説明

ソレノイドバルブ装置、およびこれを備える油圧装置、およびこれを備える油圧パワーステアリング装置

【課題】弁体の位置を検出することにともない弁体の移動が妨げられることを抑制することのできる構造のソレノイドバルブ装置、およびこれを備える油圧装置、およびこれを備える油圧パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】油圧パワーステアリング装置には、駆動電流の供給を受けて磁束を発生するソレノイド75と、ソレノイド75から生じる磁束により移動する弁体としてのスプール74とを含むソレノイドバルブ70と、このソレノイドバルブ70を制御する制御装置とが設けられている。制御装置は、駆動電流に交流成分を含めてソレノイド75に供給し、ソレノイド75のインピーダンスを検出する。そして、ソレノイド75に供給している駆動電流と検出したインピーダンスとの関係が基準位置指標と整合していないとき、ソレノイド75への駆動電流の供給を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動電流の供給を受けて磁束を発生するソレノイドと、このソレノイドから生じる磁束により移動する弁体とを含むソレノイドバルブ装置、およびこれを備える油圧装置、およびこれを備える油圧パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ソレノイドバルブとしては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。
ソレノイドバルブの用途の一例として、油圧パワーステアリング装置における油圧シリンダ内の第1油圧室と第2油圧室とを接続するものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−79644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ソレノイドバルブの制御をより正確に行なうためには、弁体の位置を検出することが必要になる。位置検出の方法として、例えば機械式の位置検出センサを用いることが考えられるが、この場合には同センサが弁体に接触することに起因して、弁体の移動が妨げられるおそれがある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、弁体の位置を検出することにともない弁体の移動が妨げられることを抑制することのできる構造のソレノイドバルブ装置、およびこれを備える油圧装置、およびこれを備える油圧パワーステアリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための手段を以下に記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、駆動電流の供給を受けて磁束を発生するソレノイドと、このソレノイドから生じる磁束により移動する弁体とを含むソレノイドバルブと、このソレノイドバルブを制御する制御装置とを含むソレノイドバルブ装置において、前記制御装置は、前記駆動電流に交流成分を含めて前記ソレノイドに供給し、前記ソレノイドのインピーダンスを検出することを要旨としている。
【0007】
上記発明によれば、交流成分を含む駆動電流がソレノイドに供給されるため、ソレノイドから生じる磁束により弁体が移動するとき、ソレノイドと弁体との距離に応じてソレノイドのインピーダンスが変化する。すなわち、ソレノイドのインピーダンスにはソレノイドと弁体との距離が反映される。
【0008】
上記発明においては、ソレノイドのインピーダンスを検出しているため、このインピーダンスに基づいてソレノイドに対する弁体の位置を把握することができる。また、弁体の位置を検出するうえで弁体との機械的な接触を必要としないため、弁体の位置を検出することにともない弁体の移動が妨げられることを抑制することができる。
【0009】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のソレノイドバルブ装置において、前記インピーダンスに応じて前記駆動電流の大きさを変更することを要旨としている。
(3)請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のソレノイドバルブ装置において、前記駆動電流と前記弁体の動作とが整合するときの前記駆動電流と前記インピーダンスとの関係を基準位置指標として、前記ソレノイドに供給した前記駆動電流とこの駆動電流の供給にともない検出した前記インピーダンスとの関係が前記基準位置指標と異なるとき、前記ソレノイドに対する前記駆動電流の供給を停止することを要旨としている。
【0010】
(4)請求項4に記載の発明は、内部の空間に作動油が供給されるシリンダと、前記内部の空間を第1油圧室および第2油圧室に区画するピストンと、前記第1油圧室と前記第2油圧室とを互いに連通する連通油路とを含む油圧装置において、請求項1〜3のいずれか一項に記載のソレノイドバルブ装置が設けられていること、前記ソレノイドバルブ装置が備える前記ソレノイドバルブは、前記連通油路を開放および閉鎖するものであること、前記弁体を収容するハウジングが前記ソレノイドバルブに設けられていること、前記ハウジングに対する前記弁体の位置が区画範囲にあるとき、前記連通油路が閉鎖されること、ならびに、前記ハウジングに対する前記弁体の位置が連通範囲にあるとき、前記連通油路が開放されることを要旨としている。
【0011】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の油圧装置において、前記ソレノイドバルブと前記第1油圧室とを互いに接続する第1下流油路が設けられていること、前記ソレノイドバルブと前記第2油圧室とを互いに接続する第2下流油路が設けられていること、前記第1下流油路と前記第2下流油路と前記ハウジング内の空間とを含めて前記連通油路が形成されていること、前記弁体が前記区画範囲に位置しているとき、前記第1下流油路と前記第2下流油路との間の作動油の流れが遮断されること、ならびに、前記弁体が前記連通範囲に位置しているとき、前記第1下流油路と前記第2下流油路とが前記ハウジング内の空間を介して互いに接続されることを要旨としている。
【0012】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の油圧装置において、前記シリンダに作動油を供給する電動ポンプが設けられていること、前記電動ポンプと前記ソレノイドバルブとの間に前記シリンダに供給される作動油の量を調整する流量制御弁が設けられていること、前記ソレノイドバルブと前記流量制御弁とを互いに接続し、かつ前記第1下流油路に対応する第1上流油路が設けられていること、前記ソレノイドバルブと前記流量制御弁とを互いに接続し、かつ前記第2下流油路に対応する第2上流油路が設けられていること、ならびに、前記弁体が前記区画範囲に位置しているとき、前記第1上流油路と前記第1下流油路とが互いに接続され、かつ前記第2上流油路と前記第2下流油路とが互いに接続され、かつ前記第1上流油路と前記第2下流油路との間の作動油の流れが遮断され、かつ前記第2上流油路と前記第1下流油路との間の作動油の流れが遮断されていることを要旨としている。
【0013】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項4〜6のいずれか一項に記載の油圧装置において、前記弁体を前記区画範囲から前記連通範囲に向けて押す力を前記弁体に付与する弾性部材が前記ソレノイドバルブに設けられていること、ならびに、前記ソレノイドに前記駆動電流が供給されていないとき、前記弾性部材の力により前記弁体が前記連通範囲に位置することを要旨としている。
【0014】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項4〜7のいずれか一項に記載の油圧装置を含むことを要旨としている。
(9)請求項9に記載の発明は、請求項6を引用する請求項8、または請求項6を引用する請求項7を引用する請求項8に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記ピストンが転舵シャフトに固定されていること、前記流量制御弁には、前記第1上流油路に接続される第1ポートおよび前記第2上流油路に接続される第2ポートが形成されたハウジングと、このハウジングに対して回転することにより前記第1ポートおよび前記第2ポートの開度を変更する弁体とが設けられていること、ならびに、前記流量制御弁においての前記ハウジングに対する前記弁体の回転位置に応じて前記第1油圧室および前記第2油圧室への作動油の供給量が変更されることを要旨としている。
