セミアクティブショックアブソーバ制御方法
【課題】セミアクティブショックアブソーバ制御システムを提供すること。
【解決手段】例えば実時間調整可能なショックアブソーバシステムなどのバネ質量系のためのセミアクティブ制御手法が提供される。この手法は、システムパラメータ及びユーザ定義可能な又は前もってセットされた入力に基づき複数の動作ゾーンを定義するステップを備える。また、この手法は、非慣性バネ質量系応答と、系に作用する多次元の力と、運動の極値での系の動作を正確に定義するための加速度境界計算とを明らかにするためのステップを備える。この手法は、概して、複数のバルブ制御信号を生成すること、そのバルブ制御信号の中から選択すること、および選択された制御信号を閉ループのフィードバック系におけるバルブに加えてバネ質量系におけるエネルギーを調節することに方向づけられる。
【解決手段】例えば実時間調整可能なショックアブソーバシステムなどのバネ質量系のためのセミアクティブ制御手法が提供される。この手法は、システムパラメータ及びユーザ定義可能な又は前もってセットされた入力に基づき複数の動作ゾーンを定義するステップを備える。また、この手法は、非慣性バネ質量系応答と、系に作用する多次元の力と、運動の極値での系の動作を正確に定義するための加速度境界計算とを明らかにするためのステップを備える。この手法は、概して、複数のバルブ制御信号を生成すること、そのバルブ制御信号の中から選択すること、および選択された制御信号を閉ループのフィードバック系におけるバルブに加えてバネ質量系におけるエネルギーを調節することに方向づけられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セミアクティブショックアブソーバのための制御装置および制御手法に関する。更に詳しくは、本発明は、ショックアブソーバ又はダンパーを備えるサスペンションを使用して、二つのマス(mass)間の相対運動を制御するシステム及び方法に関する。このシステムおよび方法は、起伏のある地形上を走るときにシャーシのマスを車輪の運動から分離(isolate)する車両の一次サスペンションのような多くのタイプのシステム、またはトラック、または、キャブ又は船体の機構部分から分離されるボートシートに適用できる。本発明は、エンジンマウント、機械マウント、または分離マウント用の他の一般的な用途のような、スプリング無しの機構部分からスプリング付きの機構部分を分離する振動分離機構を備える任意のシステムに広く適用できる。
【背景技術】
【0002】
サスペンション及び分離マウント(suspensions and isolation mount)は、次のカテゴリ、即ちパッシブ(passive)、アクティブ(active)又はセミアクティブ(semi-active)のうちの一つに分類される。パッシブマウントは、通常、パッシブスプリング及びパッシブダンパーを備え、スプリング無しマスへの一定の周波数外乱(frequency disturbance)および固定マス(fixed mass)のような所定の条件セットに対して非常に良好な分離を提供するように調整される。しかしながら、増加した最大積載質量(payload)によりマスが変化すれば、または対地速度における変化のために入力周波数が変化すれば、分離性能が低下し、そしてシステムが行程(travel)の終わりに突き当たったときに、しばしば非常に大きな衝撃荷重(shock load)をもたらし、通常、サスペンションを“トッピング(topping)”または“ボトミング(bottoming)”すると言われる。
【0003】
アクティブサスペンションは、純粋にパッシブなシステムよりも一層広い範囲の条件にわたってずっと良好な分離を提供することができる。それらは、種々のセンサを読み取り、そして情報を処理して、常に二つのマス間の最適な目標力を提供し、アクチュエータ及びサポートシステムのパワーリミットを与える。加えて、それらはエネルギーをシステムに付加することができ、一方、パッシブ及びセミアクティブシステムはエネルギーを差し引くことのみができる。アクティブサスペンションは、車両原動力からのハイパワーに対する需要と同様に、高コストおよび複雑性のために広く受け入れられていない。起伏のある地形上を移動する長行程サスペンションを備えたオフロード車両の場合には、サスペンションのパワーの引き抜き(power draw)は禁止すべきであり、車両の最大加速を減少させる。
【0004】
セミアクティブサスペンションは、性能上の利点を保ちながらも、一般に、完全なアクティブシステムよりも複雑でなく且つコストがかからない。それらは、従来のサスペンションからのパッシブスプリングを使用し、且つ、減衰力を実時間で制御することを可能とするために必要とされるマイクロプロセッサ及びセンサのみならず、制御可能なダンパーを加える。ダンパーは、依然としてシステムからエネルギーを差し引くことだけはできるが、しかしながら、それは、パッシブダンパーに特有の不変の速さ/力の法則によって支配されるよりは、むしろ、制御方法によって要求される任意のレベルの減衰を提供することができる。
【0005】
Karnoppらの“Vibration Control Using Semi-active Force Generator”, ASME, Paper No.73DET-123,1974年5月、および米国特許番号3807678に述べられている“スカイフック(skyhook)”方法をはじめとして、セミアクティブサスペンションのために開発された多くの制御方法がある。この方法は、ダンパーに、二つのマス間の相対速度よりも、むしろ、スプリング付きのマスの絶対速度に比例した力を発揮させることを試みている。従って、マスからのスカイフックなる用語は、グランド(ground)よりもむしろ慣性座標系を基準とするかのように取り扱われる。この方法は、システムにおける圧縮行程の量よりも小さい衝突(bump)に対し極めて良好な分離をもたらすことができ、より大きな衝突は、サスペンションにボトムアウトを起こし、スプリング付きマスに伝達される大きな衝撃荷重をもたらす。
【0006】
他の方法は、“エンドストップ”方法と呼ばれるボトミング及びトッピング問題を取り扱うために開発されている。エンドストップモードにおいて、マイクロプロセッサは、スプリング付きマスを減速し且つサスペンションをボトミングから防止するために必要な最小の力を計算する。これは高い衝撃荷重がスプリング付きマスに伝達されることを防止するのに効果的であるが、それは、より小さなバンプに対しては過剰なサスペンション動作をもたらす。このことはオペレータを非常に当惑させる。なぜなら、それは、オペレータが車両のハンドリング及び振る舞いに対する良好な“感触(feel)”を持つことを妨げるからである。
【0007】
また、多くの方法を組み合わせ、そして相対的重み付けを与え、または或る環境下で代わりの方法の使用を支配するルールを開発する試みがある。これらの努力のほとんどは、全体的な目的(overall goal)または優劣のメトリック(metric of relative merit)のような分離効率(isolation efficiency)をねらったものである。しかしながら、オペレータの快適性および信頼性のような主観的要素のみならず、車両制御およびハンドリングに影響を及ぼす過渡的力(transient force)の分配のようなサスペンションシステムにおいて重要な他の要素が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、実用的なセミアクティブサスペンション制御方法をもたらすルールのセットを用いて従来技術の欠点を解決する。
一つの態様において、本発明は、ショックアブソーバシステムが圧縮されているかどうかを決定し、前記システムにおけるエネルギーを調節するための制御可能なバルブを有するスプリングによって互いに結合された二つのマスを備えるショックアブソーバシステムに対し目標制御信号を発生するための方法を含む。本方法は、互いのマスの現在速度を決定することにより、スプリング/マスシステムがz方向に圧縮しているかを判断するステップを備える。また、本方法は、前記マスの相対位置および相対速度に基づき慣性エンドストップ信号を発生するステップを備え、上記慣性エンドストップ信号は、マスの一つが近似的にゼロ速度で最小行程の位置に到達するために必要な最小加速度に比例する。また、本方法は、スプリング力定数に基づき減衰された信号を発生するステップを備え、臨界的に減衰された信号は、臨界的に減衰された少なくとも一つのマスの軌道に比例し、そして上記臨界的に減衰された信号に対する上側力閾値(upper force threshold)として定義された快適性信号(comfort signal)を発生する。本方法は、前記信号のうちの一つを前記目標信号として選択して上記値を制御し、これによりスプリング/マスシステムにおけるエネルギーを調節する。
【0009】
他の態様において、本発明は、ショックアブソーバシステムが拡張しているのかを判断するための方法と、システムにおけるエネルギーを調節するための制御可能なバルブを有するスプリングにより互いに結合された二つのマスを備えるショックアブソーバシステムに対し目標制御信号を発生するための方法を含む。本方法は、互いに対するマスの現在速度を決定することによりz方向に拡張しているかを判断するステップと、マスの相対速度に基づき慣性エンドストップ信号を発生するステップと、スプリング力定数に基づき減衰された信号を発生するステップとを備える。上記慣性エンドストップ信号は、マスの一つが近似的にゼロ速度で最小行程の位置に到達するために必要な最小の加速度に比例する。上記減衰された信号は、減衰された少なくとも一つのマスの軌道に比例する。また、本方法は、マスの一つが他のマスから離れて自由落下することを許容するバルブ位置に比例する第1バルブ事前配置信号を発生するステップと、マスの一つが他のマスから制御可能に拡張して離れることを許容するバルブ位置に比例する第2バルブ事前配置信号を発生するステップとを備える。本方法は、これらの信号のうちの一つを、上記バルブを制御するための目標信号として選択し、そしてこれによりスプリング/マスシステムにおけるエネルギーを調節する。
【0010】
更に他の態様において、本発明は、スプリング/マスショックアブソーバシステムにおけるエネルギーを調節するための制御可能なバルブを有するスプリングにより互いに結合された二つのマスを備えた上記スプリング/マスショックアブソーバシステムにおける目標慣性および非慣性エネルギー制御信号を発生するための方法を提供する。本方法は、二つのマスの相対位置および相対速度に基づきエンドストップ信号を発生するステップを備え、上記慣性エンドストップ信号は、マスの一つが近似的にゼロ速度で最大または最小行程の位置に到達するのに必要な最小加速度に比例する。本方法は、互いのマスの絶対的位置ずれ(displacement)および絶対速度を示す信号で上記エンドストップ信号を修正する。また、本方法は、上記マスの相対速度に基づき前記エンドストップ信号が上記制御可能なバルブに対する目標制御信号として指定されるべきかを判断する。
【0011】
更にまた他の態様において、本発明は、スプリング/マスショックアブソーバシステムにおけるエネルギーを調整するための制御可能なバルブを有するスプリングによって互いに結合された二つのマスを備えた上記スプリング/マスショックアブソーバシステムにおける目標の多次元の減衰されたエネルギー制御信号を発生するための方法を提供する。本方法は、スプリング力定数に基づき減衰された信号を発生するステップと、臨界的に減衰された係数を定義するステップと、上記減衰された信号に上記臨界的に減衰された係数を乗算するステップとを備え、上記減衰された信号は、z方向において上記マスの少なくとも一つの減衰された軌道に比例する。本方法は、更に、x及び/又はy方向における上記二つのマスのうちの少なくとも一つの加速度を測定し計算するステップと、x及び/又はy方向における上記二つのマスの少なくとも一つの上記計測された加速度に基づき上記臨界的に減衰された係数を修正するステップとを備える。また、本方法は、上記減衰された信号が上記制御可能なバルブに対する目標制御信号として指定されるべきかを判断する。
【0012】
本発明の他の態様は、スプリング/マスショックアブソーバシステムにおけるエネルギーを調節するための制御可能なバルブを有するスプリングによって互いに結合された二つのマスを備えた上記スプリング/マスショックアブソーバシステムにおける目標直接バルブ制御信号を発生するための方法を提供する。本方法は、マスの相対速度および相対位置に基づきバルブ事前配置信号を発生するステップと、上記バルブ事前配置信号が、上記マスの上記相対速度に基づき上記制御可能なバルブに対する目標制御信号として指定されるべきであるかを判断するステップとを備え、上記バルブ事前配置信号は、上記スプリングのエネルギーが所定量を想定(assume)するように、上記バルブに対する事前配置の所定量に比例する。
【0013】
また、本発明は、スプリング/マスショックアブソーバシステムにおけるエネルギーを調節するための制御可能なバルブを有するスプリングによって互いに結合された二つのマスを備えた上記スプリング/マスショックアブソーバシステムにおける加速度ヘッジ制御信号でバルブ制御信号を修正するための方法を提供する。本方法は、マスの相対速度に基づき複数のバルブ制御信号を発生するステップと、前記マスのうちの第1マスの加速度または力と前記マスのうちの第2マスのそれとの加算に比例する加速度ヘッジ信号を発生して、上記第2マスの平均加速度または力をドライブし、近似的に上記第1マスの実際の加速度または力に等しくするステップとを備える。上記加速度ヘッジ信号は、上記バルブ制御信号のうちの選択されたものに加えられる。
【0014】
以下の詳細な説明は好ましい実施形態を参照してなされるが、当業者であれば、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではないことが理解されるであろう。本発明が、“方法(methods)”または“モジュラープロセッサ(modular processors)”なる用語を使用し、このような用語は、1または2以上のプログラム処理(program process)、データ構造、ソースコード、プログラムコード等、及び/又は、従来の汎用及び/又は専用プロセッサに保存された他のデータを包含するものとして広く解釈されるべきであり、それは、メモリ記憶手段(例えばRAM,ROM)および記憶装置(例えばコンピュータ読み取り可能なメモリ、ディスクアレイ、直接アクセス記憶装置)を備えてもよいことは、最初から理解されるべきである。代わりに、または加えて、このような方法またはモジュラープロセスは、本明細書で述べられる機能を達成するために、当該技術分野において知られている方法で準備されたカスタム及び/又は既製(off-the-shelf)の回路を使用して実施できる。
