説明

センサ付き転がり軸受装置

【課題】車輪のモーメント荷重や軸方向の並進荷重を求めることが可能なセンサ装置を備え、上記センサ装置と独立のABSセンサを設置しなくても、回転軌道部材の回転速度を検出することができるセンサ付き転がり軸受装置を提供すること。
【解決手段】ターゲット部材73の外周面で構成される被変位検出部の一部に、軸方向に延在する溝155を有する環状部150を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道部材、転動体およびセンサ装置を有するセンサ付き転がり軸受装置に関し、特に、変位センサを有するハブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、センサ付き転がり軸受装置としては、特開2001−21577号公報(特許文献1)に記載されているハブユニットがある。
【0003】
このハブユニットは、回転軌道輪、固定軌道輪および一つの変位センサを備え、上記変位センサは、上記固定軌道輪に設けられている。具体的には、上記固定軌道輪の外周面は、径方向に延在する穴を有し、上記変位センサは、上記穴に挿入されている。上記変位センサの検出面は、上記回転軌道輪の外周面に向けられている。
【0004】
上記変位センサは、車両の車輪に荷重が作用した際に発生する回転軌道輪の外周面の変位によって変動する回転軌道輪と固定軌道輪との間のギャップ(具体的には、このギャップに対応して変化する電気信号)を検出するようになっている。また、上記ハブユニットは、上記変位センサが検出したギャップに基づいて車輪に作用する鉛直方向の荷重を算出するようになっている。
【0005】
上記従来のセンサ付き転がり軸受装置では、上記変位センサが一つで、かつ、上記変位センサの検出面が、上記回転軌道輪の外周面に向けられているから、変位センサの検出値に基づいて車輪に対して鉛直方向に作用する並進荷重を求めることは可能である一方、車両の旋回走行時の遠心力等に伴って発生する車両の前後方向のモーメント荷重や、車両の上下方向のモーメント荷重や、車輪の軸方向の並進荷重を求めることが不可能であるという問題がある。
【0006】
また、上記従来のセンサ付き転がり軸受装置では、回転軌道輪(車輪)の回転速度を検出したい場合、変位せンサと独立のABSセンサが別途必要になり、センサ付き転がり軸受装置が大型化すると共に、センサ付き転がり軸受装置の製造コストが高くなるという問題がある。
【特許文献1】特開2001−21577号公報(図8参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、車輪のモーメント荷重や軸方向の並進荷重を求めることが可能なセンサ装置を備え、上記センサ装置と独立のABSセンサを設置しなくても、回転軌道部材の回転速度を検出することができるセンサ付き転がり軸受装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明のセンサ付き転がり軸受装置は、
軌道面を内周面に有する第1軌道部材と、
軌道面と、環状の被変位検出部とを外周面に有する第2軌道部材と、
上記第1軌道部材の上記軌道面と、上記第2軌道部材の上記軌道面との間に配置された転動体と、
上記被変位検出部の径方向の変位と、上記被変位検出部の軸方向の変位とを検出するセンサ装置と
を備え、
上記被変位検出部は、上記被変位検出部の周方向に互いに間隔をおいて位置すると共に、上記軸方向に延在する複数の溝を有する環状部を有し、
上記センサ装置は、
上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第1変位検出部と、
上記第1変位検出部に上記軸方向に間隔をおいて位置すると共に、上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第2変位検出部と、
上記第1変位検出部および第2変位検出部のうちの少なくとも一方の出力に基づいて、上記第1変位検出部および第2変位検出部のうちの少なくとも一方に対する上記環状部の相対回転に伴う信号を検出する回転信号検出部と、
上記第1変位検出部の出力から上記被変位検出部の変位に伴う信号を検出すると共に、上記第2変位検出部の出力から上記被変位検出部の変位に伴う信号を検出する変位信号検出部と
を有していることを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、互いに軸方向に離間されている、第1変位検出部と、第2変位検出部とを有しているから、第1変位検出部の検出信号と、第2変位検出信号の検出信号に基づいて、軸方向の並進の変位に基づく並進荷重を算出できるのは勿論のこと、センサ付き転がり軸受装置の軸方向の位置による変位の変動を検出できて、この変位の変動に基づいて、センサ付き転がり軸受装置に作用しているモーメント荷重を算出できる。
【0010】
また、本発明によれば、被変位検出部が、上記被変位検出部の周方向に互いに間隔をおいて位置すると共に、上記軸方向に延在する複数の溝を有する環状部を有し、かつ、上記センサ装置が、上記第1変位検出部の出力および第2変位検出部のうちの少なくとも一方の出力に基づいて、上記環状部の相対回転に伴う信号を検出する回転信号検出部と、上記第1変位検出部の出力から上記被変位検出部の変位に伴う信号を検出すると共に、上記第2変位検出部の出力から上記被変位検出部の変位に伴う信号を検出する変位信号検出部とを有しているから、上記環状部の溝と、その溝に周方向に連なる丘の位置の検出により、環状部の相対回転速度に伴うパルス信号を獲得することができて、環状部の相対回転速度を検出することができる。すなわち、変位を検出される被変位検出部が、被パルス信号発生部としての環状部を形成しているから、変位検出部に回転速度検出機能を兼用させることができて、センサ付き転がり軸受装置をコンパクトにすることができると共に、センサ付き転がり軸受装置の製造コストを抑制できる。
【0011】
また、一実施形態では、
上記被変位検出部は、上記環状部に段部を介して連なる第1円筒面部と、上記環状部の上記第1円筒面部側とは反対側に段部を介して連なると共に、上記第1円筒面部と略同一の円筒面上に位置する第2円筒面部とを有し、
上記各溝は、上記環状部の上記軸方向の一端から上記環状部の上記軸方向の他端まで上記軸方向に延在し、
上記第1変位検出部と上記第2変位検出部とは、上記軸方向から見て略重なり、
上記第1変位検出部の上記検出面は、上記径方向から見て、上記第1円筒面部の上記環状部側の端部と、上記環状部の上記第1円筒面部側の端部とに重なる一方、上記第2変位検出部の上記検出面は、上記径方向から見て、上記第2円筒面部の上記環状部側の端部と、上記環状部の上記第2円筒面部側の端部とに重なっている。
【0012】
上記実施形態によれば、環状部と第1円筒部との間の段部の軸方向の位置および環状部と第2円筒部との間の段部の軸方向の位置を検出することにより、センサ付き転がり軸受装置の軸方向の並進の変位を容易に検出できる。
【0013】
また、一実施形態では、上記環状部の表面は、複数の鋼板を上記軸方向に積層してなっている。
【0014】
上記実施形態によれば、上記環状部の表面が、磁気特性が良好で、磁束が通過し易くて、渦電流が発生しにくい構造、すなわち、複数の鋼板を上記軸方向に積層してなる構造をしているから、渦電流の発生に起因する電気信号の損失の低減を行うことができて、センサの感度を高くすることができる。
【0015】
また、一実施形態では、
上記複数の溝は、略同一の幅であり、上記周方向に等間隔に配置され、
上記第1変位検出部と上記第2変位検出部とは、上記軸方向から見て略重なると共に、上記第1変位検出部と上記第2変位検出部の夫々は、上記周方向に等間隔に配置された4つの変位センサからなり、