【0015】
(10)請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の油圧パワーステアリング装置において、前記電動ポンプと前記流量制御弁とを互いに接続する供給油路が設けられていること、前記流量制御弁のハウジング内の作動油を排出する排出油路が設けられていること、前記流量制御弁のハウジングには、前記供給油路に接続される供給ポートと、前記排出油路に接続される排出ポートとが設けられていること、前記流量制御弁においての前記ハウジングに対する前記弁体の回転位置が第1供給位置のとき、前記供給ポートと前記第1ポートとが互いに接続され、かつ前記排出ポートと前記第2ポートとが互いに接続されること、ならびに、前記流量制御弁においての前記ハウジングに対する前記弁体の回転位置が第2供給位置のとき、前記排出ポートと前記第1ポートとが互いに接続され、かつ前記供給ポートと前記第2ポートとが互いに接続されることを要旨としている。
【0016】
(11)請求項11に記載の発明は、転舵シャフトに油圧を付与する油圧装置を含む油圧パワーステアリング装置において、請求項1〜3のいずれか一項に記載のソレノイドバルブ装置が設けられていること、ならびに、前記ソレノイドバルブ装置が備える前記ソレノイドバルブは、油路を開放および閉鎖するものであることを要旨としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、弁体の位置を検出することにともない弁体の移動が妨げられることを抑制することのできる構造のソレノイドバルブ装置、およびこれを備える油圧装置、およびこれを備える油圧パワーステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態の油圧パワーステアリング装置について、その全体構造を模式的に示す模式図。
【図2】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、制御装置の構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、流量制御弁の断面構造およびその周囲の構成を示す模式図。
【図4】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、図3のA−A線に沿う流量制御弁の断面構造かつ弁体の回転位置が回転中立位置のときの断面構造を示す断面図。
【図5】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、(a)は図3のA−A線に沿う流量制御弁の断面構造かつ弁体の回転位置が第1供給位置のときの断面構造を示す断面図、(b)は図3のA−A線に沿う流量制御弁の断面構造かつ弁体の回転位置が第2供給位置のときの断面構造を示す断面図。
【図6】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、ソレノイドバルブの断面構造かつスプールが区画範囲に位置しているときの断面構造を示す断面図。
【図7】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、ソレノイドバルブの断面構造かつスプールが連通範囲に位置しているときの断面構造を示す断面図。
【図8】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、スプール位置とソレノイドのインピーダンスとの関係を示すグラフ。
【図9】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、ソレノイドバルブが弁正常状態にあるときのソレノイドに供給される駆動電流とスプール位置との関係を示すグラフ。
【図10】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、ソレノイドバルブが弁正常状態にあるときのソレノイドに供給される駆動電流とソレノイドのインピーダンスとの関係を示すグラフ。
【図11】同実施形態の油圧パワーステアリング装置について、制御装置により実行される「ソレノイド位置制御」の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照して、油圧パワーステアリング装置1の構成について説明する。
油圧パワーステアリング装置1には、ステアリングホイール2の操作を転舵輪4に伝達するステアリング装置10と、ステアリングホイール2の操作に必要な力を補助するアシスト装置20と、アシスト装置20を制御する制御装置50とが設けられている。
【0020】
ステアリング装置10には、ステアリングホイール2とともに回転するステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11の回転を往復運動に変換するラックアンドピニオン機構12と、ラックアンドピニオン機構12の動作にともない軸方向に移動する転舵シャフト13とが設けられている。
【0021】
制御装置50は、トルクセンサ14、操舵角センサ15、および車速センサ5の出力に基づいて、アシスト装置20の電動ポンプ24、流量制御弁30、およびソレノイドバルブ70等を制御する。
【0022】
トルクセンサ14は、ステアリングシャフト11に付与された操舵トルクに応じた信号を制御装置50に出力する。操舵角センサ15は、ステアリングシャフト11の回転角度、すなわち操舵角に応じた信号を制御装置50に出力する。車速センサ5は、転舵輪4の回転速度に応じた信号を制御装置50に出力する。
【0023】
油圧パワーステアリング装置1は次のように動作する。
運転者によりステアリングホイール2にトルクが入力されたとき、ステアリングホイール2とともにステアリングシャフト11が回転する。ステアリングシャフト11の回転は、ラックアンドピニオン機構12により転舵シャフト13の軸方向の直線運動に変換される。転舵シャフト13は、ラックアンドピニオン機構12から伝達される力により軸方向に移動する。そして、転舵シャフト13の軸方向への移動にともないタイロッド3を介して転舵輪4の舵角が変更される。
【0024】
また、ステアリングホイール2が操作されるとき、アシスト装置20の油圧が制御されることにより転舵シャフト13に軸方向の力が付与される。これにより、転舵シャフト13を軸方向に移動させるためにステアリングホイール2の操作に要求される力が小さくなる。すなわち、ステアリングホイール2の操作に必要となる力がアシスト装置20によりアシストされる。
【0025】
アシスト装置20の構成について説明する。
アシスト装置20には、転舵シャフト13に油圧を付与する油圧シリンダ21と、油圧シリンダ21に作動油を供給する電動ポンプ24と、油圧シリンダ21への作動油の給排態様を制御する流量制御弁30と、作動油を貯留する貯留タンク27とが設けられている。また、油圧シリンダ21の第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとの間で作動油を流通させるソレノイドバルブ70と、これらの各構成要素を互いに接続する油路40とが設けられている。
【0026】
油路40としては、次の各油路41〜46が設けられている。
(a)供給油路41は、電動ポンプ24を介して貯留タンク27と流量制御弁30の供給ポート63(図4)とを互いに接続している。
(b)排出油路42は、流量制御弁30の排出ポート64(図4)と貯留タンク27とを互いに接続している。
(c)第1上流油路43は、流量制御弁30の第1ポート61(図4)とソレノイドバルブ70とを互いに接続している。
(d)第1下流油路44は、ソレノイドバルブ70と油圧シリンダ21の第1油圧室21Aとを互いに接続している。
(e)第2上流油路45は、流量制御弁30の第2ポート62(図4)とソレノイドバルブ70とを互いに接続している。
(f)第2下流油路46は、ソレノイドバルブ70と油圧シリンダ21の第2油圧室21Bとを互いに接続している。
【0027】
油圧シリンダ21には、転舵シャフト13が挿入されるハウジング22と、転舵シャフト13に固定されるピストン23とが設けられている。ハウジング22内の空間は、ピストン23により2つの油圧室、すなわち第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bに区画されている。第1油圧室21Aは、第1下流油路44を介してソレノイドバルブ70に接続されている。第2油圧室21Bは、第2下流油路46を介してソレノイドバルブ70に接続されている。