【0015】
本発明の他の特徴および利点は、図面を参照して以下の詳細な説明がなされるにつれて明らかになり、図面において、同様の数字は同様のパーツを表す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】二つのマスの相対運動がスプリング及びダンパーによって制御されたスプリング/マスシステムを表す図である。
【図2A】スプリング/マスシステムの二つのマスの相対位置および速度の空間図である。
【図2B】スプリング/マスシステムの二つのマスの相対位置および速度の空間図である。
【図3】本発明のシステムコントローラにより生成された代表的な一定減速軌道曲線を集めて示した図である。
【図4A】本発明のシステムコントローラによって生成された力を表現するものとして、臨界的に減衰された軌道を集めて示した図である。
【図4B】本発明のシステムコントローラによって生成された力を表現するものとして、非減衰された軌道を集めて示した図である。
【図5】本発明のスプリング/マスシステムコントローラによって利用される力選択(force selection)プロセッサの代表的なフローチャートである。
【図6】本発明のスプリング/マスシステムコントローラの代表的なブロックダイアグラムである。
【図7】本発明の代表的なシステムレベルコントロールループを示す図である。
【図8】本発明の代表的な他のシステムレベルコントロールループを示す図である。
【図9】本発明の代表的なシステムレベルコントロールループを示す図である。
【図10A】システムが本明細書で述べられる原理に従う方法で制御されるときに、力−速度空間(F−V)における代表的なスプリング/マスシステム応答曲線を示す図である。
【図10B】システムが本明細書で述べられる原理に従う方法で制御されるときに、力−速度空間(F−V)における代表的なスプリング/マスシステム応答曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を詳細に説明する前に、詳細な説明の全体を通して次の定義が使用される。
<定義>
スプリング付きマス(SM)−自動車の場合ではカーシャーシであり、トラックシートの場合ではシートと乗員である。
スプリング無しマス(USM)−自動車の場合では車輪であり、トラックシートの場合ではトラックである。
相対位置(Xrel)−スプリング付きマス(SM)およびスプリング無しマス(USM)の互いに対する位置を意味する。
【0018】
相対速度(Vrel)−SMおよびUSMの互いに対する速度を意味する。
バンプストップ(Bump Stop)−マスの最小可能(minimum possible)な相対位置を限定する物理的制約の位置。
ドループストップ(Droop Stop)−マスの最大可能(maximum possible)な相対位置を限定する物理的制約の位置。
エンドストップ(Endstop)−ドループストップまたはバンプストップまたは双方のうちの何れかを意味する。
Xend−所定のシステムに対する定数であり、エンドストップ位置を表す。
【0019】
K−スプリング力定数。
Fcomfort−臨界的に減衰された力についての上側力閾値。Fcomfortは、ユーザ定義または予め設定された力変数であり、且つ通常、Fcriticalよりもスムーズなシステム応答を提供するために供給される。
Fthreth−USMがゼロ速度でドループストップに行くように、システムが自由落下にあるときにUSMを減速する力。Fthreshは、ユーザ定義可能または予め設定された力であり、Fthreshにおける増加はUSMをドループストップに一層迅速に移動させる。
0Gsは、地表と垂直のZ方向においては全く加速されない物体である。
−1Gsは、地表と垂直のZ方向において自由落下にある物体である。
【0020】
<概要>
概要として、本発明は、特徴的な速度/位置制御空間内で種々の動作ゾーンを定義するための方法と、サスペンションがゾーン間で移動するときに多数の方法間をスムーズに推移する手段を提供する。加えて、本発明は、慣性的に制御されたショックアブソーババルブを再現(mimic)する。これは、スプリング付き又はスプリング無しマスが動いているかどうかをそれが識別し、適切な減衰力を選択することを可能にする。換言すると、車両のシャーシが上方に動くのか、またはサスペンションと車輪が下方に動くのかを知ることができる。もしシャーシが動いていれば、サスペンションはその動きを減衰させようとする。サスペンションが下方に動き、且つシャーシが−1gsを受けていれば、それは、通常、車両が空中にあるか、又は大きな穴を横切っているかであり、そしてサスペンションは、ランディング(landing)または次の衝突(bump)に対して使用可能な最大行程を備えるために、車輪が垂れることを許容するであろう。他方、もしシャーシが依然として0gであり、障害物が深い穴であれば、システムは、このケースでは車輪を速くは落とさない。
【0021】
本発明は、目標制御パラメータを識別するために必要なセンサの読み取りと次の計算の数を最小化する。これは、安価なマイクロプロセッサを用いても、制御ループ実行時間を減少させると共に制御帯域を高く維持することに役立つ。
【0022】
本発明の一つの目標は、単に振動分離のみならず、車両またはシステム力学の全ての局面において、良好な性能を有する実用的なサスペンション制御システムを実現することである。それは、異なるアプリケーションまたはオペレータレファレンスに合わせて調節が容易な動作ゾーン間の遷移閾値を調節するための簡単で分かりやすいルールのセットを提供することによって達成される。最終結果は、スプリング無しのマスに対する大きな入力が通常の動作中に安定性およびオペレータの感触を犠牲にすることなく起こるときの優れた分離である。
【0023】
図1は、代表的なマス/スプリングシステム10を表す。システム10は、スプリング16によって互いに結合されたスプリング無しマス USM 12およびスプリング付きマス SM 14を備える。ダンパー18は、本発明による方法でシステムのエネルギーを制御するために提供される。ダンパー18は、本明細書の説明においてはバルブとして一般化され、そのようなバルブは当該技術分野においてよく知られている。バルブは、例えば、機械的、電気機械的、制御可能な粘性流体(電気流動学的または磁気流動学的流体タイプ)、または当該技術分野で知られている他の任意の制御可能なバルブであってもよい。
【0024】
また、システムは、以下に説明されるように、スプリング/マスコントローラによって使用される変数(variables)のいくつかを発生するための複数のセンサを備える。代表的な実施形態において、加速度計20および22が、SMおよびUSMのそれぞれの加速度をモニタするためにそれぞれ使用される。各加速度計は、マスの加速度に比例した信号を出力する。また、相対位置センサ26が、z方向における互いに対するマスの相対位置に比例した信号を発生するために提供される。加えて、力または圧力(pressure)センサ24が備えられ、ショックアブソーバ及びスプリングの結合力(combined force)を直接的に測定する(必要条件ではない)。他のセンサを備えてもよく、例えば、xおよびy方向の加速度センサ、またはショックアブソーバ内の圧力計がある。センサの詳細は本発明を理解するのに重要ではない。むしろ、当該技術分野で知られている任意のタイプのセンサを、加速度および位置に比例した信号を発生するために採用することができる。
【0025】
<コントローラ>
図6は、本発明のスプリング力(または加速度)コントローラ50のブロックダイアグラムを表す。コントローラ50は、複数のセンサと、ユーザ定義された入力を備え、スプリング/マスシステムのエネルギーを調節するためのダンパーを設定するために利用される目標加速度または目標力(target acceleration or force)を発生する。コントローラ50は、複数のモジュラープロセッサ52,54,56,58,60,62,64を備え、スプリング/マスシステム10を制御するためにバルブによって利用される複数の制御信号を発生する。例えば、制御信号は、力または加速度または直接バルブ制御信号を含んでもよい。また、コントローラ50は、選択ロジックプロセッサ(selection logic processor)66を備え、それは、スプリング/マスシステム10の相対位置および相対速度に基づき目標加速度または目標力を選択するための所定のルールのセットを備える。選択ロジックプロセッサ66の出力は、スプリング/マスシステムにおける所望のエネルギーに比例した目標制御信号であり、加速度、力または速度によって表現されてもよい。以下の詳細な説明は、制御信号が加速度信号Atargetであると仮定するが、この信号は目標制御信号として一般化できることが理解されるべきである。Atargetは、バルブを制御するために使用される信号であり、これによりシステムのエネルギーを調節する。
【0026】
この代表的な実施形態のコントローラは、マスおよびスプリングによって定義されるシステムにおけるエネルギーを制御するための所定ルールのセットに基づき目標力または加速度信号を発生することに向けられている。もちろん、コントローラは、スプリング無しマス又はスプリング付きマスを独立に制御するように構成されてもよい。コントローラ50の以下の詳細な説明は、様々な力および加速度信号の発生について述べる。本システムにおけるマスは公知であるので、これらの数量は交換可能に使用される。同様に、力または加速度信号の代わりに速度信号を生成することが望ましく、このような変形は、加速度を統合することにより本明細書では等しく意図されている。
【0027】
もしモジュラープロセッサがプロセッサ上で稼動する実行コードとして具現されれば、本発明のコントローラ50は、また、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換回路を備えてもよい。このようなA/Dコンバータは、所望の分解能のデジタル信号を発生するためにビットの深さ(bit depth)及び/又はサンプリング周波数を有するように選択されてもよい。あるいは、当業者であれば、本明細書で述べられる数式に基づき、所望の出力信号を得るためのモジュラープロセッサについて多くの回路要素の実施を理解するであろう。さらに、コントローラ50は、所望の機能を達成するために1又は2以上の入力信号を導き出し(derive)又は統合(integrate)するためのプロセッサを備えてもよいことに注目すべきである。例えば、図6に示されるように、d/dtプロセッサが、XrelからVrelを導き出すために備えられてもよい。代表的なコントローラ50の構成要素のそれぞれは以下に述べられる。
【0028】
<象限決定プロセッサ(quadrant determination processor)60>
コントローラ50のモジュラープロセッサの一つは象限決定プロセッサ60を備える。このプロセッサは、マスの相対位置および相対速度を決定し、且つスプリング付きマスについての動作の象限(quadrant)を決定する。ここで図2Aおよび2Bを参照すると、コントローラ50の動作エリアは大まかに2次元座標系上にマッピングでき、ここでx軸はスプリング付きマスとスプリング無しマスとの間の相対位置ずれ(relative displacement)であり、y軸はスプリング付きマス及びスプリング無しマスの相対速度(relative velocity)である。0,0点は、スプリング付きマスまたはスプリング無しマスの動作がない状態での乗車高(ride height)として指定される。
【0029】
第3象限は、圧縮(compression)であり、ここでは速度が負であり且つ位置が“下げ止め(bottom out)”に向かう。また、第2象限は、スプリングが圧縮下にあるが、乗車高に戻る場所である。第4象限は、スプリングが拡張し且つ位置が“上げ止め(top out)”に向かう点を除いて第3象限と類似している。第1象限は、第4象限と類似するが、乗車高に戻る。象限決定処理は、入力としてXrelおよびVrelを使用し、そしてシステムが動作しているところの象限を示す象限信号61を発生する。
【0030】
<慣性エンドストッププロセッサ52及び非慣性エンドストッププロセッサ54>
慣性エンドストッププロセッサ(inertial endstop processor)52は、XrelおよびXendを使用して一定の加速度(または力)信号Fendstopを生成し、その信号は、ゼロ速度でエンドストップに到達するために必要とされる最小加速度に比例する(例えば、図3に表された減速軌道(deceleration trajectory)に沿って)。最小ピーク力を生じる力プロファイル(force profile)は一定力である。マスM、初期速度vo、および初期位置xoが与えられれば、運動エネルギーは、
E=(1/2)*M*V2
である。
【0031】
エネルギーを均一に減少させるためには、一定力によってエンドストップまでの距離に等しい距離にわたって仕事が実施されなければならない。
(X−Xend)*F=(1/2)*M*V2
Fについて解くと、
F={(1/2)*M*V2}/(X−Xend)
を生じる。
両辺をマスで除算すると、左辺に加速度を生じる。
A={(1/2)*V2}/(X−Xend)
この式は二つの事実を述べている。
【0032】
エンドストップにちょうど触れるのに必要とされる一定加速度を決定するために、入力は、現在速度、現在位置、およびエンドストップ位置(バンプストップ(bump stop)およびドループストップ(droop stop))であり、スプリング定数またはマスのようなシステムパラメータは必要でない。速度および位置は常に変化しているので、この計算は、所望の分解能に対する速さで、例えば制御サイクルごとに実施されてもよい。
【0033】
図3は、慣性エンドストップ計算により生成される代表的な一定減速曲線を表す。一定加速度に対する位置の関数としての速度は平方根関数である。voおよびxoは現在位置であり、Xendはエンドストップ位置であるので、バルブのどれもが、システムに対して可変であるシステムパラメータに依存しない。従って、代表的な実施形態において、慣性エンドストップ計算は、コード空間または実行時間について最適化するためのテーブルルックアップまたはハードコード(hard-coded)された方法を用いて実施できる。
