スルーホールの検査装置
【課題】エッジを抽出することなくスルーホールの位置ずれを正確に検査できるようにする。
【解決手段】パッド81のスルーホール84の形成状態を検査する場合、事前に、パッド81の座標位置やパッドRGB情報、除外RGB情報を設定しておく。そして、プリント基板8から取得された表面画像を元に、先の座標位置やパッドRGB情報、除外RGB情報を用いて検査領域9の画像を抽出する。次に、この抽出された検査領域9の画像を二値化し、その二値化マップに基づいてパッド81以外の領域についてラベリング処理を実行する。そして、検査領域9の境界部分91に接するラベリング領域92を除去し、その除去後のラベリング領域92の個数をカウントしてその個数が「1」であれば「位置ずれなし」、個数が「0」であれば「位置ずれあり」と判定する。
【解決手段】パッド81のスルーホール84の形成状態を検査する場合、事前に、パッド81の座標位置やパッドRGB情報、除外RGB情報を設定しておく。そして、プリント基板8から取得された表面画像を元に、先の座標位置やパッドRGB情報、除外RGB情報を用いて検査領域9の画像を抽出する。次に、この抽出された検査領域9の画像を二値化し、その二値化マップに基づいてパッド81以外の領域についてラベリング処理を実行する。そして、検査領域9の境界部分91に接するラベリング領域92を除去し、その除去後のラベリング領域92の個数をカウントしてその個数が「1」であれば「位置ずれなし」、個数が「0」であれば「位置ずれあり」と判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板のパッドに形成されたスルーホールの位置を検査できるようにしたスルーホールの検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板のパッドには、電子部品を装着するためのスルーホールが形成されている。ところで、このスルーホールは、パッドの形成とは異なる処理工程で形成されるため、スルーホールの位置がパッドの中心からずれてしまうことがある。そこで、スルーホールの形成状態を正確に検査できるようにした検査装置が各種提案されてきている(特許文献1〜特許文献4)。
【0003】
例えば、下記の特許文献1(実開平2−105156号)には、スルーホールの穴の数をカウントし、基準の数と一致するかどうかを検査する方法が開示されている。このような方法によれば、スルーホールが塞がっているような場合は、これを不良と検出することができる。また、特許文献2(特開平5−60537号)にも、スルーホールの穴詰まりを検出する他、スルーホールの穴径までも検査できるようにした検査装置が開示されている。
【0004】
さらに、下記の特許文献3(特公平7−86468号)には、図10に示すように、パッドやスルーホールの画像を細線化処理し、その端点を見つけてスルーホールの位置ずれを検出できるようにした方法が開示されている。このような方法によれば、例えば、スルーホールがパッドからはみ出ているような場合には、パッドのエッジがスルーホールによって切れてしまうため、細線化処理された線に複数の端点を生じ(図10下図のバツ印)、これによってスルーホールの位置ずれを検出することができる。
【0005】
また、下記の特許文献4(特開平9−203620号)には、パッドやスルーホールの画像を二値化処理し、図11に示すように、画像を8方向にわたって分割してエッジを抽出してスルーホールの形成状態を判断できるようにした検査装置が開示されている。このような方法によれば、特許文献3の細線化処理の際に誤差を生じた場合であっても、そのノイズを生ずることなく、確実にスルーホールの位置ずれを検出することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平2−105156号公報
【特許文献2】特開平5−060537号公報
【特許文献3】特公平7−086468号公報
【特許文献4】特開平9−203620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献に記載される方法では、次のような問題を生ずる。
【0008】
すなわち、特許文献1や特許文献2に示す方法は、スルーホールの穴数や穴径の大きさを判断するものであるため、スルーホールの形成位置がパッドからはみ出している場合であっても、穴数や穴径が合っていれば、これを不良と判断することができない。
【0009】
また、特許文献3や特許文献4のようにエッジを抽出して検査する方法では、画像の取得状態によっては、パッドやスルーホールの輪郭が曖昧なものとなり、正確なエッジを抽出することができなくなる。特に、パッドのエッジの内側までレジストが塗布されているような場合は、パッドの中心側から順に「銅色(露出金属色)」「銅上に塗布されたレジスト色」「基板上のレジスト色」と輝度値が滑らかに変化するため、グレースケールによって画像を取得するとエッジの正確な抽出が難しくなる。しかも、光の照射方向によってはエッジが強く反射したり、陰ができたりすると、更にエッジの抽出が困難になる。このため、特許文献3のような細線化処理する方法や、特許文献4に示すように8方向にわたってエッジを抽出する方法では、その処理を行う前のパッドやスルーホールの検査領域の画像が曖昧では、エッジを正確に抽出することができなくなる。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題に着目してなされたもので、エッジを抽出することなくスルーホールの位置ずれを正確に検査することのできるようにしたスルーホールの検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、プリント基板のパッドに設けられたスルーホールの形成状態を検査するスルーホールの検査装置において、プリント基板の表面画像を取得する画像取得手段と、当該表面画像からパッドを含む検査領域の画像を抽出する領域抽出手段と、当該抽出された画像から二値化マップを生成する二値化処理手段と、当該二値化マップに基づいてラベリング処理を実行するラベリング手段と、当該ラベリング処理された情報に基づいてパッド以外のラベリング領域の個数をカウントし、当該ラベリング領域の個数が所定の個数以下である場合は位置ずれであると判定する判定手段とを設けるようにしたものである。
【0012】
このようにすれば、パッドのエッジを超えてスルーホールが形成されている場合には、スルーホールの領域とパッド以外のラベリング領域が連結して1個となり、これによってスルーホールが位置ずれしていることを検出することができる。一方、スルーホールがパッド内に収まっている場合は、パッド内のスルーホールのラベリング領域とパッド外側のラベリング領域が2個存在することになるため、スルーホールがパッド内に収まっていることを判断することができるようになる。
【0013】
また、このような発明において、あらかじめパッド領域に対応したパッドRGB情報およびパッド以外の領域に対応した除外RGB情報を設定しておき、当該パッドRGB情報と除外RGB情報の領域を膨らまし処理して表面画像から検査領域の画像を抽出する。
【0014】
このようにすれば、カラー画像でパッド領域やそれ以外の領域を抽出する場合、パッドのRGBやパッド以外のRGBの輝度値をすべて指定しなくても、数個の画素や一定領域のRGBを設定するだけで、その指定されたRGBに近い画素を抽出し、また、除外することができるようになる。
