説明

タンパク質層を有する電子デバイス

本明細書は生物的材料および電気的材料並びに該生物的材料と該電気的材料との間の界面を含む電子デバイスの製造方法を記載する。この方法は、電子デバイスを製造する際、所望の位置にタンパク質(11)の自己組織化を利用する。この明細書はまた、構造部としてタンパク質層を含む電子デバイスも記載する。ハイドロフォビンタンパク質を含む電子デバイスのタンパク質層もまた記載する。いくつかの実施形態では、電子デバイスはタンパク質(11)に接触したグラフェン(12)の層も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、電子デバイスおよび電子デバイスを製造する方法に関する。特に、本発明は生物的材料とエレクトロニクスにおいて使用する従来材料との間に界面を有する電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1において記載されているように、バイオセンシング(バイオFET)に好適な電界効果トランジスタ(FET)の設計について、多くの試みがなされてきた。
【0003】
バイオFET応用における単層カーボンナノチューブ(SWCNTs)の使用が、非特許文献2で行われている。
【0004】
グラフェンは、その優れた特性から、デバイスの進歩においてより魅力的な材料となっており、それは、非特許文献3に記載されている。
【0005】
類似の発見は、非特許文献4にも記載されている。
【0006】
バイオセンサーは、特許文献1および特許文献2にも開示されている。
【0007】
バイオセンシングに用いる材料の多くは、グラフェン表面の化学的修飾を含み、これにより表面上の所望の機能を得る。
【0008】
グラフェン材料のいくつかの製造方法は従来提案されてきた。グラフェンは自然界ではグラファイト中に存在するので、グラファイトから剥離することによってグラフェンを製造する方法がいくつか提案されている。また、表面上へグラフェンを堆積する製造方法も提案されている。
【0009】
非特許文献5は、スタンプ上のピラーを用いてグラファイトから孤立したグラフェンを切断、剥離し、そして転写印刷を用いて、そのグラフェンをスタンプから基板上のデバイス活性領域に位置させる方法を開示している。該公報は、この印刷されたグラフェンから製造したトランジスタも開示している。
【0010】
特許文献3は単結晶基板上にエピタキシャル成長させたグラフェン層を開示する。製造したデバイスは、グラフェンに対して十分に格子整合した単結晶領域を有する。グラフェン層は、例えば分子線エピタキシャル(MBE)によって格子整合領域上に堆積させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0025660(Al)
【特許文献2】英国特許出願公開第2452857(A)
【特許文献3】国際公開第2007/097938(A1)号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Michael J. Schoning and Arshak Poghossian, Recent advances in biologically sensitive field effect transistors (BioFETs), Analyst, 2002, 127, 1137-1151
【非特許文献2】Maria Teresa, Martinez; Yu-Chih, Tseng; Nerea Ormategui; Iraida, Loinaz; Ramon, Eritja and Jeffrey Bokor, Label-Free DNA Biosensors Based on Functionalized Carbon Nanotube Field Effect Transistors, Nano Lett., 2009, 9 (2), pp 530-536
【非特許文献3】Priscilla, Kailian, Ang; Wei, Chen; Andrew, Thye; Shen ,Wee and Kian, Ping, Loh, Solution-Gated Epitaxial Graphene as pH Sensor, J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 14392-14393
【非特許文献4】Nihar Mohanty and Vikas Berry, Graphene-Based Single-Bacterium Resolution Biodevice and DNA Transistor: Interfacing Graphene Derivatives with Nanoscale and Microscale Biocomponents Nano Lett., Vol. 8, No. 12, 2008, 4469
【非特許文献5】Liang,Xら,Graphenee Transistors Fabricated via Transfer-Printing in Device Active Areas on Large Wafer, Nano Letters, Vol.7, No.12, 3840-3844, 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
様々な電子デバイス中の成分として生物的材料が大きな潜在性を有することを考慮して、新たな製造方法とそれに伴う利点に対する必要性は今後も高い。