【0028】
電動ポンプ24には、その動力源としての電動モータ25と、電動モータ25の出力軸に連結される羽根車(図示略)を備えたポンプ26とが設けられている。電動モータ25としては、3相コイルのブラシレスモータが用いられている。
【0029】
ソレノイドバルブ70は、第1上流油路43、第2上流油路45、第1下流油路44、および第2下流油路46の接続状態を変更するバイパスバルブとして構成されている。すなわち、ソレノイドバルブ70の動作状態を制御することにより、第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとの間の作動油の流れが遮断され、かつ各油圧室21A,21Bが流量制御弁30に接続される状態と、第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとが互いに連通された状態とを切り替えることができる。
【0030】
図2を参照して、油圧パワーステアリング装置1の制御構成について説明する。
制御装置50には、電動モータ25をフィードバック制御するフィードバック制御部51、流量制御弁30の開度を制御する開度制御部52、ソレノイドバルブ70を制御するソレノイドバルブ制御部53、および作動油の流量を補正する流量補正制御部54が設けられている。
【0031】
またこの他に、電動モータ25に供給する電流の目標値を算出する目標電流値算出部55、電動モータ25に供給されている電流値を検出する電流値算出部56、および電動モータ25の回転角を検出する回転角度算出部57が設けられている。なお、上記各制御部51〜54および各算出部55〜57は、演算処理を行う集積回路等の電子回路により構成されている。
【0032】
制御装置50は、ステアリングホイール2の操作を補助するためのアシスト制御を行なう。すなわち、車両の走行状態、ステアリングホイール2の操作状態、および油圧パワーステアリング装置1の動作状態等に基づいて、アシスト装置20により転舵シャフト13に付与する油圧の大きさを調整する制御を行なう。
【0033】
このアシスト制御には、電動ポンプ24の吐出量の制御(以下の(制御A))、流量制御弁30による油路の連通状態の制御(以下の(制御B))、およびソレノイドバルブ70による油圧シリンダ21の油室の連通状態の制御(以下の(制御C))が含まれる。
【0034】
(制御A)目標電流値算出部55は、トルクセンサ14の出力、操舵角センサ15の出力、および車速センサ5の出力に基づいて、電動モータ25に供給する電流について、その目標電流値を算出する。
【0035】
流量補正制御部54は、作動油の流量を増加または減少させる必要がある旨を操舵角センサ15の出力に基づいて判定したとき、操舵角センサ15の出力に基づいて電動モータ25の目標電流値を補正する。
【0036】
電流値算出部56は、電動モータ25の駆動回路25Aの出力電流に基づいて、電動モータ25の電流値を算出する。回転角度算出部57は、電動モータ25の電流値に基づいて、電動モータ25の回転角度を算出する。
【0037】
フィードバック制御部51は、流量補正制御部54を介して目標電流値算出部55から入力された電動モータ25の目標電流値、電流値算出部56から入力された電動モータ25の電流値、および回転角度算出部57から入力された電動モータ25の回転角度に基づいて、駆動回路25Aを介して電動モータ25をフィードバック制御する。なお、駆動回路25Aとしては、スイッチング素子を含むPWM駆動回路により構成されたものが設けられている。
【0038】
(制御B)開度制御部52は、流量補正制御部54を介して目標電流値算出部55から入力された電動モータ25の目標電流値に基づいて、流量制御弁30の開度を制御する。流量制御弁30の制御は、電動モータ25の制御と同様に、スイッチング素子を備えるPWM駆動回路により構成された駆動回路(図示略)を介して行われる。
【0039】
油圧シリンダ21に供給される作動油の流量は、電動ポンプ24の回転速度(電動モータ25の回転速度)と、流量制御弁30の開度により決定される。このため、流量制御弁30は、電動モータ25の目標電流値に基づいて、電動モータ25と協調して制御されている。
【0040】
(制御C)ソレノイドバルブ制御部53は、図1のステアリングホイール2の操作態様に応じて設定されるアシスト装置20に対する要求に基づいてソレノイドバルブ70を制御することにより、第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとの連通状態を変更する。ソレノイドバルブ70の制御は、ソレノイド駆動回路により構成された駆動回路(図示略)を介して行われる。
【0041】
図3〜図5を参照して、アシスト装置20の詳細な構成について説明する。
図3に示されるように、流量制御弁30には、供給油路41、排出油路42、第1上流油路43、および第2上流油路45が接続されるハウジング32と、ハウジング32を介して各油路に接続される複数のポートを有する連通部材33と、連通部材33に対して回転する弁体34と、弁体34とともに回転するトーションバー36とが設けられている。
【0042】
またこの他に、弁体34を回転させるための電動モータ31と、電動モータ31の出力軸と弁体34とを互いに固定するための固定部材35と、弁体34をハウジング32に対して支持する2つの軸受37とが設けられている。
【0043】
ハウジング32、連通部材33、弁体34、およびトーションバー36は、円筒形状の部材として構成されている。トーションバー36は、弁体34内に形成されている空間(以下、「内部空間34S」)に配置されている。弁体34は、連通部材33内に形成されている空間(以下、「内部空間33S」)に配置されている。連通部材33は、ハウジング32内に形成されている空間に配置されている。またハウジング32、連通部材33、弁体34、トーションバー36は、同軸上に設けられている。
【0044】
流量制御弁30においての回転の伝達構造について説明する。
電動モータ31の出力軸は、固定部材35に固定されている。固定部材35は、弁体34に固定されている。トーションバー36の第1端部36Aは、弁体34に固定されている。トーションバー36の第2端部36Bは、ハウジング32に固定されている。弁体34は、2つの軸受37を介してハウジング32により支持されている。
【0045】
そして、このように各構成要素が組み合わせられていることにより、電動モータ31が回転するとき、電動モータ31の出力軸、固定部材35、弁体34、およびトーションバー36の第1端部36Aを含む部分がハウジング32および連通部材33に対して一体的に回転する。また、トーションバー36においては、第1端部36Aを含む部分が第2端部36Bを含む部分に対してねじれる。
【0046】
一方、トーションバー36がねじれた状態において、電動モータ31からトーションバー36に付与されるトルクがトーションバー36の復元力よりも小さいとき、トーションバー36の第1端部36Aを含む部分が第2端部36Bを含む部分に対してねじれ量を小さくする方向に回転する。以上のように、電動モータ31の出力軸、固定部材35、弁体34、およびトーションバー36の第1端部36Aを含む部分がハウジング32および連通部材33に対して一体的に回転する。
【0047】
連通部材33および弁体34の構成について説明する。
連通部材33には、4つのポートすなわち、第1上流油路43が接続される第1ポート61、第2上流油路45が接続される第2ポート62、供給油路41が接続される供給ポート63、および排出油路42が接続される排出ポート64が形成されている。
【0048】
電動ポンプ24の吐出口は、供給油路41を介して供給ポート63に接続されている。第1油圧室21Aは、第1上流油路43およびソレノイドバルブ70を介して第1ポート61に接続されている。第2油圧室21Bは、第2上流油路45およびソレノイドバルブ70を介して第2ポート62に接続されている。貯留タンク27は、排出油路42を介して排出ポート64に接続されている。
【0049】
供給ポート63は、連通部材33の外周部に設けられた供給円環溝63Aと、供給円環溝63Aと連通部材33の内部空間33Sとを互いに連通する供給連通孔63Bとにより構成されている。供給円環溝63Aには供給油路41が接続されている。
【0050】