【0034】
慣性エンドストッププロセッサの計算は、スプリング無しのマスがインパルス力により静止するようになるという仮定で演算され、従って、一対で一緒の動作の絶対速度は存在しない。この絶対速度およびそれと共に来る絶対位置ずれ(absolute displacement)を無視することは、慣性エンドストップ方法が、スプリング無しのマス上に垂直方向に付与された力がインパルスではないところのいくつかのハードランディングに対して無防備にする原因となる。
【0035】
二つの例は、落ちつつあるスロープ上への車両のランディングまたは波上へのボートのランディングである。これらのケースでは、純粋な慣性エンドストップ方法は、所望以上に十分に遅く、わずかな臨界的に減衰された力(critically damped force)よりも高い力を加える必要性を認識し、且つ大きなピーク力を発生して以前の過小評価を補う。
【0036】
この点について改善するため、代表的なコントローラ50は、また、非慣性エンドストッププロセッサ(non-inertial endstop processor)54を備える。基本的に、非慣性エンドストッププロセッサ54は、マスのペアの絶対速度のトラックを維持することによってこれらのより大きなバンプを予測する。従って、下げ止め(bottom out)に向かうとき、ほぼ上げ止めのときでさえ、非慣性エンドストップ計算は、エンドストップ方法がもっと早く適用される必要があるかを決定することができる。
【0037】
この方法は、スプリング無しのマスの加速度が、それがゼロ速度に到達するまで、現在測定され又は見積もられた値で一定であるという基本前提に立つ。このプロセッサへの入力は、Vrelと、スプリング無しのマスの加速度Ausmである。このケースでは、マスのペアにより移動された距離は、
ΔX={(1/2)*Vboth2}/Aunspurung
【0038】
前記の式は、上述の慣性エンドストッププロセッサ52の同様の導出結果である。
そして、エンドストップ方法は、Vbothを備える修正された慣性速度と、力が加えられなければならないところの修正された位置ずれとを入力として取る。
初期速度は、
Vo=Vboth+Vrelative
である。
【0039】
力が加えられなければならない位置ずれは、
(X−Xend)+ΔX
である。
ここで、ΔXは、上述のように計算され、(X−Xend)はエンドストップからの相対位置ずれの距離の計算である。
【0040】
非慣性エンドストッププロセッサ54は、VbothおよびデルタXを生じ、これらの値を慣性エンドストッププロセッサ52についての処理に入力する。従って、修正された大きなデルタXおよび修正された大きなVは、慣性エンドストップ力プロセッサ52に埋め込まれて、非慣性レファレンスにおいて必要な力を決定する。即ち、スプリング無しは、突然には静止するようになることがないが、よりゆっくりと時間をかける。この処理は、慣性ストッププロセッサが、自由落下の間に大きな速度が蓄積することを認識するが、それが、力を加えるべきところの全ての修正されたデルタXを有することは認識しないことを手助けすることを含んでもよい。これは、Fendstop信号53を修正して、これらの数量を備える。
【0041】
<臨界的減衰プロセッサ56およびピッチ及びロールプロセッサ58>
また、コントローラ50はプロセッサ56を備え、このプロセッサ56は、臨界的に減衰されたいくつかの所定の小部分(fraction)である経路に沿って乗車高(0,0)に戻るための臨界力(又は加速度) Fcritical 57を発生する。臨界的減衰プロセッサ56への入力は、K(スプリング力定数)、スプリング付きマスの質量(MS; mass of sprung mass)、マスの相対速度Vrel、および所望の臨界減衰係数(critically damped coefficient)ξを備える。
【0042】
その力を計算するために、スプリングと線形ダンパーを備えるシステムの運動方程式から始める。
F=−K*X−B*V
両辺をマスで除算すると、
A=(−K/M)*X−(B/M)*V
となる。
【0043】
マス−スプリングシステムについては、K/Mの平方根はω0に等しく、それは共振周波数であり、且つ(B/M)は減衰係数(damping coefficient)ガンマに等しく、それは2*ξ*ωに等しい。
A=−ω0*X−2*ξ*ω0*V
【0044】
従って、臨界減衰力(又は加速度)は、共振周波数とシステムの臨界減衰の小部分(fraction)ξを決定するための二つのコンフィグレーションパラメータと共に乗車高からの相対的位置ずれと相対的速度とを測定することにより計算できる。
【0045】
システムのξを調節することは、減衰が、臨界的減衰に対して調節されることを可能にする。従って、ξは、要望通りに調節され得るユーザ定義の入力である。1のξは、臨界的に減衰されることと等価であり、1/2のξは、臨界的減衰の1/2での性能と等価な性能をもたらす。
【0046】
図4Aは、三つの代表的な軌道(trajectory)を表し、それはξが1、即ちシステムが臨界的に減衰されているときの結果である。x軸は乗車高を表し、このケースではスプリング付きマスは、オーバシュートを生じることなく乗車高に戻っている。このシステムの結果は、サスペンションが乗車品質の点において荒く感じ、そしてゆっくり過ぎて乗車高に戻ることができないということになる。
【0047】
減衰を臨界的に減衰されたいつかの小部分(fraction)に低減することにより、妥当な量のオーバシュートになり、多くとも一つか二つの顕著なサイクルがあり、そして乗客によって感じられる荒さが低減する。臨界的減衰量は、プリセットパラメータまたはユーザ選択可能な入力であってもよい。図4Bは、三つの代表的軌道を表し、それはξが1よりも小さく、即ちシステムが減衰された状態にあるときの結果である。
【0048】
ブレーキング、加速またはコーナリング中にショックアブソーバがピッチ及びロール動作を決定する役割を演じる車両においては、目標の力の計算に対して付加的な修正がなされてもよい。ピッチ及びロールプロセッサ58は、ξに対するこの修正を起こすために提供される。代表的な実施形態において、ピッチ及びロールプロセッサ58に対する入力は、x(ピッチ)およびy(ロール)軸に沿ったスプリング付きマス(Asm)の加速度である。もちろん、スプリング付きマスに関連づけられた加速度計は、xおよびy方向kの加速度も検出するように構成されてもよく、または代わりに、追加のセンサを図1のシステムに設けて、xおよびy次元におけるこれらの追加的な加速度信号を発生してもよい。XおよびY軸加速度の両方を検出することにより、システムは、ブレーキング、加速またはコーナリングが起きているときを決定してもよい。一旦、これらの状態が検出され、そしてその状態の大きさ(magnitude of the magnitude)が計算されると、ピッチ及びロールプロセッサ58は、減衰を増加させることにより車両の4つ全てのコーナーにおけるわずかな減衰量(fractional amount of damping)を修正して臨界的減衰に近づく。このわずかな臨界減衰量は、状態の大きさがプリセットされた又は設定可能なレベルに増加するにつれてほぼ1に増加されてもよい。ピッチ及びロールプロセッサ58の結果は、修正された減衰係数ξmodである。
【0049】
結果として生じる影響は、直進ドライブ中に減衰が少なく、従ってサスペンションを通して車両に伝達される路面振動が少ないことである。しかし、もし側面方向に長期の加速度が発生すれば、ダンパーが“もがく(wallowing)”よりはむしろ“堅く(stiffen out)”なり、そして車両は、オーバシュートなしで迅速に最終的な乗車“姿勢(attitude)”に到達する。
【0050】
<バルブ事前配置プロセッサ(valve prepositioning processor)62>
−1gの長区間は、ハードランディングがまさに発生しようとしている兆しである。−1gのAsmと、ドループストップ(droop stop)での又は近似的にドループストップでのスプリング無しのマスを前提とすれば、代表的な実施形態はバルブ事前配置プロセッサ62を備えてもよく、このバルブ事前配置プロセッサ62は、バルブがハードランディングについて事前に配置されるべきかどうを決定する。このテストは、バルブが適切な瞬間に開かれることを保証するのに必要とされる感度に依存してバンプストップに引き返す速度の使用を含むが、これはバルブ事前配置(valve prepositioning)には必要とされない。
【0051】
バルブ事前配置プロセッサ62は、入力Xrel、Asm、Vrel及びXendを使用し、そしてバルブについての所望の事前配置量に比例するバルブ事前配置信号63を発生する。一つの代表的な実施形態において、大きな相対速度が一層広く開いたバルブを必要とすることを考えると、この処理は途中ずっとバルブを開く信号63を発生する。これは、例えば、システムの絶対速度を推測されたバルブ位置にマッピングするフィードフォワードテーブルを用いて、または人工知能を用いて更に洗練されることができ、その人工知能では、処理が、同様の初期速度でのランディングにおいて生じる結果のバルブ位置と長期間にわたるシステムの振る舞いを学習する。
【0052】
バルブを事前配置することによるこのハードランディング予測は、必要なフルスケールのスルーレート(slew rate)を低減することにより減衰を制御することに使用されるバルブの速度/帯域要件を減らすことに役立つ。
【0053】
<加速ヘッジプロセッサ(acceleration hedge processor)64>
スプリング付き及びスプリング無しのマスは、二つのエンドストップの境界内に共に残らなければならず、平均してそれらのマスのそれぞれに加えられた加速度は等しくなければならない。加速度のこの一致は、相対的位置ずれがエンドストップの一つに近づくほど重要になる。
【0054】
従って、加速ヘッジプロセッサ64は、スプリング無しのマスの加速度をスプリング付きのマスの目標加速度のそれに加えて、スプリング付きのマスの加速度の平均をスプリング無しの実際の加速度のそれに等しくする。スプリング無しのマスの加速度を直接的に目標に加えることは、分離の形式としてはサスペンションを無用にする。なぜなら、それは、そのまさしく目標に加えられている加速度であり、その目標はスプリング付きのマスから分離されるからである。
【0055】
概観上の不一致を避けるために、スプリング無しのマスの加速度は、それをスプリング付きマスの目標のそれに加えるに先だって、二つの方法によって減衰される。
第1に、スプリング無しのマスの加速度は、応答時間を分離とバランスさせるカットオフ周波数に設定されたローパスフィルタを通過する。このカットオフ周波数は、各アプリケーションについて調整されたパラメータであってもよい。当業者であれば、よく知られた構成要素及び/又はアルゴリズムを用いてこのようなフィルタを容易に構成することができることが分かる。一般的な経験則として、カットオフ周波数が大きくなることは、サスペンションの動きが少なくなり、分離が少なくなることを意味する。より低いカットオフ周波数はヘッジ加速度Ahedgeを減らす。従って、加速ヘッジプロセッサを実施する場合には、これらのトレードオフを考慮してもよい。
【0056】
第2に、このフィルタされた値は、加重方法(weighted fashion)で、即ち少し二つのマスの相対位置ずれがエンドストップに接近するように、スプリング付きマスの目標加速度に加えられる。例えば、相対的位置ずれがバンプストップに接近するにつれて平均加速度のこの一致を緩和するために、スプリング無しマスからの正の加速度が目標に完全に加えられる。しかし、もし、相対的位置ずれがドループストップの近くであれば、スプリング付きマスで測定された正の加速度は、スプリング付きマスについての目標加速度に全く加えられない。同様に、この加重方法は、ドループストップの方向に向いているときの負の加速度に対して適用できる。
【0057】
<選択ロジック>
さらに図6を参照すると、上述の処理によって生成された信号53,57,61,63,65を使用して、本発明は、また、ルールのセットに基づき、信号53,57,61,63,65のうちの何れの信号を目標加速度Atargetに使用すべきかを決定するための選択ロジックプロセッサ66を備える。立ち代って、Atargetが、図7,8,9を参照して説明するように、閉ループフィードバックシステムにおいてバルブの配置のための制御信号として使用されてもよい。
【0058】
図5を参照すると、本発明のコントローラの選択ロジックプロセッサ66によって実行されるルールを表す代表的なフローチャート100が表されている。処理は、マス/スプリングシステムが圧縮(第3または第4象限)しているかどうかを判断することにより開始する(ステップ102)。
【0059】
一般的な問題として、システム動作が第3または第4象限にあるとき、選択ロジックは、以下のように要約される。もし、わずかな臨界的に減衰された経路に沿って乗車高に戻るために必要な力がFcomfortよりも少なく且つその力を加えることがエンドストップをヒットする結果にならなければ、Fcomfortを加える。そのほか、その臨界的に減衰された力がFcomfortよりも大きく且つFcomfortを加えることがエンドストップをヒットする結果にならなければ、Fcomfortを加える。そのほか、エンドストップをヒットすることを防止するために必要な最小限の一定の力を加える。
【0060】
図5は、減衰された力(Fcritical)が快適性の力Fcomfortよりも小さく且つエンドストップ力Fendstopよりも大きいのかの最初の決定(ステップ104)によるこの一般的なフローを表す。もしyesであれば、Fcriticalが使用され(ステップ108)、そして加速度ヘッジ信号Ahedgeにより修正される。これは、これらの状態(condition)に対する目標加速度Atargetであり、そしてAtargetは、バルブ118を調節するためにフィードバックループ116に入力され、これによりシステムにおけるエネルギー調節する。
【0061】
もしFcriticalがFcomfortよりも大きければ(ステップ104)、処理は、FendstopがFcomfortよりも小さいかどうかを決定する(ステップ106)。もしyesであれば、選択ロジックはFcomfortを適用し、Ahedgeによって修正する。もしnoであれば、選択ロジックはFendstopを適用し(ステップ112)、処理は上述のように継続する。
