説明

セルロースエステルフィルム、セルロースエステルフィルムの製造方法、偏光板及び表示装置

【課題】 本発明の目的は、環境負荷の高いハロゲン系溶剤を用いない溶融流延法によるセルロースエステルフィルムの新規な製造法を提供することにより、物理特性である平面性、カール性、寸法安定性、及び光学特性であるリタデーション均一性の改善されたセルロースエステルフィルムを提供し、さらにはこのようなセルロースエステルフィルムを偏光板や液晶ディスプレイに用いることで、高品質な表示装置を提供することにある。
【解決手段】 セルロースエステルと可塑剤を含む組成物と該セルロースエステルと非接着性の熱可塑性樹脂とを両者とも溶融状態で層状に組合わせ、該セルロースエステルと可塑剤を含有する層(A)の両側に同一種でも異なっていてもよい該熱可塑性樹脂を含有する層(B)を配し、該層(A)、(B)をフラットダイから3層以上積層された状態でフィルム状に押出し、冷却することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースエステルフィルム、セルロースエステルフィルムの製造方法、偏光板及び表示装置の関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースエステルフィルムは、その高い透明性・低複屈折性・偏光子との易接着性などから、写真用ネガフィルムの支持体や、液晶ディスプレイに用いられる偏光子を保護するフィルムとして、偏光板などに多く用いられてきた。
【0003】
液晶ディスプレイは、その奥行きの薄さ、軽さから近年大幅に生産量が増大しており、需要が高くなっている。また液晶ディスプレイを用いたテレビは、薄く軽いという特徴を有し、ブラウン菅を用いたテレビでは達成されなかったような大型のテレビが生産されるようになっており、それに伴って液晶ディスプレイを構成する偏光子、偏光子保護フィルムも需要が増大してきている。
【0004】
これらのセルロースエステルフィルムは、これまで、専ら溶液流延法によって製造されてきた。溶液流延法とは、セルロースエステルを溶媒に溶解した溶液を流延してフィルム形状を得た後、溶媒を蒸発・乾燥させてフィルムを得るといった製膜方法である。溶液流延法で製膜したフィルムは平面性が高いため、これを用いてムラのない高画質な液晶ディスプレイを得ることが出来る。
【0005】
しかし溶液流延法は多量の有機溶媒を必要とし、環境負荷が大きいことも課題となっていた。セルロースエステルフィルムは、その溶解特性から、環境負荷の大きいハロゲン系溶媒を用いて製膜されているため、特に溶剤使用量の削減が求められており、溶液流延製膜によってセルロースエステルフィルムを増産することは困難となってきている。
【0006】
そこで近年銀塩写真用(例えば、特許文献1参照。)或いは偏光子保護フィルム用(例えば、特許文献2参照。)として、セルロースエステルを溶融製膜する試みが行われているが、セルロースエステルは溶融時の粘度が非常に高い高分子であり、かつガラス転移温度も高い高分子であるため、セルロースエステルを溶融してダイスから押出し、冷却ドラムまたは冷却ベルト上にキャスティングしてもレベリングし難く、押出し後に短時間で固化するため、得られるフィルムの物理特性である平面性やカール性、更には寸法安定性、光学特性であるリタデーション均一性、特にフィルム幅手方向でのリタデーション均一性が溶液流延フィルムよりも低いといった課題を有していることが判明した。
【0007】
また、実際の製造段階においては、生産工程における、引取りロールの汚れ防止、工程汚染防止、及び静電気による巻き取りロールのゴミ付着防止等も求められている。
【特許文献1】特表平6−501040号公報
【特許文献2】特開2000−352620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明は上記課題に鑑み鋭意検討されたものであり、その目的は、環境負荷の高いハロゲン系溶剤を用いない溶融流延法によるセルロースエステルフィルムの新規な製造法を提供することにより、物理特性である平面性、カール性、寸法安定性、及び光学特性であるリタデーション均一性の改善されたセルロースエステルフィルムを提供し、さらにはこのようなセルロースエステルフィルムを偏光板や液晶ディスプレイに用いることで、高品質な表示装置を提供することにある。
【0009】
更に、生産工程において、引取りロール汚れ防止、工程汚染防止、及び帯電防止加工による巻き取りロールのゴミ付着防止を同時に達成出来るセルロースエステルフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者はこれらの問題点を改善しようとして鋭意検討した結果、添加された可塑剤の一部が溶融製膜時の加熱によってフィルム内側から揮発してしまい、その結果フィルム表面若しくは内部のフィルム密度や可塑剤の分布が不均一になり、平面性、カール性、寸法安定性、リタデーション均一性が劣化することを突き止めた。その為、溶融製膜時に可塑剤の一部を揮発させない方法として、セルロースエステルと可塑剤を含む層を両側から保護層によって挟持した積層フィルム構成の製膜方法を検討するに至った。
【0011】
積層フィルムについては、溶融製膜時のフィルム表面を環境変化や空気酸化から保護する目的で、二酸化セルロース樹脂フィルムを得る時に、共押出しインフレーション成形法により熱可塑性樹脂保護フィルムを二酸化セルロース樹脂フィルムの外側に配置して三層フィルムを製膜する方法(特開平7−40433号公報)や、高分子樹脂A層の少なくとも片面に、該A樹脂層とは剥離可能なポリマーB層を溶融押出成形法にて積層体を形成し、次いでポリマーB層を剥離した後表面処理する方法(特開2002−103410号公報)等が開示されているが、いずれも可塑剤の揮発防止に注目した本発明に係るセルロースエステルフィルムの製造法を示唆するものではなく、物理特性である平面性、カール性、寸法安定性、及び光学特性であるリタデーション均一性の改善に関しては全く触れられていない。
【0012】
従って、本発明の上記課題は以下の構成により達成される。
【0013】
(請求項1)
セルロースエステルと可塑剤を含む組成物と、該セルロースエステルと非接着性の熱可塑性樹脂とを両者とも溶融状態で層状に組合わせ、該セルロースエステルと可塑剤を含有する層(A)の両側に、同一種でも異なっていてもよい該熱可塑性樹脂を含有する層(B)を配し、該層(A)、(B)をフラットダイから3層以上積層された状態でフィルム状に押出し、冷却することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0014】
(請求項2)
前記可塑剤が多価アルコールエステル系可塑剤であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0015】
(請求項3)
前記セルロースエステルが、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートから選ばれる1種、または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0016】
(請求項4)
前記フラットダイがマルチマニフォールドダイであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0017】
(請求項5)
前記熱可塑性樹脂を含有する層(B)に含まれる樹脂が同一種の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0018】
(請求項6)
前記熱可塑性樹脂を含有する層(B)に含まれる樹脂がポリオレフィン系樹脂の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0019】
(請求項7)
前記熱可塑性樹脂を含有する層(B)が帯電防止性を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0020】
(請求項8)
前記積層されたセルロースエステルフィルムの表裏の表面比抵抗値が1×1014Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0021】
(請求項9)
前記セルロースエステルフィルムが少なくとも一方向へ延伸されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0022】
(請求項10)
前記熱可塑性樹脂を含有する層(B)を剥離してセルロースエステルフィルムだけを巻き取ることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0023】
(請求項11)
前記セルロースエステルフィルムから熱可塑性樹脂を含有する層(B)を剥離せずに巻き取ることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【0024】
(請求項12)
請求項1〜11のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【0025】
(請求項13)
少なくとも一方の面に請求項12に記載のセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
【0026】
(請求項14)
請求項12に記載のセルロースエステルフィルムまたは請求項13に記載の偏光板を用いたことを特徴とする表示装置。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、環境負荷の高いハロゲン系溶剤を用いない溶融流延法によるセルロースエステルフィルムの新規な製造法を提供出来、物理特性である平面性、カール性、寸法安定性、及び光学特性であるリタデーション均一性の改善されたセルロースエステルフィルムを提供出来、さらにはこのようなセルロースエステルフィルムを偏光板や液晶ディスプレイに用いることで、高品質な表示装置を提供することが出来る。
【0028】
更に、生産工程において、引取りロール汚れ防止、工程汚染防止、及び帯電防止加工による巻き取りロールのゴミ付着防止を同時に達成出来るセルロースエステルフィルムの製造方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
本発明は、溶融製膜されたセルロースエステルであっても、十分な平面性、カール性を有し、かつ寸法安定性や光学特性であるリタデーション均一性の改善されたセルロースエステルフィルムを得るものである。
【0031】
このようなセルロースエステルフィルムを用いることで、高品質の偏光板用保護フィルム、反射防止フィルム、位相差フィルム等の光学フィルムを得ることが出来、さらには表示品質の高い液晶表示装置を得ることが出来る。
【0032】
本発明者らは鋭意研究の結果、熱溶融法、即ち、環境負荷の大きいハロゲン系溶剤を使用しない溶融流延法にて製膜する方法において、光学特性に優れると共に平面性、カール性、寸法安定性が高いセルロースエステルフィルムを得るには、セルロースエステルと可塑剤を含む組成物と、該セルロースエステルと非接着性の熱可塑性樹脂とを両者とも溶融状態で層状に組合わせ、該セルロースエステルと可塑剤を含有する層(A)の両側に、同一種でも異なっていてもよい該熱可塑性樹脂を含有する層(B)を配し、該層(A)、(B)をフラットダイから3層以上積層された状態でフィルム状に押出し、冷却することによって、可塑剤等のフィルム組成物の揮発、偏在を防止出来、本発明の目的を達成出来ることを見出したものである。
【0033】
以下、本発明を各要素毎に詳細に説明する。
【0034】
(セルロースエステル)
最初に、本発明に係るセルロースエステルと可塑剤を含有する層(A)に用いられるセルロースエステルについて、詳述する。
【0035】
本発明のセルロースエステルフィルムは、溶融流延法により製造される。溶融流延法はフィルム製造時の有機溶媒使用量を、大幅に少なくすることが出来るため、従来の有機溶媒を多量に使用する溶液流延法に比較して、環境適性が大幅に向上したフィルムが得られる。
【0036】
本発明における溶融流延とは、実質的に溶媒を用いずにセルロースエステルを流動性を示す温度まで加熱溶融しこれを用いて製膜する方法であり、例えば流動性のセルロースエステルをダイスから押し出して製膜する方法である。なお溶融セルロースエステルを調製する過程の一部で溶媒を使用してもよいが、フィルム状に成形を行う溶融製膜プロセスにおいては実質的に溶媒を用いずに成形加工する。
【0037】
光学フィルムを構成するセルロースエステルとしては、溶融製膜可能なセルロースエステルであれば特に限定はされず、例えば芳香族カルボン酸エステルなども用いられるが、光学特性等の得られるフィルムの特性を鑑みると、セルロースの低級脂肪酸エステルを使用するのが好ましい。本発明においてセルロースの低級脂肪酸エステルにおける低級脂肪酸とは炭素原子数が5以下の脂肪酸を意味し、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースピバレート等がセルロースの低級脂肪酸エステルの好ましいものとして挙げられる。炭素原子数が6以上の脂肪酸で置換されたセルロースエステルでは、溶融製膜性は良好であるものの、得られるセルロースエステルフィルムの力学特性が低く、実質的に光学フィルムとして用いることが難しいためである。力学特性と溶融製膜性の双方を両立させるために、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレート等のように混合脂肪酸エステルを用いてもよい。以上から、本発明ではセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが好ましく使用される。
【0038】
なお溶液流延製膜で一般に用いられているセルロースエステルであるトリアセチルセルロースについては、溶融温度よりも分解温度の方が高いセルロースエステルであるため、溶融製膜には用いることは難しい。
【0039】
したがって、最も好ましいセルロースの低級脂肪酸エステルは炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、酢酸による置換度、即ちアセチル基の置換度をXとし、炭素数3〜5の有機酸による置換度、即ち、特に炭素数3〜5の脂肪族有機酸から導かれるアシル基、例えば、プロピオニル基またはブチリル基等のアシル基による置換度をYとした時、下記式(2)、(3)を満たすセルロースエステルが好ましい。