【0015】
さらに、このような発明において、ラベリングされた画像からスルーホールの形成状態を判定する場合、検査領域の外側境界に接するパッド以外のラベリング領域を除去し、その後、パッド以外のラベリング領域の数をカウントしてその個数が既定値以下である場合は位置ずれであると判定する。
【0016】
このようにすれば、検査領域内に傷や他の配線パターンなどが存在するような場合であっても、その傷によって分割されたラベリング領域を除去して正確にスルーホールの位置ずれを検査することができるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の検査装置によれば、プリント基板の表面画像を取得する画像取得手段と、当該表面画像からパッドを含む検査領域の画像を抽出する領域抽出手段と、当該抽出された画像から二値化マップを生成する二値化処理手段と、当該二値化マップに基づいてラベリング処理を実行するラベリング手段と、当該ラベリング処理された情報に基づいてパッド以外のラベリング領域の個数をカウントし、当該ラベリング領域の個数が所定の個数以下である場合は位置ずれであると判定する判定手段とを設けるようにしたので、パッドのエッジを超えてスルーホールが形成されている場合、スルーホールの領域とパッド以外のラベリング領域の個数が連結して1個となり、これによってスルーホールの位置ずれを検出することができる。一方、スルーホールがパッド内に収まっている場合は、パッド内のスルーホールのラベリング領域とパッド外側のラベリング領域が2個存在することになるため、スルーホールがパッド内に収まっていることを判断することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態における検査装置の機能ブロック図を示すものである。
【図2】同形態におけるプリント基板の表面画像から取得されるパッドRGBの領域と除外される除外RGBの情報を示すものである。
【図3】同形態におけるパッドとスルーホールの位置関係を示すものである。
【図4】同形態におけるパッド近傍に傷などが存在する状態を示す図である。
【図5】同形態における二値化処理された二値化マップを示すものである。
【図6】同形態においてラベリング処理の概要を示す図
【図7】同形態においてラベリング処理された画像と判定処理を示すものである。
【図8】同形態における設定処理を示すフローチャートを示すものである。
【図9】同形態における検査処理を示すフローチャートを示すものである。
【図10】従来例のスルーホールの検査方法を示すものである。
【図11】従来例のスルーホールの検査方法を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態における検査装置1は、図3に示すように、プリント基板上に形成されたパッド81内にスルーホール84が正確に収まっているかどうかを検査できるようにしたものであって、プリント基板8からその表面画像を取得し、パッド81が存在する位置の検査領域9の画像を抽出する。そして、図4や図5に示すように、その検査領域9でパッド81の領域とそれ以外の領域に二値化処理(パッド81の領域を「0」、それ以外の領域を「1」とした二値化処理)し、パッド以外のラベリング領域の個数に基づいてスルーホール84がパッド81からはみ出ていないかどうかを検査できるようにしたものである。以下、図1における機能ブロック図に基づいて検査装置1の構成について詳細に説明する。
【0020】
まず、画像取得手段2は、検査対象であるプリント基板8からその表面画像を取得する。プリント基板8から表面画像を取得する場合、グレースケールによって表面画像を取得してもよいが、グレースケールであると、図3に示すような金属が露出したパッド81の領域と(破線の内側領域)、そのパッド81上にレジスト83が塗布されている領域81R(破線と実線の間の領域)と、基板82上に直接レジスト83が塗布されている領域82R(実線の外側領域)との輝度値の差が明確にならず、256階調の輝度値だけではパッド81の画像を正確に抽出できない。このため、好ましくは、カラー画像によってプリント基板8の表面画像を取得する。この画像取得手段2でプリント基板8の表面画像を取得する場合は、プリント基板8の斜め上方に配列された照明装置から光を照射し、その反射光をプリント基板8の真上のラインセンサやエリアセンサで取得する。この取得された表面画像は、(RGB)=(0,0,0)〜(255,255,255)からなる輝度の画素によって構成される。そして、その表面画像を画像メモリに格納し、その表面画像から検査領域9であるパッド81やスルーホール84の画像を抽出する。
【0021】
領域抽出手段3は、この取得されたプリント基板8の表面画像から検査領域9であるパッド81の検査領域9の画像を抽出する。このとき、あらかじめ設定手段4によってパッド81の存在する座標位置を設定しておく。また、その画像から抽出されるべきパッドRGB画素情報と、そこから積極的に除外されるべき除外RGB画素情報を設定する。ここで、パッド81の座標位置を設定する場合は、プリント基板8の設計時に使用されたCADデータをもとにパッド81の座標位置を設定し、その座標位置を中心としてパッド81をすべて含むような検査領域9を設定する。この検査領域9の形状としては、正方形や長方形などの矩形状であってもよく、あるいは、円形形状であってもよい。好ましくは、検査対象となるパッド81やスルーホール84をすべて含むようにしておく。
【0022】
一方、パッドRGB情報は、表面画像からパッド81を抽出するためのRGB輝度情報を示すものであって、基準となるプリント基板8のパッド81から取得された画像に基づいて設定される。このとき、例えば、パッド81の金属露出部分だけを抽出する場合は、(R,G,B)=(200,60,60)付近の輝度値を設定し、また、パッド81の外周部分のレジスト83のオーバーラップ部分81Rをパッド領域として抽出する場合は、(R,G,B)=(120,150,80)付近の輝度値を設定する。これらの輝度値はレジスト83の塗布厚や金属表面の研磨傷などによって変化するため、輝度値を設定した後、これらの輝度値を含むようにRGB輝度値を一定幅だけ膨らまし処理する。具体的には、基準となるプリント基板8の表面画像からマウスでパッド81の一画素や矩形領域を設定し、その後、その指定された画素の輝度値(矩形領域を設定した場合は、その矩形領域内のすべての画素の輝度値)を含むように、例えば、120−α1<R<200+α2、60−β1<G<150+β2、60−γ1<B<80+γ2、などと膨らます(図2参照)。なお、ここでα1〜γ2の各値はそれぞれ個別に設定され、それぞれ異なる値でもよく、あるいは、α1=α2、β1=β2、γ1=γ2と同一になるように設定してもよい。
【0023】
除外RGB情報は、表面画像から積極的に除外したいRGBの輝度値を設定したもので、この実施の形態では、パッド色に近い基材色や、基板82上のレジスト色などに設定される。この除外RGB情報も、基準となるプリント基板8から取得された画像に基づいて設定され、例えば、基材82そのものの色だけを除外する場合は、(R,G,B)=(60,30,30)付近の輝度値を設定し、また、その基材82上にレジスト83が塗布されている領域82Rを除外する場合は、(R,G,B)=(80,120,50)付近の輝度値に設定する。これらの輝度値もレジスト83の塗布厚によって変化するため、輝度値を指定した後は、これらの輝度値を含むようにRGB輝度値を一定幅だけ膨らす(図2参照)。すなわち、マウスによって基準となるプリント基板8の表面画像から一画素や矩形領域を設定した後、その指定された画素の輝度値(矩形領域を設定した場合は、その矩形領域内のすべての画素の輝度値)を含むように膨らます。