上述したように、加速ヘッジは目標加速度に加算されてもよく、これにより新たな目標加速度を生成する。
【0062】
数学的には、これは次のように表される。
もし(Aunsprung>0)であれば、
Atarget(新)=Atarget(旧)+Wbump(X)*Filter(Aunsprung)
そうでなければ、
Atarget(新)=Atarget(旧)+Wdroop(X)*Filter(Aunsprung)
ここで、
Atarget(旧)は、先に述べた方法の何れかによって計算された目標加速度である。
Aunsprungは、スプリング無しのマスで測定された加速度である。
Filter( )は、入力値の選択されたローパスフィルタリングを提供する関数である。
Xは、相対的位置ずれである。
【0063】
WbumpおよびWdroopは、ゼロではなく、各関数についてXがバンプストップまたはドループストップに近づくにつれて1に増加する重み関数である。これらの重み関数の形状は、特定のアプリケーションに対して選択でき、または多様多種のアプリケーション及び/又は動作環境に対して一般化できる。例えば、線形及び/又は対数の、及び/又は指数の重みが適用でき、一方のエンドストップでゼロから開始し、そして他方のエンドストップで1に上昇する。
【0064】
もし、マス/スプリングシステムが圧縮のステップ102でなければ(即ち、第1および第2象限)、選択処理は以下のように要約される。もし、スプリング付きマスの絶対的加速度0G´sに近いか大きければ、わずかな臨界的に減衰された経路に沿って乗車高に戻るために必要な力を印加する。そのほか、もしスプリング付きマスの加速度が−1G´sに近ければ、および速度および位置が、エンドストップを防止するために必要とされる一定の力が閾値に到達しそれを超えるようなものであれば、エンドストップ力を適用し、そうでなければ(エンドストップ力計算に対し)、スプリング付きマスが空中にあり且ついまスプリング無しマスが抑制されない方法で頭打ちの(topped out)のエンドストップに向かっていると仮定する。できる限り多くのドループ行程(droop travel)が、できる限り多くのバンプ行程(bump travel)を用いて結果として生じる“ランディング”に備えることを可能にする。
【0065】
この処理は、スプリング付きマスが頭打ちの状態に近いかどうかの最初の決定により図5に表され、Vrelは近似的に0であり、そしてシステムは−1G(自由落下)で或る所定時間を費やす。もしyesであれば、ロジックは、システムがシステムに発生するインパルス加速度を予測するように、バルブをバイアスするためのバルブ事前配置信号を適用する(ステップ132)。このケースでは、制御ループは、力変数をフィードフォワードするように設定され、それはバルブ118に出力される。もし、ステップ120の結果が否定的であれば、選択ロジックは、Asprungが0G´sに近似しているか大きいかを決定する。もしyesであれば、ロジックは、エンドストップ力が減衰された力よりも小さいかどうかを決定し、そしてもしそうであれば、ロジックは減衰された力を適用する(ステップ126)。もしステップ122の結果が否定的であれば、ロジックは、Asmが−1Gに近似し且つFendstop>Fthresholdであるかを決定する(ステップ124)。もしyesであれば、ロジックは、Fendstopを適用し(ステップ128)、処理を続ける。もしそうでなければ、ロジックは、バルブ事前配置信号を適用して近似的に開位置にバイアスし、システムが許容するくらいの速さでマスが移動して離れることを可能にし(即ち、システムの制約内で自由に移動して離れる)(ステップ130)、そしてステップ134で処理が継続する。
【0066】
本明細書において“近似的に”なる用語の使用は、広く解釈されるべきであり、例えばシステム測定またはシステム構成要素のエンジニアリング許容値内の値、または許容範囲内のエラーを発生する選択された許容度内の値を意味する。
【0067】
<力−速度曲線>
図10Aは、システムが本明細書で述べた原則に従う方法で制御されるときの力−速度空間(F−V)における代表的なスプリング/マスシステムの応答を表す。y軸は力(N)の自由単位であり、x軸は速度(m/s)の自由単位である。そして、x軸の上側ではスプリング/マスシステムが圧縮し、そしてx軸の下側ではシステムが拡張しているので、システム応答はx軸に関して概ね対称性を有する。
【0068】
この曲線は、システムの動作のゾーンを表す。第1のソーン202は、目標加速度としてのFcriticalの適用である。この図には、Fcomfort 204A,204B,204Cについて三つの代表的な値が表されている。一般な問題として、FcomfortはFcriticalの適用を平坦化する線形関数である。Fcomfortのより低い値、マスの速度として適用される力が増加する。より大きな速度では、Fendstopが適用される(ステップ206)。本発明のコントローラは、それらの力を制御するユーザ定義の入力および変数に基づき、動作ゾーンのそれぞれが独立した傾きと適用位置(application positions)を有することを可能にする。従って、図10Aを3次元(そこでは、位置が紙面に入ったり出たりする)に概念化すると、本発明は、3次元空間の全体にわたって各ゾーンが動作することを可能とし、これにより、多種多様の動作状態にわたって所望の動作ゾーンが選択されることを可能としている。
【0069】
図10Bは、システムが本明細書で述べた原則に従った方法で制御される場合の力−速度空間(F−V)における他の代表的なスプリング/マスシステム応答を表す。y軸は力(N)の自由単位であり、x軸は速度(m/s)の自由単位である。x軸の上側ではスプリング/マスシステムが圧縮しており、そしてx軸の下側ではシステムが拡張しているので、システム応答はx軸に関して対称性を有している。
【0070】
第1ゾーン202は、目標加速度としてのFcriticalの適用である。速度が増加するにつれて、線形力Fcomfortが適用される(ステップ204)。この図には、Fcritical 202A,202B,202Cについての三つの代表的な値が表されている。一般的な問題として、Fcriticalの傾きは臨界的に減衰された係数によって調節される。Fcriticalの傾きが減少するにつれ、より小さな減衰力が適用され、サスペンションの剛性(stiffness)が減少する。より大きな速度では、Fendstopが適用される(ステップ206)。本発明のコントローラは、それらの力を制御するユーザ変数の(又はプリセットの)入力または変数に基づき、図10A、10Bに表された動作ゾーンのそれぞれが独立した傾き(slope)及び適用位置(application popsition)を有することを可能にする。
【0071】
<代表的な制御ループ>
図7−9は、本発明による代表的なフィードバック制御ループを表す。当業者であれば、図7−9に表された制御ループは一例として提供されるものであるに過ぎず、そしてこのような制御ループは本発明を逸脱することなく種々の方法で構築されることが分かる。
【0072】
図7は、外側の制御ループが目標加速度に基づき提供される制御ループ300を表す。目標加速度は、選択ロジック66(上述)から導出される。目標加速度(Aactualにより修正される)は、バルブコントローラ302のための制御信号として使用され、それは、順にバルブ18を設定し、そしてそれにより、システムにおけるエネルギーを調節する。フィードバックは、実際の加速度(Aactual)を示すシステムによって提供される。
【0073】
加速度を測定するよりは、目標加速度が所望の経路に沿って加速されるマスと乗算されることを除いて、目標力が上述の方法とほとんど同じルールセットに基づくことができるという仮定の下に、二つのマス間に働く力が測定され且つ制御される。このタイプの制御ループ400は、図8に示され、ここで、選択ロジックが目標力(Ftarget)を導出し、そして、バルブコントローラ402がこの力制御信号に応答する。
【0074】
加速度は測定するのが困難であり(二つの誘導体を必要とし)、且つ目標速度は次の時間のステップについて容易に計算できるので、速度に基づく制御ループが着想され、そして内側の加速ループよりも実行可能である。この制御ループ500は図9に表され、ここでは、バルブコントローラ502は目標速度Vtarget制御信号に応答する。
【0075】
力のループはバルブによってのみ帯域が制限されたタイトなループを提供するが、追加的なセンサ(即ち、力センサ24)を必要とする。加速ループは、必要なセンサは一つだけ少ないが、制御システムの帯域は、マスのシステム力学と加速度を計算する能力により制限される。速度ループは、同様に必要なセンサは一つだけ少なく、且つ速度は加速度よりもフィードバック計算がより速いが、マスの応答の帯域制限に悩まされる。従って、制御ループの実施は、これらを考慮にいれ、そしてこのような帯域制限の要件に基づいて選択されてもよい。
【0076】
また、コントローラ50はその入力がシステムの入力であるフィードバック設計であり、そしてそれゆえに、目標加速度、力、および速度は、システムからの入力が変化するにつれて変化していることが理解されるべきである。
【0077】
従って、乗車品質、ハンドリング、およびエンドストップ性能の性能問題を同時に解決するセミアクティブショックアブソーバを設計するための数学、物理および方法が明らかにされた。次では、本発明のいくつかの特徴の要約を述べるが、本発明を限定するものではない。
【0078】
本発明は、位置ずれ/速度平面における位置に基づき軌道を選択するステップを備える。使用する本方法の選択は、それが乗車品質(減衰)、ハンドリング(車両力学)、およびエンドストップ防止の対立要件を満たし得る最小の力を選択するようなことである。
【0079】
わずかに臨界減衰されるように調整された経路に沿って乗車高に戻ることを可能とし、ピーク力(加速度)を減少させ、且つ位置ずれ/速度平面における現在の位置に応じてエンドストップをヒットすることを防止するように、選択される軌道を設計する。
【0080】
エンドストップ力を計算する場合、二つのマスの絶対速度を考慮に入れて、相対的位置ずれ及び速度によって計算されるよりも大きな必要な力を早期に予測し、バンプストップにヒットすることを防止する。
【0081】
目標力、加速度、または速度に関するループを閉じて、力、加速度、または速度におけるフィードバックを使用してF−V平面における所望の軌道を提供する。
【0082】
スプリング付きマスの加速度を読み取り且つ空中にあるのか又は深い穴を横切っているのかを決定することにより上述のルールから決定された所望の軌道を修正して、より速く分離することによりハードランディングを二つのマスが予測することを可能とするか、あるいはドループストップにアプローチするときの高い力を防止するかどうかを決定する。
【0083】
加速度ヘッジを加えて二つのマスの平均加速度が一致させるが、提供される分離の値を減少させるために、多すぎるスプリング無しマスの加速度を合わせない。
【0084】
ハードランディングを制御するために必要な予測されたバルブ位置に近い開状態にバルブを事前配置することによりハードランディングを予測する。
【0085】
コーナリング、ブレーキング、または加速の状態のひとつが予め設定された値に近づくことによる加速のように、臨界減衰の近くにまで小部分の減衰(fractional damping)を増加させることにより、コーナリング、ブレーキング、または加速における良好な乗車ハンドリングを提供する。
【0086】
当業者であれば、本発明について多くの変形がなされ得ることが分かる。全てのこのような変形は、本発明の要旨および思想の範囲内であり、本発明は請求項によってのみ制限される。
【符号の説明】
【0087】
50:コントローラ
52:慣性エンドストッププロセッサ
54:非慣性エンドストッププロセッサ
56:臨界的減衰プロセッサ
58:ピッチ&コントロールプロセッサ
60:象限決定プロセッサ
62:バルブ事前配置プロセッサ
64:加速度ヘッジプロセッサ
66:選択ロジックプロセッサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、セミアクティブショックアブソーバのための制御装置および制御手法に関する。更に詳しくは、本発明は、ショックアブソーバ又はダンパーを備えるサスペンションを使用して、二つのマス(mass)間の相対運動を制御するシステム及び方法に関する。このシステムおよび方法は、起伏のある地形上を走るときにシャーシのマスを車輪の運動から分離(isolate)する車両の一次サスペンションのような多くのタイプのシステム、またはトラック、または、キャブ又は船体の機構部分から分離されるボートシートに適用できる。本発明は、エンジンマウント、機械マウント、または分離マウント用の他の一般的な用途のような、スプリング無しの機構部分からスプリング付きの機構部分を分離する振動分離機構を備える任意のシステムに広く適用できる。
【背景技術】
【0002】
サスペンション及び分離マウント(suspensions and isolation mount)は、次のカテゴリ、即ちパッシブ(passive)、アクティブ(active)又はセミアクティブ(semi-active)のうちの一つに分類される。パッシブマウントは、通常、パッシブスプリング及びパッシブダンパーを備え、スプリング無しマスへの一定の周波数外乱(frequency disturbance)および固定マス(fixed mass)のような所定の条件セットに対して非常に良好な分離を提供するように調整される。しかしながら、増加した最大積載質量(payload)によりマスが変化すれば、または対地速度における変化のために入力周波数が変化すれば、分離性能が低下し、そしてシステムが行程(travel)の終わりに突き当たったときに、しばしば非常に大きな衝撃荷重(shock load)をもたらし、通常、サスペンションを“トッピング(topping)”または“ボトミング(bottoming)”すると言われる。
【0003】
アクティブサスペンションは、純粋にパッシブなシステムよりも一層広い範囲の条件にわたってずっと良好な分離を提供することができる。それらは、種々のセンサを読み取り、そして情報を処理して、常に二つのマス間の最適な目標力を提供し、アクチュエータ及びサポートシステムのパワーリミットを与える。加えて、それらはエネルギーをシステムに付加することができ、一方、パッシブ及びセミアクティブシステムはエネルギーを差し引くことのみができる。アクティブサスペンションは、車両原動力からのハイパワーに対する需要と同様に、高コストおよび複雑性のために広く受け入れられていない。起伏のある地形上を移動する長行程サスペンションを備えたオフロード車両の場合には、サスペンションのパワーの引き抜き(power draw)は禁止すべきであり、車両の最大加速を減少させる。
