説明

センサ装置

【課題】回路チップの一面側にセンサチップを電気的に接続するとともに、回路チップの一面側に接続部材を設け、接続部材を介して回路チップを基台に支持してなるセンサ装置において、接続部材と基台とのはんだ接合性を向上させる。
【解決手段】接続部材は、Ag−Sn合金の焼結体よりなり、回路チップ20側から基台10側に向かって先窄まりとなるアスペクト比が1以上の円錐形状をなす円錐部材40であり、基台10の一面11に設けられたはんだ60により、円錐部材40の先端部42側と基台10とが接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路チップとこれを支持する基台との間にセンサチップを介在させてなるセンサ装置、および、そのようなセンサ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のセンサ装置としては、基台と、一面側を基台の一面に対向させて基台の一面側に搭載された回路チップと、センシング部を有し、回路チップと基台との間に位置して回路チップの一面側と電気的に接続されたセンサチップと、回路チップの一面側に設けられ、回路チップを基台の一面に支持する接続部材と、を備えたものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、接続部材は、回路チップの一面側にて回路チップ側から基台の一面に延びるように設けられるが、従来では、はんだやバンプなどにより構成されたものであるため、回路チップと基台との間隔が十分に取れず、センサチップの体格に制約が生じたり、基台にセンサチップと干渉しないように基台に凹部を設けたりする必要があった。
【0004】
一方で、Cuめっきにより形成された円柱状のポストを用いてはんだ付けを行う技術が提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。ここで、この種のセンサ装置において、この円柱状ポストを接続部材として用いることにより、回路チップと基台との間隔を広くすることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−101980号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「はんだバンプ加工」、[online]、サン・エレクトロニクス株式会社、[平成23年8月4日検索]、インターネット<URL:http://sun-electronics.jp/sechp/solder-bump/solder-bump.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、Cuめっきによって、長い円柱状ポストを形成するには、めっきに要する時間が長くなり、また、大量のめっき原料を用いることになるため、コストアップが問題となる。
【0008】
また、ポストに対するはんだ濡れ性を考えた場合、円柱状ポストの側面へのはんだの這い上がり高さ、すなわち、ポストとはんだとの接触面積に限界があり、はんだ接合性を十分に確保することが困難になる恐れがある。
【0009】
つまり、この種のセンサ装置においては、回路チップと基台との間隔を広くするために接続部材を基台にはんだ付けするにあたって、接続部材のはんだ接合性が不十分であり、また、接続部材のコストの増大が問題であった。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、回路チップの一面側にセンサチップを電気的に接続するとともに、回路チップの一面側に接続部材を設け、接続部材を介して回路チップを基台に支持してなるセンサ装置において、接続部材と基台とのはんだ接合性を向上させることを第1の目的とし、接続部材のコストを低減することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、基台(10)と、一面(21)側を基台(10)の一面(11)に対向させて基台(10)の一面(11)側に搭載された回路チップ(20)と、センシング部(33)を有し、回路チップ(20)と基台(10)との間に位置して回路チップ(20)の一面(21)側と電気的に接続されたセンサチップ(30)と、回路チップ(20)の一面(21)側にて回路チップ(20)側から基台(10)の一面(11)に延びるように設けられ、回路チップ(20)を基台(10)の一面(11)に支持する接続部材(40)と、を備えるセンサ装置において、
接続部材は、Ag−Sn合金の焼結体よりなり、回路チップ(20)側から基台(10)側に向かって先窄まりとなるアスペクト比が1以上の円錐形状をなす円錐部材(40)であり、基台(10)の一面(11)に設けられたはんだ(60)により、円錐部材(40)の先端部(42)側と基台(10)とが接合されていることを特徴とする。
【0012】
それによれば、接続部材を、Ag−Sn合金の焼結体よりなり且つ回路チップ(20)側から基台(10)側に向かって先窄まりとなる円錐部材(40)とすることにより、当該円錐部材(40)は、側面が基台(10)上のはんだ(60)に面する方向に傾斜しているものとなる。そのため、この円錐部材(40)は、従来の円柱形状のポストに比べてはんだ(60)との接触面積が大きく、且つ、はんだ(60)が這い上がりやすいものとなるから、はんだ(60)のフィレットが大きいものにできる。
【0013】
また、このAg−Sn合金の焼結体よりなる円錐部材(40)のアスペクト比を1以上とすることにより、はんだ(60)のひずみ応力が大幅に低減する(後述の図4参照)ことが確認されている。
【0014】
よって、本発明によれば、回路チップ(20)と基台(10)との間隔を広くするために接続部材(40)を基台(10)にはんだ付けするにあたって、接続部材(40)のはんだ接合性を向上させることができる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のセンサ装置において、回路チップ(20)の一面(21)側において、円錐部材(40)はセンサチップ(30)よりも基台(10)側に突出しており、基台(10)の一面(11)は平坦面であることを特徴とする。
【0016】
