説明

センサユニット用収納ケース及び搬送装置

【課題】 センサユニットへの塵埃や指紋の付着を防止することを可能とし、且つセンサユニットを機械による自動的な機構で容易に取り出し、搬送することを可能とする。
【解決手段】 収納ケース50はケース本体51及び蓋52からなる。測定機6の支持プレート90に収納ケース50がセットされると、ケース本体51が蓋52に対して相対移動し、内部のセンサユニット12が露呈される。ピックアップ位置にあるセンサユニット12は、ハンドリングヘッド106の爪106a,106bによって把持される。ハンドリングヘッド106の移動によってセンサユニット12はその長手方向に沿って取り出され、搬送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン共鳴などの全反射減衰を利用した測定に用いるセンサユニット用の収納ケースと、その収納ケースからセンサユニットを取り出す搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンパク質やDNAなどの生化学物質間における相互作用の測定や、薬品のスクリーニングなどを行う際に、全反射減衰を利用して試料の反応を測定する測定装置が知られている。
【0003】
このような全反射減衰を利用した測定装置の1つに、表面プラズモン共鳴(Surface Plasmon Resonance)現象を利用した測定装置(以下、SPR測定装置と称す)がある。なお、表面プラズモンとは、金属中の自由電子が集団的に振動することによって生じ、その金属の表面に沿って進む自由電子の粗密波である。
【0004】
例えば、特許文献1などで知られるKretschmann配置を採用したSPR測定装置では、透明な誘電体(以下、プリズムと称す)上に形成された金属膜の表面をセンサ面として、このセンサ面上で試料を反応させた後、プリズムを介してセンサ面の裏面側から全反射条件を満たすように金属膜を照射し、その反射光を測定している。
【0005】
全反射条件を満たすように金属膜に照射された光のうち、エバネッセント波と呼ばれるわずかな光は、反射せずに金属膜内を透過してセンサ面側に染み出す。この際、エバネッセント波の振動数と表面プラズモンの振動数とが一致するとSPRが発生し、反射光の強度を大きく減衰させる。また、この減衰が発生する光の入射角度(共鳴角)は、金属膜上の屈折率に応じて変化する。すなわち、SPR測定装置は、金属膜からの反射光を捉えて共鳴角を検出することにより、センサ面上の試料の反応状況を測定する。
【0006】
タンパク質やDNAなどの生体試料は、乾燥による変性や失活を防ぐため、生理的食塩水や純水、または各種のバッファ液などの溶媒に溶かされた試料溶液として扱われることが多い。特許文献1記載のSPR測定装置は、こうした生体試料の相互作用などを調べるものであり、センサ面の上には試料溶液を送液するための流路が設けられる。また、センサ面にはリガンドとなる試料を固定させるためのリンカー膜が設けられており、流路にリガンド溶液を注入してリンカー膜にリガンドを固定(固定工程)させた後、アナライト溶液を注入してリガンドとアナライトとを接触(測定工程)させることにより、その相互作用を調べている。
【0007】
また、SPR測定装置には、センサユニットに対して光を照射する光源と、前記センサユニットで反射した反射光を受光する検出部とが配置され、SPRの信号測定を行う測定ステージが設けられており、センサユニットは、この測定ステージに着脱自在にセットされる。
【0008】
上記特許文献1に記載されているようなSPR測定装置では、多数のセンサユニットの測定を行い、また固定工程から測定工程への搬送時の利便性の面から、複数のセンサユニットを整列して収納する収納ホルダが使用されており、この収納ホルダにセンサユニットを収納して搬送している。このセンサユニット用の収納ホルダでは、センサユニットの形状に合わせたスリット状の溝が形成されており、この溝に嵌合させることによってセンサユニットを保持させている。そして測定工程では、この溝からセンサユニットを取り出して測定ステージへ搬送する。
【特許文献1】特許第3294605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のような収納ホルダを使用して搬送した場合、搬送中のセンサユニットは外部に露呈しているため、センサユニットに指紋や塵埃などが付着することがある。指紋や塵埃が付着すると測定の精度が低下してしまう。また、このセンサユニットを用いたSPR測定装置では、より効率良く測定を行うことが求められており、上記のようなセンサユニットの取り出し及び測定ステージへの搬送を全て機械によって自動的に行うことが求められている。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、1つ又は複数のセンサユニットを保持し、センサユニットへの塵埃や指紋の付着を防止することを可能とし、且つセンサユニットを機械による自動的な機構で容易に取り出し、搬送することが可能なセンサユニット用の収納ケース及び搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するため、本発明のセンサユニット用収納ケースは、試料の測定に用いる角柱状のセンサユニットを1個又は複数個収納する収納ケースにおいて、前記センサユニットを保持するケース本体と、このケース本体に対してスライド自在に取り付けられる蓋とからなることを特徴とする。なお、前記ケース本体は、前記センサユニットを、その長手方向と略直交する方向に沿って一列に並べて保持し、前記蓋は、前記ケース本体に対してスライドする方向が前記センサユニットの並ぶ方向と略平行であることが好ましい。
【0012】
なお、請求項3に記載された搬送装置では、試料の測定に用いる角柱状のセンサユニットを1個又は複数個収納するケース本体及びこのケース本体に対してスライド自在に取り付けられる蓋とからなる収納ケースから前記センサユニットを取り出して搬送するセンサユニットの搬送装置であって、前記収納ケースを底面から支持する支持台と、この支持台にセットされた前記収納ケースの前記蓋に当接するストッパと、前記収納ケースのケース本体を前記蓋のスライド方向に沿って搬送するケース搬送手段と、前記ケース搬送手段によってケース本体が移動するとき、前記ストッパとの当接によって係止された前記蓋が前記ケース本体に対してスライドし、ケース本体に収納された前記センサユニットが露呈したとき、このセンサユニットの両端部を保持して取り出す保持移動手段とからなることを特徴とする。