第1ポート61は、連通部材33の外周面に形成された第1円環溝61Aと、連通部材33の内周面に形成された軸方向に延びる第1縦軸溝61Cと、第1円環溝61Aと第1縦軸溝61Cとを互いに連通する第1連通孔61Bとにより構成されている。第1円環溝61Aには第1上流油路43が接続されている。図4に示されるように、連通部材33の内周面には4本の第1縦軸溝61Cが形成されている。各第1縦軸溝61Cは、周方向において等間隔に形成されている。
【0051】
第2ポート62は、連通部材33の外周面に形成された第2円環溝62Aと、連通部材33の内周面に形成された軸方向に延びる第2縦軸溝62Cと、第2円環溝62Aと第2縦軸溝62Cとを互いに連通する第2連通孔62Bとにより構成されている。第2円環溝62Aには第2上流油路45が接続されている。図4に示されるように、連通部材33の内周面には4本の第2縦軸溝62Cが形成されている。各第2縦軸溝62Cは、周方向において等間隔に形成されている。
【0052】
第1円環溝61A、第2円環溝62A、および供給円環溝63Aは、連通部材33の軸方向において互いに異なる位置に形成されている。また、第1連通孔61B、第2連通孔62B、および供給連通孔63Bも同様に、連通部材33の軸方向において互いに異なる位置に形成されている。
【0053】
弁体34には、連通部材33に対する弁体34の回転位置に応じて第1縦軸溝61Cまたは第2縦軸溝62Cに接続される供給弁体溝34Aおよび排出弁体溝34Bと、排出弁体溝34Bと内部空間34Sとを互いに連通する入口連通孔34Cと、排出ポート64と内部空間34Sとを互いに連通する出口連通孔34Dとが形成されている。
【0054】
図3を参照して、ソレノイドバルブ70の構成について説明する。
ソレノイドバルブ70は、第1上流油路43を介して流量制御弁30の第1ポート61に接続されている。また、第2上流油路45を介して流量制御弁30の第2ポート62に接続されている。
【0055】
ソレノイドバルブ70の動作モードとしては、区画モードおよび連通モードが用意されている。アシスト装置20によりステアリングホイール2の操作の補助を行なう要求があるときには、区画モードが選択される。一方、アシスト装置20による補助が困難なときには、連通モードが選択される。
【0056】
区画モードにおいては、第1上流油路43と第1下流油路44とを互いに連通し、かつ第2上流油路45と第2下流油路46とを互いに連通する。すなわち、第1ポート61と第1油圧室21Aとを互いに連通し、かつ第2ポート62と第2油圧室21Bとを互いに連通する。
【0057】
連通モードにおいては、第1下流油路44と第2下流油路46とを互いに連通する。すなわち、第1上流油路43および第1下流油路44と第2上流油路45および第2下流油路46との分断をソレノイドバルブ70で開放し、第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとを互いに連通する。
【0058】
図4および図5を参照して、連通部材33と弁体34との関係について説明する。
流量制御弁30においては、連通部材33に対する弁体34の回転位置に応じて、供給油路41および排出油路42と第1上流油路43および第2上流油路45との関係が以下のように変更される。
【0059】
図4に示されるように、弁体34の回転位置が「回転中立位置」のとき、供給ポート63および排出ポート64と第1ポート61および第2ポート62とが連通部材33および弁体34の隙間を介して互いに連通される。
【0060】
図5(a)に示されるように、弁体34の回転位置が「第1供給位置」のとき、供給ポート63と第1ポート61とが互いに接続され、かつ排出ポート64と第2ポート62とが互いに接続される。
【0061】
図5(b)に示されるように、弁体34の回転位置が「第2供給位置」のとき、供給ポート63と第2ポート62とが互いに接続され、かつ排出ポート64と第1ポート61とが互いに接続される。
【0062】
ここで、流量制御弁30の動作モードとして以下のものを定義する。
(A)弁体34を第1供給位置に設定するモードを「第1モード」とする。
(B)弁体34を第2供給位置に設定するモードを「第2モード」とする。
(C)弁体34を回転中立位置に設定するモードを「中立モード」とする。
【0063】
制御装置50による流量制御弁30の制御態様について説明する。
制御装置50は、ステアリングホイール2の操作状態に応じて流量制御弁30の動作モードを選択する。すなわち、ステアリングホイール2の操作が行なわれないとき、流量制御弁30の動作モードとして中立モードを選択する。また、ステアリングホイール2が右方向に回転操作されるとき、流量制御弁30の動作モードとして第1モードを選択する。また、ステアリングホイール2が左方向に回転操作されるとき、流量制御弁30の動作モードとして第2モードを選択する。
【0064】
そして、弁体34の回転位置が、選択した動作モードに対応する回転位置と異なるとき、例えば第1モードを選択した状態において弁体34の回転位置が回転中立位置にあるとき、弁体34の回転位置が動作モードに対応した回転位置となるように電動モータ31の電流値を変更する。
【0065】
図4および図5を参照して、流量制御弁30内の作動油の流れについて説明する。なお、ここでの作動油の流れは、ソレノイドバルブ70の動作モードが区画モードに設定されていることを前提としている。
【0066】
(A)中立モードのときの作動油の流れを以下に示す。
図4に示されるように、動作モードが第1モードまたは第2モードから中立モードに変更されたとき、弁体34の回転位置が第1供給位置または第2供給位置から回転中立位置に変更される。これにより、第1ポート61および第2ポート62がそれぞれ隙間を介して供給ポート63および内部空間33S(排出ポート64)に接続される。
【0067】
このとき、供給ポート63から第1ポート61および第2ポート62に少量の作動油が供給され、かつ第1ポート61および第2ポート62から内部空間33S(排出ポート64)に少量の作動油が排出される。このため、油圧シリンダ21の第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bの油圧は実質的には一定の大きさに保持される。
【0068】
(B)第1モードのときの作動油の流れを以下に示す。
図5(a)に示されるように、動作モードが中立モードから第1モードに変更されたとき、弁体34が矢印Y1の方向に回転することにより、弁体34の回転位置が回転中立位置から第1供給位置に変更される。これにより、供給ポート63と第1ポート61とが互いに連通し、かつ排出ポート64と第2ポート62とが互いに連通する。
【0069】
電動ポンプ24から吐出された作動油は、供給油路41、供給ポート63、第1ポート61、第1上流油路43、ソレノイドバルブ70、および第1下流油路44を介して、油圧シリンダ21の第1油圧室21Aに供給される。また、図5(a)の矢印R1で示されるように、流量制御弁30内においては、供給連通孔63B、供給弁体溝34A、第1縦軸溝61C、第1連通孔61B、第1円環溝61Aの順に作動油が流れる。
【0070】
油圧シリンダ21の第2油圧室21Bの作動油は、第2下流油路46、ソレノイドバルブ70、第2上流油路45、第2ポート62、内部空間34S、排出ポート64、および排出油路42を介して、貯留タンク27に戻される。また、図5(a)の矢印R2で示されるように、流量制御弁30内においては、第2円環溝62A、第2連通孔62B、第2縦軸溝62C、排出弁体溝34B、入口連通孔34C、および内部空間34Sの順に作動油が流れる。
【0071】
(C)第2モードのときの作動油の流れを以下に示す。
図5(b)に示されるように、動作モードが中立モードから第2モードに変更されたとき、弁体34が矢印Y2の方向に回転することにより、弁体34の回転位置が回転中立位置から第2供給位置に変更される。これにより、供給ポート63と第2ポート62とが互いに連通し、かつ排出ポート64と第1ポート61とが互いに連通する。
【0072】
電動ポンプ24から吐出された作動油は、供給油路41、供給ポート63、第2ポート62、第2上流油路45、ソレノイドバルブ70、および第2下流油路46を介して、油圧シリンダ21の第2油圧室21Bに供給される。また、図5(b)の矢印R3で示されるように、流量制御弁30内においては、供給連通孔63B、供給弁体溝34A、第2縦軸溝62C、第2連通孔62B、第2円環溝62Aの順に作動油が流れる。
【0073】
