スペースフレーム構造を有する自動車
【課題】スペースフレーム構造を有する自動車に関し、安価で、軽量かつ高剛性、高強度なFRPパイプを使用した自動車用ボディを提供し、温度変化による熱膨張時にも強度低下を引き起こさず、フレーム全体が導通した構造を提供する。
【解決手段】ボディ1の内部にFRPパイプ2で構成されたスペースフレーム構造を構築する。自動車進行方向を向いたFRPパイプは、長手方向を向いた繊維量が周方向を向いた繊維量よりも多い。自動車進行方向に対し直角方向を向き走行面に水平に設置されたFRPパイプは、長手方向に対し45度を向いた繊維で形成される。各FRPパイプ内には導線が通されており、各FRPパイプを締結する金属製の締結部材3と電気的に接触している。
【解決手段】ボディ1の内部にFRPパイプ2で構成されたスペースフレーム構造を構築する。自動車進行方向を向いたFRPパイプは、長手方向を向いた繊維量が周方向を向いた繊維量よりも多い。自動車進行方向に対し直角方向を向き走行面に水平に設置されたFRPパイプは、長手方向に対し45度を向いた繊維で形成される。各FRPパイプ内には導線が通されており、各FRPパイプを締結する金属製の締結部材3と電気的に接触している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペースフレーム構造を有する自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(以下「FRP」という)は、比重に対する強度と剛性が大きいので、軽量化かつ高剛性化のために、航空機やレーシングカーなどの高速移動体や、風力発電用風車などの回転体に使用されることが多い。自動車へのFRPの適用は、非特許文献1に記載されているような一部の高級スポーツカーの車体に炭素繊維強化のエポキシ樹脂積層体が使用されているのみで、大衆車にはほとんど使用されていない。これは、FRPの成型に大型の金型が必要であること、樹脂の加熱成型に時間がかかること、及びFRPと金属部品の締結方法が確立していないことが主な理由と考えられる。
【0003】
特にFRPと金属の締結法に関しては、エンジンの回転を車輪に伝えるためのドライブシャフトに炭素繊維強化エポキシ樹脂が使用された例があり、特開平5−164115号公報にパイプ継ぎ手構造が記載されている。これは、FRPパイプを強度上の信頼性を損ねることなく金属締結体と嵌合させる構造についてのアイデアであり、FRPパイプの端部の半径を中間部の半径よりも大きくとり、金属締結体から抜けにくくしたものである。このほかのFRPと金属の締結に関して、特開昭50−128052号公報には、FRPパイプ端部に切り込みを入れて溝を作り、この溝に金具をはさむことで締結を完了するアイデアが記載されている。実開昭51−138100号公報や実開昭55−057506号公報や実開昭60−161793号公報には、FRPパイプの端部外周側にスリーブを嵌め込み、楔の効果で金属締結体から抜けにくくしたアイデアが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−164115号公報
【特許文献2】特開昭50−128052号公報
【特許文献3】実開昭51−138100号公報
【特許文献4】実開昭55−057506号公報
【特許文献5】実開昭60−161793号公報
【非特許文献1】Mercedes Benz社ホームページ(http://www.mercedes-benz.co.jp/slr/index2.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術には次のような課題がある。FRPは繊維で強化された樹脂であるため、繊維をなるべく屈曲させないで使うことが望ましい。繊維が曲がっていると、FRP部材に荷重がかかった際に繊維が容易に樹脂の中で座屈してしまい、必要な剛性と強度が出ない。したがって、FRPの使用に際しては、極力繊維を曲げないことが重要である。
【0006】
非特許文献1に記載の例では、FRPボディを構成するために滑らかな車体曲面に合わせてFRPの強化繊維を曲げながら積層しているので、鋼製ボディと同等の剛性や強度を確保するためには、繊維層を厚くする必要が生じる。この結果として、軽量化の効果が薄くなる。
【0007】
また、FRPパイプと金属の締結構造に関する従来技術で、FRPパイプの端部を太くするアイデアでは、設計する対象ごとにFRPパイプを成型する必要があり、専用金型を複数種類準備しなくてはならず、低コストには製造できない。
【0008】
また、FRPの端部に切り込みを加工してしまっては、強度上一番重要な締結部の強化繊維を切断してしまうことになり、強度低下が著しくなってしまう。
【0009】
また、FRPパイプの外周にスリーブを嵌め、その外周におかれた金属ねじで外周側から面圧を付与するアイデアでは、面圧がパイプ外周側からしか与えられていない。このため、熱膨張時には、外周の金属ねじやスリーブは半径方向外側に大きく膨張するのに対し、FRPは線膨張率が金属に比べて小さいため、FRPパイプ側は半径方向外向きにそれほど膨張しない。この結果として、パイプ外側から締め上げている金属ねじやスリーブとFRPパイプとの間の面圧が低下してしまう。
【0010】
本発明の目的は、安価に、軽量かつ高剛性、高強度なFRPパイプを用いた自動車用ボディを提供することにあり、温度変化による熱膨張時にも強度低下を引き起こさないFRPパイプと金属との締結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を有するスペースフレーム構造を有する自動車を提供する。
【0012】
スペースフレーム構造を有する自動車において、前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成される。前記パイプを形成する繊維は、パイプ長手方向を向いた繊維とパイプ周方向を向いた繊維との組み合わせから成る。前記自動車の進行方向を向いた前記パイプは、前記パイプ長手方向を向いた繊維の量が、前記パイプ周方向を向いた繊維の量よりも多い。複数の前記パイプは、金属製の締結部材を介して締結される。
【0013】
また、スペースフレーム構造を有する自動車において、前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成される。前記パイプの内部には、導線が通されている。前記パイプの外表面には、金属製の端子が設けられている。前記パイプには穴が設けられ、この穴を通して前記導線と前記端子とが電気的に接続されている。
【0014】
また、スペースフレーム構造を有する自動車において、前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成される。前記パイプのうち、前記自動車の進行方向に対して直角方向を向き、かつ前記自動車の走行面に対して水平に設置されたパイプは、パイプ長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維で形成される。
【0015】
また、スペースフレーム構造を有する自動車において、前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成される。前記パイプを形成する繊維は、パイプ長手方向を向いた繊維と、パイプ長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維と、パイプ周方向を向いた繊維との組み合わせから成る。前記パイプ長手方向を向いた繊維と前記パイプ周方向を向いた繊維は、前記パイプの外表面部及び内表面部に存在する。前記パイプ長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維は、前記パイプの板厚方向の中心部に存在する。
【0016】
好ましくは、前記所定の角度は45度である。
【0017】
また、スペースフレーム構造を有する自動車において、前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成される。前記パイプを形成する繊維は、短繊維でできている。
【0018】
また、スペースフレーム構造を有する自動車において、前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成される。複数の前記パイプは、金属製の締結部材を介して締結される。前記パイプの表面には、導体が巻きつけられている。前記締結部材とこの締結部材に締結された前記パイプとは、前記導体により電気的に接続している。
【0019】