【0013】
なお、前記保持移動手段は、前記センサユニットの両端を保持するとともにセンサユニットの長手方向に沿って移動して前記ケース本体から前記センサユニットを取り出すことが好ましい。また、前記ケース搬送手段は、前記移動保持手段によってセンサユニットが取り出された後、前記ケース本体を前記センサユニットの配列ピッチの分だけ移動させて次のセンサユニットを取り出し位置に移動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のセンサユニット用収納ケース及び搬送装置によれば、試料の測定に用いる角柱状のセンサユニットを1個又は複数個収納するケース本体及びこのケース本体に対してスライド自在に取り付けられる蓋とからなる収納ケースを用いており、この収納ケースを底面から支持する支持台と、この支持台にセットされた収納ケースの蓋に当接するストッパと、収納ケースのケース本体を蓋のスライド方向に沿って搬送するケース搬送手段と、ケース搬送手段によってケース本体が移動するとき、ストッパとの当接によって係止された蓋が前記ケース本体に対してスライドし、ケース本体に収納されたセンサユニットが露呈したとき、このセンサユニットの両端部を保持して取り出す保持移動手段とからなる搬送手段を構成しているので、収納ケースに保持されたセンサユニットに指紋や塵埃が付着することを防ぎ、且つ機械による自動的な機構でセンサユニットを取り出して搬送することができる。
【0015】
また、前記保持移動手段が、前記センサユニットの両端を保持するとともにセンサユニットの長手方向に沿って移動して前記ケース本体から前記センサユニットを取り出すこと、あるいは、前記ケース搬送手段が、前記移動保持手段によってセンサユニットが取り出された後、前記ケース本体を前記センサユニットの配列ピッチの分だけ移動させて次のセンサユニットを取り出し位置に移動させることによって、より効率良くセンサユニットを取り出し、搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、全反射減衰を利用した測定装置としてのSPR測定装置2の概略構成を示すブロック図である。SPR測定装置2は、リガンドの固定(固定工程)を行う固定機4と、固定化したリガンドにアナライトを加えて両者の反応状況を測定(測定工程)する測定機6と、この測定機6によって得られたデータの解析(データ解析工程)を行うデータ解析機8とから構成されている。また、固定工程と測定工程とは、別体となったセンサユニット12に対して行われ、複数の試料の測定が円滑に行われるようにされている。
【0017】
図2は、センサユニット12の概略構成を示す分解斜視図である。センサユニット12は、上面に金属膜(薄膜層)13が形成されたプリズム(誘電体ブロック)14と、金属膜13に液体を送液する流路16が形成された流路部材41と、プリズム14の上面と流路部材41の底面とを圧接させた状態で保持する保持部材42とから構成されている。
【0018】
流路部材41は、長尺状に成形されており、その長手方向に沿って6つの流路16が設けられている。流路16は、略コの字型に屈曲された送液管であり、液体を注入する注入口16aと、それを排出する排出口16bとを有している。流路16の管径は約1mm程度であり、注入口16aと排出口16bとの間隔は、約10mm程度である。また、流路16の底部は開放されており、この開放部位は、プリズム14と圧接した際に、金属膜13によって覆われて密閉される。以下、金属膜13のうち、この開放部位で囲まれた部分(図3参照)を、センサセル17と称す。
【0019】
流路部材41は、金属膜13との密着性を高めるため、例えば、ゴムやPDMS(ポリジメチルシロキサン)などの弾性材料で成型されている。これにより、流路部材41は、プリズム14の上面と圧接された際に、弾性変形して金属膜13との接触面の隙間を埋め、各流路16の開放された底部をプリズム14とともに水密に覆う。なお、本例では、流路16の数が6つの例を説明したが、流路16の数はこれに限らず、流路部材41及びプリズム14の寸法などに合わせて適宜個数を変更する。
【0020】
プリズム14の上面には、各流路16と対面する短冊状の金属膜13が、例えば、蒸着によって形成される。この金属膜13には、例えば、金や銀が用いられ、その膜厚は、例えば、50nmである。なお、この膜厚は、金属膜13の素材や、照射される光の波長などに応じて適宜選択される。
【0021】
金属膜13上の各流路16に対応する位置(センサセル17内)には、リガンドを固定させるためのリンカー膜22が形成されている。以下、金属膜13のうち、リンカー膜22が形成された側の面をセンサ面13a、この裏面(プリズム14に接触している面)を光入射面13b(図14参照)と称す。プリズム14は、入射した光を光入射面13bに向けて集光するものであり、金属膜13は、全反射条件を満たすように光入射面13bに光が入射した際に、センサ面13aでSPRを発生させる。
【0022】
プリズム14の長辺側の両側面には、保持部材42の係合部42aと係合する係合爪14aが設けられている。これらの係合により、流路部材41が保持部材42とプリズム14とによって挟み込まれ、その底面とプリズム14の上面とが圧接した状態で保持される。
【0023】
なお、プリズム14には、例えば、ホウケイクラウン(BK7)やバリウムクラウン(Bak4)などに代表される光学ガラスや、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネイト(PC)、非晶性ポリオレフィン(APO)などに代表される光学プラスチックなどを用いることができる。
【0024】
保持部材42の両側面には、断面が円弧状の切り欠き部42bが設けられている。この切り欠き部42b,42cは、後述するケース本体51の抜け止め突起55a,55bと係合する。また、保持部材42の上面には、各流路16の注入口16a及び排出口16bに対応する位置に、ピペットなどの分注手段の先端部を進入させる受け入れ口42c,42dが形成されている。受け入れ口42dは、ピペットから吐出された液体が各注入口16aに導かれるように漏斗状に形成されている。また、各受け入れ口42d,42eは、保持部材42が流路部材41を挟み込んでプリズム14と係合した際に、それぞれの注入口16a及び排出口16bと当接して、流路16と連結する。
