説明

スロットル制御装置

【課題】
エンジン等におけるスロットルの異物の噛み込みに対して、スロットル制御装置により、より適切に対処する。
【解決手段】
内燃機関の吸気管に設けられると共に電動モータによって開閉されるスロットルを制御するスロットル制御装置は、スロットルの実開度を検出するスロットルポジションセンサと、電動モータにかかる電気負荷に基づいて、スロットルの予想開度を予想する開度予想手段とを備える。更に、予想された予想開度と検出された実開度との差に基づいて、スロットルが異物を噛み込んでいるか否かを判定する異常判定手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に搭載される内燃機関の吸気管に設けられたスロットル或いはスロットル弁を制御する、スロットル制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクセルペダルの踏込量等に応じて電動モータを駆動し、スロットル開度を制御する内燃機関のスロットル制御装置が知られている。ここで、内燃機関における燃焼時に発生した燃料カスがスロットルのところまで逆流したりすることで、スロットルと吸気管の壁面との間に粘着性の高い異物が付着することがある。この異物が固定化してデポジットが形成されると、スロットルは一部分の吸気管の断面積が変化し、吸入空気量の安定性が損なわれるとともに、スロットルの作動不良を引き起こすおそれがある。
【0003】
このため従来から、スロットルに異物が付着するのを防止等する各種スロットル制御装置が提案されている。
【0004】
例えば、アクセル操作量に基づき所定の関数テーブルを参照し、機関の出力を目標値にすべくスロットル開度を設定・制御することで、スロットルへの異物付着等による制御性能の悪化を防止する技術が提案されている(特許文献1参照)。スロットルアクチュエータの制御異常が検出されると、その異常レベルに応じて、アクセル開度をパラメータとして燃料噴射気筒数、点火時期、バイパス制御弁開度、自動変速機の変速段を制御する技術が提案されている(特許文献2参照)。アクセルペダルと独立して開閉動作可能なスロットルを往復運動させ、スロットルの縁部と吸気管内壁とが近接するためデポジットが掻き落される技術が提案されている(特許文献3参照)。内燃機関が所定の運転状態になると、制御手段によりスロットルが電動モータによって全閉位置を通過するように開閉作動し、これにより、スロットルと吸気管の壁面との間に付着した異物を除去する技術が提案されている(特許文献4参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平3−225051号公報
【特許文献2】特開平6−264800号公報
【特許文献3】特開2000−320347号公報
【特許文献4】特開2001−173464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特許文献1から特許文献4に開示されている技術には、以下のような問題点がある。
【0007】
即ち、特許文献1及び特許文献2に開示された技術によれば、実開度検出時点における判定をするにとどまっている。そのため、異物除去作業のタイミングが遅れ、スロットルに対して必要以上の電気負荷を与えてしまい、噛み込んだ異物などが固着してしまう恐れがある。
【0008】
また、特許文献3に開示された技術によれば、スロットルを全閉にしてデポジットを掻き落し、スロットルの軌跡を確保するが、エンジン始動時或いは停止時にとどまっている。
【0009】
更に、特許文献4に開示された技術によれば、噛み込み判定後の後処理として、その異物を除去する制御を行うが、除去が不可能と判定した場合の処置が十分ではない。
【0010】
本発明は、例えば上記問題点に鑑みてなされたものであり、スロットルの異物の噛み込みに対して、より適切に対処することを可能ならしめるスロットル制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のスロットル制御装置は、内燃機関の吸気管に設けられると共に電動モータによって開閉されるスロットルを制御するスロットル制御装置であって、前記スロットルの実開度を検出するスロットルポジションセンサと、前記電動モータにかかる電気負荷に基づいて、前記スロットルの予想開度を予想する開度予想手段と、前記予想された予想開度と前記検出された実開度との差に基づいて、前記スロットルが異物を噛み込んでいるか否かを判定する異常判定手段とを備える。
【0012】
本発明のスロットル制御装置によれば、例えばガソリンエンジン等の内燃機関におけるスロットルを、異物が噛み込まれた時などの異常時に次のように制御する。尚、スロットルは、係る異常時を除く通常時には、概ね当該内燃機関に対するアクセル操作量に応じて電動モータによって開閉される。
【0013】
即ち、通常運転時を含めて常時又は何らかの異常が発見された異常時に選択的に、スロットルポジションセンサにより、スロットルの実開度が検出される。これと並行して或いは相前後して、電動モータにかかる電気負荷に基づいて、例えばコントローラ等からなる開度予想手段によって、スロットルの予想開度が、例えば所定関数を用いての算出或いはテーブル変換などで予想される。ここでは好ましくは、例えば、電気負荷の時間的な積算値と予想開度との関連付けが学習により行われる。具体的には、電気負荷(電気の振幅×時間)或いは電動モータの仕事量をどれだけかけた場合に、どれだけスロットルが開く筈であるか又はどれだけスロットルが閉まるかというスロットル開度の変化量(例えば、時間当たりのスロットル開度の変化量或いは変化速度)をモニタすることで得た学習曲線を用いて、予想開度が算出可能となる。これにより、経時的又は諸条件に応じて変化し得る、電気負荷と予想開度との関係が、リアルタイム的に適宜探求されることになる。
【0014】
続いて、例えばコントローラ等からなる異常判定手段によって、これらの予想された予想開度と検出された実開度との差に基づいて、スロットルが異物を噛み込んでいるか否かが判定される。ここでは、例えば、予想された予想開度と検出された実開度との差が固定又は可変の所定閾値より大きければ(即ち、電気負荷をかけてもスロットルが動かない又は通常より動き難い場合には)、スロットルが異物を噛み込んでいるものと判定される。尚、このような異物の噛み込みは、典型的には、内燃機関における燃料の燃焼かす等が逆流して、スロットルと吸気管壁面の間に付着してしまうことであり、スロットルがデポジットと完全に固着してしまっている状態のみならず、デポジットに邪魔されてスロットルが開ききらない或いは閉じきらない状態も含まれる。
【0015】
