説明

スピアバルブ検査装置

【課題】搬送されている容器を停止させることなくその容器のスピアバルブを検査でき、またそのスピアバルブのパッキンの破損を直接検出することが可能なスピアバルブ検査装置を提供する。
【解決手段】ビール樽100に装着されたスピアバルブ101の異常の有無を判定するスピアバルブ検査装置10において、ビール樽100を所定の搬送経路に沿って搬送する搬送コンベア11と、搬送コンベア11にて搬送されている容器のスピアバルブの画像を取得するカメラ13と、カメラ13が取得したスピアバルブの画像に基づいてそのスピアバルブの異常の有無を判定する異常判定装置20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール樽等の飲料容器に装着されたスピアバルブの異常の有無を検査するスピアバルブ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビール樽等の飲料容器には、その飲料容器から飲料を取り出すためにスピアバルブと呼ばれる開閉可能な弁装置が取り付けられている。一般にこのように飲料容器は、飲料の製造工場で飲料が充填された後に出荷され、料飲店などにおいて飲料の注出が終了してほぼ空になると飲料の製造工場に戻されて洗浄された後、再度飲料が充填される。すなわち、この飲料容器は複数回繰り返して再利用される。このように再利用する際、スピアバルブは飲料容器から一旦取り外され、その後再度飲料容器に装着されている。
【0003】
スピアバルブは飲料容器を密封するための複数のパッキンを有しており、これらパッキンは消耗品のため定期的に交換されている。しかしながら、使用態様によってはこの交換時期よりも早くパッキンが破損するおそれがある。また、一般にスピアバルブは飲料容器の口金部にねじ込むことによって装着されるが、この装着時にスピアバルブのパッキンがねじ山等に噛み込まれて破損するおそれがある。このようにスピアバルブのパッキンが破損するとシール効果が損なわれ、飲料容器から飲料やガスが漏れる原因となる。
【0004】
このようなスピアバルブの異常の有無を検査する装置として、搬送中の飲料用樽を検査位置にて停止させ、一対の発光部と受光部とによってその飲料用樽のスピアバルブの天面近傍の空間をその天面とほぼ平行に走査し、そのときの受光部の受光量に基づいてスピアバルブのパッキンの異常の有無を検査する装置が知られている(特許文献1参照)。また、スピアバルブの出口付近の形成される空間に検知用溶媒や希釈液を注液し、その注液した液体の電気伝導度に基づいてスピアバルブからの漏れの有無を検査する装置が知られている(特許文献2、3参照)。その他、スピアバルブからの漏れの有無をU字管内に封入した液体にて検査する装置(特許文献4参照)、スピアバルブの出口に空間が形成される検査ヘッド部をスピアバルブと当接させ、その空間のガス濃度に基づいてスピアバルブからの漏れの有無を検査する装置が知られている(特許文献5、6参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−55633号公報
【特許文献2】特開平07−35638号公報
【特許文献3】特開昭62−52425号公報
【特許文献4】特開昭58−38831号公報
【特許文献5】特開平03−180733号公報
【特許文献6】特開平06−273257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1の装置では、搬送されている容器を一旦停止させる必要がある。そのため、作業効率が悪い。上述した特許文献2〜6の装置は、スピアバルブからの漏れを検査する装置であるため、その漏れがパッキンの破損に起因するものか、それ以外に起因するものか判別できない。
【0007】
そこで、本発明は、搬送されている容器を停止させることなくその容器のスピアバルブを検査でき、またそのスピアバルブのパッキンの破損を直接検出することが可能なスピアバルブ検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスピアバルブ検査装置は、容器(100)に装着されたスピアバルブ(101)の異常の有無を判定するスピアバルブ検査装置(10)において、前記容器を所定の搬送経路に沿って搬送する搬送手段(11)と、前記搬送手段にて搬送されている容器のスピアバルブの画像を取得する画像取得手段(13)と、前記画像取得手段が取得したスピアバルブの画像に基づいてそのスピアバルブの異常の有無を判定する判定手段(20)と、を備えていることにより、上述した課題を解決する。
【0009】
本発明のスピアバルブ検査装置によれば、搬送されている容器のスピアバルブの画像を取得し、その画像に基づいてスピアバルブの異常の有無を判定するので、搬送されている容器を停止させることなくスピアバルブを検査することができる。また、スピアバルブのパッキンに異常があった場合はその異常のあるパッキンを画像として取得できるので、パッキンが破損しているか否か直接検出することができる。