【0025】
図3に示すように、金属膜13上に形成されたリンカー膜22には、リガンドが固定されてアナライトとリガンドとの反応が生じる測定領域(以下、act領域と称す)22aと、リガンドが固定されず、act領域22aの信号測定に際しての参照信号を得るための参照領域(以下、ref領域と称す)22bとが設けられている。このref領域22bは、リンカー膜22を製膜する際に形成される。その形成方法としては、例えば、リンカー膜22に対して表面処理を施し、リンカー膜22の半分程度の領域について、リガンドと結合する結合基を失活させることにより、リンカー膜22の半分がact領域22aとなり、残りの半分がref領域22bとなる。
【0026】
図4及び図5は、本発明を適用したセンサユニット12用の収納ケース50を示す斜視図である。収納ケース50は、ケース本体51、及びこのケース本体51に対してスライド自在に取り付けられる蓋52からなる。ケース本体52は、略矩形の箱状で、センサユニット12に合わせて切り欠かれたスリット状の溝55が複数形成されている。なお、図中では、溝55は、8つ形成されているが、これに限らず、1〜7つでもよく、9つ以上でもよい。
【0027】
溝55は、ケース本体51の上面51a,及び両側端面51b,cの一部を切り欠いて形成されており、センサユニット12をその長手方向に沿って挿入可能となっている。この溝55は、センサユニット12の挿入方向とは略直交する方向に沿って1列に並び且つ等間隔に配置されている。さらに、図6に示すように、溝55の途中には、抜け止め突起部55a,55bが形成されている。抜け止め突起部55a,55bは、互いに対面する位置にあり、上述したセンサユニット12の切り欠き部42b,42cに合わせた位置に形成されている。よって、溝55にセンサユニット12を挿入すると、この抜け止め突起部55a,55bがセンサユニット12の切り欠き部42b,42cに係合し、センサユニット12がケース本体51から離脱することを防止する。なお、抜け止め突起部55a,55b及び切り欠き部42b,42cの位置及び個数は、これらに限るものではなく、例えば、互いに対面する位置からずらして設けるようにしてもよいし、センサユニット12及び溝55の片面だけに設けるようにしてもよい。
【0028】
また、ケース本体51の先端及び後端面には、係合穴51fが形成されている。この係合穴51fには、後述する移動台103のプランジャ103aが係合する。さらに、ケース本体51には、側端面51b,51cの上方部から上面51aの一部まで切り欠かれた切り欠き部51d,51eが形成されている。溝55にセンサユニット12が保持されるとき、この切り欠き部51d,51eからセンサユニット12の一部が突出するので、後述するハンドリングヘッド106の爪106a,106bがセンサユニット12の両端を保持することができる。
【0029】
また、ケース本体51には、センサユニット1本分のスペーサ部56を設けており。この部分には、梁57が形成されているため、センサユニット12が挿入できないようになっている。よって、蓋52をケース本体51に対してスライドさせてセンサユニット12を全て露呈させたとき、このスペーサ部56の周囲に蓋52が位置しているので、蓋52がケース本体51から離脱することがない。
【0030】
さらにまた、ケース本体51の一端側(スペーサ部56が設けられているほう)の両側面には、半球状の抜け止め突起部59が設けられており、後述する蓋52の凹部69と係合する。
【0031】
蓋52は、天板部61、側板部62,63、及び底板部66,67からなり、ケース本体51の上面、両側端、及び底面の一部を覆うように形成された略「コ」字状の板状部材である。側板部62,63は、天板部61の両側端から下方へ向かって連続して形成されており、底板部66,67は、側板部62,63の下端から内側へ向かって突出するように形成されている。底板部66,67は一定の間隔を置いて形成されている。この底板部66,67の間からは、後述する保持アームが進入してケース本体51を保持して押圧する。
【0032】
ケース本体51及び蓋52は、蓋52の一端側に形成された開口部68からケース本体52を挿入して嵌合している。これによって、蓋52のスライド方向は、溝55によって保持されたセンサユニット12が一列に並ぶ方向と平行になっている。なお、蓋52の他端側(スペーサ部56の反対側)には、凹部69が設けられている。この凹部69は、蓋52をケース本体51に対してスライド移動させたとき、ケース本体51の抜け止め突起部59と係合する。これによって、蓋52がケース本体51から離脱することをさらに防ぐことができる。
【0033】
このようにしてケース本体51には、ケース本体51にスライド自在に取り付けられる蓋52を設け、内部のセンサユニット12への指紋や塵埃の付着を防いでいるのでセンサユニットに傷が付いたり、測定の精度が低下することを防止することができる。そして、後述する測定工程でセンサユニットを使用するときに、蓋52を開放状態としてセンサユニット12を取り出す。
【0034】
図8は、固定機4の構成を概略的に示す斜視図である。固定機4の土台となる筐体ベース70の上には、複数のセンサユニット12を載置する載置スペース71が確保されている。センサユニット12は、この載置スペース71に載置された状態で固定工程の処理が施される。
【0035】
センサユニット12は、ケース本体51のケース本体51に保持された状態で、載置スペース71に載置される。ケース本体51は、センサユニット12を複数個(本例では、8個)収納できるようになっている。
【0036】
載置スペース71には、ケース本体51を、例えば、10個並べて配置することができるようになっており、その数に応じた台座73が設けられている。また、各台座73には、ケース本体51を位置決めするための位置決め用ボスが形成されている。
【0037】