また、スペースフレーム構造を有する自動車において、前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成される。複数の前記パイプの間の一部には、箱構造が形成されている。
【0020】
また、スペースフレーム構造を有する自動車において、前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成される。前記パイプの端部の周縁部には、導通体がはめ込まれている。前記導通体は、前記パイプの端部の内周側と外周側とを覆う。前記導通体の前記パイプの内周側には、前記パイプの半径方向外側に変形可能な導電性の内側締め上げ材が挿設される。前記導通体の前記パイプの外周側には、前記パイプの半径方向内側に変形可能な導電性の外側締め上げ材が周設される。前記内側締め上げ材と前記外側締め上げ材とは、ねじ締結され、前記導通体に前記パイプの内周側と外周側とから面圧を付与する。
【0021】
好ましくは、前記パイプを形成する繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維、炭化珪素繊維、またはアルミナセラミクス繊維であり、前記パイプを形成する樹脂は、熱硬化樹脂、または熱可塑性樹脂である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるスペースフレーム構造を有する自動車は、FRPパイプの強化繊維が屈曲していないため、繊維方向の剛性や強度が有効に保たれ、必要最小限の板厚のFRPパイプで構成できて軽量となる。そして、自動車の進行方向のパイプは、主に車重でたわみ変形を起こすが、進行方向の強化繊維を多く配合することでたわみ量が小さくなる効果が生まれる。さらに、強度設計が困難な締結部も金属製とすることで、充分に安全な締結部材が提供できる。繊維方向を適宜変えることで、自動車各部に有効な剛性が発生でき、軽量化できる。
【0023】
また、パイプ内部に導線を配し、金属締結体を介して互いに連結することで、スペースフレーム構造がすべて導通状態となり、電装品の搭載時にボディアースが簡便にとれる効果が生まれる。パイプ表面に導通体が施されることで、落雷時に電流がフレーム構造全体に流れやすくなり、局所的な発熱によるダメージを防ぐことができる。
【0024】
FRPパイプの締結構造として、パイプ外周側と内周側から面圧を付与することができ、熱変形時にも常にパイプに締め上げ力が維持されることとなるため、強度上の信頼性が極めて高くなる。なお、強化繊維や樹脂の種類を自動車各部で変えることで、前面、後面、側面に衝撃吸収能力の高いFRPパイプを配することが可能となり、安全性が増す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】自動車の透視図である。
【図2】自動車の前部左側の一部断面図である。
【図3】自動車のスペースフレームの斜視図である。
【図4】導線と端子を有する、軸方向を向いた繊維と周方向を向いた繊維とでできたFRPパイプの斜視図である。
【図5】導線と端子を有する、軸方向を向いた繊維と周方向を向いた繊維とでできたFRPパイプの長手方向の断面図である。
【図6】導線と端子を有する、長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維でできたFRPパイプの斜視図である。
【図7】軸方向を向いた繊維と周方向を向いた繊維と長手方向に対して±45度の方向を向いた繊維とでできたFRPパイプの斜視図である。
【図8】短繊維でできたFRPパイプの斜視図である。
【図9】FRPパイプの表面に導体の箔または網が巻きつけられた、自動車のスペースフレーム構造の斜視図である。
【図10】車体下部のFRPパイプ間に収納箱を配した、自動車のスペースフレーム構造の斜視図である。
【図11】FRPパイプの端部の断面図である。
【図12】内側締め上げ材の斜視図である。
【図13】外側締め上げ材の斜視図である。
【図14】FRPパイプとFRPパイプの端部に接続する金属締結体との斜視図である。
【図15】FRPパイプとFRPパイプの途中に挟み込む金属締結体との斜視図である。
【図16】軸方向を向いた繊維と周方向を向いた繊維とでできたFRPパイプの斜視図である。
【図17】長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維でできたFRPパイプの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明によるスペースフレーム構造を有する自動車の実施例を、図を用いて説明する。
【実施例1】
【0027】
本発明の実施例1を、図1〜図3と図16、図17を用いて説明する。図1は自動車の透視図、図2は自動車の前部左側の一部断面図、図3は自動車のスペースフレームの斜視図、図16はパイプの軸方向を向いた繊維と周方向を向いた繊維とでできたFRPパイプの斜視図、図17はパイプの長手方向に対して所定の角度(±45度)の方向を向いた繊維でできたFRPパイプの斜視図である。
【0028】
図1に示すように、ボディ1は自動車の表面を覆うカバーであり、風雨から内部の機器や搭乗人員を保護し、適度な保温をするための断熱材や防音材がその内側に貼られている部材である。また、高速走行時の空力的安定を保つための滑らかな曲面から形成されている。ボディ1の内部には、FRP(繊維強化プラスチック)で製作された筒状のパイプ2が組み合わされている。FRPパイプ2は直線状をしており、FRPパイプ2同士の結合部には金属製の締結体3を介している。
【0029】
図2に示すように、FRPパイプ2で組み合わされたスペースフレーム構造には、自動車を駆動するためのエンジンまたはモータ4が固定される。また、エンジンまたはモータ4からの出力軸5の先には、制動装置を内在したホイール6が取り付けられる。ホイール6は、サスペンションアーム7とバネとダッシュポット8によって、上下方向に適当なバネ定数と減衰定数をもって支持される。これらサスペンションアーム7とバネとダッシュポット8の一端は、スペースフレーム構造を構成しているFRPパイプ2に固定される。車体下面には、パネル9がFRPパイプ2に取り付けられ、地上からの風雨から自動車搭載物を保護している。パネル9は、乗車人員のいる居住空間とエンジンまたはモータ4や制御装置10の置かれた空間とを仕切る目的にも使用され、走行中の騒音や熱から乗員を守る。
【0030】
図3を用いて、本実施例による自動車のスペースフレーム構造について説明する。本スペースフレーム構造は、自動車進行方向を向いたパイプ11と自動車進行方向に直角方向を向いたパイプ12とから構成される。パイプ12は、自動車の走行面に対して水平に設置されている。パイプ11とパイプ12は、長繊維強化の樹脂で製作される。
【0031】
自動車進行方向を向いたパイプ11は、図16に示すように、パイプ長手方向を向いた繊維13(0度方向繊維13)とパイプ周方向を向いた繊維14(90度方向繊維14)とで構成される。0度方向繊維13の繊維量は、90度方向繊維14の繊維量よりも多くなっている。FRPは繊維が張っている方向の剛性や強度が高いため、パイプ長手方向(すなわち、自動車進行方向)を向いた繊維量を多くすることで車重によるたわみ量を小さくでき、必要最低限の板厚のFRPによって車重が作用する方向の剛性や強度を高くできる。そのため、車重を軽くすることができる。
【0032】
自動車進行方向に直角方向を向いたパイプ12は、図17に示すように、パイプ長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維17で構成される。この所定の角度は、剛性や強度を考慮すると±45度が望ましいので、本実施例及び以下の実施例において±45度とする。したがって、パイプ長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維を、パイプ長手方向に対して±45度を向いた繊維17(±45度方向繊維17)と称する。このように、自動車進行方向に直角方向を向いたパイプ12を±45度方向繊維17で構成することで、主にねじり荷重が作用するパイプ12のねじり剛性と強度とが必要最小限の板厚で大きくなり、パイプを軽くすることができる。
【0033】
進行方向を向いたパイプ11において、車体下面に配されるパイプの太さと、車体上面に配されるパイプの太さを比べた場合、車体上面に配されるパイプの方を太くするのが望ましい。車重の作用により、車体下面のパイプには曲げ変形によって引張り力が作用し、車体上面のパイプには圧縮力が作用するが、車体上面のパイプを太くすることで、圧縮による座屈を防止できる。
【0034】
このように、本実施例によれば、軽量で剛性や強度の高いスペースフレーム構造を有する自動車を提供できる。
【実施例2】
【0035】