油圧シリンダ21の第1油圧室21Aの作動油は、第1下流油路44、ソレノイドバルブ70、第1上流油路43、第1ポート61、内部空間34S、排出ポート64、および排出油路42を介して、貯留タンク27に戻される。また、図5(b)の矢印R4で示されるように、流量制御弁30内においては、第1円環溝61A、第1連通孔61B、第1縦軸溝61C、排出弁体溝34B、入口連通孔34C、および内部空間34Sの順に作動油が流れる。
【0074】
図3を参照して、油圧シリンダ21への作動油の供給量の調整について説明する。
制御装置50は、電動ポンプ24の回転速度(すなわち電動モータ25の回転速度)および流量制御弁30の開度の制御により、油圧シリンダ21の第1油圧室21Aおよび第2油圧室21Bへの作動油の供給量を調整する。作動油の供給量は、電動ポンプ24の回転速度が大きくなるにつれて多くなる。また、流量制御弁30の開度が大きくなるにつれて多くなる。
【0075】
図4を参照して、流量制御弁30の開度の詳細について説明する。
流量制御弁30の開度には、以下の4種類の開度が含まれる。
(a)第1油圧室21Aへの作動油の供給量を変更する第1供給開度。
(b)第2油圧室21Bへの作動油の供給量を変更する第2供給開度。
(c)第1油圧室21Aからの作動油の排出量を変更する第1排出開度。
(d)第2油圧室21Bからの作動油の排出量を変更する第2排出開度。
【0076】
上記の各開度は、具体的には流量制御弁30の以下の部分に相当する。
第1供給開度は、第1ポート61の第1縦軸溝61Cと供給弁体溝34Aとを互いに連通する通路の面積に相当する。また第2供給開度は、第2ポート62の第2縦軸溝62Cと供給弁体溝34Aとを互いに連通する通路の面積に相当する。また第1排出開度は、第1ポート61の第1縦軸溝61Cと排出弁体溝34Bとを互いに連通する通路の面積に相当する。また第2排出開度は、第2ポート62の第2縦軸溝62Cと排出弁体溝34Bとを互いに連通する通路の面積に相当する。
【0077】
図6を参照して、ソレノイドバルブ70の詳細な構成について説明する。
ソレノイドバルブ70には、第1上流油路43、第1下流油路44、第2上流油路45、および第2下流油路46が接続されるハウジング71と、ハウジング71に対して軸方向に移動するスプール74と、電磁力によりスプール74を移動させるソレノイド75と、復元力によりスプール74を移動させるコイルばね76とが設けられている。
【0078】
スプール74およびコイルばね76は、ハウジング71内に形成されている空間(以下、「内部空間72」)に配置されている。またハウジング71およびスプール74は、同軸上に設けられている。
【0079】
ハウジング71およびスプール74の構成について説明する。
ハウジング71には、4つのポートすなわち、第1上流油路43が接続される第1上流ポート71A、第1下流油路44が接続される第1下流ポート71B、第2上流油路45が接続される第2上流ポート71C、および第2下流油路46が接続される第2下流ポート71Dが形成されている。またハウジング71の内周面には、円環溝73が形成されている。
【0080】
第1油圧室21Aは、第1下流油路44を介して第1下流ポート71Bに接続されている。第2油圧室21Bは、第2下流油路46を介して第2下流ポート71Dに接続されている。
【0081】
流量制御弁30の第1ポート61は、第1上流油路43を介して第1上流ポート71Aに接続されている。流量制御弁30の第2ポート62は、第2上流油路45を介して第2上流ポート71Cに接続されている。
【0082】
内部空間72は、第2弁体74B側にある円環溝73の縁を基準として、この縁よりも第2弁体74B側の第1空間72Aと、第3弁体74C側にある円環溝73の縁を基準として、この縁よりも第3弁体74C側の第2空間72Bと、円環溝73に対応する溝空間72Cとに区分される。
【0083】
スプール74には、軸方向位置に応じて第1下流ポート71Bおよび第2下流ポート71Dと溝空間72Cとの関係を変更する第1弁体74Aと、コイルばね76が取り付けられる第2弁体74Bと、軸方向位置に応じてハウジング71の壁面に突き当てられる第3弁体74Cと、各弁体74A〜74Cを互いに連結する連結軸74Dとが設けられている。第2弁体74Bとしては、ソレノイド75の磁力により移動する可動鉄心が用いられている。
【0084】
図6および図7を参照して、スプール74の動作について説明する。
ソレノイドバルブ70においては、ハウジング71に対するスプール74の軸方向位置(以下、「スプール位置S」)に応じて、第1上流油路43、第1下流油路44、第2上流油路45、および第2下流油路46の関係が以下のように変更される。
【0085】
図6に示されるように、スプール位置Sが「区画範囲」のとき、第1上流油路43と第1下流油路44とが第1空間72Aを介して互いに連通される。また、第2上流油路45と第2下流油路46とが第2空間72Bを介して互いに連通される。また、第1弁体74Aにより第1空間72Aと溝空間72Cとの間での作動油の流れが遮断される。すなわち、第1空間72Aと第2空間72Bとの間での作動油の流れが遮断される。
【0086】
図7に示されるように、スプール位置Sが「連通範囲」のとき、第1下流油路44と溝空間72Cとが第1空間72Aを介して互いに接続される。また、第2下流油路46と溝空間72Cとが第2空間72Bを介して互いに接続される。すなわち、第1下流油路44と第2下流油路46とが内部空間72を介して互いに接続される。
【0087】
ここで、スプール位置Sについて以下の2つの位置を定義する。
(A)図6に示されるスプール位置S、すなわちスプール74が区画範囲において最大限までコイルばね76側まで移動したときの位置を「最大区画位置SB」とする。
(B)図7に示されるスプール位置S、すなわちスプール74が連通範囲において最大限までコイルばね76側とは反対側まで移動しているときの位置を「最大連通位置SA」とする。
【0088】
また、ソレノイドバルブ70の動作モードについて以下の2つのモードを定義する。
(A)スプール位置Sを区画範囲に設定するモードを「区画モード」とする。
(B)スプール位置Sを連通範囲に設定するモードを「連通モード」とする。
【0089】
制御装置50によるソレノイドバルブ70の制御態様について説明する。
制御装置50は、ステアリングホイール2の操作状態に応じてソレノイドバルブ70の動作モードを選択する。すなわち、ステアリングホイール2の操作が行なわれないとき、ソレノイドバルブ70の動作モードとして連通モードを選択する。また、ステアリングホイール2が右方向または左方向に回転操作されるとき、ソレノイドバルブ70の動作モードとして区画モードを選択する。
【0090】
そして、選択した動作モードに応じて次のように直流の駆動電流を供給する。
すなわち、区画モードを選択したとき、ソレノイド75に所定の大きさの駆動電流A(以下、「最大電流AX」)を供給する。一方、連通モードを選択したとき、ソレノイド75に駆動電流Aを供給しない。
【0091】
最大電流AXは、スプール74を図7の最大連通位置SAから図6の最大区画位置SBまで移動させるための駆動電流Aとして予め設定されている。このため、スプール74に作用する抵抗が予め想定された大きさの範囲内のときには、ソレノイド75に最大電流AXが供給されることにより、スプール74が最大区画位置SBに保持される。
【0092】
図6および図7を参照して、ソレノイドバルブ70内の作動油の流れについて説明する。なお、図6の実線の矢印F11および矢印F12は、流量制御弁30が第1モードに設定されているときの作動油の流れを、また図6の破線の矢印F21および矢印F22は、流量制御弁30が第2モードに設定されているときの作動油の流れを示している。
【0093】
(A)区画モードのときの作動油の流れを以下に示す。
図6に示されるように、動作モードが連通モードから区画モードに変更されたとき、スプール位置Sが連通範囲から区画範囲に変更される。これにより、第1上流ポート71Aと第1下流ポート71Bとが第1空間72Aを介して互いに接続される。また、第2上流ポート71Cと第2下流ポート71Dとが第2空間72Bを介して互いに接続される。
【0094】
ソレノイドバルブ70の動作モードが区画モードに設定された状態において、図3の流量制御弁30の動作モードが第1モードに設定されているとき、すなわち第1ポート61に作動油が供給され、かつ第2ポート62から作動油が排出されるモードのとき、作動油がソレノイドバルブ70を介して次のように流れる。
【0095】
すなわち、矢印F11で示されるように、第1上流油路43の作動油が第1上流ポート71A、第1空間72A、第1下流ポート71B、第1下流油路44を順に流れて第1油圧室21Aに供給される。また、矢印F12で示されるように、第2油圧室21Bの作動油が第2下流油路46、第2下流ポート71D、第2空間72B、第2上流ポート71C、第2上流油路45を順に流れ、流量制御弁30を介して貯留タンク27に排出される。