また、固定機4には、3組のピペット対19を連装したピペットヘッド74が設けられている。このピペットヘッド74は、ケース本体51を介して載置スペース71に配列された各センサユニット12にアクセスして、液体の注入や排出を行う。各ピペット対19は、1対のピペット19a、19b(図14参照)からなり、各ピペット19a、19bは、各センサユニット12の注入口16a、排出口16bのそれぞれに挿入される。各ピペット19a、19bは、それぞれ流路16への液体の注入と、流路16からの吸い出しを行う機能とを備えており、一方が注入動作を行っているときには、他方が吸い出し動作を行うというように、互いに連動する。ピペットヘッド74には、ピペット対19が6組設けられているので、1つのセンサユニット12に含まれる6つの流路16に対して同時に液体を注入、もしくは排出を行うことができる。さらに、固定機4には、図示しないコントローラが設けられている。ピペットヘッド74の吸い込みや吐き出しの動作は、このコントローラによって制御され、吸い込み量や吐き出し量、及びタイミングなどが、ピペット対19毎にそれぞれ決定される。
【0038】
筐体ベース70には、ピペットヘッド74をX、Y、Zの3方向に移動させるヘッド移動機構76が設けられている。ヘッド移動機構76は、例えば、搬送ベルト、プーリ、モータなどから構成される周知の移動機構であり、ピペットヘッド74を上下させる昇降機構と、この昇降機構ごとピペットヘッド74をY方向に移動自在に保持するガイドレール78を含むY方向移動機構と、ガイドレール78を両端で保持し、ガイドレール78ごとピペットヘッド74をX方向に移動させるX方向移動機構とからなる。ヘッド移動機構76は、コントローラによって制御されており、コントローラは、このヘッド移動機構76を駆動して、ピペットヘッド74の前後左右上下の位置を制御する。
【0039】
また、筐体ベース70の上には、載置スペース71の他に、流路16に注入する種々の液体を保管する複数の液保管部81と、ピペットチップ82を保管するピペットチップ保管部83と、ウエル状の複数の升がマトリクス配列されたウエルプレート84とが設けられている。
【0040】
液保管部81の数は、例えば、リガンド溶液、洗浄液、固定用バッファ液、乾燥防止液、活性化液、ブロッキング液などの使用する液体の種類に応じて決められる。各液保管部81には、12個の挿入口が直線状に設けられている。この挿入口の数、及び配列ピッチは、ピペットヘッド74のピペットの数と配列ピッチに応じて決定される。ピペットヘッド74が流路16へ液体を注入する場合には、各液保管部81にアクセスして所望の液体を吸い込んだ後、載置スペース71に移動して各流路16に注入する。
【0041】
ピペットチップ保管部83に保管されたピペットチップ82は、ピペットヘッド74に着脱自在に保持される。ピペットチップ82は、液体と直接接触するので、このピペットチップ82を介して異種の液体が混合しないように、使用する液体毎に交換される。ピペットヘッド74には、ピペットチップ82のピックアップとリリースとを行う機構が組み込まれており、ピペットチップ82の交換が自動的に行われるようになっている。ピペットヘッド74は、ピペットチップ82の交換を行う際に、まず、使用済みのピペットチップ82を図示せぬ廃却部でリリースし、この後、ピペットチップ保管部83にアクセスして未使用のピペットチップ82をピックアップする。
【0042】
ウエルプレート84は、各ピペット19a、19bが吸い上げた液体を一時的に保管したり、複数種類の液体を混合させて混合液を調合する際などに用いられる。
【0043】
また、固定機4が固定工程を行う際には、筐体ベース70がカバーによって覆われて、載置スペース71を含む固定機4の内部が遮蔽される。センサユニット12は、リガンドの固定化が完了するまでの間、載置スペース71上で所定の時間保管される。この際、固定化の進行度合いは、温度によって左右される。そのため、固定機4は、固定化を行っている間、図示せぬ温度調節器によって内部温度を所定の温度に保つ。なお、設定される温度や静置時間などは、固定するリガンドの種類などに応じて適宜決められる。
【0044】
図9は、測定機6の構成を概略的に示す斜視図である。測定機6は、支持プレート(支持台)90、ケース搬送機構(ケース搬送手段)91、ニップローラ92、ピックアップ機構(保持移動手段)93、測定ステージ94、ガイド部材96などを有しており、これらの各部は、筐体ベース97に支持されている。
【0045】
支持プレート90は、固定工程から搬送されてきた収納ケース50が載置される。この支持プレート90は、筐体ベース97に固定されており、略中央部分に開口部90aが形成され、その開口部90aの両側方に蓋52の底板部66,67を支持する支持部90bが形成されている。支持部90bは、筐体ベース95に対して一段凹んでいる位置にあり、この支持部90bの周囲に段差(ストッパ)90c(図10参照)が形成されている。また、支持プレート90の両側方部には、ニップローラ92が配置されている。ニップローラ92は、詳しくは図10に示すように、支持プレート90に載置された収納ケース50を下方に押し付ける。これによって、収納ケース50は上下方向への移動が規制される。
【0046】
ケース搬送機構91は、搬送ベルト101と、この搬送ベルト101に取り付けられたキャリッジ102と、このキャリッジ102と一体に設けられた移動台103とから構成されている。移動台103は、蓋52の底面部66及び67の隙間に合わせた位置に設けられており、ケース本体51の寸法に合わせた断面「コ」字状に形成されている。この移動台103は、図10に示すように、収納ケース50が載置された支持プレート90の下方から開口部90aを通してケース本体51を保持する。そして、搬送ベルト101の回動によってキャリッジ102が移動すると搬送方向Aに沿ってケース本体51を押圧してピックアップ位置(後述)側にケース本体51を移動させる。このケース搬送機構91がケース本体51を移動させると、ケース本体51に取り付けられた蓋52も一体となって移動しようとするが、段差90cに当接して蓋52が係止される。これによって、蓋52は、ケース本体51に対してスライド移動し、内部のセンサユニット12が露呈する(図10に示す状態)。
【0047】