本発明の実施例2を、図4、図5を用いて説明する。図4は、導線と端子を有する、軸方向を向いた繊維と周方向を向いた繊維とでできたFRPパイプの斜視図であり、図5は、導線と端子を有する、軸方向を向いた繊維と周方向を向いた繊維とでできたFRPパイプの長手方向の断面図である。
【0036】
FRPパイプ2は、繊維強化の樹脂で製作される。この強化繊維は、図4に示すように、0度方向繊維13とこれに直角な90度方向繊維14との積層構成となっている。
【0037】
本実施例では、FRPパイプ2の内部には導線15が通されており、外表面には金属製の端子16が設けられている。端子16は、図5に示すように、FRPパイプ2の外表面に露出しており、FRPパイプ2に設けられた穴40から通された導線15と電気的に接続される。
【0038】
従来の金属製ボディの場合には、一般にボディアースと呼ばれる、バッテリーのグランド端子(マイナス端子)をボディ側に接続することがよく行われる。FRPは電気抵抗が金属よりも大きいため、FRPスペースフレーム構造でボディアースをとるためには、積極的にパイプ内に導線を通しておく必要がある。本実施例によるFRPパイプ2を用いてスペースフレーム構造を有する自動車を製作し、バッテリーのマイナス端子を導線15と接続すれば、FRPパイプが存在するところではどこでも、端子16を介してバッテリーのマイナス端子と接続できるため、配線作業が容易になる。
【実施例3】
【0039】
本発明による実施例3を、図6を用いて説明する。図6は、導線と端子を有する、長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維でできたFRPパイプの斜視図である。本実施例でも、FRPパイプ2を構成しているFRPの強化繊維17は、パイプ長手方向に対して±45度の方向を向いている。
【0040】
本実施例によれば、FRPパイプ2は、主にねじり荷重が負荷される場合、強化繊維17が張る方向に変形するため、少ない繊維量で必要な剛性と強度を保つことができる。本FRPパイプ2は、主に自動車の進行方向に対して直角方向を向き、かつ自動車の走行面に対して水平なスペースフレーム構造のパイプ(図3に示した、自動車進行方向に直角方向を向いたパイプ12)に使用することでその効果を最大限に発揮できる。
【実施例4】
【0041】
本発明の実施例4を、図7を用いて説明する。図7は、軸方向を向いた繊維と周方向を向いた繊維と長手方向に対して所定の角度(±45度)の方向を向いた繊維とでできたFRPパイプの斜視図である。本実施例では、1つのFRPパイプ2は、異なる4方向を向いている強化繊維から構成されている。すなわち、強化繊維の方向がパイプ長手方向を向いているもの(0度方向繊維13)と、パイプ周方向を向いているもの(90度方向繊維14)と、±45度方向を向いているもの(±45度方向繊維17)とが混在して、同一のパイプを構成している。
【0042】
FRPパイプ2に作用する荷重方向が明確な場合、すなわち負荷が曲げ荷重かねじり荷重か明確な場合は、その負荷形態に応じて強化繊維を配向できる。荷重方向が不明な場合には、図7に示したように、曲げ応力が最も高いFRPパイプ2の外表面部に0度方向繊維13と90度方向繊維14とを配し、せん断応力が最も高くなるFRPパイプ2の板厚方向の中心部に±45度方向繊維17を配しておくことで、いずれの荷重に対しても有効に強化繊維を作用させることができる。この場合、FRPパイプ2の内表面部には、0度方向繊維13と90度方向繊維14とを配しておく。
【実施例5】
【0043】
本発明の実施例5を、図8を用いて説明する。図8は、短繊維でできたFRPパイプの斜視図である。本実施例では、FRPパイプ2を構成するFRPの繊維は、短繊維18である。短繊維を用いた樹脂は長繊維のものより成型が簡単であり、コストも安いという長所がある。また繊維の種類も豊富であるため、目的に応じて繊維の種類を選べる。例えば、アラミド有機繊維は変形の吸収エネルギが高いため、防弾チョッキなどに使用されるが、この繊維を配したFRPパイプ2を車体側面に設けることで、衝突時の安全性が高くなる。このように、FRPパイプ2の強度や剛性にそれほど高いものを求めない場合、短繊維によってその機能を有効に発揮できる。
【実施例6】
【0044】
本発明の実施例6を、図9を用いて説明する。図9は、FRPパイプの表面に導体の箔または網が巻きつけられた、自動車のスペースフレーム構造の斜視図である。本実施例において、スペースフレーム構造の最外周部(車体の外表面に近い部分)に配されるFRPパイプの表面には、導体でできた箔または網19が巻きつけられている。箔または網19は、FRPパイプ同士を結合する金属締結体3と電気的に接続するように巻きつけられる。
【0045】
本実施例によれば、落雷時に車体の外表面に流れる電流を、FRPパイプの表面に巻きつけられた箔または網19に流すことで、FRP自体の加熱を防ぎ損傷を最低限にすることができる。また、FRPパイプのうち、車体の外表面に最も近いパイプにのみ箔または網19を巻きつけることで重量の増加を最低限にすることができ、FRPの落雷時の損傷を防ぐことができる。
【実施例7】
【0046】
本発明の実施例7を、図10を用いて説明する。図10は、車体下部のFRPパイプ間に収納箱を配した、自動車のスペースフレーム構造の斜視図である。本実施例では、車体下部のFRPパイプ2間にFRP製の収納箱20が形成されている。収納箱20は金属製でも良いが、軽量な車体を提供する目的を達成するためにはFRPが望ましい。この収納箱20の中には、電気自動車であればバッテリー21が、エンジン車であれば燃料タンクが入る。図10には、バッテリー21を入れた場合を示している。本実施例によれば、通常は積載時にスペースを非常にとってしまうバッテリー21や燃料タンクが、スペースフレームのFRPパイプ2間のデッドスペースに有効に配置できるため、自動車をコンパクトにすることができる。
【実施例8】
【0047】
本発明の実施例8を、図11〜図15を用いて説明する。本実施例は、FRPパイプにおける金属締結体との連結部に関するものである。図11はFRPパイプの端部の断面図、図12は内側締め上げ材の斜視図、図13は外側締め上げ材の斜視図、図14はFRPパイプとFRPパイプの端部に接続する金属締結体との斜視図、図15はFRPパイプとFRPパイプの途中に挟み込む金属締結体との斜視図である。
【0048】
図11に示すように、FRPパイプ2には、端部の周縁部を覆うように導通プレート22がはめ込まれる。導通プレート22によって、FRPパイプ2の端部は、内周側と外周側とが覆われる。導通プレート22のFRPパイプ2の内周側には、導線15の端部が電気的に接続されている。
【0049】
FRPパイプ2には、導通プレート22がはめ込まれた端部から、内側締め上げ材23が内周側に挿入される。導通プレート22の外周側には、外側締め上げ材26がはめ込まれ、内側締め上げ材23とねじ締結される。なお、内側締め上げ材23と外側締め上げ材26は、導電性の材料、例えばアルミ合金や鋼などの金属で作成される。
【0050】
内側締め上げ材23は、図12に示すように、導通プレート22と接する部分にスリット24が加工され、FRPパイプ2の半径方向外側に変形しやすくなっている。さらに、このスリット24加工部には、周方向の溝25が形成される。
【0051】
外側締め上げ材26は、図13に示すように、導通プレート22と接する部分にスリット32が加工され、FRPパイプ2の半径方向内側に変形しやすくなっている。さらに、このスリット32加工部には、周方向の溝33が形成される。
【0052】
図11に戻って説明を続ける。内側締め上げ材23の中心部には、内側インサート材27が締め上げボルト28と締め上げナット29によって固定される。この際、ボルト28を締め上げていくことで、スリット24が半径方向外側に開き、導通プレート22に内側から圧力をかける。
【0053】
一方、外側締め上げ材26には、図11に示すように断面がくさび形の溝31が設けられ、外側インサート材30が溝31にはめ込まれる形で接している。外側締め上げ材26を周方向に回していくことで、外側インサート材30が溝31に圧力を与え、スリット32が加工された部分が半径方向内側に変形する。こうして導通プレート22の外側から面圧がかかる。
【0054】
内側締め上げ材23の溝25と外側締め上げ材26の溝33は、導通プレート22との摩擦係数を高め、嵌合力を大きくする効果を生む。
【0055】