上記環状部と上記第1変位検出部とを通る上記径方向の断面において、
上記複数の溝のうちで、上記周方向に隣接する二つの上記溝を、第1溝および第2溝とし、
上記第1溝と上記第2溝との間に位置する丘を、中間丘とし、
上記中間丘の上記周方向の中点と、上記環状部の中心とを通過する直線を、丘中心通過直線とし、
上記丘中心通過直線に平行で、上記第1溝の上記周方向の一端を通過する直線と、上記丘中心通過直線に平行で、上記第1溝の上記周方向の他端を通過する直線との距離をA[mm]とし、
上記丘中心通過直線に平行で、上記中間丘の上記周方向の一端を通過する直線と、上記丘中心通過直線に平行で、上記中間丘の上記周方向の他端を通過する直線との距離をB[mm]とし、
上記第1変位検出部の上記検出面の長さの1/4をC[mm]と
したとき、
A<B、C<A+B、かつ、B<Cである。
【0016】
上記実施形態によれば、A<Bであるから、環状部に溝加工を容易に行うことができる。また、C<A+Bであるから、パルス信号の分解能を高くすることができる。また、B<Cであるから、短時間の相対回転の回転速度を算出できる。
【0017】
また、一実施形態では、
上記第2軌道部材は、ロータを取り付けるためのロータ取付用のフランジを有すると共に、上記第1軌道部材は、車体を取り付けるための車体取付用のフランジを有し、
上記複数の溝は、上記周方向に等間隔に配置され、
上記第1変位検出部と上記第2変位検出部とは、上記軸方向から見て略重なると共に、上記第1変位検出部と上記第2変位検出部の夫々は、上記周方向に等間隔に配置された4つの変位センサからなり、
上記変位信号検出部は、上記各変位センサにおいて、上記各変位センサが出力する信号から上記被変位検出部の変位に伴う信号を検出し、
上記センサ装置は、上記変位信号検出部からの信号を受けて、上記第1変位検出部の上記変位センサの夫々において、上記第1変位検出部の上記変位センサの上記被変位検出部の変位に伴う信号と、上記第1変位検出部の上記変位センサに略上記軸方向に重なる上記第2変位検出部の上記変位センサの上記被変位検出部の変位に伴う信号との差を算出して、この差に基づいて上記車輪に作用している複数のモーメント荷重を算出するモーメント荷重算出部を有している。
【0018】
上記実施形態によれば、モーメント荷重算出部で、車輪に作用しているモーメント荷重を算出できる。したがって、車輪の回転速度、車輪に作用しているモーメント荷重を算出できて、これらの情報に基づいて、車両の走行の際の運転制御を正確に行うことができる。
【0019】
また、上記実施形態によれば、上記モーメント荷重算出部は、上記第1変位検出部の上記変位センサの夫々において、上記第1変位検出部の上記変位センサの上記被変位検出部の変位に伴う信号と、上記第1変位検出部の上記変位センサに略上記軸方向に重なる上記第2変位検出部の上記変位センサの上記被変位検出部の変位に伴う信号との差を算出して、この差に基づいて上記車輪に作用しているモーメント荷重を算出するようになっているから、検出する方向における変位の検出の感度を略2倍にすることができると共に、検出する方向における温度ドリフトのノイズを除去することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のセンサ付き転がり軸受装置によれば、互いに軸方向に離間されている、第1変位検出部と、第2変位検出部とを有しているから、第1変位検出部の検出信号と、第2変位検出信号との信号に基づいて、軸方向の並進の変位を算出できるのは勿論のこと、センサ付き転がり軸受装置の軸方向の位置による変位の変動を検出できて、この変位の変動に基づいて、センサ付き転がり軸受装置に作用しているモーメント荷重を算出できる。
【0021】
また、本発明のセンサ付き転がり軸受装置によれば、被変位検出部における環状部の溝と、その溝に周方向に連なる丘の位置の検出により、環状部の相対回転に伴うパルス信号を獲得することができて、環状部の相対回転の回転速度を検出することができる。すなわち、変位を検出される被変位検出部に、被パルス信号発生部としての役割を兼用させることができ、変位検出部で、上記環状部の上記回転速度を検出することができる。したがって、変位検出部に独立なABSセンサを別途設ける必要がないから、センサ付き転がり軸受装置をコンパクトにすることができると共に、センサ付き転がり軸受装置の製造コストを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明のセンサ付き転がり軸受装置の一実施形態であるハブユニットの軸方向の断面図である。
【0024】
このハブユニットは、内軸1、内輪2、第1軌道部材としての外輪3、転動体としての複数の第1の玉4、転動体としての複数の第2の玉5、ケース部材6、および、センサ装置10を備える。
【0025】
上記内軸1は、小径軸部19と、中径軸部20と、第2軸部としての大径軸部21とを有している。上記小径軸部19の外周面には、ネジが形成されている。上記中径軸部20は、小径軸部19に段部18を介して連なると共に、小径軸部19の外径よりも大きい外径を有している。上記大径軸部21は、中径軸部20の小径軸部19側とは反対側に位置している。上記大径軸部21は、中径軸部20に段部22を介して連なると共に、中径軸部20の外径よりも大きい外径を有している。上記大径軸部21の外周面は、軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝23を有し、この軌道溝23の外径は、中径軸部20から離れるにしたがって、大きくなっている。
【0026】
上記内軸1は、センター穴31を有している。上記センター穴31は、内軸1の軸方向の大径軸部21側の端面の径方向の中央部に、形成されている。上記第センター穴31は、円筒状の部分を有し、軸方向に所定距離延在している。また、上記内軸1は、軸方向の大径軸部21側の端部に、ロータ(あるいは車輪)(図示せず)を取り付けるための、ロータ取付用のフランジ(あるいは車輪取付用のフランジ)50を有している。
【0027】
上記内輪2は、内軸1の中径軸部20の外周面に外嵌されて固定されている。上記内輪2の軸方向の大径軸部21側の端面は、上記段部22に当接している。上記内輪2は、その外周面の大径軸部21側に軌道面としてのアンギュラ型の軌道溝28を有している。この軌道溝28の外径は、大径軸部21から離れるにしたがって、大きくなっている。上記内輪2の外周面は、軸方向の大径軸部21側とは反対側に、円筒外周面26を有し、この円筒外周面26は、軌道溝28の大径軸部21側とは反対側に位置する軌道肩部29に段部30を介して連なっている。軌道肩部29は、円筒外周面35を有している。内輪2の外周面の軸方向の端部に位置する円筒外周面26の外径は、軌道肩部29の円筒外周面35の外径よりも小さくなっている。
【0028】
内輪2の軸方向の大径軸部21側の端面は、段部22に当接している。図1に示すように、ナット63が、小径軸部19のネジに螺合している。内輪2の軸方向の大径軸部21側とは反対側の端面は、ナット63の軸方向の大径軸部21側の端面に当接している。ナット63を、軸方向の大径軸部21側に所定距離ネジ込むことにより、内輪2を、内軸1に確実に固定するようになっている。
【0029】
上記外輪3は、大径軸部21の径方向の外方に位置している。上記外輪3の内周面は、軌道面としてのアンギュラ型の第1軌道溝44と、軌道面としてのアンギュラ型の第2軌道溝45とを有している。上記外輪3は、車体への固定のための車体取付用のフランジ75を有している。上記複数の第1の玉4は、内輪2の軌道溝28と、外輪3の第1軌道溝44との間に、第1保持器40によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されており、上記複数の第2の玉5は、内軸1の軌道溝23と、外輪3の第2軌道溝45との間に、第2保持器41によって保持された状態で、周方向に互いに間隔をおいて配置されている。