【0014】
よって、本発明は、生物的材料および電気的材料並びに該生物的材料と該電気的材料との界面を含む電子デバイスの新たな製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、製造方法は、電子デバイスを製造する際に、所望の位置でタンパク質の自己組織化を利用する工程を含む。
【0016】
別の実施形態では、前記タンパク質は疎水性材料の表面の上でこの表面に付着する層を形成する。
【0017】
一実施形態では、前記タンパク質はグラフェンの表面の上でこの表面に付着する層を形成する。
【0018】
一実施形態において、前記タンパク質はシリコンの表面の上でこの表面に付着する層を形成する。
【0019】
一実施形態において、前記タンパク質はハイドロフォビンタンパク質を含み、これは自己組織化した層を疎水性表面上に形成するのに特に好適である。
【0020】
そして、本発明の別の一態様は、タンパク質層を構造部として含み、前記タンパク質層がハオドロフォビンタンパク質を含む電子デバイスを提供する。
【0021】
よって、本発明は電子デバイスの新たな製造方法と、全く新たな電子デバイスを提供する。
【0022】
本発明はまた、いくつかの特定の応用の観点から少なくとも、公知の方法および電子デバイスを超える特定の利点を提供できる、いくつかの実施形態を有する。
【0023】
いくつかの実施形態は、グラフェン表面上またはシリコン表面上など、このデバイス表面上で安定なタンパク質層を提供する。
【0024】
一実施形態では、このタンパク質は特定の分子を検出するのに特に好適なタンパク質を有する。
【0025】
実施形態において、グラフェン層の表面が機能性タンパク質を有しており、タンパク質は、例えば、プレートレットを所望の部位に配置するために、または、グラフェンを電気的に外部回路に接続するために使用できる。これらの実施形態のいくつかでは、特定かつ所望の位置にこのナノマテリアルを配置するために、生体分子認識の使用もできる。そして、デバイス中のタンパク質およびグラフェンがプレートレットの形状である実施形態もある。
【0026】
本発明はまた、関連する利点を与えるいくつかの他の実施形態も有する。
【0027】
本発明およびこの利点のよりよい理解のために、例を用いて、また以下の図を参照して本発明を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一実施形態に従う電子デバイスの横断面を表す概要図である。
【図2】別の実施形態に従う電子デバイスの横断面を表す概要図である。
【図3】更なる実施形態に従う電子デバイスの横断面を表す概要図である。
【図4】更なる実施形態に従う電子デバイスの横断面を表す概要図である。
【図5】一実施形態で用いられる1つのタンパク質、すなわちHFBIタンパク質の構造を示す。
【図6】一実施形態に従うグラフェン層の表面上に接着したタンパク質の概要図である。
【図7】一実施形態に従うプレートレットの横断面を表す概要図である。
【図8】別の実施形態に従うプレートレットの横断面を表す概要図である。
【図9】第3の実施形態に従うプレートレットの横断面を表す概要図である。
【図10】第4の実施形態に従うプレートレットの横断面を表す概要図である。
【図11】一実施形態に従うグラフェン片のTEM画像を示す。
【図12】図11のグラフェン片から測定した回析パターンを示す。
【図13】図11のグラフェン片から測定した回析ピークの強度を示す。
【図14】一つの実験における、タンパク質剥離グラフェン断片およびHOPGピラーを示す。
【図15】一実施形態に従うバイオFETの横断面を表す概要図を表す。
【図16】図15のバイオFETにおける電子移動度を示す。
【図17】実施形態に従う機能化グラフェンシートの画像を示す。
【図18】実施形態に従う機能化グラフェンシートの更なる画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(定義)
グラフェンとは、sp結合炭素原子の1原子厚平面シートのみから実質的になる材料を一般的に指す。グラフェンには、炭素原子がハチの巣状の結晶格子に高密度に充填されている。
【0030】
グラフェンシートは、グラフェンと同様の意味を有するが、グラフェン材料のシート状の性質をいう場合、特に厚みを表す場合に使用される。
【0031】
グラフェン層は、グラフェンを含み、本件の応用に関係のあるグラフェンの機能的特性を示す材料である。よって、グラフェン層は少なくとも1グラフェンシートを有する。グラフェン層は、互いに重なり合って複数のグラフェンシートを含んでもよく、従っていくらかの原子層の厚みを有しても良い。
【0032】
グラフェンの層はグラフェン層と同じである。
【0033】
プレートレットは、一般的に、典型的に小さい寸法および小さい厚みの平面フィルム様の物である。寸法および厚みは、例えば、マイクロメーターまたはナノメーター程度である。
【0034】
タンパク質は、ペプチド結合により結合されたアミノ酸の鎖を含むポリペプチド分子である。
【0035】
(発明の実施形態)
以下の記載において、グラフェン電子デバイス中の機能性層としてのハイドロフォビンタンパク質の使用方法を示す。一実施形態によれば、既存のシリコン技術は、自己組織化したタンパク質層からなる薄膜と適合しうる。一実施形態によれば、かようなデバイスはセンサーとして使用することができる。かようなセンシングデバイスを得る手段としては、グラフェンの表面を、その層と接触させる検体に対して特異性を有する認識要素で機能化することが挙げられる。