【0010】
本発明のスピアバルブ検査装置の一形態においては、前記画像取得手段によって取得した正常なスピアバルブの画像が画像データとして記憶されている記憶手段(24)をさらに備え、前記判定手段は、前記画像取得手段が取得したスピアバルブの画像と前記記憶手段に記憶されている画像データとを比較することによって前記画像取得手段により画像が取得されたスピアバルブの異常の有無を判定してもよい。パッキンが破損した場合、そのパッキンが外部に突出したり、パッキンの一部が切れるため、本来在るべき場所にパッキンが無かったり、本来無い場所にパッキンが在る画像が取得される。そのため、このように予め記憶手段に記憶させておいた正常なスピアバルブの画像と取得したスピアバルブの画像とを比較することにより、容易にスピアバルブの異常の有無を判定できる。
【0011】
この形態において、前記画像取得手段により取得されたスピアバルブの画像を2値化する2値化手段(21)をさらに備え、前記記憶手段には、2値化された正常なスピアバルブの画像データが記憶されており、前記判定手段は、前記2値化手段により2値化されたスピアバルブの画像と前記記憶手段に記憶されている画像データとを比較することによりスピアバルブの異常の有無を判定してもよい。取得したスピアバルブの画像を適切な閾値を基準として2値化することにより、その画像からパッキンを目立たせることができる。そのため、パッキンの破損の有無を容易に判定することができる。また、2値化することにより画像データの情報量を小さくすることができるので、その画像データを解析するために要する時間を短縮できたり、解析作業を簡易化できる。
【0012】
本発明のスピアバルブ検査装置の一形態において、前記画像取得手段は、検査対象の容器に装着されているスピアバルブの一部分である所定領域の画像を取得するように設けられてもよい。このように取得する画像をスピアバルブの一部分に限定することにより、その取得した画像の解析に要する時間を短縮できる。
【0013】
この形態において、前記所定領域には、スピアバルブのパッキンに異常が発生するとその異常に応答して変化が生じると予想される部分が設定されてもよい。このように所定領域を設定することにより、パッキンに破損等の異常が発生しているか否か速やかに判定することができる。
【0014】
本発明のスピアバルブ検査装置の一形態において、前記画像取得手段は、検査対象の容器に装着されているスピアバルブの天面(101a)をその外周斜め上方から見た画像を取得してもよい。例えば、破損したパッキンがスピアバルブの天面から上方に突出していた場合、スピアバルブの天面を真上から見た画像では、その突出したパッキンとその下に写っているスピアバルブの天面とが重なるため、突出したパッキンが画像に明確に写し出されず、判定手段が誤った判定をするおそれがある。この形態では、スピアバルブの天面をその外周斜め上方から見た画像を取得するので、破損したパッキンが上方に突出していても、そのパッキンを明確に写すことができる。そのため、誤判定を抑制することができる。
【0015】
この形態において、検査対象の容器に装着されているスピアバルブの天面の周方向に関する互いに異なる位置からの画像を取得すべく前記画像取得手段が複数設けられ、前記判定手段は、これら複数の画像取得手段により取得された複数の画像に基づいて検査対象の容器に装着されているスピアバルブの異常の有無を判定してもよい。この場合、検査漏れを抑制することができる。
【0016】
本発明のスピアバルブ検査装置の一形態において、前記画像取得手段によって画像が取得されているスピアバルブを照明する照明手段(14)をさらに備えていてもよい。この場合、より鮮明なスピアバルブの画像を画像取得手段にて取得することができる。
【0017】
本発明のスピアバルブ検査装置の一形態において、前記判定手段は、前記画像取得手段が取得したスピアバルブの画像に基づいてそのスピアバルブからのパッキンのはみ出しの有無を判定し、パッキンのはみ出しがあると判定した場合にそのスピアバルブに異常があると判定してもよい。このようにパッキンのはみ出しがある場合は、そのパッキンによるシール効果が損なわれていると考えられるので、スピアバルブに異常があると判定できる。
【0018】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0019】
以上に説明したように、本発明のスピアバルブ検査装置によれば、搬送されている容器のスピアバルブの画像を取得するので、搬送されている容器を停止させることなくスピアバルブの異常の有無を検査できる。また、スピアバルブの画像に基づいて異常の有無を判定するので、パッキンの破損を直接検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の一形態に係るスピアバルブ検査装置を示している。図1のスピアバルブ検査装置10は、図2に示した容器としてのビール樽100に装着されているスピアバルブ101の異常の有無を検査するための装置である。ビール樽100は、ビール製造工場にて内部にビールが充填された後に出荷され、料飲店などにおいてビールが注出されてほぼ空になるとビール製造工場に戻されて洗浄された後、再度ビールが充填される、すなわち複数回繰り返して再利用される周知のものでよい。そのため、詳細な説明は省略する。