【0024】
このようにパッドRGB情報と除外RGB情報を膨らまし処理すると、図2に示すように、パッドRGB情報を示す領域31と除外RGB情報を示す領域32とがオーバーラップしてしまう可能性がある。このような場合、検査領域9から除外RGB情報の領域32に含まれる画素を先に除去し、その後、パッドRGB情報の領域31に含まれる画素を抽出する。また、これとは逆に、パッドRGB情報に属する画素を抽出してから除外RGB情報に含まれる画素を除外しても、結果としては抽出される画像は同じになる。
【0025】
二値化処理手段5は、このように抽出された検査領域9の画像に基づいて二値化処理を行って図4や図5に示すような二値化マップを生成する。二値化処理では、検査領域9内でパッドRGB色として抽出された画素については「0」とし、パッド以外の除去RGB色などとして除外された画素については「1」を設定する。このとき、例えば、パッド81からスルーホール84がはみ出している場合は、パッド81内にスルーホール84が収まっている場合は、図5(a)に示すように、ビット値「1」の領域の塊が、パッドの内側と外側に合計2個存在することになり、一方、図5(b)に示すように、パッド以外(すなわちビット値「1」)の領域の塊が1個のみとなる。
【0026】
ラベリング手段6は、このように二値化処理された二値化マップに基づいてビット値「0」や「1」の塊ごとにラベリング処理を実行する。ここで「ラベリング」とは、二値化処理されたビット値の塊ごとに符号を割り当てることをいい、この実施の形態では、パッド81以外の領域(すなわち、「1」が割り当てられた領域)の塊ごとにラベルを付与することとしている。
【0027】
図6に、このラベリング処理の一例を示す。図6において、符号93は注目画素であり、符号94は、その周囲の参照画素である。まず、注目画素93についてラベルを割り当てる場合、その注目画素93のビット値が「1」であり、かつ、その周囲の参照画素94にまだ何もラベルが割り当てられていない場合は、新しいラベルを付けてその注目画素93に割り当てる。一方、参照画素94について既にラベルが割り当てられている場合は、そのラベルと同じラベルを注目画素93に割り当てる。図6においては、注目画素93のビット値が「1」であり、その左側周囲の参照画素94に既にラベル「1」が割り当てられているため、その注目画素93に対してラベル「1」が割り当てられる。以下、同様の処理を検査領域9の左上から右下にの各画素に向けてラベリングされたマップを生成していく。なお、このラベリング処理の方法については他の方法を採用してもよいが、ラベリングの規則によっては、その規則によって生ずる癖が存在し、ラベリングされる領域が分割されたり統合されたりする可能性がある。特に、検査領域9の境界部分91については、中心部分と比べて相対的にノイズを生じさせやすく、例えば、図4に示すように、検査領域9の近傍に傷や配線パターンなどが存在する場合は、図4(b)に示すように、その傷などによってビット値「1」の領域が内側と外側に分割される可能性がある。
【0028】
そこで、判定手段7では、このようにラベリングされた画像のうち、検査領域9の境界部分91に接するラベリング領域92を除去し、その除去後のラベリング領域の個数をカウントする。すなわち、図5(a)に示すように、検査領域9内に他の配線パターンや傷のない状態でスルーホール84がパッド81の内側に形成されている場合は、パッド81の外側のラベリング領域92とパッド81の内側のラベリング領域92が存在し、合計2個のラベリング領域が存在することとなる(図7(a))。このとき、検査領域9の境界部分91に接するラベリング領域92を除去すれば、パッド81の領域内のラベリング領域92が1個だけ残ることになる。すなわち、正常な状態でスルーホール84が形成されている場合は、境界部分除去後のラベリング領域の個数が「1個」だけとなる。また、図4(a)に示すように、検査領域9の他の配線パターンや傷などによって基材82上のレジスト領域82Rが分断されている場合は、ラベリング領域の個数は「3個」となるが、パッド外側のラベリング領域はいずれも検査領域9の境界部分91に接しているのでラベリング領域の個数が「1個」となる。
【0029】
一方、図5(b)に示すように、スルーホール84がパッド81からはみ出している場合、外側境界91に接するラベリング領域92を除去すると、検査領域9のラベリング領域の個数が「0個」となる(図7(b))。そこで、判定手段7では、この検査領域9の境界部分91に接するラベリング領域92を取り除き、その後のラベリング領域の個数をカウントしてその個数が「0個」であれば「位置ずれである」と判定する。
【0030】
次に、このように構成された検査装置1の検査フローについて、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0031】
<検査領域9の画像抽出のための設定>
まず、パッド81やスルーホール84を含む検査領域9を表面画像から抽出するため事前作業について説明する。
【0032】
まず、検査対象物であるプリント基板8からパッド81の検査領域9を抽出する場合、事前に基準となるプリント基板8を用意して、その表面画像を取得する(ステップS1)。このとき、基準となるプリント基板8としては、他の検査装置1や目視検査で良品と判断されたものを用い、その取得された表面画像をディスプレイに表示させる(ステップS2)。そして、オペレーターから、CADデータやマウスによる画面操作によってパッド81の座標位置の設定受付を行い(ステップS3)、その座標位置やパッド81を含む矩形領域の大きさを記憶させる(ステップS4)。
【0033】
このように座標位置や検査領域9の大きさを設定した後、今度は、ディスプレイに表示された検査領域9の画像に基づいて、パッド81の金属露出部分やパッド81上のレジスト83塗布領域の画素の選択を受け付け、その画素のRGB情報をパッドRGB情報として記憶させる(ステップS5)。また、これと同様に、パッド81以外の部分で積極的に除外したい色の画素について選択を受け付け、その画素のRGB情報を除外RGB情報として記憶させる(ステップS6)。このとき、除外色としては、パッド色と間違われやすい色を設定する。そして、このようにパッドRGB情報や除外RGB情報を設定した後、それぞれの情報を膨らまし処理してパッドRGB情報や除外RGB情報として記憶させる(ステップS7)。
【0034】
<検査対象物の検査処理>
次に、このように検査領域9の座標やパッドRGB情報、除外RGB情報を設定した後、検査対象物であるプリント基板8を検査する処理について図9のフローチャートを用いて説明する。
【0035】