【0040】
式(2) 2.5≦X+Y≦2.9
式(3) 0.1≦Y≦2.0
この中でも、特にセルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられ、中でも1.5≦X≦2.5であり、0.5≦Y≦1.0であるセルロースエステルを用いることが好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらは公知の方法で合成することが出来る。
【0041】
本発明で用いられるセルロースエステルは、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.0〜5.5のものが用いられ、特に好ましくは1.4〜5.0であり、更に好ましくは2.0〜3.0である。また、Mwは10万〜50万、中でも20万〜40万のものが好ましく用いられる。
【0042】
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用いて公知の方法で測定することが出来る。これを用いて数平均分子量、重量平均分子量を算出する。
【0043】
測定条件は以下の通りである。
溶媒: テトラヒドロフラン
カラム: Shodex K806,K805,K803(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔にすることが好ましい。
【0044】
本発明で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、或いは単独で使用することが出来る。
【0045】
例えば、綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることが出来る。
【0046】
セルロースエステルは、例えば、原料セルロースの水酸基を無水酢酸、無水プロピオン酸及び/または無水酪酸を用いて常法によりアセチル基、プロピオニル基及び/またはブチル基を上記の範囲内に置換することで得られる。このようなセルロースエステルの合成方法は、特に限定はないが、例えば、特開平10−45804号或いは特表平6−501040号に記載の方法を参考にして合成することが出来る。
【0047】
アセチル基、プロピオニル基、ブチル基等のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に準じて測定することが出来る。
【0048】
また、工業的にはセルロースエステルは硫酸を触媒として合成されているが、この硫酸は完全には除去されておらず、残留する硫酸が溶融製膜時に各種の分解反応を引き起こし、得られるセルロースエステルフィルムの品質に影響を与えるため、本発明に用いられるセルロースエステル中の残留硫酸含有量は、硫黄元素換算で0.1〜40ppmの範囲である。これらは塩の形で含有していると考えられる。残留硫酸含有量が40ppmを超えると熱溶融時にセルロースポリマーの熱分解を加速し、得られるフィルムの強度が低下したり、着色したりするため好ましくない。また、熱延伸時や熱延伸後でのスリッティングの際に破断しやすくなるため好ましくない。少ない方が好ましいが、0.1未満とするにはセルロース樹脂の洗浄工程の負担が大きくなりすぎるため好ましくないだけでなく、逆に破断しやすくなることがあり好ましくない。これは洗浄回数が増えることが樹脂に影響を与えているのかもしれないがよく分かっていない。さらに0.1〜30ppmの範囲が好ましい。残留硫酸含有量は、同様にASTM−D817−96により測定することが出来る。
【0049】
合成したセルロースエステルの洗浄を、溶液流延法に用いられる場合に比べてさらに十分に行うことによって、残留硫酸含有量を上記の範囲とすることが出来、溶融流延法によってフィルムを製造する際に、リップ部への付着が軽減され、平面性に優れるフィルムが得られ、寸法変化、機械強度、透明性、耐透湿性、後述するRt値、Ro値が良好なフィルムを得ることが出来る。
【0050】
また、セルロース樹脂の極限粘度は、1.5〜1.75g/cm3が好ましく、さらに1.53〜1.63の範囲が好ましい。
【0051】
また、本発明で用いられるセルロースエステルはフィルムにした時の輝点異物が少ないものであることが好ましい。輝点異物とは、2枚の偏光板を直交に配置し(クロスニコル)、この間にセルロースエステルフィルムを配置して、一方の面から光源の光を当てて、もう一方の面からセルロースエステルフィルムを観察した時に、光源の光が漏れて見える点のことである。このとき評価に用いる偏光板は輝点異物がない保護フィルムで構成されたものであることが望ましく、偏光子の保護にガラス板を使用したものが好ましく用いられる。輝点異物はセルロースエステルに含まれる未酢化若しくは低酢化度のセルロースがその原因の1つと考えられ、輝点異物の少ないセルロースエステルを用いる(置換度の分散の小さいセルロースエステルを用いる)ことと、溶融したセルロースエステルを濾過すること、或いはセルロースエステルの合成後期の過程や沈殿物を得る過程の少なくともいずれかにおいて、一度溶液状態として同様に濾過工程を経由して輝点異物を除去することも出来る。溶融樹脂は粘度が高いため、後者の方法のほうが効率がよい。
【0052】
フィルム膜厚が薄くなるほど単位面積当たりの輝点異物数は少なくなり、フィルムに含まれるセルロースエステルの含有量が少なくなるほど輝点異物は少なくなる傾向があるが、輝点異物は、輝点の直径0.01mm以上が200個/cm2以下であることが好ましく、更に100個/cm2以下であることが好ましく、50個/cm2以下であることが好ましく、30個/cm2以下であることが好ましく、10個/cm2以下であることが好ましいが、皆無であることが最も好ましい。また、0.005〜0.01mm以下の輝点についても200個/cm2以下であることが好ましく、更に100個/cm2以下であることが好ましく、50個/cm2以下であることが好ましく、30個/cm2以下であることが好ましく、10個/cm2以下であることが好ましいが、皆無であることが最も好ましい。
【0053】
輝点異物を溶融濾過によって除去する場合、セルロースエステルを単独で溶融させたものを濾過するよりも可塑剤、劣化防止剤、酸化防止剤等を添加混合した組成物を濾過することが輝点異物の除去効率が高く好ましい。もちろん、セルロースエステルの合成の際に溶媒に溶解させて濾過により低減させてもよい。紫外線吸収剤、その他の添加物も適宜混合したものを濾過することが出来る。濾過はセルロースエステルを含む溶融物の粘度が10000PaS以下で濾過されることが好ましく、更に好ましくは5000PaS以下が好ましく、1000PaS以下であることが更に好ましく、500PaS以下であることが更に好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などの弗素樹脂等の従来公知のものが好ましく用いられるが、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。絶対濾過精度としては50μm以下のものが好ましく用いられ、30μm以下のものが更に好ましく、10μm以下のものが更に好ましく、5μm以下のものが更に好ましく用いられる。これらは適宜組合わせて使用することも出来る。濾材はサーフェースタイプでもデプスタイプでも用いることが出来るが、デプスタイプの方が比較的目詰まりしにくく好ましく用いられる。
【0054】
別の実施態様では、原料のセルロースエステルは少なくとも一度溶媒に溶解させた後、溶媒を乾燥させたセルロースエステルを用いても良い。その際には可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、酸化防止剤及びマット剤の少なくとも1つ以上と共に溶媒に溶解させた後、乾燥させたセルロースエステルを用いる。溶媒としては、メチレンクロライド、酢酸メチル、ジオキソラン等の溶液流延法で用いられる良溶媒を用いることが出来、同時にメタノール、エタノール、ブタノール等の貧溶媒を用いてもよい。溶解の過程で−20℃以下に冷却したり、80℃以上に加熱したりしても良い。このようなセルロースエステルを用いると、溶融状態にした時の各添加物を均一にしやすく、光学特性を均一に出来ることがある。
【0055】
本発明の光学フィルムはセルロースエステル以外の高分子成分を適宜混合したものでもよい。混合される高分子成分はセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにした時の透過率が80%以上、更に好ましくは90%以上、更に好ましくは92%以上であることが好ましい。
【0056】
(可塑剤)
本発明のセルロースエステルフィルムに可塑剤として知られる化合物を添加することは、機械的性質向上、柔軟性を付与、耐吸水性付与、水分透過率の低減等のフィルムの改質の観点において必須である。また本発明で行う溶融流延法において可塑剤の添加は、用いるセルロースエステル単独のガラス転移温度よりも、可塑剤の添加によりフィルム構成材料の溶融温度を低下させる目的、または同じ加熱温度においてセルロースエステルよりも可塑剤を含むフィルム構成材料の粘度が低下出来る目的を含んでいる。
【0057】
ここで、本発明において、フィルム構成材料の溶融温度とは、該材料が加熱され流動性が発現された状態において、材料が加熱された温度を意味する。
【0058】
セルロースエステル単独では、ガラス転移温度よりも低いとフィルム化するための流動性は発現されない。しかしながらセルロースエステルは、ガラス転移温度以上において、熱量の吸収により弾性率或いは粘度が低下し、流動性が発現される。フィルム構成材料を溶融させるためには、添加する可塑剤がセルロースエステルのガラス転移温度よりも低い融点またはガラス転移温度をもつことが上記目的を満たすために好ましい。
【0059】
本発明に用いる可塑剤としては、特に限定されるものではないが、下記のような可塑剤を含有するのが好ましい。可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等を好ましく用いることができる。
【0060】
中でも、多価アルコールエステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等が好ましい。特に多価アルコールエステル系可塑剤を用いることが好ましい。
【0061】
多価アルコールエステル系可塑剤は2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
【0062】
本発明に好ましく用いられる多価アルコールは次の一般式(I)で表される。
【0063】
一般式(I) R1−(OH)n
但し、R1はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性、及び/またはフェノール性水酸基を表す。
【0064】
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれらに限定されるものではない。アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることが出来る。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0065】
本発明の多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることが出来る。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0066】
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることが出来るが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0067】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることが出来る。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0068】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることが出来る。
【0069】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。
【0070】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることが出来る。特に安息香酸が好ましい。
【0071】
多価アルコールエステルの分子量は特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースエステルとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
【0072】
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
【0073】
以下に、多価アルコールエステルの具体的化合物を例示する。
【0074】
【化1】

【0075】
【化2】

【0076】
【化3】

【0077】
【化4】

【0078】
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることが出来る。アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
【0079】
フタル酸エステル系可塑剤としては、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
【0080】
クエン酸エステル系可塑剤としては、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
【0081】
脂肪酸エステル系可塑剤として、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
【0082】
