説明

セサモール誘導体またはその塩、その製造方法、及びこれを含む皮膚外用剤組成物

本発明は、セサモール誘導体またはその塩、その製造方法、及びこれを含む皮膚外用剤組成物に関する。より詳細には、リン酸ジエステル結合によって連結されたセサモールと3-アミノプロパンリン酸が皮膚に存在する酵素によって分解されてセサモールと3-アミノプロパンリン酸の生理活性を同時に示すことができるセサモール誘導体またはその塩、その製造方法、及びこれを含む皮膚外用剤組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記化学式(I)で表示されるセサモール誘導体またはその塩、その製造方法、及びこれを含む皮膚外用剤組成物に関する。より詳細には、リン酸ジエステル結合によって連結された3-アミノプロパンリン酸とセサモールが皮膚に存在する酵素によって分解され、セサモールと3-アミノプロパンリン酸の生理活性を同時に示すことができるセサモール誘導体またはその塩、その製造方法、及びこれを含む皮膚外用剤組成物に関する:
【0002】
【化1】

【背景技術】
【0003】
化粧料の機能は、皮膚及び毛髪を清潔にし、美化し、元気にすることである。特に、これらのうち、抗酸化活性によって皮膚に小じわが生成されることを防止しようとする研究が多くなされており、多くの物質が開発されて使用されている。このような物質としては、アスコルビン酸、トコフェロールなどのビタミン類、各種動植物から抽出したフラボノイドなどが知られている。
【0004】
天然に存在する他の強力な抗酸化物質であるセサモール(Sesamol)は、ごまあぶらの主成分である。ごまあぶらは、他の油に比べて酸敗があまり起きないものと知られており、これは、セサモールの抗酸化効能によるものである。しかし、セサモールは、多様な抗酸化効能にもかかわらず、他の天然抗酸化剤のように剤型への適用時に不安定になるという問題がある。
【0005】
一方、セサモールを含有する胡麻から抗酸化剤を抽出する方法が知られており(米国特許公開第2004-0121058号)、また、不快な匂いや味を発生せずに抗酸化剤または美白剤として活用されるセサモール二量体(sesamol dimer)を合成することが知られているが(日本国特開2001-139,944)、これまでに、セサモールに3-アミノプロパンリン酸を導入した事例は報告されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これより、本発明者らは、不安定性を示すことなく、抗酸化効果を有するセサモール誘導体を開発するために研究し、その結果、3-アミノプロパンリン酸とセサモールをリン酸ジエステルの形態で結合させたセサモール誘導体を合成するに至り、また、このようなセサモール誘導体がセサモールの効能を維持するだけでなく、不安定性を示さないことを確認した。更に、上記セサモール誘導体を生体に投与した場合、3-アミノプロパンリン酸の老化防止効果及びセサモールの抗酸化効果が同時に現われることを知見し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、皮膚親和性に優れたリン酸基を含み、抗酸化効果に優れたセサモール誘導体またはその塩を提供する。
【0008】
本発明では、上記したセサモール誘導体またはその塩の製造方法を提供する。
また、本発明では、下記化学式(I)で表示されるセサモール誘導体またはその塩を含む皮膚外用剤組成物を提供する:
【0009】
【化2】

【発明の効果】
【0010】
本発明による化学式(I)のセサモール誘導体は、皮膚へ塗布した際に、徐々にセサモールと3-アミノプロパンリン酸を放出し、生体膜の老化を防止する物質であり、皮膚に刺激がないだけでなく、化粧料組成物において制限無しに使用することができる。また、そのもの自体が強力な抗酸化力を有する物質であって、これを利用した他の分野への応用も可能である。
【0011】
したがって、本発明による化学式(I)のセサモール誘導体は、抗酸化用または抗老化用の皮膚外用剤として活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、下記化学式(I)で表示されるセサモール誘導体またはその塩に関する:
【0013】
【化3】