検査対象物であるプリント基板8の形成状態を検査する場合、同様に、検査対象物のプリント基板8から表面画像を取得し(ステップT1)、その画像を画像メモリに格納する。そして、その表面画像から、あらかじめ記憶されているパッド81の座標位置に基づいて検査領域9を抽出し(ステップT2)、その検査領域9の画像から前記膨らまし処理された除外RGB情報に含まれる画素を除去する(ステップT3)。このとき、基材82そのものの色に対応する画素や、基材82上に塗布されたレジスト83の色に対応する画素などは除去される。このように除外RGB情報に含まれる画素を取り除いた後は、前記膨らまし処理された後のパッドRGB情報に属する画素を抽出し(ステップT4)、例えば、パッド81の金属色やパッド81上のレジスト色などに含まれる画素だけを抽出する。このような処理を行うことにより、検査領域9の画像としては、パッド81の領域に対応する画像だけが残ることになり、それ以外の画像は除去されることになる。
【0036】
次に、このように抽出されたパッド81の領域の画像を二値化処理して二値化マップを生成する(ステップT5)。この二値化処理では、パッド81以外の領域を「1」とし、パッド81の領域を「0」とする。これにより、図4や図5に示すように、基材82のレジスト83領域やスルーホール84の部分は「1」となり、パッド81の金属露出部分やパッド81のレジスト塗布領域81Rは「0」となる。
【0037】
ステップT6では、このように生成された二値化マップからラベリング処理を行う。このラベリング処理では、パッド81以外の領域についてのラベリング処理を実行し、二値化マップで「1」の付されている画素の塊ごとにラベルを付けていく。この処理によって、例えば、パッド81内にスルーホール84が形成されている場合は、図7に示すように、スルーホール84の部分のラベル「1」の部分と、パッド81その外側領域のラベル「2」の部分とで2個のラベリング領域92が存在することになる。一方、パッド81の境界部分からスルーホール84がはみ出している場合は、ラベリング領域92は1個だけとなる。
【0038】
判定処理では、このラベリング処理された後のマップに基づいてスルーホール84の位置ずれを判定する。この判定処理では、検査領域9の境界部分91に接するラベリング領域92を除去し(ステップT7)、そこで残ったラベリング領域92の個数をカウントする。このとき、パッド81内にスルーホール84が形成されている場合は、検査領域9の境界部分91に接するラベリング領域92を除去した後のラベリング領域の個数が「1個」(パッド81内のスルーホール部分の1個)だけとなり、一方、パッド81からスルーホール84がはみ出している場合は、スルーホール84と外側領域が一体化されて、ラベリング領域の個数が「0個」となる。そこで、判定手段7によってラベリング領域の個数が「0個」の場合は「位置ずれ」であると判定し(ステップT9)、一方、ラベリング領域の個数が「1個」である場合は「位置ずれなし」と判定し(ステップT10)てその結果を出力する。
【0039】
このように上記実施の形態によれば、プリント基板8の表面画像を取得する画像取得手段2と、パッド81の座標位置やパッドRGB情報、除外RGB情報などに基づいてパッド81を含む検査領域9の画像を抽出する領域抽出手段3と、この検査領域9の画像から二値化マップを生成する二値化処理手段5と、この二値化マップに基づいてパッド81以外の領域についてラベリング処理を実行するラベリング手段6とを備え、パッド81以外のラベリング領域92の個数をカウントしてその個数が既定値よりも少ない場合は「位置ずれである」と判定するようにしたので、パッド81のエッジ81aを超えてスルーホール84が形成されているかどうかを判定することができる。
【0040】
また、このように検査領域9を抽出する場合、パッドRGB情報と除外RGB情報の領域を膨らまし処理して検査領域9の画像を抽出するようにしたので、カラー画像でパッド81の検査領域9を抽出する場合、パッド81のRGBやパッド81以外のRGBの輝度値をすべて指定しなくても、数画素のRGBや一定範囲内のRGBを設定するだけで、その指定されたRGB近傍の画素を抽出し、また、除外することができるようになる。
【0041】
さらには、ラベリングされた画像からスルーホール84の形成状態を判定する場合、検査領域9の境界部分91に接するラベリング領域92を除去し、その後、パッド81以外の領域のラベリング領域の個数が「0」であれば「位置ずれである」と判定するようにしたので、図4に示すように、検査領域9に傷や他の配線パターンなどが存在する場合であっても、その傷などによって分割されたラベリング領域92を除去して正確に位置ずれを検査することができるようになる。
【0042】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0043】
例えば、上記実施の形態では、ラベリング領域の個数が「0」である場合は「位置ずれである」と判定し、ラベリング領域の個数が「1」である場合は「位置ずれでない」と判断したが、傷などの影響を無視することができる場合は、スルーホール84がはみ出している場合の方がラベリング領域の個数が1個少なくなるため、既定値よりもラベリング領域の個数が少ない場合は「位置ずれ」であると判断するようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施の形態では、ラベリング領域の個数によってスルーホール84の位置ずれを検出するようにしているが、パッド81の内側にスルーホール84が形成されている場合、内側のラベリング領域92の面積に基づいてスルーホール84の穴径も同時に検査するようにしてもよい。
【0045】
さらに、上記実施の形態では、除外RGB情報に基づいて除外画素を先に除外し、その後、パッドRGB情報に基づいてパッド81に対応する画素を抽出するようにしたが、パッドRGB情報のみに基づいてパッド81に対応する画素を抽出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、電子部品を実装していないプリント基板のパッドに形成されたスルーホールの位置ずれを検査することができる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・検査装置
2・・・画像取得手段
3・・・領域抽出手段
4・・・設定手段
5・・・二値化処理手段
6・・・ラベリング手段
7・・・判定手段
31・・・パッドRGB領域
32・・・除外RGB領域
8・・・プリント基板
81・・・パッド
81a・・・エッジ
82・・・基材
83・・・レジスト
82R・・・基材レジスト
81R・・・パッド上レジスト
84・・・スルーホール
9・・・検査領域
91・・・境界部分
92・・・ラベリング領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板のパッドに形成されたスルーホールの位置を検査できるようにしたスルーホールの検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板のパッドには、電子部品を装着するためのスルーホールが形成されている。ところで、このスルーホールは、パッドの形成とは異なる処理工程で形成されるため、スルーホールの位置がパッドの中心からずれてしまうことがある。そこで、スルーホールの形成状態を正確に検査できるようにした検査装置が各種提案されてきている(特許文献1〜特許文献4)。
【0003】
例えば、下記の特許文献1(実開平2−105156号)には、スルーホールの穴の数をカウントし、基準の数と一致するかどうかを検査する方法が開示されている。このような方法によれば、スルーホールが塞がっているような場合は、これを不良と検出することができる。また、特許文献2(特開平5−60537号)にも、スルーホールの穴詰まりを検出する他、スルーホールの穴径までも検査できるようにした検査装置が開示されている。