【0030】
上記ケース部材6は、筒部材52と、円板状の蓋部材53とで構成されている。筒部材52の内周面の外輪3側の端部は、外輪3の外周面の小径軸部19側の端部に止めネジ55により固定されている。一方、蓋部材53は、筒部材52の外輪側とは反対側の開口を閉塞している。このようにして、センサ付き転がり軸受装置の内部へ異物が侵入するのを防止している。
【0031】
上記センサ装置10は、第1変位検出部70と、第2変位検出部71と、ターゲット部材73とを有する。上記第1および第2変位検出部70,71は、筒部材52の内周面に固定されている。一方、ターゲット部材73は、筒形状を有している。ターゲット部材73の軸方向の一端部は、内輪2の円筒外周面26に圧入によって押しこまれている。換言すると、ターゲット部材73の上記一端部は、内輪2の外周面の一端部としての円筒外周面26に外嵌されて固定されている。上記内軸1、内輪2およびターゲット部材73は、第2軌道部材を構成している一方、ターゲット部材73の外周面は、被変位検出部になっている。
【0032】
図2は、図1における第1変位検出部70の周辺の拡大断面図である。
【0033】
図2に示すように、第2変位検出部71は、第1変位検出部70よりも車輪側(ロータ取付用のフランジ50側)に位置している。第1および第2変位検出部70,71の夫々は、筒部材52の内周面に固定されている。上記第1変位検出部70は、第2変位検出部71と同一であり、第1変位検出部70は、第2センサ71に対して軸方向に間隔において配置されている。第1変位検出部70の全体は、第2変位検出部71に略軸方向に重なっている。
【0034】
上記第1変位検出部70は、センサリング83(図1参照)と、4つの変位センサ84とを有する一方、第2変位検出部71は、センサリング93(図1参照)と、4つの変位センサ94とを有する。図1に示すように、センサリング83およびセンサリング93は、環状のスペーサ58を介在させた状態で、筒部材52の鍔部57に対して止めネジ59で固定されている。各変位センサ84は、センサリング83の内周面から径方向の内方に延在している一方、各変位センサ94は、センサリング93の内周面から径方向の内方に延在している。
【0035】
第1変位検出部70と、第2変位検出部71とは、ケース部材6に固定できるようになっている。したがって、第1変位検出部70と、第2変位検出部71とをケース部材6に固定した後、ケース部材6を、上述のように外輪3の外周面に固定するだけで、第1および第2変位検出部70,71を、ハブユニットに簡易に固定することができる。すなわち、変位検出部70,71を、個別に外輪3に取り付ける必要がなく、しかも、外輪3に変位検出部70,71装着用の貫通穴等の取付構造を設ける必要もない。また、ケース部材6に対する変位検出部70,71の相対位置が予め確定することになるから、ターゲット部材73に対する変位検出部70,71の位置決めを正確かつ容易に行うことができる。
【0036】
図3は、第1変位検出部70および第2変位検出部71と、ターゲット部材73との相対位置の関係と、ターゲット部材73の外周面の構造を示す図である。
【0037】
ターゲット部材73の外周面は、環状部150と、第1円筒面部151と、第2円筒面部152とを有している。環状部150、第1円筒面部151および第2円筒面部152は、同一の中心軸を有している。第1円筒面部151は、環状部150の軸方向の一方の側に位置する一方、第2円筒面部152は、環状部150の軸方向の他方の側に位置している。第1円筒面部151は、環状部150に段部156を介して連なっている一方、第2円筒面部152は、環状部150に段部157を介して連なっている。第1円筒面部151と第2円筒面部152とは、略同一の円筒面上に位置している。
【0038】
上記環状部150は、複数の同一の溝155を有している。溝155の数は、複数であればどのような数でも良く、例えば、溝155の数として、96を採用できる。複数の溝155の夫々は、環状部150の軸方向の一端から環状部150の軸方向の他端まで軸方向に延在している。複数の溝155は、環状部150の周方向に等間隔に配置されている。環状部150の溝155の底は、円筒面になっており、環状部150の溝155の底の外径は、第1および第2円筒面部151,152の外径よりも大きくなっている。
【0039】
ターゲット部材73が変位していない状態で、第1変位検出部70の径方向の内方の端面は、第1円筒面部151の環状部150側の端部と、環状部150の第1円筒面部151側の端部とに径方向に重なる一方、第2変位検出部71の径方向の内方の端面は、第2円筒面部152の環状部150側の端部と、環状部150の第2円筒面部152側の端部とに径方向に重なっている。再び、図2を参照して、ターゲット部材73の外周面は、第1環状溝134と、第2環状溝135とを有している。上記第1円筒面部151は、第1環状溝134の底面に相当する一方、第2円筒面部152は、第1環状溝134の底面に相当する。
【0040】
図4は、環状部150の表面を詳細に示す図である。
【0041】
図4に示すように、環状部150の表面は、鋼板の一例としてのケイ素鋼板200からなっている。詳しくは、環状部150は、複数のケイ素鋼板200を軸方向に積層してなっている。
【0042】
図5は、環状部150と、第1変位検出部70とを通る径方向の断面図であり、変位センサ84の周方向の配置構成を説明する図である。尚、説明しないが、変位センサ94についても、変位センサ84と同一の周方向の配置構造を有している。変位センサ94の構造および添え字の説明は、以下に行う、変位センサ84の構造および添え字の説明をもって省略する。
【0043】
4つの変位センサ84は、内軸1の周方向に等間隔に配置されている。詳細には、変位センサ84は、ハブユニットが所定の位置に設置されている状態で、ターゲット部材73の最も鉛直上方に位置する部分に径方向に対向する位置、ターゲット部材73の最も鉛直下方に位置する部分に径方向に対向する位置、ターゲット部材73における、このハブユニットが取り付けられている車両の最も前方側の位置に径方向に対向する位置、および、ターゲット部材73における、このハブユニットが取り付けられている車両の最も後方側の位置に径方向に対向する位置に設置されている。
【0044】
以下、ハブユニットが所定の位置に設置されている状態で、ターゲット部材73の最も鉛直上方に位置する部分に径方向に対向する位置に設置されているセンサ84を、センサ84tとし、ターゲット部材73の最も鉛直下方に位置する部分に径方向に対向する位置に設置されているセンサ84を、センサ84bとし、ターゲット部材73における、このハブユニットが取り付けられている車両の最も前方側の位置に径方向に対向する位置に設置されているセンサ84を、センサ84fとし、ターゲット部材73における、このハブユニットが取り付けられている車両の最も後方側の位置に径方向に対向する位置に設置されているセンサ84を、センサ84rとする。
【0045】
図5に示すように、変位センサ84tは、磁極99tと、コイル100tとを有し、変位センサ84bは、磁極99bと、コイル100bとを有し、変位センサ84fは、磁極99fと、コイル100fとを有し、変位センサ84rは、磁極99rと、コイル100rとを有している。
【0046】