また、移動台103には、その壁面から突出する位置と、壁面内に退避する位置との間で移動するプランジャ103aが複数設けられており、このプランジャ103aがケース本体51に形成された係合穴51fに係合するので、ケース本体51を確実に保持することができる。
【0048】
ピックアップ機構93は、ケース本体51からセンサユニット12を取り出す機構であり、ケース本体51に保持されたセンサユニット12を両側から挟み込みこんだ状態でセンサユニット12を長手方向へ把持移動するハンドリングヘッド106、ナット107、ボールネジ108、パルスモータ109からなる。
【0049】
ボールネジ108は、パルスモータ109の回転駆動を直線運動に変換してナット107を直線移動させる。ハンドリングヘッド106はナット107に固定されており、ナット107と一体になって移動する。ハンドリングヘッド106には、センサユニット12を挟み込む一対の爪106b,106cが設けられており、この爪でセンサユニット12を把持する。ハンドリングヘッド106は、ヘッド本体106aがナット107を介してボールネジ108に取り付けられており、ケース本体51の上方のピックアップ位置(図11に示す位置)と測定ステージ97との間で移動自在に設けられている。なお、ピックアップ位置と測定ステージ97との間には、ガイド部材96が設けられており、ピックアップ機構93によって搬送されるセンサユニット12を搬送方向Bに沿ってガイドする。
【0050】
上述したケース搬送機構91がケース本体51をスライド移動させたとき、ケース本体51に保持されたセンサユニット12は、ピックアップ位置にあるハンドリングユニット106の爪106b,106cの間に挟まれる。ハンドリングヘッド106は、ピックアップ位置でセンサユニット12を把持し、その状態で搬送方向Bに沿って移動して(図12に示す状態)、センサユニット12を測定ステージ97に搬送する。このとき、センサユニット12はその長手方向に沿って移動し、抜け止め突起部55a,55bを乗り越えてケース本体51から取り出される。また、測定が終了した後、ピックアップ位置に戻ってセンサユニット12をリリースし、測定済みのセンサユニット12をケース本体51に戻す。そしてハンドリングヘッド106が測定後のセンサユニットをケース本体51にリリースすると、ケース搬送機構91がセンサユニット12の配列ピッチPY(図6参照)の分だけケース本体51を搬送方向Aに沿って移動させる。これによって次のセンサユニット12がピックアップ位置に移動し、ピックアップ機構93がピックアップを行う。以下、ケース本体51の搬送と、センサユニット12のピックアップ及びリリースが繰り返されて全てのセンサユニット12に対する測定が行われる。
【0051】
測定ステージ97には、センサユニット12が配置される位置の下方に、照明部32と検出器(検出手段)33とからなる測定部31が設けられている。ハンドリングヘッド106は、センサユニット12を搬送方向Bに沿って移動させて1つ目のセンサセル17を測定位置へ移動させる。そして1つ目のセンサセル17に対する測定を終えるとハンドリングヘッド106は、センサユニット12を各センサセル17の配列ピッチPC(図5参照)の分だけ搬送方向Bに沿って移動させる。以降同様にして各センサセル17を、照明部32の光路上の測定位置に順次進入させる。なお、照明部32及び検出器33は、図8、及び図3に示すように、センサユニット12に照射される入射光線及びセンサ面13aで反射する反射光線の向きと、各センサセル17の配列方向、すなわち、各流路16水平部分の流れ方向とが直交するように配置される。
【0052】
リガンドとアナライトの反応状況は、共鳴角(センサ面13aに対して照射された光の入射角)の変化として表れる。照明部32は、例えば、光源34と、集光レンズ、拡散板、偏光板などからなる光学系36とから構成(図14参照)され、配置位置及び設置角度は、照明光の入射角が全反射条件を満足するように調整される。
【0053】
光源34としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)、SLD(Super Luminescent Diode)などの発光素子が用いられる。光源34は、こうした発光素子を1個使用し、この単一光源から各光入射面13bに向けて光を照射する。拡散板は、光源34からの光を拡散して、発光面内の光量ムラを抑える。偏光板は、照射光のうちSPRを生じさせるp偏光(入射面に平行な振動電場を持つ直線偏光)のみを通過させる。なお、LDを使用する場合など、光源34が発する照射光自体の偏光の向きが揃っている場合には、偏光板は不要である。また、偏光が揃っている光源を使用した場合でも、拡散板を通過したことによって偏光の向きが不揃いになってしまう場合には、偏光板を使用して偏光の向きを揃える。こうして拡散及び偏光された光は、集光レンズによって集光されてプリズム14に照射される。これにより、光強度にバラツキがなく様々な入射角を持つ光を光入射面13bに入射させることができる。
【0054】
検出器33は、光入射面13bで反射する光を受光して、その光強度に応じたレベルの電気信号を出力する。光入射面13bには、様々な角度の光が入射するので、光入射面13bでは、それらの光が、それぞれの入射角に応じた反射角で反射する。検出器33は、これらの様々な反射角の光を受光する。この検出器33には、例えば、CCDエリアセンサやフォトダイオードアレイが用いられ、光入射面13bにおいて様々な反射角で反射する反射光を受光して光電変換し、それをSPR信号としてデータ解析機8に出力する。なお、測定ステージ97において、照明部32が照射した光のセンサユニット12からの反射光を検出器33で受光し、光電変換したSPR信号をデータ解析機8に出力するまでの処理が、請求項記載の測定処理に相当する。
【0055】
また、図3に示すように、リンカー膜22の上には、act領域22aとref領域22bとが形成されている。検出器33は、act領域22aに対応するSPR信号をact信号として出力し、ref領域22bに対応するSPR信号をref信号として出力する。なお、ref信号は、データ解析機8においてact信号に乗った外乱に起因するノイズをキャンセルする際に用いられる。
【0056】
測定ステージ79の傍らには、図9に示すように、アナライト溶液を保管するウエルプレート110が載置されている。例えば、このウエルプレート110の各ウエルには、異なる種類のアナライト溶液が収容されている。