【0004】
さらに、下記の特許文献3(特公平7−86468号)には、図10に示すように、パッドやスルーホールの画像を細線化処理し、その端点を見つけてスルーホールの位置ずれを検出できるようにした方法が開示されている。このような方法によれば、例えば、スルーホールがパッドからはみ出ているような場合には、パッドのエッジがスルーホールによって切れてしまうため、細線化処理された線に複数の端点を生じ(図10下図のバツ印)、これによってスルーホールの位置ずれを検出することができる。
【0005】
また、下記の特許文献4(特開平9−203620号)には、パッドやスルーホールの画像を二値化処理し、図11に示すように、画像を8方向にわたって分割してエッジを抽出してスルーホールの形成状態を判断できるようにした検査装置が開示されている。このような方法によれば、特許文献3の細線化処理の際に誤差を生じた場合であっても、そのノイズを生ずることなく、確実にスルーホールの位置ずれを検出することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平2−105156号公報
【特許文献2】特開平5−060537号公報
【特許文献3】特公平7−086468号公報
【特許文献4】特開平9−203620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献に記載される方法では、次のような問題を生ずる。
【0008】
すなわち、特許文献1や特許文献2に示す方法は、スルーホールの穴数や穴径の大きさを判断するものであるため、スルーホールの形成位置がパッドからはみ出している場合であっても、穴数や穴径が合っていれば、これを不良と判断することができない。
【0009】
また、特許文献3や特許文献4のようにエッジを抽出して検査する方法では、画像の取得状態によっては、パッドやスルーホールの輪郭が曖昧なものとなり、正確なエッジを抽出することができなくなる。特に、パッドのエッジの内側までレジストが塗布されているような場合は、パッドの中心側から順に「銅色(露出金属色)」「銅上に塗布されたレジスト色」「基板上のレジスト色」と輝度値が滑らかに変化するため、グレースケールによって画像を取得するとエッジの正確な抽出が難しくなる。しかも、光の照射方向によってはエッジが強く反射したり、陰ができたりすると、更にエッジの抽出が困難になる。このため、特許文献3のような細線化処理する方法や、特許文献4に示すように8方向にわたってエッジを抽出する方法では、その処理を行う前のパッドやスルーホールの検査領域の画像が曖昧では、エッジを正確に抽出することができなくなる。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題に着目してなされたもので、エッジを抽出することなくスルーホールの位置ずれを正確に検査することのできるようにしたスルーホールの検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、プリント基板のパッドに設けられたスルーホールの形成状態を検査するスルーホールの検査装置において、プリント基板の表面画像を取得する画像取得手段と、当該表面画像からパッドを含む検査領域の画像を抽出する領域抽出手段と、当該抽出された画像から二値化マップを生成する二値化処理手段と、当該二値化マップに基づいてラベリング処理を実行するラベリング手段と、当該ラベリング処理された情報に基づいてパッド以外のラベリング領域の個数をカウントし、当該ラベリング領域の個数が所定の個数以下である場合は位置ずれであると判定する判定手段とを設けるようにしたものである。
【0012】
このようにすれば、パッドのエッジを超えてスルーホールが形成されている場合には、スルーホールの領域とパッド以外のラベリング領域が連結して1個となり、これによってスルーホールが位置ずれしていることを検出することができる。一方、スルーホールがパッド内に収まっている場合は、パッド内のスルーホールのラベリング領域とパッド外側のラベリング領域が2個存在することになるため、スルーホールがパッド内に収まっていることを判断することができるようになる。
【0013】
また、このような発明において、あらかじめパッド領域に対応したパッドRGB情報およびパッド以外の領域に対応した除外RGB情報を設定しておき、当該パッドRGB情報と除外RGB情報の領域を膨らまし処理して表面画像から検査領域の画像を抽出する。
【0014】
このようにすれば、カラー画像でパッド領域やそれ以外の領域を抽出する場合、パッドのRGBやパッド以外のRGBの輝度値をすべて指定しなくても、数個の画素や一定領域のRGBを設定するだけで、その指定されたRGBに近い画素を抽出し、また、除外することができるようになる。
【0015】
さらに、このような発明において、ラベリングされた画像からスルーホールの形成状態を判定する場合、検査領域の外側境界に接するパッド以外のラベリング領域を除去し、その後、パッド以外のラベリング領域の数をカウントしてその個数が既定値以下である場合は位置ずれであると判定する。
【0016】
このようにすれば、検査領域内に傷や他の配線パターンなどが存在するような場合であっても、その傷によって分割されたラベリング領域を除去して正確にスルーホールの位置ずれを検査することができるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の検査装置によれば、プリント基板の表面画像を取得する画像取得手段と、当該表面画像からパッドを含む検査領域の画像を抽出する領域抽出手段と、当該抽出された画像から二値化マップを生成する二値化処理手段と、当該二値化マップに基づいてラベリング処理を実行するラベリング手段と、当該ラベリング処理された情報に基づいてパッド以外のラベリング領域の個数をカウントし、当該ラベリング領域の個数が所定の個数以下である場合は位置ずれであると判定する判定手段とを設けるようにしたので、パッドのエッジを超えてスルーホールが形成されている場合、スルーホールの領域とパッド以外のラベリング領域の個数が連結して1個となり、これによってスルーホールの位置ずれを検出することができる。一方、スルーホールがパッド内に収まっている場合は、パッド内のスルーホールのラベリング領域とパッド外側のラベリング領域が2個存在することになるため、スルーホールがパッド内に収まっていることを判断することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態における検査装置の機能ブロック図を示すものである。
【図2】同形態におけるプリント基板の表面画像から取得されるパッドRGBの領域と除外される除外RGBの情報を示すものである。
【図3】同形態におけるパッドとスルーホールの位置関係を示すものである。
【図4】同形態におけるパッド近傍に傷などが存在する状態を示す図である。
【図5】同形態における二値化処理された二値化マップを示すものである。
【図6】同形態においてラベリング処理の概要を示す図
【図7】同形態においてラベリング処理された画像と判定処理を示すものである。
【図8】同形態における設定処理を示すフローチャートを示すものである。
【図9】同形態における検査処理を示すフローチャートを示すものである。
【図10】従来例のスルーホールの検査方法を示すものである。
