説明

スプレー熱分解による混合酸化物の製造方法

本発明は、スプレー熱分解による<10μmの平均粒子サイズを有するコンパクトな球状の混合酸化物パウダーの新規な製造方法、その発光体としての、発光体のためのベース材料としての、またはセラミック製造のための、または高密度、高強度、および任意に透明な、ホットプレス技術によるバルク材料の製造のための出発材料としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレー熱分解による、<10μmの平均粒子サイズを有するコンパクトな球状の混合酸化物パウダーの新規な製造方法およびその使用に関する。
【0002】
ナノメートルまたはサブミクロン範囲の粒子サイズを有する混合酸化物パウダーは、以下の方法によって実質的に製造される:
酸化物、炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物または他の塩の混合、乾燥および続く熱分解(固体反応);共沈殿および続く乾燥および焼成;ゾル−ゲル法;アルコキシドの加水分解;プラズマ溶射法;水性および有機性塩溶液のスプレー熱分解。
【0003】
スプレー熱分解(SP)は、エアゾール法の1つであり、それは溶液、懸濁液または分散液を種々の方法で加熱された反応空間(リアクタ)へスプレーすることおよび固体粒子の形成および析出によって特徴付けられる。<300℃の高温ガス温度での噴霧乾燥と対照的に、溶媒のエバポレーションに加えて、用いた出発材料(例えば、塩)の熱分解および物質(例えば、酸化物、混合酸化物)の新しい形成が、高温プロセスとしてのスプレー熱分解の間にさらに生じる。
【0004】
熱生成および熱伝達の違い、エネルギーの供給および供給物の違い、エアゾールの生成の態様および粒子析出の態様の違いのため、種々のリアクタ設計によっても特徴付けられる多様な変法が存在する:
※高温壁リアクタ − 任意に、分離して制御できる加熱ゾーンを備えた、外部から電気的に加熱したチューブ;スプレー・インの位置(spray-in point)での低いエネルギー投入;
※火炎熱分解(flame pyrolysis)リアクタ − 燃料ガス(例えば、水素)の酸素または空気との反応によるエネルギーおよび高温ガスの生成;火炎へ直接、または火炎に近い領域の高温燃焼ガスへスプレーすること;スプレー・インの位置での非常に高いエネルギー投入
※高温ガスリアクタ − 以下による高温ガスの生成
# 電気ガスヒーター(キャリアガスへのエアゾールの導入;スプレー・インの位置での、可変であるが大抵制限された(低い)エネルギー投入)
# 脈動リアクタ(pulsation reactor)における空気を用いた水素または天然ガスの無炎脈動燃焼;スプレー・インの位置で広い範囲に制御できるエネルギー投入;高度の乱流を伴なう脈動ガス流(Merck Patent GmbHによる国際特許出願WO 02/072471を参照)。
【0005】
粒子サイズ、粒子サイズ分布、粒子形態および結晶相の内容などの所望のパウダー特性が、さらなる後処理なしに十分に達成される場合、スプレー熱分解法は特に効果的である。
【0006】
この状況に関し、文献に記載の以下の変法を記載する:
Kuntz et al.(DE 3916643 A1)には、例えば、エタノール、イソプロパノール、酒石酸または元素状炭素(elemental carbon)などの燃料として機能する有機物質の存在下における金属硝酸塩溶液のスプレー熱分解によって、酸化セラミックパウダーを製造する方法が記載されている。Bi、Mn、Cr、Co、SbおよびBiTiパウダーの添加を伴なう酸化亜鉛の製造が記載されている。
【0007】
Hilarius (DE 4320836 A1)には、ドープした酸化亜鉛をベースとするセラミックバリスタのためのドーピング元素を含む金属酸化物パウダーの製造方法であって、金属酸化物パウダーがスピネルおよび/またはパイロクロア構造を有する結晶相を有し、最初に、必要なドーピング元素の化合物を提案された化学量論比で混合し、結合水性均一分散液(joint aqueous homogeneously disperse solution)を得、次いで、これをスプレー熱分解することを特徴とする、前記製造方法が記載されている。
【0008】
DE 4307 333 A1 (Butzke)は、細かく分割された球状の金属酸化物パウダーを製造するために、最初に、元素Zn、Sb、Bi、Co、Mn、Crを含む、有機相中の硝酸塩混合溶液を、スプレー熱分解の前に分散し、乳化することを提案している。
【0009】
Journal of the Korean Ceramic Soc. 27 (1990), No.8; pp. 955-964には、用いた出発材料がAl(SO・14HOおよびZrOCl・8HOである、エマルジョンスプレー熱分解(emulsion spray pyrolysis)法によるAl/ZrO複合パウダーの製造方法が報告されている。900〜950℃の範囲の温度を有する高温壁リアクタが用いられている。短い滞留時間(residence times)のため、1200℃の温度での付加的な焼成処理の後、複合物という意味においてアルファ−Alおよび正方晶のZrOの相形成を得ることができるにすぎず、直接的に均一な混合酸化物を得、これを均一な相を得るために反応させたわけではない。
【0010】
WO 0078672 A1には、浸透(permeation)および高温ガスリアクタの使用、[空白]、スプレー熱分解法およびノズル・プレートおよび圧電セラミックのオシレータを含む噴霧システムによる金属塩溶液または懸濁液の噴霧が記載されている。
【0011】
WO 02072471 A1には、高温超伝導体の前駆体として用いるための多元金属酸化物パウダーの製造方法であって、対応する金属酸化物パウダーが、脈動リアクタで製造され、少なくとも3つの元素がCu、Bi、Pb、Y、Tl、Hg、La、ランタニド、アルカリ土類金属から選択される、前記製造方法が記載されている。
【0012】
EP 0 371 211には、溶液または懸濁液をノズルによって火炎熱分解リアクタへスプレーすることによるセラミックパウダーの製造のためのスプレー焼成が記載されている。スプレーには、可燃性ガス(水素)を用いる。これは、燃料ガスおよび塩溶液が、2成分ノズルを介してリアクタの同じ位置に到達することを意味する。燃焼に必要な空気は、リアクタの上端のフリット(frit)を通じて流入する。
