デバイスの回路設計を行う。ステップ2(レチクル製作)では、設計した回路パターンを形成したレチクルを製作する。一方、ステップ3(ウエハ製造)では、シリコン等の材料を用いてウエハを製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は、前工程と呼ばれ、上記用意したレチクルとウエハを用いて、リソグラフィー技術によってウェハ上に実際の回路を形成する。次のステップ5(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップ4によって作製されたウェハを用いて半導体チップ化する工程であり,アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)では,ステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ7)される。
【0050】
図7は、図6に示したステップ4のウエハプロセスの詳細なフローチャートである。ステップ11(酸化)では、ウエハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)では、ウエハ表面に絶縁膜を形成する。ステップ13(電極形成)では、ウエハ上に電極を蒸着等によって形成する。ステップ14(イオン打ち込み)ではウエハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)ではウエハに感光材を塗布する。ステップ16(露光)では、露光装置500によってマスクの回路パターンをウエハに露光する。ステップ17(現像)では露光したウエハを現像する。ステップ18(エッチング)では,現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)では,エッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。
【0051】
これらのステップを繰り返し行うことによって、ウエハ上に多重に回路パターンが形成される。本実施形態の製造方法は、迅速、低衝撃かつ低回転力で停止可能なステージ装置をレチクルステージ又はウエハステージに提供することによって、従来よりも製造の安全性と信頼性を高めている。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1のステージ装置の平面図である。
【図2】図1に示すX可動部が右方に移動した様子を示す平面図である。
【図3】図1に示すステージ装置のY可動部の制御ブロック図である。
【図4】実施例2のステージ装置のY可動部の制御ブロック図である。
【図5】実施例1又は2のステージ装置を適用可能な露光装置の断面図である。
【図6】図5に示す露光装置を使用したデバイス製造方法のフローチャートである。
【図7】図6に示すステップ4の詳細を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
2 Y可動部
・ リニアモータ
4C1、4C2、5C1、5C2 可動子
4C1U〜W コイル
6 X可動部
8 レーザ干渉計(位置検出部)
9 レーザ干渉計(速度検出部)
12 上位コントローラ
19 ブレーキコントローラ(制御部)
25 ブレーキ主スイッチ(閉回路構成スイッチ)
26 抵抗器
27 切換スイッチ
33 記憶部
R1、R2、R3 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リニアモータによって可動部を移動し、前記リニアモータが備える少なくとも一つのコイルを含む閉回路を構成してブレーキを働かせることによって前記可動部を減速させるステージ装置において、
前記閉回路内において前記コイルに接続可能で抵抗値の異なる複数の抵抗と、
前記可動部の移動速度を検出する速度検出部と、
前記速度検出部の検出結果に基づいて前記コイルと前記複数の抵抗とを接続又は切断する切換スイッチと、
を有することを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
前記速度検出部が検出する前記可動部の移動方向と直交する方向における、前記可動部の位置を検出する位置検出部を更に有し、
前記切換スイッチは、前記速度検出部と前記位置検出部の検出結果に基づいて前記複数の抵抗の一つを選択することを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
【請求項3】
前記閉回路を構成する閉回路構成スイッチと、
前記閉回路構成スイッチを開閉するタイミングを制御する制御部と、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
【請求項4】
前記可動部の位置を検出する位置検出部と、
前記可動部の前記速度と前記位置とを記憶する記憶部と、
前記記憶部が記憶した前記可動部の前記速度と前記位置に基づいて、前記切換スイッチは、前記複数の抵抗の一つを選択することを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
【請求項5】
光源からの光を利用して原版のパターンを基板に露光する露光装置であって、
請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載のステージ装置を用いて前記原版又は前記基板を駆動することを特徴とする露光装置。
【請求項6】
請求項5に記載された露光装置を使用して基板を露光するステップと、
露光された前記基板を現像するステップと、
を有することを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−164422(P2009−164422A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1557(P2008−1557)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】