【図11】従来例のスルーホールの検査方法を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態における検査装置1は、図3に示すように、プリント基板上に形成されたパッド81内にスルーホール84が正確に収まっているかどうかを検査できるようにしたものであって、プリント基板8からその表面画像を取得し、パッド81が存在する位置の検査領域9の画像を抽出する。そして、図4や図5に示すように、その検査領域9でパッド81の領域とそれ以外の領域に二値化処理(パッド81の領域を「0」、それ以外の領域を「1」とした二値化処理)し、パッド以外のラベリング領域の個数に基づいてスルーホール84がパッド81からはみ出ていないかどうかを検査できるようにしたものである。以下、図1における機能ブロック図に基づいて検査装置1の構成について詳細に説明する。
【0020】
まず、画像取得手段2は、検査対象であるプリント基板8からその表面画像を取得する。プリント基板8から表面画像を取得する場合、グレースケールによって表面画像を取得してもよいが、グレースケールであると、図3に示すような金属が露出したパッド81の領域と(破線の内側領域)、そのパッド81上にレジスト83が塗布されている領域81R(破線と実線の間の領域)と、基板82上に直接レジスト83が塗布されている領域82R(実線の外側領域)との輝度値の差が明確にならず、256階調の輝度値だけではパッド81の画像を正確に抽出できない。このため、好ましくは、カラー画像によってプリント基板8の表面画像を取得する。この画像取得手段2でプリント基板8の表面画像を取得する場合は、プリント基板8の斜め上方に配列された照明装置から光を照射し、その反射光をプリント基板8の真上のラインセンサやエリアセンサで取得する。この取得された表面画像は、(RGB)=(0,0,0)〜(255,255,255)からなる輝度の画素によって構成される。そして、その表面画像を画像メモリに格納し、その表面画像から検査領域9であるパッド81やスルーホール84の画像を抽出する。
【0021】
領域抽出手段3は、この取得されたプリント基板8の表面画像から検査領域9であるパッド81の検査領域9の画像を抽出する。このとき、あらかじめ設定手段4によってパッド81の存在する座標位置を設定しておく。また、その画像から抽出されるべきパッドRGB画素情報と、そこから積極的に除外されるべき除外RGB画素情報を設定する。ここで、パッド81の座標位置を設定する場合は、プリント基板8の設計時に使用されたCADデータをもとにパッド81の座標位置を設定し、その座標位置を中心としてパッド81をすべて含むような検査領域9を設定する。この検査領域9の形状としては、正方形や長方形などの矩形状であってもよく、あるいは、円形形状であってもよい。好ましくは、検査対象となるパッド81やスルーホール84をすべて含むようにしておく。
【0022】
一方、パッドRGB情報は、表面画像からパッド81を抽出するためのRGB輝度情報を示すものであって、基準となるプリント基板8のパッド81から取得された画像に基づいて設定される。このとき、例えば、パッド81の金属露出部分だけを抽出する場合は、(R,G,B)=(200,60,60)付近の輝度値を設定し、また、パッド81の外周部分のレジスト83のオーバーラップ部分81Rをパッド領域として抽出する場合は、(R,G,B)=(120,150,80)付近の輝度値を設定する。これらの輝度値はレジスト83の塗布厚や金属表面の研磨傷などによって変化するため、輝度値を設定した後、これらの輝度値を含むようにRGB輝度値を一定幅だけ膨らまし処理する。具体的には、基準となるプリント基板8の表面画像からマウスでパッド81の一画素や矩形領域を設定し、その後、その指定された画素の輝度値(矩形領域を設定した場合は、その矩形領域内のすべての画素の輝度値)を含むように、例えば、120−α1<R<200+α2、60−β1<G<150+β2、60−γ1<B<80+γ2、などと膨らます(図2参照)。なお、ここでα1〜γ2の各値はそれぞれ個別に設定され、それぞれ異なる値でもよく、あるいは、α1=α2、β1=β2、γ1=γ2と同一になるように設定してもよい。
【0023】
除外RGB情報は、表面画像から積極的に除外したいRGBの輝度値を設定したもので、この実施の形態では、パッド色に近い基材色や、基板82上のレジスト色などに設定される。この除外RGB情報も、基準となるプリント基板8から取得された画像に基づいて設定され、例えば、基材82そのものの色だけを除外する場合は、(R,G,B)=(60,30,30)付近の輝度値を設定し、また、その基材82上にレジスト83が塗布されている領域82Rを除外する場合は、(R,G,B)=(80,120,50)付近の輝度値に設定する。これらの輝度値もレジスト83の塗布厚によって変化するため、輝度値を指定した後は、これらの輝度値を含むようにRGB輝度値を一定幅だけ膨らす(図2参照)。すなわち、マウスによって基準となるプリント基板8の表面画像から一画素や矩形領域を設定した後、その指定された画素の輝度値(矩形領域を設定した場合は、その矩形領域内のすべての画素の輝度値)を含むように膨らます。
【0024】
このようにパッドRGB情報と除外RGB情報を膨らまし処理すると、図2に示すように、パッドRGB情報を示す領域31と除外RGB情報を示す領域32とがオーバーラップしてしまう可能性がある。このような場合、検査領域9から除外RGB情報の領域32に含まれる画素を先に除去し、その後、パッドRGB情報の領域31に含まれる画素を抽出する。また、これとは逆に、パッドRGB情報に属する画素を抽出してから除外RGB情報に含まれる画素を除外しても、結果としては抽出される画像は同じになる。
【0025】
二値化処理手段5は、このように抽出された検査領域9の画像に基づいて二値化処理を行って図4や図5に示すような二値化マップを生成する。二値化処理では、検査領域9内でパッドRGB色として抽出された画素については「0」とし、パッド以外の除去RGB色などとして除外された画素については「1」を設定する。このとき、例えば、パッド81からスルーホール84がはみ出している場合は、パッド81内にスルーホール84が収まっている場合は、図5(a)に示すように、ビット値「1」の領域の塊が、パッドの内側と外側に合計2個存在することになり、一方、図5(b)に示すように、パッド以外(すなわちビット値「1」)の領域の塊が1個のみとなる。
【0026】
ラベリング手段6は、このように二値化処理された二値化マップに基づいてビット値「0」や「1」の塊ごとにラベリング処理を実行する。ここで「ラベリング」とは、二値化処理されたビット値の塊ごとに符号を割り当てることをいい、この実施の形態では、パッド81以外の領域(すなわち、「1」が割り当てられた領域)の塊ごとにラベルを付与することとしている。
【0027】