このように、スロットルが異物を噛み込んでいるか否かの判定は、先読みされた予想開度に基づくので、目標開度と実開度とを比較する場合等と比べて、より早期に或いはよりリアルタイムに近い時点で、スロットルが噛み込んでいるか否かの判定を行うことが可能となる。このような判定は、例えば、エンジン始動直後や通常運転時に非常に役立つ。そして、このように判定を行えば、その判定結果に応じて、適切な異常回避処理あるいは異常回復処理を、より早期に行うことができる。例えば、早期の異常回復処理により、エンスト回避なども可能となる。これにより、異常から故障に至る前に、或いは異常による不都合を低減することが可能となる。
【0016】
本発明のスロットル制御装置の一態様では、前記開度予想手段は、前記電気負荷の時間積算値に基づいて、前記予想開度を算出する。
【0017】
この態様によれば、例えばコントローラ等の開度予想手段によって、電気負荷の時間積算値に基づいて、予想開度が算出される。ここに「電気負荷の時間積算値」とは、電動モータに与えた電気負荷の大きさ及び時間から積算される仕事量を意味する。例えば学習により、電気負荷の時間積算値に対するスロットル開度の変化量を示す特性曲線が得られていれば、この特性曲線を用いて、予想開度を瞬時に算出することも可能である。
【0018】
本発明のスロットル制御装置の他の態様では、前記異常判定手段は、前記差が所定の閾値を越えた場合に、前記スロットルが異物を噛み込んでいるものと判定する。
【0019】
この態様によれば、異常判定手段によって、予想された予想開度と検出された実開度との差と、予め設定された固定の又は可変の閾値との大小関係が、一定周期又は不定期に判定される。そして、この差が閾値を越えた場合に、スロットルが異物を噛み込んでいるものと判定され、逆に、この差が閾値を越えない場合に、スロットルが異物を噛み込んでいないものと判定される。尚、この差が閾値に等しい場合には、スロットルが異物を噛み込んでいると判定してもよいし、噛み込んでいないと判定してもよい。このように、予想開度と実開度に所定閾値(後述の閾値β)以上の差があると、スロットルが近い将来、予想外の動作をする恐れがあると考えられる。即ち、スロットルが異物を噛み込んでいると考えてよい。
【0020】
本発明のスロットル制御装置の他の態様では、前記内燃機関に対するアクセル操作量に対応する前記スロットルの目標開度と前記検出された実開度との誤差をモニタリングする誤差モニタリング手段を更に備え、前記モニタリングされた誤差が所定閾値を超えた場合に選択的に、前記開度予想手段は予想し且つ前記異常判定手段は判定する。
【0021】
この態様によれば、通常運転或いは基本的に常時、内燃機関に対するアクセル操作量に対応するスロットルの目標開度と検出された実開度との誤差が、モニタリング手段によりモニタリングされる。ここに「目標開度」とは、加速或いは減速するにあたって所定の指示通りに内燃機関が動作するように後述するEUC等の制御手段によって目標として設定されるスロットル開度である。この目標開度と実開度とに所定閾値(後述の閾値α)以上の差があると、差を発生させている何らかの原因があると考えられ、その原因の一つとして、スロットルが異物を噛み込んでいる場合がある。ここで、所定閾値は、実開度が目標開度に十分近づいたと判断される適合値であり、予め固定に又は可変に設定可能である。
【0022】
そして、この誤差が所定閾値を超えた場合に、即ち、スロットルにおける異物の噛み込みを含めた何らかの異常が発生した蓋然性の高い場合に、選択的に、上述の如き本発明に係る開度予想手段による予想及び異常判定手段による判定が行われる。逆に、この誤差が所定閾値を超えない場合に、上述の如き本発明に係る開度予想手段による予想及び異常判定手段による判定が行われることはない。このように、本発明に係る開度予想手段による予想及び異常判定手段による判定を、必要に応じて適宜に行うので、全体として無駄なくスロットル制御を行うことができる。
【0023】
本発明のスロットル制御装置の他の態様では、前記異物を噛み込んでいると判定された場合に、前記スロットルにおける異常回避のために予め設定された異常回避処理を行うように少なくとも前記電動モータを制御する異常時制御手段を更に備える。
【0024】
この態様によれば、異常判定手段により異物を噛み込んでいると判定された場合には、例えばコントローラ等からなる異常時制御手段による制御下で、少なくとも電動モータにより異常回避処理が行われる。例えば、電動モータに係る電気負荷のかけ方(より具体的には、駆動パルスの振幅や幅)、或いはスロットルの回動方向等に変化が加えられる。いずれの場合にも、異常回避処理としては、実験的、経験的或いは理論的に見て、異物をスロットルから除去する可能性を高める処理が行われる。
【0025】
この異常時制御手段を備える態様では、前記異常時制御手段は、前記異常回避処理の少なくとも一環として、前記電動モータに所定値以上に電気負荷をかけないように前記電動モータの電源を制御してもよい。
【0026】
このように構成すれば、スロットルに異物が噛み込まれた際に、電動モータに所定値以上に電気負荷がかけられることはないので、過剰負荷により異物がスロットルに確固として固着する事態を未然防止する可能性を高められる。特に、早期に異物が噛み込まれたとの判定を行い、よって早期にこのように電気負荷をかけないようにすれば、異物がスロットルに確固として固着する事態を効果的に防ぐことが可能となる。
【0027】
或いは本発明のスロットル制御装置の他の態様では、前記異常判定手段は、前記スロットルが異物を噛み込んでいると判定した場合に、更に、前記スロットルが開く際の噛み込みであるか又は閉じる際の噛み込みであるかを判定する。
【0028】
この態様によれば、異常判定手段により、スロットルが開く際の噛み込みであるか又は閉じる際の噛み込みであるかが判定される。例えば、目標開度よりも実開度の方が大きければ、異物を噛み込んだにも拘わらず実開度が目標開度よりも大きいので、閉じる途中(閉じ過程)に目標まで閉じきる前に異物を噛み込んでしまったとの判定が可能となる。一方、所定の目標開度よりも実開度の方が小さければ、異物を噛み込んだにも拘わらず実開度が目標開度よりも小さいので、開く途中(開き過程)に目標まで開ききる前に異物を噛み込んでしまったとの判定が可能となる。従って、異物を開く際に噛み込んだのか又は閉じる際に噛み込んだのかに応じて、より適切な異常回避処理あるいは異常回復処理を行うことができる。
【0029】
このスロットルが開く際又は閉じる際の噛み込みであるかの判定に係る態様では、前記開く際の噛み込みであると判定された場合に、前記スロットルが開く際の異常回避のために予め設定された第1異常回避処理を行うように少なくとも前記電動モータを制御すると共に、前記閉じる際の噛み込みであると判定された場合に、前記スロットルが閉じる際の異常回避のために予め設定された第2異常回避処理を行うように少なくとも前記電動モータを制御する異常時制御手段を更に備えてもよい。
【0030】