【0013】
DE 195 05 133 A1によれば、水素火炎熱分解が、反応ガスの成分としての酸素ガスとともに塩溶液をリアクタに供給することによって行われている。
【0014】
特許EP 703 188 B1の明細書には、酸化物質と還元物質との組み合わせを220〜260℃の範囲の温度で反応させることによって、ドープされた、不定形で十分に変換されたZnOパウダーを製造できることが明らかにされている。発熱反応において、所望の酸化物がパウダー形態で形成される。
【0015】
EP 1 142 830 A1には、1〜600m/gの範囲の比表面積および塩化物含量<0.05%を有する、例えば、ZrO、TiOおよびAlなどの酸化物ナノパウダーを熱分解で製造することが記載されている。
【0016】
JP10338520によれば、イットリウムアルミニウム酸化物パウダーは、水性のイットリウムおよびアルミニウム塩溶液の噴霧焙焼によって製造することができ、好ましくは、出発材料にポリ塩化アルミニウムを用いる。
【0017】
WO2003/070640 A1には、酸化溶媒に溶解した金属アルコキシドおよびカルボキシレートを用いて、Al、SiO、TiO、ZrOならびに遷移金属酸化物、ランタニドおよびアクチニドの添加に基づくナノパウダーの製造方法が記載されている。熱分解の間、少なくとも2つの異なる相への相分離が起こる。
【0018】
DE 102 57 001 A1には、ナノスケール(すなわち、<0.1μm)の発熱的に製造された、1:0.01〜1:20のMg対Alの化学量論比を有するMg/Alスピネルおよびその製造方法が記載されている。これは、塩溶液または分散液を200℃を超える温度での(酸水素ガス)火炎においてMgAlに変換することを特徴とする。この発明の特段の特徴は、超音波噴霧器による、または高圧(10,000barまで、好ましくは、100barまで)で作動する1成分ノズルによるエアゾールの発生である。
【0019】
この方法の欠点は、一般に、超音波噴霧器を用いて達成することができるのは低い生産性にすぎないことである。100barまでの圧力さらには10,000barまでの圧力での作業は、極めて高度な技術的複雑さを伴い、この変法が、工業的スケールでのスプレー熱分解工場のためには、それ自体重要でないことを意味する。
【0020】
上記の方法およびそれらにより製造された製品はさらに、以下の欠点を含む:
サブミクロンまたはナノパウダーの製造のため、大抵高価で、大部分が有機溶媒に溶解された有機金属出発材料が用いられる。
【0021】
したがって、本発明の目的は、これらの欠点を克服し、簡単に行われる高価でない方法であって、それによって混合酸化物が、平均粒子サイズ<10μmを有するコンパクトな球形粒子として製造され得る方法を提供することである。しかしながら、特に、本発明の目的はまた、高密度、高強度で、任意に透明なバルク材の製造に、または発光体(phosphors)のベース材料として、または発光体として、またはセラミック製造の出発材料として用いることができる混合酸化物を提供することである。
【0022】
火炎スプレー熱分解は、多孔質でない球状の固体粒子を常に製造できるものではない。これは特に、高価でない塩化物および硝酸塩の出発材料としての使用に当てはまる(図1参照)。
【0023】
驚くべきことに、本目的は、一方で、改変した組成の出発材料溶液をスプレー熱分解に用いることによって、および他方で、スプレー・インの位置に対してリアクタの下流サイトに位置するサイトで、熱分解反応の間、さらなる燃料供給を伴なう、特定の温度プログラムにて熱分解リアクタで出発材料溶液をスプレーし、熱分解することによって、達成することができる。
【0024】
特にこの目的は、好ましくは、スプレーした溶液、懸濁液または分散液の液滴サイズを大幅に低減する添加剤と組合せた、好ましくは水性の塩溶液、懸濁液または分散液の使用を介して達成される。さらに本発明の目的は、供給材料を高温ガスの流れに、好ましくは、特定の温度プロフィールを有する外部加熱管状リアクタ(高温壁リアクタ)の形態の脈動リアクタでの無炎脈動燃焼によって生成したガスの流れにスプレーすることをベースとする、特別に設計されたスプレー熱分解プロセスによって達成される。
【0025】
本発明の方法は、リアクタ構成、プロセス設計、エネルギー伝達、実際の混合酸化物形成の反応過程において、従来技術から知られる方法と顕著に区別される。
【0026】
上記欠点が、スプレーの最中に供給される空気の量とスプレーされる出発材料の溶液の量との間に、2成分ノズルを用いてある比を設定することによって、および、同時に、熱分解リアクタの中央部でのさらなる燃料の導入と、発熱化学分解反応および同時に酸化活性を有する物質を介した固有の化学エネルギーの投入とを組合わせて、スプレー・インの位置でのエネルギー投入を低減することによって克服できることを見出した。例えば、脂肪アルコールエトキシレートの形態の界面活性剤の付加的な添加は、より均一な球状の形状を有するより細かな粒子の形成をもたらす。
【0027】
MgおよびYアルミン酸塩ならびにBaチタン酸塩をベースにしたパウダーの例を参照して、0.01〜2μmの範囲の平均粒子サイズを有する細かく分散した球状のパウダーを本発明の方策の組合せによって製造できることが示され得る(例えば、図2〜6参照)。孔は、本発明によるものではない図1のパウダーとは対照的に、20,000倍まで拡大したSEM写真(図4および6参照)の粒子において、ここでは明白ではない。
【0028】
ここで用いた出発材料は、必須の化学量論比の対応する元素を含む混合硝酸塩溶液であった。化学エネルギー担体として、硝酸アンモニウムをこれらの溶液に、出発材料の塩含量に対して10〜50%、好ましくは20〜40%の比率で添加した。粒子サイズは、希釈によって、好ましくは50%までさらに低減することができる。
【0029】
本発明によれば、溶媒のエバポレーションの間に形成される粒子上の急速な外皮(crust)形成を妨げるために、スプレー・インの位置でのエネルギー投入を低減する必要がある。工業的に意味のある供給スループットでは、熱分解リアクタ中の短い滞留時間は、最初に、混合酸化物への完全な変換が、全ての場合に起きるとは限らず、パウダーが5%を超える焼成ロスを含むことを意味する。
【0030】