【0004】
セミアクティブサスペンションは、性能上の利点を保ちながらも、一般に、完全なアクティブシステムよりも複雑でなく且つコストがかからない。それらは、従来のサスペンションからのパッシブスプリングを使用し、且つ、減衰力を実時間で制御することを可能とするために必要とされるマイクロプロセッサ及びセンサのみならず、制御可能なダンパーを加える。ダンパーは、依然としてシステムからエネルギーを差し引くことだけはできるが、しかしながら、それは、パッシブダンパーに特有の不変の速さ/力の法則によって支配されるよりは、むしろ、制御方法によって要求される任意のレベルの減衰を提供することができる。
【0005】
Karnoppらの“Vibration Control Using Semi-active Force Generator”, ASME, Paper No.73DET-123,1974年5月、および米国特許番号3807678に述べられている“スカイフック(skyhook)”方法をはじめとして、セミアクティブサスペンションのために開発された多くの制御方法がある。この方法は、ダンパーに、二つのマス間の相対速度よりも、むしろ、スプリング付きのマスの絶対速度に比例した力を発揮させることを試みている。従って、マスからのスカイフックなる用語は、グランド(ground)よりもむしろ慣性座標系を基準とするかのように取り扱われる。この方法は、システムにおける圧縮行程の量よりも小さい衝突(bump)に対し極めて良好な分離をもたらすことができ、より大きな衝突は、サスペンションにボトムアウトを起こし、スプリング付きマスに伝達される大きな衝撃荷重をもたらす。
【0006】
他の方法は、“エンドストップ”方法と呼ばれるボトミング及びトッピング問題を取り扱うために開発されている。エンドストップモードにおいて、マイクロプロセッサは、スプリング付きマスを減速し且つサスペンションをボトミングから防止するために必要な最小の力を計算する。これは高い衝撃荷重がスプリング付きマスに伝達されることを防止するのに効果的であるが、それは、より小さなバンプに対しては過剰なサスペンション動作をもたらす。このことはオペレータを非常に当惑させる。なぜなら、それは、オペレータが車両のハンドリング及び振る舞いに対する良好な“感触(feel)”を持つことを妨げるからである。
【0007】
また、多くの方法を組み合わせ、そして相対的重み付けを与え、または或る環境下で代わりの方法の使用を支配するルールを開発する試みがある。これらの努力のほとんどは、全体的な目的(overall goal)または優劣のメトリック(metric of relative merit)のような分離効率(isolation efficiency)をねらったものである。しかしながら、オペレータの快適性および信頼性のような主観的要素のみならず、車両制御およびハンドリングに影響を及ぼす過渡的力(transient force)の分配のようなサスペンションシステムにおいて重要な他の要素が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、実用的なセミアクティブサスペンション制御方法をもたらすルールのセットを用いて従来技術の欠点を解決する。
一つの態様において、本発明は、ショックアブソーバシステムが圧縮されているかどうかを決定し、前記システムにおけるエネルギーを調節するための制御可能なバルブを有するスプリングによって互いに結合された二つのマスを備えるショックアブソーバシステムに対し目標制御信号を発生するための方法を含む。本方法は、互いのマスの現在速度を決定することにより、スプリング/マスシステムがz方向に圧縮しているかを判断するステップを備える。また、本方法は、前記マスの相対位置および相対速度に基づき慣性エンドストップ信号を発生するステップを備え、上記慣性エンドストップ信号は、マスの一つが近似的にゼロ速度で最小行程の位置に到達するために必要な最小加速度に比例する。また、本方法は、スプリング力定数に基づき減衰された信号を発生するステップを備え、臨界的に減衰された信号は、臨界的に減衰された少なくとも一つのマスの軌道に比例し、そして上記臨界的に減衰された信号に対する上側力閾値(upper force threshold)として定義された快適性信号(comfort signal)を発生する。本方法は、前記信号のうちの一つを前記目標信号として選択して上記値を制御し、これによりスプリング/マスシステムにおけるエネルギーを調節する。
【0009】
他の態様において、本発明は、ショックアブソーバシステムが拡張しているのかを判断するための方法と、システムにおけるエネルギーを調節するための制御可能なバルブを有するスプリングにより互いに結合された二つのマスを備えるショックアブソーバシステムに対し目標制御信号を発生するための方法を含む。本方法は、互いに対するマスの現在速度を決定することによりz方向に拡張しているかを判断するステップと、マスの相対速度に基づき慣性エンドストップ信号を発生するステップと、スプリング力定数に基づき減衰された信号を発生するステップとを備える。上記慣性エンドストップ信号は、マスの一つが近似的にゼロ速度で最小行程の位置に到達するために必要な最小の加速度に比例する。上記減衰された信号は、減衰された少なくとも一つのマスの軌道に比例する。また、本方法は、マスの一つが他のマスから離れて自由落下することを許容するバルブ位置に比例する第1バルブ事前配置信号を発生するステップと、マスの一つが他のマスから制御可能に拡張して離れることを許容するバルブ位置に比例する第2バルブ事前配置信号を発生するステップとを備える。本方法は、これらの信号のうちの一つを、上記バルブを制御するための目標信号として選択し、そしてこれによりスプリング/マスシステムにおけるエネルギーを調節する。
【0010】
更に他の態様において、本発明は、スプリング/マスショックアブソーバシステムにおけるエネルギーを調節するための制御可能なバルブを有するスプリングにより互いに結合された二つのマスを備えた上記スプリング/マスショックアブソーバシステムにおける目標慣性および非慣性エネルギー制御信号を発生するための方法を提供する。本方法は、二つのマスの相対位置および相対速度に基づきエンドストップ信号を発生するステップを備え、上記慣性エンドストップ信号は、マスの一つが近似的にゼロ速度で最大または最小行程の位置に到達するのに必要な最小加速度に比例する。本方法は、互いのマスの絶対的位置ずれ(displacement)および絶対速度を示す信号で上記エンドストップ信号を修正する。また、本方法は、上記マスの相対速度に基づき前記エンドストップ信号が上記制御可能なバルブに対する目標制御信号として指定されるべきかを判断する。
【0011】
更にまた他の態様において、本発明は、スプリング/マスショックアブソーバシステムにおけるエネルギーを調整するための制御可能なバルブを有するスプリングによって互いに結合された二つのマスを備えた上記スプリング/マスショックアブソーバシステムにおける目標の多次元の減衰されたエネルギー制御信号を発生するための方法を提供する。本方法は、スプリング力定数に基づき減衰された信号を発生するステップと、臨界的に減衰された係数を定義するステップと、上記減衰された信号に上記臨界的に減衰された係数を乗算するステップとを備え、上記減衰された信号は、z方向において上記マスの少なくとも一つの減衰された軌道に比例する。本方法は、更に、x及び/又はy方向における上記二つのマスのうちの少なくとも一つの加速度を測定し計算するステップと、x及び/又はy方向における上記二つのマスの少なくとも一つの上記計測された加速度に基づき上記臨界的に減衰された係数を修正するステップとを備える。また、本方法は、上記減衰された信号が上記制御可能なバルブに対する目標制御信号として指定されるべきかを判断する。
【0012】
本発明の他の態様は、スプリング/マスショックアブソーバシステムにおけるエネルギーを調節するための制御可能なバルブを有するスプリングによって互いに結合された二つのマスを備えた上記スプリング/マスショックアブソーバシステムにおける目標直接バルブ制御信号を発生するための方法を提供する。本方法は、マスの相対速度および相対位置に基づきバルブ事前配置信号を発生するステップと、上記バルブ事前配置信号が、上記マスの上記相対速度に基づき上記制御可能なバルブに対する目標制御信号として指定されるべきであるかを判断するステップとを備え、上記バルブ事前配置信号は、上記スプリングのエネルギーが所定量を想定(assume)するように、上記バルブに対する事前配置の所定量に比例する。
【0013】
また、本発明は、スプリング/マスショックアブソーバシステムにおけるエネルギーを調節するための制御可能なバルブを有するスプリングによって互いに結合された二つのマスを備えた上記スプリング/マスショックアブソーバシステムにおける加速度ヘッジ制御信号でバルブ制御信号を修正するための方法を提供する。本方法は、マスの相対速度に基づき複数のバルブ制御信号を発生するステップと、前記マスのうちの第1マスの加速度または力と前記マスのうちの第2マスのそれとの加算に比例する加速度ヘッジ信号を発生して、上記第2マスの平均加速度または力をドライブし、近似的に上記第1マスの実際の加速度または力に等しくするステップとを備える。上記加速度ヘッジ信号は、上記バルブ制御信号のうちの選択されたものに加えられる。
【0014】
以下の詳細な説明は好ましい実施形態を参照してなされるが、当業者であれば、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではないことが理解されるであろう。本発明が、“方法(methods)”または“モジュラープロセッサ(modular processors)”なる用語を使用し、このような用語は、1または2以上のプログラム処理(program process)、データ構造、ソースコード、プログラムコード等、及び/又は、従来の汎用及び/又は専用プロセッサに保存された他のデータを包含するものとして広く解釈されるべきであり、それは、メモリ記憶手段(例えばRAM,ROM)および記憶装置(例えばコンピュータ読み取り可能なメモリ、ディスクアレイ、直接アクセス記憶装置)を備えてもよいことは、最初から理解されるべきである。代わりに、または加えて、このような方法またはモジュラープロセスは、本明細書で述べられる機能を達成するために、当該技術分野において知られている方法で準備されたカスタム及び/又は既製(off-the-shelf)の回路を使用して実施できる。
【0015】
本発明の他の特徴および利点は、図面を参照して以下の詳細な説明がなされるにつれて明らかになり、図面において、同様の数字は同様のパーツを表す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】二つのマスの相対運動がスプリング及びダンパーによって制御されたスプリング/マスシステムを表す図である。
【図2A】スプリング/マスシステムの二つのマスの相対位置および速度の空間図である。
【図2B】スプリング/マスシステムの二つのマスの相対位置および速度の空間図である。
【図3】本発明のシステムコントローラにより生成された代表的な一定減速軌道曲線を集めて示した図である。
【図4A】本発明のシステムコントローラによって生成された力を表現するものとして、臨界的に減衰された軌道を集めて示した図である。
【図4B】本発明のシステムコントローラによって生成された力を表現するものとして、非減衰された軌道を集めて示した図である。
【図5】本発明のスプリング/マスシステムコントローラによって利用される力選択(force selection)プロセッサの代表的なフローチャートである。
【図6】本発明のスプリング/マスシステムコントローラの代表的なブロックダイアグラムである。
【図7】本発明の代表的なシステムレベルコントロールループを示す図である。
【図8】本発明の代表的な他のシステムレベルコントロールループを示す図である。
【図9】本発明の代表的なシステムレベルコントロールループを示す図である。
【図10A】システムが本明細書で述べられる原理に従う方法で制御されるときに、力−速度空間(F−V)における代表的なスプリング/マスシステム応答曲線を示す図である。
【図10B】システムが本明細書で述べられる原理に従う方法で制御されるときに、力−速度空間(F−V)における代表的なスプリング/マスシステム応答曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を詳細に説明する前に、詳細な説明の全体を通して次の定義が使用される。
<定義>
スプリング付きマス(SM)−自動車の場合ではカーシャーシであり、トラックシートの場合ではシートと乗員である。
スプリング無しマス(USM)−自動車の場合では車輪であり、トラックシートの場合ではトラックである。
相対位置(Xrel)−スプリング付きマス(SM)およびスプリング無しマス(USM)の互いに対する位置を意味する。
【0018】
相対速度(Vrel)−SMおよびUSMの互いに対する速度を意味する。
バンプストップ(Bump Stop)−マスの最小可能(minimum possible)な相対位置を限定する物理的制約の位置。
ドループストップ(Droop Stop)−マスの最大可能(maximum possible)な相対位置を限定する物理的制約の位置。
エンドストップ(Endstop)−ドループストップまたはバンプストップまたは双方のうちの何れかを意味する。
Xend−所定のシステムに対する定数であり、エンドストップ位置を表す。
【0019】
K−スプリング力定数。
Fcomfort−臨界的に減衰された力についての上側力閾値。Fcomfortは、ユーザ定義または予め設定された力変数であり、且つ通常、Fcriticalよりもスムーズなシステム応答を提供するために供給される。
Fthreth−USMがゼロ速度でドループストップに行くように、システムが自由落下にあるときにUSMを減速する力。Fthreshは、ユーザ定義可能または予め設定された力であり、Fthreshにおける増加はUSMをドループストップに一層迅速に移動させる。
0Gsは、地表と垂直のZ方向においては全く加速されない物体である。
−1Gsは、地表と垂直のZ方向において自由落下にある物体である。
【0020】