このように構成すれば、スロットルが開く際に異物を噛み込んでいると判定された場合には、例えばコントローラ等からなる異常時制御手段による制御下で、少なくとも電動モータにより第1異常回避処理が行われる。例えば、若干スロットルを閉じることで、異物を除去する可能性を高められる。他方、スロットルが閉じる際に異物を噛み込んでいると判定された場合には、例えばコントローラ等からなる異常時制御手段による制御下で、少なくとも電動モータにより第2異常回避処理が行われる。例えば、フューエルカットなどで、不快なトルク変動無しに異物を除去する可能性を高められる。
【0031】
尚、このような第1及び第2異常回避処理では、電動モータに係る電気負荷のかけ方(より具体的には、駆動パルスの振幅や幅)、或いはスロットルの回動方向等に変化が加えられるが、スロットルは、通常は、バネ等によって閉じる側に付勢されている。このため、開く際に行うべき第1異常回復処理と閉じる際に行うべき第2異常回復処理とは、スロットルの回動方向だけでなく電気負荷等についても異なる。いずれの場合にも、第1及び第2異常回避処理としては夫々、実験的、経験的或いは理論的に見て、異物をスロットルから除去する可能性を高める処理が行われる。
【0032】
この第1及び第2異常回避処理に係る態様では、前記異常時制御手段は、前記第1異常回避処理の少なくとも一環として、予め設定された前記異物を除去するための除去作業を行うように少なくとも前記電動モータを制御し、前記除去作業により前記異物が除去されない場合に、前記電動モータに対して前記スロットルを閉じるように閉じ指令を出し、該閉じ指令に応じて前記スロットルが閉じた場合には、前記異物が再び噛み込まれない開度に、前記スロットルを固定するように前記電動モータを制御してもよい。
【0033】
このように構成すれば、スロットルが開く際に異物を噛み込んでいる場合、異常時制御手段による制御下で、先ず、少なくとも電動モータにより除去作業が行われる。この除去作業により異物が除去されない場合に(例えば、異常判定手段により、依然として異物が噛み込まれていると判定される場合)、閉じ命令が出される。更に、この閉じ命令に応じて電動モータによりスロットルが閉じられると、異物が再び噛み込まれない開度に、即ち(例えば後述の「上限ガード」或いは「固着角度」に相当する)直前に異物が噛み込まれた角度よりも小さい角度に、スロットルが固定される。これらの結果、残留している可能性のある異物がスロットルに再び噛み込まれる事態を未然防止できる。従って、異物に起因した故障を抑えることができ、この状態で安全な退避走行を行うことも可能となる。
【0034】
この第1及び第2異常回避処理に係る態様では、前記異常時制御手段は、前記第2異常回避処理の少なくとも一環として、前記内燃機関に対するフューエルカットを強制的に実行しつつ、予め設定された前記異物を除去するための除去作業を行うように、前記内燃機関及び少なくとも前記電動モータを制御してもよい。
【0035】
このように構成すれば、スロットルが閉じる際に異物を噛み込んでいる場合、異常時制御手段による制御下で、先ず、フューエルカットが強制的に実行される。即ち、一又は複数ストロークの間、例えば電子噴射式の燃料の噴射が強制的に停止される。すると、除去作業中に吸気管に燃料が供給されることがないため、除去作業によってスロットルを開閉させてもトルク出力へ影響を及ぼすことがない。そのため除去作業時における電気負荷の振幅を、フューエルカットをしていない場合に比べて大きくとることが可能となる。このように、フューエルカットの間に除去作業を行う時間が確保される。従って、フューエルカットと除去作業とにより、運転手等に対して不快感を与えることなく異物を除去する可能性を高められる。
【0036】
この場合更に、前記異常時制御手段は、前記フューエルカットを停止するまでの間、前記除去作業を繰り返し行い、前記異常判定手段は、前記フューエルカットを停止するまでの間、前記除去作業が行われる都度に、前記異物を噛み込んでいるか否かを判定してもよい。
【0037】
このように構成すれば、運転手等に対して不快感を与えることなく且つエンストを回避しながら、フューエルカットと除去作業とにより、異物を除去する可能性を高められる。
【0038】
上述の除去作業に係る態様では、前記異常時制御手段は、前記除去作業として、前記導電モータに対し、前記電気負荷として所定周期の正弦波又は矩形波の電気パルスをかけるように、前記電動モータの電源を制御してもよい。
【0039】
このように構成すれば、スロットルを、半閉じ或いは半開きの状態で、電気パルスの変動に応じて通常の開動作及び閉動作に費やす時間と比べて短い時間内で周期的に揺動させることが可能となり、これにより、異物を比較的効率良く或いは迅速に除去できる。尚、スロットルが一層固着してしまわないように、最初に与える電気負荷は、噛み込みが起こった際のスロットルの回動方向と反対方向にかけることが望ましい。即ち、開き過程において除去作業を行う際は、まずスロットルが閉じるように電気負荷を与える、また、閉じ過程においては開くように電気負荷を与えることが望ましい。
【0040】
本発明のスロットル制御装置の他の態様では、前記異常時制御手段は、前記除去作業により前記異物が除去されずに前記スロットルが固着された場合、前記検出された実開度が所定値より大きければ、前記内燃機関を暴走させないために予め設定された暴走阻止用処理を行いつつ前記スロットルを閉じる側に前記電動モータに相対的に高い電気負荷をかけるように前記電動モータの電源を制御し、前記検出された実開度が前記所定値より小さければ、前記スロットルを開く側に前記電動モータに相対的に高い電気負荷をかけるように前記電動モータの電源を制御する。
【0041】
この態様によれば、結局、除去作業により異物が除去されずにスロットルが固着された場合、異常時制御手段による制御下で、検出された実開度が、例えば内燃機関のアイドル時の開度である、所定値より大きければ、内燃機関を暴走させないために予め設定された暴走阻止用処理が行われる。ここでは例えば、内燃機関の暴走を阻止するように、点火遅角、自動ブレーキ、フューエルカットなどが行われる。この状態で、電動モータにより、高い電気負荷がかけられて(例えば、駆動パルスの振幅や巾が大きくされて)、スロットルに対して閉じ側に強力に力がかけられる。逆に、除去作業により異物が除去されずにスロットルが固着された場合、検出された実開度が所定値より小さければ、異常時制御手段による制御下で、電動モータにより、高い電気負荷がかけられて、スロットルに対して開き側に強力に力がかけられる。このように除去作業が失敗した場合においても、加速しすぎ或いは減速不能という状況を回避し、安全な走行が可能となる。
【0042】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施例から更に明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0044】