【0057】
図9に示すように、測定機6には、固定機4のピペット対19と同様の機能を有するピペット対26が設けられている。固定機4のヘッド移動機構76とほぼ同様に構成されたヘッド移動機構113は、ピペット対26を有するピペットヘッド114を、X、Y、Zの3方向に移動させ、センサユニット12、及びウエルプレート110にそれぞれアクセスさせる。ピペットヘッド114は、測定対象となるセンサセル17の流路16にアクセスして、各種の液体の注入及び排出を行う。なお、ピペットヘッド114は、測定対象となる特定のセンサセル17に対して液体の注入及び排出を行うものであるから、固定機4のピペットヘッド74とは異なり、ピペット対26が1組だけ設けられている。
【0058】
図13は、データ解析機8の構成を概略的に示すブロック図である。データ解析機8は、例えば、入力装置120、CPU(セントラル・プロセッシング・ユニット)121、ROM(リード・オンリー・メモリ)122、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)123、HDD(ハード・ディスク・ドライブ)124、モニタ125、通信I/F126、信号処理部127などから構成されている。入力装置120は、例えば、キーボードやマウスなどであって、ユーザからの指示をデータ解析機8に入力する。CPU121は、データ解析機8の各部を統括的に制御する。ROM122には、制御用プログラムや各種の設定データなどが記憶されている。RAM123は、CPU121や信号処理部127が演算を行う際などに作業用メモリとして使用される。HDD124は、周知のデータストレージデバイスであり、このHDD124には、制御用プログラムやデータ解析プログラムなどの各種のプログラムが格納されている。また、HDD124には、測定機6によって測定された各種の測定データが記録される。通信I/F126は、検出器33から出力されたSPR信号などを受信する。信号処理部127は、取得したSPR信号に基づいてデータ解析を行う。モニタ125は、検出したSPR信号や、それに基づく解析結果などを表示する。
【0059】
次に、図14に示す説明図を用いて、上記構成によるSPR測定装置2のSPR測定方法について説明する。
【0060】
リンカー膜22にリガンドを固定する固定工程は、ケース本体51を介してセンサユニット12を固定機4の載置スペース71に載置した状態で行われる。固定機4は、ユーザからの固定開始指示に応じてヘッド移動機構76を駆動し、ピペット対19を用いて、リガンド21aを溶媒に溶かしたリガンド溶液21を、注入口16aから注入する。
【0061】
固定機4は、リガンド溶液21を注入するリガンド固定化処理を行う前の前処理として、まず、リンカー膜22に対して固定用バッファ液を送液してリンカー膜22を湿らせた後、リンカー膜22にリガンドが結合しやすくするリンカー膜22の活性化処理を施す。例えば、アミンカップリング法では、リンカー膜22としてカルボキシメチルデキストランが使用され、リガンド内のアミノ基をこのデキストランに直接共有結合させる。この場合の活性化液としては、N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド(EDC)と、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)との混合液が使用される。固定機4は、この活性化処理の後、固定用バッファ液によって流路16を洗浄する。
【0062】
なお、固定用バッファ液や、リガンド溶液21の溶媒(希釈液)としては、例えば、各種のバッファ液(緩衝液)の他、生理的食塩水に代表される生理的塩類溶液や、純水などが使用される。これらの各液の種類、pH値、混合物の種類及びその濃度などは、リガンド21aの種類に応じて適宜決められる。例えば、リガンド21aとして生体試料を使用する場合には、pHを中性付近に調整した生理的食塩水が用いられる場合が多い。しかし、上記アミンカップリング法では、リンカー膜22が、カルボキシメチルデキストランにより負(マイナス)に帯電するので、このリンカー膜22と結合しやすいようにタンパク質を陽(プラス)に帯電させるため、生理的とはいえない高濃度のリン酸塩を含む緩衝作用の強いリン酸緩衝溶液(PBS:phosphatic-buffered,saline)などが使用される場合もある。
【0063】
固定機4は、こうした活性化処理及び洗浄を行った後、流路16にリガンド溶液21を注入して、リガンド固定化処理を行う。リガンド溶液21が流路16へ注入されると、溶液中に拡散しているリガンド21aが沈殿してリンカー膜22に徐々に堆積する。これにより、接触したリガンド21aがリンカー膜22と結合し、リンカー膜22上にリガンド21aが固定される。なお、固定化には、通常1時間程度かかり、この間、センサユニット12は、温度などの環境条件が所定の条件に設定された状態で保管される。また、固定化が進んでいる間、流路16内のリガンド溶液21を静置しておいてもよいが、流路16内のリガンド溶液21を攪拌して流動させるようにしてもよい。こうすることで、リガンド21aとリンカー膜22との結合が促進され、リガンド21aの固定量を増加させることができる。
【0064】
固定機4は、リンカー膜22へのリガンド21aの固定化が完了すると、リガンド溶液21をピペット19bによって吸い出して流路16から排出させた後、流路16に洗浄液を注入して固定化が完了したリンカー膜22の洗浄を行う。また、固定機4は、必要に応じてブロッキング液を注入し、リガンド21aと結合しなかったリンカー膜22の反応基を失活させるブロッキング処理を行う。ブロッキング液としては、例えば、エタノールアミン−ヒドロクロライドが使用される。このブロッキング処理を行った場合には、再び流路16が洗浄される。最終的な洗浄を行った後、固定機4は、流路16に乾燥防止液を注入する。センサユニット12は、リンカー膜22が乾燥防止液に浸された状態で測定までの間、保管される。
【0065】
測定工程は、収納された各センサユニット12の固定化が完了したケース本体51を、ホルダ搬送機構71の支持プレート90に載置した状態から始まる。測定機6は、ユーザからの測定開始指示に応じてケース本体51をピックアップ位置に移動させるとともに、ピックアップ機構93を駆動して、所定のセンサユニット12を測定ステージ94に搬送する。