【0036】
実施形態によれば、電子デバイスの機能化部分の製造はハイドロフォビンを用いることによって容易にしうる。例えば、まずタンパク質を機能化し、その後にグラフェン表面に接触させることによって機能化タンパク質を自己組織化プロセスでグラフェン表面上に吸着させることができる。代替的アプローチとして、タンパク質は自己組織化膜の形成後に機能化させる。吸着の過程で、ハイドロフォビンはグラフェンに対して化学結合を形成しないので、グラフェンのセンス特性を維持し制御するのに有益となりうる。
【0037】
バイオFET駆動に対する共通アプローチは、いわゆる一定電荷(または一定ドレイン電流)モードにより表される。一定電荷モードでは、フィードバック回路を用いてドレイン電流を固定値に設定することにより、生化学的反応により生じる電圧変化をそのまま記録することができる。生じるセンサー出力信号は、その結果電圧変化に比例する。また一定電荷モードの構成によれば、たった1つの共通の参照電極を用いることにより、同時に複数のセンサー解析ができる。一般に、バイオFET変換器は、ゲート絶縁体/電解液の界面またはその近くでの任意の種類の電子相互作用に対して非常に感度が高く、この界面での化学変化または電位変化をもたらす任意の生化学反応は、バイオセンサーによって測定されるシグナルで得られる。特に、次に示すバイオFETの電位発生の基本メカニズムが知られている:(i)(例えば、酵素およびその基質間での)触媒反応生成物により生じる電位変化、(ii)表面分極効果または双極子モーメントの変化により生じる電位変化(例えば、原理上は、生体分子の結合に伴う電界の変化をFETが検出できる特定の条件下での、抗原抗体親和性反応またはDNAハイブリダイゼーション)、(iii)より複雑化した生化学的プロセスの結果としての、生きている生物系由来の電位変化(例えば神経細胞の活動電位)。
【0038】
ハイドロフォビン層は、その構造特性および接着特性により界面の膜として好適なだけではなく、認識要素を含む様々な機能性に容易に操作することができることからも好適である。認識要素での機能化は遺伝子工学の使用によって実現でき、ここでは、ハオドロフォビンを一本のポリペプチド鎖に結合することにより、所望の要素をハイドロフォビンと融合する。野生型ハイドロフォビンまたは改変ハイドロフォビンへの認識要素の連結は、タンパク質膜の形成の前後に化学的に行うこともできる。生じた融合タンパク質は膜中に組み込まれ、ハイドロフォビン部分は界面上にとどまり、認識要素は溶液中に遊離する。認識要素の選択は、センサー層の機能性において重要な役割を明らかに有している。溶液(または気相)に向いている認識ユニットは、必要ならば、化学的または物理的手法によりさらに機能化できる。例えば、光学シグナルおよび電気シグナルを増強できるナノ粒子を、形成したタンパク質層に付着させてもよく、これはLaaksonen P.; Kivioja, J.; Paananen, A.; Kainlauri, M.; Kontturi, K.; Ahopelto, J. and Linder, M. B., Selective nanopatterning using citrate- stabilized au nanoparticles and cy stein-modified amphiphilic protein, Langmuir, 2009, 25, 5185に、より詳細に記載されている。
【0039】
タンパク質層は水と空気との界面、水と油との界面、または水と疎水性固体材料との界面で調製することができる。タンパク質層/膜の形成は自然発生し、固定または接着のための他の処理を必要としない。グラフェンのセンサーの場合、タンパク質層は溶液から直に形成することができ、その溶液中にグラフェン表面を浸すことにより、あるいは空気/水または油/水の界面から層を移動させることにより、形成することができる。同じ手法は、例えばシリコン、グラファイトまたはポリスチレンなどの、グラフェン以外の疎水性表面にも使用することができる。異なる機能性を有するタンパク質の混合層を作るためには、ハイドロフォビンの混合物は初期溶液として使用する。タンパク質の調製方法および特性(サイズ)に基づき、予想される量の異なる分子を含む混合層を得ることができる。
【0040】
グラフェン表面自体は、任意の利用可能な方法を用いて作製することができる。さらに、グラフェンを別の好適な材料、例えばシリコン、グラファイトまたはポリスチレンなどと置換してもよい。
【0041】
図1は、一実施形態に従うバイオFETの横断面を表す概要図である。図1のデバイスは基板10上に形成し、基板は例えばシリコン基板である。図1の実施形態において、基板10はp型基板である。図1のデバイスはまた誘電体層13も含み、その誘電体層は例えばSiOである。誘電体層13の表面上で、デバイスはバイオFETのチャネルを形成する半導体層12を含む。半導体層12は例えばグラフェンまたはドープシリコンで作製することができる。チャネルはソース電極14およびドレイン電極15に接続し、これらの電極は、例えば蒸着によって好適な金属で作製することができる。デバイスは、半導体層12の表面上に機能化タンパク質11の層も含む。機能化タンパク質自体は、任意の好適なタンパク質、例えば以下の明細書中に記載するものでもよい。もちろん、機能化タンパク質の層中のすべてのタンパク質が機能化している必要はない。むしろ、この層は機能化タンパク質および非機能化タンパク質の混合を含むことができる。また、タンパク質自体は機能化されておらず、タンパク質11の層の上または中にもたらされた成分により、タンパク質の層が機能化されるということでもよい。そして、タンパク質11の層はかような構成に好適な基板を形成する。かような構成は例えばナノ粒子を含んでもよい。可能なナノ粒子は、限定しない例として、金属ナノ粒子、半導体ナノ粒子および発色団を含む。そして、他の好適なナノ粒子も使用することができる。さらに、任意の異なるナノ粒子の組合せを使用することができる。