【0021】
図3を参照してスピアバルブ101について説明する。スピアバルブ101は、ビール樽100に装着されてビール樽100からビールを取り出すために使用される開閉可能な周知の弁装置である。図3に示したように、スピアバルブ101は、ビール樽100の口金部100aにねじ込まれるバルブボディ102と、バルブボディ102の中心部に装着されるスピアチューブ103と、バルブボディ102のフランジ102aに形成された導通孔102bを下方から塞ぐように取り付けられるメインシールパッキン104と、メインシールパッキン104を導通孔102bの座面に押しつけるコイルスプリング105と、口金部100aのねじ部からのビールなどの漏れを防止するべく設けられるトップシールパッキン106及びボトムシールパッキン107とを備えている。スピアバルブ101に設けられる各パッキン104、106、107は所定の周期で定期的に交換されているが、スピアバルブ101の使用態様などに起因してその交換時期よりも前に破損する場合がある。また、スピアバルブ101は、ビール樽100が再利用される際に一旦ビール樽100から取り外され、ビール樽100の内部洗浄など所定の作業が終了した後に再度ビール樽100に装着される。その際、スピアバルブ101のいずれかのパッキンがビール樽100のねじ部に噛み込まれて破損する場合もある。このようにパッキンが破損すると、例えば破損したパッキンがスピアバルブ101の天面101aから突出したり、パッキンの一部が欠けたりする。このようにパッキンが破損するとシール効果が損なわれ、ビール樽100内に導入されたガスやビールがスピアバルブ101から漏れるおそれがある。そこで、本発明のスピアバルブ検査装置10では、このようなスピアバルブ101のパッキンの破損の有無を検査する。
【0022】
図1に示したようにスピアバルブ検査装置10は、スピアバルブ101が上を向くように置かれたビール樽100を所定の搬送経路に沿って搬送する搬送手段としての搬送コンベア11と、搬送コンベア11によってビール樽100が所定の搬送経路に設定された検査位置Pに搬送された場合に信号を出力する検出センサ12と、検査位置Pに到達したビール樽100のスピアバルブ101の画像を取得する画像取得手段としてのカメラ13と、カメラ13にて撮影されているスピアバルブ101を照明する照明手段としての照明装置14と、を備えている。搬送コンベア11は、図1に示したように複数のビール樽100を一列に並べて搬送可能なコンベアであればよい。このようなコンベアとしては、例えばチェーンコンベアが使用される。搬送コンベア11は一対のコンベアガイド11aを備えている。コンベアガイド11aは、ビール樽100が搬送コンベア11にて所定の搬送経路に沿って搬送され、かつ検査位置Pに到達したビール樽100のスピアバルブ101がカメラ13の撮影領域内に入るようにその搬送経路と直交する方向(以下、コンベア幅方向と称することもある、)へのビール樽100の位置を調整するために設けられている。各コンベアガイド11aは、コンベア幅方向にその位置を変更可能なように設けられている。そのため、検査対象となるビール樽100のサイズ、特に直径が変更された場合でもその変更後のビール樽100の直径に応じて各コンベアガイド11aの位置を適切に変更することにより、検査位置Pにおいて変更後のビール樽100のスピアバルブ101がカメラ13の撮影領域内に入るようにそのビール樽100をコンベア幅方向に適切に誘導することができる。
【0023】
カメラ13は、レンズ及び例えばCCD、CMOS等の半導体素子を利用したイメージセンサを備え、レンズの視野内に設定される撮影範囲の輝度分布に対応した画像信号を出力する周知のものでよい。そのため、カメラ13として例えばCCDカメラが使用される。図4に示したように、カメラ13は、検査位置Pに到達したビール樽100のスピアバルブ101の天面101aをその外周斜め上方から見た画像を取得するように設けられている。また、カメラ13は、検査位置Pに到達したビール樽100のスピアバルブ101の天面101aの全面が撮影されるように設けられる。照明装置14はスピアバルブ101を照明できればよく、例えばLED照明が使用される。
【0024】