図6に、このラベリング処理の一例を示す。図6において、符号93は注目画素であり、符号94は、その周囲の参照画素である。まず、注目画素93についてラベルを割り当てる場合、その注目画素93のビット値が「1」であり、かつ、その周囲の参照画素94にまだ何もラベルが割り当てられていない場合は、新しいラベルを付けてその注目画素93に割り当てる。一方、参照画素94について既にラベルが割り当てられている場合は、そのラベルと同じラベルを注目画素93に割り当てる。図6においては、注目画素93のビット値が「1」であり、その左側周囲の参照画素94に既にラベル「1」が割り当てられているため、その注目画素93に対してラベル「1」が割り当てられる。以下、同様の処理を検査領域9の左上から右下にの各画素に向けてラベリングされたマップを生成していく。なお、このラベリング処理の方法については他の方法を採用してもよいが、ラベリングの規則によっては、その規則によって生ずる癖が存在し、ラベリングされる領域が分割されたり統合されたりする可能性がある。特に、検査領域9の境界部分91については、中心部分と比べて相対的にノイズを生じさせやすく、例えば、図4に示すように、検査領域9の近傍に傷や配線パターンなどが存在する場合は、図4(b)に示すように、その傷などによってビット値「1」の領域が内側と外側に分割される可能性がある。
【0028】
そこで、判定手段7では、このようにラベリングされた画像のうち、検査領域9の境界部分91に接するラベリング領域92を除去し、その除去後のラベリング領域の個数をカウントする。すなわち、図5(a)に示すように、検査領域9内に他の配線パターンや傷のない状態でスルーホール84がパッド81の内側に形成されている場合は、パッド81の外側のラベリング領域92とパッド81の内側のラベリング領域92が存在し、合計2個のラベリング領域が存在することとなる(図7(a))。このとき、検査領域9の境界部分91に接するラベリング領域92を除去すれば、パッド81の領域内のラベリング領域92が1個だけ残ることになる。すなわち、正常な状態でスルーホール84が形成されている場合は、境界部分除去後のラベリング領域の個数が「1個」だけとなる。また、図4(a)に示すように、検査領域9の他の配線パターンや傷などによって基材82上のレジスト領域82Rが分断されている場合は、ラベリング領域の個数は「3個」となるが、パッド外側のラベリング領域はいずれも検査領域9の境界部分91に接しているのでラベリング領域の個数が「1個」となる。
【0029】
一方、図5(b)に示すように、スルーホール84がパッド81からはみ出している場合、外側境界91に接するラベリング領域92を除去すると、検査領域9のラベリング領域の個数が「0個」となる(図7(b))。そこで、判定手段7では、この検査領域9の境界部分91に接するラベリング領域92を取り除き、その後のラベリング領域の個数をカウントしてその個数が「0個」であれば「位置ずれである」と判定する。
【0030】
次に、このように構成された検査装置1の検査フローについて、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0031】
<検査領域9の画像抽出のための設定>
まず、パッド81やスルーホール84を含む検査領域9を表面画像から抽出するため事前作業について説明する。
【0032】
まず、検査対象物であるプリント基板8からパッド81の検査領域9を抽出する場合、事前に基準となるプリント基板8を用意して、その表面画像を取得する(ステップS1)。このとき、基準となるプリント基板8としては、他の検査装置1や目視検査で良品と判断されたものを用い、その取得された表面画像をディスプレイに表示させる(ステップS2)。そして、オペレーターから、CADデータやマウスによる画面操作によってパッド81の座標位置の設定受付を行い(ステップS3)、その座標位置やパッド81を含む矩形領域の大きさを記憶させる(ステップS4)。
【0033】
このように座標位置や検査領域9の大きさを設定した後、今度は、ディスプレイに表示された検査領域9の画像に基づいて、パッド81の金属露出部分やパッド81上のレジスト83塗布領域の画素の選択を受け付け、その画素のRGB情報をパッドRGB情報として記憶させる(ステップS5)。また、これと同様に、パッド81以外の部分で積極的に除外したい色の画素について選択を受け付け、その画素のRGB情報を除外RGB情報として記憶させる(ステップS6)。このとき、除外色としては、パッド色と間違われやすい色を設定する。そして、このようにパッドRGB情報や除外RGB情報を設定した後、それぞれの情報を膨らまし処理してパッドRGB情報や除外RGB情報として記憶させる(ステップS7)。
【0034】
<検査対象物の検査処理>
次に、このように検査領域9の座標やパッドRGB情報、除外RGB情報を設定した後、検査対象物であるプリント基板8を検査する処理について図9のフローチャートを用いて説明する。
【0035】
検査対象物であるプリント基板8の形成状態を検査する場合、同様に、検査対象物のプリント基板8から表面画像を取得し(ステップT1)、その画像を画像メモリに格納する。そして、その表面画像から、あらかじめ記憶されているパッド81の座標位置に基づいて検査領域9を抽出し(ステップT2)、その検査領域9の画像から前記膨らまし処理された除外RGB情報に含まれる画素を除去する(ステップT3)。このとき、基材82そのものの色に対応する画素や、基材82上に塗布されたレジスト83の色に対応する画素などは除去される。このように除外RGB情報に含まれる画素を取り除いた後は、前記膨らまし処理された後のパッドRGB情報に属する画素を抽出し(ステップT4)、例えば、パッド81の金属色やパッド81上のレジスト色などに含まれる画素だけを抽出する。このような処理を行うことにより、検査領域9の画像としては、パッド81の領域に対応する画像だけが残ることになり、それ以外の画像は除去されることになる。
【0036】
次に、このように抽出されたパッド81の領域の画像を二値化処理して二値化マップを生成する(ステップT5)。この二値化処理では、パッド81以外の領域を「1」とし、パッド81の領域を「0」とする。これにより、図4や図5に示すように、基材82のレジスト83領域やスルーホール84の部分は「1」となり、パッド81の金属露出部分やパッド81のレジスト塗布領域81Rは「0」となる。
【0037】
ステップT6では、このように生成された二値化マップからラベリング処理を行う。このラベリング処理では、パッド81以外の領域についてのラベリング処理を実行し、二値化マップで「1」の付されている画素の塊ごとにラベルを付けていく。この処理によって、例えば、パッド81内にスルーホール84が形成されている場合は、図7に示すように、スルーホール84の部分のラベル「1」の部分と、パッド81その外側領域のラベル「2」の部分とで2個のラベリング領域92が存在することになる。一方、パッド81の境界部分からスルーホール84がはみ出している場合は、ラベリング領域92は1個だけとなる。
【0038】
判定処理では、このラベリング処理された後のマップに基づいてスルーホール84の位置ずれを判定する。この判定処理では、検査領域9の境界部分91に接するラベリング領域92を除去し(ステップT7)、そこで残ったラベリング領域92の個数をカウントする。このとき、パッド81内にスルーホール84が形成されている場合は、検査領域9の境界部分91に接するラベリング領域92を除去した後のラベリング領域の個数が「1個」(パッド81内のスルーホール部分の1個)だけとなり、一方、パッド81からスルーホール84がはみ出している場合は、スルーホール84と外側領域が一体化されて、ラベリング領域の個数が「0個」となる。そこで、判定手段7によってラベリング領域の個数が「0個」の場合は「位置ずれ」であると判定し(ステップT9)、一方、ラベリング領域の個数が「1個」である場合は「位置ずれなし」と判定し(ステップT10)てその結果を出力する。