【0042】
図1のデバイスは基板10に接続するバイアス電圧により好適にバイアスをかけることができる。そして、チャネルの電流は、半導体層12の表面上の機能化タンパク質11の層の分極状態や、機能化タンパク質11の層中の電荷の他の変化に感度を有する。
【0043】
図1のデバイスの変更として、基板10をSOIウェーハ(シリコン・オン・インシュレータ)のシリコン層とし、SOIウェーハのシリコン層をパターニングすることにより、基板10のゲート部位をシリコン層の他の部位から分離することができる。
【0044】
図2は別の実施形態に従うバイオFETの横断面を表す概要図である。図2のデバイスは、非ドープのまたは弱くドープされたn型シリコン基板10上に形成した。さらに、図2のデバイスは、基板10中のデバイスの位置に形成したp型ウェル17を含む。図2のデバイスはまた、ウェル17に接続したゲート電極16を含む。ゲート電極16は好適な金属で作製することができ、例えば誘電体層中に作られた穴の中に蒸着により作製することができる。図2のデバイスの他の要素は、図1の上記デバイスに存在するものと同じである。
【0045】
図3は更なる実施形態に従うバイオFETの横断面を表す概要図である。図3のデバイスはSOI基板上に形成した。SOI基板は絶縁層21および絶縁層21の表面上の半導体層20を含む。図3のデバイスでは、半導体層20はシリコン層である。バイオFETのチャネルはソース電極14およびドレイン電極15の間の半導体層20に形成する。そのデバイスは、バイオFETのチャネルとして機能し、半導体層20と直接接触する機能化タンパク質11の層も含む。
【0046】
図4は更なる実施形態に従うバイオFETの横断面を表す概要図である。図4のデバイスは、絶縁層21および絶縁層21の表面上の半導体層20を含む基板の上に形成した。半導体層20の材料は、例えばシリコン、GaAs、InPまたは任意の他の好適な半導体材料でもよい。バイオFETのチャネルは、ソース電極14およびドレイン電極15の間の半導体層20に形成する。更に、デバイスは、半導体層20の表面上に形成する疎水性層24を含む。疎水性層24はバイオFETのチャネルを覆うが、ソースおよびドレイン電極14、15の形成のために穴が形成されている。かような疎水性層24は例えばポリスチレンで作製することができる。一般に、疎水性層24の材料は疎水性の絶縁材料である。疎水性層24を用いることで、非疎水性の半導体上にも疎水性表面を形成できる。更に、疎水性層24を用いて、酸化や、劣化またはデバイスへの他の害を生じさせる他の要因から半導体層20を保護することができる。図4のデバイスは、疎水性層24の表面上の機能化タンパク質11の層も含む。
【0047】
図1〜4のデバイスの設計的特徴および構造は実施形態間で組み合わせたり変更したりしてもよい。例えば、図4のデバイスにて示す疎水性層24を、図1および図2のデバイスにも、半導体層12と機能化タンパク質11の層との間に使用することができる。そして、非疎水性半導体材料もこれらのデバイスの半導体層12中に使用することができる。同様に、バイオFETの他の改変型を作製する際に、上述の実施形態の基板および他の特徴を入れ替えることもできる。更に、デバイスは、トランジスタである必要はなく、任意の別の好適な電子デバイスであればよいのであって、トランジスタはデバイスの可能な例として示したのみである。
【0048】
上記実施形態で使用できる材料および製造方法の更なる詳細は次に記載する。
【0049】
実施形態は例えば疎水性表面など、好適な表面上の層として、タンパク質の自己組織化を利用することができる。かような自己組織化工程では、表面の特性を好適に設計することによって選択的にすることができる。例えば、標的領域は疎水性にする一方、他の露出した表面は非疎水性または親水性にすることができる。かような選択性は例えば材料の適切な選択により行ってもよい。一実施形態によれば、疎水性材料は、水が90度よりも大きい接触角を有する材料である。
【0050】
疎水性表面としてグラフェンを用いる実施形態は、例えば上記参照する背景技術に記載されているものの1つなど、任意の利用可能な方法により作製するグラフェンを有してもよい。グラフェン層は、グラファイトからのタンパク質促進剥離によって製造することもでき、これを本明細書中、以下により詳細に記載する。しかしながら、タンパク質促進剥離方法の使用は本発明の必要条件ではなく、グラフェン製造の任意の方法を使用することができる。剥離方法を一実施形態にて詳細に記載するのは、その方法自体が新しく、本技術分野にて実施者の間で公然と知られていないからである。
【0051】
グラフェン層を製造する他の方法に関して、単層又は複数層のグラフェンを非炭素の表面上にも堆積方法により製造することを詳細に示した。CVD、ALD、MBEおよび当業界で公知の他の方法を使用できる。例えば、特許文献3は単結晶基板上にエピタキシャル成長させたグラフェン層を開示する。
【0052】