特に、ラムジェット管の形態での無炎脈動燃焼による高温ガス生成を伴なうリアクタ(脈動リアクタ)の使用において、燃料ガス(天然ガスまたは水素)のさらなる量の導入によって、溶媒が粒子の内部にもはや存在しないときにエネルギー投入を増大させることが可能になる。このエネルギーは、いまだ存在する塩の残渣を熱分解するため、および混合酸化物形成の固相化学プロセスを促進または完了するために役立つ。本発明によれば、反応ガスの供給は、リアクタ内での物質の総滞留時間の20〜40%の後、好ましくは30%の後に起こる。
【0031】
驚くべきことに、Mg/Al混合硝酸塩溶液のMgAlへの完全な変換が、小さなサイズの実験用リアクタおよび約200〜500ミリ秒の短い製品滞留時間で達成されることが見出された。このようにして製造された粒子の形態は球状であり、平均粒子サイズは1.8μmであった(図7参照)。ここで焼成ロスは、パウダー表面へのOH基の付加によるものであり、約2%であった。これは、パウダーが100mVを超えるゼータ電位(4<pH<6)を有し、極めて容易に水に分散し得るので、セラミック材料を与えるさらなる処理に不利益とはならない。
【0032】
このため、水への分散およびその後の環状ギャップまたは撹拌ボールミルでの粉砕により、高価でないトップダウン処理との意味で、サブミクロンのパウダーを製造することも可能である(図8の粒子サイズ分布参照)。他方、これは、流動床カウンタージェットミルでの分級または粉砕による粗粒子の分離によって達成されもする(図9の粒子サイズ分布参照)。
【0033】
特に驚くべきことに、例えば、実験用リアクタなどの短時間リアクタにおけるスプレー熱分解によるスピネル形成が、硝酸アルミニウム溶液中、例えば、Mg(OH)などの塩または水酸化物の、溶解によってだけでなく、分散によっても達成されること、正確には、残留単一酸化物がX−線検出されないことが示された(図10参照)。これにより出発材料の金属含量および生成物排出が増大するが、約6μmのより大きな平均粒子サイズがもたらされる。この粒子サイズは、硝酸アンモニウムおよび脂肪アルコールエトキシレートの添加、および、必要であれば、出発溶液の希釈によって、さらに驚くほど低減することができる。Al硝酸塩溶液の水含量に依存して、Mg(OH)はさらなる希釈において可溶か、または細かく分散した形態で凝集する。両方の場合において、均一な細かく分散したスピネルパウダーが製造される。500〜1000ミリ秒のオーダーに対応して増大した製品滞留時間を伴う試験工場用リアクタにおいて、より大きな処理量をこの方法で達成することができ、同様のパウダー特性を有する製品が製造される(図11の粒子サイズ分布参照)
【0034】
本発明によるさらなる出発材料の改変は、Al成分として分散されるAlO(OH)を伴う水性の酢酸マグネシウム溶液であり(例7参照)、非常に細かなパウダーが製造され、脈動リアクタにおいてスピネルまで完全に変換される。
【0035】
サブミクロンパウダーもまた、本発明に従って、石油エーテル中のAlトリイソプロポキシドの溶液のスプレー熱分解と、これに続く細かな微粒子のMgエトキシドの分散とによって製造される。スプレー熱分解プロセスにおける高い固有の化学エネルギーによって、100〜200nmの範囲の粒子の形成がもたらされる(図12参照)。温度は、上流の脈動高温ガス発生器(pulsating hot-gas generator)の配置、出発材料のスプレーおよび同時の燃焼チャンバへの冷えた空気の導入、および共鳴管への燃料の供給によって、スプレー・インの位置で制限される。
【0036】
酢酸バリウムおよびチタン酸テトライソプロピルの形態での出発材料の組み合わせもまた、サブミクロン範囲の球状のチタン酸バリウムパウダーをもたらす(例9参照)。
Y−Al−O系において、相形成は、出発材料の性質およびその熱分解によって、特に大きな程度の影響を受ける。
【0037】
J. of Alloys and Compounds 255 (1997), pp.102-105によれば、相純粋(phase-pure)な立方晶のYAl12(YAG)を製造することは困難であり、固体反応プロセスでは特にそうである。1600℃の焼成温度でさえ、AlおよびYの酸化物およびYAlO(ペロブスカイト相:YAP)およびYAl(単斜相:YAM)相が、立方晶のYAG相に加えて製造される。
【0038】
本発明の方法において、イットリウムおよびアルミニウムの硝酸塩が、とりわけ、スプレー熱分解の出発材料として用いられる。この場合、化学的出発成分に対応するYAl12相は、最初にはまだ形成されず、代わりに部分的に不定形の酸化アルミニウムおよび約90%のYAlOおよび約10%のYAl12の形態のイットリウムアルミン酸塩の相混合物が形成される。900℃〜1200℃の範囲の温度、好ましくは1100℃での熱後処理によって、材料を完全に立方晶のYAG相に変換することができる(図13参照)。これは特に、発光体として用いるために必要である。
【0039】
しかしながら、部分的に反応させ、焼成していないパウダーが、高密度に焼結されたバルク材料の製造において、より高い反応性を有することが見出された。したがって、このパウダーの1600℃、30分間の高温圧縮において、より高い密度(あらかじめ焼成されたパウダーを使用した場合の98.7%に対し、理論的な密度99.98%)が達成された。炭素を除去するための1200℃での焼成プロセスの後、この材料は半透明であり、結晶サイズおよび残余の空隙率を最小化するためのさらなる最適化によって、透明材料を形成することができる
【0040】
特に狭い粒子サイズ分布は、後の化学量論に対応するあらかじめ特定された混合比で硝酸アルミニウム溶液と混合したY塩化物溶液の形態の出発材料の選択により達成することができる(図14参照)。ここで、約80%の不定形のパウダー含量が、高温壁リアクタにおいて、非常に短い製品滞留時間で生じる。標的相のYAl12に加えて、結晶相は、およそ同じ比率のYAlO相および反応性の高い遷移金属/酸化アルミニウム酸化物(カッパーおよびシータ相)およびイットリウム酸化物である。この相混合物は、約1000℃での焼成によってYAG相へ変換することができる。
【0041】
粒子形態、サイズおよびサイズ分布に対し、水、硝酸アンモニウムおよび界面活性剤の形態での添加剤の組み合わせおよびリアクタ内の温度条件の制御によって、標的化された様式で(in a targeted manner)影響を与えることができるといった、Mgアルミン酸塩パウダーの製造について記載された特徴は、イットリウムアルミン酸塩にも当てはまる。約2μmまでのサイズを有する丸い固体の粒子は、本発明によって製造された粒子にはっきりと表れている。