本実施例によれば、内側締め上げ材23と外側締め上げ材26とにより、FRPパイプ2に対して、その内周側からも外周側からも独立して面圧を与えることができる。このため、使用環境によって外気温が変化し、線膨張率の違いによるFRPパイプ2と金属締結体の変形があっても、安定した締結力が維持できる。例えば、組み立て時から温度が低下した場合には、FRPパイプ2はあまり変形しないが、内側締め上げ材23も外側締め上げ材26も半径方向内側に変形する。このとき、内側締め上げ材23による面圧をあらかじめ十分にかけておくことで、冷却時にも内側からの締め上げ力がなくならない。温度が上昇した場合にも、外側締め上げ材26による面圧を十分にかけておくことで、外側からの締め上げ力がなくならない。
【0056】
そして、導通プレート22を介して内側締め上げ材23と外側締め上げ材26とが電気的に接触しているため、FRPパイプ2内の導線15とは組み上げるだけで導通する効果を生む。
【0057】
また、図11に示すように、FRPパイプ2の締め上げボルト28の端部に球加工34を施しておくことで、FRPパイプ2と金属締結体との連結の自由度を高くすることができる。
【0058】
図14に示すように、金属締結体は、締結ブロック35と締結プレート36とボルト37とから構成されている。締結ブロック35は、締め上げボルト28の球加工34の半径より小さい穴を有し、この穴に球加工34を締結させることでFRPパイプ2と接続する。また、締結プレート36とボルト37によって、締結ブロック35と球加工34とは、任意の形状や角度で締結することができる。
【0059】
締結ブロック35を導電性の材質にしておくことで、1つの金属締結体に接続するすべてのFRPパイプ2内の導線15が導通することになる。したがって、本締結構造を用いて製作したスペースフレーム構造は、ボディアースが容易に形成できる効果を生む。締結ブロック35は直方体である必要はなく、任意の傾きをもった面を形成しておくことでFRPパイプ2との接続角度を調整できる。
【0060】
以上のように、締結部品すべてを金属で製作しておくことで、その強度設計も容易になると同時に、締結部品の共通化が図れ、複数種類の締結部品をあらかじめ製作する手間も省ける。
【0061】
図15には、一本のFRPパイプ2の途中部分に金属締結体を挟み込んで、他のFRPパイプ2を接続する例を示す。この例では、金属締結体は締結部材38からなり、締結部材38がFRPパイプ2の途中部分を挟み込んでいる。
【0062】
本実施例によれば、FRPパイプ2の強化繊維を無用に切断することなく、高剛性、高強度を維持したままFRPパイプ2同士の結合が可能になる。
【0063】
なお、本明細書に記載されたFRPパイプを構成するFRPの強化繊維は、長繊維、短繊維ともに、炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維、炭化珪素繊維、またはアルミナセラミクス繊維で製作されており、FRPの樹脂が熱硬化樹脂、または熱可塑性樹脂で製作されているものとする。
【符号の説明】
【0064】
2…FRPパイプ、3…金属締結体、11…自動車進行方向を向いたパイプ、12…自動車進行方向に直角方向を向いたパイプ、13…0度方向繊維、14…90度方向繊維、15…導線、16…端子、17…±45度方向繊維、18…短繊維、19…導体でできた箔または網、20…FRP製収納箱、21…バッテリー、22…導通プレート、23…内側締め上げ材、24…スリット、25…周方向の溝、26…外側締め上げ材、27…内側インサート材、28…締め上げボルト、29…締め上げナット、30…外側インサート材、31…溝、32…スリット、33…周方向の溝、34…球加工、35…締結ブロック、36…締結プレート、37…ボルト、40…穴。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペースフレーム構造を有する自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(以下「FRP」という)は、比重に対する強度と剛性が大きいので、軽量化かつ高剛性化のために、航空機やレーシングカーなどの高速移動体や、風力発電用風車などの回転体に使用されることが多い。自動車へのFRPの適用は、非特許文献1に記載されているような一部の高級スポーツカーの車体に炭素繊維強化のエポキシ樹脂積層体が使用されているのみで、大衆車にはほとんど使用されていない。これは、FRPの成型に大型の金型が必要であること、樹脂の加熱成型に時間がかかること、及びFRPと金属部品の締結方法が確立していないことが主な理由と考えられる。
【0003】
特にFRPと金属の締結法に関しては、エンジンの回転を車輪に伝えるためのドライブシャフトに炭素繊維強化エポキシ樹脂が使用された例があり、特開平5−164115号公報にパイプ継ぎ手構造が記載されている。これは、FRPパイプを強度上の信頼性を損ねることなく金属締結体と嵌合させる構造についてのアイデアであり、FRPパイプの端部の半径を中間部の半径よりも大きくとり、金属締結体から抜けにくくしたものである。このほかのFRPと金属の締結に関して、特開昭50−128052号公報には、FRPパイプ端部に切り込みを入れて溝を作り、この溝に金具をはさむことで締結を完了するアイデアが記載されている。実開昭51−138100号公報や実開昭55−057506号公報や実開昭60−161793号公報には、FRPパイプの端部外周側にスリーブを嵌め込み、楔の効果で金属締結体から抜けにくくしたアイデアが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−164115号公報
【特許文献2】特開昭50−128052号公報
【特許文献3】実開昭51−138100号公報
【特許文献4】実開昭55−057506号公報
【特許文献5】実開昭60−161793号公報
【非特許文献1】Mercedes Benz社ホームページ(http://www.mercedes-benz.co.jp/slr/index2.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術には次のような課題がある。FRPは繊維で強化された樹脂であるため、繊維をなるべく屈曲させないで使うことが望ましい。繊維が曲がっていると、FRP部材に荷重がかかった際に繊維が容易に樹脂の中で座屈してしまい、必要な剛性と強度が出ない。したがって、FRPの使用に際しては、極力繊維を曲げないことが重要である。
【0006】
非特許文献1に記載の例では、FRPボディを構成するために滑らかな車体曲面に合わせてFRPの強化繊維を曲げながら積層しているので、鋼製ボディと同等の剛性や強度を確保するためには、繊維層を厚くする必要が生じる。この結果として、軽量化の効果が薄くなる。
【0007】
また、FRPパイプと金属の締結構造に関する従来技術で、FRPパイプの端部を太くするアイデアでは、設計する対象ごとにFRPパイプを成型する必要があり、専用金型を複数種類準備しなくてはならず、低コストには製造できない。
【0008】
また、FRPの端部に切り込みを加工してしまっては、強度上一番重要な締結部の強化繊維を切断してしまうことになり、強度低下が著しくなってしまう。
【0009】
また、FRPパイプの外周にスリーブを嵌め、その外周におかれた金属ねじで外周側から面圧を付与するアイデアでは、面圧がパイプ外周側からしか与えられていない。このため、熱膨張時には、外周の金属ねじやスリーブは半径方向外側に大きく膨張するのに対し、FRPは線膨張率が金属に比べて小さいため、FRPパイプ側は半径方向外向きにそれほど膨張しない。この結果として、パイプ外側から締め上げている金属ねじやスリーブとFRPパイプとの間の面圧が低下してしまう。
【0010】
本発明の目的は、安価に、軽量かつ高剛性、高強度なFRPパイプを用いた自動車用ボディを提供することにあり、温度変化による熱膨張時にも強度低下を引き起こさないFRPパイプと金属との締結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の特徴を有するスペースフレーム構造を有する自動車を提供する。
【0012】
スペースフレーム構造を有する自動車において、前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成される。前記パイプを形成する繊維は、パイプ長手方向を向いた繊維とパイプ周方向を向いた繊維との組み合わせから成る。前記自動車の進行方向を向いた前記パイプは、前記パイプ長手方向を向いた繊維の量が、前記パイプ周方向を向いた繊維の量よりも多い。複数の前記パイプは、金属製の締結部材を介して締結される。
【0013】
また、スペースフレーム構造を有する自動車において、前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成される。前記パイプの内部には、導線が通されている。前記パイプの外表面には、金属製の端子が設けられている。前記パイプには穴が設けられ、この穴を通して前記導線と前記端子とが電気的に接続されている。