剥離方法に関連する実施形態によれば、グラフェン含有プレートレットは表面からグラフェン層を剥離することによって製造する。その表面は剥離すべきグラフェン層を含む任意の表面でよい。表面は、例えば、グラファイトの物体または粒子の表面でもよい。表面が高配向のグラファイト体の一部を形成する場合、その表面は剥離されるグラフェン層を繰り返し製造することができる。また、高配向のグラファイトではドメインサイズが一般的に大きいので、製造されるグラフェン含有プレートレットの寸法または範囲は比較的大きい。最高品質の高配向熱分解性グラファイト(HOPG)を使用する場合(ZYAグレード)、ドメインサイズは最大10μmであり、従って、これに対応する寸法範囲のグラフェン含有プレートレットの製造ができる。表面は通常のグラファイトまたはグラファイト粉によって形成されてもよい。
【0053】
つまり、一層又は複数層のグラフェン層が剥離される表面は、少なくとも1原子厚のグラフェンシートを含むが、複数のグラフェンシートによって形成されてもよく、またはグラファイト体によって形成されてもよい。
【0054】
本実施形態において、剥離はタンパク質で処理することによって促進される。処理は、タンパク質と表面とを任意の好適な方法で接触させる工程を含んでもよい。これらのタンパク質は、電子デバイスのタンパク質層を形成するために用いるタンパク質と同じでもよい。これらの両目的に好適なタンパク質は、本明細書の以下に記載する。
【0055】
タンパク質は、例えば菌類由来の天然のタンパク質でもよいし、または、疎水性表面上に層を形成するという所望の効果を得たタンパク質に機能的に等価で、修飾されまたは合成して製造された、任意のポリペプチドでもよい。タンパク質は融合タンパク質でもよい。タンパク質は、該タンパク質に付着した別の1つ以上の部分を有する、より大きい構造的ユニットを含んでもよい。
【0056】
タンパク質の証明された機能は、タンパク質と、グラフェンまたはシリコンの表面などの疎水性表面との間の接着力に基づくと考えられる。しかしながら、その正確なメカニズムは未知であり、上記仮定は後の研究において正確ではないと証明される可能性はある。グラフェン表面上でのタンパク質の堅い結合がなくても、タンパク質とグラフェン層の表面とは相互作用できると考えられる。タンパク質はまた、典型的に、グラフェンシートの厚みと比較して大きいため、グラフェンシートに効果的に力を与えることができる。剥離の場合、かような力はタンパク質に作用し、そのためグラフェンにも作用するが、例えば、音響的または力学的なエネルギーによって誘導されうる。音響的または力学的なエネルギーの例として、超音波エネルギーや、液体流入中における振動および混合により引き起こるような動作に存在するエネルギーが挙げられる。従って、剥離を促進するため、超音波処理すなわち、表面に超音波を照射することができる。
【0057】
一実施形態によれば、タンパク質は、他のタンパク質部位よりも疎水性の部分を含有するタンパク質を含む。別の実施形態では、タンパク質はグラフェンの表面または他の好適な表面に接着することのできる疎水性部分を含有するタンパク質である。更なる一実施形態によれば、タンパク質は両親媒性のタンパク質を含む。かような疎水性および両親媒性タンパク質の例は、ハイドロフォビンを含む。また、かような特性を示す他のタンパク質でもよい。かようなタンパク質はrodlin、chaplin、repellant、およびSapBを含み、これらは例えば、Elliot,M.およびTalbot,N.Jによる、Building filaments in the air: aerial morphogenesis in bacteria and Fungi, Current opinion in microbiology 2004,7:594-601、あるいはKershaw,MおよびTalbot,N.J.による、Hydrophobins and Repellents: Proteins with Fundamental Roles in Fungal Morphogenesis,Fungal Genetics and Biology, 23,18-33,1998などに記載されている。
【0058】
特定のいくつかの実施形態では、タンパク質はハイドロフォビンを含む。ハイドロフォビンの例として、HFBI、HFBII、HFBIII、SRHI、SC3、HGFI、および既述のポリペプチドの特性または配列に類似性を有する他のポリペプチドが挙げられる。ハイドロフォビンの例としては、従って、対応する特性を有する他の類似のポリペプチドも含む。
【0059】
ハイドロフォビンの一群は、Cys残基の含有率および順序によって、アミノ酸配列から同定されるハイドロフォビンであり、それはY-C(1)-X-C(2)-C(3)-X-C(4)-X-C(5)-XC(6)-C(7)-X-C(8)-Yの形態をとり、ここでXは1つ以上のアミノ酸残基の配列を意味するが、典型的には100未満のアミノ酸残基である。Yは、任意の数のアミノ酸残基からなる長さが様々な配列であってもよく、または全く配列がなくてもよいことを意味する。CはCys残基を意味し、C(2)およびC(3)は典型的に配列中で互いに連結し、C(6)およびC(7)も典型的に配列中で互いに直接連結する。
【0060】
一実施形態によれば、ハイドロフォビンは、例えば、既述のハイドロフォビンであるHFBI、HFBII、HFBIII、SRHI、SC3およびHGFIに、アミノ酸配列レベルで少なくとも40%の類似性を有するアミノ酸配列を含むポリペピチドを含む。類似性のレベルはもちろんより高くてもよく、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも80%、または少なくとも90%でもよい。