(エンジン)
先ず図1を参照して、本実施形態に係るスロットル制御装置が設けられた内燃機関の一例たるエンジンの詳細な構成を、その基本動作と共に説明する。ここに、図1は、本実施形態に係るエンジンの図式的なシステム系統図である。
【0045】
図1において、エンジン200は、シリンダ201内において点火プラグ202により混合気を爆発させると共に、爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクションロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。以下に、エンジン200の要部構成を動作と共に説明する。
【0046】
シリンダ201内における燃料の燃焼に際し、外部から吸入された空気は吸気管206を通過し、インジェクタ207から噴射された燃料と混合されて前述の混合気となる。インジェクタ207には、燃料(ガソリン)が燃料タンク223からフィルタ224を介して供給されており、インジェクタ207は、この供給される燃料を、制御装置100の制御に従って吸気管206内に噴射することが可能に構成されている。尚、燃料タンク223には、燃料残量を検出するための燃料センサ225が設置されている。
【0047】
ここで、制御装置100は電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)からなり、周知の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)、制御プログラムを格納した読み出し専用メモリ(Read Only Memory:ROM)、各種データを格納する随時書き込み読み出しメモリ(Random Access Memory:RAM)等を中心とした論理演算回路として構成されている。また、スロットルポジションセンサ215等の各種センサからの入力信号を受ける入力ポート及び、電動モータ217や燃料供給手段等の各種アクチュエータに制御信号を送る出力ポートに対して、バスを介して接続されている。
【0048】
シリンダ201内部と吸気管206とは、吸気弁208の開閉によって連通状態が制御されている。シリンダ201内部で燃焼した混合気は排気ガスとなり吸気弁208の開閉に連動して開閉する排気弁209を通過して排気管210を介して排気される。
【0049】
吸気管206上には、クリーナ211が配設されており、外部から吸入される空気が浄化される。クリーナ211の下流側(シリンダ側)には、エアフローメータ212が配設されている。エアフローメータ212は、ホットワイヤー式と称される形態を有しており、吸入された空気の質量流量を直接測定することが可能に構成されている。吸気管206には更に、吸入空気の温度を検出するための吸気温センサ213が設置されている。
【0050】
吸気管206におけるエアフローメータ212の下流側には、シリンダ201内部への吸入空気量を調節するスロットル214が配設されている。このスロットル214には、スロットルポジションセンサ215が制御装置100と電気的に接続されており、その開度が検出可能に構成されている。更に、スロットル214の周囲には、運転者によるアクセルペダル226の踏み込み量を検出するアクセルポジションセンサ216、及びスロットル214を駆動する電動モータ217も配設されている。従って、この内燃機関のスロットル制御装置においては、アクセルペダル226の踏込量を検知するアクセルポジションセンサ216からの信号または内部演算により求めた目標スロットル開度に実際のスロットル開度が一致するように電動モータ217に電流を流し、電動モータ217が駆動されることでスロットル214が開閉され、吸気管206を通過する吸気量が制御される。
【0051】
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置を検出するクランクポジションセンサ218が設置されている。クランクポジションセンサ218は、クランクシャフト205の回転状態に基づいて、シリンダ201内部におけるピストン203の位置、及びエンジン200の回転数など取得することが可能に構成されている。また、シリンダ201を収容するシリンダブロックには、エンジン200のノック強度を測定可能なノックセンサ219が配設されており、係るシリンダブロック内のウォータージャケット内には、エンジン200の冷却水温度を検出するための水温センサ220が配設されている。
【0052】
排気管210に沿って排気口側へと下っていくと、前段の三元触媒装置222及び後段の三元触媒装置233が設置されている。両三元触媒装置とも、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能な触媒である。三元触媒装置222の上流側(シリンダ側)には、空燃比センサ221が配設されている。空燃比センサ221は、排気管210を介して排出される排気ガスから、エンジン200の空燃比を検出することが可能に構成されている。
【0053】
このように本実施形態に係るエンジンは、電子スロットルであるスロットル214と、電子燃料噴射システム(EFI)を構築するインジェクタ207とを備える。制御装置100は、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、燃料噴射時間等の検出が可能であり、更に、電動モータ217によるスロットル開度制御、車両の減速時にフーエルカット(F/C)制御等が可能である。
【0054】
(スロットル制御装置の構成)
次に図2に従って、本実施形態に係るスロットル制御装置の構成を以下説明する。
【0055】
図2において、スロットル制御装置は、図1に示したスロットルポジションセンサ215と、図1に示した制御装置100内に論理的に構築される、開度予想部1001、異常判定部1002、誤差モニタリング部1003、及び異常時制御部1004とを備える。
【0056】
ここで、スロットルポジションセンサ215は、電動モータ217によって、シリンダ201内部への吸入空気量を調節するよう開閉駆動されるスロットル214の実開度を検出する。これにより、通常運転時を含めて常時又は何らかの異常が発見された異常時に選択的に、スロットル214の実開度が検出される。また、スロットル214は制御装置100と電気的に接続されており、実開度の検出結果は、制御装置100へと伝達される。
【0057】
また、本発明に係る「開度予想手段」の一例としての開度予想部1001は、例えばECUの一部或いはコントローラ等からなり、通常運転時を含めて常時又は何らかの異常が発見された異常時に選択的に、スロットル214の実開度及び電動モータ217にかかる電気負荷に基づいて、例えば所定関数を用いての算出或いはテーブル変換などを行うことにより、スロットル214の予想開度を予想する。