<概要>
概要として、本発明は、特徴的な速度/位置制御空間内で種々の動作ゾーンを定義するための方法と、サスペンションがゾーン間で移動するときに多数の方法間をスムーズに推移する手段を提供する。加えて、本発明は、慣性的に制御されたショックアブソーババルブを再現(mimic)する。これは、スプリング付き又はスプリング無しマスが動いているかどうかをそれが識別し、適切な減衰力を選択することを可能にする。換言すると、車両のシャーシが上方に動くのか、またはサスペンションと車輪が下方に動くのかを知ることができる。もしシャーシが動いていれば、サスペンションはその動きを減衰させようとする。サスペンションが下方に動き、且つシャーシが−1gsを受けていれば、それは、通常、車両が空中にあるか、又は大きな穴を横切っているかであり、そしてサスペンションは、ランディング(landing)または次の衝突(bump)に対して使用可能な最大行程を備えるために、車輪が垂れることを許容するであろう。他方、もしシャーシが依然として0gであり、障害物が深い穴であれば、システムは、このケースでは車輪を速くは落とさない。
【0021】
本発明は、目標制御パラメータを識別するために必要なセンサの読み取りと次の計算の数を最小化する。これは、安価なマイクロプロセッサを用いても、制御ループ実行時間を減少させると共に制御帯域を高く維持することに役立つ。
【0022】
本発明の一つの目標は、単に振動分離のみならず、車両またはシステム力学の全ての局面において、良好な性能を有する実用的なサスペンション制御システムを実現することである。それは、異なるアプリケーションまたはオペレータレファレンスに合わせて調節が容易な動作ゾーン間の遷移閾値を調節するための簡単で分かりやすいルールのセットを提供することによって達成される。最終結果は、スプリング無しのマスに対する大きな入力が通常の動作中に安定性およびオペレータの感触を犠牲にすることなく起こるときの優れた分離である。
【0023】
図1は、代表的なマス/スプリングシステム10を表す。システム10は、スプリング16によって互いに結合されたスプリング無しマス USM 12およびスプリング付きマス SM 14を備える。ダンパー18は、本発明による方法でシステムのエネルギーを制御するために提供される。ダンパー18は、本明細書の説明においてはバルブとして一般化され、そのようなバルブは当該技術分野においてよく知られている。バルブは、例えば、機械的、電気機械的、制御可能な粘性流体(電気流動学的または磁気流動学的流体タイプ)、または当該技術分野で知られている他の任意の制御可能なバルブであってもよい。
【0024】
また、システムは、以下に説明されるように、スプリング/マスコントローラによって使用される変数(variables)のいくつかを発生するための複数のセンサを備える。代表的な実施形態において、加速度計20および22が、SMおよびUSMのそれぞれの加速度をモニタするためにそれぞれ使用される。各加速度計は、マスの加速度に比例した信号を出力する。また、相対位置センサ26が、z方向における互いに対するマスの相対位置に比例した信号を発生するために提供される。加えて、力または圧力(pressure)センサ24が備えられ、ショックアブソーバ及びスプリングの結合力(combined force)を直接的に測定する(必要条件ではない)。他のセンサを備えてもよく、例えば、xおよびy方向の加速度センサ、またはショックアブソーバ内の圧力計がある。センサの詳細は本発明を理解するのに重要ではない。むしろ、当該技術分野で知られている任意のタイプのセンサを、加速度および位置に比例した信号を発生するために採用することができる。
【0025】
<コントローラ>
図6は、本発明のスプリング力(または加速度)コントローラ50のブロックダイアグラムを表す。コントローラ50は、複数のセンサと、ユーザ定義された入力を備え、スプリング/マスシステムのエネルギーを調節するためのダンパーを設定するために利用される目標加速度または目標力(target acceleration or force)を発生する。コントローラ50は、複数のモジュラープロセッサ52,54,56,58,60,62,64を備え、スプリング/マスシステム10を制御するためにバルブによって利用される複数の制御信号を発生する。例えば、制御信号は、力または加速度または直接バルブ制御信号を含んでもよい。また、コントローラ50は、選択ロジックプロセッサ(selection logic processor)66を備え、それは、スプリング/マスシステム10の相対位置および相対速度に基づき目標加速度または目標力を選択するための所定のルールのセットを備える。選択ロジックプロセッサ66の出力は、スプリング/マスシステムにおける所望のエネルギーに比例した目標制御信号であり、加速度、力または速度によって表現されてもよい。以下の詳細な説明は、制御信号が加速度信号Atargetであると仮定するが、この信号は目標制御信号として一般化できることが理解されるべきである。Atargetは、バルブを制御するために使用される信号であり、これによりシステムのエネルギーを調節する。
【0026】
この代表的な実施形態のコントローラは、マスおよびスプリングによって定義されるシステムにおけるエネルギーを制御するための所定ルールのセットに基づき目標力または加速度信号を発生することに向けられている。もちろん、コントローラは、スプリング無しマス又はスプリング付きマスを独立に制御するように構成されてもよい。コントローラ50の以下の詳細な説明は、様々な力および加速度信号の発生について述べる。本システムにおけるマスは公知であるので、これらの数量は交換可能に使用される。同様に、力または加速度信号の代わりに速度信号を生成することが望ましく、このような変形は、加速度を統合することにより本明細書では等しく意図されている。
【0027】
もしモジュラープロセッサがプロセッサ上で稼動する実行コードとして具現されれば、本発明のコントローラ50は、また、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換回路を備えてもよい。このようなA/Dコンバータは、所望の分解能のデジタル信号を発生するためにビットの深さ(bit depth)及び/又はサンプリング周波数を有するように選択されてもよい。あるいは、当業者であれば、本明細書で述べられる数式に基づき、所望の出力信号を得るためのモジュラープロセッサについて多くの回路要素の実施を理解するであろう。さらに、コントローラ50は、所望の機能を達成するために1又は2以上の入力信号を導き出し(derive)又は統合(integrate)するためのプロセッサを備えてもよいことに注目すべきである。例えば、図6に示されるように、d/dtプロセッサが、XrelからVrelを導き出すために備えられてもよい。代表的なコントローラ50の構成要素のそれぞれは以下に述べられる。
【0028】
<象限決定プロセッサ(quadrant determination processor)60>
コントローラ50のモジュラープロセッサの一つは象限決定プロセッサ60を備える。このプロセッサは、マスの相対位置および相対速度を決定し、且つスプリング付きマスについての動作の象限(quadrant)を決定する。ここで図2Aおよび2Bを参照すると、コントローラ50の動作エリアは大まかに2次元座標系上にマッピングでき、ここでx軸はスプリング付きマスとスプリング無しマスとの間の相対位置ずれ(relative displacement)であり、y軸はスプリング付きマス及びスプリング無しマスの相対速度(relative velocity)である。0,0点は、スプリング付きマスまたはスプリング無しマスの動作がない状態での乗車高(ride height)として指定される。
【0029】
第3象限は、圧縮(compression)であり、ここでは速度が負であり且つ位置が“下げ止め(bottom out)”に向かう。また、第2象限は、スプリングが圧縮下にあるが、乗車高に戻る場所である。第4象限は、スプリングが拡張し且つ位置が“上げ止め(top out)”に向かう点を除いて第3象限と類似している。第1象限は、第4象限と類似するが、乗車高に戻る。象限決定処理は、入力としてXrelおよびVrelを使用し、そしてシステムが動作しているところの象限を示す象限信号61を発生する。
【0030】
<慣性エンドストッププロセッサ52及び非慣性エンドストッププロセッサ54>
慣性エンドストッププロセッサ(inertial endstop processor)52は、XrelおよびXendを使用して一定の加速度(または力)信号Fendstopを生成し、その信号は、ゼロ速度でエンドストップに到達するために必要とされる最小加速度に比例する(例えば、図3に表された減速軌道(deceleration trajectory)に沿って)。最小ピーク力を生じる力プロファイル(force profile)は一定力である。マスM、初期速度vo、および初期位置xoが与えられれば、運動エネルギーは、
E=(1/2)*M*V2
である。
【0031】
エネルギーを均一に減少させるためには、一定力によってエンドストップまでの距離に等しい距離にわたって仕事が実施されなければならない。
(X−Xend)*F=(1/2)*M*V2
Fについて解くと、
F={(1/2)*M*V2}/(X−Xend)
を生じる。
両辺をマスで除算すると、左辺に加速度を生じる。
A={(1/2)*V2}/(X−Xend)
この式は二つの事実を述べている。
【0032】
エンドストップにちょうど触れるのに必要とされる一定加速度を決定するために、入力は、現在速度、現在位置、およびエンドストップ位置(バンプストップ(bump stop)およびドループストップ(droop stop))であり、スプリング定数またはマスのようなシステムパラメータは必要でない。速度および位置は常に変化しているので、この計算は、所望の分解能に対する速さで、例えば制御サイクルごとに実施されてもよい。
【0033】
図3は、慣性エンドストップ計算により生成される代表的な一定減速曲線を表す。一定加速度に対する位置の関数としての速度は平方根関数である。voおよびxoは現在位置であり、Xendはエンドストップ位置であるので、バルブのどれもが、システムに対して可変であるシステムパラメータに依存しない。従って、代表的な実施形態において、慣性エンドストップ計算は、コード空間または実行時間について最適化するためのテーブルルックアップまたはハードコード(hard-coded)された方法を用いて実施できる。
【0034】
慣性エンドストッププロセッサの計算は、スプリング無しのマスがインパルス力により静止するようになるという仮定で演算され、従って、一対で一緒の動作の絶対速度は存在しない。この絶対速度およびそれと共に来る絶対位置ずれ(absolute displacement)を無視することは、慣性エンドストップ方法が、スプリング無しのマス上に垂直方向に付与された力がインパルスではないところのいくつかのハードランディングに対して無防備にする原因となる。
【0035】
二つの例は、落ちつつあるスロープ上への車両のランディングまたは波上へのボートのランディングである。これらのケースでは、純粋な慣性エンドストップ方法は、所望以上に十分に遅く、わずかな臨界的に減衰された力(critically damped force)よりも高い力を加える必要性を認識し、且つ大きなピーク力を発生して以前の過小評価を補う。
【0036】
この点について改善するため、代表的なコントローラ50は、また、非慣性エンドストッププロセッサ(non-inertial endstop processor)54を備える。基本的に、非慣性エンドストッププロセッサ54は、マスのペアの絶対速度のトラックを維持することによってこれらのより大きなバンプを予測する。従って、下げ止め(bottom out)に向かうとき、ほぼ上げ止めのときでさえ、非慣性エンドストップ計算は、エンドストップ方法がもっと早く適用される必要があるかを決定することができる。
【0037】
この方法は、スプリング無しのマスの加速度が、それがゼロ速度に到達するまで、現在測定され又は見積もられた値で一定であるという基本前提に立つ。このプロセッサへの入力は、Vrelと、スプリング無しのマスの加速度Ausmである。このケースでは、マスのペアにより移動された距離は、
ΔX={(1/2)*Vboth2}/Aunspurung
【0038】
前記の式は、上述の慣性エンドストッププロセッサ52の同様の導出結果である。
そして、エンドストップ方法は、Vbothを備える修正された慣性速度と、力が加えられなければならないところの修正された位置ずれとを入力として取る。
初期速度は、
Vo=Vboth+Vrelative
である。
【0039】
力が加えられなければならない位置ずれは、
(X−Xend)+ΔX
である。
ここで、ΔXは、上述のように計算され、(X−Xend)はエンドストップからの相対位置ずれの距離の計算である。
【0040】
非慣性エンドストッププロセッサ54は、VbothおよびデルタXを生じ、これらの値を慣性エンドストッププロセッサ52についての処理に入力する。従って、修正された大きなデルタXおよび修正された大きなVは、慣性エンドストップ力プロセッサ52に埋め込まれて、非慣性レファレンスにおいて必要な力を決定する。即ち、スプリング無しは、突然には静止するようになることがないが、よりゆっくりと時間をかける。この処理は、慣性ストッププロセッサが、自由落下の間に大きな速度が蓄積することを認識するが、それが、力を加えるべきところの全ての修正されたデルタXを有することは認識しないことを手助けすることを含んでもよい。これは、Fendstop信号53を修正して、これらの数量を備える。
【0041】
<臨界的減衰プロセッサ56およびピッチ及びロールプロセッサ58>
また、コントローラ50はプロセッサ56を備え、このプロセッサ56は、臨界的に減衰されたいくつかの所定の小部分(fraction)である経路に沿って乗車高(0,0)に戻るための臨界力(又は加速度) Fcritical 57を発生する。臨界的減衰プロセッサ56への入力は、K(スプリング力定数)、スプリング付きマスの質量(MS; mass of sprung mass)、マスの相対速度Vrel、および所望の臨界減衰係数(critically damped coefficient)ξを備える。
【0042】
その力を計算するために、スプリングと線形ダンパーを備えるシステムの運動方程式から始める。
F=−K*X−B*V
両辺をマスで除算すると、
A=(−K/M)*X−(B/M)*V