【0039】
このように上記実施の形態によれば、プリント基板8の表面画像を取得する画像取得手段2と、パッド81の座標位置やパッドRGB情報、除外RGB情報などに基づいてパッド81を含む検査領域9の画像を抽出する領域抽出手段3と、この検査領域9の画像から二値化マップを生成する二値化処理手段5と、この二値化マップに基づいてパッド81以外の領域についてラベリング処理を実行するラベリング手段6とを備え、パッド81以外のラベリング領域92の個数をカウントしてその個数が既定値よりも少ない場合は「位置ずれである」と判定するようにしたので、パッド81のエッジ81aを超えてスルーホール84が形成されているかどうかを判定することができる。
【0040】
また、このように検査領域9を抽出する場合、パッドRGB情報と除外RGB情報の領域を膨らまし処理して検査領域9の画像を抽出するようにしたので、カラー画像でパッド81の検査領域9を抽出する場合、パッド81のRGBやパッド81以外のRGBの輝度値をすべて指定しなくても、数画素のRGBや一定範囲内のRGBを設定するだけで、その指定されたRGB近傍の画素を抽出し、また、除外することができるようになる。
【0041】
さらには、ラベリングされた画像からスルーホール84の形成状態を判定する場合、検査領域9の境界部分91に接するラベリング領域92を除去し、その後、パッド81以外の領域のラベリング領域の個数が「0」であれば「位置ずれである」と判定するようにしたので、図4に示すように、検査領域9に傷や他の配線パターンなどが存在する場合であっても、その傷などによって分割されたラベリング領域92を除去して正確に位置ずれを検査することができるようになる。
【0042】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0043】
例えば、上記実施の形態では、ラベリング領域の個数が「0」である場合は「位置ずれである」と判定し、ラベリング領域の個数が「1」である場合は「位置ずれでない」と判断したが、傷などの影響を無視することができる場合は、スルーホール84がはみ出している場合の方がラベリング領域の個数が1個少なくなるため、既定値よりもラベリング領域の個数が少ない場合は「位置ずれ」であると判断するようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施の形態では、ラベリング領域の個数によってスルーホール84の位置ずれを検出するようにしているが、パッド81の内側にスルーホール84が形成されている場合、内側のラベリング領域92の面積に基づいてスルーホール84の穴径も同時に検査するようにしてもよい。
【0045】
さらに、上記実施の形態では、除外RGB情報に基づいて除外画素を先に除外し、その後、パッドRGB情報に基づいてパッド81に対応する画素を抽出するようにしたが、パッドRGB情報のみに基づいてパッド81に対応する画素を抽出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、電子部品を実装していないプリント基板のパッドに形成されたスルーホールの位置ずれを検査することができる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・検査装置
2・・・画像取得手段
3・・・領域抽出手段
4・・・設定手段
5・・・二値化処理手段
6・・・ラベリング手段
7・・・判定手段
31・・・パッドRGB領域
32・・・除外RGB領域
8・・・プリント基板
81・・・パッド
81a・・・エッジ
82・・・基材
83・・・レジスト
82R・・・基材レジスト
81R・・・パッド上レジスト
84・・・スルーホール
9・・・検査領域
91・・・境界部分
92・・・ラベリング領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板のパッドに設けられたスルーホールの形成状態を検査するスルーホールの検査装置において、
プリント基板の表面画像を取得する画像取得手段と、
当該表面画像からパッドを含む検査領域の画像を抽出する領域抽出手段と、
当該抽出された画像から二値化マップを生成する二値化処理手段と、
当該二値化マップに基づいてラベリング処理を実行するラベリング手段と、
当該ラベリング処理された情報に基づいてパッド以外のラベリング領域の個数をカウントし、当該ラベリング領域の個数が所定の個数以下である場合は位置ずれであると判定する判定手段と、
を設けたことを特徴とするスルーホールの検査装置。
【請求項2】
前記領域抽出手段が、あらかじめパッド領域に対応したパッドRGB情報およびパッド以外の領域に対応した除外RGB情報を設定しておき、当該パッドRGB情報と除外RGB情報の領域を膨らまし処理して検査領域の画像を抽出するものである請求項1に記載のスルーホールの検査装置。
【請求項3】
前記判定手段が、ラベリングされた画像からスルーホールの形成状態を判定する場合、検査領域の外側境界に接するパッド以外のラベリング領域を除去し、その後、パッド以外のラベリング領域の数をカウントしてその個数が既定値以下である場合は位置ずれであると判定するようにしたものである請求項1に記載のスルーホールの検査装置。
【請求項1】
プリント基板のパッドに設けられたスルーホールの形成状態を検査するスルーホールの検査装置において、
プリント基板の表面画像を取得する画像取得手段と、
当該表面画像からパッドを含む検査領域の画像を抽出する領域抽出手段と、
当該抽出された画像から二値化マップを生成する二値化処理手段と、
当該二値化マップに基づいてラベリング処理を実行するラベリング手段と、
当該ラベリング処理された情報に基づいてパッド以外のラベリング領域の個数をカウントし、当該ラベリング領域の個数が所定の個数以下である場合は位置ずれであると判定する判定手段と、
を設けたことを特徴とするスルーホールの検査装置。
【請求項2】
前記領域抽出手段が、あらかじめパッド領域に対応したパッドRGB情報およびパッド以外の領域に対応した除外RGB情報を設定しておき、当該パッドRGB情報と除外RGB情報の領域を膨らまし処理して検査領域の画像を抽出するものである請求項1に記載のスルーホールの検査装置。
【請求項3】
前記判定手段が、ラベリングされた画像からスルーホールの形成状態を判定する場合、検査領域の外側境界に接するパッド以外のラベリング領域を除去し、その後、パッド以外のラベリング領域の数をカウントしてその個数が既定値以下である場合は位置ずれであると判定するようにしたものである請求項1に記載のスルーホールの検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−175483(P2010−175483A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21023(P2009−21023)
【出願日】平成21年1月31日(2009.1.31)
【出願人】(597028081)株式会社メガトレード (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月31日(2009.1.31)
【出願人】(597028081)株式会社メガトレード (27)
【Fターム(参考)】
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