【0058】
また、本発明に係る「開度異常判定手段」の一例としての異常判定部1002は、例えばECUの一部或いはコントローラ等からなり、開度予想部1001により予想された予想開度と、スロットルポジションセンサ215により検出された実開度との差に基づいて、スロットル214が異物を噛み込んでいるか否かを判定する。
【0059】
また、本発明に係る「誤差モニタリング手段」の一例としての誤差モニタリング部1003は、通常運転或いは基本的に常時、内燃機関に対するアクセル216の操作量に対応するスロットル214の目標開度と、スロットルポジションセンサ215により検出された実開度との誤差をモニタリングする。
【0060】
そして、本発明に係る「異常時制御手段」の一例としての異常時制御部1004は、異常判定部1002により異物を噛み込んでいると判定された場合に、スロットル214における異常回避のために予め設定された異常回避処理を行うように電動モータ217、インジェクタ207等を制御する。
【0061】
(スロットル制御装置によるスロットル噛み込み判定処理)
次に以上のように構成された本実施形態に係る、スロットル制御装置による、主にスロットル噛み込み判定に係る動作処理について、図2に加えて、図3及び図4を参照して説明する。ここに図3は、本実施形態の動作を示す一のフローチャートであり、図4は、スロットルの予想開度を算出する際に用いられる特性曲線の一例を示す特性図である。
【0062】
図3において、まず、スロットルポジションセンサ215によって実際のスロットル開度である「実開度」を測定し、誤差モニタリング部1003によって、この測定された「実開度」と所定の目標スロットル開度である「目標開度」との大小関係を判定する(ステップS101)。ここで、|目標開度−実開度|が所定閾値α以下の場合(ステップS101:No)、スロットル噛み込み異常を含む、スロットル214に関連する異常は発生していないとして、本処理を終了する。一方、所定閾値αよりも大きい場合(ステップS101:Yes)、目標以上にスロットルが開いており又は目標からかけ離れて閉まっており、異常の可能性があるとして処理を進める。
【0063】
ここで、制御装置100によって、電動モータ217に与えられる電気負荷(モータ仕事量)をモニタする(ステップS102)。ここでのモニタリングは、ステップS101の判定処理と無関係に常時行われていてもよい。
【0064】
ステップS102でモニタした電気負荷に対するスロットル214の開度を制御装置100内のRAMに蓄積し、図4に示されるような、電気負荷の時間積算値(即ち電動モータ217の仕事量)とスロットル実開度の変化量との相関関係を表した学習曲線を得る(ステップS103)。ここで、図4に示されるように、スロットル214の開き過程における開度変化の学習曲線401と、閉じ過程における開度変化の学習曲線402とは、スロットル214を閉じ側に付勢する閉じバネ等の影響により異なる。そのため、開き過程における学習曲線及び閉じ過程における学習曲線を夫々得る必要がある。
【0065】
制御装置100が、ステップS103で得た図4の学習曲線に、ステップS102でモニタしたモータ仕事量を照らし合わせることで、スロットル開度の変化量を先読みし、所定時間経過後のスロットル214の予測開度を算出する(ステップS104)。
【0066】
そして、異常判定部1002によって、この予想開度と実開度との差に基づいて、スロットル噛み込み異常が発生しているか否かの判定を行う(ステップS105)。ここで、予想開度と実開度との間に、所定の閾値βよりも小さい差しかない場合(ステップS105:No)、異常でなく通常動作であるとして、本処理を終了する。一方、閾値βよりも大きい差がある場合(ステップS105:Yes)には、スロットル214が近い将来、学習曲線にのらない予想外の動作をする恐れがあると考えられる。即ち、スロットル214が異物を噛み込んでいると推定される。
【0067】
そのため、スロットル噛み込み異常が発生しているとの判定をする(ステップS106)。このように、モータ仕事量からスロットル214の開度変化量を先読みし、予測値と実開度とからスロットル噛み込みを早期により確実に判定することで、その対策(エンスト回避など)を実行する時間的な余裕が生まれる。
【0068】
続いて、異常時制御部1004によって、電動モータ217に必要以上に電気負荷をかけないように、この時点で保持されている電気負荷を維持する(ステップS107)。過剰負荷をかけるとスロットル214が固着してしまい、異物の除去作業も不可能になってしまうためである。
【0069】
続いて、異常判定部1002によって、所定の目標開度と実開度との大小関係に基づいて、スロットル噛み込み異常がスロットル開き過程又は閉じ過程のどちらの過程で発生したのかを判定する開閉過程判定処理を行う(ステップS108)。この判定により、以降それぞれのケースに合った異物除去作業を行うことが可能となる。ここで、(所定の目標開度−実開度)が正の場合(ステップS108:Yes)、目標スロットル開度に、実際のスロットル開度がまだ達していないということなので、開き過程で異物を噛み込んだスロットル異常であると判断する(ステップS109)。他方、(所定の目標開度−実開度)が負の場合(ステップS108:No)、目標スロットル開度より実際のスロットル開度が大きいということなので、閉じ過程で異物を噛み込んだスロットル異常であると判断する(ステップS110)。
【0070】
以上の結果、本実施形態によれば、ステップS105におけるスロットル214が異物を噛み込んでいるか否かの判定は、先読みされた予想開度に基づくので、目標開度と実開度とを比較する場合等と比べて、より早期に或いはよりリアルタイムに近い時点で、スロットル214が噛み込んでいるか否かの判定を行うことが可能となる。そして、このように判定を行えば、その判定結果に応じて、次の実施形態に例示するような、適切な異常回避処理あるいは異常回復処理を、より早期に行うことができる。
【0071】
加えて、本実施形態によれば、予めステップS101でモニタリングされた誤差の大小を判定することで、スロットルにおける異物の噛み込みを含めた何らかの異常が発生した蓋然性の高い場合に選択的に、上述の如きステップS102〜S110の処理が行われるので、全体として無駄なくスロットル制御を行うことができる。
【0072】
(スロットル制御装置による異物除去作業)
次に、以上のように構成された本実施形態に係る、スロットル制御装置による、異物を除去するための動作処理について、図2に加えて、図5から図8を参照して説明する。ここに図5は、本実施形態の動作を示す他のフローチャートであり、図6は、スロットル開き過程における時間に対する開度変化の様子を表す特性図であり、図7は、異物除去作業のために電動モータに与えられる周期的な電気負荷を表す特性図であり、図8は、スロットル閉じ過程における時間に対する開度変化の様子を表す特性図である。