【0066】
測定ステージ97にセンサユニット12を搬送した測定機6は、ヘッド移動機構113を駆動して、まず、流路16に測定用バッファ液を注入する。この後、アナライトを溶媒に溶かしたアナライト溶液27を注入し、その後、再び測定用バッファ液を注入する。なお、最初に測定用バッファ液を注入する前に、一度流路16の洗浄を行うようにしてもよい。検出器33によるデータの読み取りは、基準となる信号レベルを検出するために、最初に測定用バッファ液を注入した直後から開始され、アナライト溶液27を注入した後、再び測定用バッファ液が注入されるまでの間行われる。これにより、基準レベルの検出、アナライトとリガンドとの反応状況、結合したアナライトとリガンドとの測定用バッファ液注入による脱離までのSPR信号を測定することができる。
【0067】
測定用バッファ液や、アナライト溶液27の溶媒(希釈液)としては、例えば、各種のバッファ液(緩衝液)の他、生理的食塩水に代表される生理的塩類溶液や、純水などが使用される。これらの各液の種類、pH値、混合物の種類及びその濃度などは、リガンドやアナライトの種類に応じて適宜決められる。例えば、アナライトを溶けやすくするために、生理的食塩水にDMSO(ジメチル−スルホ−オキシド)を含ませてもよい。このDMSOは、信号レベルに大きく影響する。上述したとおり測定用バッファ液は、基準レベルの検出に用いられるので、アナライト溶液27中にDMSOが含まれる場合には、そのDMSO濃度と同程度のDMSO濃度を有する測定用バッファ液使用することが好ましい。
【0068】
なお、アナライト溶液27は、長時間(例えば、1年)保管されることも多く、そうした場合には、経時変化によって初期のDMSO濃度と測定時のDMSO濃度との間に濃度差が生じてしまう場合がある。厳密な測定を行う必要がある場合には、こうした濃度差をアナライト溶液27を注入したときのref信号のレベルから推定し、測定データに対して補正(DMSO濃度補正)を行うことが好ましい。
【0069】
DMSO濃度補正のための補正データは、アナライト溶液27を注入する前に、DMSO濃度が異なる複数種類の測定用バッファ液を流路16に注入して、このときのDMSO濃度変化に応じたref信号のレベルとact信号のレベルの、それぞれの変化量を調べることにより求められる。
【0070】
リガンドとアナライトとの反応状況は、検出器33の受光面内における反射光の減衰位置の推移として表れる。例えば、アナライトがリガンドと接触する前後では、センサ面13a上の屈折率が異なり、SPRが発生する共鳴角が異なる。そして、アナライトがリガンドと接触して反応を開始すると、それに応じて反射光の共鳴角が変化を開始し、受光面内における反射光の減衰位置が移動し始める。測定機6は、こうして得た試料の反応状況を表すSPR信号を、データ解析機8に出力する。
【0071】
なお、図14では、測定機6の構成が明確になるように、便宜的に光入射面13bへの入射光線及びそこで反射する反射光線の向きが、流路16内を流れる液体の方向と平行になるように、照明部32と検出器33とが配置されているが、図3及び図9に示すように、実際には、入射光線及び反射光線の向きが、液体の流れる方向と直交する方向(紙面に直交する方向)に照射されるように、照明部32と検出部33とが配置される。但し、測定部31を、この図14に示すように配置して測定を行ってもよい。
【0072】
データ解析工程では、測定機6で得たSPR信号をデータ解析機8で解析して、アナライトの特性を定量分析する。データ解析機8は、通信I/F126を介して検出器33からSPR信号を受け取り、このSPR信号を信号処理部127に送る。
【0073】
信号処理部127は、ROM122やHDD124に記憶されたデータ解析プログラムに基づき、測定機6が得たact信号とref信号との差や比を求めてデータ解析を行う。例えば、act信号とref信号との差分データを求め、この差分データを測定データとし、これに基づいて解析を行う。こうすることで、センサユニット12やリンカー膜22などの個体差や、装置の機械的な変動などといった外乱に起因するノイズをキャンセルすることが可能となり、S/N比の良好な精度の高い測定を行うことができる。また、信号処理部127は、解析結果をモニタ125に表示するとともに、HDD124に記録する。
【0074】
次に、図15に示すフローチャートを参照しながら、本実施形態のSPR測定装置2の作用について説明する。測定機6による測定工程では、前述のように、収納された各センサユニット12の固定化が完了したケース本体51及びこのケース本体51に取り付けられた蓋52からなる収納ケース50を、ホルダ搬送機構71の支持プレート90に載置した状態から始まる。
【0075】
支持プレート90に収納ケース50がセットされると、ケース搬送機構91が作動して、1つめのセンサユニット12をピックアップ位置に移動させる。センサユニット12がピックアップ位置に到達すると、ピックアップ機構93が作動してセンサユニット12をピックアップ位置から測定ステージ94へと移動させる。測定ステージ94にセンサユニット12が到達すると測定部31による測定を開始する。そしてセンサユニット12の全てのセンサセル17に対して測定が終了すると、ピックアップ機構93はセンサユニット12を測定ステージからピックアップ位置へと戻す。
【0076】
センサユニット12がケース本体51にリリースされると、ケース搬送機構91が次のセンサユニット12をピックアップ位置へと移動させ、このセンサユニット12をピックアップ機構93が測定ステージ94へと移動させる。このようにしてケース本体12に保持された最後のセンサユニット12が測定を終えてケース本体51にリリースされるまで同様の動作を繰り返す。そして最後のセンサユニット12が測定を終えてケース本体51にリリースされると、ケース搬送機構91は逆方向へスライド移動してケース本体51を蓋52の側へ戻す。これによって蓋52はケース本体51を覆い隠す閉じ位置となる。
【0077】