【0014】
上記セサモール誘導体は、セサモールを単独で使用した場合と類似の抗酸化活性を示す。また、上記誘導体は、人体内で酵素によって容易に分解され、セサモールと3-アミノプロパンリン酸の生理的機能を同時に発現させることができる。また、上記セサモール誘導体を中和し、中和塩の形態で使用することができるが、具体的な例としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属類塩、またはカルシウムなどのアルカリ土金属類塩の形態が挙げられる。
【0015】
また、本発明は、セサモールとオキシ塩化リンとを有機塩基の存在下に有機溶媒中で反応させた後、この反応生成物に3-アミノプロパノールを塩基の存在下に有機溶媒中で反応させ、その後、加水分解した後、極性有機溶媒で結晶化することを含む上記化学式(I)で表示されるセサモール誘導体またはその塩の製造方法に関する。
【0016】
また、本発明は、化学式(I)で表示されるセサモール誘導体またはその塩を含む皮膚外用剤組成物に関する。
【0017】
上記組成物においてセサモール誘導体またはその塩は、組成物の全体重量に対して0.0001〜20重量%で含有されることができる。
【0018】
本発明のセサモール誘導体は、具体的には、下記段階を含む製造方法によって得ることができる:
(A)セサモールとオキシ塩化リンを1:1〜1.3の当量比で有機塩基の存在下に有機溶媒中で12〜18℃の温度で1〜2時間反応させてジクロロ(3,4-メチレンジオキシフェノキシ)-ホスフィノ-1-オンを製造する段階;
(B)上記段階(A)で生成されたジクロロ(3,4-メチレンジオキシフェノキシ)-ホスフィノ-1-オンと3-アミノプロパノールを塩基の存在下に有機溶媒中で反応させて(3,4-メチレンジオキシフェノキシ)-1,3,2-オキサザホスホリンp-オキシドを製造する段階;
【0019】
(C)上記段階(B)の反応液を濾過して得られた濾液を減圧濃縮し、次いで得られた残渣に酸溶液を添加して5〜100℃の温度で約8〜12時間反応させてP−N結合を加水分解させることによって、セサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルを製造する段階;及び
(D)上記段階(C)で生成したセサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルに極性有機溶媒を徐々に滴加し、これを結晶化する段階。
【0020】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明によるセサモール誘導体の製造方法は、下記反応式Iで図式化されることができる:
【0021】
【化4】