検出センサ12及びカメラ13は、カメラ13によって撮影されたスピアバルブ101の画像に基づいてそのスピアバルブ101の異常の有無を判定する判定手段としての異常判定装置20にそれぞれ接続されている。異常判定装置20は、マイクロプロセッサ及びその動作に必要なRAM、ROM等の周辺機器を有し、カメラ13の出力信号に対して所定の処理を実行するコンピュータユニットとしての演算処理部21と、演算処理部21に対してユーザが指示を入力するための入力部22と、演算処理部21が処理した検査結果及びカメラ13にて撮影された画像等をユーザに提示するための出力部23と、演算処理部21にて実行すべきコンピュータプログラム等が記憶されている記憶手段としての記憶部24とを備えている。異常判定装置20の演算処理部21、入力部22、出力部23及び記憶部24は、例えばパーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータ機器を利用してこれらを構成することができる。この場合、入力部22にはキーボード、マウス等の入力機器が設けられ、出力部23にはモニタ装置が設けられる。プリンタ等の出力機器が出力部23に追加されてもよい。記憶部24には、ハードディスク記憶装置、あるいは記憶保持が可能な半導体記憶素子等の記憶装置が用いられる。また、異常判定装置20の演算処理部21、入力部22、出力部23及び記憶部24は、一般に市販されているカメラコントローラを利用してこれらを構成してもよい。この場合、入力部22及び出力部23にはタッチパネルが設けられる。プリンタ等の出力機器が出力部23に追加されてもよい。記憶部24には記憶保持が可能な半導体素子等の記憶装置が用いられる。
【0025】
次に異常判定装置20によるスピアバルブ101の検査方法について説明する。図5は、演算処理部21がスピアバルブ101の異常の有無を判定するべく所定の周期で繰り返し実行する異常判定ルーチンを示している。
【0026】
図5の異常判定ルーチンにおいて、演算処理部21はまずステップS11で搬送コンベア11によって搬送されているビール樽100が検査位置Pに到達したか否か判断する。この判断は、検出センサ12からの出力信号に基づいて行えばよい。ビール樽100が検査位置Pに到達していないと判断した場合は、今回のルーチンを終了する。一方、ビール樽100が検査位置Pに到達したと判断した場合はステップS12に進み、演算処理部21はカメラ13から入力されている画像データの信号を取得し、その情報を演算処理部21のRAMなどに一時的に記憶させる。図6に正常なスピアバルブ101の画像の一例を示す。また、図7にスピアバルブ101のボトムシールパッキン107が破損し、その破損したボトムシールパッキン107の一部200が天面101aから突出しているスピアバルブ101の画像の一例を示す。
【0027】
次のステップS13において演算処理部21は、ステップS12で取得した画像データに対して2値化処理を行う。この2値化処理は、予め設定した所定の閾値を基準にして行う周知の方法で行えばよい。そのため、詳細な説明は省略する。なお、所定の閾値としては、例えばカメラ13によって取得されたスピアバルブ101の画像からパッキンを目立たせることが可能な値が設定される。この処理を実行することにより、演算処理部21が本発明の2値化手段として機能する。続くステップS14において演算処理部21は、予め記憶部24に記憶させておいた所定の画像データと2値化処理にした画像データとを比較してスピアバルブ101に異常があるか否か判定する。所定の画像データとしては、図6に示した正常なスピアバルブ101の画像を2値化処理した画像データが記憶されている。
【0028】
図8は図6に示した正常なスピアバルブ101の画像を2値化処理した画像データの一例であり、図9は図7に示した異常があるスピアバルブ101の画像を2値化処理した画像データの一例である。なお、図8及び図9においては、パッキンと認識された領域が黒くなるように画像の2値化処理が行われている。図9の画像データから明らかなようにスピアバルブ101のパッキンに異常がある場合、図8の画像データと比較して画像のうちパッキンとして認識される領域が大きくなる。そのため、異常があると判断できる。なお、メインシールパッキン104が切れていた場合は、その切れている部分が画像のうちパッキンとして認識されない。すなわち、画像のうちパッキンとして認識される領域が小さくなる。そのため、図8に示した画像データと比較して画像のうちパッキンとして認識される領域が小さい場合にも、そのスピアバルブ101に異常があると判断できる。そこで、カメラ13によって取得し、2値化処理した画像データのうちパッキンとして認識された領域と所定の画像データにおいてパッキンと認識される領域との差が予め設定した許容値を超えた場合にスピアバルブ101に異常があると判定する。なお、許容値は、異常のあるスピアバルブ101を正常と誤判定しないように適宜設定すればよい。このようにカメラ13で取得した画像と記憶部24に記憶させておいた正常なスピアバルブ101の画像と比較することにより、スピアバルブ101に異常があるか否か容易に判定することができる。なお、この異常判定を行う際、2値化した画像データのうちパッキンとして認識された領域を複数の部分に分割し、これら複数の部分を正常なスピアバルブの画像データの同じ部分とそれぞれ比較してスピアバルブ101の異常の有無を判定してもよい。
【0029】