磁極99t,99b,99f,99rの夫々は、センサリング83の内周面につながり、径方向に延在している。また、コイル100tは、磁極99tの周囲に巻き付けられ、コイル100bは、磁極99bの周囲に巻き付けられ、コイル100fは、磁極99fの周囲に巻き付けられ、コイル100rは、磁極99rの周囲に巻き付けられている。
【0047】
磁極99t,99b,99f,99rの夫々の径方向の内方の端面は、ターゲット部材71の外周面に隙間を介して径方向に対向している。磁極99t,99b,99f,99rの夫々の径方向の内方の端面は、各変位センサ84t,84b,84f,84rにおける検出面になっている。第1変位検出部70の検出面は、磁極99tの径方向の内方の端面、磁極99bの径方向の内方の端面、磁極99fの径方向の内方の端面、および、磁極99rの径方向の内方の端面で構成されている。第1変位検出部70と、第2変位検出部71とは、合わせて8個の変位センサ84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rを有している。8個の変位センサ84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rは、同一である。
【0048】
図5の断面図において、複数の溝155のうちで、周方向に隣接する二つの溝155を、第1溝190および第2溝191とし、第1溝190と第2溝191との間に位置する丘を、中間丘192とし、中間丘192の周方向の中点193と、環状部150の中心194とを通過する直線を、丘中心通過直線とし、丘中心通過直線に平行で、第1溝の190の周方向の一端を通過する直線と、上記丘中心通過直線に平行で、第1溝190の周方向の他端を通過する直線との距離をA[mm]とし、上記丘中心通過直線に平行で、中間丘192の周方向の一端を通過する直線と、上記丘中心通過直線に平行で、中間丘192の周方向の他端を通過する直線との距離をB[mm]とし、第1変位検出部70の検出面の長さの1/4、すなわち、各変位センサ84t,84b,84f,84rの磁極99t,99b,99f,99rの径方向の内方の端面の長さをC[mm]としたとき、A<B、C<A+B、かつ、B<Cが成立している。
【0049】
図6は、上記第2変位検出部71に接続されたギャップ検出回路の一例を示す図である。尚、説明は省略するが、第1変位検出部70にも、第2変位検出部71に接続されたのと同一のギャップ検出回路が接続されている。
【0050】
図6に示すように、鉛直方向に位置する2つの変位センサ94t,94bの夫々は、発振器130に接続されている。発振器130から一定周期の交流電流が、変位センサ94t,94bに供給されるようになっている。変位センサ94t,94bの夫々には、同期用のコンデンサ131が並列に接続されている。
【0051】
そして、変位センサ94tと変位センサ94bの出力電圧の飽絡線の値(以下、各変位センサにおいて、下記に詳述する変位センサの出力電圧の飽絡線の値を、変位検出値と呼ぶことにする)を、差動アンプ132に入力して、鉛直方向に対応する出力電圧(変位検出値)とすることにより、温度ドリフトのノイズを取り除くと共に、差動増幅によって鉛直方向の変位信号の感度を略2倍に向上するようにしている。なお、説明は省略するが、前後方向に位置する2つの変位センサ94f,94rについても、上記と同様に差動アンプで差を取ることによって温度ドリフトのノイズを取り除くと共に、前後方向の変位信号の感度を略2倍に向上するようにしている。
【0052】
各変位センサ84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rの夫々において、インダクタンスをL、変位センサの検出面の面積をA、透磁率をμ、コイルの巻き数をN、変位センサの検出面からターゲット部材73までの間隔(ギャップ)をdとすると、次の式(a)が成立する。
L=A×μ×N/d ・・・(a)
【0053】
ターゲット部材73までのギャップdが変化すると、変位センサ84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rのインダクタンスLが変化して出力電圧が変化する。したがって、この出力電圧の変動を検出することにより、変位センサ24の検出面からターゲット部4までの径方向のギャップを検出するようになっている。
【0054】
図7は、変位センサ84tの検出面A1、変位センサ94tの検出面A2、第1環状溝134および第2環状溝135の位置関係を示す図である。
【0055】
尚、説明しないが、変位センサ84bの検出面、変位センサ94bの検出面、第1環状溝134および第2環状溝135の位置関係は、変位センサ84tの検出面A1、変位センサ94tの検出面A2、第1環状溝134および第2環状溝135の位置関係と同一である。また、変位センサ84fの検出面、変位センサ94fの検出面、第1環状溝134および第2環状溝135の位置関係は、変位センサ84tの検出面A1、変位センサ94tの検出面A2、第1環状溝134および第2環状溝135の位置関係と同一である。また、変位センサ84rの検出面、変位センサ94rの検出面、第1環状溝134および第2環状溝135の位置関係は、変位センサ84tの検出面A1、変位センサ94tの検出面A2、第1環状溝134および第2環状溝135の位置関係と同一である。
【0056】
図7に示すように、軸方向において、検出面A1の中央部は、第1環状溝134の第2環状溝135側の縁に略一致している一方、検出面A2の中央部は、第2環状溝135の第1環状溝134側の縁に略一致している。
【0057】
この状態から仮にターゲット部材73が軸方向の蓋部材53側に距離δだけ変位したとすると、検出面A1と第1環状溝134との軸方向のラップ長(軸方向の重なっている長さ)が減少する一方、検出面A2と第2環状溝135との軸方向のラップ長(軸方向の重なっている長さ)が増大する。このことから、変位センサ84のギャップの変位検出値が減少する一方、変位センサ94のギャップの変位検出値が増大する。このように、ターゲット部材73が軸方向に変位すると、変位センサ84tが検出する変位検出値と、変位センサ94tとが検出する変位検出値とに差が生じる。
【0058】
第1環状溝134および第2環状部135は、ターゲット部材73が軸方向に移動した場合に、変位センサ84tと変位センサ94tが検出する変位検出値を正負逆向きに変化させるように、変位センサ84t,94tに対する軸方向位置が設定されている。変位センサ84tの変位検出値と、変位センサ94tの変位検出値の差を取ることにより、内輪2(内軸1)の軸方向の並進量(軸方向の変位であり、並進荷重と相関関係がある)を検出するようになっている。
【0059】
車両の中心側(以下、インナ側という)の変位センサ84t,84b,84f,84rの変位検出値と、車輪側(以下、アウタ側という)の変位センサ94t,94b,94f,94rの変位検出値の差(同じ添え字を有する変位センサの変位検出値の差)を取ることにより、第2軌道部材の軸方向への単位並進量に対する変位検出値が増幅され、これによってセンサ装置10の軸方向の変位の検出感度を高めることができるのである。
【0060】
尚、図7に図示した配置とは逆に、インナ側の第1環状溝を、第1変位検出部の検出面に対してアウタ側にずらし、アウタ側の第2環状溝を第2変位検出部の検出面に対してインナ側にずらして配置しても良く、この場合でも上記と同様の作用効果が得られる。
【0061】
図8は、変位検出部70,71と、蓋部材53に対して、変位検出部70,71とは反対側に位置する信号処理部140との接続構造を示す図である。
【0062】