このように、センサユニット12を収納する収納ケース50を、ケース本体51と、これに対してスライド自在に取り付けられる蓋52とから構成し、このセンサユニット12を収納した収納ケース50からセンサユニットを取り出して測定を行う測定工程で、収納ケース50から取り出すときだけ、内部のセンサユニット12を露呈させるようにしているので、センサユニット12に指紋や塵埃が付着することを確実に防止することが可能となり、且つ収納ケース50からセンサユニットを取り出して測定ステージへ搬送し、また収納ケースへと戻す作業を全て機械による自動制御で行うことができる。さらにまた、測定後のセンサユニット12は、収納ケース50に戻され、蓋52が閉じ位置となるので、測定後のセンサユニットの後処理及び廃棄の際に、液体がこぼれたり、作業者の手に付着することがなく便利である。
【0078】
なお、上記実施形態では、固定工程を行なう固定機4と、測定工程を行なう測定機6とをそれぞれ別の筐体に設けた例を説明しているが、これに限らず、固定工程及び測定工程をそれぞれ行なうことが可能な測定装置として1つの筐体の中に固定機及び測定機の構成を設ける構成としてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、誘電体ブロックとしてプリズム14を示しているが、誘電体ブロックには、この他に、光学ガラスや光学プラスチックなどを板状にしたものや、これらの板状のものとプリズムとを光学面平滑剤(例えば、光学マッチングオイル)で一体化させたものなどを含めるものとする。
【0080】
さらに、上記実施形態では、全反射減衰を利用した測定装置の一例として、SPR測定装置を示したが、全反射減衰を利用した測定装置としては、この他に、例えば、漏洩モードセンサが知られている。漏洩モードセンサは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を透過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において、導波モードが励起されると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。導波モードが励起される入射角は、SPRの共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射角の減衰を検出することにより、前記センサ面上の化学反応が測定される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】SPR測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】センサユニットの概略構成を示す分解斜視図である。
【図3】1つのセンサセルを抜き出して説明する説明図である。
【図4】センサユニット用収納ケースの外観斜視図である。
【図5】収納ケースの構成を示す斜視図である。
【図6】ケース本体の一部を拡大した斜視図である。
【図7】蓋の一部を拡大した斜視図である。
【図8】固定機の構成を概略的に示す斜視図である。
【図9】測定機の構成を概略的に示す斜視図である。
【図10】ケース搬送機構の動作を示す説明図である。
【図11】センサユニットがピックアップ位置にあるときの状態を示す斜視図である。
【図12】ピックアップ機構がセンサユニットを搬送するときの状態を示す斜視図である。
【図13】データ解析機の構成を概略的に示すブロック図である。
【図14】SPR測定方法の説明図である。
【図15】測定工程の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0082】
2 SPR測定装置
4 固定機
6 測定機
8 データ解析機
12 センサユニット
91 ケース搬送機構(ケース搬送手段)
72 ピックアップ機構(移動保持手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の測定に用いる角柱状のセンサユニットを1個又は複数個収納するセンサユニット用収納ケースにおいて、
前記センサユニットを保持するケース本体と、このケース本体に対してスライド自在に取り付けられる蓋とからなることを特徴とするセンサユニット用収納ケース。
【請求項2】
前記ケース本体は、前記センサユニットを、その長手方向と略直交する方向に沿って一列に並べて保持し、前記蓋は、前記ケース本体に対してスライドする方向が前記センサユニットの並ぶ方向と略平行であることを特徴とする請求項1記載のセンサユニット用収納ケース。
【請求項3】
試料の測定に用いる角柱状のセンサユニットを1個又は複数個収納するケース本体及びこのケース本体に対してスライド自在に取り付けられる蓋とからなる収納ケースから前記センサユニットを取り出して搬送するセンサユニットの搬送装置であって、
前記収納ケースを底面から支持する支持台と、この支持台にセットされた前記収納ケースの前記蓋に当接するストッパと、前記収納ケースのケース本体を前記蓋のスライド方向に沿って搬送し、前記ストッパとの当接によって係止された前記蓋を前記ケース本体に対してスライドさせるケース搬送手段と、前記蓋が前記ケース本体に対してスライドすることによってケース本体に収納された前記センサユニットが露呈したとき、このセンサユニットの両端部を保持して取り出す保持移動手段とからなることを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
前記保持移動手段は、前記センサユニットの両端を保持するとともにセンサユニットの長手方向に沿って移動して前記ケース本体から前記センサユニットを取り出すことを特徴とする請求項3記載の搬送装置。
【請求項5】
前記ケース搬送手段は、前記移動保持手段によってセンサユニットが取り出された後、前記ケース本体を前記センサユニットの配列ピッチの分だけ移動させて次のセンサユニットを取り出し位置に移動させることを特徴とする請求項3記載の搬送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−85794(P2007−85794A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272753(P2005−272753)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】