多価カルボン酸エステル系可塑剤も好ましく用いることができる。具体的には特開2002−265639号公報の段落番号[0015]〜[0020]記載の多価カルボン酸エステルを可塑剤の一つとして添加することが好ましい。
【0083】
リン酸エステル系可塑剤としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられるが、これらのリン酸エステル系可塑剤は揮発性が高い為、本発明を構成するセルロースエステルフィルム中には実質的に含有しないことが好ましい。実質的に含有しないとは、含有量が、1質量%未満であり、好ましくは0.1質量%未満であり、全く含有しないことが特に好ましい。
【0084】
セルロースエステルフィルム中の可塑剤の総含有量は、固形分総量に対し、5〜20質量%が好ましく、6〜16質量%が更に好ましく、特に好ましくは8〜13質量%である。また、2種の可塑剤の含有量は各々少なくとも1質量%以上であり、好ましくは各々2質量%以上含有することである。
【0085】
多価アルコールエステル系可塑剤は1〜12質量%含有することが好ましく、特に3〜11質量%含有することが好ましい。少ないと平面性、カール性の劣化が認められ、多すぎるとブリードアウトがしやすい。多価アルコールエステル系可塑剤とその他の可塑剤との質量比率は1:4〜4:1の範囲であることが好ましく、1:3〜3:1であることが更に好ましい。可塑剤の添加量が多すぎても、また少なすぎてもフィルムが変形しやすく好ましくない。
【0086】
上記可塑剤の中でも熱溶融時に揮発成分を生成しないことが一般的には好ましい。具体的には、上記例示化合物の中では多価アルコールエステル系の可塑剤であるトリメチロールプロパントリベンゾエート等が好ましいがこれらに限定されるものではない。揮発成分が上記可塑剤の熱分解によるとき、上記可塑剤の熱分解温度Td(1.0)は、1.0質量%減少したときの温度と定義すると、フィルム形成材料の溶融温度よりも高いことが求められる。可塑剤は、上記目的のために、セルロースエステルに対する添加量が他のフィルム構成材料よりも多く、揮発成分の存在は得られるフィルムの品質に与える劣位となる影響が大きいためである。熱分解温度Td(1.0)は、市販の示差熱重量分析(TG−DTA)装置で測定することが出来る。
【0087】
尚、本発明は一般的に好ましいとされる上記可塑剤の選択幅を広げるものである。即ち、フィルム構成材料を一体の成型物とすると、樹脂と添加剤が密着し、かつ、空気(特に酸素と水)との接触面積が小さくなる。その為、フィルム形成材料の融点及び可塑剤の熱分解温度は単体の時に比べ、フィルム形成材料の融点は低下し、可塑剤の熱分解温度は高くなるものと予想される。また、本発明の製膜における最良の形態は、出来る限り低温にて短時間で押出すことを特徴としており、例えば、可塑剤の熱分解温度Td(1.0)がフィルム形成材料の溶融温度より低くても、その値がTd(1.0)=フィルム形成材料の溶融温度〜フィルム形成材料の溶融温度−30℃程度に接近していれば機械的強度などフィルム品質に与える劣位となる影響はない。
【0088】
(その他の添加剤)
本発明のセルロースエステルフィルムには、セルロースエステルと可塑剤の他に、安定化剤、滑り剤、マット剤、フィラー、無機高分子、有機高分子、染料、顔料、蛍光体、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、二色性色素、屈折率調整剤、リターデーション制御剤、ガス透過抑制剤、抗菌剤、導電性付与剤、生分解性付与剤、ゲル化防止剤、粘度調整剤等の各種の機能を有する添加剤を所望により添加しても良い。
【0089】
本発明のセルロースエステルは200〜250℃といった高温下で溶融して製膜されるため、従来の溶液流延製膜に比べてセルロースエステルの分解・劣化が起きやすいプロセスであるため、上記の添加剤の中でも安定化剤をフィルム形成材料中に添加されることが好ましい。
【0090】
安定化剤としては、例えば、酸化防止剤、酸掃去剤、ヒンダードアミン光安定剤、紫外線吸収剤、過酸化物分解剤、ラジカル捕捉剤、金属不活性化剤、などが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、特開平3−199201号公報、特開平5−1907073号公報、特開平5−194789号公報、特開平5−271471号公報、特開平6−107854号公報などに記載がある。これらの中から選ばれる少なくとも1種を、フィルム形成材料中に含むことが好ましい。
【0091】
また、偏光子保護フィルム、位相差フィルム等として本発明のセルロースエステルフィルムを用いる場合、偏光子が紫外線に対して弱いため、少なくとも偏光子に対して光が入射する側のセルロースエステルフィルムには紫外線吸収剤を含有していることが好ましい。
【0092】
また、本発明のセルロースエステルフィルムを位相差フィルムとして用いる場合には、リターデーションを調節するための添加剤を含有させることが出来る。リターデーションを調節するために添加する化合物は、欧州特許911,656A2号明細書に記載されているようなリターデーション制御剤を使用することも出来る。
【0093】
また、加熱溶融時の粘度制御やフィルム加工後のフィルム物性を調整するために、有機高分子または無機高分子をセルロースエステルフィルムに添加することも出来る。
【0094】
セルロースエステル樹脂にこれらの添加剤を添加する際は、それらを含めた総量が、セルロース樹脂の質量に対して1〜30質量%であることが好ましい。1質量%以下では溶融製膜性が低下し、30質量%以上では得られるセルロースエステルフィルムの力学特性や保存安定性などが確保出来なくなることがあるためである。
【0095】
(酸化防止剤)
セルロースエステルは、溶融製膜が行われるような高温環境下では熱だけでなく酸素によっても分解が促進されるため、本発明の光学フィルムにおいては安定化剤として酸化防止剤を含有することが好ましい。
本発明において有用な酸化防止剤としては、酸素による溶融成形材料の劣化を抑制する化合物であれば制限なく用いることが出来るが、中でも有用な酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、耐熱加工安定剤、酸素スカベンジャー等が挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、溶融成型時の熱や熱酸化劣化等による成形体の着色や強度低下を防止出来る。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、或いは2種以上を組合わせて用いることが出来る。
【0096】
上記の酸化防止剤の中でも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤化合物は既知の化合物であり、例えば、米国特許第4,839,405号明細書の第12〜14欄に記載されており、2,6−ジアルキルフェノール誘導体化合物が含まれる。このような化合物のうち好ましい化合物として、下記一般式(1)で表される化合物が含まれる。
【0097】
【化5】

【0098】
式中、R1、R2及びR3は、さらに置換されているかまたは置換されていないアルキル置換基を表す。ヒンダードフェノール化合物の具体例には、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、n−オクタデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−アセテート、n−オクタデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、n−ドデシル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルベンゾエート、ネオ−ドデシル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ドデシルβ(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、エチルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)イソブチレート、オクタデシルα−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(n−オクチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンゾエート、2−(2−ヒドロキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ジエチルグリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)プロピオネート、2−(n−オクタデシルチオ)エチル3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアルアミドN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、n−ブチルイミノN,N−ビス−[エチレン3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2−(2−ステアロイルオキシエチルチオ)エチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,2−プロピレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、エチレングリコールビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、グリセリン−l−n−オクタデカノエート−2,3−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルアセテート)、ペンタエリトリトール−テトラキス−[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,1,1−トリメチロールエタン−トリス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ソルビトールヘキサ−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−ヒドロキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−ステアロイルオキシエチル7−(3−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘプタノエート、1,6−n−ヘキサンジオール−ビス[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリトリトール−テトラキス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)が含まれる。上記タイプのヒンダードフェノール化合物は、例えば、Ciba Specialty Chemicalsから、”Irganox1076”及び”Irganox1010”という商品名で市販されている。
【0099】
酸化防止剤は0.1〜10質量%添加することが好ましく、さらに0.2〜5質量%添加することが好ましく、さらに0.5〜2質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
【0100】
(酸捕捉剤)
セルロースエステルは溶融製膜が行われるような高温環境下では酸によっても分解が促進されるため、本発明の光学フィルムにおいては安定化剤として酸捕捉剤を含有することが好ましい。本発明において有用な酸捕捉剤としては、酸と反応して酸を不活性化する化合物であれば制限なく用いることが出来るが、中でも米国特許第4,137,201号明細書に記載されているような、エポキシ基を有する化合物が好ましい。このような酸捕捉剤としてのエポキシ化合物は当該技術分野において既知であり、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシドなどの縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテルなど、金属エポキシ化合物(例えば、塩化ビニルポリマー組成物において、及び塩化ビニルポリマー組成物と共に、従来から利用されているもの)、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4′−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、2〜22この炭素原子の脂肪酸の4〜2個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)など)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリドなど(例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油など)の組成物によって代表され例示され得るエポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらはときとしてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している)が含まれる。また、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物として、EPON 815C、及び下記一般式(2)の他のエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物も好ましく用いることが出来る。
【0101】
【化6】

【0102】
式中、nは0〜12の整数である。用いることが出来るその他の酸捕捉剤としては、特開平5−194788号公報の段落87〜105に記載されているものが含まれる。
酸捕捉剤は0.1〜10質量%添加することが好ましく、さらに0.2〜5質量%添加することが好ましく、さらに0.5〜2質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
【0103】