上記センサ装置10は、信号処理部140を有し、各変位センサ84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rは、ケース部材6の蓋部材53を貫通する信号線36を介して信号処理部140に接続されている。各変位センサ84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rから得られた出力電圧(変位検出値)は、信号処理部140で以下に述べる演算方法で演算され、これによって車輪に作用する各方向のモーメント荷重及び並進荷重を、算出するようになっている。
【0063】
図9は、本実施形態で使用する方向について説明する図であり、図10A、図10Bは、本実施形態で使用するセンサ変位検出値の定義を説明する図である。図10Aは、変位センサを、径方向の外方からみた図であり、図10Bは、変位センサを、軸方向からみた図である。
【0064】
図9に示すように、本実施形態では、車輪の前後水平方向をx軸方向、車輪の左右水平方向(軸方向)をy軸方向、車輪の上下方向をz軸方向と定義する。
【0065】
また、図10Aに示すように、インナ側の変位センサ84t,84b,84f,84rの変位検出値に、添え字「i」を使用し、アウタ側の変位センサ94t,94b,94f,94rに添え字「o」を使用する。また、上ですでに説明したように、前側のセンサの変位検出値を「f(front)」と定義し、後側のセンサの変位検出値を「r(rear)」と定義し、上側のセンサの変位検出値を「t(top)」と定義し、下側のセンサの変位検出値を「b(bottom)」と定義する。
【0066】
尚、図10Bに示されている事実、すなわち、インナ側の変位センサ84t,84b,84f,84rと、アウタ側の変位センサ94t,94b,94f,94rとが、軸方向に正確に重なっているといる事実は、上述した第1変位検出部70の全体が、略第2変位検出部71に軸方向に重なっているという事実と整合している。
【0067】
話を元に戻して、センサ装置10が有する合計8つのセンサの変位検出値は、次のように定義される。
fi:変位センサ84fの変位検出値
ri:変位センサ84rの変位検出値
ti:変位センサ84tの変位検出値
bi:変位センサ84bの変位検出値
fo:変位センサ94fの変位検出値
ro:変位センサ94rの変位検出値
to:変位センサ94tの変位検出値
bo:変位センサ94bの変位検出値
【0068】
図11は、車輪にy軸方向の並進荷重Fyが作用した場合における、ターゲット部材73と、幾つかの変位センサの位置関係を模式的に示す図である。以下、図11を用いて、y軸方向の並進荷重Fyに対応する独立変数(sFy)について説明する。
【0069】
図11に示すように、車輪にy軸方向の並進荷重Fyが作用した場合、第2軌道部材(回転軌道部材)は、その荷重の向きに変位し、各環状溝134,135の位置が軸方向にずれる。このため上述したように、インナ側の各変位センサの変位検出値(本実施形態では出力電圧)fi、ri、ti、biは軸方向の移動量δの増大に伴っていずれも減少し、アウタ側の各変位センサの変位検出値fo、ro、to、boは軸方向の移動量δの増大に伴っていずれも増大する。
【0070】
そこで、図12、すなわち、各変位センサ出力から演算した独立変数と、車輪に作用する実際の荷重との対応関係を示すマトリックス図、に示すように、次の式(1)で算出されるsFyを、y軸方向の並進荷重Fyに対応する独立変数として採用する。
sFy=(fi+ri+ti+bi)−(fo+ro+to+bo)
・・・(1)
【0071】
このように、インナ側の各変位センサの変位検出値とアウタ側の各変位センサの変位検出値の差を取ることで、回転軌道輪である第2軌道部材の軸方向への単位並進量に対するsFyが増幅されるので、センサ装置10全体としての軸方向変位の検出感度を高めることができる。
【0072】
x軸方向の変位の変位検出値と、z軸方向の変位の変位検出値については、次のように求められる。
【0073】
x軸方向については、前センサの変位検出値fと、後センサの変位検出値rとの差によってx軸方向変位の変位検出値とし、z軸方向については、上センサの変位検出値tと、下センサの変位検出値bの差によってz軸方向変位の変位検出値とする。前後のセンサの出力同士及び上下のセンサの出力同士では、それぞれ同じ方向に同じ量だけ温度の影響が出ることから、上記のように差を取ることによって温度ドリフトが取り除かれる。
【0074】
本実施形態では、インナ側と、アウタ側に変位センサ84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rを配置しているので、次に示す通り、インナ側とアウタ側のそれぞれの位置において、x軸方向の変位の変位検出値と、z軸方向の変位の変位検出値が得られる。
インナ側でのx軸方向の変位の変位検出値 xi=fi−ri
インナ側でのz軸方向の変位の変位検出値 zi=−ti+bi
アウタ側でのx軸方向の変位の変位検出値 xo=fo−ro
アウタ側でのz軸方向の変位の変位検出値 zo=−to+bo
【0075】
z軸回りのモーメント荷重Mzに対応する独立変数(sMz)は、次のように求められる。
【0076】
図13は、z軸回りのモーメント荷重Mzのみが作用する純モーメントの状態の各種変数の関係を示す図である。
【0077】
軸受装置の中心O(図1参照)からインナ側変位センサの検出位置までの軸方向距離をLi、軸受中心Oからアウタ側変位センサの検出位置までの軸方向距離をLoとすると、z軸回りのモーメント荷重Mzに対応する変位検出値は、理論的には次の式(2)で算出されるmzで表される。このmzは、図13に示すように、θが十分に小さい場合には、xiと一致する。
mz=Li×tanθ
=Li×tan((xi−xo)/(Li−Lo))
・・・(2)
【0078】
しかし、実際には、ターゲット部材73に、環状溝134,135が形成されているため、図14、すなわち、z軸回りのモーメント荷重Mzのみを作用させた場合におけるMzと、mzおよびxiの変位検出値との関係を示す図に示すように、mzは、xiとは一致せず、かつ、mzと、xiの変位検出値の傾きも一致しない。
【0079】
このため、図15にkzで示すxi直線の傾きをmz直線の傾きで除算して得られる補正係数を導入する。補正係数kzを、上記mzに乗じることで、次の式(3)に示す通り、z軸回りのモーメント荷重Mzに対応する独立変数sMzが得られる。
sMz=−mz×kz
・・・(3)
【0080】
尚、式(3)において、右辺のマイナス(−)は、その他の独立変数(上記sFy及び
下記のsMx等)と符号を一致させるためのものである。
【0081】
x軸回りのモーメント荷重Mxに対応する独立変数(sMx)は、次のように求められる。
【0082】
x軸方向と、z軸方向とは90度、座標変換した関係にある。したがって、x軸回りのモーメント荷重Mxに対応する独立変数sMxは、上記sMzの場合と同様の考え方により、次の式(4)によって算出することができる。
sMx=mx×kx
・・・(4)
【0083】
なお、上記式(4)におけるkxは、図15で定義される値であり、kzと同じ趣旨で導入した補正係数であり、zi直線の傾きをmx直線の傾きで除算して得られる補正係数である。このkxは、図16に示す、x軸回りのモーメント荷重Mxのみを作用させた場合における、Mxと、mxおよびziの変位検出値との関係を示す図から求められる。
【0084】
z軸方向の並進荷重Fzに対応する独立変数(sFz)、および、x軸方向の並進荷重Fxに対応する独立変数(sFx)は、夫々次のように求められる。
【0085】
図17は、z軸回りのモーメント荷重Mzとともに、x軸方向の並進加重Fxが作用する状態を仮定した場合の第2軌道部材の変形状態を示す図であり、各種変数の関係を示す図である。