【0061】
ハイドロフォビン、その構造および特性の典型例は、LinderらによるHydrophobins:the protein-amphiphiles of filamentous fungi, FEMS Microbiology Reviews,29,877-896,2005に記載されている。
【0062】
本来は、ハイドロフォビンは、糸状菌によって製造される両親媒性タンパク質として発見された。しかしながら、組み換えDNA技術によって、バクテリア、始原細菌、酵母、植物細胞または他の高等真核生物などの、様々な他の生物中で製造することができる。ハイドロフォビンは生細胞を使用しなくても製造することができ、合成か無細胞製造法でも製造することができる。接着特性に加えて、これらのハイドロフォビンは、いくつかの実施形態において活用することができる有益な特性をさらに有する。例えば、このタイプのハイドロフォビンは、典型的にタンパク質膜を形成することができ、これは例えば剥離したグラフェンを支持するために使用することができる。形成されたタンパク質膜はいくつかの実施形態において弾性フィルムでもよい。いくつかの実施形態では、タンパク質膜は、タンパク質の秩序ネットワークによって形成することができ、タンパク質の自己組織化方法によっても形成することができる。いくつかの実施形態において、かようなタンパク質の秩序ネットワークは単層であり、すわなち、実質的にタンパク質を一層のみ有する。
【0063】
いくつかのハイドロフォビンのフィルム形成特性およびそれらの表面への接着については、Szilvay,G.R.;Paananen,A;Laurikainen,K.;Vuorimaa,E.;
Lemmetyinen,H.;Peltonen,J. Linder,M.B.による,Self-assembled hydrophobin protein films at the air-water interface: Structural and molecular engineering Biochemistry,2007,46,234-2354の刊行物に記載されている。
【0064】
図5は、一実施形態によって使用しうるHFBIタンパク質の構造を示す。
【0065】
図6は、グラフェンシート1と、最外側のグラフェンシート1の表面に接着したタンパク質2とを表す概略図である。
【0066】
実施形態のタンパク質は、少なくとも2つの機能部位を有する融合タンパク質を含んでもよい。機能部位の一つはグラフェンなどの材料に接着する能力を有するように選択することができる一方、他の少なくとも一つの部位は他の所望の機能によって選択できる。かような他の所望の機能は例えば溶解性、電気的特性、力学的特性、化学的特性、および/または接着特性に関する。
【0067】
一実施形態によれば、融合タンパク質中の少なくとも1つの機能部位は、ハイドロフォビンまたはハイドロフォビン様の分子によって形成される。かような融合タンパク質の例として、溶解性、荷電性、疎水性、化学反応性、酵素作用性、伝導性または結合機能性などのいくつかの機能性がハイドロフォビンまたはハイドロフォビン様分子に加わっている分子が挙げられる。この機能群の追加は化学結合、酵素修飾、翻訳後の修飾、または組み換えDNA技術を用いることにより行うことができる。特定の実施形態において、NCysHFBIという融合タンパク質を用いることができる。このタンパク質変異形は更なるCys残基を有し、それに含まれるスルフヒドリル基を介して化学反応を起こす。
【0068】
応用の必要性によって、クラスIおよび/またはクラスIIハイドロフォビンを使用することができる。クラスIハイドロフォビンは典型的に非常に不溶性の凝集体を形成する一方、クラスIIメンバーの凝集体はより敏速に溶解する。この事実によって、各応用形態の必要に応じて適したタンパク質を選択することができる。
【0069】
クラスIIハイドロフォビンの例としては、Trichoderma reeseiから取得できる、HFBI、HFBIIおよびHFBIIIが含まれる。
【0070】
Trichoderma以外のハイドロフォビンの他の取得源として、例えば、Schizophyllum、Aspergillus、Fusarium、Cladosporium、およびAgaricusなどの全ての糸状菌を含む。さらなる取得源の例は、例えば、上記引用のLinderら(FEMS Microbiology reviews,2005)に記載されている。
【0071】
いくつかの実施形態では、タンパク質はグラフェン表面上に層を形成する。このように、グラフェンおよびタンパク質層を含むものを製造することができる。かようなものは、本明細書においてプレートレットと呼ぶ。
【0072】
タンパク質による表面処理は、例えば、タンパク質を含む溶液を製造して表面上にその溶液を塗ることにより行うことができる。表面は溶液中に浸す、または溶液と接触させることもできる。一実施形態では、溶液は水溶液であり、精製水またはpH若しくはイオン強度を制御するための材料を添加した水である。溶媒および非水性成分を溶液に加えることもできる。
【0073】