このように、回路チップ(20)の一面(21)側において、円錐部材(40)がセンサチップ(30)よりも基台(10)側に突出していれば、基台(10)の一面(11)が平坦面であっても、円錐部材(40)の先端部(42)側と基台(10)とが、はんだ(60)を介して接触して接合されるとともに、センサチップ(30)と基台(10)とは離れた状態とすることが容易になる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載のセンサ装置において、円錐部材(40)における回路チップ(20)側に位置する根元部(41)側は、円錐部材(40)に発生する応力を緩和する緩衝部材(70)により封止されていることを特徴とする。
【0018】
それによれば、円錐部材(40)の根元部(41)側に発生する応力が、緩衝部材(70)により緩和されるから、接合信頼性の点で好ましい。
【0019】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のセンサ装置において、回路チップ(20)の一面(21)と円錐部材(40)との間には、円錐部材(40)に発生する応力を緩和するバッファー層(80)が介在していることを特徴とする。
【0020】
それによれば、円錐部材(40)の根元部(41)側に発生する応力が、バッファー層(80)により緩和されるから、接合信頼性の点で好ましい。
【0021】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載のセンサ装置において、基台(10)の一面(11)のうちセンサチップ(30)に対向する部位には、凹部(12)が設けられていることを特徴とする。
【0022】
それによれば、この凹部(12)を介して、センサチップ(30)と基台(10)とを離した状態とすることが容易となる。
【0023】
また、請求項6に記載の発明では、請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載のセンサ装置において、センシング部(33)は、センサチップ(30)における回路チップ(20)と対向する一面(31)側に設けられており、センサチップ(30)の一面(31)には、センシング部(33)を取り囲む環状の封止部(35)が設けられ、この封止部(35)が回路チップ(20)の一面(21)側に環状に接続されることにより、センシング部(33)は、封止部(35)の内側に気密に封止されていることを特徴とする。
【0024】
それによれば、センサチップ(20)を回路チップ(30)の一面(31)側に接続するときに、封止部(35)によってセンシング部(33)の気密構成も同時に構築することが可能となる。
【0025】
請求項7に記載の発明においては、回路チップ(20)、およびセンサチップ(30)を用意する用意工程と、センサチップ(30)を回路チップ(20)の一面(21)側に電気的に接続するセンサチップ接続工程と、Ag−Sn合金の焼結体よりなり、回路チップ(20)側から基台(10)側に向かって先窄まりとなるアスペクト比が1以上の円錐形状をなす接続部材としての円錐部材(40)を、回路チップ(20)の一面(21)側に形成する接続部材形成工程と、各工程の後、円錐部材(40)の先端部(42)側を基台(10)の一面(11)にはんだ付けすることにより、円錐部材(40)を介して回路チップ(30)を基台(10)に支持する回路チップはんだ付け工程と、を備えたセンサ装置の製造方法において、さらに、次のような特徴を有するものである。
【0026】
すなわち、請求項7の製造方法における接続部材形成工程は、
円錐部材(40)の形成位置に対応する位置にて円錐部材(40)に対応する円錐形状をなすキャビティ(101)を有するシート(100)を用意するシート用意工程と、
キャビティ(101)にAg−Sn合金のペースト(40a)を充填する充填工程と、
キャビティ(101)から露出するペースト(40a)を回路チップ(20)の一面(21)側に接触させつつ、シート(100)を回路チップ(20)の一面(21)上に積層する積層工程と、
積層されたシート(100)と回路チップ(20)とを加熱および加圧することにより、ペースト(40a)を焼成して、焼結体としての円錐部材(40)を形成する加熱加圧工程と、
その後、シート(100)を回路チップ(20)および円錐部材(40)から除去する除去工程と、を有するものであることを特徴とする。
【0027】
それによれば、Ag−Sn合金のペースト(40a)を焼成することにより、接続部材としての焼結体である円錐部材(40)を形成することができるから、従来のめっきによる円柱状ポストに比べて大幅に安価なものとなり、接続部材のコスト低減が図れる。
【0028】
さらに、請求項8に記載の発明では、請求項7に記載のセンサ装置の製造方法において、接続部材形成工程におけるシート用意工程では、シート(100)として、円錐部材(40)における回路チップ(20)側に位置する根元部(41)側から先端部(42)側に向かって第1の層(70)、第2の層(71)が積層されたものを用い、
除去工程では、円錐部材(40)の根元部(41)側に位置する第1の層(70)を残し、円錐部材(40)の先端部(42)側に位置する第2の層(71)を除去するものであり、
第1の層(70)は、線膨張係数が回路チップ(20)と基台(10)との間のものであることを特徴とする。
【0029】
それによれば、除去工程にて残される第1の層(70)を、上記請求項4と同様、円錐部材(40)の根元部(41)側に発生する応力を緩和する緩衝部材とすることができ、接合信頼性の点で好ましい。
【0030】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係るセンサ装置の概略断面図である。
【図2】(a)は図1中のA−A概略断面図、(b)は図1中のB―B概略断面図である。
【図3】図1中の接続部材の拡大断面図である。
【図4】接続部材のアスペクト比とはんだにおける相当塑性ひずみ振幅との関係を表すグラフである。
【図5】第1実施形態に係るセンサ装置の製造方法を示す工程図である。
【図6】図5に続く製造方法を示す工程図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るセンサ装置の要部を示す概略断面図である。
【図8】第2実施形態に係る緩衝部材70の形成方法を示す工程図である。
【図9】第2実施形態の他の例としてのセンサ装置の要部を示す概略断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るセンサ装置の要部を示す概略断面図である。
【図11】バッファー層内部の配線構成を示す概略断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係るセンサ装置の要部を示す概略断面図である。