なお酸掃去剤は酸捕捉剤、酸捕獲剤、酸キャッチャー等と称されることもあるが、本発明においてはこれらの呼称による差異なく用いることが出来る。
【0104】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、偏光子や表示装置の紫外線に対する劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。本発明に用いられる紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることが出来るが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号、同8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
【0105】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることが出来るが、これらに限定されない。
【0106】
また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)234、チヌビン(TINUVIN)360(いずれもチバ−スペシャルティ−ケミカルズ社製)が挙げられる。
【0107】
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0108】
本発明においては、紫外線吸収剤は0.1〜5質量%添加することが好ましく、さらに0.2〜3質量%添加することが好ましく、さらに0.5〜2質量%添加することが好ましい。これらは2種以上を併用してもよい。
またこれらのベンゾトリアゾール構造やベンゾフェノン構造が、ポリマーの一部、或いは規則的にポリマーへペンダントされていても良く、可塑剤、酸化防止剤、酸掃去剤等の他の添加剤の分子構造の一部に導入されていても良い。
【0109】
(ヒンダードアミン化合物)
上記の酸化防止剤、酸捕捉剤、紫外線吸収剤以外に、熱および光によってセルロースエステルが分解されることを抑制しうる添加剤として、ヒンダードアミン化合物が挙げられ、必要に応じてセルロースエステルフィルム中に添加しても良い。
【0110】
本発明に用いられるヒンダードアミン化合物(HALS)としては、例えば、米国特許第4,619,956号明細書の第5〜11欄及び米国特許第4,839,405号明細書の第3〜5欄に記載されているように、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン化合物、またはそれらの酸付加塩もしくはそれらと金属化合物との錯体が含まれる。このような化合物には、下記一般式(3)で表される化合物が含まれる。
【0111】
【化7】

【0112】
式中、R1及びR2は、Hまたは置換基である。ヒンダードアミン化合物の具体例には、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−アリル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ベンジル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(4−t−ブチル−2−ブテニル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−エチル−4−サリチロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン−4−イル−β(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート、1−ベンジル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルマレイネート(maleinate)、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−アジペート、(ジ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−セバケート、(ジ−1−アリル−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−4−イル)−フタレート、1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−アセテート、トリメリト酸−トリ−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステル、1−アクリロイル−4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ジブチル−マロン酸−ジ−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジベンジル−マロン酸−ジ−(1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−ピペリジン−4−イル)−エステル、ジメチル−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オキシ)−シラン,トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフィット、トリス−(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ホスフェート,N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアミン、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−ヘキサメチレン−1,6−ジアセトアミド、1−アセチル−4−(N−シクロヘキシルアセトアミド)−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン、4−ベンジルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N′−ジブチル−アジパミド、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N′−ジシクロヘキシル−(2−ヒドロキシプロピレン)、N,N′−ビス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−p−キシリレン−ジアミン、4−(ビス−2−ヒドロキシエチル)−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリルアミド−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、α−シアノ−β−メチル−β−[N−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)]−アミノ−アクリル酸メチルエステル。好ましいヒンダードアミン化合物の例には、以下のHALS−1及びHALS−2が含まれるがこれのみに限定されない。
【0113】
【化8】

【0114】
上記化合物は、少なくとも1種以上含有させることが好ましく、セルロースエステル樹脂の質量に対して、含有量は0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%であり、さらに好ましくは0.2〜2質量%である。
【0115】
上記化合物の含有量が上記範囲よりも少ないと、セルロースエステル樹脂の熱分解が生じやすく、また上記添加量の範囲よりも多いと樹脂への相溶性の観点から偏光板保護フィルムとしての透明性の低下を引き起こし、またフィルムが脆くなるために好ましくない。
【0116】
(マット剤)
本発明のセルロースエステルフィルムは、滑り性や光学的、機械的機能を付与するためにマット剤を添加することが出来る。マット剤としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
【0117】
マット剤の形状は、球状、棒状、針状、層状、平板状等の形状のものが好ましく用いられる。マット剤としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の金属の酸化物、リン酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を挙げることが出来る。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを低く出来るので好ましい。これらの微粒子は有機物により表面処理されていることが、フィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。
【0118】
表面処理は、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサン等で行うことが好ましい。微粒子の平均粒径が大きい方が滑り性効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れる。また、微粒子の一次粒子の平均粒径は0.01〜1.0μmの範囲である。好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmが好ましく、さらに好ましくは、7〜14nmである。これらの微粒子は、セルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させるために好ましく用いられる。
【0119】
二酸化ケイ素の微粒子としては、日本アエロジル(株)製のアエロジル(AEROSIL)200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812、OX50、TT600等を挙げることが出来、好ましくはアエロジル200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらの微粒子は2種以上併用してもよい。
【0120】
2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することが出来る。平均粒径や材質の異なる微粒子、例えば、アエロジル200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9:0.1の範囲で使用出来る。
【0121】
これらのマット剤の添加方法は混練する等によって行うことが好ましい。また、別の形態として予め溶媒に分散したマット剤とセルロースエステル及び/または可塑剤及び/または紫外線吸収剤を混合分散させた後、溶媒を揮発または沈殿させた固形物を得て、これをセルロースエステル溶融物の製造過程で用いることが、マット剤がセルロース樹脂中で均一に分散出来る観点から好ましい。
【0122】
上記マット剤は、フィルムの機械的、電気的、光学的特性改善のために添加することも出来る。
【0123】
なおこれらの微粒子を添加するほど、得られるセルロースエステルフィルムの滑り性は向上するが、添加するほどヘイズが上昇するため、含有量は好ましくは0.001〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.005〜1質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0124】
なお本発明のセルロースエステルフィルムとしては、ヘイズ値が1.0%を超えると光学用材料として影響を与えるため、好ましくはヘイズ値は1.0%未満、より好ましくは0.5%未満である。ヘイズ値はJIS−K7136に基づいて測定することが出来る。
【0125】
(溶融製膜法による積層フィルムの形成)
本発明の積層されたセルロースエステルフィルムは、セルロースエステルを含有する層(A)の両側に、同一種でも異なっていてもよいセルロースエステルに非接着性の熱可塑性樹脂を含有する層(B)(以下表層ともいう)を配し、該層(A)、(B)をフラットダイから3層以上積層された状態でフィルム状に押出し、冷却することによって得られる。前記本発明でいう「表層」とは、積層した本発明のセルロースエステルフィルムの最表層に位置する熱可塑性樹脂層であり、表面側と裏面側とで2層存在するが、いずれも表層と称し、厚み、もしくは溶融キャスト時の冷却ロールに接触して搬送される面をロール面、その反対側で空気に接する面をエア面と識別出来る。
【0126】
本発明のセルロースエステルフィルムの構成層は、3層以上であれば何層積層してもかまわないが、製造設備が複雑化する等の観点から、一般的には3層が好ましい。本発明での「積層」とは、少なくとも2種以上の溶融した樹脂を流動性をもったまま接合せしめ、一体のシートフィルム状に加工することをいう。セルロースエステルを含有する層(A)は最終的な偏光板保護フィルムに用いられるセルロースエステルフィルムとして、10〜500μmの厚みを有することが好ましく、特に20μm以上、更には35μm以上が好ましい。また100μm以下、更には85μm以下が好ましい。特に好ましくは20〜80μmの範囲である。セルロースエステルに非接着性の熱可塑性樹脂を含有する層(B)は本発明の機能を発揮するために、5μm以上であることが好ましく、経済的な観点から5〜100μmの厚みであることが好ましい。上記理由と可塑剤の有効なバリア性の観点からは、10〜30μmの範囲であることが特に好ましい。表面側表層または裏面側表層の厚みは同一でも異なっていてもよいが、後述するカール性の改善においては同一の厚みであることが好ましい。
【0127】
本発明では、いったん固体のシートを形成してから張り合わせる、いわゆるラミネート加工や原反の搬送から巻き取りまでの途中で、塗料などによる塗布加工は、本発明で定義する「積層」の規定には包含しない。
【0128】
本発明においてセルロースエステルと非接着性の熱可塑性樹脂とは、セルロースエステルとは相溶せず、(A)、(B)各層を積層した場合に接着せず剥離が可能である熱可塑性樹脂を意味する。このような熱可塑性樹脂としては、該層(A)と層(B)の二枚のシートを溶融状態で積層した押出シートを冷却した後に、層(A)と層(B)との剥離力が好ましくは100g/cm以下、より好ましくは1g/cm〜50g/cm程度と容易に剥離出来る程度の接着力を有していることが好ましいが、あまり容易に剥離出来るとシート搬送時の層間剥離を起こすため上記範囲が好ましい。