【0073】
異物除去作業は、上述した図3及び図4を参照して説明したスロットル異常と判定された場合に(ステップS105:Yes、ステップS106)、即ち、スロットル214に異物が噛み込まれていると判定された場合に特に行われる、異物を除去するための処理である。
【0074】
先ず図5に示すように、異物除去作業を行うか否かを、先のステップS106のスロットル噛み込み異常判定結果に基づいて判断する(ステップS501)。即ち、ステップS106においてスロットル噛み込み異常がないとされた場合(ステップS501:No)、異常でなく通常動作であるとして、本処理を終了する。一方、スロットル噛み込み異常があると判定された場合(ステップS501:Yes)には、ステップS108の開閉過程判定結果に応じて、開き過程用の異物除去作業と閉じ過程用の異物除去作業とに分岐する(ステップS502)。
【0075】
このように異常判定部1002により、スロットル214が開く際の噛み込みであるか又は閉じる際の噛み込みであるかが判定されるので、異物を開く際に噛み込んだのか又は閉じる際に噛み込んだのかに応じて、より適切な異常回避処理あるいは異常回復処理を次のように行うことができる。
【0076】
以下に述べるステップS503からステップS510までの処理は、本発明に係る「第1異常回避処理」の一例であり、開き過程で異物を噛み込んだスロットル異常であると判断される場合(ステップS502:Yes)の処理である。
【0077】
まず、異常判定部1002によって、加速中か否かを判断する(ステップS503)。加速中でないと判断される場合(ステップS503:No)には、ステップS521以降の減速過程用の処理を行う。
【0078】
一方、加速中であると判断される場合(ステップS503:Yes)には、異常時制御部1004によって、図6に示す短い異物除去作業が行われる(ステップS504)。即ち、図7に示すような周期的な電気負荷を電動モータ217に与え、スロットル214を開閉させることで、吸気弁208とスロットル214の間に詰まった異物を掻き出すことを試みる。短い除去作業とは、好適には1サイクルの周期的な電気負荷を与えることである。あえて短時間に限ったのは、開き過程でスロットル214が異物を噛み込んでしまうと暴走の恐れがあるためである。
【0079】
続いて、異物の除去を確認し(ステップS505)、異物が除去されている場合には、制御装置100に蓄えられた故障履歴をクリアして当該処理を終了する(ステップS505:Yes)。
【0080】
一方、異物が除去されていない場合(ステップS505:No)には、まず暴走防止のためにスロットル214が閉じるように電動モータ217へ電気負荷をかける(ステップS506)。この時、スロットル214を閉じることができない場合(ステップS506:No)には、暴走のおそれが高まるので、スロットルの異物が除去できないフェイル状態であるとの判定(以下単に「フェイル判定」ともいう)がなされ、ステップS509のフェイル判定後の退避走行処理に備える(ステップS507)。
【0081】
その後、スロットル214の開度上限ガードを行い(ステップS508)、残留異物を再び噛み込むのを防止する。ここに、「開度上限ガード」或いは「開度上限ガード処理」とは、異物が再びスロットル214に噛み込まれることのないように、直前に異物が噛み込まれた開度(角度)よりも小さい開度(角度)である上限開度に、スロットル214を固定する処理をいう。
【0082】
続いて、S507のフェイル判定結果に基づいて、予め設定された退避走行処理を行う(ステップS509)。なお、該フェイル判定後退避処理の詳細は後述する。
【0083】
更に、上記異常結果を運転者に通知するために図示しないMILを点灯し(ステップS510)、本制御を終了する。
【0084】
他方、以下に述べるステップS520からステップS531までの処理は、本発明に係る「第2異常回避処理」の一例であり、閉じ過程で異物を噛み込んだスロットル異常であると判断される場合(ステップS502:No)の処理である。
【0085】
まず、異常判定部1002によって、減速中か否かを判断する(ステップS520)。減速中でないと判断する場合(ステップS520:No)には、ステップS503以降の加速過程用の処理を行う。
【0086】
他方、加速中であると判断された場合(ステップS520:Yes)には、更にフューエルカットが行われているか否かを判断し(ステップS521)、フューエルカットが行われている場合(ステップS521:Yes)には、そのまま次のステップS523へ処理をすすめる。一方、フューエルカットが行われていない場合(ステップS521:No)には、インジェクタ207に燃料供給停止命令を出すことで、異物除去作業に先立つ強制フューエルカットを行う(ステップS522)。このように、閉じ過程で異物を噛み込んだスロットル異常に対しては、基本的に、フューエルカットを行いながら、異常回避処理(即ち、第2異常回避処理)が行われる。
【0087】
強制フューエルカット後は、異常時制御部1004によって、スロットル214が噛み込んだ異物の除去作業が行われる。即ちまず、除去作業に先立ち、カウンタがインクリメントされる(ステップS523)。続いて、異常時制御部1004は、除去作業として、導電モータ217に対し、電気負荷として図7に示すような所定周期の正弦波又は矩形波の電気パルスをかけるように、電動モータ217の電源を制御する(ステップS524)。その後、カウンタが所定の値(n)を越えるか否かが判断される(ステップS525)。カウンタが所定の値(n)を越えていない場合には(ステップS525:No)、ステップS523に戻り、除去作業(ステップS524)が再度行われる。この周期的な電気負荷の振幅は、フューエルカット中であれば大きくすることが可能であり、強い除去作業を行うことが可能となる。ただし、スロットル214が更に固着してしまわないように、最初に与える電気負荷は、開閉過程とは反対方向にかける。即ち、開き過程において異物除去作業を行う際は、まずスロットル214が閉じるように電気負荷を与え、また、閉じ過程においては開くように電気負荷を与えるように制御する。また、振動数はスロットル214のレスポンスと電気負荷の振幅に基づいて適合定数として決定することが望ましい。
【0088】
続いて、異物除去作業の結果、異物が除去されているか否かが確認される(ステップS527)。異物が除去されている場合(ステップS527:Yes)には、故障履歴をクリアして(ステップS511)本処理を終了する。
【0089】