【図13】本発明の第5実施形態に係るセンサ装置の要部を示す概略断面図である。
【図14】第5実施形態の他の例としてのセンサ装置の要部を示す概略断面図である。
【図15】本発明の第6実施形態に係るセンサ装置の要部を示す概略断面図であり、(a)は第1の例、(b)は第2の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0033】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るセンサ装置の概略断面構成を示す図である。また、図2において(a)は図1中の一点鎖線A−Aに沿った概略断面図、(b)は図1中の一点鎖線B―Bに沿った概略断面図である。なお、図2(b)の平面では、センシング部33は存在しないが、図2(b)中の構成要素との位置関係を示すため、当該平面に対応するセンシング部33の外形を破線にて示してある。
【0034】
本実施形態のセンサ装置は、たとえば、自動車に搭載されて、加速度や角速度、圧力、あるいは流量等の検出を行うセンサ装置などに適用されるが、その用途はこれらに限定されるものではない。
【0035】
本実施形態のセンサ装置は、大きくは、基台10と、基台10の一面11側に搭載された回路チップ20と、回路チップ20と基台10との間に位置して設けられたセンサチップ30と、回路チップ20を基台10の一面11に支持する接続部材40と、を備えて構成されている。
【0036】
基台10は、回路チップ20を搭載して支持するもので、その一面11を回路チップ20が搭載される搭載面としている。本実施形態では、基台10の一面11は平坦面とされている。この基台10としては、たとえばセラミック基板、プリント基板、リードフレーム、あるいは配線を有するケースなどが挙げられる。
【0037】
回路チップ20は、一般的な半導体プロセス等により形成されるICチップなどであり、ここでは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。このASICは、電子部品の種別の1つで、特定の用途向けに複数機能の回路を1つにまとめた集積回路の総称である。
【0038】
この回路チップ20は、センサチップ30の駆動や制御等を行う図示しない回路部を有するものであり、一方の主面を一面21、他方の主面を他面22とする典型的な矩形板状をなす。そして、回路チップ20は、回路チップ20の一面21側を基台10の一面11に対向させた状態で、基台10の一面11側に搭載されている。
【0039】
センサチップ30は、たとえば加速度、角速度あるいは圧力などを検出するための検出素子となるものであり、シリコン半導体などを用いて一般的な半導体プロセス等により形成されるものである。
【0040】
ここでは、センサチップ30は、一方の主面を一面31、他方の主面を他面32とする典型的な矩形板状をなしており、回路チップ20よりも一回り小さい平面サイズとされている。そして、センサチップ30は、一面31を回路チップ30に対向する面とし、他面32を基台10に対向する面として、回路チップ20と基台10との間に介在して設けられている。
【0041】
センサチップ30には、検出を行うセンシング部33が設けられているが、このセンシング部33は、たとえば加速度や角速度検出用となる櫛歯状の可動部や、圧力検出用のダイアフラムなどにより構成されるものである。ここでは、回路チップ20側となる一面31側にセンシング部33が設けられている。
【0042】
また、センサチップ30の一面31には、通電電極34が設けられている。この通電電極34は、回路チップ20とセンサチップ30との電気的接続を行うための電極であり、Cuやアルミニウムなどの一般的な電極材料よりなる。
【0043】
そして、通電電極34は、回路チップ20の一面21に設けられた図示しない電極やバッドに対して、はんだなどの金属接合材50を介して電気的および機械的に接続されている。これにより、通電電極34を介して、両チップ20、30は電気的に接続され、両チップ20、30間の電気的信号のやりとりが可能となっている。具体的には、回路チップ20からの電気的信号によるセンサチップ30の駆動等が行われるようになっている。
【0044】
さらに、本実施形態では、センサチップ30の一面31に、センシング部33を取り囲む環状の封止部35が設けられている(図1、図2(b)参照)。ここでは、センサチップ30の一面31の周辺部にて、封止部35は矩形枠状に配置されている。
【0045】
この封止部35は、通電電極34と同様、Cuやアルミニウムなどの一般的な電極材料よりなる。なお、この封止部35は、センサチップ30における回路の電極として構成されているものであってもよいし、当該回路とは電気的に独立したものであってもよい。
【0046】
そして、この封止部35は、これに対向する回路チップ20の一面21側に対して環状に接続されている。ここでは、封止部35と回路チップ20との接続は、上記した金属接合材50により行われている。これにより、センシング部33は、封止部35の内側に気密に封止されている。
【0047】
つまり、環状の封止部35および金属接合材50を介して、両チップ20、30が接続されることにより、これら各部材20、30、35、50により区画された気密空間が形成され、この気密空間にセンシング部33が配置されたものとなる。
【0048】
なお、封止部35と回路チップ20との接続は、電気的接続は行われずに機械的接続だけのものであってもよく、その場合、上記気密封止が実現されるものならば、金属接合材50以外の接着材により当該接続が行われていてもよい。
【0049】
こうして、回路チップ20とセンサチップ30とは重ね合わされて接続されることで一体化されているが、これら両チップ20、30は、接続部材40を介して、基台10に接続されて支持されている。
【0050】
本実施形態の接続部材40は、回路チップ20の一面21側にて回路チップ20側を根元部41として、先端部42側が基台10の一面11に向かって延びるように設けられている。
【0051】
ここでは、図1および図2に示されるように、接続部材40は、回路チップ20の一面21のうちセンサチップ30の外郭からはみ出している部位に複数個設けられている。そして、当該複数個の接続部材40は、センサチップ30を取り巻くように、回路チップ20の周辺部に配列している。
【0052】