【0129】
本発明に用いられる熱可塑性樹脂は、表層用樹脂として溶融状態でセルロースと積層されるため、ダイの設定温度におけるセルロースの溶融粘度と近い溶融粘度を示すものが好ましい。もし溶融粘度が大きく異なる樹脂を積層した場合、得られるセルロースフィルムの膜厚均一性の制御が困難になる。また、表層は製品にはならないため、なるべくコストの安い樹脂が好ましい。この2点からポリオレフィン系樹脂、特にポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。ポリエチレン、ポリプロピレンは分子量や分岐度、立体規則性などの違いにより、溶融粘度の異なる多数の品種が市販されており、本発明の目的に合うような溶融粘度特性をもったものを選ぶことが出来る。
【0130】
ここで言うポリオレフィン系樹脂とは、ポリオレフィン部分を多く含有し、主としてポリオレフィン樹脂の性質を樹脂のことをいい、ポリオレフィンは単独であっても混合であってもよい。
【0131】
即ち、ポリオレフィン系樹脂は化学変性ポリオレフィン(以下変性ポリオレフィンという)単独、又は変性ポリオレフィンにポリプロピレン等の未変性ポリオレフィン樹脂(以下これをポリオレフィン樹脂といい、ポリオレフィン系樹脂と区別する)を配合したもの、さらには、ポリオレフィンエラストマー等の熱可塑性ゴムを配合したもの等をいう。
【0132】
即ち、本発明で好ましく用いられるポリオレフィン樹脂もしくはポリオレフィン系樹脂としては、オレフィン類を主体とする重合体及びそれらの混合物からなる樹脂等を意味し、オレフィンホモポリマー、オレフィンと他のオレフィンとコポリマー、或いはその他のモノマーとの各種コポリマー、その他化学構造の相違(直鎖状、分岐状、立体規則性等)等は問わない。
【0133】
ポリオレフィン樹脂には、通常、アイソタクチック構造を主成分としたポリプロピレン、低密度又は高密度ポリエチレン、これらの他のオレフィンとのコポリマー、これらの混合物が用いられ、特に前記ポリプロピレンホモポリマー樹脂、ポリプロピレンコポリマー樹脂又はポリプロピレンを主体とした樹脂が好ましく用いられる。
【0134】
従って、ポリオレフィン樹脂単独、機械的特性向上を目的として添加される変性ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー等を配合した場合等であっても、ポリオレフィン系樹脂組成物としては高流動性であることが好ましい。
【0135】
本発明においては、熱可塑性組成物としては、メルトインデックス(MIと略すこともある。)が20〜100であることが好ましい。このMIの測定は、JISK7210の第1表中の条件4、又はASTMD1238のデーブル1中の条件Lにより測定されるインデックスであり、いずれの条件も当業者では周知のものである。
【0136】
これらの熱可塑性樹脂を含有する層(B)は、他の含有物として各種の添加剤、例えば滑り材、安定剤、酸化防止剤、粘度調整剤、帯電防止剤、着色剤、顔料などを併用することが出来る。特に帯電防止剤を含有することは、生産工程において、ロール搬送時のゴミ付着や巻き取りロールのゴミ付着防止を達成出来る為好ましい。用いることの出来る帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、樹脂に添加出来る帯電防止剤ならばすべて使用可能であり、アニオン性帯電防止剤としては、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、液体脂肪油硫酸エステル塩類、脂肪族アミンおよび脂肪属アマイドの硫酸塩類、脂肪属アルコールリン酸エステル塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類、脂肪族アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナフタリンスルホン酸塩類等が挙げられる、カチオン性帯電防止剤としては、脂肪族アミン塩類、第4級アンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩などが挙げられる。非イオン性帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類等が挙げられる、両性イオン性帯電防止剤としては、イミダゾリン誘導体、ベタイン型高級アルキルアミノ誘導体、硫酸エステル誘導体、リン酸エステル誘導体等が挙げられ、具体的な化合物は、丸茂秀雄著「帯電防止剤 高分子の表面改質」幸書房、増補「プラスチックおよびゴム用添加剤実用便覧 p333〜p455」化学工業社刊、特開平11−256143号、特公昭52−32572号、特開平10−158484号等に記載されている。また市販の帯電防止剤を使用することも可能である。
【0137】
好ましい帯電防止剤としては、アニオン性帯電防止剤やカチオン性帯電防止剤といったイオン性高分子化合物を挙げることが出来る。イオン性高分子化合物としては、特公昭49−23828号、同49−23827号、同47−28937号にみられるようなアニオン性高分子化合物;特公昭55−734号、特開昭50−54672号、特公昭59−14735号、同57−18175号、同57−18176号、同57−56059号などにみられるような、主鎖中に解離基をもつアイオネン型ポリマー:特公昭53−13223号、同57−15376号、特公昭53−45231号、同55−145783号、同55−65950号、同55−67746号、同57−11342号、同57−19735号、特公昭58−56858号、特開昭61−27853号、同62−9346号にみられるような、側鎖中にカチオン性解離基をもつカチオン性ペンダント型ポリマー、特開平5−230161号にみられるようなグラフト共重合体等を挙げることが出来る。
【0138】
また、別の好ましい帯電防止剤としては、導電性を有する金属酸化物が挙げられる。金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加、TiO2に対してはNb、Ta等の添加、又SnO2に対しては、Sb、Nb、ハロゲン元素等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01mol%〜25mol%の範囲が好ましいが、0.1mol%〜15mol%の範囲が特に好ましい。
【0139】
また、これらの導電性を有する金属酸化物粉体の体積抵抗率は107Ωcm以下、特に105Ωcm以下であって、1次粒子径が10nm以上0.2μm以下で、高次構造の長径が30nm以上6μm以下である特定の構造を有する粉体を導電層に体積分率で0.01%以上20%以下含んでいることが好ましい。
【0140】
特に好ましい帯電防止剤は、帯電防止性能と添加量の関係から、積層されたセルロースエステルフィルムの表裏の表面比抵抗値を1×1014Ω/□以下にするものが好ましい。特に好ましくは1×1012Ω/□以下にするものである。
【0141】
表面固有抵抗値は、試料を23℃、50%RHの雰囲気で24時間調湿した後、超絶縁計を用いて、ASTM D257に準拠し測定する。
【0142】
特に好ましい帯電防止剤は、特開平9−203810号に記載されているアイオネン導電性ポリマー或いは分子間架橋を有する第4級アンモニウムカチオン導電性ポリマーなどを含有することが望ましい。
【0143】
架橋型カチオン性導電性ポリマーの特徴は、得られる分散性粒状ポリマーにあり、粒子内のカチオン成分を高濃度、高密度にもたせることが出来るため、優れた導電性を有しているばかりでなく、樹脂との相溶性が良く、高い透明性が選られることにある、さらに低相対湿度下においても導電性の劣化は見られない。
【0144】
本発明の積層されたセルロースエステルィルムは溶融流延法によって製造されるが、まず別々の押出機にセルロースエステル及び熱可塑性樹脂を供給して溶融混練し、セルロースエステルを含有する層(A)の両側に、同一種でも異なっていてもよい該熱可塑性樹脂を含有する層(B)を配し、該層(A)、(B)をフラットダイから3層以上積層された状態でフィルム状に押出し、冷却し成形されることを特徴とする。
【0145】
加熱溶融する溶融流延による成形法は、さらに詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類出来る。これらの中で、機械的強度及び表面精度等に優れる偏光板保護フィルムを得るためには、溶融押出し法が優れており、本発明では特に好ましく用いられる。得られるセルロースエステルフィルムの物性を鑑みると、溶融樹脂温度は120〜300℃の範囲であることが好ましく、200℃〜270℃であることがより好ましい。その場合は、シリンダー温度が、通常150〜400℃、好ましくは200〜350℃、より好ましくは230〜330℃の範囲で適宜設定される。樹脂温度が過度に低いと流動性が悪化し、フィルムにヒケやひずみを生じ、膜厚の調整が困難になる恐れがある。樹脂温度が過度に高いと樹脂の熱分解によるボイドやシルバーストリークが発生したり、フィルムが黄変するなどの成形不良が発生するおそれがある。
【0146】
実際のフローは、粉体またはペレット状に成形された原料のセルロースエステル及び熱可塑性樹脂を熱風乾燥または真空乾燥した後、フィルム構成材料と共に、加熱し溶融し、その流動性を発現させた後、溶融押出し、Tダイよりシート状に押し出して、例えば、静電印加法等により冷却ロール或いはエンドレスベルト等に密着させ、冷却固化させ、未延伸シートを得る。冷却ロールの温度は50〜150℃に維持されていることが好ましい。
【0147】
図1に本発明に好ましい共押出しダイ溶融製膜装置の概略図を示す。
【0148】
粉体またはペレット状に成形された熱可塑性樹脂は、単軸押出し機(A)、単軸押出し機(C)で溶融混練され、セルロースエステルは二軸押出し機(B)で溶融混練される。本発明のセルロースエステル樹脂には可塑剤、酸化防止剤、などの添加剤を含む為、それらを均一に混練するため、ニ軸押出し機を使用するのが好ましい。ニ軸押出し機は二本のスクリューにより単軸押出し機より強い剪断力がかかり、材料を混合する効果が高い。ニ軸押出し機は、同方向回転型と異方向回転型の二種類があるが、本発明においてはより強い剪断力が得られる同方向型が好ましく用いられる。さらにスクリューの送り、ニーディングなどのセグメントを本発明の材料を溶融混練するのに最適な組合せになるようデザインすることができる。例えば、無機微粒子マット剤のような分散しにくい材料を所望の分散度に分散できるだけのニーディングディスクを組み込み、かつ所望の押出し量が得られるようにスクリューの径を選定することができる。同方向回転型ニ軸押出し機に原料を供給する際には、各原料を別個に供給しても良いし、あらかじめ混合してから供給しても良い。原料を押出し機に供給するには、公知のスクリューフィーダー、電磁振動フィーダー、強制押込み型スクリューフィーダー、等の連続式フィーダーが使用できる。後述するようにセルロースポリマーは押出し機に供給する前に乾燥することが好ましく、乾燥温度はそのポリマーのTg以下が好ましいが、可塑剤などの添加剤のガラス転移点や融点がセルロースポリマーの乾燥温度以下だと、一緒に乾燥した場合に機壁に融着したりするので好ましくない。そのような場合は、セルロースと添加剤を別個に乾燥、供給することが好ましい。セルロースと添加剤をあらかじめ混合して供給する場合は、乾燥温度を各材料のうち最も低いTgないし融点以下の温度に設定すれば良い。乾燥後吸湿しない様に、乾燥が終了した材料は速やかに押出し機に供給されることが好ましい。そのため、押出し機直上に乾燥機を設置し、乾燥を終了した原料を前述した連続式フィーダーで押出し機に供給することができる。また、乾燥を効率良く行ない、乾燥終了した原料の吸湿を防止するために、真空乾燥、減圧乾燥、または不活性ガスを導入しながらの乾燥も好ましく用いられる。同じ目的で、乾燥機とフィーダー、フィーダーと押出し機投入口の間も減圧ないし不活性ガス雰囲気とすることが好ましく行なわれる。セルロースと添加剤を粉体で供給する場合、別個フィードでも、混合フィードでも、均一混合のために粒径、粒度分布が一致ないし近似していることが好ましい。そのため、混合した原料を粉砕機で粉砕することも好ましく行なわれる。また、混合した原料を一旦ペレット化または造粒してから溶融成形する方法も取り得る。この場合、完全に溶融して棒状に押出し、カットして3mm角程度の形状に成形するのをペレット化、完全には溶融せずに軟化状態で圧縮するなどして粒状に固めるのを造粒と区別している。また、溶融成形したフィルムの不良品や、成形時の製品にならない耳部(以後回収品と呼ぶ)、などを粉砕して再度成形原料とすることもできる。この回収品もペレット化しても良いし、造粒しても良い。回収品だけでペレット化ないし造粒しても良いし、バージンの原料と混合してペレット化ないし造粒しても良い。もちろん、バージン原料とは別個に押出し機に供給しても良いし、例えば、セルロースと回収品を混合して供給することもできる。
【0149】
その後、各溶融された樹脂流をフィードブロックと呼ばれる合流器で積層したり、マニフォールドで拡幅された樹脂流を口金ランド部で合流積層したりして、共押出しダイ(本発明ではフラットダイ)より溶融押出しされ、セルロースエステルを含有する層(A)の両側に、熱可塑性樹脂を含有する層(B)を配された3層に積層されたシートにし、該溶融樹脂積層シートを、図では引取りロールとしたドラムのような移動冷却媒体に密着冷却固化させてキャストシートを得る。
【0150】
図2は本発明に好ましい別の共押出しダイ溶融製膜装置の概略図を示す。
【0151】
この場合は、熱可塑性樹脂を溶融混練する単軸押出し機(A)を一台とし、共押出しダイ手前にて分流供給する形式により3層構成のシートを作製することが可能である。
【0152】