【0086】
インナ側でのx軸方向変位の変位検出値xiには、z軸回りのモーメント荷重Mzに対応する独立変数sMzの成分と、x軸方向の並進加重Fxに対応する独立変数sFxの成分が含まれている。x軸方向の並進加重Fxに対応する独立変数sFxは、上記xiからsMzを差し引くことによって求めることができる。
【0087】
このことは、z軸方向の並進荷重Fzに対応する独立変数であるsFzの場合にも、同様に当てはまる。したがって、z軸方向の並進荷重Fzによる独立変数sFzと、x軸方向の並進荷重Fxによる独立変数sFxは、それぞれ次の式(5)及び式(6)で算出することができる。
sFz=zi−mx×kx
・・・(5)
sFx=xi−mz×kz
・・・(6)
【0088】
図18は、これまで説明した、変数sFx、sFy、sFz、sMxおよびsMzの算出方法を、ダイアグラム的に示す図である。図18に示すように、sFyを先ず求め、その値を元に、sFx、sFz、sMxおよびsMzを求めることができるようになっている。
【0089】
図19は、上記式(1),(3),(4),(5),(6)によって得られる各独立変数sFx、sFy、sFz、sMx及びsMzと、車輪に作用する実際の荷重であるFx、Fy、Fz、Mx及びMzとの対応関係を表すマトリックス図である。
【0090】
すなわち、車輪に対して実際に負荷したFx、Fy、Fz、Mx及びMzを入力とし、式(1),(3),(4),(5),(6)によって得られる各独立変数sFx、sFy、sFz、sMxおよびsMzを出力として、それらの変数間の直線グラフをマトリックス化したものである。
【0091】
図19のマトリックス図に示すように、Fxに対してはsFxのみが傾きを有する直線グラフとなり、その他のFy、Fz、MxおよびMzには反応がなく、これと同様に、マトリックス図の対角部分だけが直線グラフになっている。従って、これら5つの独立変数sFx、sFy、sFz、sMxおよびsMzは、車輪に作用する実際の荷重である5分力Fx、Fy、Fz、MxおよびMzと線形独立の関係にある。
【0092】
このため、それらの独立変数sFx、sFy、sFz、sMxおよびsMzが求まれば、車輪に作用する5つの荷重Fx、Fy、Fz、MxおよびMzを未知数とした5元連立一次方程式を解くことにより、その各荷重Fx、Fy、Fz、MxおよびMzを演算することができる。
【0093】
本実施形態では、ECU等よりなる前記信号処理部140には、上記した各式(1),(3),(4),(5),(6)と5元連立一次方程式を解く演算回路(ハードウェア)ないし制御プログラム(ソフトウェア)が組み込まれている。このため、各変位センサによる8つの変位検出値fi、ri、ti、bi、fo、ro、toおよびboに基づいて、車輪に作用する実際の荷重Fx、Fy、Fz、MxおよびMzを求めることができる。
【0094】
図20は、各変位センサ84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rにおいて、各変位センサの検出値から上記変位検出値を抽出する方法、および、各変位センサ84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rの検出値から内軸1の回転速度を求める方法を示す図である。
【0095】
以下、例として、変位センサ84tについて、変位検出値および回転速度を表すパルス信号の求め方を説明する。尚、変位センサ84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rについても、変位センサ84tと同一の処理を行っている。変位センサ84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rについての信号処置については、変位センサ84tの信号処理の説明をもって説明を省略する。
【0096】
図21は、変位センサ84tの検出値の一例を示す図である。図21に示すように、変位センサ84tの検出値は、環状部150に形成された溝155に起因して環状部150の外周面に表れる凹凸に起因する回転パルス信号と、変位センサ84tの検出面に対する、第1円筒面部151の相対位置、第2円筒面部152の相対位置および環状部150の外周面の丘の相対位置に関係する荷重信号とを含んでいる。
【0097】
図20に示すように、変位センサ84tからの検出値は、変位信号検出部の一例としての周知の飽絡線検波回路250に入力されるようになっている。図22は、飽絡線検波回路250の出力信号を示す図である。図22に示すように、飽絡線検波回路250によって、変位センサ84tの検出値の飽絡線が取り出され、環状部150の外周面の位置の情報において、環状部150の外周面の溝155の位置の情報を除去する一方、環状部150の外周面の丘の位置の情報のみをピックアップするようになっている。
【0098】
図22に示す荷重信号が、上述の複数の荷重の検出に用いる変位検出値である。このようにして、各変位センサ84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94rについて、変位検出値を求め、その値を、図6に示すギャップ検出回路で処理するようになっている。そして、その後、ギャップ検出回路で処理した信号を、周知のサンプルホールド回路251(図20参照)で処理した後、物理量算出部252(図20参照)で、適宜、アナログ信号をデジタル信号に変換して、図18に示すプロセスで、各荷重Fx、Fy、Fz、MxおよびMzを算出するようになっている。
【0099】
図20に示すように、変位センサ84tからの検出値は、回転信号検出部としての回転数検出回路253に入力されるようになっている。回転数検出回路253は、所定の電圧値を閾値として、変位センサ84tからの検出値と、上記閾値とを比較して、変位センサ84tからの検出値を、ハイ信号とロウ信号が繰り返されるパルス信号に変換するようになっている。
【0100】
図23は、回転数検出回路253の出力信号の一例を示す図である。パルス信号におけるハイ信号は、環状部150の溝155の検出に基づいて生成される一方、パルス信号におけるロウ信号は、環状部150の丘の検出に基づいて生成されるようになっている。上記パルス信号の周期に基づいて、環状部150、すなわち、内軸1の回転速度が算出するようになっている。
【0101】
尚、上記ギャップ検出回路、サンプルホールド回路251および物理量算出部252は、モーメント荷重算出部を構成している。また、上記ギャップ検出回路、飽絡線検波回路250、サンプルホールド回路251および物理量算出部252が、信号処理部140に含まれている。
【0102】
上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、互いに軸方向に離間されている、第1変位検出部70と、第2変位検出部71とを有しているから、第1変位検出部70の検出信号と、第2変位検出信号71の検出信号とに基づいて、軸方向の並進の変位に基づく並進荷重を算出できるのは勿論のこと、センサ付き転がり軸受装置の軸方向の位置による変位の変動を検出できて、この変位の変動に基づいて、センサ付き転がり軸受装置に作用しているモーメント荷重を算出できる。
【0103】