【0096】
ソレノイドバルブ70の動作モードが区画モードに設定された状態において、図3の流量制御弁30の動作モードが第2モードに設定されているとき、すなわち第2ポート62に作動油が供給され、かつ第1ポート61から作動油が排出されるモードのとき、作動油がソレノイドバルブ70を介して次のように流れる。
【0097】
すなわち、矢印F21で示されるように、第1油圧室21Aの作動油が第1下流油路44、第1下流ポート71B、第1空間72A、第1上流ポート71A、第1上流油路43を順に流れ、流量制御弁30を介して貯留タンク27に排出される。また、矢印F22で示されるように、第2上流油路45の作動油が第2上流ポート71C、第2空間72B、第2下流ポート71D、第2下流油路46を順に流れて第2油圧室21Bに供給される。
【0098】
(B)連通モードのときの作動油の流れを以下に示す。
図7に示されるように、動作モードが区画モードから連通モードに変更されたとき、スプール位置Sが区画範囲から連通範囲に変更される。これにより、第1下流ポート71Bと溝空間72Cとが第1空間72Aを介して互いに接続される。また、第2下流ポート71Dと溝空間72Cとが第2空間72Bを介して互いに接続される。すなわち、第1下流ポート71Bと第2下流ポート71Dとが内部空間72を介して互いに接続される。
【0099】
ソレノイドバルブ70の動作モードが連通モードに設定された状態において、図3の流量制御弁30の動作モードが第1モードに設定されているとき、作動油がソレノイドバルブ70を介して次のように流れる。
【0100】
すなわち、矢印F31で示されるように、第1上流油路43の作動油が第1上流ポート71Aを介して第1空間72Aに供給される。また、矢印F32で示されるように、第2空間72Bの作動油が第2上流ポート71Cから流量制御弁30に排出される。
【0101】
ソレノイドバルブ70の動作モードが連通モードに設定された状態において、図3の流量制御弁30の動作モードが第2モードに設定されているとき、作動油がソレノイドバルブ70を介して次のように流れる。
【0102】
すなわち、矢印F33で示されるように、第1空間72Aの作動油が第1上流ポート71Aから流量制御弁30に排出される。また、矢印F34で示されるように、第2上流油路45の作動油が第2上流ポート71Cを介して第2空間72Bに供給される。
【0103】
また、矢印F41で示されるように、内部空間72の圧力が第1油圧室21Aの圧力よりも高いとき、第1空間72Aの作動油が第1下流ポート71Bを介して第1油圧室21Aに供給される。また、矢印F42で示されるように、内部空間72の圧力が第1油圧室21Aの圧力よりも低いとき、第1油圧室21Aの作動油が第1下流ポート71Bを介して第1空間72Aに排出される。
【0104】
また、矢印F43で示されるように、内部空間72の圧力が第2油圧室21Bの圧力よりも高いとき、第2空間72Bの作動油が第2下流ポート71Dを介して第2油圧室21Bに供給される。また、矢印F44で示されるように、内部空間72の圧力が第2油圧室21Bの圧力よりも低いとき、第2油圧室21Bの作動油が第2下流ポート71Dを介して第2空間72Bに排出される。
【0105】
図8〜図11を参照して、ソレノイドバルブ70の制御について説明する。
ソレノイドバルブ70においては、ハウジング71とスプール74との間に異物が詰まることに起因して、スプール74の動作が異物により妨げられることがある。以下では、スプール74の動作が異物により妨げられる状態を「弁異常状態」とし、スプール74が異物により妨げられることなく動作する状態を「弁正常状態」とする。
【0106】
弁異常状態においては、ソレノイド75に供給される駆動電流Aとスプール位置Sとの関係が弁正常状態においての関係と異なるものとなる。このため、ソレノイド75に供給される駆動電流Aのみに基づいてスプール位置Sを検出する制御装置を「仮想制御装置」としたとき、この仮想制御装置においては次の問題が生じる。
【0107】
すなわち、弁異常状態において、最大電流AXをソレノイド75に供給したとき、スプール74が最大区画位置SBと異なるところに位置する状態でスプール74が保持される。一方、仮想制御装置上においては最大電流AXを供給していることに基づいて、スプール74が最大区画位置SBに位置している旨判定される。
【0108】
このように、ソレノイドバルブ70が弁異常状態にあるとき、仮想制御装置上において把握されるスプール位置Sと実際のスプール位置Sとが互いに異なるものとなる。このため、アシスト装置20によるステアリングホイール2の操作の補助が適切に行なわれないおそれがある。
【0109】
ここで弁異常状態の一例として、スプール位置Sを連通範囲から区画範囲に変更するための駆動電流Aがソレノイド75に供給された場合において、スプール74が区画範囲に到達する前に異物によりスプール74の移動が停止した状況を想定する。
【0110】
このとき、スプール位置Sが連通範囲にあるため、第1油圧室21Aの油圧と第2油圧室21Bの油圧とが互いに等しくなる。すなわち、アシスト装置20によりステアリングホイール2の右方向または左方向の回転操作を補助することができない。
【0111】
この場合には、アシスト装置20によるアシストを前提としてステアリングホイール2の操作を行なう運転者が違和感を覚える。また、スプール74が区画範囲まで到達しないにもかかわらず、スプール74が区画範囲に位置していることを前提に最大電流AXが継続して供給されるため、電源電力が浪費されている状態となる。すなわち、仮想制御装置においては、ソレノイドバルブ70が弁異常状態にあるとき、運転者に違和感を付与すること、および電源電力を浪費することが問題となる。
【0112】
このため、弁異常状態が生じているときには、これを検出して、アシスト装置20によるアシストが行なわれない旨を運転者に報知すること、およびソレノイド75への駆動電流Aの供給を停止することが好ましい。
【0113】
そこで、図1の制御装置50は、ソレノイドバルブ70のスプール位置Sを検出し、弁異常状態のときに駆動電流Aの供給を停止するため、かつ運転者に弁異常状態を報知するための「ソレノイド位置制御」を行なう。
【0114】
このソレノイド位置制御では、交流成分を含む駆動電流Aをソレノイド75に供給し、この駆動電流Aの供給を受けたソレノイド75のインピーダンスZを検出し、検出したインピーダンスZに基づいてスプール位置Sを検出する。
【0115】
ソレノイド75から生じる磁束によりスプール74が移動するとき、ソレノイド75とスプール74の第2弁体74Bとの距離に応じてソレノイド75のインピーダンスZが変化する。すなわち、ソレノイド75のインピーダンスZにはソレノイド75とスプール74との距離が反映される。このため、ソレノイド75のインピーダンスZに基づいて、ソレノイド75に対する第2弁体74Bの位置を検出することができる。なお、ソレノイド75に対する第2弁体74Bの位置はスプール位置Sに相当する。
【0116】
ソレノイド75のインピーダンスZは、ソレノイド75近傍の透磁率および誘電率に応じて変化する。スプール74(第2弁体74B)の透磁率は、ソレノイド75近傍の空気の透磁率よりも大きい。このため、ソレノイド75のインピーダンスZは、ソレノイド75とスプール74(第2弁体74B)との距離が大きくなるにつれて次第に小さくなる。
【0117】
図8に、ソレノイド75のインピーダンスZとスプール位置Sとの関係の一例を示す。ここで、スプール74が最大連通位置SAに位置しているときのインピーダンスZを「最小インピーダンスZA」とし、スプール74が最大区画位置SBに位置しているときインピーダンスZを「最大インピーダンスZB」としたとき、スプール位置Sが最大連通位置SAから最大区画位置SBに変化するにつれてソレノイド75のインピーダンスZが次第に大きくなる。
【0118】
図9に、弁正常状態においてのスプール位置Sとソレノイド75の駆動電流Aとの関係の一例を示す。弁正常状態においては、ソレノイド75に供給される駆動電流Aの大きさに応じてスプール位置Sが次のように変化する。
【0119】
すなわち、駆動電流Aが「0」のとき、スプール位置Sが最大連通位置SAに保持される。また、駆動電流Aが最大電流AXに向けて増加するにつれてスプール位置Sが最大連通位置SAから最大区画位置SBに向けて変化する。また、駆動電流Aが最大電流AXのとき、スプール位置Sが最大区画位置SBに保持される。