この接続部材40は導電性のものであり、回路チップ30側に位置する接続部材40の根元部41側は、回路チップ20の一面21に設けられた図示しない電極に対して、金属結合により電気的および機械的に接続されている。
【0053】
一方、基台10側に位置する接続部材40の先端部42側は、基台10の一面11に設けられたはんだ60によって基台10と接合されている。このはんだ60としては、一般的な共晶はんだや鉛フリーはんだなどが採用され、当該はんだ付けは、印刷およびリフローなどの一般的な方法により行われる。こうして、両チップ20、30は、接続部材40によって基台10の一面11に接続され支持されている。
【0054】
ここで、図3は、図1中の接続部材40の拡大断面図である。本実施形態では、接続部材40はAg−Sn合金の焼結体よりなり、回路チップ20側から基台10側に向かって先窄まりとなる円錐形状をなす。つまり、本接続部材は、根元部41側から先端部42側に向かって径が小さくなる円錐形状の円錐部材40として構成されている。
【0055】
ここで、円錐部材40における円錐形状とは、一般的な円錐形の他に、図3に示される本実施形態のように、底面と略平行に頂部が切断された円錐形、すなわち軸方向断面が台形となる円錐形も含むものである。
【0056】
さらに、この接続部材としての円錐部材40は、アスペクト比が1以上の円錐形状とされている。ここでアスペクト比とは、図3に示されるように、円錐部材40の軸方向長さ(つまり根元部41から先端部42までの長さ)をa、円錐部材40における回路チップ20側の最大径(つまり根元部41の径)をbとしたとき、軸方向長さaを最大径bで除した比a/bとして定義される。
【0057】
このように円錐部材40のアスペクト比a/bを1以上とした根拠について述べる。本発明者は、図3に示したような断面台形の円錐部材40およびフィレットを有する形状のはんだ60をモデルとし、このモデルについて、有限要素法による応力解析シミュレーションを行い、はんだ60に発生する歪みを求めた。
【0058】
具体的には、軸方向長さa、最大径bを異ならせることでアスペクト比a/bを変えていき、種々のアスペクト比a/bについて、−40℃と125℃との熱衝撃により生じるはんだ歪みを求めた。そのシミュレーション結果を、図4に示す。
【0059】
図4は、接続部材40のアスペクト比a/bと、はんだ60における相当塑性ひずみ振幅(単位:%)との関係を表すグラフであり、実線グラフは平均値、一点鎖線グラフはピーク値を示す。この相当塑性ひずみ振幅は、はんだ60に発生する歪みに相当するものであり、これが大きいほど、はんだ60の接合信頼性が低くなることを意味する。
【0060】
図4に示されるように、アスペクト比a/bが1を境として、1未満と1以上とでは、相当塑性ひずみ振幅が劇的に変化している。つまり、1以上では、当該ひずみ振幅がほぼ飽和状態で低い値を示しているのに対し、1未満では、当該ひずみ振幅が急激に増大している。したがって、円錐部材40のアスペクト比が1以上であれば、十分な接合信頼性を安定して実現しやすいことがわかる。
【0061】
このように本実施形態によれば、接続部材を、Ag−Sn合金の焼結体よりなり且つ回路チップ20側から基台10側に向かって先窄まりとなる円錐部材40とすることにより、円錐部材40の側面は、基台10の一面11に面するように傾斜しているものとなる。つまり、当該円錐部材40の側面は、基台10上のはんだ60に面する方向に傾斜しているものとなる。
【0062】
そのため、この円錐部材40は、従来の円柱形状のポストに比べて、側面とはんだ60との接触面積が大きく、且つ、側面にはんだ60が這い上がりやすいものとなるから、はんだ60のフィレットが大きいものにできる。また、このAg−Sn合金の焼結体よりなる円錐部材40のアスペクト比を1以上とすることにより、上記図4に示したように、はんだ60のひずみ応力が大幅に低減する。
【0063】
よって、本実施形態のセンサ装置によれば、回路チップ20と基台10との間隔を広くするために接続部材40を基台10にはんだ付けするにあたって、接続部材を上記円錐部材40とすることで、当該円錐部材40のはんだ接合性を向上させることができる。
【0064】
また、上記図1に示されるように、本実施形態では、基台10の一面11は平坦面、すなわち基台10における回路チップ20の搭載面11は平坦面である。このような構成において、本実施形態では、回路チップ20の一面21側において、円錐部材40はセンサチップ30よりも基台10側に突出している。
【0065】
このように、回路チップ20の一面21側において、円錐部材40がセンサチップ30よりも基台10側に突出していれば、基台10の一面11が平坦面であっても、円錐部材40の先端部42側と基台10とが、はんだ60を介して接触して接合される。それとともに、センサチップ30と基台10とが接触せずに離れた状態を実現することが、容易になる。
【0066】
次に、本センサ装置の製造方法について、図5、図6を参照して述べる。図5は本製造方法を示す工程図、図6は図5に続く製造方法を示す工程図であり、各工程におけるワークを断面的に示している。これら図5、図6においては、センサチップ30における通電電極34および封止部35は、図示を省略してある。
【0067】
なお、ここでは、回路チップ20はウェハ状態のものを用い、このウェハ状態の回路チップ20に対して製造を進めていき、最終的に、これを個々のチップ単位にカットして、センサ装置を完成させていく方法を示すが、もちろん、初めからチップサイズに形成された回路チップ20を用意し、これに対して同様の製造方法を適用していくものであってもよい。
【0068】
まず、図5(a)に示されるように、ウェハ状態の回路チップ20を用意するとともに、一方で、図5(b)に示されるように、センサチップ30を用意する(用意工程)。これらのチップ20、30は上述したように、通常の半導体プロセス等により形成されるものである。
【0069】
次に、センサチップ接続工程として、図5(b)に示されるように、センサチップ30を回路チップ20の一面21側に電気的に接続する。ここでは、センサチップ30の一面31を回路チップ20の一面21に対向させ、金属接合材50を介して、通電電極34および封止部35と回路チップ20とを電気的および機械的に接続する。この金属接合材50による接続は、はんだ接続等により行う。
【0070】
次に、図5(c)、(d)、図6(a)に示される接続部材形成工程を行う。この接続部材形成工程では、Ag−Sn合金の焼結体よりなり、回路チップ20側から基台10側に向かって先窄まりとなるアスペクト比が1以上の円錐形状をなす円錐部材40を、回路チップ20の一面21側に、接続部材として形成する。