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、ターゲット部材73の外周面である被変位検出部が、上記被変位検出部の周方向に互いに間隔をおいて位置すると共に、軸方向に延在する複数の溝155を有する環状部150を有し、かつ、センサ装置10が、第1変位検出部70の出力および第2変位検出部71のうちの少なくとも一方の出力に基づいて、環状部150の回転に伴う信号を検出する回転数検出回路253と、第1変位検出部70の出力から上記被変位検出部の変位に伴う信号を検出すると共に、第2変位検出部71の出力から上記被変位検出部の変位に伴う信号を検出する飽絡線検波回路250とを有しているから、環状部150の溝155と、その溝155に周方向に連なる丘の位置の検出により、環状部150の回転速度に伴うパルス信号を獲得することができて、環状部150の回転速度を検出することができる。すなわち、変位を検出される上記被変位検出部が、被パルス信号発生部としての環状部150を形成しているから、変位検出部70,71に回転速度検出機能を兼用させることができて、センサ付き転がり軸受装置をコンパクトにすることができると共に、センサ付き転がり軸受装置の製造コストを抑制できる。
【0104】
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、環状部150と第1円筒部151との間の段部156の軸方向の位置、および環状部150と第2円筒部152との間の段部157の軸方向の位置を検出することにより、センサ付き転がり軸受装置の軸方向の並進の変位を容易かつ簡単に検出でき、軸方向の並進荷重を簡易に検出できる。
【0105】
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、環状部150の表面が、磁気特性が良好で、磁束が通過し易くて、渦電流が発生しにくい構造、すなわち、複数の鋼板200(上記実施形態では、ケイ素鋼板を使用しているが、如何なる鋼板でも使用可)を軸方向に積層してなる構造をしているから、渦電流の発生に起因する電気信号の損失の低減を行うことができて、センサの感度を高くすることができる。
【0106】
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、A<Bであるから、環状部150に溝加工を容易に行うことができる。また、C<A+Bであるから、パルス信号の分解能を高くすることができる。また、B<Cであるから、短時間の回転速度を算出できる。
【0107】
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置によれば、モーメント荷重算出部で、車輪に作用しているモーメント荷重を算出できる。したがって、車輪の回転速度、車輪に作用しているモーメント荷重を算出できて、これらの情報に基づいて、車両の走行の際の運転制御を正確に行うことができる。
【0108】
尚、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、被変位検出部が、内軸1と別体のターゲット部材73の外周面であったが、この発明では、ターゲット部材がなくて、被変位検出部が、内軸の外周面の一部であっても良い。また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、内軸1に、内軸1と別体の内輪2が嵌合される構成であったが、この発明では、内輪がなくて、第2軌道部材が、内軸単体で構成されるか、または、内軸とターゲット部材で構成されても良く、内軸が、内軸の外周面に二つの軌道面を有する構成であっても良い。
【0109】
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、A<B、C<A+B、かつ、B<Cであったが、この発明では、A≧Bであっても良く、C≧A+Bであっても良く、B≧Cであっても良い。
【0110】
また、この発明で使用できるセンサ装置は、上記実施形態で用いたセンサ装置10に限らず、以下の図24、図25および図26に一部が示されるセンサ装置であっても良い。
【0111】
詳しくは、図24に示すセンサ装置400のように、ターゲット部材473に、環状溝134,135を形成せず、環状溝134,135が存在していた位置に、周囲の構成材料よりも大きい(或いは小さい)透磁率を有する環状帯部434,435を形成しても良い。上記環状帯部434,435は、例えば鋼材の場合には、含有カーボン量を変えることによって、形成することができる。
【0112】
また、図25に示すセンサ装置500のように、ターゲット部材573において、上記実施形態において環状溝134,135が形成されていた位置に、外周面が円筒面の凸部541,542を形成し、上記実施形態において環状部150が形成されていた位置に、凸部541,542よりも丘部の外径が小さい環状部550を形成しても良い。
【0113】
また、図26に示すセンサ装置600のように、ターゲット部材673の外周面に、軸方向の断面において、傾斜方向が互いに逆向きの傾斜部643,644を形成しても良く、傾斜部643,644の一部に、溝を有する環状部を形成しても良い。なお、図26では、両傾斜部643,644は、接合部分が谷形となっているが、その接合部分を、山形となる両傾斜部としても良い。
【0114】
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、変位検出部70,71を、ケース部材6に固定したが、この発明では、変位検出部を、外輪に直接取り付けても良い。更に、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受装置では、外輪1が、固定軌道部材を構成し、内周側の内軸2等が、回転軌道部材を構成したが、内周側の内軸等が、固定軌道部材を構成し、外輪が、回転軌道部材を構成しても良い。
【0115】
また、本発明で使用できるセンサ装置は、実施形態で説明したインダクタンス型の変位センサに限らない。すなわち、本発明で使用できるセンサ装置は、ギャップを検出できる非接触式のものであれば、如何なる変位センサであっても良い。
【0116】
また、上記実施形態では、センサ付き転がり軸受装置が、ハブユニットであったが、この発明のセンサ付き転がり軸受装置は、ハブユニットに限らず、例えば磁気軸受装置等のハブユニット以外の如何なる軸受装置であっても良い。上記実施形態で説明した本発明の構成を、複数のモーメント荷重や並進荷重を測定するニーズのある各種軸受装置に適用することができるのは、言うまでもないからである。
【0117】
また、上記実施形態のセンサ付き転がり軸受では、製造されるセンサ付き転がり軸受の転動体が玉であったが、この発明では、製造されるセンサ付き転がり軸受の転動体が、ころであっても良く、また、ころおよび玉を含んでいても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明のセンサ付き転がり軸受装置の一実施形態であるハブユニットの軸方向の断面図である。
【図2】図1における変位検出部の周辺の拡大断面図である。
【図3】第1変位検出部および第2変位検出部と、ターゲット部材との相対位置の関係と、ターゲット部材の外周面の構造を示す図である。
【図4】環状部の表面を詳細に示す図である。
【図5】環状部と、第1変位検出部とを通る径方向の断面図であり、変位センサの周方向の配置構成を説明する図である。
【図6】第1変位検出部に接続されたギャップ検出回路の一例を示す図である。
【図7】変位センサの検出面、第1環状溝および第2環状溝の位置関係を示す図である。
【図8】変位検出部と、蓋部材に対して、変位検出部とは反対側に位置する信号処理部との接続構造を示す図である。
【図9】本実施形態で使用する方向について説明する図である。
【図10A】本実施形態で使用するセンサ変位検出値の定義を説明する図である。
【図10B】本実施形態で使用するセンサ変位検出値の定義を説明する図である。