【0120】
このため、弁正常状態においてのソレノイド75の駆動電流Aとソレノイド75のインピーダンスZとの関係は、図10に示されるものとなる。以下では、図10に示される駆動電流AおよびインピーダンスZの関係を「基準位置指標」とする。
【0121】
弁正常状態においては、駆動電流Aが「0」のとき、インピーダンスZが最小インピーダンスZAとなる。また、駆動電流Aが「0」から最大電流AXに向けて増加するにつれて、インピーダンスZが最小インピーダンスZAから最大インピーダンスZBに向けて増大する。また、駆動電流Aが最大電流AXのとき、インピーダンスZが最大インピーダンスZBとなる。
【0122】
ソレノイド位置制御においては、ソレノイド75に駆動電流Aを供給しているときのソレノイド75のインピーダンスZを検出し、供給している駆動電流Aと検出したインピーダンスZとの関係が図10の基準位置指標と整合しているか否かに基づいて、ソレノイドバルブ70が弁正常状態および弁異常状態のいずれにあるかを判定する。すなわち、駆動電流AとインピーダンスZとの関係に基づいて、駆動電流Aとスプール位置Sとの関係が図9に示される弁正常状態においての関係と整合しているか否かを判定する。
【0123】
そして、駆動電流AおよびインピーダンスZの関係が基準位置指標と整合するとき、ソレノイドバルブ70が弁正常状態にある旨判定し、駆動電流A(最大電流AX)を継続して供給する。一方、駆動電流AおよびインピーダンスZの関係が基準位置指標と整合しないとき、ソレノイドバルブ70が弁異常状態にある旨判定し、ソレノイド75への駆動電流Aの供給を停止する。また、アシスト装置20の異常(弁異常状態)に起因してアシスト装置20によるステアリングホイール2の操作の補助が停止される旨を示すインジケーターランプ(図示略)を点灯する。
【0124】
ソレノイド75への駆動電流Aの供給が停止されたとき、ソレノイド75を最大区画位置SBに向けて移動させる力がスプール74に付与されなくなるため、コイルばね76の力によりスプール74が最大連通位置SAに向けて移動する。これにより、スプール位置が連通範囲に保持されるため、図1の油圧シリンダ21において第1油圧室21Aの油圧および第2油圧室21Bの油圧が互いに等しくなる。なお、スプール74がハウジング71に固着しているときには、駆動電流Aの供給が停止されてもスプール位置Sは変化しにくい。
【0125】
図11を参照して、ソレノイド位置制御の具体的な手順について説明する。なお、この制御は制御装置50により所定の制御周期毎に繰り返し行なわれる。すなわち、最後のステップに到達した後から同制御周期が経過するまでは当該位置制御の実行が保留され、同制御周期が経過した後に再び最初のステップから当該位置制御の各処理が行なわれる。
【0126】
ステップS11では、アシスト装置20によるステアリングホイール2の操作の補助を行なう要求が設定されているか否かを判定する。同要求が設定されているか否かは、トルクセンサ14の出力および操舵角センサ15の出力等に基づいて行なわれる。
【0127】
ステップS12では、ソレノイド75に最大電流AXを供給する。
ステップS13では、ソレノイド75のインピーダンスZを検出する。
ステップS14では、ソレノイド75に供給している駆動電流Aと検出したソレノイド75のインピーダンスZとの関係が図10の基準位置指標と整合しているか否かを判定する。
【0128】
具体的には、そのときの駆動電流AおよびインピーダンスZにより定められる点を図10のマップ上にプロットし、このプロットした点が基準位置指標としての2次曲線から外れているとき、上記関係が整合していない旨判定する。
【0129】
ステップS14において駆動電流AおよびインピーダンスZの関係が基準位置指標と整合していない旨判定したとき、ステップS15においてソレノイド75への駆動電流A(最大電流AX)の供給を停止する。また、アシスト装置20による補助が停止される旨を示すインジケーターランプを点灯する。
【0130】
ステップS14において駆動電流AおよびインピーダンスZの関係が基準位置指標と整合している旨判定したとき、ステップS17においてソレノイド75への駆動電流A(最大電流AX)の供給を継続する。
【0131】
(実施形態の効果)
本実施形態の油圧パワーステアリング装置1によれば以下の効果が得られる。
(1)油圧パワーステアリング装置1には、駆動電流Aの供給を受けて磁束を発生するソレノイド75と、このソレノイド75から生じる磁束により移動するスプール74とを含むソレノイドバルブ70と、このソレノイドバルブ70を制御する制御装置50とが設けられている。制御装置50は、駆動電流Aに交流成分を含めてソレノイド75に供給し、ソレノイド75のインピーダンスZを検出する。
【0132】
この構成によれば、機械式の位置検出センサが用いられる構成とは異なり、スプール位置Sを検出するうえでスプール74との機械的な接触を必要としないため、スプール位置Sを検出することにともないスプール74の移動が妨げられることを抑制することができる。また、光学式の位置検出センサが用いられる構成とは異なり、低コストのソレノイドバルブ70を利用してスプール位置Sを検出しているため、油圧パワーステアリング装置1の製造コストを低減することができる。
【0133】
(2)油圧パワーステアリング装置1においては、供給している駆動電流Aと検出したインピーダンスZとの関係が図10の基準位置指標と整合していないとき、ソレノイド75への駆動電流Aの供給を停止している。この構成によれば、スプール74の軸方向位置を適切に制御することが困難なとき、コイルばね76の力によりスプール74が連通位置に保持される頻度が高くなる。このため、ソレノイドバルブ70が弁異常状態にあるとき、アシスト装置20によるステアリングホイール2の補助を前提として同ホイール2を操作している運転者に違和感を与える頻度が少なくなる。また、ソレノイド75への駆動電流Aの供給により電源電力が浪費されることが抑制される。
【0134】
(その他の実施形態)
本発明の実施態様は上記実施形態に例示した態様に限られるものではなく、例えば以下のように変更することもできる。また以下の各変形例は、上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施してもよい。
【0135】
・上記実施形態(図3)では、流量制御弁30にトーションバー36を設けているが、トーションバー36を省略することもできる。
・上記実施形態(図6および図7)では、コイルばね76がスプール74を押さえつけるが、スプール74を押さえつける弾性部材はコイルばね76に限られない。例えば、コイルばね76に代えて板ばねを用いてもよい。
【0136】
・上記実施形態では、ソレノイド75の消磁により第1空間72Aと第2空間72Bとが互いに接続されるが、ソレノイド75の励磁により第1空間72Aと第2空間72Bとが互いに接続されてもよい。
【0137】
・上記実施形態(図3)では、ソレノイドバルブ70は、第1油圧室21Aと第2油圧室21Bとを接続する用途に用いられるものであるが、ソレノイドバルブ70の用途はこれに限られない。
【0138】
・上記実施形態(図3)では、流量制御弁30はトーションバー36を備えるが、トーションバー36を省略してもよい。この場合、第1モードまたは第2モードから第3モードへの切り替えには、電動モータ31の駆動により行うことができる。
【0139】
・上記実施形態(図4)では、流量制御弁30は弁体34が回転することにより各ポート61〜63の開度が変化するものであるが、流量制御弁として例えば往復移動可能な弁体を備えるスプール弁を用いてもよい。
【0140】
・上記実施形態(図3)では、流量制御弁30として油路の通路面積を連続的に変更することができるものを用いているが、このような機能を有していない流量制御弁、すなわち油路が開放された状態と油路が閉鎖された状態とを変更する流量制御弁を用いることもできる。
【0141】
・上記実施形態(図1)では、電動モータ25を駆動源とする電動ポンプ24により油圧シリンダ21に作動油を供給しているが、電動ポンプ24に代えて、車両のエンジンのクランクシャフトを駆動源とするポンプを用いることもできる。
【符号の説明】
【0142】