【0022】
以下、本発明のセサモール誘導体の製造方法を各段階別に説明する。
(A)セサモールとオキシ塩化リンを有機塩基の存在下に有機溶媒中で12〜18℃の温度で1〜2時間反応させて上記反応式Iにおいて化学式(II)で表示されるジクロロ(3,4-メチレンジオキシフェノキシ)-ホスフィノ-1-オンを製造する段階。
【0023】
上記段階でセサモールとオキシ塩化リンは、1:1〜1.3の当量比で反応させることが好ましい。当量比が1:1未満なら、目的とする生成物を得ることができず、1:1.3以上なら、目的とする生成物以外に過量の副産物が生成される。セサモールとオキシ塩化リンを1:1〜1.3の当量比で反応させてジクロロ(3,4-メチレンジオキシフェノキシ)-ホスフィノ-1-オンを製造する場合、セサモールとオキシ塩化リンが1:1で結合した中間体が95%以上生成し、セサモールとオキシ塩化リンが2:1で結合した副産物が1〜2%以下生成する。しかし、上記副産物は、クロマトグラフィーを用いて分離するか、トルエンに対する溶解度差を利用して容易に除去することができる。また、12〜18℃の温度で1〜2時間反応させることによって、セサモールとオキシ塩化リンが2:1以上に反応した副産物の生成を防止することができ、特にオキシ塩化リンのうち1つの塩素原子を保護するためにエステル基やアミド基を導入する工程が不要なので、反応工程を低減することができるという長所がある。
【0024】
上記段階(A)で使用する有機塩基としては、ピリジン、トリエチルアミンなどを挙げることができ、好ましくは、トリエチルアミンを使用する。
【0025】
また、上記段階(A)で使用する有機溶媒としては、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル、クロロホルム、エチルエーテル、トリクロロエチレン、ベンゼン、トルエンなどを挙げることができ、好ましくは、トルエンを使用する。
【0026】
一方、反応温度は、12〜18℃の範囲が好ましく、これは、18℃以上では、2当量以上のセサモールがオキシ塩化リンに置換されて副産物の生成が増加し、12℃未満では、反応物の溶解度が減少し、反応速度が遅くなって反応の進行が難しく、未反応物の含量が増加して反応収率が低くなるからである。
【0027】
(B)上記段階(A)で生成されたジクロロ(3,4-メチレンジオキシフェノキシ)-ホスフィノ-1-オンと3-アミノプロパノールを塩基の存在下に有機溶媒中で反応させて上記反応式Iにおいて化学式(III)で表示される(3,4-メチレンジオキシフェノキシ)-1,3,2-オキサザホスホリンp-オキシドを製造する段階。
【0028】
上記段階でジクロロ(3,4-メチレンジオキシフェノキシ)-ホスフィノ-1-オンと3-アミノプロパノールを1:1〜1.3の当量比で反応させることが好ましい。当量比が1:1未満なら、目的する生成物を得ることができず、1:1.3超過なら、目的とする生成物以外に過量の副産物が生成される。
【0029】
上記段階(B)で使用する塩基としては、上記段階(A)で使用したピリジン、トリエチルアミンなどの有機塩基、またはナトリウム、ソジウムヒドロキシド、ポタシウムヒドロキシドなどの塩基を挙げることができる。好ましくは、トリエチルアミンを使用する。
【0030】
また、上記段階(B)で使用する有機溶媒としては、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル、クロロホルム、エチルエーテルなどのような非活性溶媒及びメタノール、エタノール、プロパノールなどの極性溶媒を挙げることができる。好ましくは、テトラヒドロフランを使用する。
【0031】
(C)上記段階(C)の反応液を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮した後、得られた残渣に酸溶液を添加して約5〜100℃の温度で約8〜12時間反応させてP−N結合を加水分解させることによって、上記反応式Iにおいて化学式(II)で表示されるセサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルを製造する段階。
【0032】
反応液を濾過して得られた濾液を減圧濃縮して得た残渣は、一般的な加水分解条件である強陽イオン交換樹脂(Amberlyst 15)、塩酸または硫酸などの酸触媒を使用することで加水分解させることができる。すなわち、上記段階(B)の化合物に酸溶液を添加した後、5〜100℃温度に昇温して約8〜12時間反応させることによって、P−N結合を加水分解することができる。上記で反応温度は、約5〜100℃、好ましくは40〜60℃である。反応温度が5℃より低い場合は、反応が進行されず、100℃より高い場合は、副生成物が生成されて収率が低くなる。また、上記で酸溶液のpHは、1〜5、好ましくは2〜4である。pHが1未満の場合には、P−N結合以外にP−O結合が加水分解されて副生成物が生成され、pHが5超過の場合は、反応が進行しない。
【0033】
(D)上記段階(C)で生成されたセサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルに極性有機溶媒を徐々に滴加し、これを結晶化する段階。
【0034】
上記(D)段階で使用される析出溶媒である極性有機溶媒は、特別に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリルまたはジオキサンを使用することができる。
【0035】
上記製造方法によるセサモール誘導体を中和して中和塩の形態で使用することができるが、具体的な例では、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属類塩、またはカルシウムなどのアルカリ土金属類塩の形態を挙げることができる。
【実施例】
【0036】
以下、製造例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明がこれらの例に限定されるものではない。
【0037】
[製造例1] ジクロロ(3,4-メチレンジオキシフェノキシ)-ホスフィノ-1-オンの製造
オキシ塩化リン4.5g(0.03mol)をヘキサン10mlに溶解した後、トリエチルアミン3g(0.03mol)とトルエン20mlを加え、氷水に入れて溶液を0〜5℃に冷却させた。一方、他の容器でセサモール3.12g(0.02mol)をトルエン80ml(0.73mol)に溶解した後、上記で製造したオキシ塩化リン希釈液に2時間以上かけて滴下して添加した。添加が終わった後、生成したトリエチルアムモニウムクロライドを除去した。濾液を100ml精製水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過し減圧濃縮して反応生成物である黄色オイル形態のジクロロ(3,4-メチレンジオキシフェノキシ)-ホスフィノ-1-オン4.3gを得た。
【0038】
1H−NMR(CDCl3):δ(ppm)=5.72(s、2H)、6.23(dd、1H)、6.43(d、1H)、6.64(d、1H)。
【0039】
[実施例1] セサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルの製造
3-アミノプロパノール1.8g(1.2当量)とトリエチルアミン4.9gをテトラヒドロフラン30ml中に加えた後、室温で30分撹拌した。同じ温度で上記製造例1の生成物であるジクロロ(3,4-メチレンジオキシフェノキシ)-ホスフィノ-1-オン2.39gを徐々に滴下して添加した。添加が終わった後、一晩常温で撹拌した後、生成したトリエチルアムモニウムクロライドを除去した。濾液を15%塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過した。濾過後に残った濾液を減圧濃縮し、ヘキサンで再結晶して、固体状の2-(3,4-メチレンジオキシフェノキシ)-1,3,2-オキサザホスホリンp-オキシドを得た。
【0040】
上記生成物をpH3の水溶液30mlに溶解し、40℃恒温槽で8時間撹拌した。撹拌が終わった反応液にエタノールやアセトン、アセトニトリル150mlを加え、濾過した後、真空乾燥して、生成物であるセサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステル2.2gを固体状で得た。
【0041】
1H−NMR(D2O):δ(ppm)=1.82(m、2H)、2.97(t、2H)、3.86(q、2H)、5.79(s、2H)、6.48(dd、1H)、6.58(d、1H)、6.67(dd、1H)。
【0042】
[実施例2] セサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルナトリウム塩の製造
製造例2で得たセサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステル1gを精製水30mlに溶解した後、これに5%炭酸ナトリウム水溶液を添加してpH7に調整した。
【0043】
上記溶液を凍結乾燥して薄い黄色固体のセサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルナトリウム塩を得た。
【0044】
1H−NMR(D2O):δ(ppm)=1.86(m、2H)、3. 01(t、2H)、3.89(q、2H)、5.79(s、2H)、6.42(dd、1H)、6.60(d、1H)、6.67(dd、1H)。
【0045】
[実施例3] セサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルカリウム塩の製造
製造例2で得たセサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステル1gを精製水30mlに溶解した後、これに5%炭酸カリウム水溶液を添加してpH7に調整した。上記溶液を凍結乾燥して薄い黄色固体のセサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルカリウム塩を得た。
【0046】
1H−NMR(D2O):δ(ppm)=1.85(m、2H)、2.98(t、2H)、3.86(q、2H)、5.78(s、2H)、6.44(dd、1H)、6.58(d、1H)、6.67(dd、1H)。
【0047】
[試験例1] 抗酸化効果測定
ヒト角質細胞(HaCat)細胞株を60mmディッシュ(dish)当たり1.0×106個に分株し、ペニシリン/ストレプトマイシンが添加されたDMEM(FBS 10%)培地を使用し、37℃、5%CO2の条件で1日間培養した後、セサモールと実施例1のセサモール誘導体を10-4モル濃度で処理し、陽性対照群として使用したトコフェロールも同一の濃度で24時間処理した。翌日、上記組成物と同時に4mMのt-BHP(t-butyl hydroperoxide、t-ブチルヒドロキシド)を処理した後、37℃、5%CO2の条件で4時間培養した後、細胞を収得した。上記細胞は、冷凍/解凍工程を繰り返す方法で溶解し、以下の試験は、分析キットに提示された方法に準して施行した。
【0048】
すなわち、本発明では、カルバイオケム脂質過酸化分析キットを試薬として使用し、マロンアルデヒド及び4-ヒドロキシアルケナルのような長鎖不飽和脂肪酸と連関されたエステル過酸化物が上記試薬と反応して586nmで安定した化合物を形成する原理を利用して脂質過酸化を測定した。非処理群を100にして対比した結果を下記表1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から分かるように、本発明のセサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルは、陽性対照群として使用したトコフェロール、セサモールと類似の抗酸化効果を示した。
【0051】
[試験例2] 抗老化効果測定
繊維芽細胞を24孔に1孔当たり106個ずつ播種し、90%程度生長するまで培養した。これを24時間無血清培地で培養した後、無血清培地に10-4モル濃度に溶解させたトコフェロール、セサモール、実施例1のセサモール誘導体で処理し、更に24時間CO2培養器で培養した。これらの上澄液を汲み出してプロコラゲン型(I)ELISAキット(Procollagen type(A))を利用してプロコラゲンの増減可否を調べた。その結果を表2に示し、合成能は、非処理群を100にして対比したものである。
【0052】
【表2】