スピアバルブ101が正常と判断した場合は今回のルーチンを終了する。一方、スピアバルブ101に異常があると判断した場合はステップS15に進み、演算処理部21はオペレータに対してスピアバルブ101に異常があることを知らせるべく所定の処理を行う。所定の処理としては、例えばオペレータに対して警告を発する処理や製造ラインの制御装置に信号を出力する処理が行われる。この信号により、制御装置は例えば搬送コンベア11の停止やスピアバルブに異常があると判定されたビール樽の搬送コンベアからの排出を行う。また、異常判定装置20にて制御可能であれば、制御装置を介さずに搬送コンベア11の停止やスピアバルブに異常があると判定されたビール樽の搬送コンベアからの排出を行ってもよい。その後、今回のルーチンを終了する。
【0030】
このようにスピアバルブ検査装置10においては、搬送コンベア11にて搬送されているビール樽100のスピアバルブ101の画像をカメラ13で取得するので、ビール樽100を停止させることなくスピアバルブ101の異常の有無を検査できる。また、上述したようにスピアバルブ101のパッキンに異常があるとカメラ13にて取得される画像にはそのパッキンの異常が反映されるので、パッキンの破損の有無を直接検出することができる。
【0031】
また、カメラ13で取得した画像を2値化処理するので、その画像においてパッキンと認識された領域を目立たせることができる。そのため、パッキンの破損の有無を容易に判定できる。また、2値化することにより画像データの情報を小さくできるので、演算処理部21にかかる負荷を軽くすることができる。
【0032】
カメラ13にて取得される画像はスピアバルブ101の天面101aをその外周斜め上方から見た画像であるため、例えば破損したパッキンが上方に突出していた場合でも、その突出しているパッキンとメインシールパッキン104との重なりを防止でき、その突出しているパッキンを撮影することができる。そのため、誤判定を抑制することができる。
【0033】
上述したスピアバルブ検査装置では、1台のカメラ13で撮影した画像に基づいてスピアバルブ101のパッキンの異常の有無を検査したが、検査対象のビール樽100のスピアバルブ101の画像を複数のカメラ13で撮影し、それらの画像に基づいてスピアバルブ101のパッキンの異常の有無を検査してもよい。例えば、スピアバルブ101からパッキンが上方に突出している場合、撮影位置によってはそのパッキンとメインシールパッキン104とが重なって見えるが、その撮影位置とは異なる位置、例えばその撮影位置からスピアバルブ101の周方向に90°移動した位置、すなわち図1の搬送コンベア11の側方から見れば、その突出しているパッキンとメインシールパッキン104との重なりを防止できることがある。そこで、複数のカメラ13を設け、これらのカメラ13を搬送中のビール樽100に装着されているスピアバルブ101の天面101aの周方向に関する互いに異なる位置からの画像を取得できるように配置する。なお、各カメラ13はスピアバルブ101の天面101aをその外周斜め上方から見た画像を取得するようにそれぞれ設けられる。そして、これらのカメラ13にて撮影された複数の画像に基づいてパッキンの異常の有無を検査してもよい。この場合、さらに誤判定を防止できる。
【0034】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施してよい。例えば、本発明のスピアバルブ検査装置にて検査される容器はビール樽に限定されない。スピアバルブが装着される容器であり、かつ飲料製造元から市場に出荷され、その後市場から飲料製造元に戻されて再利用される種々の容器を本発明にて検査してよい。この容器に充填される飲料はビールに限らず、発泡酒や焼酎、ウオッカ、ジュースなど種々の飲料を充填してよい。
【0035】
上述した形態では、カメラによってスピアバルブの天面の全体の画像を取得して検査を行っていたが、カメラによってスピアバルブの天面に設定された所定領域の画像を取得し、この所定領域の画像に基づいて異常の有無の検査を行ってもよい。所定領域としては、例えばスピアバルブの各パッキンが破損した場合に破損に応答して変化が生じると予想される領域が設定される。この場合、画像データの処理にかかる負荷を軽くできる。この場合においてもカメラの数は1台に限定されず、複数台のカメラによってスピアバルブの天面の画像を取得してもよい。この場合、各カメラによってスピアバルブの天面の互いに異なる部分の画像を取得することにより、検査漏れを抑制できる。この際、スピアバルブの天面の全体が分割して取得されるようにこれら各カメラを設けてもよい。この場合、検査漏れをより確実に抑制することができる。
【0036】
搬送コンベアによってビール樽が搬送される所定の搬送経路には、検査位置よりも下流においてビール樽をその搬送経路から取り除くことができる排出手段としてのビール樽排出機構が設けられていてもよい。この場合、異常判定装置においてスピアバルブに異常があると判定されたビール樽をこのビール樽排出機構によって取り除くことにより、そのビール樽が次の工程に搬送されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一形態に係るスピアバルブ検査装置を示す図。