【0014】
また、スペースフレーム構造を有する自動車において、前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成される。前記パイプのうち、前記自動車の進行方向に対して直角方向を向き、かつ前記自動車の走行面に対して水平に設置されたパイプは、パイプ長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維で形成される。
【0015】
また、スペースフレーム構造を有する自動車において、前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成される。前記パイプを形成する繊維は、パイプ長手方向を向いた繊維と、パイプ長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維と、パイプ周方向を向いた繊維との組み合わせから成る。前記パイプ長手方向を向いた繊維と前記パイプ周方向を向いた繊維は、前記パイプの外表面部及び内表面部に存在する。前記パイプ長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維は、前記パイプの板厚方向の中心部に存在する。
【0016】
好ましくは、前記所定の角度は45度である。
【0017】
また、スペースフレーム構造を有する自動車において、前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成される。前記パイプを形成する繊維は、短繊維でできている。
【0018】
また、スペースフレーム構造を有する自動車において、前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成される。複数の前記パイプは、金属製の締結部材を介して締結される。前記パイプの表面には、導体が巻きつけられている。前記締結部材とこの締結部材に締結された前記パイプとは、前記導体により電気的に接続している。
【0019】
また、スペースフレーム構造を有する自動車において、前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成される。複数の前記パイプの間の一部には、箱構造が形成されている。
【0020】
また、スペースフレーム構造を有する自動車において、前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成される。前記パイプの端部の周縁部には、導通体がはめ込まれている。前記導通体は、前記パイプの端部の内周側と外周側とを覆う。前記導通体の前記パイプの内周側には、前記パイプの半径方向外側に変形可能な導電性の内側締め上げ材が挿設される。前記導通体の前記パイプの外周側には、前記パイプの半径方向内側に変形可能な導電性の外側締め上げ材が周設される。前記内側締め上げ材と前記外側締め上げ材とは、ねじ締結され、前記導通体に前記パイプの内周側と外周側とから面圧を付与する。
【0021】
好ましくは、前記パイプを形成する繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維、炭化珪素繊維、またはアルミナセラミクス繊維であり、前記パイプを形成する樹脂は、熱硬化樹脂、または熱可塑性樹脂である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるスペースフレーム構造を有する自動車は、FRPパイプの強化繊維が屈曲していないため、繊維方向の剛性や強度が有効に保たれ、必要最小限の板厚のFRPパイプで構成できて軽量となる。そして、自動車の進行方向のパイプは、主に車重でたわみ変形を起こすが、進行方向の強化繊維を多く配合することでたわみ量が小さくなる効果が生まれる。さらに、強度設計が困難な締結部も金属製とすることで、充分に安全な締結部材が提供できる。繊維方向を適宜変えることで、自動車各部に有効な剛性が発生でき、軽量化できる。
【0023】
また、パイプ内部に導線を配し、金属締結体を介して互いに連結することで、スペースフレーム構造がすべて導通状態となり、電装品の搭載時にボディアースが簡便にとれる効果が生まれる。パイプ表面に導通体が施されることで、落雷時に電流がフレーム構造全体に流れやすくなり、局所的な発熱によるダメージを防ぐことができる。
【0024】
FRPパイプの締結構造として、パイプ外周側と内周側から面圧を付与することができ、熱変形時にも常にパイプに締め上げ力が維持されることとなるため、強度上の信頼性が極めて高くなる。なお、強化繊維や樹脂の種類を自動車各部で変えることで、前面、後面、側面に衝撃吸収能力の高いFRPパイプを配することが可能となり、安全性が増す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】自動車の透視図である。
【図2】自動車の前部左側の一部断面図である。
【図3】自動車のスペースフレームの斜視図である。
【図4】導線と端子を有する、軸方向を向いた繊維と周方向を向いた繊維とでできたFRPパイプの斜視図である。
【図5】導線と端子を有する、軸方向を向いた繊維と周方向を向いた繊維とでできたFRPパイプの長手方向の断面図である。
【図6】導線と端子を有する、長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維でできたFRPパイプの斜視図である。
【図7】軸方向を向いた繊維と周方向を向いた繊維と長手方向に対して±45度の方向を向いた繊維とでできたFRPパイプの斜視図である。
【図8】短繊維でできたFRPパイプの斜視図である。
【図9】FRPパイプの表面に導体の箔または網が巻きつけられた、自動車のスペースフレーム構造の斜視図である。
【図10】車体下部のFRPパイプ間に収納箱を配した、自動車のスペースフレーム構造の斜視図である。
【図11】FRPパイプの端部の断面図である。
【図12】内側締め上げ材の斜視図である。
【図13】外側締め上げ材の斜視図である。
【図14】FRPパイプとFRPパイプの端部に接続する金属締結体との斜視図である。
【図15】FRPパイプとFRPパイプの途中に挟み込む金属締結体との斜視図である。
【図16】軸方向を向いた繊維と周方向を向いた繊維とでできたFRPパイプの斜視図である。
【図17】長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維でできたFRPパイプの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明によるスペースフレーム構造を有する自動車の実施例を、図を用いて説明する。
【実施例1】
【0027】
本発明の実施例1を、図1〜図3と図16、図17を用いて説明する。図1は自動車の透視図、図2は自動車の前部左側の一部断面図、図3は自動車のスペースフレームの斜視図、図16はパイプの軸方向を向いた繊維と周方向を向いた繊維とでできたFRPパイプの斜視図、図17はパイプの長手方向に対して所定の角度(±45度)の方向を向いた繊維でできたFRPパイプの斜視図である。
【0028】
図1に示すように、ボディ1は自動車の表面を覆うカバーであり、風雨から内部の機器や搭乗人員を保護し、適度な保温をするための断熱材や防音材がその内側に貼られている部材である。また、高速走行時の空力的安定を保つための滑らかな曲面から形成されている。ボディ1の内部には、FRP(繊維強化プラスチック)で製作された筒状のパイプ2が組み合わされている。FRPパイプ2は直線状をしており、FRPパイプ2同士の結合部には金属製の締結体3を介している。
【0029】
図2に示すように、FRPパイプ2で組み合わされたスペースフレーム構造には、自動車を駆動するためのエンジンまたはモータ4が固定される。また、エンジンまたはモータ4からの出力軸5の先には、制動装置を内在したホイール6が取り付けられる。ホイール6は、サスペンションアーム7とバネとダッシュポット8によって、上下方向に適当なバネ定数と減衰定数をもって支持される。これらサスペンションアーム7とバネとダッシュポット8の一端は、スペースフレーム構造を構成しているFRPパイプ2に固定される。車体下面には、パネル9がFRPパイプ2に取り付けられ、地上からの風雨から自動車搭載物を保護している。パネル9は、乗車人員のいる居住空間とエンジンまたはモータ4や制御装置10の置かれた空間とを仕切る目的にも使用され、走行中の騒音や熱から乗員を守る。
【0030】