【図11】車輪にy軸方向の並進荷重Fyが作用した場合における、ターゲット部材と、幾つかの変位センサの位置関係を模式的に示す図である。
【図12】各変位センサ出力から演算した独立変数と、車輪に作用する実際の荷重との対応関係を示すマトリックス図である。
【図13】z軸回りのモーメント荷重Mzのみが作用する純モーメントの状態の各種変数の関係を示す図である。
【図14】z軸回りのモーメント荷重Mzのみを作用させた場合における、Mzと、mzおよびxiの変位検出値との関係を示す図である。
【図15】補正係数について説明する図である。
【図16】x軸回りのモーメント荷重Mxのみを作用させた場合における、Mxと、mxおよびziの変位検出値との関係を示す図である。
【図17】z軸回りのモーメント荷重Mzとともに、x軸方向の並進加重Fxが作用する状態を仮定した場合の第2軌道部材の変形状態を示す図である。
【図18】変数sFx、sFy、sFz、sMxおよびsMzの算出方法を、ダイアグラム的に示す図である。
【図19】独立変数sFx、sFy、sFz、sMx及びsMzと、車輪に作用する実際の荷重であるFx、Fy、Fz、Mx及びMzとの対応関係を表すマトリックス図である。
【図20】各変位センサにおいて、各変位センサの検出値から変位検出値を抽出する方法、および、各変位センサの検出値から内軸の回転速度を求める方法を示す図である。
【図21】変位センサの検出値の一例を示す図である
【図22】飽絡線検波回路の出力信号を示す図である。
【図23】回転数検出回路の出力信号の一例を示す図である。
【図24】センサ装置の変形例を模式的に示す図である。
【図25】センサ装置の変形例を模式的に示す図である。
【図26】センサ装置の変形例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0119】
1 内軸
2 内輪
3 外輪
4 第1の玉
5 第2の玉
71 第1変位検出部
72 第2変位検出部
73 ターゲット部材
84t,84b,84f,84r,94t,94b,94f,94r 変位センサ
140 信号処理部
150 環状部
151 第1円筒面部
152 第2円筒面部
155 溝
200 ケイ素鋼板
250 飽絡線検波回路
252 物理量検出部
253 回転速度検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道面を内周面に有する第1軌道部材と、
軌道面と、環状の被変位検出部とを外周面に有する第2軌道部材と、
上記第1軌道部材の上記軌道面と、上記第2軌道部材の上記軌道面との間に配置された転動体と、
上記被変位検出部の径方向の変位と、上記被変位検出部の軸方向の変位とを検出するセンサ装置と
を備え、
上記被変位検出部は、上記被変位検出部の周方向に互いに間隔をおいて位置すると共に、上記軸方向に延在する複数の溝を有する環状部を有し、
上記センサ装置は、
上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第1変位検出部と、
上記第1変位検出部に上記軸方向に間隔をおいて位置すると共に、上記被変位検出部に上記径方向に対向する検出面を有する第2変位検出部と、
上記第1変位検出部および第2変位検出部のうちの少なくとも一方の出力に基づいて、上記第1変位検出部および第2変位検出部のうちの少なくとも一方に対する上記環状部の相対回転に伴う信号を検出する回転信号検出部と、
上記第1変位検出部の出力から上記被変位検出部の変位に伴う信号を検出すると共に、上記第2変位検出部の出力から上記被変位検出部の変位に伴う信号を検出する変位信号検出部と
を有していることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記被変位検出部は、上記環状部に段部を介して連なる第1円筒面部と、上記環状部の上記第1円筒面部側とは反対側に段部を介して連なると共に、上記第1円筒面部と略同一の円筒面上に位置する第2円筒面部とを有し、
上記各溝は、上記環状部の上記軸方向の一端から上記環状部の上記軸方向の他端まで上記軸方向に延在し、
上記第1変位検出部と上記第2変位検出部とは、上記軸方向から見て略重なり、
上記第1変位検出部の上記検出面は、上記径方向から見て、上記第1円筒面部の上記環状部側の端部と、上記環状部の上記第1円筒面部側の端部とに重なる一方、上記第2変位検出部の上記検出面は、上記径方向から見て、上記第2円筒面部の上記環状部側の端部と、上記環状部の上記第2円筒面部側の端部とに重なっていることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記環状部の表面は、複数の鋼板を上記軸方向に積層してなることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記複数の溝は、略同一の幅であり、上記周方向に等間隔に配置され、
上記第1変位検出部と上記第2変位検出部とは、上記軸方向から見て略重なると共に、上記第1変位検出部と上記第2変位検出部の夫々は、上記周方向に等間隔に配置された4つの変位センサからなり、
上記環状部と上記第1変位検出部とを通る上記径方向の断面において、
上記複数の溝のうちで、上記周方向に隣接する二つの上記溝を、第1溝および第2溝とし、
上記第1溝と上記第2溝との間に位置する丘を、中間丘とし、
上記中間丘の上記周方向の中点と、上記環状部の中心とを通過する直線を、丘中心通過直線とし、
上記丘中心通過直線に平行で、上記第1溝の上記周方向の一端を通過する直線と、上記丘中心通過直線に平行で、上記第1溝の上記周方向の他端を通過する直線との距離をA[mm]とし、
上記丘中心通過直線に平行で、上記中間丘の上記周方向の一端を通過する直線と、上記丘中心通過直線に平行で、上記中間丘の上記周方向の他端を通過する直線との距離をB[mm]とし、
上記第1変位検出部の上記検出面の長さの1/4をC[mm]と
したとき、
A<B、C<A+B、かつ、B<Cであることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項5】
請求項1に記載のセンサ付き転がり軸受装置において、
上記第2軌道部材は、ロータを取り付けるためのロータ取付用のフランジを有すると共に、上記第1軌道部材は、車体を取り付けるための車体取付用のフランジを有し、
上記複数の溝は、上記周方向に等間隔に配置され、
上記第1変位検出部と上記第2変位検出部とは、上記軸方向から見て略重なると共に、上記第1変位検出部と上記第2変位検出部の夫々は、上記周方向に等間隔に配置された4つの変位センサからなり、
上記変位信号検出部は、上記各変位センサにおいて、上記各変位センサが出力する信号から上記被変位検出部の変位に伴う信号を検出し、
上記センサ装置は、上記変位信号検出部からの信号を受けて、上記第1変位検出部の上記変位センサの夫々において、上記第1変位検出部の上記変位センサの上記被変位検出部の変位に伴う信号と、上記第1変位検出部の上記変位センサに略上記軸方向に重なる上記第2変位検出部の上記変位センサの上記被変位検出部の変位に伴う信号との差を算出して、この差に基づいて上記車輪に作用している複数のモーメント荷重を算出するモーメント荷重算出部を有していることを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2008−275506(P2008−275506A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120985(P2007−120985)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】