粒子サイズは、エマルジョンの製造およびスプレー熱分解によって、スプレー条件と独立して影響を受ける。
【0042】
DE 4307 333に記載された方法において、スプレーされる材料は、電気的に加熱された管状のリアクタへ、また好ましくは、直接、プロパン、ブタンまたは天然ガスなどの可燃性ガスおよび(大気中の)酸素の燃焼によって生成する火炎の領域へ導入される。ガスバーナーおよび噴射ノズルの組み合わせた配置が特に有利なものとして記載され、噴射ノズルは好ましくはバーナーヘッドの中心に配置されている。このことによって、スプレーされたエマルジョン液滴のバーナーの火炎との最大の接触が保証されると述べられている。
【0043】
文献[Journal of the Korean Ceramic Soc.27 (1990), No. 8; pp. 955-964]に記載の方法は、同様に電気的に加熱された管状のリアクタである。
対照的に、エマルジョンは、本発明の方法により、空気を伴う天然ガスまたは水素の無炎脈動燃焼によって生成する高温ガスの流れにスプレーされ、中心リアクタ部分における温度は約1030℃に制限されている。
【0044】
エマルジョンは、例えば、塩溶液および分散媒および乳化剤の、Niro Soaviデザインの高圧ホモジナイザー中での激しい混合によって製造される。
ここで用いることができる乳化剤は、ソルビタン脂肪酸誘導体、または特に有利には、それらと疎水性側鎖および親水性側鎖を4:1〜2:3の比で含むランダムコポリマー、好ましくは、2004年9月28日に出願されたMerck Patent GmbHの欧州特許出願No. 04023002.1に記載のような、ドデシルメタクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートの1:1〜3:1の比からなるランダムコポリマーとの混合物である。
【0045】
対応するコポリマーは、一般式Iで記載することができる。
【化1】

式中、
基XおよびYは、慣用の非イオン性またはイオン性モノマーに対応し、
は、水素または疎水性側基、好ましくは、少なくとも4個の炭素原子を有する分枝状または非分枝状のアルキル基であって、その1個または2個以上の、好ましくは全ての水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい前記アルキル基から選択される疎水性側基、を示し、Rに独立して、
は、親水性側基、好ましくは、ホスホン酸塩、スルホン酸塩、多価アルコールまたはポリエーテル基を有する親水性側基、を示す。
本発明において特に好ましいものとしては、−Y−Rがベタイン構造を示すポリマーが挙げられる。
【0046】
これに関し、特に好ましいものとして、XおよびYが、互いに独立して、−O−、−C(=O)−O−、−C(=O)−NH−、−(CH−、フェニル、ナフチルまたはピリジルである式Iのコポリマーが挙げられる。さらに、少なくとも1つの構造単位が、少なくとも1つの4級窒素原子を含み、ここでRが好ましくは、−(CH−(N(CH)−(CH−SO側基または−(CH−(N(CH)−(CH−PO2−側基を示し、ここでmが、1〜30の範囲、好ましくは1〜6の範囲の整数、特に好ましくは2を示し、nが、1〜30の範囲、好ましくは1〜8の範囲の整数、特に好ましくは3を示すコポリマーは、本発明による使用において、特に有利な特性を有する。
【0047】
このタイプの乳化剤混合物の使用により、エマルジョンは改善された安定性を有する(12時間以内に分離なし)。これは、技術的方法の簡素化、パウダー形態の改善(図15参照)およびパウダー特性の再現性の増大をもたらす。
【0048】
石油エーテルなどのエマルジョンに伴なう燃焼物質のリアクタへの導入は、強い凝集が形成されないように、リアクタへの燃料ガスの供給の低減によって、対応して補償されなければならない。脈動リアクタの共鳴管において、1000〜1050℃の基準温度をセットすることによって、これは保証され、それでもなお完全なスピネル形成が達成される。
【0049】
上記の組成で製造された異なる粒子サイズおよび粒子サイズ分布を有するパウダーは、さらに処理することができ、様々に用いることができる。
【0050】
比較的低い焼結温度での、高密度で細かい結晶の、任意に透明なセラミックの製造のために、細かな分散パウダーが相当な利点を提供し、ここで、約100nmの粒子サイズを有するパウダーをホットプレス技術に用いることができる。これらのパウダーは、通常、他のセラミックプロセスでの成形の最中には処理ができないか、または、増大した技術的複雑さを伴って処理できるにすぎない。これらのプロセスのために、サブミクロン範囲のパウダーの使用が妥当である。
【0051】
高い機械的強度および/または光透過性などの特定の特性が達成されると、次に、例えば、1〜3μmの範囲の粒子サイズ体積分布のd99値によって特徴付けられる、0.3〜0.6μmの平均粒子サイズおよび狭い粒子サイズ分布を有するパウダーを有利に使用することができる(図8および9参照)。
【0052】
例えば、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Er、Tm、Ybおよびその混合物などの希土類元素(RE)でドープしたマグネシウムまたはイットリウムアルミン酸塩が、従来技術において、発光体材料として用いられ、ここで、前記RE金属は、活性化元素として効果的である(Angew. Chem. 110(1998); pp. 3250- 3272)。挙げられ得る例として、とりわけ、以下のものが挙げられる;
Al12:Ce;(Y1−xGd(Al1−yGa12:Ce;Y(Al,Ga)12:Tb;BaMgAl1017:Eu;BaMgAl1017:Eu,Mn;(Ce,Tb)MgAl1119:Eu;SrAl1425:Eu;SrAl1219:Ce。
【0053】
当業者が利用しやすい専門家の文献(Roempp’s Chemie Lexikon [Roempp’s Lexicon of Chemistry]-Version 1.0, Stuttgart/New York: Georg Thieme Verlag 1995; Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 2002 ; Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA.; Article Online Posting Date: June 15, 2000)には、工業的規模の発光体の製造は、ベース材料の性質に従い、約700℃〜1600℃の温度で、電気的にまたはガスにより加熱された燃焼炉で行われることが記載されている。特に、フラックス剤の添加および続く1600℃までの比較的高い温度での焼成のない固体反応プロセスにおいて、これは一般的に、かかる用途に有利であろうコンパクトな球形粒子をもたらさない。これらの例は以下のとおりである:
NHOHを用いた硝酸塩溶液から金属水酸化物の共沈殿および続く700℃、2時間および続いて1500℃、1時間での焼成によって製造される例えば、Ce0.65Tb0.35MgAl1119などのセリウムマグネシウムアルミン酸塩。
【0054】
フラックス剤の存在下および弱い還元雰囲気下、1100〜1200℃でAl、BaCO、MgCOおよびEuを混合することによって製造される、例えば、BaMgAl1627:Eu2+などのバリウムマグネシウムアルミン酸塩。
【0055】
本発明による方法は、異なる粒子サイズの球形粒子の製造のためだけに好適であるわけではない。多様な異なるドーピングを、少量であっても、塩溶液の混合およびスプレーから出発して、均一に導入し分配することができるので、このタイプの物質系を対応する様式で製造することも可能である。ある相構成を確立するためにその後の焼成プロセスが必要であっとしても、この目的のために設定される温度は、より低く選択され得、パウダーの形態および均質性は最終製品まで保持される。
【0056】
ドープしていない、およびCeでドープしたYAl12材料の比較から、ドーピングを伴ってさえ(例11参照)、スプレー熱分解後に存在するパウダーが、続く1200℃での熱処理によって、完全に立方晶相に変換されていることは、注目され得る。
【0057】
それらの球状の形態および他の幾何学的形状と比較して達成することができる、より大きな充填密度(packing density)のため、これらのパウダーは、発光体ベース材料として有利に用いることができる。したがって、これらは、例えば、無機および有機発光ダイオードなどのために、前記発光体を有する青色エミッターの組み合わせによって、白色光を放射する照明システムの製造のために特に有利に用いることができる。
【0058】
本発明により製造することができるパウダーの多様性はまた、透明であってもよく、任意に、続く熱処理を伴う、当該分野で慣用されているプラズマ溶射法、火炎スプレー法、スピンコーティング法、浸漬コーティング法によって製造され得る、耐摩耗性および引掻き抵抗性の層の、簡単で高価でない製造を容易にする。
【0059】

よりよい理解のためおよび本発明を例証するため、例を以下に示す;例1を除いて、本発明の保護の範囲内である。これらの例は、可能な変法を例証する役割も有する。しかしながら、記載された本発明の原理の一般的な妥当性のために、例は、それらのみへ本願の保護範囲を減縮するものとして適するものではない。
例において与えられる温度は常に℃である。さらに、いうまでもないことであるが、明細書および例において組成物の成分の添加量は常に総計100%に添加されている。与えられたパーセンテージは常に与えられた関連において考慮すべきである。しかしながら、通常は常に示した部分量または総量の重量に関する。
【0060】
例1(比較例、本発明によるものではない)
硝酸マグネシウム六水和物(分析用グレード、Merck KGaA製)および硝酸アルミニウム九水和物(分析用グレード、Merck KGaA製)を夫々、溶液が夫々、Mg6.365%およびAl4.70%の金属含量を有するように、超純水に別々に溶解した。金属含量は、錯滴定によって決定した。次いで、MgおよびAl元素をモル比1:2で含有するMg/Al混合硝酸塩溶液を激しく撹拌して調製した。
【0061】
この溶液を、水素と空気との燃焼によって生成した火炎へ2kg/hの供給量でスプレーした(水素火炎熱分解リアクタ)。ここで火炎温度は、>1000℃であり、基準点(反応ガスが反応チャンバから出るリアクタエンド)でのリアクタ温度は700℃である。パウダー産出は、0.2kg/hである。
【0062】
パウダー特性:
−焼成ロス:0.86%
−粒子サイズ分布:d50=4.7μm、d95=15.2μm、d99.9=38μm
−粒子形態:不整形、多数の孔(図1参照)
−比表面積(BET):38m/g
−相(X線回折法):十分に結晶化したスピネル(MgAl
【0063】
例2(本発明による)
硝酸マグネシウム六水和物(分析用グレード、Merck KGaA製)および硝酸アルミニウム九水和物(分析用グレード、Merck KGaA製)を夫々、溶液が夫々、Mg6.365%およびAl4.70%の金属含量を有するように、超純水に別々に溶解した。金属含量は、錯滴定によって決定した。次いで、MgおよびAl元素をモル比1:2で含有するMg/Al混合硝酸塩溶液を激しく撹拌して調製した。該溶液を1:1の割合で超純水で希釈した。
【0064】
次いで、硝酸塩含量に対し35%の量の硝酸アルミニウム(分析用グレード、Merck KGaA製)および全溶液重量に対し10%の量の脂肪アルコールエトキシレート(Lutensol AO3、BASF AG製)のさらなる添加を行った。
【0065】
2時間撹拌の後、この混合物を脈動リアクタ(試験工場スケール)の燃焼チャンバの、天然ガスと空気との無炎燃焼で生成した高温ガスの流れに、二成分ノズル(供給:空気の割合=0.5)によって、10kg/hの供給量で導入した。燃焼チャンバ温度は726℃であった。新たに形成された固体粒子と反応ガスとを伴なう高温ガスの流れは、燃焼チャンバを貫流した後、水素の形態のさらなる燃料の供給によって、共鳴管の中で1027℃に再加温された。
【0066】
フィルタに入る前、ガス/粒子の流れを外気の供給によって、約160℃に冷却した。これにより、ガスの流れからパウダー粒子を分離するために、高温ガスフィルタの代わりに安価なカートリッジフィルタを用いることが可能になる。
温度進行(temperature progression)を含む脈動リアクタの基本構造を図16に示す。
【0067】
付加的リアクタパラメータ:
−燃焼空気の量と燃料(天然ガス)の量との割合:
26:1
−追加燃料(H2)の量と燃料(天然ガス)の量との割合:
4.25:1
−二成分ノズルでの空気と供給材料(溶液)との割合:
2.35:1
【0068】
パウダー特性:
−焼成ロス:1.6%
−粒子サイズ分布:d50=1.8μm、d95=3.4μm、d99.9=6μm(図7参照)
−粒子形態:球形粒子(図2参照)
−比表面積(BET):25m/g
−相(X線回折法):十分に結晶化したスピネル(MgAl
【0069】
例3(本発明による)
硝酸イットリウム六水和物(Merck KGaA)および硝酸アルミニウム九水和物(分析用グレード、Merck KGaA製)を夫々、溶液が夫々、Y15.4%およびAl4.7%の金属含量を有するように、超純水に別々に溶解した。金属含量は、錯滴定によって決定した。次いで、YおよびAl元素をモル比3:5で含有するY/Al混合硝酸塩溶液を激しく撹拌して調製した。該溶液を1:1の割合で超純水で希釈した。
【0070】
次いで、硝酸塩含量に対し35%の量の硝酸アルミニウム(分析用グレード、Merck KGaA製)および全溶液重量に対し10%の量の脂肪アルコールエトキシレート(Lutensol AO3、BASF製)のさらなる添加を行った。
【0071】
2時間撹拌の後、この混合物を脈動リアクタ(試験工場スケール)の燃焼チャンバの、天然ガスと空気との無炎燃焼で生成した高温ガスの流れに、二成分ノズル(供給材料:空気の割合=0.5)によって、10kg/hの供給量で導入した。燃焼チャンバ温度は695℃であった。新たに形成された固体粒子と反応ガスとを伴なう高温ガスの流れは、燃焼チャンバを貫流した後、水素の形態のさらなる燃料の供給によって、共鳴管の中で1025℃に再加温された。
【0072】
付加的リアクタパラメータ:
−燃焼空気の量と燃料(天然ガス)の量との割合:
26:1
−追加燃料(H2)の量と燃料(天然ガス)の量との割合:
4.25:1
−二成分ノズルでの空気と供給材料(溶液)との割合:
2.35:1
【0073】
パウダー特性:
−焼成ロス:0.5%
−粒子サイズ分布:d50=1.4μm、d95=3μm、d99.9=5μm
−粒子形態:球形粒子(図5および6参照)
−比表面積(BET):7m/g
−相(X線回折法):YAl12(YAG)11%およびYAlO(YAP)89%の形態での結晶フラクション
空気中、1200℃、4時間の焼成後:
−比表面積(BET):5m/g
−相(X線回折法):YAl12(YAG)100%。
【0074】
例4(本発明による)
溶液の調製および脈動リアクタにおけるスプレー熱分解は例2に従った。
リアクタから放出されたパウダーを脱イオン水に分散し、固形成分含量を30重量%にした。該分散液を200分間、以下のパラメータで、1mmAlのボールを用いて、Fryma製「コボールミル(Coball Mill)」タイプの環状ギャップボールミルで磨砕した:
−ロータースピード 1900rpm;周速度13m/sに対応
−スループット 40kg/h
−pH 8
−総エネルギー入力 4.7kWh
続いて分散液をNiro Minor実験用スプレードライヤーで乾燥した。
【0075】
パウダー特性:
−焼成ロス:1.6%
−粒子サイズ分布:d50=0.4μm、d95=2.8μm、d99.9=4μm(図8参照)
−粒子形態:球形粒子
−比表面積(BET):35m/g
−相(X線回折法):スピネル(MgAl
【0076】
例5(本発明による)
硝酸イットリウムおよび硝酸アルミニウム溶液の調製および脈動リアクタでのスプレー熱分解は、例3に記載のように行った。
YAG相の可能な限り最も完全な形成のために、調製されたパウダーを4時間1130℃でチャンバ炉(chamber furnace)で焼成したところ、98.5%の立方晶のYAl12(YAG)および1.5%の六方最密のYAl1219を含むようになった。次いで、粗粒子を100MZR求心分級機(centripetal classifier)を用いて、分級ホイールスピード19,000rpm、エアスループット15m/hおよび製品スループット0.4kg/hで分離した。
【0077】
パウダー特性:
−焼成ロス:0.5%
−粒子サイズ分布:d50=0.48μm、d95=1.7μm、d99.9=3μm(図9参照)
−粒子形態:球形粒子
−比表面積(BET):21m/g
【0078】
例6(本発明による)
Magnesia- Produkte GmbH製Magnifin−H10タイプのMg(OH)0.06kgを、4.5%の金属含量を有する硝酸アルミニウム溶液1.2kgに分散し、0.254kgの硝酸アンモニウムを添加し、該混合物を実験用リアクタにスプレーし、例2と同じようにセットされた温度プロフィールで熱分解した。
【0079】
リアクタパラメータ:
−燃焼チャンバの温度:800℃
−共鳴管の温度:1080℃
−燃焼空気の量と燃料(天然ガス)の量との割合:
40:1
−二成分ノズルにおける供給材料:空気係数:0.4
【0080】
パウダー特性:
−焼成ロス:2.0%
−粒子サイズ分布:d50=3.2μm、d95=8.6μm、d99.9=15μm
−粒子形態:球形粒子
−比表面積(BET):18m/g
−相(X線回折法):スピネル(MgAl)、残留する単一の酸化物の検出なし(図10参照)。
再び超純水で1:1の割合で希釈したこの懸濁液の、例2に記載のような試験工場リアクタでのスプレーによって、以下の結果を得た。
【0081】
パウダー特性:
−焼成ロス:1.2%
−粒子サイズ分布:d50=2.1μm、d95=4.4μm、d99.9=6μm(図11参照)
−粒子形態:球形粒子
−比表面積(BET):26m/g
−相(X線回折法):スピネル(MgAl
【0082】
例7(本発明による)
Al成分としてのAlO(OH)を以下のサンプル重量で酢酸マグネシウム溶液(水溶液)に分散した。
−2.95kgの水に溶解した酢酸マグネシウム四水和物2.145kg
−Abemarle Corp製Martoxal BN−2AタイプのAlO(OH)1.20kg
該懸濁液を二成分ノズルによって、実験用リアクタにスプレーし、例2と同じようにセットされた温度プロフィールで熱分解した。
【0083】
リアクタパラメータ:
−燃焼チャンバの温度:780℃
−共鳴管の温度:1054℃
−燃焼空気の量と燃料(天然ガス)の量との割合:40:1
−二成分ノズルにおける供給材料:空気係数:0.4
【0084】
パウダー特性:
−焼成ロス:3.1%
−粒子サイズ分布:d50=2.1μm、d95=4.3μm、d99.9=8μm
−粒子形態:球形粒子
−比表面積(BET):30m/g
−相(X線回折法):スピネル(MgAl)の結晶フラクションならびにMgおよびAlの酸化物