1…油圧パワーステアリング装置、2…ステアリングホイール、3…タイロッド、4…転舵輪、5…車速センサ、10…ステアリング装置、11…ステアリングシャフト、12…ラックアンドピニオン機構、13…転舵シャフト、14…トルクセンサ、15…操舵角センサ、20…アシスト装置、21…油圧シリンダ、21A…第1油圧室、21B…第2油圧室、22…ハウジング、23…ピストン、24…電動ポンプ、25…電動モータ、25A…駆動回路、26…ポンプ、27…貯留タンク、30…流量制御弁、31…電動モータ、31A…駆動回路、32…ハウジング、33…連通部材、33S…内部空間、34…弁体、34A…供給弁体溝、34B…排出弁体溝、34C…入口連通孔、34D…出口連通孔、34S…内部空間、35…固定部材、36…トーションバー、36A…第1端部、36B…第2端部、37…軸受、40…油路、41…供給油路、42…排出油路、43…第1上流油路、44…第1下流油路、45…第2上流油路、46…第2下流油路、50…制御装置、51…モータ制御部、52…流量制御弁制御部、53…バイパスバルブ制御部、54…目標回転速度算出部、55…目標開度算出部、56…回転角度算出部、57…回転速度算出部、58…回転角度算出部、59…回転速度算出部、60…ハウジング、61…第1ポート、61A…第1円環溝、61B…第1連通孔、61C…第1縦軸溝、62…第2ポート、62A…第2円環溝、62B…第2連通孔、62C…第2縦軸溝、63…供給ポート、63A…供給円環溝、63B…供給連通孔、64…排出ポート、70…ソレノイドバルブ、71…ハウジング、71A…第1上流ポート、71B…第1下流ポート、71C…第2上流ポート、71D…第2下流ポート、72…内部空間、72A…第1空間、72B…第2空間、72C…溝空間、73…円環溝、74…スプール(弁体)、74A…第1弁体、74B…第2弁体、74C…第3弁体、74D…連結軸、75…ソレノイド、76…コイルばね(弾性部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電流の供給を受けて磁束を発生するソレノイドと、このソレノイドから生じる磁束により移動する弁体とを含むソレノイドバルブと、このソレノイドバルブを制御する制御装置とを含むソレノイドバルブ装置において、
前記制御装置は、前記駆動電流に交流成分を含めて前記ソレノイドに供給し、前記ソレノイドのインピーダンスを検出すること
を特徴とするソレノイドバルブ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のソレノイドバルブ装置において、
前記インピーダンスに応じて前記駆動電流の大きさを変更すること
を特徴とするソレノイドバルブ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のソレノイドバルブ装置において、
前記駆動電流と前記弁体の動作とが整合するときの前記駆動電流と前記インピーダンスとの関係を基準位置指標として、前記ソレノイドに供給した前記駆動電流とこの駆動電流の供給にともない検出した前記インピーダンスとの関係が前記基準位置指標と異なるとき、前記ソレノイドに対する前記駆動電流の供給を停止すること
を特徴とするソレノイドバルブ装置。
【請求項4】
内部の空間に作動油が供給されるシリンダと、前記内部の空間を第1油圧室および第2油圧室に区画するピストンと、前記第1油圧室と前記第2油圧室とを互いに連通する連通油路とを含む油圧装置において、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のソレノイドバルブ装置が設けられていること、
前記ソレノイドバルブ装置が備える前記ソレノイドバルブは、前記連通油路を開放および閉鎖するものであること、
前記弁体を収容するハウジングが前記ソレノイドバルブに設けられていること、
前記ハウジングに対する前記弁体の位置が区画範囲にあるとき、前記連通油路が閉鎖されること、
ならびに、前記ハウジングに対する前記弁体の位置が連通範囲にあるとき、前記連通油路が開放されること
を特徴とする油圧装置。
【請求項5】
請求項4に記載の油圧装置において、
前記ソレノイドバルブと前記第1油圧室とを互いに接続する第1下流油路が設けられていること、
前記ソレノイドバルブと前記第2油圧室とを互いに接続する第2下流油路が設けられていること、
前記第1下流油路と前記第2下流油路と前記ハウジング内の空間とを含めて前記連通油路が形成されていること、
前記弁体が前記区画範囲に位置しているとき、前記第1下流油路と前記第2下流油路との間の作動油の流れが遮断されること、
ならびに、前記弁体が前記連通範囲に位置しているとき、前記第1下流油路と前記第2下流油路とが前記ハウジング内の空間を介して互いに接続されること
を特徴とする油圧装置。
【請求項6】
請求項5に記載の油圧装置において、
前記シリンダに作動油を供給する電動ポンプが設けられていること、
前記電動ポンプと前記ソレノイドバルブとの間に前記シリンダに供給される作動油の量を調整する流量制御弁が設けられていること、
前記ソレノイドバルブと前記流量制御弁とを互いに接続し、かつ前記第1下流油路に対応する第1上流油路が設けられていること、
前記ソレノイドバルブと前記流量制御弁とを互いに接続し、かつ前記第2下流油路に対応する第2上流油路が設けられていること、
ならびに、前記弁体が前記区画範囲に位置しているとき、前記第1上流油路と前記第1下流油路とが互いに接続され、かつ前記第2上流油路と前記第2下流油路とが互いに接続され、かつ前記第1上流油路と前記第2下流油路との間の作動油の流れが遮断され、かつ前記第2上流油路と前記第1下流油路との間の作動油の流れが遮断されていること
を特徴とする油圧装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項に記載の油圧装置において、
前記弁体を前記区画範囲から前記連通範囲に向けて押す力を前記弁体に付与する弾性部材が前記ソレノイドバルブに設けられていること、
ならびに、前記ソレノイドに前記駆動電流が供給されていないとき、前記弾性部材の力により前記弁体が前記連通範囲に位置すること
を特徴とする油圧装置。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載の油圧装置を含む油圧パワーステアリング装置。
【請求項9】
請求項6を引用する請求項8、または請求項6を引用する請求項7を引用する請求項8に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記ピストンが転舵シャフトに固定されていること、
前記流量制御弁には、前記第1上流油路に接続される第1ポートおよび前記第2上流油路に接続される第2ポートが形成されたハウジングと、このハウジングに対して回転することにより前記第1ポートおよび前記第2ポートの開度を変更する弁体とが設けられていること、
ならびに、前記流量制御弁においての前記ハウジングに対する前記弁体の回転位置に応じて前記第1油圧室および前記第2油圧室への作動油の供給量が変更されること
を特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項10】
請求項6を引用する請求項9に記載の油圧パワーステアリング装置において、
前記電動ポンプと前記流量制御弁とを互いに接続する供給油路が設けられていること、
前記流量制御弁のハウジング内の作動油を排出する排出油路が設けられていること、
前記流量制御弁のハウジングには、前記供給油路に接続される供給ポートと、前記排出油路に接続される排出ポートとが設けられていること、
前記流量制御弁においての前記ハウジングに対する前記弁体の回転位置が第1供給位置のとき、前記供給ポートと前記第1ポートとが互いに接続され、かつ前記排出ポートと前記第2ポートとが互いに接続されること、
ならびに、前記流量制御弁においての前記ハウジングに対する前記弁体の回転位置が第2供給位置のとき、前記排出ポートと前記第1ポートとが互いに接続され、かつ前記供給ポートと前記第2ポートとが互いに接続されること
を特徴とする油圧パワーステアリング装置。
【請求項11】
転舵シャフトに油圧を付与する油圧装置を含む油圧パワーステアリング装置において、
請求項1〜3のいずれか一項に記載のソレノイドバルブ装置が設けられていること、
ならびに、前記ソレノイドバルブ装置が備える前記ソレノイドバルブは、油圧装置内の油路を開放および閉鎖するものであること
を特徴とする油圧パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−219840(P2012−219840A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83092(P2011−83092)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】