【0071】
この接続部材形成工程は、シート用意工程、積層工程、加熱加圧工程、除去工程の各工程を順次実行していくものである。まず、シート用意工程では、図5(c)に示されるような円錐部材40の成形型となる樹脂製のシート100を用意する。このシート100は、円錐部材40の形成位置に対応する位置にて円錐部材40に対応する円錐形状をなすキャビティ101を有する。
【0072】
具体的に、キャビティ101は、シート100の厚さ方向に貫通する円錐状の貫通孔であり、このキャビティ101が円錐部材40の配置パターンに対応して設けられている。ここでは、図5(c)に示される複数個のシート100は、互いに別体のものであってもよいし、図示しない連結部により互いに一体とされたものであってもよい。
【0073】
このようなシート100は、たとえば液晶ポリマーやポリイミドなどの樹脂をシート状に成形してなるものである。そして、キャビティ101は、たとえばレーザ加工や型成形などにより形成される。
【0074】
そして、充填工程では、図5(d)に示されるように、シート100のキャビティ101に、円錐部材40の素材であるAg−Sn合金のペースト40aを充填する。このペースト40aの充填は、一般的な印刷法などにより行う。
【0075】
次に、積層工程では、図5(d)に示されるように、キャビティ101から露出するペースト40aを回路チップ20の一面21側に接触させつつ、シート100を回路チップ20の一面21上に積層する。具体的には、回路チップ20の一面21上にてペースト40aを位置合わせしつつ、シート100を回路チップ20上に搭載する。
【0076】
次に、加熱加圧工程では、積層されたシート100と回路チップ20とを加熱および加圧することにより、ペースト40aを焼成して焼結体とする。そして、この焼結体が円錐部材40として形成される。具体的に、この加熱加圧は、一般的な熱プレス装置により行えるが、円錐部材40と回路チップ20とは、上記焼成により形成される金属接合などの接合力により接続される。
【0077】
この加熱加圧工程の後、除去工程では、図6(a)に示されるように、シート100を回路チップ20および円錐部材40から除去する。このシート100の除去は、剥離やエッチング等により行え、それにより、回路チップ20の一面21上に円錐部材40を残して、シート100が除去される。
【0078】
こうして、シート用意工程、積層工程、加熱加圧工程および除去工程の各工程により構成される接続部材形成工程が終了し、接続部材としての円錐部材40が完成する。次に、図6(b)に示されるように、ウェハ状態の回路チップ20を、ダイシングカットなどによって、チップ単位に分割する。それにより、センサチップ30および円錐部材40が接続された回路チップ20ができあがる。
【0079】
その後は、このセンサチップ30および円錐部材40が接続された回路チップ20を、円錐部材40を介して基台10の一面10上に搭載し、上記図1に示されるように、円錐部材40の先端部42側を基台10の一面11にはんだ付けする。それにより、円錐部材40を介して回路チップ30が基台10に支持される(回路チップはんだ付け工程)。こうして、図1に示される本実施形態のセンサ装置ができあがる。以上が、本センサ装置の製造方法である。
【0080】
この本実施形態の製造方法によれば、接続部材としての円錐部材40の形成は、めっきのように金属を析出成長させるのではなく、形成する円錐部材40に対応したキャビティ101が形成されたシート100にペースト40aを充填し、この充填されたペースト40aを焼結させて回路チップ20に転写するものである。
【0081】
従って、金属の析出成長ではないため、製造時間は形成する円錐部材40の高さによらずほぼ一定であり、円錐部材40の高さが高い場合においても、製造コストが増大することがない。よって、本製造方法によれば、円錐部材40は、従来のめっきによる円柱状ポストに比べて大幅に安価なものとなり、接続部材のコスト低減が図れる。
【0082】
また、上記したように、本実施形態では、センサチップ30の一面31にてセンシング部33を取り囲む環状の封止部35を設け、この封止部35を回路チップ20の一面21側に接続することにより、センシング部33の気密構成を実現している。そのため、本実施形態の製造方法では、センサチップ接続工程において、センサチップ20と回路チップ30との電気的接続と同時に、当該気密構成の構築を行うことができる。
【0083】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係るセンサ装置の要部を示す概略断面図である。この図7では、本センサ装置のうち、はんだ60および基台10を省略している。本実施形態は、上記第1実施形態に比べて、緩衝部材70を追加した構成としたことが相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0084】
図7に示されるように、本実施形態では、円錐部材40における回路チップ20側に位置する根元部41側は、緩衝部材70により封止されている。この緩衝部材70は、円錐部材40に発生する応力を緩和するものである。
【0085】
ここで、当該応力は、回路チップ20を構成するシリコンなどの半導体と基台10との線膨張係数差により、円錐部材40の根元部41側に発生するものである。通常は、回路チップ20の線膨張係数の方が、基台10の線膨張係数よりも小さい。
【0086】
この緩衝部材70は、円錐部材40の根元部41を取り囲む環状シート形状をなすものであり、線膨張係数が、回路チップ20を構成するシリコンなどの半導体と基台10との間の大きさのものである。このような緩衝部材70の具体的な材質としては、液晶ポリマーなどの樹脂が挙げられる。
【0087】
つまり、各部の線膨張係数の大小関係は、典型的には回路チップ20<緩衝部材70<基台10となる。そして、本実施形態によれば、円錐部材40の根元部41側に発生する応力が、緩衝部材70により緩和されるから、接合信頼性の向上等が期待できる。
【0088】
次に、この緩衝部材70の形成方法の一例について、図8を参照して述べる。図8は、本実施形態に係る緩衝部材70の形成方法を示す工程図である。この方法は、上記第1実施形態に示したセンサ装置の製造方法における接続部材形成工程にて、シート100の一部によって緩衝部材70を形成するものであり、上記製造方法の一部として組み込まれるものである。