【0053】
上記表2から分かるように、本発明のセサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルは、コラーゲン生合成を増加させる効果を示した。すなわち、本発明のセサモール誘導体は、抗酸化効果だけでなく、コラーゲン生合成効果があることを確認することができた。したがって、本発明のセサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルは、抗老化用に活用されることができる。
【0054】
[試験例3]
セサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルが皮膚に存在するフォスファターゼによって加水分解されてセサモール及び3-アミノプロパンリン酸が形成されるかを調べた。pH7.4のリン酸緩衝溶液中に実施例1のセサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステル及びフォスファターゼを添加して加水分解反応を実施した。上記フォスファターゼは、シグマ社で販売するアルカラインフォスファターゼを使用した。加水反応が進行されることによって形成される3-アミノプロパンリン酸の量をHPLC(高性能液体クロマトグラフィー)で測定し、その結果を図1に示した。
【0055】
下記図1から分かるように、セサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルが皮膚に存在するフォスファターゼによって加水分解され、セサモール及び3-アミノプロパンリン酸に分解されて各々の活性を示すことができることを確認した。
【0056】
本発明によるセサモール誘導体を皮膚外用剤組成物に使用することができるが、その剤型において特別に限定されるものではない。例えば、柔軟化粧水、 收斂化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、アイエッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、パウダー、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーオイル、ボディーエッセンス、メイカップベース、ファウンデーション、毛染め剤、シャンプー、リンスまたはボディー洗浄剤などの化粧料組成物、または軟膏、ゲル、クリーム、パッチまたは噴霧剤などの医薬用組成物に剤型化されることができる。これらの各剤型は、その剤型の製剤化に必要であり、適切な各種の基剤と添加物を含有することができ、これらの成分の種類と量は、発明者により容易に選定されることができる。
【0057】
[剤型例1] 栄養化粧水(乳液)の製造
前記実施例1〜3で製造したセサモール誘導体を含有する栄養化粧水を製造した。
【0058】
【表3】