溶融押出しの際、共押出しスリットダイとしてはT型ダイ、L型ダイ、フィッシュテイル型ダイのフラットダイが好ましく、ダイリップ間隔は50μm〜2mmであることが望ましい。また、共押出しダイのタイプとしては、図3で示すフィードブロックを有するダイ、図4で示すマルチマニフォールドダイ、マルチスロットダイ等のいずれのタイプでもよいが、マルチマニフォールドダイがフィルムの厚み精度、平面性付与の観点から特に好ましい。フィードブロックとマルチマニフォールドダイを組み合わせることにより、例えば5層、7層といった多層フィルムを成形することができる。この場合、セルロースと接着性のない熱可塑性樹脂を最表層にくるように設定すれば良く、内側のセルロースフィルムを多層構成とすることができる。
【0153】
本発明において好ましいフラットダイである図4で示すマルチマニフォールドダイでは、単軸押出し機若しくは二軸押出し機によって溶融混練されたセルロースエステルまたは熱可塑性樹脂は、流量制御のためのギヤポンプ(図示していない)を介して押出し部A、B、Cに導入され、液だまりであるマニフォールドA、B、Cにて押出し量を安定化し、リップ調整ボルト1によって制御された膜厚で溶融押出し製膜される。押出し機とダイの間にフィルターを配置することも好ましい。
【0154】
フラットダイの材質としては、溶融樹脂がダイなどの金属材質と接着しやすくなり、このためにダイすじといわれる固定すじが発生しやすくなり、光学用途としては利用出来なくなる恐れがある為、溶融樹脂との接液面材質は、通常のクロムメッキや窒化鋼などではなく、TiNのような離形性に優れたセラミック系材質や、SUS材質などが好ましい。
【0155】
3層に積層された溶融樹脂シートを冷却ロールに密着させて冷却固化する為、ドラム上でシートが滑ると分子配向が生じ、いわゆるリタデーションとして5nm以上になり、光学的等方性とは言えなくなるため、該シートにエアーナイフ、エアーチャンバー、プレスロール法、流動パラフィン塗布法、静電気印加法などから選ばれた方法等の密着性向上手段によりキャストすることが重要である。また、表層(B)にはマット剤等添加することも出来る。さらに、該3層積層シートを冷却ロール上に完全に密着させて冷却させるには、該シート端部に密着性向上手段をさらに併用することが好ましい。
【0156】
図5は溶融フィルムの引き取りの別形態図である。この場合は、冷却ドラム、密着手段(エアーナイフ等)により、ダイから供給されるフィルム組成物を所望の厚みで冷却・固化し剥離ロールを介してフィルムを形成する。
【0157】
本発明の場合、平面性、リタデーション安定性の観点から、図1で示すプレスロール法が最も好ましい。プレスロール法は、図1の引取りロールに示すように、同一径であることが好ましい。径が異なると、押出したフィルムの表裏面で温度差や配向度に差が生じたりすることがある。
【0158】
なお、冷却ロールの表面粗さRaは鏡面ロールでは、好ましくは0.4μm以下、より好ましくは0.2μm以下と超平滑であることが密着性向上やシートの平滑性等には肝要である。しかし、高速でキャストしたい場合などでは、クロムメッキに逆電界を掛けてマイクロクラックドラムにした表面粗さRaとしては1〜4μm程度の粗面ロールであってもよい。
【0159】
溶融製膜されたセルロースエステルフィルムの幅は1.4m以上が生産性の点から好ましい。より好ましくは1.4〜6mの範囲である。従来の溶融製膜されたセルロースエステルフィルムでは幅1.4mを超えると製造工程で皺が入ったりカールしやすかった為、広幅化が困難であったが、本発明の構成とすることで、この点を著しく改善することが出来る。
【0160】
本発明のセルロースエステルフィルムは樋状カール(幅方向のカール)が30m-1以下であることが好ましい。より好ましくは20m-1、更に好ましくは10m-1以下であり、特に好ましくは0〜5m-1の範囲である。ここで云うカール値はカールの曲率半径(mを単位として測定)の逆数で示したものであり、これが大きいものほど強いカールであることを示す。カールの測定方法は下記に示す。カールが強い場合、セルロースエステルフィルムは樋状ではなく、丸まってしまう場合もある。フィルムを熱処理した後でもこの範囲内にあることが好ましい。樋状カールは本発明に係る熱可塑性樹脂を含む表層(B)によって改善出来、表層(B)が同一種類の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0161】
〈カールの測定方法〉
当該フィルム試料を25℃55%RH環境下で3日間放置後、該フィルムを幅手方向50mm、長手方向2mmに裁断した。更に、そのフィルム小片を23℃±2℃55%RH環境下で24時間調湿し、曲率スケールを用いて該フィルムのカール値を測定することが出来る。カール度の測定はJIS−K7619−1988のA法に準じて行った。
【0162】
カール値は1/Rで表され、Rは曲率半径で単位はmを用いる。
【0163】
かくして本発明で得られる層(A)であるセルロースエステルフィルムは、表層(B)である熱可塑性樹脂でカバーされた状態で、搬送ロールを介して次工程へ送られる。
【0164】
図6に本発明の積層されたセルロースエステルフィルムの構成の一例を示す。
【0165】
本発明では、表層(B)である非接着性の熱可塑性樹脂層を剥離してセルロースエステルフィルムだけを巻き取ってもよいし、或いは該熱可塑性樹脂層を剥離せずに巻き取ってもよい。特に後者の場合は、長期間に渡る保管中でもゴミの付着などを防げたり、偏光板作成時の傷防止用保護フィルムとしても使用出来る為好ましい。
【0166】
また、冷却ロールから剥離され得られたフィルムは、1つまたは複数のロール群及び/または赤外線ヒーター等の加熱装置を介して、再度加熱して長手もしくは幅手方向に一段または多段縦延伸後冷却することが出来る。この時、非接着性の熱可塑性樹脂層は、剥離しても剥離しなくてもよいが、加熱工程を通過するため剥離してから行うことが好ましい。
【0167】
延伸は、本発明のセルロースエステルフィルムのガラス転移温度をTgとすると(Tg−30)〜(Tg+100)℃、より好ましくは(Tg−20)〜(Tg+80)℃の範囲内で加熱して搬送方向(長手方向;MD)或いは幅手方向(TD)に延伸することが好ましい。(Tg−20)〜(Tg+20)℃の温度範囲内で横延伸し次いで熱固定することが好ましい。また延伸工程の後、緩和処理を行うことも好ましい。また、同時ニ軸延伸も好ましく用いられる。
【0168】
セルロースエステルフィルムのTgは、フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって制御することが出来る。本発明の用途においてはフィルムのTgは120℃以上が好ましく、さらに135℃以上が好ましい。これは液晶表示装置に本発明のセルロースエステルフィルムを用いた場合、該フィルムのTgが上記よりも低いと、使用環境の温度やバックライトの熱による影響によって、フィルム内部に固定された分子の配向状態に影響を与え、リターデーション値及びフィルムとしての寸法安定性や形状に大きな変化を与える可能性が高くなる。逆に該フィルムのTgが高過ぎると、フィルム構成材料の分解温度に近づくため製造しにくくなり、フィルム化するときに用いる材料自身の分解によって揮発成分の存在や着色を呈することがある。従って200℃以下、より好ましくは170℃以下が好ましい。このとき、フィルムのTgはJIS K7121に記載の方法などによって求めることが出来る。
【0169】
横延伸(幅手方向:TD)する場合、2つ以上に分割された延伸領域で温度差を1〜50℃の範囲で順次昇温しながら横延伸すると幅方向の物性の分布が低減でき好ましい。更に横延伸後、フィルムをその最終横延伸温度以下でTg−40℃以上の範囲に0.01〜5分間保持すると幅方向の物性の分布が更に低減でき好ましい。
【0170】
熱固定は、その最終横延伸温度より高温で、Tg−20℃以下の温度範囲内で通常0.5〜300秒間熱固定する。この際、2つ以上に分割された領域で温度差を1〜100℃の範囲で順次昇温しながら熱固定することが好ましい。
【0171】
熱固定されたフィルムは通常Tg以下まで冷却され、フィルム両端のクリップ把持部分をカットし巻き取られる。この際、最終熱固定温度以下、Tg以上の温度範囲内で、横方向及び/または縦方向に0.1〜10%弛緩処理することが好ましい。また冷却は、最終熱固定温度からTgまでを、毎秒100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながらこれらの処理を行うことがフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。尚、冷却速度は、最終熱固定温度をT1、フィルムが最終熱固定温度からT2に達するまでの時間をtとした時、(T1−T2)/tで求めた値である。
【0172】
これら熱固定条件、冷却、弛緩処理条件のより最適な条件は、フィルムを構成するセルロースエステルにより異なるので、得られた二軸延伸フィルムの物性を測定し、好ましい特性を有するように適宜調整することにより決定すればよい。
【0173】
セルロースエステルフィルムの好ましい延伸倍率は、長手方向・幅手方向ともに1.01〜3.00倍に延伸されたものである。より好ましくは1.01〜2.50倍、更に好ましくは1.01〜2.00倍に延伸されたものである。これにより、光学的等方性に優れたセルロースエステルフィルムを好ましく得ることと共に、平面性の良好なセルロースエステルフィルムを得ることが出来る。製膜工程のこれらの幅保持或いは横方向の延伸はテンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
【0174】
なお、位相差フィルムを得る場合には、長手方向と幅手方向の延伸比率を変化させ、どちらか一方の延伸倍率が他方の延伸倍率よりも大きくなるように延伸することで光学異方性のフィルムを得ることが出来る。その際の幅手方向と長手方向との延伸倍率比は1.1〜2.0が好ましく、より好ましくは1.2〜1.5である。
【0175】
本発明のセルロースエステルフィルムを偏光板用保護フィルムとした場合、該保護フィルムの厚さは前述したように、10〜500μmが好ましい。特に10〜100μmが好ましく、20〜80μmが特に好ましい。上記領域よりもセルロースエステルフィルムが厚いと、例えば、偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板加工後の偏光板が厚くなり過ぎ、ノート型パソコンやモバイル型電子機器に用いる液晶表示においては、特に薄型軽量の目的には適さない。一方、上記領域よりも薄いと位相差フィルムとしてのリターデーションの発現が困難となり、加えてフィルムの透湿性が高くなり偏光子に対して湿度から保護する能力が低下してしまうために好ましくない。
【0176】
なお溶液流延法ではフィルムの厚みが増えると乾燥負荷が著しく増加してしまうが、本発明では乾燥工程が不要なため、膜厚が厚いフィルムを生産性よく製造することが出来る。そのため、必要な位相差の付与や透湿性の低減等の目的に応じてフィルムの厚みを増やすことが今まで以上にやりやすくなるという利点がある。また、膜厚の薄いフィルムであっても、このような厚手のフィルムを延伸することで高い生産性で生産することが出来ると言う効果を有する。
【0177】
また、セルロースエステルフィルム支持体の膜厚変動は、±3%、さらに±1%、さらに好ましくは±0.1%の範囲とすることが好ましい。
【0178】
巻きの長さとしては500〜5000mが好ましく、1000〜5000mがより好ましい。幅手両端部には膜厚の0〜25%の高さのナーリングを設けて巻き取ることも好ましい。
【0179】
(揮発成分除去)
このような非常に長大なフィルムを安定して生産するためには、流延する材料に揮発性の成分が混入していないことが重要である。溶融流延法による製膜は、溶液流延法とその製膜時の温度が著しく異なり、流延する材料に揮発成分が存在すると製膜時にそれらの添加剤が揮発して製膜装置に付着し、各種の故障を引き起こすため、フィルムや偏光板保護フィルムとしての機能を活用するためのフィルムの平面性及び透明性確保の点から好ましくない。特にダイに付着した場合には、フィルム表面に筋が入る要因となり平面性劣化を誘発することがある。従って、フィルム構成材料を製膜加工する場合、加熱溶融時に揮発成分の発生を回避する観点から、製膜するための溶融温度よりも低い領域に揮発する成分が存在することは好ましくない。
【0180】
前記揮発成分とは、フィルム構成材料中のいずれかが吸湿した水分、或いは混入している酸素、窒素等のガス、または材料の購入前または合成時に混入している溶媒や不純物、可塑剤、酸化防止剤等の添加剤が挙げられ、加熱による蒸発、昇華或いは分解による揮発が挙げられる。ここでいう溶媒とは溶液流延として樹脂を溶液として調整するための溶媒と異なり、フィルム構成材料中に微量に含まれるものである。従ってフィルム構成材料を選択することは、揮発成分の発生を回避する上で重要である。
【0181】
本発明において溶融流延に用いるフィルム構成材料は、前記水分や前記溶媒等に代表される揮発成分を、製膜する前に、または加熱時に除去することが好ましい。この除去する方法は、乾燥による方法が適用出来、加熱法、減圧法、加熱減圧法等の方法で行うことが出来る。乾燥は空気中または不活性ガスとして窒素或いはアルゴン等の不活性ガスを選択した雰囲気下で行ってもよい。これらの不活性ガスは水や酸素の含有量が低いことが好ましく、実質的に含有しないことが好ましい。これらの公知の乾燥方法を行うとき、フィルム構成材料が分解しない温度領域で行うことがフィルムの品質上好ましい。例えば、前記乾燥工程で除去した後の残存する水分または溶媒は、各々フィルム構成材料の全体に質量に対して3質量%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下にすることである。
【0182】
特にセルロースエステル樹脂の水分は、0.5質量%未満のものが好ましく用いられる。これらの特性値はASTM−D817−96により測定することが出来る。セルロースエステルは、さらに熱処理することで水分を低減させて0.1〜1000ppmとして用いることが好ましい。
【0183】