他方、異物除去作業を行ったにも関わらず異物が除去されていない場合(ステップS527:No)には、更に、ループ処理を抜ける指示たる復帰要求があるか否かが判断される(ステップS528)。復帰要求は例えば、エンスト回避のために、フューエルカットの期間が長くなりすぎないようにフューエルカットの開始時から所定期間の経過後に、制御装置100により発せられる。ここで、復帰要求がない場合(ステップS528:No)、ステップS523に戻り、再び所定の回数除去作業を行う。一方、復帰要求がある場合(ステップS528:Yes)には、強制復帰して異物除去のルーチンを抜ける(ステップS529)。
【0090】
続いてスロットル214が開くか否かを判定する(ステップS530)。ここでストットル214が異物に固着してしまって開かない場合(ステップS530:No)には、フェイル判定がなされる(ステップS531)。一方、開く場合(ステップS530:Yes)には、フェイル判定が下ることなく処理を終了する。
【0091】
このように本実施形態によれば、スロットル214が開く際に異物を噛み込んでいると判定された場合には、異常時制御部1004による制御下で、少なくとも電動モータ217により第1異常回避処理が行われ、異物を除去する可能性を高められる。
【0092】
他方、スロットル214が閉じる際に異物を噛み込んでいると判定された場合には、異常時制御部1004による制御下で、少なくとも電動モータ217により第2異常回避処理が行われ、不快なトルク変動無しに異物を除去する可能性を高められる。
【0093】
加えて、本実施形態によれば、運転手等に対して不快感を与えることなく且つエンストを回避しながら、フューエルカットと除去作業とにより、異物を除去する可能性を高められる。
【0094】
更に、本実施形態によれば、スロットル214を、半閉じ或いは半開きの状態で、電気パルスの変動に応じて通常の開動作及び閉動作に費やす時間と比べて短い時間内で周期的に、言わばバタバタ或いはガチャガチャと揺動させることが可能となり、これにより、異物を比較的効率良く或いは迅速に除去できる。
【0095】
(退避走行処理)
以下、図2に加えて、図9のフローチャートに基づいて、ステップS509のフェイル判定後の退避走行処理について詳しく説明する。ここに図9は、本実施形態の動作を示す他のフローチャートである。
【0096】
図9に示すように、ステップS507或いはステップS531においてフェイル状態であると判定された場合(ステップS701:Yes)には、除去作業を行ったにも関わらずスロットルから異物が取れていないということであるので、以下の退避走行モードに切り替わる。
【0097】
まず、スロットルポジションセンサ215の出力より、スロットル214が異物に固着している状態での開度、即ち故障開度を取得し(ステップS702)、この故障開度をアイドル時の開度ISCと比較することで、当該故障が開き過程に生じたのか、或いは閉じ過程に生じたのかを判断する(ステップS703)。ここで、故障開度がアイドル開度ISCと比較して大きい場合(ステップS703:Yes)には、必要以上にスロットル214が開いているとして、ステップS704からステップS710において後述するようにスロットル214を強制的に閉じる。一方、故障スロットル開度がアイドル開度ISCより小さい場合(ステップS703:No)には、スロットルが十分に開いていないとして、ステップS720からステップS722において後述するようにスロットル214を強制的に開く。
【0098】
スロットル214を強制的に閉じる処理として、まず、インジェクタ207に燃料供給停止命令を出すことで強制的にフューエルカットを行う(ステップS704)。これは、必要以上にスロットル214が開いて暴走する恐れがあるためである。
【0099】
その後、スロットル214を強制的に閉じるために、電動モータ217に対して、相対的に高い電気負荷を与える(ステップS705)。この電気負荷は、以下に述べるループ処理を抜ける指示たる自然復帰要求があるまで与え続けることとなる。即ち、自然復帰要求がなされるか否かが判断され(ステップS706)、自然復帰要求がある場合(ステップS706:Yes)、ループ処理を抜け、更にスロットル214が正常に作動しているか否か(ステップS707)について判断される等の暴走阻止用処理を行う。一方、自然復帰要求がない場合(ステップS706:No)、再び強制的にフューエルカットがなされ(ステップS704)、スロットルを強制的に閉じるための処理(ステップS705)が行われる。
続いて、スロットル214が正常に作動していれば(ステップS707:Yes)、通常制御に戻る(ステップS708)。
【0100】
他方、正常に作動しない場合(ステップS707:No)には、図示しない可変バルブタイミング機構(Variable Valve Timing-intelligent:VVT)、電子燃料噴射システム(Electric Fuel Injection:EFI)等により点火遅角制御を行い(ステップS709)、更に自動ブレーキをかけて(ステップS710)、本処理を終了する。その後は、先に述べたステップS510のMIL点灯等を行うこととなる。
【0101】
他方、ステップS703の判定の結果、故障スロットル開度がアイドル開度ISCより小さい場合(ステップS703:No)には、スロットル214を強制的に開く処理として、電動モータ217に対して、相対的に高いプラスの電気負荷を与える(ステップS720)。
【0102】
この強制開処理は、スロットル214の正常作動が確認されるまで繰り返し行われる(ステップS721)。即ち、ステップS721において正常作動が確認されない場合(ステップS721:No)には、ステップS721において正常作動が確認された場合(ステップS721:Yes)には、通常制御に戻り(ステップS722)、本処理を終了する。
【0103】
以上のように、本実施形態によれば、結局、除去作業により異物が除去されずにスロットル214が固着された場合においても、加速しすぎ或いは減速不能という状況を回避し、安全な走行が可能となる。
【0104】
なお、上述の実施形態では、ガソリンにより運転される直噴型のガソリンエンジンを用いていたが、その他に、伝統的なポート噴射型のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、タービンエンジン、ジェットエンジン等の各種の内燃あるいは外燃機関を用いることができる。
【0105】
加えて、本発明のスロットル制御装置は、既存の若しくは現在開発中又は今後開発される各種パラレルハイブリッド方式や各種シリアルハイブリッド方式の車両にも適用してもよい。
【0106】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨、あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うスロットル制御装置もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本実施形態に係るエンジンの図式的なシステム系統図である。