表面は、前記溶液なしでも、タンパク質によって処理することができる。例えば、まずタンパク質層を製造し、そして表面およびタンパク質層を互いに接触させる。かようなタンパク質層は、スタンプのような機械的物体の表面上に形成することができる。タンパク質層は流体と流体との界面でも形成することができ、例えば液体-液体、液体-固体、気体-固体または気体-液体の界面で形成することができる。例えば、まずタンパク質を含む液体を製造し、その後その液体と、空気または選択したプロセスガスなどの周囲の外気との界面でタンパク質を凝集させることができる。その後、タンパク質層は標的表面と接触させ、または、タンパク質層を標的表面に移すために使用する中間材料と接触させることができる。本明細書における用語「標的表面」は、タンパク質層を形成し、又は移すデバイスの表面を意味する。用語「所望の位置」は、タンパク質の自己組織化が望まれる表面の領域を意味する。従って、タンパク質層がデバイスの表面上に直接自己組織化する場合、「標的表面」および「所望の位置」の両方は同じ対象を意味する。一方、既成のタンパク質層を「標的表面」上に移す場合、「所望の位置」はタンパク質が自己組織化層を形成する別の位置を意味する。
【0074】
このように、方法の一実施形態は、タンパク質層を形成する工程と、形成したタンパク質層をグラフェンの表面と接触させて、表面上にタンパク質層を接着させる工程とを含む。この後必要に応じて、グラフェンが付着したタンパク質層を基板に対して押し付けて、基板上の標的表面にグラフェンをスタンプすることができる。従って、形成したプレートレットを所望の標的位置に正確に載置することもでき、よって、例えばプレートレットをエレクトロニクスの応用に活用することができる。別の実施形態では、タンパク質層は標的表面と直接接触する。更なる実施形態では、標的表面はタンパク質が層を形成する界面を形成する。
【0075】
他の物体のスタンプによって、所望の形状でプレートレットを製造することもでき、その結果、所望のパターンのグラフェンを製造することができる。パターンは、グラフェンが剥離される表面自体をパターニングすることによって形成することもできる。
【0076】
上記記載の方法を用いて、グラフェン層と該グラフェン層の表面上のタンパク質層とを含むデバイスまたはプレートレットを製造することができる。図7〜10は、かようなプレートレットの横断面を示す概要図である。
【0077】
図7のプレートレットは、グラフェン層3とグラフェン層3の表面上のタンパク質層4とからなる。グラフェン層3は、図6に示す複数のグラフェンシート1を含んでも良く、または1層のグラフェンシート1からなってもよい。タンパク質層4は少なくとも1層のタンパク質2を含む。かようなプレートレットは、上述のように例えば界面で剥離することによって形成することができる。
【0078】
図8のプレートレットは、グラフェン層3と、グラフェン層3の両主面上のタンパク質層4とを有する。タンパク質層4が十分に均一である場合、グラフェンはタンパク質層4によって実質的に十分保護されている。しかしながら、いくつかの実施形態において、タンパク質層4はグラフェン層3を露出させる穴または空隙を含んでもよい。かようなプレートレットは、例えば溶液中で剥離することによって生産され、この溶液中でグラフェン層3の他の主面がタンパク質と接触するようになる。
【0079】
図9のプレートレットは、互いに離間し、複数のタンパク質層4によって支持される複数のグラフェン層3の層構造を有する。かようなプレートレットは例えば、ハイドロフォビン、または、更なる機能を有するハイドロフォビン様タンパク質の結合により製造することができる。更なる機能は他のタンパク質と相互作用を形成することができるように選択し、他のタンパク質は例えば、他のハイドロフォビン、または、グラフェンシートに結合したハイドロフォビン様タンパク質である。このようにして、タンパク質を互いに結合させ、層状構造を形成する。
【0080】
図10のプレートレットは、タンパク質層4と、タンパク質層4の両主面上のグラフェン層3とを含む。かようなプレートレットは、例えば、ハイドロフォビンを結合し、または、更なる機能性を有するハイドロフォビン様タンパク質を結合することによって製造することができ、タンパク質の付着したグラフェンが複数層を形成する。後の段階で、露出したタンパク質層は除去することができる。
【0081】
上記からわかるように、タンパク質層4は、プレートレット中であっても必ずしも完全にグラフェン層3を覆う必要はない。従って、いくつかの実施形態ではなるべく多くの被覆が有利であるが、いくつかの他の実施形態ではタンパク質層4中にかなりの不規則性があってもよい。そして、上記からもわかるように、被覆度は製造方法のいくつかの実施形態において必ずしも重要ではない。これは、タンパク質が剥離を促進するためだけに使用されるが、支持機能は求められない場合である。
【0082】
いくつかの実施形態ではグラフェン層3が不規則でもよい。従って、プレートレット中のグラフェン層3は、厚みにおいてさまざまでもよく、いかなる個々のグラフェンシート1もまた均一な格子構造のより小さい領域を複数含んでも良い。
【0083】
プレートレットでは、グラフェン層の厚みは、例えば1〜10グラフェンシート1とすることができる。エレクトロニクス応用のほとんどにおいては、典型的な厚みは1〜5グラフェンシート1と考えられるが、既に述べたように、応用およびその要求は様々であり、プレートレットの特性はそれに従って適宜選択できる。
【0084】
プレートレットの特別な場合は、グラフェン層3が単層のグラフェンシート1からなるプレートレットである。かようなプレートレットは、図7〜10に示す任意の構成で製造することができる。
【0085】
一実施形態によれば、タンパク質層4はハイドロフォビンを含む。やはり、特別な場合はタンパク質層4が単層のハイドロフォビンであるプレートレットである。