【図2】ビール樽を拡大して示す図。
【図3】スピアバルブを拡大して示す図。
【図4】図1のスピアバルブ検査装置におけるビール樽の検査位置の部分を拡大して示す図。
【図5】異常判定装置の演算処理部において実行される異常判定ルーチンを示すフローチャート。
【図6】正常なスピアバルブの画像の一例を示す図。
【図7】スピアバルブのパッキンが破損し、その破損したパッキンの一部が天面から突出しているスピアバルブの画像の一例を示す図。
【図8】図6に示した正常なスピアバルブの画像を2値化処理した画像データの一例を示す図。
【図9】図7に示した異常があるスピアバルブの画像を2値化処理した画像データの一例を示す図。
【符号の説明】
【0038】
10 スピアバルブ検査装置
11 搬送コンベア(搬送手段)
13 カメラ(画像取得手段)
14 照明装置(照明手段)
20 異常判定装置(判定手段)
21 演算処理部(2値化手段)
24 記憶部(記憶手段)
100 ビール樽(容器)
101 スピアバルブ
101a 天面
104 メインシールパッキン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に装着されたスピアバルブの異常の有無を判定するスピアバルブ検査装置において、
前記容器を所定の搬送経路に沿って搬送する搬送手段と、前記搬送手段にて搬送されている容器のスピアバルブの画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段が取得したスピアバルブの画像に基づいてそのスピアバルブの異常の有無を判定する判定手段と、を備えていることを特徴とするスピアバルブ検査装置。
【請求項2】
前記画像取得手段によって取得した正常なスピアバルブの画像が画像データとして記憶されている記憶手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記画像取得手段が取得したスピアバルブの画像と前記記憶手段に記憶されている画像データとを比較することによって前記画像取得手段により画像が取得されたスピアバルブの異常の有無を判定することを特徴とする請求項1に記載のスピアバルブ検査装置。
【請求項3】
前記画像取得手段により取得されたスピアバルブの画像を2値化する2値化手段をさらに備え、
前記記憶手段には、2値化された正常なスピアバルブの画像データが記憶されており、
前記判定手段は、前記2値化手段により2値化されたスピアバルブの画像と前記記憶手段に記憶されている画像データとを比較することによりスピアバルブの異常の有無を判定することを特徴とする請求項2に記載のスピアバルブ検査装置。
【請求項4】
前記画像取得手段は、検査対象の容器に装着されているスピアバルブの一部分である所定領域の画像を取得するように設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のスピアバルブ検査装置。
【請求項5】
前記所定領域には、スピアバルブのパッキンに異常が発生するとその異常に応答して変化が生じると予想される部分が設定されることを特徴とする請求項4に記載のスピアバルブ検査装置。
【請求項6】
前記画像取得手段は、検査対象の容器に装着されているスピアバルブの天面をその外周斜め上方から見た画像を取得するように設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のスピアバルブ検査装置。
【請求項7】
検査対象の容器に装着されているスピアバルブの天面の周方向に関する互いに異なる位置からの画像を取得すべく前記画像取得手段が複数設けられ、
前記判定手段は、これら複数の画像取得手段により取得された複数の画像に基づいて検査対象の容器に装着されているスピアバルブの異常の有無を判定することを特徴とする請求項6に記載のスピアバルブ検査装置。
【請求項8】
前記画像取得手段によって画像が取得されているスピアバルブを照明する照明手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のスピアバルブ検査装置。
【請求項9】
前記判定手段は、前記画像取得手段が取得したスピアバルブの画像に基づいてそのスピアバルブからのパッキンのはみ出しの有無を判定し、パッキンのはみ出しがあると判定した場合にそのスピアバルブに異常があると判定することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のスピアバルブ検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−157858(P2008−157858A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349389(P2006−349389)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】