図3を用いて、本実施例による自動車のスペースフレーム構造について説明する。本スペースフレーム構造は、自動車進行方向を向いたパイプ11と自動車進行方向に直角方向を向いたパイプ12とから構成される。パイプ12は、自動車の走行面に対して水平に設置されている。パイプ11とパイプ12は、長繊維強化の樹脂で製作される。
【0031】
自動車進行方向を向いたパイプ11は、図16に示すように、パイプ長手方向を向いた繊維13(0度方向繊維13)とパイプ周方向を向いた繊維14(90度方向繊維14)とで構成される。0度方向繊維13の繊維量は、90度方向繊維14の繊維量よりも多くなっている。FRPは繊維が張っている方向の剛性や強度が高いため、パイプ長手方向(すなわち、自動車進行方向)を向いた繊維量を多くすることで車重によるたわみ量を小さくでき、必要最低限の板厚のFRPによって車重が作用する方向の剛性や強度を高くできる。そのため、車重を軽くすることができる。
【0032】
自動車進行方向に直角方向を向いたパイプ12は、図17に示すように、パイプ長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維17で構成される。この所定の角度は、剛性や強度を考慮すると±45度が望ましいので、本実施例及び以下の実施例において±45度とする。したがって、パイプ長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維を、パイプ長手方向に対して±45度を向いた繊維17(±45度方向繊維17)と称する。このように、自動車進行方向に直角方向を向いたパイプ12を±45度方向繊維17で構成することで、主にねじり荷重が作用するパイプ12のねじり剛性と強度とが必要最小限の板厚で大きくなり、パイプを軽くすることができる。
【0033】
進行方向を向いたパイプ11において、車体下面に配されるパイプの太さと、車体上面に配されるパイプの太さを比べた場合、車体上面に配されるパイプの方を太くするのが望ましい。車重の作用により、車体下面のパイプには曲げ変形によって引張り力が作用し、車体上面のパイプには圧縮力が作用するが、車体上面のパイプを太くすることで、圧縮による座屈を防止できる。
【0034】
このように、本実施例によれば、軽量で剛性や強度の高いスペースフレーム構造を有する自動車を提供できる。
【実施例2】
【0035】
本発明の実施例2を、図4、図5を用いて説明する。図4は、導線と端子を有する、軸方向を向いた繊維と周方向を向いた繊維とでできたFRPパイプの斜視図であり、図5は、導線と端子を有する、軸方向を向いた繊維と周方向を向いた繊維とでできたFRPパイプの長手方向の断面図である。
【0036】
FRPパイプ2は、繊維強化の樹脂で製作される。この強化繊維は、図4に示すように、0度方向繊維13とこれに直角な90度方向繊維14との積層構成となっている。
【0037】
本実施例では、FRPパイプ2の内部には導線15が通されており、外表面には金属製の端子16が設けられている。端子16は、図5に示すように、FRPパイプ2の外表面に露出しており、FRPパイプ2に設けられた穴40から通された導線15と電気的に接続される。
【0038】
従来の金属製ボディの場合には、一般にボディアースと呼ばれる、バッテリーのグランド端子(マイナス端子)をボディ側に接続することがよく行われる。FRPは電気抵抗が金属よりも大きいため、FRPスペースフレーム構造でボディアースをとるためには、積極的にパイプ内に導線を通しておく必要がある。本実施例によるFRPパイプ2を用いてスペースフレーム構造を有する自動車を製作し、バッテリーのマイナス端子を導線15と接続すれば、FRPパイプが存在するところではどこでも、端子16を介してバッテリーのマイナス端子と接続できるため、配線作業が容易になる。
【実施例3】
【0039】
本発明による実施例3を、図6を用いて説明する。図6は、導線と端子を有する、長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維でできたFRPパイプの斜視図である。本実施例でも、FRPパイプ2を構成しているFRPの強化繊維17は、パイプ長手方向に対して±45度の方向を向いている。
【0040】
本実施例によれば、FRPパイプ2は、主にねじり荷重が負荷される場合、強化繊維17が張る方向に変形するため、少ない繊維量で必要な剛性と強度を保つことができる。本FRPパイプ2は、主に自動車の進行方向に対して直角方向を向き、かつ自動車の走行面に対して水平なスペースフレーム構造のパイプ(図3に示した、自動車進行方向に直角方向を向いたパイプ12)に使用することでその効果を最大限に発揮できる。
【実施例4】
【0041】
本発明の実施例4を、図7を用いて説明する。図7は、軸方向を向いた繊維と周方向を向いた繊維と長手方向に対して所定の角度(±45度)の方向を向いた繊維とでできたFRPパイプの斜視図である。本実施例では、1つのFRPパイプ2は、異なる4方向を向いている強化繊維から構成されている。すなわち、強化繊維の方向がパイプ長手方向を向いているもの(0度方向繊維13)と、パイプ周方向を向いているもの(90度方向繊維14)と、±45度方向を向いているもの(±45度方向繊維17)とが混在して、同一のパイプを構成している。
【0042】
FRPパイプ2に作用する荷重方向が明確な場合、すなわち負荷が曲げ荷重かねじり荷重か明確な場合は、その負荷形態に応じて強化繊維を配向できる。荷重方向が不明な場合には、図7に示したように、曲げ応力が最も高いFRPパイプ2の外表面部に0度方向繊維13と90度方向繊維14とを配し、せん断応力が最も高くなるFRPパイプ2の板厚方向の中心部に±45度方向繊維17を配しておくことで、いずれの荷重に対しても有効に強化繊維を作用させることができる。この場合、FRPパイプ2の内表面部には、0度方向繊維13と90度方向繊維14とを配しておく。
【実施例5】
【0043】
本発明の実施例5を、図8を用いて説明する。図8は、短繊維でできたFRPパイプの斜視図である。本実施例では、FRPパイプ2を構成するFRPの繊維は、短繊維18である。短繊維を用いた樹脂は長繊維のものより成型が簡単であり、コストも安いという長所がある。また繊維の種類も豊富であるため、目的に応じて繊維の種類を選べる。例えば、アラミド有機繊維は変形の吸収エネルギが高いため、防弾チョッキなどに使用されるが、この繊維を配したFRPパイプ2を車体側面に設けることで、衝突時の安全性が高くなる。このように、FRPパイプ2の強度や剛性にそれほど高いものを求めない場合、短繊維によってその機能を有効に発揮できる。
【実施例6】
【0044】
本発明の実施例6を、図9を用いて説明する。図9は、FRPパイプの表面に導体の箔または網が巻きつけられた、自動車のスペースフレーム構造の斜視図である。本実施例において、スペースフレーム構造の最外周部(車体の外表面に近い部分)に配されるFRPパイプの表面には、導体でできた箔または網19が巻きつけられている。箔または網19は、FRPパイプ同士を結合する金属締結体3と電気的に接続するように巻きつけられる。
【0045】
本実施例によれば、落雷時に車体の外表面に流れる電流を、FRPパイプの表面に巻きつけられた箔または網19に流すことで、FRP自体の加熱を防ぎ損傷を最低限にすることができる。また、FRPパイプのうち、車体の外表面に最も近いパイプにのみ箔または網19を巻きつけることで重量の増加を最低限にすることができ、FRPの落雷時の損傷を防ぐことができる。
【実施例7】
【0046】
本発明の実施例7を、図10を用いて説明する。図10は、車体下部のFRPパイプ間に収納箱を配した、自動車のスペースフレーム構造の斜視図である。本実施例では、車体下部のFRPパイプ2間にFRP製の収納箱20が形成されている。収納箱20は金属製でも良いが、軽量な車体を提供する目的を達成するためにはFRPが望ましい。この収納箱20の中には、電気自動車であればバッテリー21が、エンジン車であれば燃料タンクが入る。図10には、バッテリー21を入れた場合を示している。本実施例によれば、通常は積載時にスペースを非常にとってしまうバッテリー21や燃料タンクが、スペースフレームのFRPパイプ2間のデッドスペースに有効に配置できるため、自動車をコンパクトにすることができる。
【実施例8】
【0047】
本発明の実施例8を、図11〜図15を用いて説明する。本実施例は、FRPパイプにおける金属締結体との連結部に関するものである。図11はFRPパイプの端部の断面図、図12は内側締め上げ材の斜視図、図13は外側締め上げ材の斜視図、図14はFRPパイプとFRPパイプの端部に接続する金属締結体との斜視図、図15はFRPパイプとFRPパイプの途中に挟み込む金属締結体との斜視図である。
【0048】