【0089】
まず、本実施形態の接続部材形成工程におけるシート用意工程では、図8(a)に示されるように、シート100として、円錐部材40における根元部41側から先端部42側に向かって第1の層70、第2の層71が順次積層されたものを用意する。これら第1の層70および第2の層71としては、たとえば液晶ポリマーなどシート100として使用可能な樹脂材料よりなるものが用いられる。
【0090】
ここで、第1の層70と第2の層71とは、同じ樹脂材料でもよいし、異なる樹脂材料でもよいが、第1の層70は、線膨張係数が回路チップ20と基台10との間のものとする。そして、本シート100においては、当該両層70、71は、互いに重ね合わされ、構成樹脂の接着力により固定されており、第1の層70および第2の層71を貫く貫通孔としてキャビティ101が設けられている。
【0091】
また、図8のシート100は、複数個の第1の層70が共通の第2の層71により連結され、一体化された構成とされているが、これは、上記図5(c)に示される複数個のシート100が連結部としての第2の層71により互いに一体とされたものに相当する。なお、この図8のシート100においても、各第1の層70間に位置する第2の層71を切り離した構成とすることで、複数個の別体のシート100としてもよいことはもちろんである。
【0092】
そして、図8(b)に示されるように、充填工程では、シート100のキャビティ101に、Ag−Sn合金のペースト40aを充填し、続いて、積層工程では、キャビティ101から露出するペースト40aを回路チップ20の一面21側に接触させつつ、シート100を回路チップ20の一面21上に積層する。このとき、第1の層70側を回路チップ20に接触させる。
【0093】
そして、本実施形態の加熱加圧工程では、上記第1実施形態と同様、積層されたシート100と回路チップ20とを加熱および加圧することにより、ペースト40aを焼成し、焼結体としての円錐部材40を形成する。
【0094】
その後、本実施形態の除去工程では、図8(c)に示されるように、円錐部材40の根元部41側に位置する第1の層70を残し、円錐部材40の先端部42側に位置する第2の層71を除去する。この第2の層71の除去は、剥離でもよいし、エッチング等により行ってもよい。
【0095】
これにより、本実施形態の緩衝部材70ができあがる。つまり、除去工程にて残される第1の層70は、線膨張係数が回路チップ20と基台10との間のものであるから、円錐部材40の根元部41側に発生する応力を緩和する緩衝部材70とすることができる。こうして、図7に示される構造体が形成され、これを上記同様に、回路チップはんだ付け工程に供すれば、本実施形態のセンサ装置ができあがる。
【0096】
図9は、本実施形態の他の例としてのセンサ装置の要部を示す概略断面図であり、図9でも、当該センサ装置のうち、はんだ60および基台10を省略している。上記図7では緩衝部材70は単一層のものであったが、図9の例では、緩衝部材70を、回路チップ20の一面21側から第1の緩衝層70a、第2の緩衝層70bが順次積層された2層構成としている。
【0097】
この2層構成の緩衝部材70において、円錐部材40の根元部41側に位置する第1の緩衝層70aは、円錐部材40の先端部42側に位置する第2の緩衝層70bよりも線膨張係数が大きいものである。つまり、図9に示される例では、各部の線膨張係数の大小関係は、典型的には回路チップ20<第1の緩衝層70a<第2の緩衝層70b<基台10となる。
【0098】
具体的に、第1の緩衝層70aとしては、たとえば液晶ポリマーよりなるシートが挙げられ、第2の緩衝層70bとしては、たとえばポリイミド系樹脂よりなるシートが挙げられる。この図9の例によれば、線膨張係数を段階的に変化させることで、より安定した応力緩和が可能となる。
【0099】
なお、本図9に示される緩衝部材70を形成するには、上記図8に示される緩衝部材70の形成工程において、シート100における第1の層70を、第1の緩衝層70aと第2の緩衝層70bとが貼り合わされた2層のシートにより構成したものとすればよい。そうすれば、後は当該図8に示した方法を行うことによって、本図9の緩衝部材70を形成できることは言うまでもない。
【0100】
(第3実施形態)
図10は、本発明の第3実施形態に係るセンサ装置の要部を示す概略断面図である。この図10では、本センサ装置のうち、はんだ60および基台10を省略している。本実施形態は、上記第1実施形態に比べて、バッファー層80を追加した構成としたことが相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0101】
図10に示されるように、バッファー層80は、回路チップ20の一面21と円錐部材40との間に設けられている。このバッファー層80は、円錐部材40に発生する応力を緩和するものである。具体的に、バッファー層80は、たとえばPI(ポリイミド)やBCB(ベンゾシクロベテン)などの樹脂よりなり、塗布および硬化などにより、回路チップ20の一面21に設けられた層である。
【0102】
そして、バッファー層80は、上記緩衝部材70と同様、線膨張係数が、回路チップ20を構成するシリコンなどの半導体と基台10との間の大きさのものである。つまり、本実施形態における各部の線膨張係数の大小関係は、典型的には回路チップ20<バッファー層80<基台10となる。
【0103】
ここで、図11は、バッファー層80内部の配線構成を示す概略断面図である。このバッファー層80は、電気絶縁性のものであるが、バッファー層80内部に再配線を構成することにより、回路チップ20と、センサチップ30の通電電極34および円錐部材40との導通が図られている。
【0104】
具体的には、図11に示されるように、回路チップ20の一面21上にアルミニウムなどよりなる電極23が形成されており、この電極23はバッファー層80内部に位置する。一方、接続パッド25が、バッファー層80より露出して設けられている。さらに、バッファー層80の内部には、再配線層24が設けられ、電極23と接続パッド25とは、この再配線層24を介して電気的に接続されている。
【0105】
これら再配線層24および接続パッド25は、たとえばアルミニウムや銅などよりなり、このような再配線構成は、樹脂の塗布および硬化、金属配線の成膜およびパターニングなどの一般的な手法により形成される。そして、回路チップ20の一面21の電極23は、再配線層24および接続パッド25を介して、上記センサチップ30の通電電極34および円錐部材40に電気的に接続されるようになっている。