【0059】
[剤型例2]栄養クリームの製造
前記実施例1〜3で製造したセサモール誘導体を含有する栄養クリームを製造した。
【0060】
【表4】

【0061】
[剤型例3] マッサージクリームの製造
前記実施例1〜3で製造したセサモール誘導体を含有するマッサージクリームを製造した。
【0062】
【表5】

【0063】
[剤型例4] 軟膏の製造
前記実施例1〜3で製造したセサモール誘導体を含有する軟膏を製造した。
【0064】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、セサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルがフォスファターゼによって加水分解されて生成される3-アミノプロパンリン酸の量をHPLC(高性能液体クロマトグラフィー)で測定した結果を示すグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式Iで表示されるセサモール誘導体またはその塩:
【化1】

【請求項2】
上記塩がアルカリ金属類塩またはアルカリ土金属類塩であることを特徴とする請求項1に記載のセサモール誘導体またはその塩。
【請求項3】
上記アルカリ金属類塩がナトリウム塩またはカリウム塩であり、上記アルカリ土金属類塩がカルシウム塩であることを特徴とする請求項2に記載のセサモール誘導体またはその塩。
【請求項4】
下記段階を含むことを特徴とする請求項1に記載のセサモール誘導体またはその塩の製造方法:
(A)セサモールとオキシ塩化リンを1:1〜1.3の当量比で有機塩基の存在下に有機溶媒中で12〜18℃の温度で1〜2時間反応させてジクロロ(3,4-メチレンジオキシフェノキシ)-ホスフィノ-1-オンを製造する段階;
(B)上記段階(A)で生成されたジクロロ(3,4-メチレンジオキシフェノキシ)-ホスフィノ-1-オンと3-アミノプロパノールを塩基の存在下に有機溶媒中で反応させて(3,4-メチレンジオキシフェノキシ)-1,3,2-オキサザホスホリンp-オキシドを製造する段階;
(C)上記段階(B)で得られた反応液を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮した後、得られた残渣に酸溶液を添加して5〜100℃の温度で約3〜12時間反応させてP−N結合を加水分解させることによって、セサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルを製造する段階;及び
(D)上記段階(C)で生成されたセサモール3-アミノプロパンリン酸ジエステルに極性有機溶媒を徐々に滴加し、これを結晶化する段階。
【請求項5】
請求項1乃至3項のいずれかに記載のセサモール誘導体またはその塩を含むことを特徴とする皮膚外用剤組成物。
【請求項6】
請求項1乃至3項のいずれかに記載のセサモール誘導体またはその塩を含むことを特徴とする抗酸化用または抗老化用皮膚外用剤組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2008−545778(P2008−545778A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515619(P2008−515619)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【国際出願番号】PCT/KR2006/002037
【国際公開番号】WO2006/132479
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(503327691)株式會社アモーレパシフィック (73)
【住所又は居所原語表記】181, Hankang−ro 2−ka, Yongsan−ku, Seoul 140−777 Republic of Korea
【Fターム(参考)】