フィルム構成材料は、製膜前に乾燥することにより、揮発成分の発生を削減することが出来、樹脂単独、または樹脂とフィルム構成材料の内、樹脂以外の少なくとも1種以上の混合物または相溶物に分割して乾燥することが出来る。好ましい乾燥温度は80℃以上、かつ乾燥する材料のTgまたは融点以下であることが好ましい。材料同士の融着を回避する観点を含めると、乾燥温度は、より好ましくは100〜(Tg−5)℃、さらに好ましくは110〜(Tg−20)℃である。好ましい乾燥時間は0.5〜24時間、より好ましくは1〜18時間、さらに好ましくは1.5〜12時間である。これらの範囲よりも低いと揮発成分の除去率が低いか、または乾燥に時間がかかり過ぎることがあり、また乾燥する材料にTgが存在するときには、Tgよりも高い乾燥温度に加熱すると、材料が融着して取り扱いが困難になることがある。乾燥は1気圧以下で行うことが好ましく、特に真空〜1/2気圧に減圧しながら行うことが好ましい。乾燥は、樹脂等の材料は適度に撹拌しながら行うことが好ましく、乾燥容器内で下部より乾燥空気もしくは乾燥窒素を送り込みながら乾燥させる流動床方式が、より短時間で必要な乾燥を行うことが出来るため好ましい。
【0184】
乾燥工程は2段階以上に分離してもよく、例えば予備乾燥工程による材料の保管と、製膜する直前〜1週間前の間に行う直前乾燥を行った素材を用いて製膜してもよい。
【0185】
(リタデーション値)
本発明に係るセルロースエステルフィルムの面内リターデーション値(Ro)および厚さ方向のリターデーション値(Rt)は、偏光子保護フィルムとして用いる場合には0≦Ro、Rt≦70nmであることが好ましい。より好ましくは0≦Ro≦30nmかつ0≦Rt≦50nmであリ、より好ましくは0≦Ro≦10nmかつ0≦Rt≦30nmである。位相差フィルムとして用いる場合には、30≦Ro≦100nmかつ70≦Rt≦400nmであリ、より好ましくは35≦Ro≦65nmかつ90≦Rt≦180nmである。また、Rtの変動や分布の幅は±50%未満であることが好ましく、±30%未満であることが好ましく、±20%未満であることが好ましい。更に±15%未満であることが好ましく、±10%未満であることが好ましく、±5%未満であることが好ましく、特に±1%未満であることが好ましい。最も好ましくはRtの変動がないことである。
【0186】
本発明では、特に幅手方向でのリタデーション変動が改善され、偏光板、液晶表示装置に装着された場合に優れた視認性を提供できるものである。
【0187】
なおリターデーション値Ro、Rtは以下の式によって求めることが出来る。
【0188】
Ro=(nx−ny)×d
Rt=((nx+ny)/2−nz)×d
ここにおいて、dはフィルムの厚み(nm)、屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう)、ny(フィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率)、nz(厚み方向におけるフィルムの屈折率)である。
【0189】
尚、リターデーション値(Ro)、(Rt)は自動複屈折率計を用いて測定することが出来る。例えば、KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmで求めることが出来る。
【0190】
また、遅相軸はフィルムの幅手方向±1°若しくは長手方向±1°にあることが好ましい。より好ましくは幅手方向または長手方向に対してに±0.7°、更に好ましくは幅手方向または長手方向に対して±0.5°である。
【0191】
(フイルム残留溶媒、水分量)
本発明のセルロースエステルフィルムは製膜工程で実質的に溶媒を使用することがないため、製膜後巻き取られたセルロースエステルフィルムに含まれる残留有機溶媒量は安定して0.1質量%未満であり、これによって従来以上に安定した平面性および寸法安定性とRtをもつセルロースエステルフィルムを提供することが可能である。特に100m以上の長尺の巻物においても安定した平面性とRtを持つセルロースエステルフィルムを提供することが可能となった。該セルロースエステルフィルムは巻きの長さについては特に制限はなく、1500m、2500m、5000mであっても好ましく用いられる。
【0192】
残留有機溶媒量は、ヘッドスペースガスクロ法により測定出来る。即ち、既知量のセルロースエステルフィルムを密閉容器内で120℃で20分間加熱し、その密閉容器内の気相に含まれる有機溶媒をガスクロマトグラフにより定量する。この結果から残留有機溶媒量(%)を算出することが出来る。
【0193】
また、フィルムが水分を含む場合は、更にセルロースエステルフィルムに含まれている水分量(g)を別の方法で求め、前記の加熱処理前後のセルロースエステルフィルムの質量差(g)から水分の質量(g)を差し引いて求めた値により、残留有機溶媒含有量(%)を求めることが出来る。
【0194】
溶液流延法で作製されたセルロースエステルフィルムの残留有機溶媒量(%)を0.1質量%以下とすることは困難であり、そのためには長い乾燥工程が必要であるが、この方法によれば安いコストで極めて低い残留有機溶媒含有量のセルロースエステルフィルムを得ることが出来、光学フィルムとして優れた特性を持つセルロースエステルフィルムを得ることが出来る。
【0195】
フィルム構成材料を加熱溶融すると分解反応が著しくなり、この分解反応によって着色や劣化を伴うことがある。また、分解反応によって好ましくない揮発成分の発生が併発することもある。揮発成分が発生した場合、従来の方法では引き取りロール表面にそれらの成分が析出付着することがあり、一定期間連続して生産したあと生産を中断してロールを清掃する必要があったが、本発明ではセルロースの両側を樹脂フィルムでカバーしているため、ロールが汚染する程度は従来法に比較して極めて少なく、長期間に亘って連続的に生産継続することができるので生産性が大幅に向上される。
【0196】
フィルム構成材料は、材料の変質や吸湿性を回避する目的で、1種以上のペレットとして保存し、これを用いて溶融物を作製することが出来る。ペレット化は、溶融する際のフィルム構成材料の混合性または相溶性が向上出来、フィルムの光学的な均一性を得ることにも寄与する。セルロース樹脂以外の構成材料を溶融前に該樹脂と均一に混合しておくことは、加熱溶融させる際に均一な溶融性を与えることに寄与出来る。
【0197】
(偏向板への応用)
液晶表示装置に本発明のセルロースエステルフィルムを偏光板保護フィルムとして偏光板を形成し用いる場合、少なくとも一方の面の偏光板が本発明の偏光板であることが好ましく、両面が本発明の偏光板であることがより好ましい。
【0198】
なお、従来の偏光板保護フィルムとしては、コニカミノルタタックKC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC12UR、KC8UXW−H、KC8UYW−HA、KC8UX−RHA(コニカミノルタオプト(株)製)等のセルロースエステルフィルムが用いられる。
【0199】
本発明のセルロースエステルフィルムを用いる偏光板においては、表示装置の品質を向上したり各種の機能を付与するために、他の機能性層を配置することも可能である。例えば、帯電防止層、透明導電層、ハードコート層、反射防止層、防汚層、易滑性層、易接着層、防眩層、ガスバリア層等公知の機能性層を塗設してもよい。また、液晶或いはポリイミド等から形成された光学異方性層を設けることも出来、偏光板保護フィルムとこれらの光学異方性層とを組合わせて最適な光学補償を行うことも出来る。この際、コロナ放電処理、プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理を必要に応じて施すことが出来る。
【0200】
(偏向板の作製)
本発明の偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することが出来る。得られた偏光板保護フィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全鹸化ポリビニルアルコール水溶液を用いて、偏光子の両面に偏光板保護フィルムを貼り合わせることが出来る。この方法は、少なくとも片面に本発明の偏光板保護フィルムを偏光子に直接貼合できる点で好ましい。
【0201】
また、上記アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、同6−118232号に記載されているような易接着加工を施して偏光板加工を行ってもよい。
【0202】
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、さらに該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成することが出来る。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、輸送時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは粘着層をカバーする目的で用いられる。本発明の表層(B)は、プロテクトフィルムとしても使用することが出来る。
【0203】
(液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルムフィルムを含む偏光板で構成された液晶表示装置は、偏光板に用いるセルロースエステルフィルムの平面性、リターデーション均一性が良好なため、高い表示品質を発現させることが出来る。特にマルチドメイン型の液晶表示装置、より好ましくは複屈折モードによってマルチドメイン型の液晶表示装置に使用することが本発明の効果をより発揮出来る。
【0204】
マルチドメイン化は、画像表示の対称性の向上にも適しており、種々の方式が報告されている「置田、山内:液晶,6(3),303(2002)」。該液晶表示セルは、「山田、山原:液晶,7(2),184(2003)」にも示されているが、これらに限定されない。
【0205】
本発明の偏光板は垂直配向モードに代表されるMVA(Multi−domein Vertical Alignment)モード、特に4分割されたMVAモード、電極配置によってマルチドメイン化された公知のPVA(Patterned Vertical Alignment)モード、電極配置とカイラル能を融合したCPA(Continuous Pinwheel Alignment)モードに効果的に用いることが出来る。また、OCB(Optical Compensated Bend)モードへの適合においても光学的に二軸性を有するフィルムの提案が開示されており「T.Miyashita,T.Uchida:J.SID,3(1),29(1995)」、本発明に係わる偏光板によって表示品質において、本発明の効果を発現することも出来る。本発明の偏光板を用いることによって本発明の効果が発現出来れば、液晶モード、偏光板の配置は限定されるものではない。
【0206】
液晶表示装置はカラー化及び動画表示用の装置しても応用されつつあり、本発明における表示品質は、コントラストの改善や偏光板の耐性が向上したことにより、疲れにくく忠実な動画像表示が可能となる。
【実施例】
【0207】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0208】
下記のセルロースエステルを原料ポリマーとして用いた。
【0209】
〈セルロースエステル〉
C−1:セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.8、分子量Mn=90000、分子量Mw=220000、Mw/Mn=2.4)
C−2:セルロースアセテートプロピオネート(CAP482−20(イーストマンケミカル社製))
C−3:セルロースアセテートブチレート(CAB171−15(イーストマンケミカル社製))
〈熱可塑性樹脂:表層用ポリマー〉
E−1:低密度ポリエチレンNUC−8000(日本ユニカー社製)
E−2:低密度ポリエチレンF522N(宇部興産社製)
E−3:高密度ポリエチレン730F(出光石油化学社製)
E−4:高密度ポリエチレン640UF(出光石油化学社製)
E−5:ポリプロピレンF704NP(出光石油化学社製)
E−6:ポリプロピレンF744NP(出光石油化学社製)
E−7:ポリプロピレンWFX4T(日本ポリプロ社製)
〈可塑剤〉
P−1:トリメチロールプロパントリベンゾエート
P−2:トリフェニルホスフェート
〈酸化防止剤〉
A−1:IRGANOX−1010(チバスペシャルティケミカルズ社製)
A−2:TINUVIN144(チバスペシャルティケミカルズ社製)
A−3:Sumilizer GP(住友化学社製)
実施例1
(本発明−1のフィルム成形)
セルロースエステルC−1を100質量部、可塑剤P−1:10質量部、酸化防止剤A−1:0.5質量部、A−2:0.5質量部を、タンブラー型混合機で30分間混合した後、得られた混合物を、除湿熱風式乾燥機((株)松井製作所DMZ2)により熱風温度70℃、露点−56℃で5時間乾燥した。次いで、図1に示すニ軸押出し機(B)に供給し、フィルム状に成形した。このとき、2台の単軸押出し機(A)と(C)に熱可塑性樹脂である表層用ポリマーE−1を供給して、共押出しダイを使用し、中心層にC−1、両表層にE−1が来るように成形した。図には省略したが、押出し機先端にフィルターとギヤポンプを設置している。
【0210】
3台の押出し機の設定温度をすべて240℃とし、共押出しダイを250℃に設定した。共押出しダイはコートハンガータイプ3層積層型マルチマニフォールドダイで、リップ間隙を200μmとした。間隙は、押し引きボルトにより、製膜したフィルムの厚みに応じて調整可能となっている。各層の厚みはそれぞれのギヤポンプ回転数を変更することにより、任意に調整可能である。
【0211】
ニ軸押出し機(B)の中間部に設けてある添加剤ホッパーの開口部から、すべり剤としてシリカ粒子(粒径2μm)を押出し量の0.02%となるように連続式フィーダーにより添加した。同様にしてUV吸収剤(Tinuvin360:チバスペシャルティケミカルズ社製)を同開口部から押出し量の0.5%となるように添加した。溶融押出したフィルムは100℃に温調した2本のクロムメッキ鏡面ロールの間で挟んで引取り、エッヂをスリットした後ワインダーに巻き取った。表層フィルムは剥がしていない。
【0212】
巻き取ったフィルムのうちセルロースフィルムの厚みが80μm、表層フィルムが両方とも20μmになるように各ギヤポンプの回転数、押出し機の回転数、引取りロールの回転速度を調整した。
【0213】
(本発明−2〜15のフィルム成形)