【図2】本実施形態に係るスロットル制御装置の構成図である。
【図3】本実施形態の動作を示す一のフローチャートである。
【図4】本発明に係るスロットルの予想開度を算出する際に用いられる特性曲線の一例を示す特性図である。
【図5】本実施形態の動作を示す他のフローチャートである。
【図6】スロットル開き過程における時間に対する開度変化の様子を表す特性図である。
【図7】スロットル開き過程における時間に対する開度変化の様子を表す特性図である。
【図8】スロットル閉じ過程における時間に対する開度変化の様子を表す特性図である。
【図9】本実施形態に係る退避走行処理の流れを表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0108】
100…制御装置、200…エンジン、206…吸気管、207…インジェクタ、208…吸気弁、212…エアフローメータ、214…スロットル、215…スロットルポジションセンサ、216…アクセルポジションセンサ、217…電動モータ、226…アクセルペダル、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気管に設けられると共に電動モータによって開閉されるスロットルを制御するスロットル制御装置であって、
前記スロットルの実開度を検出するスロットルポジションセンサと、
前記電動モータにかかる電気負荷に基づいて、前記スロットルの予想開度を予想する開度予想手段と、
前記予想された予想開度と前記検出された実開度との差に基づいて、前記スロットルが異物を噛み込んでいるか否かを判定する異常判定手段と
を備えることを特徴とするスロットル制御装置。
【請求項2】
前記開度予想手段は、前記電気負荷の時間積算値に基づいて、前記予想開度を算出することを特徴とする請求項1に記載のスロットル制御装置。
【請求項3】
前記異常判定手段は、前記差が所定の閾値を越えた場合に、前記スロットルが異物を噛み込んでいるものと判定することを特徴とする請求項1又は2に記載のスロットル制御装置。
【請求項4】
前記内燃機関に対するアクセル操作量に対応する前記スロットルの目標開度と前記検出された実開度との誤差をモニタリングする誤差モニタリング手段を更に備え、
前記モニタリングされた誤差が所定閾値を超えた場合に選択的に、前記開度予想手段は予想し且つ前記異常判定手段は判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスロットル制御装置。
【請求項5】
前記異物を噛み込んでいると判定された場合に、前記スロットルにおける異常回避のために予め設定された異常回避処理を行うように少なくとも前記電動モータを制御する異常時制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のスロットル制御装置。
【請求項6】
前記異常時制御手段は、前記異常回避処理の少なくとも一環として、前記電動モータに所定値以上に電気負荷をかけないように前記電動モータの電源を制御することを特徴とする請求項5に記載のスロットル制御装置。
【請求項7】
前記異常判定手段は、前記スロットルが異物を噛み込んでいると判定した場合に、更に、前記スロットルが開く際の噛み込みであるか又は閉じる際の噛み込みであるかを判定することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のスロットル制御装置。
【請求項8】
前記開く際の噛み込みであると判定された場合に、前記スロットルが開く際の異常回避のために予め設定された第1異常回避処理を行うように少なくとも前記電動モータを制御すると共に、前記閉じる際の噛み込みであると判定された場合に、前記スロットルが閉じる際の異常回避のために予め設定された第2異常回避処理を行うように少なくとも前記電動モータを制御する異常時制御手段を更に備えることを特徴とする請求項7に記載のスロットル制御装置。
【請求項9】
前記異常時制御手段は、前記第1異常回避処理の少なくとも一環として、予め設定された前記異物を除去するための除去作業を行うように少なくとも前記電動モータを制御し、前記除去作業により前記異物が除去されない場合に、前記電動モータに対して前記スロットルを閉じるように閉じ指令を出し、該閉じ指令に応じて前記スロットルが閉じた場合には、前記異物が再び噛み込まれない開度に、前記スロットルを固定するように前記電動モータを制御することを特徴とする請求項8に記載のスロットル制御装置。
【請求項10】
前記異常時制御手段は、前記第2異常回避処理の少なくとも一環として、前記内燃機関に対するフューエルカットを強制的に実行しつつ、予め設定された前記異物を除去するための除去作業を行うように、前記内燃機関及び少なくとも前記電動モータを制御することを特徴とする請求項8又は9に記載のスロットル制御装置。
【請求項11】
前記異常時制御手段は、前記フューエルカットを停止するまでの間、前記除去作業を繰り返し行い、
前記異常判定手段は、前記フューエルカットを停止するまでの間、前記除去作業が行われる都度に、前記異物を噛み込んでいるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項10に記載のスロットル制御装置。
【請求項12】
前記異常時制御手段は、前記除去作業として、前記導電モータに対し、前記電気負荷として所定周期の正弦波又は矩形波の電気パルスをかけるように、前記電動モータの電源を制御することを特徴とする請求項9から11のいずれか一項に記載のスロットル制御装置。
【請求項13】
前記異常時制御手段は、前記除去作業により前記異物が除去されずに前記スロットルが固着された場合、前記検出された実開度が所定値より大きければ、前記内燃機関を暴走させないために予め設定された暴走阻止用処理を行いつつ前記スロットルを閉じる側に前記電動モータに相対的に高い電気負荷をかけるように前記電動モータの電源を制御し、前記検出された実開度が前記所定値より小さければ、前記スロットルを開く側に前記電動モータに相対的に高い電気負荷をかけるように前記電動モータの電源を制御することを特徴とする請求項9から12のいずれか一項に記載のスロットル制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−329044(P2006−329044A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152930(P2005−152930)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】