となる。
【0043】
マス−スプリングシステムについては、K/Mの平方根はω0に等しく、それは共振周波数であり、且つ(B/M)は減衰係数(damping coefficient)ガンマに等しく、それは2*ξ*ωに等しい。
A=−ω0*X−2*ξ*ω0*V
【0044】
従って、臨界減衰力(又は加速度)は、共振周波数とシステムの臨界減衰の小部分(fraction)ξを決定するための二つのコンフィグレーションパラメータと共に乗車高からの相対的位置ずれと相対的速度とを測定することにより計算できる。
【0045】
システムのξを調節することは、減衰が、臨界的減衰に対して調節されることを可能にする。従って、ξは、要望通りに調節され得るユーザ定義の入力である。1のξは、臨界的に減衰されることと等価であり、1/2のξは、臨界的減衰の1/2での性能と等価な性能をもたらす。
【0046】
図4Aは、三つの代表的な軌道(trajectory)を表し、それはξが1、即ちシステムが臨界的に減衰されているときの結果である。x軸は乗車高を表し、このケースではスプリング付きマスは、オーバシュートを生じることなく乗車高に戻っている。このシステムの結果は、サスペンションが乗車品質の点において荒く感じ、そしてゆっくり過ぎて乗車高に戻ることができないということになる。
【0047】
減衰を臨界的に減衰されたいつかの小部分(fraction)に低減することにより、妥当な量のオーバシュートになり、多くとも一つか二つの顕著なサイクルがあり、そして乗客によって感じられる荒さが低減する。臨界的減衰量は、プリセットパラメータまたはユーザ選択可能な入力であってもよい。図4Bは、三つの代表的軌道を表し、それはξが1よりも小さく、即ちシステムが減衰された状態にあるときの結果である。
【0048】
ブレーキング、加速またはコーナリング中にショックアブソーバがピッチ及びロール動作を決定する役割を演じる車両においては、目標の力の計算に対して付加的な修正がなされてもよい。ピッチ及びロールプロセッサ58は、ξに対するこの修正を起こすために提供される。代表的な実施形態において、ピッチ及びロールプロセッサ58に対する入力は、x(ピッチ)およびy(ロール)軸に沿ったスプリング付きマス(Asm)の加速度である。もちろん、スプリング付きマスに関連づけられた加速度計は、xおよびy方向kの加速度も検出するように構成されてもよく、または代わりに、追加のセンサを図1のシステムに設けて、xおよびy次元におけるこれらの追加的な加速度信号を発生してもよい。XおよびY軸加速度の両方を検出することにより、システムは、ブレーキング、加速またはコーナリングが起きているときを決定してもよい。一旦、これらの状態が検出され、そしてその状態の大きさ(magnitude of the magnitude)が計算されると、ピッチ及びロールプロセッサ58は、減衰を増加させることにより車両の4つ全てのコーナーにおけるわずかな減衰量(fractional amount of damping)を修正して臨界的減衰に近づく。このわずかな臨界減衰量は、状態の大きさがプリセットされた又は設定可能なレベルに増加するにつれてほぼ1に増加されてもよい。ピッチ及びロールプロセッサ58の結果は、修正された減衰係数ξmodである。
【0049】
結果として生じる影響は、直進ドライブ中に減衰が少なく、従ってサスペンションを通して車両に伝達される路面振動が少ないことである。しかし、もし側面方向に長期の加速度が発生すれば、ダンパーが“もがく(wallowing)”よりはむしろ“堅く(stiffen out)”なり、そして車両は、オーバシュートなしで迅速に最終的な乗車“姿勢(attitude)”に到達する。
【0050】
<バルブ事前配置プロセッサ(valve prepositioning processor)62>
−1gの長区間は、ハードランディングがまさに発生しようとしている兆しである。−1gのAsmと、ドループストップ(droop stop)での又は近似的にドループストップでのスプリング無しのマスを前提とすれば、代表的な実施形態はバルブ事前配置プロセッサ62を備えてもよく、このバルブ事前配置プロセッサ62は、バルブがハードランディングについて事前に配置されるべきかどうを決定する。このテストは、バルブが適切な瞬間に開かれることを保証するのに必要とされる感度に依存してバンプストップに引き返す速度の使用を含むが、これはバルブ事前配置(valve prepositioning)には必要とされない。
【0051】
バルブ事前配置プロセッサ62は、入力Xrel、Asm、Vrel及びXendを使用し、そしてバルブについての所望の事前配置量に比例するバルブ事前配置信号63を発生する。一つの代表的な実施形態において、大きな相対速度が一層広く開いたバルブを必要とすることを考えると、この処理は途中ずっとバルブを開く信号63を発生する。これは、例えば、システムの絶対速度を推測されたバルブ位置にマッピングするフィードフォワードテーブルを用いて、または人工知能を用いて更に洗練されることができ、その人工知能では、処理が、同様の初期速度でのランディングにおいて生じる結果のバルブ位置と長期間にわたるシステムの振る舞いを学習する。
【0052】
バルブを事前配置することによるこのハードランディング予測は、必要なフルスケールのスルーレート(slew rate)を低減することにより減衰を制御することに使用されるバルブの速度/帯域要件を減らすことに役立つ。
【0053】
<加速ヘッジプロセッサ(acceleration hedge processor)64>
スプリング付き及びスプリング無しのマスは、二つのエンドストップの境界内に共に残らなければならず、平均してそれらのマスのそれぞれに加えられた加速度は等しくなければならない。加速度のこの一致は、相対的位置ずれがエンドストップの一つに近づくほど重要になる。
【0054】
従って、加速ヘッジプロセッサ64は、スプリング無しのマスの加速度をスプリング付きのマスの目標加速度のそれに加えて、スプリング付きのマスの加速度の平均をスプリング無しの実際の加速度のそれに等しくする。スプリング無しのマスの加速度を直接的に目標に加えることは、分離の形式としてはサスペンションを無用にする。なぜなら、それは、そのまさしく目標に加えられている加速度であり、その目標はスプリング付きのマスから分離されるからである。
【0055】
概観上の不一致を避けるために、スプリング無しのマスの加速度は、それをスプリング付きマスの目標のそれに加えるに先だって、二つの方法によって減衰される。
第1に、スプリング無しのマスの加速度は、応答時間を分離とバランスさせるカットオフ周波数に設定されたローパスフィルタを通過する。このカットオフ周波数は、各アプリケーションについて調整されたパラメータであってもよい。当業者であれば、よく知られた構成要素及び/又はアルゴリズムを用いてこのようなフィルタを容易に構成することができることが分かる。一般的な経験則として、カットオフ周波数が大きくなることは、サスペンションの動きが少なくなり、分離が少なくなることを意味する。より低いカットオフ周波数はヘッジ加速度Ahedgeを減らす。従って、加速ヘッジプロセッサを実施する場合には、これらのトレードオフを考慮してもよい。
【0056】
第2に、このフィルタされた値は、加重方法(weighted fashion)で、即ち少し二つのマスの相対位置ずれがエンドストップに接近するように、スプリング付きマスの目標加速度に加えられる。例えば、相対的位置ずれがバンプストップに接近するにつれて平均加速度のこの一致を緩和するために、スプリング無しマスからの正の加速度が目標に完全に加えられる。しかし、もし、相対的位置ずれがドループストップの近くであれば、スプリング付きマスで測定された正の加速度は、スプリング付きマスについての目標加速度に全く加えられない。同様に、この加重方法は、ドループストップの方向に向いているときの負の加速度に対して適用できる。
【0057】
<選択ロジック>
さらに図6を参照すると、上述の処理によって生成された信号53,57,61,63,65を使用して、本発明は、また、ルールのセットに基づき、信号53,57,61,63,65のうちの何れの信号を目標加速度Atargetに使用すべきかを決定するための選択ロジックプロセッサ66を備える。立ち代って、Atargetが、図7,8,9を参照して説明するように、閉ループフィードバックシステムにおいてバルブの配置のための制御信号として使用されてもよい。
【0058】
図5を参照すると、本発明のコントローラの選択ロジックプロセッサ66によって実行されるルールを表す代表的なフローチャート100が表されている。処理は、マス/スプリングシステムが圧縮(第3または第4象限)しているかどうかを判断することにより開始する(ステップ102)。
【0059】
一般的な問題として、システム動作が第3または第4象限にあるとき、選択ロジックは、以下のように要約される。もし、わずかな臨界的に減衰された経路に沿って乗車高に戻るために必要な力がFcomfortよりも少なく且つその力を加えることがエンドストップをヒットする結果にならなければ、Fcomfortを加える。そのほか、その臨界的に減衰された力がFcomfortよりも大きく且つFcomfortを加えることがエンドストップをヒットする結果にならなければ、Fcomfortを加える。そのほか、エンドストップをヒットすることを防止するために必要な最小限の一定の力を加える。
【0060】
図5は、減衰された力(Fcritical)が快適性の力Fcomfortよりも小さく且つエンドストップ力Fendstopよりも大きいのかの最初の決定(ステップ104)によるこの一般的なフローを表す。もしyesであれば、Fcriticalが使用され(ステップ108)、そして加速度ヘッジ信号Ahedgeにより修正される。これは、これらの状態(condition)に対する目標加速度Atargetであり、そしてAtargetは、バルブ118を調節するためにフィードバックループ116に入力され、これによりシステムにおけるエネルギー調節する。
【0061】
もしFcriticalがFcomfortよりも大きければ(ステップ104)、処理は、FendstopがFcomfortよりも小さいかどうかを決定する(ステップ106)。もしyesであれば、選択ロジックはFcomfortを適用し、Ahedgeによって修正する。もしnoであれば、選択ロジックはFendstopを適用し(ステップ112)、処理は上述のように継続する。
上述したように、加速ヘッジは目標加速度に加算されてもよく、これにより新たな目標加速度を生成する。
【0062】
数学的には、これは次のように表される。
もし(Aunsprung>0)であれば、
Atarget(新)=Atarget(旧)+Wbump(X)*Filter(Aunsprung)
そうでなければ、
Atarget(新)=Atarget(旧)+Wdroop(X)*Filter(Aunsprung)
ここで、
Atarget(旧)は、先に述べた方法の何れかによって計算された目標加速度である。
Aunsprungは、スプリング無しのマスで測定された加速度である。
Filter( )は、入力値の選択されたローパスフィルタリングを提供する関数である。
Xは、相対的位置ずれである。
【0063】
WbumpおよびWdroopは、ゼロではなく、各関数についてXがバンプストップまたはドループストップに近づくにつれて1に増加する重み関数である。これらの重み関数の形状は、特定のアプリケーションに対して選択でき、または多様多種のアプリケーション及び/又は動作環境に対して一般化できる。例えば、線形及び/又は対数の、及び/又は指数の重みが適用でき、一方のエンドストップでゼロから開始し、そして他方のエンドストップで1に上昇する。
【0064】
もし、マス/スプリングシステムが圧縮のステップ102でなければ(即ち、第1および第2象限)、選択処理は以下のように要約される。もし、スプリング付きマスの絶対的加速度0G´sに近いか大きければ、わずかな臨界的に減衰された経路に沿って乗車高に戻るために必要な力を印加する。そのほか、もしスプリング付きマスの加速度が−1G´sに近ければ、および速度および位置が、エンドストップを防止するために必要とされる一定の力が閾値に到達しそれを超えるようなものであれば、エンドストップ力を適用し、そうでなければ(エンドストップ力計算に対し)、スプリング付きマスが空中にあり且ついまスプリング無しマスが抑制されない方法で頭打ちの(topped out)のエンドストップに向かっていると仮定する。できる限り多くのドループ行程(droop travel)が、できる限り多くのバンプ行程(bump travel)を用いて結果として生じる“ランディング”に備えることを可能にする。
【0065】
この処理は、スプリング付きマスが頭打ちの状態に近いかどうかの最初の決定により図5に表され、Vrelは近似的に0であり、そしてシステムは−1G(自由落下)で或る所定時間を費やす。もしyesであれば、ロジックは、システムがシステムに発生するインパルス加速度を予測するように、バルブをバイアスするためのバルブ事前配置信号を適用する(ステップ132)。このケースでは、制御ループは、力変数をフィードフォワードするように設定され、それはバルブ118に出力される。もし、ステップ120の結果が否定的であれば、選択ロジックは、Asprungが0G´sに近似しているか大きいかを決定する。もしyesであれば、ロジックは、エンドストップ力が減衰された力よりも小さいかどうかを決定し、そしてもしそうであれば、ロジックは減衰された力を適用する(ステップ126)。もしステップ122の結果が否定的であれば、ロジックは、Asmが−1Gに近似し且つFendstop>Fthresholdであるかを決定する(ステップ124)。もしyesであれば、ロジックは、Fendstopを適用し(ステップ128)、処理を続ける。もしそうでなければ、ロジックは、バルブ事前配置信号を適用して近似的に開位置にバイアスし、システムが許容するくらいの速さでマスが移動して離れることを可能にし(即ち、システムの制約内で自由に移動して離れる)(ステップ130)、そしてステップ134で処理が継続する。
【0066】
本明細書において“近似的に”なる用語の使用は、広く解釈されるべきであり、例えばシステム測定またはシステム構成要素のエンジニアリング許容値内の値、または許容範囲内のエラーを発生する選択された許容度内の値を意味する。
【0067】
<力−速度曲線>