【0106】
本実施形態によれば、円錐部材40の根元部41側に発生する応力が、バッファー層80により緩和されるから、接合信頼性の向上等が期待できる。なお、本実施形態は、上記第1実施形態だけでなく、第2実施形態とも組み合わせてもよい。つまり、このバッファー層80を設けた構成においても、上記緩衝部材70をさらに設けてもよい。
【0107】
(第4実施形態)
図12は、本発明の第4実施形態に係るセンサ装置の要部を示す概略断面図であり、この図12では、本センサ装置のうち、はんだ60および基台10を省略している。ここでは、上記第1実施形態との相違点を中心に述べる。
【0108】
上記第1実施形態では、回路チップ20の一面21に対向するセンサチップ30の一面31にセンシング部33が設けられており、さらにセンシング部33を取り囲む環状の封止部35を設けることにより、センシング部33の気密構成を実現していた。
【0109】
それに対して、本実施形態では、センシング部33は、基台10に対向するセンサチップ30の他面32に設けられている。この場合、図12に示されるように、センサチップ30の他面32にキャップ90を設け、このキャップ90によりセンシング部33を気密に封止する。
【0110】
このキャップ90は、たとえばガラスやシリコンなどよりなるもので、センシング部33とは離れつつ、センシング部33の周囲にてセンサチップ30の他面32に対して、陽極接合などにより接合されたものである。
【0111】
なお、本実施形態は、センサチップ30の他面32にセンシング部33が設けられている場合に、これをキャップ90で気密封止する構成を採用するだけのものであるから、上記第2実施形態や上記第3実施形態とも組み合わせてよいことは言うまでもない。
【0112】
(第5実施形態)
図13は、本発明の第5実施形態に係るセンサ装置の要部を示す概略断面図であり、この図13では、本センサ装置のうち、はんだ60および基台10を省略している。
【0113】
図13に示されるように、本実施形態は、センサチップ30と回路チップ20との接合部を、エポキシ樹脂等よりなるアンダーフィル95で補強したものである。この図13に示される例では、封止部35の外周にアンダーフィル95を配置し、これにより、封止部35における接合部をアンダーフィル95で封止して補強している。
【0114】
また、図14は、本実施形態の他の例としてのセンサ装置の要部を示す概略断面図である。この図14に示される例では、さらにセンサチップ30と回路チップ20との間にも、アンダーフィル95を注入して充填したものとしており、上記図13に示される例に比べて、アンダーフィル95による補強の面積を大きくし、当該補強をより強いものとしている。
【0115】
なお、本実施形態は、センサチップ30の接合部にアンダーフィル95を付加した構成を採用するだけのものであるから、上記第1実施形態以外にも、上記第2実施形態〜上記第4実施形態とも組み合わせてよいことは言うまでもない。
【0116】
(第6実施形態)
図15は、本発明の第6実施形態に係るセンサ装置の要部を示す概略断面図であり、(a)は第1の例、(b)は第2の例を示している。本実施形態は、上記第1実施形態において基台10に凹部12を設けたことが相違するものであり、ここでは、この相違点を中心に述べることとする。
【0117】
図15に示されるように、本実施形態では、基台10における平坦な一面11のうちセンサチップ30に対向する部位に、凹んだ凹部12が設けられている。ここで、図15(a)に示される第1の例では、有底の凹部12であり、図15(b)に示される第2の例では貫通孔による凹部12とされている。
【0118】
本実施形態によれば、この凹部12を介して、センサチップ30と基台10とを干渉させることなく離した状態とすることができる。たとえば、図15に示されるように、円錐部材40の突出長さがセンサチップ30よりも短く、回路チップ20の一面21を基準として円錐部材40よりもセンサチップ30の方が突出している場合であっても、センサチップ30と基台10とが干渉することなく、円錐部材40による回路チップ20の基台10への搭載が可能となる。
【0119】
なお、本実施形態は、基台10の一面11のうちセンサチップ30に対向する部位に、凹部12を設けた構成を採用するだけのものであるから、上記第1実施形態以外にも、上記第2実施形態〜上記第5実施形態とも組み合わせてよいことは言うまでもない。
【0120】
(他の実施形態)
なお、上記第1実施形態に示したセンサ装置の製造方法では、センサチップ30を回路チップ20に電気的に接続するセンサチップ接続工程を行った後に、接続部材としての円錐部材40を回路チップ20に形成する接続部材形成工程を行ったが、これとは逆に、接続部材形成工程を先に行い、その後、センサチップ接続工程を行うようにしてもかまわない。
【0121】
また、上記第2実施形態の各例では、接続部材形成工程にて、第1の層70と第2の層71とよりなるシート100を用いて緩衝部材70を形成したが、たとえば単一層のシート100を用いてもよい。この場合、除去工程において、単一層のシート100のうち円錐部材40の先端部42側の部位をレーザエッチング等で除去して当該シート100の薄肉化を行い、当該薄肉化後に残ったシート部分を緩衝部材70とするようにしてもよい。
【0122】
また、上記図1等では、センサチップ30の一面31に、センシング部33が設けられている場合において、当該一面31に封止部35を設け、これによりセンシング部33を気密封止したが、場合によっては封止部35を省略し、センシング部33を気密封止しない構成であってもよい。同様に、上記図12においても、センシング部33を気密封止するキャップ90を省略した構成であってもよい。
【0123】
また、回路チップ20の一面21に接続されるセンサチップ30は、複数個であってもよい。また、基台10の一面11は、これに対向するセンサチップ30と干渉することがない程度に凹凸面であってもよい。また、上記した各実施形態同士の組み合わせ以外にも、上記各実施形態は、可能な範囲で適宜組み合わせてよい。
【符号の説明】
【0124】
10 基台
11 基台の一面
12 凹部
20 回路チップ
21 回路チップの一面
30 センサチップ
33 センシング部
35 封止部
40 接続部材
40a ペースト
41 接続部材の根元部
42 接続部材の先端部
60 はんだ