例2の反応パラメータにて試験工場リアクタで処理すると、スピネルへの完全な変換が生じる。
【0085】
例8(本発明による)
アルミニウムトリイソプロポキシドを石油エーテル(沸点範囲100〜140℃の石油ベンジン、Merck KGaA製)に溶解し、次いで、微細に粒子化したMgエトキシドを、MgおよびAlがモル比1:2で存在するように分散した。これに続き、以下の条件下で、実験用脈動リアクタにおいてスプレー熱分解を行った。
【0086】
リアクタパラメータ:
−燃焼チャンバの温度:795℃
−共鳴管の温度:954℃
−燃焼空気の量と燃料(天然ガス)の量との割合:
41:1
−二成分ノズルにおける供給材料:空気係数:0.4.
温度プロフィール、すなわち、スプレー・インの位置での低下した温度、およびこれに続く共鳴管での温度の上昇をセットするために、高温ガス発生器を、燃焼チャンバの上流で用いた。前記の温度は、冷却空気を燃焼チャンバに供給すること、および共鳴管にエネルギーを補給することによってセットされる。
この場合、石油エーテルを介したエネルギーの付加的投入は、燃料ガスのわずかな付加的供給だけが行われることを意味する。
【0087】
パウダー特性:
−焼成ロス:3.5%
−100〜200nmの範囲の粒子サイズ(SEMによる;図12参照)
−粒子形態:球形粒子
−比表面積(BET):55m/g
−相(X線回折法):スピネル(MgAl
【0088】
例9(本発明による)
194.59gの酢酸バリウムを500mlのイソプロパノールに撹拌した。白い懸濁液が形成された(混合物1)。
別に、217.61gのオルトチタン酸テトライソプロピルおよび500mlのイソプロパノールの混合物を調製した(混合物2)。
混合物1および混合物2を撹拌しながら混合した。
この懸濁液を燃焼チャンバが800℃の実験用リアクタにスプレーし、例8に記載のように熱分解した。
【0089】
パウダー特性:
−粒子サイズ分布:d50=150nm、d95=220nm、d99.9=1μm
−粒子形態:球形粒子
−比表面積(BET:15m/g)
−相(X線回折法):BaTiO(正方晶)、TiO(ルチル)の残留物
【0090】
例10(本発明による)
Mg/Al混合硝酸塩溶液を例2に記載のように調製した。次いで、2:1の割合のドデシルメタクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートからなる、分子量5000g/molを有するランダムコポリマーの形態の乳化剤を石油エーテル(沸点範囲100から140℃の石油ベンジン、Merck KGaA製)に溶解し、35%溶液を得た。この溶液を、Mg/Al混合硝酸塩溶液と2:1の割合でスターラーを用いて混合した。約0.5時間のNiro/Soaviタイプの高圧ホモジナイザーによるポンプ循環によって、このように形成された混合物を、塩溶液が石油エーテル中に事前に形成された液滴として分散したエマルジョンに変換した。次いで、スプレー熱分解を、以下の条件にて、脈動リアクタ(試験工場スケール)で行った。
【0091】
リアクタパラメータ:
−燃焼チャンバの温度:1023℃
−共鳴管の温度:1026℃
−燃焼空気の量と燃料(天然ガス)の量との割合:
36:1
−二成分ノズルでの空気と供給材料との割合:
5.7:1
この場合、石油エーテルを介した付加的エネルギーの投入は、燃料ガスの付加的補給がないことを意味する。
【0092】
パウダー特性:
−焼成ロス:4.5%
−粒子サイズ分布:d50=0.8μm、d95=1.5μm、d99.9=2.5μm
−粒子形態:球形粒子
−比表面積(BET):28m/g
−相(X線回折法):スピネル(MgAl
【0093】
例11(本発明による)
硝酸イットリウム六水和物(Merck KGaA)、硝酸アルミニウム九水和物(分析用グレード、Merck KGaA製)および硝酸セリウム六水和物(「高純度(extrapure)」グレード、Merck KGaA)を夫々別々に超純水に溶解し、該溶液が、15.4重量%のY、4.7重量%のAlおよび25.2重量%のCeの金属含量を有するようにした。これに続いて、元素Y、AlおよびCeを2.91:5:0.09のモル比で含有するY/Al/Ce混合硝酸塩溶液を調製した。溶液を超純水で1:1の割合で希釈し、次いで、硝酸アンモニウム(分析用グレード、Merck KGaA製)を、硝酸塩含量に対し、35%の量でさらに加えた。
【0094】
この混合物を、例2と同じようにセットした温度プロフィールで、二成分ノズルによって、実験用リアクタにスプレーした。高温ガスフィルタによって、高温ガスの流れから粒子を分離した。
【0095】
リアクタパラメータ:
−燃焼チャンバの温度:760℃
−共鳴管の温度:1075℃
−燃焼空気の量と燃料(天然ガス)の量との割合:
42:1
−二成分ノズルの供給材料:空気係数:0.4
【0096】
パウダー特性:
−焼成ロス:0.5%
−粒子サイズ分布:d50=1.9μm、d95=4.1μm、d99.9=7μm
−粒子形態:球形粒子
−比表面積(BET):6.9m/g
−相(X線回折法):YAl12、YAlO、Yの形態の結晶フラクションおよび酸化物の形態と推定される不定形フラクション
空気中、1200℃、4時間の焼成後:
−比表面積(BET):4.5m/g
−相(X線回折法):100%立方晶の混合結晶相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩、酸化物、水酸化物、有機金属化合物の形態の出発材料を、個々にまたは混合物として、溶液、懸濁液または分散液にすること、および天然ガス/空気混合物もしくは水素/空気混合物の無炎脈動燃焼によってリアクタ内に発生した高温ガスの流れにこれらをスプレーすること、これらを熱分解すること、およびこれらを混合酸化物もしくは前駆体に変換することによる、平均粒子サイズ<10μmを有するコンパクトな球形粒子を含む混合酸化物パウダーのスプレー熱分解による製造方法であって、
スプレー・インの位置での温度が600〜1000℃、好ましくは700〜800℃に制限され、かつ、混合酸化物形成を促進するために、高温ガスの流れに対して、スプレー・インの位置の後の下流サイトにあるサイトで、熱分解リアクタに燃料を付加的に供給すること、もしくは、粒子サイズを制御するために、水/油エマルジョンの形態の溶液、懸濁液または分散液をスプレーし、熱分解することを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