図11に示すように、FRPパイプ2には、端部の周縁部を覆うように導通プレート22がはめ込まれる。導通プレート22によって、FRPパイプ2の端部は、内周側と外周側とが覆われる。導通プレート22のFRPパイプ2の内周側には、導線15の端部が電気的に接続されている。
【0049】
FRPパイプ2には、導通プレート22がはめ込まれた端部から、内側締め上げ材23が内周側に挿入される。導通プレート22の外周側には、外側締め上げ材26がはめ込まれ、内側締め上げ材23とねじ締結される。なお、内側締め上げ材23と外側締め上げ材26は、導電性の材料、例えばアルミ合金や鋼などの金属で作成される。
【0050】
内側締め上げ材23は、図12に示すように、導通プレート22と接する部分にスリット24が加工され、FRPパイプ2の半径方向外側に変形しやすくなっている。さらに、このスリット24加工部には、周方向の溝25が形成される。
【0051】
外側締め上げ材26は、図13に示すように、導通プレート22と接する部分にスリット32が加工され、FRPパイプ2の半径方向内側に変形しやすくなっている。さらに、このスリット32加工部には、周方向の溝33が形成される。
【0052】
図11に戻って説明を続ける。内側締め上げ材23の中心部には、内側インサート材27が締め上げボルト28と締め上げナット29によって固定される。この際、ボルト28を締め上げていくことで、スリット24が半径方向外側に開き、導通プレート22に内側から圧力をかける。
【0053】
一方、外側締め上げ材26には、図11に示すように断面がくさび形の溝31が設けられ、外側インサート材30が溝31にはめ込まれる形で接している。外側締め上げ材26を周方向に回していくことで、外側インサート材30が溝31に圧力を与え、スリット32が加工された部分が半径方向内側に変形する。こうして導通プレート22の外側から面圧がかかる。
【0054】
内側締め上げ材23の溝25と外側締め上げ材26の溝33は、導通プレート22との摩擦係数を高め、嵌合力を大きくする効果を生む。
【0055】
本実施例によれば、内側締め上げ材23と外側締め上げ材26とにより、FRPパイプ2に対して、その内周側からも外周側からも独立して面圧を与えることができる。このため、使用環境によって外気温が変化し、線膨張率の違いによるFRPパイプ2と金属締結体の変形があっても、安定した締結力が維持できる。例えば、組み立て時から温度が低下した場合には、FRPパイプ2はあまり変形しないが、内側締め上げ材23も外側締め上げ材26も半径方向内側に変形する。このとき、内側締め上げ材23による面圧をあらかじめ十分にかけておくことで、冷却時にも内側からの締め上げ力がなくならない。温度が上昇した場合にも、外側締め上げ材26による面圧を十分にかけておくことで、外側からの締め上げ力がなくならない。
【0056】
そして、導通プレート22を介して内側締め上げ材23と外側締め上げ材26とが電気的に接触しているため、FRPパイプ2内の導線15とは組み上げるだけで導通する効果を生む。
【0057】
また、図11に示すように、FRPパイプ2の締め上げボルト28の端部に球加工34を施しておくことで、FRPパイプ2と金属締結体との連結の自由度を高くすることができる。
【0058】
図14に示すように、金属締結体は、締結ブロック35と締結プレート36とボルト37とから構成されている。締結ブロック35は、締め上げボルト28の球加工34の半径より小さい穴を有し、この穴に球加工34を締結させることでFRPパイプ2と接続する。また、締結プレート36とボルト37によって、締結ブロック35と球加工34とは、任意の形状や角度で締結することができる。
【0059】
締結ブロック35を導電性の材質にしておくことで、1つの金属締結体に接続するすべてのFRPパイプ2内の導線15が導通することになる。したがって、本締結構造を用いて製作したスペースフレーム構造は、ボディアースが容易に形成できる効果を生む。締結ブロック35は直方体である必要はなく、任意の傾きをもった面を形成しておくことでFRPパイプ2との接続角度を調整できる。
【0060】
以上のように、締結部品すべてを金属で製作しておくことで、その強度設計も容易になると同時に、締結部品の共通化が図れ、複数種類の締結部品をあらかじめ製作する手間も省ける。
【0061】
図15には、一本のFRPパイプ2の途中部分に金属締結体を挟み込んで、他のFRPパイプ2を接続する例を示す。この例では、金属締結体は締結部材38からなり、締結部材38がFRPパイプ2の途中部分を挟み込んでいる。
【0062】
本実施例によれば、FRPパイプ2の強化繊維を無用に切断することなく、高剛性、高強度を維持したままFRPパイプ2同士の結合が可能になる。
【0063】
なお、本明細書に記載されたFRPパイプを構成するFRPの強化繊維は、長繊維、短繊維ともに、炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維、炭化珪素繊維、またはアルミナセラミクス繊維で製作されており、FRPの樹脂が熱硬化樹脂、または熱可塑性樹脂で製作されているものとする。
【符号の説明】
【0064】
2…FRPパイプ、3…金属締結体、11…自動車進行方向を向いたパイプ、12…自動車進行方向に直角方向を向いたパイプ、13…0度方向繊維、14…90度方向繊維、15…導線、16…端子、17…±45度方向繊維、18…短繊維、19…導体でできた箔または網、20…FRP製収納箱、21…バッテリー、22…導通プレート、23…内側締め上げ材、24…スリット、25…周方向の溝、26…外側締め上げ材、27…内側インサート材、28…締め上げボルト、29…締め上げナット、30…外側インサート材、31…溝、32…スリット、33…周方向の溝、34…球加工、35…締結ブロック、36…締結プレート、37…ボルト、40…穴。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペースフレーム構造を有する自動車において、
前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成され、
前記パイプを形成する繊維は、パイプ長手方向を向いた繊維とパイプ周方向を向いた繊維との組み合わせから成り、
前記自動車の進行方向を向いた前記パイプは、前記パイプ長手方向を向いた繊維の量が、前記パイプ周方向を向いた繊維の量よりも多く、
複数の前記パイプは、金属製の締結部材を介して締結される、
ことを特徴とするスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項2】
スペースフレーム構造を有する自動車において、
前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成され、
前記パイプの内部には導線が通されており、
前記パイプの外表面には金属製の端子が設けられ、
前記パイプには穴が設けられ、この穴を通して前記導線と前記端子とが電気的に接続されている、
ことを特徴とするスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項3】
スペースフレーム構造を有する自動車において、
前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成され、
前記パイプのうち、前記自動車の進行方向に対して直角方向を向き、かつ前記自動車の走行面に対して水平に設置されたパイプは、パイプ長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維で形成される、
ことを特徴とするスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項4】
スペースフレーム構造を有する自動車において、
前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成され、
前記パイプを形成する繊維は、パイプ長手方向を向いた繊維と、パイプ長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維と、パイプ周方向を向いた繊維との組み合わせから成り、
前記パイプ長手方向を向いた繊維と前記パイプ周方向を向いた繊維は、前記パイプの外表面部及び内表面部に存在し、
前記パイプ長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維は、前記パイプの板厚方向の中心部に存在する、
ことを特徴とするスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項5】
請求項3または4記載のスペースフレーム構造を有する自動車において、前記所定の角度は、45度であるスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項6】