セルロースエステルをC−1、2、3、表層用ポリマーにE−1〜7を用いて表1に示す組合わせで、本発明−1のフィルム成形と同様にして本発明−2〜14のフィルムを成形した。本発明−13のフィルムを作成する際に、A−1、A−2に代えてA−3を2%添加した。本発明−14のフィルムを作成する際に、A−1に代えてA−3を1%添加した。本発明−1のフィルムを作成する際に、可塑剤P−1に変えてP−2を同量用い本発明−15のフィルムを成形した。
【0214】
(本発明−16のフィルム成形)
本発明−1と同様の原料を用い、出来上がりのセルロースエステルフィルム膜厚が96μmになるように調整した以外は同様の条件で製膜した。得られた3層フィルムの表層フィルムを剥がし、セルロースエステルフィルムをテンターに導き、130℃で幅手方向に20%延伸した。
【0215】
(本発明−17のフィルム成形)
本発明−1と同様の原料を用い、出来上がりのセルロースエステルフィルム膜厚が115μmになるように調整した以外は同様の条件で製膜した。得られた3層フィルムの表層フィルムを剥がしたあと、ロール周速差により長手方向に20%延伸し、ついでテンターに導き、130℃で幅手方向に20%延伸した。
【0216】
尚、本発明−1〜本発明−17のセルロースエステルフィルムの透過率は、得られたフィルムの表層を剥離した後、日立(株)分光光度計を用いて可視光全域の透過率を測定した結果、いずれも90%以上であり透明性に優れていた。また、ダイ筋はいずれも観察されなかった。更に生産工程における、引取りロールの汚れ、工程汚染が比較例のフィルム形成に対し改善されていた。
【0217】
(比較例−1のフィルム成形)
本発明−1と同様の原料で、ニ軸押出し機のみを用い、表層をつけずにセルロースフィルムを製膜した。ダイはコートハンガータイプ単層ダイを用いた。
【0218】
(比較例−2のフィルム成形)
可塑剤としてP−2を用いた本発明−15と同様の原料で、ニ軸押出し機のみを用い、表層をつけずにセルロースフィルムを製膜した。ダイはコートハンガータイプ単層ダイを用いた。
【0219】
(比較例−3のフィルム成形)
本発明−1と同様の原料を用い、ただし、2台の単軸押出し機(A)と(C)にはセルロースエステルC−2:100質量部、可塑剤P−1:10質量部、酸化防止剤A−1:0.5質量部、A−2:0.5質量部を、タンブラー型混合機で30分間混合した後、除湿熱風式乾燥機((株)松井製作所DMZ2)により熱風温度70℃、露点−56℃で5時間乾燥した組成物を供給した。押出し機(A)(B)(C)とギヤポンプの回転数を調整して、成形したフィルムの厚みを表層10μm、中心層60μm、全厚み80μmになるようにした。得られたフィルムは3層が完全に接着しており、剥離不能であった。
【0220】
(比較例−4のフィルム成形)
比較例−3と同様にして、フィルムの厚みが表層10μm、中心層80μm、全厚み100μmになるようにした。得られたフィルムは3層が完全に接着しており、剥離不能であった。
【0221】
《評価》
(平面性)
成形されたフィルムから表層を剥離して幅90cm、長さ100cmの大きさに各セルロースエステルフィルム試料を切り出し、50W蛍光灯を5本並べて試料台に45°の角度から照らせるように高さ1.5mの高さに固定し、試料台の上に各フィルム試料を置き、フィルム表面に反射して見える凹凸を目で見て、次のように判定した。この方法によって「つれ」および「しわ」の判定が出来る。
【0222】
◎:蛍光灯が5本とも真っすぐに見えた
○:蛍光灯が少し曲がって見えるところがある
△:蛍光灯が全体的に少し曲がって見える
×:蛍光灯が大きくうねって見える
(寸法安定性)
成形されたフィルムから表層を剥離して、セルロースエステルフィルム試料の上に印として10cm間をおいて十文字のキズを2箇所つけ、23℃55%RHの雰囲気に24時間置いた後、その距離(X0)を測定する。次いで、試料を80℃90%RHに保たれたオーブンに入れ、100時間おいて出した後、23℃55%RHの雰囲気に24時間置いてからキズの距離X1を測定する。下記式Dを寸法変化率とする。
【0223】
D=(X1−X0)/X0×100(%)
(カール性の評価)
成形されたフィルムから表層を剥離して、5mm×5cmのセルロースエステルフィルム試料を切り出し、温度23℃、55%RHの恒温恒湿室にて24時間放置した後、平板上に置き、曲率スケールを用いて、試料と合致するカーブを有する曲率半径を求め、カールの大きさと取り扱い易さを下記のようにランク評価した。
【0224】
曲率半径:1/試料と合致するカーブを有する円の半径(1/m)
◎:0〜5未満
○:5〜10未満
△:10〜30未満
×:30以上
ここで、◎、○は取り扱い易さが実用可であるが、△以下は取り扱いが極めて困難になる。
【0225】
(リターデーションRo、Rtばらつき)
成形されたフィルムから表層を剥離して、得られたセルロースエステルフィルム試料の幅手方向に1cm間隔でリターデーションを測定し、下記式より得られたリターデーションの変動係数(CV)で表したものである。測定には自動複屈折計KOBURA・21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が590nmにおいて、試料の幅手方向に1cm間隔で3次元複屈折率測定を行い測定値を次式に代入して求めた。
【0226】
面内リターデーションRo=(nx−ny)×d
厚み方向リターデーションRt=((nx+ny)/2−nz)×d
ここにおいて、dはフィルムの厚み(nm)、屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう)、ny(フィルム面内で遅相軸に直角な方向の屈折率)、nz(厚み方向におけるフィルムの屈折率)である。
【0227】
得られた面内および厚み方向のリターデーションをそれぞれ(n−1)法による標準偏差を求めた。リターデーション分布は以下で示される変動係数(CV)を求め、指標とした。実際の測定にあたっては、nとしては、130〜140に設定した。
【0228】
変動係数(CV)=標準偏差/リターデーション平均値
◎:ばらつきが(CV)が1.5%未満
○:ばらつき(CV)が1.5%以上5%未満
△:ばらつき(CV)が5%以上、10%未満
×:ばらつき(CV)が10%以上
以上の評価結果を表1に示す。
【0229】
【表1】

【0230】
以上の結果から、本発明−1〜17のセルロースエステルフィルムは、比較例−1〜4のセルロースエステルフィルムに対して、平面性、寸法変化率、カール性、リターデーションの均一性に優れていることが分かる。
【0231】
比較的揮発性の高いトリフェニルホスフェートを用いた比較例−2と本発明−15のセルロースエステルフィルムを比較すると、本発明の構成により平面性、寸法変化率、カール性、リターデーション均一性が著しく改善されることが明らかである。但し、本発明−1と本発明−15の比較より、可塑剤としては多価アルコールエステル系可塑剤を使用した方が、各特性が更に向上する為好ましい。
【0232】
また、セルロースエステルとしてはC−1が、表層用ポリマー種として同一種のものがセルロースエステルの厚みは80μm以下のものが、総合的に優れている結果であった。
【0233】
実施例2
本発明−1のフィルム成形において、熱可塑性樹脂:表層用ポリマーE−1中に、帯電防止剤ハイボロン((株)ボロンインターナショナル製)を30質量部添加して、同様にフィルム成形を行い、本発明−18のフィルムを作製し、表層フィルムは剥がさずにワインダーに巻き取った。このとき、ハイボロンとE−1を混練するために、単軸押出し機(A)と(C)に代えて、ニ軸押出し機を使用した。
【0234】
フィルムの表面比抵抗値を絶縁抵抗測定器(川口電気社製VE−30型等)で測定したところ、本発明−18のフィルムの表裏の表面比抵抗値は1×1011Ω/□であり、本発明のフィルム−1の表裏の表面比抵抗値は5×1014Ω/□であった。
【0235】
巻き取られたフィルムを23℃30%RHの環境下で、1ヶ月間倉庫に保管したが、同様に巻き取られた本発明のフィルム−1に比較し、ロール表面の目視観察の結果表面へのゴミ付着は認められず、帯電防止加工によるゴミ付着防止効果に優れていることが分かった。
【0236】
実施例3
(偏光板の作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、沃化カリウム2質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光子を作製した。
実施例1、2で作製し、表層を剥離した本発明−1〜18のセルロースエステルフィルムまた比較例−1〜4のフィルムを、40℃の2.5N−水酸化ナトリウム水溶液で60秒間アルカリ処理し、更に水洗乾燥して表面をけん化処理した。
【0237】
前記偏光子の両面に、本発明−1〜18のセルロースエステルフィルムまた比較例−1〜4のフィルムのアルカリ処理面を、完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を接着剤として両面から貼合し、保護フィルムが形成された本発明の偏光板1〜18及び比較例の偏光板1〜4を作製した。
【0238】
本発明−1〜18のセルロースエステルフィルムは偏光板加工時に特に問題になる故障の発生はなかった。また、本発明−18のセルロースエステルフィルムは偏光板加工時においてもゴミの付着がなく良好な加工適性を有していた。
【0239】
(液晶表示装置としての特性評価)
富士通製15型ディスプレイVL−150SDの予め貼合されていた両面の偏光板を剥がして、上記作製した偏光板をそれぞれ液晶セルのサイズに合わせて断裁しガラス面に貼合した。
【0240】
前記作製した偏光板2枚を偏光板の偏光軸がもとと変わらないように互いに直交するように貼り付け、液晶表示装置を各々作製した。
【0241】
本発明の偏光板1〜18を用いた液晶表示装置はコントラストも高く、リターデーションのばらつきに起因した色むらもない優れた表示性を示した。これにより、液晶ディスプレイなどの画像表示装置用の偏光板として優れていることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1】本発明に好ましい共押出しダイ溶融製膜装置の概略図を示す。
【図2】本発明に好ましい別の共押出しダイ溶融製膜装置の概略図を示す。
【図3】フィードブロックを有するダイの概略図である。
【図4】マルチマニフォールドダイの概略図である。
【図5】溶融フィルムの引き取りの別形態図である。
【図6】本発明の積層されたセルロースエステルフィルムの構成を示す一例である。
【符号の説明】
【0243】
1 リップ調整ボルト
2 押出し部A
3 押出し部B
4 押出し部C
5 マニフォールドA
6 マニフォールドB
7 マニフォールドC
8 フィードブロック
9 チョークバー
10 調整ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースエステルと可塑剤を含む組成物と、該セルロースエステルと非接着性の熱可塑性樹脂とを両者とも溶融状態で層状に組合わせ、該セルロースエステルと可塑剤を含有する層(A)の両側に、同一種でも異なっていてもよい該熱可塑性樹脂を含有する層(B)を配し、該層(A)、(B)をフラットダイから3層以上積層された状態でフィルム状に押出し、冷却することを特徴とするセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項2】
前記可塑剤が多価アルコールエステル系可塑剤であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項3】
前記セルロースエステルが、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートから選ばれる1種、または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項4】
前記フラットダイがマルチマニフォールドダイであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂を含有する層(B)に含まれる樹脂が同一種の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂を含有する層(B)に含まれる樹脂がポリオレフィン系樹脂の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂を含有する層(B)が帯電防止性を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記積層されたセルロースエステルフィルムの表裏の表面比抵抗値が1×1014Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記セルロースエステルフィルムが少なくとも一方向へ延伸されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂を含有する層(B)を剥離してセルロースエステルフィルムだけを巻き取ることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記セルロースエステルフィルムから熱可塑性樹脂を含有する層(B)を剥離せずに巻き取ることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のセルロースエステルフィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とするセルロースエステルフィルム。
【請求項13】
少なくとも一方の面に請求項12に記載のセルロースエステルフィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
【請求項14】
請求項12に記載のセルロースエステルフィルムまたは請求項13に記載の偏光板を用いたことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−224589(P2006−224589A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−43896(P2005−43896)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】