図10Aは、システムが本明細書で述べた原則に従う方法で制御されるときの力−速度空間(F−V)における代表的なスプリング/マスシステムの応答を表す。y軸は力(N)の自由単位であり、x軸は速度(m/s)の自由単位である。そして、x軸の上側ではスプリング/マスシステムが圧縮し、そしてx軸の下側ではシステムが拡張しているので、システム応答はx軸に関して概ね対称性を有する。
【0068】
この曲線は、システムの動作のゾーンを表す。第1のソーン202は、目標加速度としてのFcriticalの適用である。この図には、Fcomfort 204A,204B,204Cについて三つの代表的な値が表されている。一般な問題として、FcomfortはFcriticalの適用を平坦化する線形関数である。Fcomfortのより低い値、マスの速度として適用される力が増加する。より大きな速度では、Fendstopが適用される(ステップ206)。本発明のコントローラは、それらの力を制御するユーザ定義の入力および変数に基づき、動作ゾーンのそれぞれが独立した傾きと適用位置(application positions)を有することを可能にする。従って、図10Aを3次元(そこでは、位置が紙面に入ったり出たりする)に概念化すると、本発明は、3次元空間の全体にわたって各ゾーンが動作することを可能とし、これにより、多種多様の動作状態にわたって所望の動作ゾーンが選択されることを可能としている。
【0069】
図10Bは、システムが本明細書で述べた原則に従った方法で制御される場合の力−速度空間(F−V)における他の代表的なスプリング/マスシステム応答を表す。y軸は力(N)の自由単位であり、x軸は速度(m/s)の自由単位である。x軸の上側ではスプリング/マスシステムが圧縮しており、そしてx軸の下側ではシステムが拡張しているので、システム応答はx軸に関して対称性を有している。
【0070】
第1ゾーン202は、目標加速度としてのFcriticalの適用である。速度が増加するにつれて、線形力Fcomfortが適用される(ステップ204)。この図には、Fcritical 202A,202B,202Cについての三つの代表的な値が表されている。一般的な問題として、Fcriticalの傾きは臨界的に減衰された係数によって調節される。Fcriticalの傾きが減少するにつれ、より小さな減衰力が適用され、サスペンションの剛性(stiffness)が減少する。より大きな速度では、Fendstopが適用される(ステップ206)。本発明のコントローラは、それらの力を制御するユーザ変数の(又はプリセットの)入力または変数に基づき、図10A、10Bに表された動作ゾーンのそれぞれが独立した傾き(slope)及び適用位置(application popsition)を有することを可能にする。
【0071】
<代表的な制御ループ>
図7−9は、本発明による代表的なフィードバック制御ループを表す。当業者であれば、図7−9に表された制御ループは一例として提供されるものであるに過ぎず、そしてこのような制御ループは本発明を逸脱することなく種々の方法で構築されることが分かる。
【0072】
図7は、外側の制御ループが目標加速度に基づき提供される制御ループ300を表す。目標加速度は、選択ロジック66(上述)から導出される。目標加速度(Aactualにより修正される)は、バルブコントローラ302のための制御信号として使用され、それは、順にバルブ18を設定し、そしてそれにより、システムにおけるエネルギーを調節する。フィードバックは、実際の加速度(Aactual)を示すシステムによって提供される。
【0073】
加速度を測定するよりは、目標加速度が所望の経路に沿って加速されるマスと乗算されることを除いて、目標力が上述の方法とほとんど同じルールセットに基づくことができるという仮定の下に、二つのマス間に働く力が測定され且つ制御される。このタイプの制御ループ400は、図8に示され、ここで、選択ロジックが目標力(Ftarget)を導出し、そして、バルブコントローラ402がこの力制御信号に応答する。
【0074】
加速度は測定するのが困難であり(二つの誘導体を必要とし)、且つ目標速度は次の時間のステップについて容易に計算できるので、速度に基づく制御ループが着想され、そして内側の加速ループよりも実行可能である。この制御ループ500は図9に表され、ここでは、バルブコントローラ502は目標速度Vtarget制御信号に応答する。
【0075】
力のループはバルブによってのみ帯域が制限されたタイトなループを提供するが、追加的なセンサ(即ち、力センサ24)を必要とする。加速ループは、必要なセンサは一つだけ少ないが、制御システムの帯域は、マスのシステム力学と加速度を計算する能力により制限される。速度ループは、同様に必要なセンサは一つだけ少なく、且つ速度は加速度よりもフィードバック計算がより速いが、マスの応答の帯域制限に悩まされる。従って、制御ループの実施は、これらを考慮にいれ、そしてこのような帯域制限の要件に基づいて選択されてもよい。
【0076】
また、コントローラ50はその入力がシステムの入力であるフィードバック設計であり、そしてそれゆえに、目標加速度、力、および速度は、システムからの入力が変化するにつれて変化していることが理解されるべきである。
【0077】
従って、乗車品質、ハンドリング、およびエンドストップ性能の性能問題を同時に解決するセミアクティブショックアブソーバを設計するための数学、物理および方法が明らかにされた。次では、本発明のいくつかの特徴の要約を述べるが、本発明を限定するものではない。
【0078】
本発明は、位置ずれ/速度平面における位置に基づき軌道を選択するステップを備える。使用する本方法の選択は、それが乗車品質(減衰)、ハンドリング(車両力学)、およびエンドストップ防止の対立要件を満たし得る最小の力を選択するようなことである。
【0079】
わずかに臨界減衰されるように調整された経路に沿って乗車高に戻ることを可能とし、ピーク力(加速度)を減少させ、且つ位置ずれ/速度平面における現在の位置に応じてエンドストップをヒットすることを防止するように、選択される軌道を設計する。
【0080】
エンドストップ力を計算する場合、二つのマスの絶対速度を考慮に入れて、相対的位置ずれ及び速度によって計算されるよりも大きな必要な力を早期に予測し、バンプストップにヒットすることを防止する。
【0081】
目標力、加速度、または速度に関するループを閉じて、力、加速度、または速度におけるフィードバックを使用してF−V平面における所望の軌道を提供する。
【0082】
スプリング付きマスの加速度を読み取り且つ空中にあるのか又は深い穴を横切っているのかを決定することにより上述のルールから決定された所望の軌道を修正して、より速く分離することによりハードランディングを二つのマスが予測することを可能とするか、あるいはドループストップにアプローチするときの高い力を防止するかどうかを決定する。
【0083】
加速度ヘッジを加えて二つのマスの平均加速度が一致させるが、提供される分離の値を減少させるために、多すぎるスプリング無しマスの加速度を合わせない。
【0084】
ハードランディングを制御するために必要な予測されたバルブ位置に近い開状態にバルブを事前配置することによりハードランディングを予測する。
【0085】
コーナリング、ブレーキング、または加速の状態のひとつが予め設定された値に近づくことによる加速のように、臨界減衰の近くにまで小部分の減衰(fractional damping)を増加させることにより、コーナリング、ブレーキング、または加速における良好な乗車ハンドリングを提供する。
【0086】
当業者であれば、本発明について多くの変形がなされ得ることが分かる。全てのこのような変形は、本発明の要旨および思想の範囲内であり、本発明は請求項によってのみ制限される。
【符号の説明】
【0087】
50:コントローラ
52:慣性エンドストッププロセッサ
54:非慣性エンドストッププロセッサ
56:臨界的減衰プロセッサ
58:ピッチ&コントロールプロセッサ
60:象限決定プロセッサ
62:バルブ事前配置プロセッサ
64:加速度ヘッジプロセッサ
66:選択ロジックプロセッサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバシステムにおけるエネルギーを調節するための制御可能なバルブを有するスプリングにより互いに結合された二つのマスを備えた上記ショックアブソーバシステムを制御するための方法であって、
前記二つのマスの相対位置および相対速度に基づき慣性エンドストップ信号を発生するステップと、
互いに対する前記マスの絶対的位置ずれ及び絶対速度を示す信号で前記慣性エンドストップ信号を修正するステップと、
前記マスの前記相対速度に基づき前記慣性エンドストップ信号が前記制御可能なバルブに対する目標制御信号として指定されるべきかどうかを決定するステップと、
を備え、
前記慣性エンドストップ信号は、前記マスの一つが近似的にゼロ速度で最大または最小行程の位置に到達するのに必要な最小加速度に比例する信号からなる方法。
【請求項2】
ショックアブソーバシステムにおけるエネルギーを調整するための制御可能なバルブを有するスプリングによって互いに結合された二つのマスを備えた上記ショックアブソーバシステムにおける目標制御信号を発生するための方法であって、
スプリング力係数に基づき、減衰された信号を発生するステップと、
臨界的減衰係数を定義するステップと、
前記減衰された信号に前記臨界的減衰係数を乗算するステップと、
ピッチ軸方向、ロール軸方向、またはピッチ及びロール軸方向における前記二つのマスのうちの少なくとも一つの加速度を測定するステップと、
ピッチ軸方向、ロール軸方向、またはピッチ及びロール軸方向における前記二つのマスのうちの少なくとも一つの前記測定された加速度に基づき前記臨界的減衰係数を修正するステップと、
前記減衰された信号が前記制御可能なバルブに対する目標制御信号として指定されるべきかを決定するステップと、
を備え、
前記減衰された信号は、ヨー軸方向において前記マスの少なくとも一つの減衰された軌道に比例する信号からなる方法。
【請求項3】
ショックアブソーバシステムにおけるエネルギーを調節するための制御可能なバルブを有するスプリングによって互いに結合された二つのマスを備えた前記ショックアブソーバシステムにおける加速度ヘッジ制御信号でバルブ制御信号を修正するための方法であって、
前記マスの相対速度に基づき複数のバルブ制御信号を発生するステップと、
前記マスのうちの第1マスの加速度または力と前記マスのうちの第2マスの目標加速度または力との和に比例する加速度ヘッジ信号を発生して、前記第2マスの平均加速度または力を近似的に前記第1マスの実際の加速度または力に等しくするステップと、
前記加速度ヘッジ信号を前記バルブ制御信号のうちの選択されたものに加えるステップと、
を備えた方法。
【請求項1】
ショックアブソーバシステムにおけるエネルギーを調節するための制御可能なバルブを有するスプリングにより互いに結合された二つのマスを備えた上記ショックアブソーバシステムを制御するための方法であって、
前記二つのマスの相対位置および相対速度に基づき慣性エンドストップ信号を発生するステップと、
互いに対する前記マスの絶対的位置ずれ及び絶対速度を示す信号で前記慣性エンドストップ信号を修正するステップと、
前記マスの前記相対速度に基づき前記慣性エンドストップ信号が前記制御可能なバルブに対する目標制御信号として指定されるべきかどうかを決定するステップと、
を備え、
前記慣性エンドストップ信号は、前記マスの一つが近似的にゼロ速度で最大または最小行程の位置に到達するのに必要な最小加速度に比例する信号からなる方法。
【請求項2】
ショックアブソーバシステムにおけるエネルギーを調整するための制御可能なバルブを有するスプリングによって互いに結合された二つのマスを備えた上記ショックアブソーバシステムにおける目標制御信号を発生するための方法であって、
スプリング力係数に基づき、減衰された信号を発生するステップと、
臨界的減衰係数を定義するステップと、
前記減衰された信号に前記臨界的減衰係数を乗算するステップと、
ピッチ軸方向、ロール軸方向、またはピッチ及びロール軸方向における前記二つのマスのうちの少なくとも一つの加速度を測定するステップと、
ピッチ軸方向、ロール軸方向、またはピッチ及びロール軸方向における前記二つのマスのうちの少なくとも一つの前記測定された加速度に基づき前記臨界的減衰係数を修正するステップと、
前記減衰された信号が前記制御可能なバルブに対する目標制御信号として指定されるべきかを決定するステップと、
を備え、
前記減衰された信号は、ヨー軸方向において前記マスの少なくとも一つの減衰された軌道に比例する信号からなる方法。
【請求項3】
ショックアブソーバシステムにおけるエネルギーを調節するための制御可能なバルブを有するスプリングによって互いに結合された二つのマスを備えた前記ショックアブソーバシステムにおける加速度ヘッジ制御信号でバルブ制御信号を修正するための方法であって、
前記マスの相対速度に基づき複数のバルブ制御信号を発生するステップと、
前記マスのうちの第1マスの加速度または力と前記マスのうちの第2マスの目標加速度または力との和に比例する加速度ヘッジ信号を発生して、前記第2マスの平均加速度または力を近似的に前記第1マスの実際の加速度または力に等しくするステップと、
前記加速度ヘッジ信号を前記バルブ制御信号のうちの選択されたものに加えるステップと、
を備えた方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【公開番号】特開2011−122725(P2011−122725A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5939(P2011−5939)
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【分割の表示】特願2003−568270(P2003−568270)の分割
【原出願日】平成15年1月13日(2003.1.13)
【出願人】(510298296)フォース・フロア・アソシエイツ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月14日(2011.1.14)
【分割の表示】特願2003−568270(P2003−568270)の分割
【原出願日】平成15年1月13日(2003.1.13)
【出願人】(510298296)フォース・フロア・アソシエイツ・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】
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