スペースフレーム構造を有する自動車において、
前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成され、
前記パイプを形成する繊維は、短繊維でできていることを特徴とするスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項7】
スペースフレーム構造を有する自動車において、
前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成され、
複数の前記パイプは、金属製の締結部材を介して締結され、
前記パイプの表面には、導体が巻きつけられ、
前記締結部材とこの締結部材に締結された前記パイプとは、前記導体により電気的に接続している、
ことを特徴とするスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項8】
スペースフレーム構造を有する自動車において、
前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成され、
複数の前記パイプの間の一部には、箱構造が形成されている、
ことを特徴とするスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項9】
スペースフレーム構造を有する自動車において、
前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成され、
前記パイプの端部の周縁部には導通体がはめ込まれ、前記導通体は、前記パイプの端部の内周側と外周側とを覆い、
前記導通体の前記パイプの内周側には、前記パイプの半径方向外側に変形可能な導電性の内側締め上げ材が挿設され、
前記導通体の前記パイプの外周側には、前記パイプの半径方向内側に変形可能な導電性の外側締め上げ材が周設され、
前記内側締め上げ材と前記外側締め上げ材とはねじ締結され、前記導通体に前記パイプの内周側と外周側とから面圧を付与する、
ことを特徴とするスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項記載のスペースフレーム構造を有する自動車において、
前記パイプを形成する繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維、炭化珪素繊維、またはアルミナセラミクス繊維であり、
前記パイプを形成する樹脂は、熱硬化樹脂、または熱可塑性樹脂であるスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項1】
スペースフレーム構造を有する自動車において、
前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成され、
前記パイプを形成する繊維は、パイプ長手方向を向いた繊維とパイプ周方向を向いた繊維との組み合わせから成り、
前記自動車の進行方向を向いた前記パイプは、前記パイプ長手方向を向いた繊維の量が、前記パイプ周方向を向いた繊維の量よりも多く、
複数の前記パイプは、金属製の締結部材を介して締結される、
ことを特徴とするスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項2】
スペースフレーム構造を有する自動車において、
前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成され、
前記パイプの内部には導線が通されており、
前記パイプの外表面には金属製の端子が設けられ、
前記パイプには穴が設けられ、この穴を通して前記導線と前記端子とが電気的に接続されている、
ことを特徴とするスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項3】
スペースフレーム構造を有する自動車において、
前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成され、
前記パイプのうち、前記自動車の進行方向に対して直角方向を向き、かつ前記自動車の走行面に対して水平に設置されたパイプは、パイプ長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維で形成される、
ことを特徴とするスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項4】
スペースフレーム構造を有する自動車において、
前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成され、
前記パイプを形成する繊維は、パイプ長手方向を向いた繊維と、パイプ長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維と、パイプ周方向を向いた繊維との組み合わせから成り、
前記パイプ長手方向を向いた繊維と前記パイプ周方向を向いた繊維は、前記パイプの外表面部及び内表面部に存在し、
前記パイプ長手方向に対して所定の角度の方向を向いた繊維は、前記パイプの板厚方向の中心部に存在する、
ことを特徴とするスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項5】
請求項3または4記載のスペースフレーム構造を有する自動車において、前記所定の角度は、45度であるスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項6】
スペースフレーム構造を有する自動車において、
前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成され、
前記パイプを形成する繊維は、短繊維でできていることを特徴とするスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項7】
スペースフレーム構造を有する自動車において、
前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成され、
複数の前記パイプは、金属製の締結部材を介して締結され、
前記パイプの表面には、導体が巻きつけられ、
前記締結部材とこの締結部材に締結された前記パイプとは、前記導体により電気的に接続している、
ことを特徴とするスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項8】
スペースフレーム構造を有する自動車において、
前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成され、
複数の前記パイプの間の一部には、箱構造が形成されている、
ことを特徴とするスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項9】
スペースフレーム構造を有する自動車において、
前記スペースフレーム構造は、繊維を含む樹脂で製作された複数の筒状のパイプで形成され、
前記パイプの端部の周縁部には導通体がはめ込まれ、前記導通体は、前記パイプの端部の内周側と外周側とを覆い、
前記導通体の前記パイプの内周側には、前記パイプの半径方向外側に変形可能な導電性の内側締め上げ材が挿設され、
前記導通体の前記パイプの外周側には、前記パイプの半径方向内側に変形可能な導電性の外側締め上げ材が周設され、
前記内側締め上げ材と前記外側締め上げ材とはねじ締結され、前記導通体に前記パイプの内周側と外周側とから面圧を付与する、
ことを特徴とするスペースフレーム構造を有する自動車。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項記載のスペースフレーム構造を有する自動車において、
前記パイプを形成する繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維、炭化珪素繊維、またはアルミナセラミクス繊維であり、
前記パイプを形成する樹脂は、熱硬化樹脂、または熱可塑性樹脂であるスペースフレーム構造を有する自動車。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−37313(P2011−37313A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183943(P2009−183943)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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