70 緩衝部材、第1の層
71 第2の層
80 バッファー層
100 シート
101 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台(10)と、
一面(21)側を前記基台(10)の一面(11)に対向させて前記基台(10)の一面(11)側に搭載された回路チップ(20)と、
センシング部(33)を有し、前記回路チップ(20)と前記基台(10)との間に位置して前記回路チップ(20)の一面(21)側と電気的に接続されたセンサチップ(30)と、
前記回路チップ(20)の一面(21)側にて前記回路チップ(20)側から前記基台(10)の一面(11)に延びるように設けられ、前記回路チップ(20)を前記基台(10)の一面(11)に支持する接続部材(40)と、を備えるセンサ装置において、
前記接続部材は、Ag−Sn合金の焼結体よりなり、前記回路チップ(20)側から前記基台(10)側に向かって先窄まりとなるアスペクト比が1以上の円錐形状をなす円錐部材(40)であり、
前記基台(10)の一面(11)に設けられたはんだ(60)により、前記円錐部材(40)の先端部(42)側と前記基台(10)とが接合されていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記回路チップ(20)の一面(21)側において、前記円錐部材(40)は前記センサチップ(30)よりも前記基台(10)側に突出しており、
前記基台(10)の一面(11)は平坦面であることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記円錐部材(40)における前記回路チップ(20)側に位置する根元部(41)側は、前記円錐部材(40)に発生する応力を緩和する緩衝部材(70)により封止されていることを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記回路チップ(20)の一面(21)と前記円錐部材(40)との間には、前記円錐部材(40)に発生する応力を緩和するバッファー層(80)が介在していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記基台(10)の一面(11)のうち前記センサチップ(30)に対向する部位には、凹部(12)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記センシング部(33)は、前記センサチップ(30)における前記回路チップ(20)と対向する一面(31)側に設けられており、
前記センサチップ(30)の一面(31)には、前記センシング部(33)を取り囲む環状の封止部(35)が設けられ、
この封止部(35)が前記回路チップ(20)の一面(21)側に環状に接続されることにより、前記センシング部(33)は、前記封止部(35)の内側に気密に封止されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載のセンサ装置。
【請求項7】
基台(10)と、
一面(21)側を前記基台(10)の一面(11)に対向させて前記基台(10)の一面(11)側に搭載された回路チップ(20)と、
センシング部(33)を有し、前記回路チップ(20)と前記基台(10)との間に位置して前記回路チップ(20)の一面(21)側と電気的に接続されたセンサチップ(30)と、
前記回路チップ(20)の一面(21)側にて前記回路チップ(20)側から前記基台(10)の一面(11)に延びるように設けられ、前記回路チップ(20)を前記基台(10)の一面(11)に支持する接続部材(40)と、を備えるセンサ装置の製造方法において、
前記回路チップ(20)、および前記センサチップ(30)を用意する用意工程と、
前記センサチップ(30)を前記回路チップ(20)の一面(21)側に電気的に接続するセンサチップ接続工程と、
Ag−Sn合金の焼結体よりなり、前記回路チップ(20)側から前記基台(10)側に向かって先窄まりとなるアスペクト比が1以上の円錐形状をなす前記接続部材としての円錐部材(40)を、前記回路チップ(20)の一面(21)側に形成する接続部材形成工程と、
前記各工程の後、前記円錐部材(40)の先端部(42)側を前記基台(10)の一面(11)にはんだ付けすることにより、前記円錐部材(40)を介して前記回路チップ(30)を前記基台(10)に支持する回路チップはんだ付け工程と、を備えており、
前記接続部材形成工程は、前記円錐部材(40)の形成位置に対応する位置にて前記円錐部材(40)に対応する円錐形状をなすキャビティ(101)を有するシート(100)を用意するシート用意工程と、
前記キャビティ(101)にAg−Sn合金のペースト(40a)を充填する充填工程と、
前記キャビティ(101)から露出する前記ペースト(40a)を前記回路チップ(20)の一面(21)側に接触させつつ、前記シート(100)を前記回路チップ(20)の一面(21)上に積層する積層工程と、
積層された前記シート(100)と前記回路チップ(20)とを加熱および加圧することにより、前記ペースト(40a)を焼成して、前記焼結体としての前記円錐部材(40)を形成する加熱加圧工程と、
その後、前記シート(100)を前記回路チップ(20)および前記円錐部材(40)から除去する除去工程と、を有するものであることを特徴とするセンサ装置の製造方法。
【請求項8】
前記接続部材形成工程における前記シート用意工程では、前記シート(100)として、前記円錐部材(40)における前記回路チップ(20)側に位置する根元部(41)側から先端部(42)側に向かって第1の層(70)、第2の層(71)が積層されたものを用い、
前記除去工程では、前記円錐部材(40)の根元部(41)側に位置する前記第1の層(70)を残し、前記円錐部材(40)の先端部(42)側に位置する前記第2の層(71)を除去するものであり、
前記第1の層(70)は、線膨張係数が前記回路チップ(20)と前記基台(10)との間のものであることを特徴とする請求項7に記載のセンサ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−51256(P2013−51256A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187295(P2011−187295)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】