天然ガスまたは水素の形態の付加的な燃料の追加を、総滞留時間の20〜40%、好ましくは30%のリアクタにおける物質の滞留時間の後に行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
用いる出発材料が、硝酸塩、塩化物、水酸化物、酢酸塩、エトキシド、ブトキシドまたはイソプロポキシド、またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
用いる出発材料が、IIA族(IUPAC:2)、IIIA族(13)、IIIB族(3)およびIVB族(4)、VIB族およびVIIB族の元素の塩、水酸化物または有機金属化合物であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
用いる出発材料が、IIA族およびIIIB族の元素、Alおよび/またはTiの、塩、酸化物、水酸化物または有機金属化合物であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
発熱分解による付加的熱エネルギーを生成し、同時に酸化作用を有する無機物質を、スプレーする溶液、分散液または懸濁液に添加することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
付加的に添加する物質が、硝酸塩、好ましくは硝酸アンモニウムであり、添加する量が、用いる出発材料の量に対して、10〜80%、好ましくは25〜50%であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
界面活性剤を、スプレーする溶液、分散液または懸濁液に添加することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
用いる界面活性剤が、溶液の総量に対して、1〜10重量%、好ましくは3〜6重量%の量の脂肪アルコールエトキシレートであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
水/油エマルジョンの製造のために、水に溶解した硝酸塩および/または塩化物の混合物を炭化水素に導入し、機械的剪断力により液滴を得るために分散し、補助剤の添加により安定化することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
沸点範囲80〜180℃、好ましくは100〜140℃を有する石油ベンジンを、それに可溶であり、2〜8の範囲のHLB(親水性−親油性バランス)値を有する乳化剤と組合わせて用いることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
用いる乳化剤が、ソルビタン脂肪酸誘導体および異なるHLB値を有するその混合物であることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
用いる乳化剤が、脂肪酸ソルビタンエステルと、親水性側鎖を有する少なくとも1つのモノマーおよび疎水性側鎖を有する少なくとも1つのモノマーを含み、分子量が1000〜50,000、好ましくは、2000〜20,000のランダムコポリマーとの混合物であることを特徴とする、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
用いるランダムコポリマーが、一般式I
【化1】

式中、
基XおよびYは、慣用の非イオン性またはイオン性モノマーに対応し、Rは、水素または、少なくとも4個の炭素原子を有する分枝状または非分枝状のアルキル基であって、その1個または2個以上の水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい前記アルキル基から選択される疎水性側基を示し、Rに独立して、
は、ホスホン酸塩、スルホン酸塩、多価アルコールまたはポリエーテル基を有する親水性側基を示す、
で表されるコポリマーである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
平均粒子サイズが1〜5μmの範囲であり、3〜30m/g、好ましくは5〜15m/gの範囲の比表面積(BET法による)を有し、コンパクトな球形形態を有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法で製造されたアルミン酸塩およびチタン酸塩をベースとした混合酸化物パウダー。
【請求項16】
平均粒子サイズが0.1〜1μmの範囲であり、10〜60m/g、好ましくは20〜40m/gの範囲の比表面積(BET法による)を有し、コンパクトな球形形態を有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法で製造されたアルミン酸塩およびチタン酸塩をベースとした混合酸化物パウダー。
【請求項17】
高密度、高強度で、任意に透明なバルク材の製造のための、請求項15または16に記載の混合酸化物パウダーの使用。
【請求項18】
平均粒子サイズが0.01〜0.2μmの範囲であり、20〜100m/g、好ましくは40〜80m/gの範囲の比表面積(BET法による)を有し、球形形態を有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法で製造されたアルミン酸塩およびチタン酸塩をベースとした混合酸化物パウダー。
【請求項19】
ホットプレス技術による高密度、高強度で、任意に透明なバルク材の製造のための、請求項18に記載の混合酸化物パウダーの使用。
【請求項20】
発光体のベース材料として、または発光体として、またはセラミック製造の出発材料としての請求項15、16または18に記載の混合酸化物パウダーの使用。

【公表番号】特表2008−529758(P2008−529758A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551563(P2007−551563)
【出願日】平成17年12月24日(2005.12.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/014028
【国際公開番号】WO2006/076964
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】