【0086】
タンパク質層4は融合タンパク質を含んでもよく、または融合タンパク質によって単独で形成してもよい。さらに、単層のタンパク質層4は種々の融合タンパク質を含んでもよい。図8および図9のプレートレットで、タンパク質層4のうち一層のみが融合タンパク質を含んでもよい。
【0087】
タンパク質層4のタンパク質としては、製造方法の実施形態を説明するにあたり上述した、いかなるタンパク質も使用することができる。また、開示したタンパク質の組合せも、個々のプレートレットにおける単層のタンパク質層4中または複数のタンパク質層4中で、使用することができる。
【0088】
プレートレットの厚みは例えば50nmより小さくてもよい。個別のタンパク質層4の厚みは例えば1〜10nmの間の範囲でもよい。
【実施例】
【0089】
タンパク質の吸着によってグラファイトからグラフェンを剥離する種々の方法を、特にハイドロフォビンを用いて試験した。試験中、その方法が、例えば温度T<100℃および中性pH付近の穏やかな条件であっても、1〜10グラフェンシートの範囲の様々な厚みを有するグラフェンの薄い断片を分離する、新しい効果的な方法を提供することができることがわかった。
【0090】
試験した方法の1つは、野生型タンパク質または機能性融合タンパク質の存在下でのグラファイトの超音波処理によってグラフェンの安定的分散を形成する工程と、その生成物を用いて、ナノエレクトロニクス成分中で基板材料に付着可能な生体分子を自己集合させる工程と、を含む。
【0091】
また、タンパク質被膜間の機能性または他の相互作用を介して多層間を結合することによって、グラフェン材料のより大きな領域を形成することができる。
【0092】
ハイドロフォビンの親水性体中に埋め込まれた小さな疎水性のパッチが、親水性および疎水性材料の界面で自己集合を引き起こす。実施例の1つで使用する、クラスIIハイドロフォビンHFBIの構造は、図5に記載する。界面での自己集合の好ましい例は、水と空気との界面でのHFBIの集合であり、結晶格子を形成することを示す。この両親媒性の挙動の他に、疎水性のパッチが固体疎水性材料に結合する強い傾向がある。従って、この実施例に使用するハイドロフォビンの層は、必要に応じて移動され、基板上に結合される。ハイドロフォビンの特に興味深い別の特徴は、界面の単層の形態としてのタンパク質間の強い面内相互作用である。HFBIの強い単層膜は、厚みわずか数nmでもよいが、エレクトロニクスにおいて可能性のある材料として提案されており、エレクトロニクスに使用される従来型の材料と共に使用する場合に興味深い挙動を示す。
【0093】
ハイドロフィビンと疎水性表面との相互作用は巨視的表面、微視的表面、さらにナノスケールの表面上でさえ研究されている。タンパク質層の結晶性は全ての場合で検証できたわけではないが、疎水性表面への選択的結合の証拠は明らかであった。実験では、疎水性の自己集合は、微視的レベルでの表面領域をもち、ナノスケールの厚みを有する二次元材料として広がった。
【0094】
いくつかの試験に基づくと、ハイドロフォビンでの処理後にグラファイトのような疎水性材料の湿潤性が極端に変化することが、グラフェンの剥離を導く主要な要因のひとつと考えられた。溶液中のグラファイトからグラフェンを剥離する初期の試みにおいて、グラフェン-水界面での表面エネルギーは、溶媒によって低下し、または、第3相として系に界面活性剤を加えることによって低下させ、そして溶液へのグラフェンシートの分散を促進させた。しかしながら、グラフェン断片の表面での高配向タンパク質結晶の構造は、さらに分散を安定にすることができると考えられる。
【0095】
剥離した断片の安定化の他、断片の分離はグラフェンの剥離において役割を担うと考えられている。正確なメカニズムはまだわかっていないが、比較的小さいサイズのハイドロフォビン分子およびこのグラファイト面に対する高い親和性もまた関連要因であると思われる。グラフェン表面上に親水性タンパク質層を有することのエネルギー上の利点は非常に高く、それは、この利点がグラファイト中のグラフェンシートの積層を超えることが証明されたからである。グラフェンの剥離は、超音波処理によって促進され、それはグラフェンシートを破損すると考えられた。しかしながら、発明者らの経験上、グラフェンは数平方ミクロンの一片となり、電子デバイスの部品としては十分な大きさとなる。
【0096】
(図11〜13の実施例)
最高品質(ZYAグレード、10μmまでのドメインサイズ)の高配向の熱分解グラファイト(HOPG)もしくはキッシュグラファイトの小さい断片(<1mg)、pH8の10mMリン酸ナトリウム緩衝溶液中の0.02〜0.026mMタンパク質(HFBI野生型または融合タンパク質NCysHFBI)、または脱イオン水を含む0.5〜1.0mlの溶液に対して先端ソニケーター中で超音波を照射することによって、グラフェンの剥離を行った。プローブの大きさは26μmに設定した。溶液の温度は、超音波処置の間氷浴中に試料を保持することによって制御した。試料は合計で10分間超音波処理下にさらしたが、溶液の沸騰を防ぐため、超音波処理の小中止を約1分間隔でし続けた。従って、超音波処理温度は0〜100℃の間に保たれた。超音波処理の後、試料を500rpmで15分間遠心分離して、グラファイトのより重い断片の堆積を促進した。上澄みはさらなる分析に使用した。
【0097】
実施例において使用したHFBIおよびNCysHFBIの配列は次の通りである:
NCysHFBI

HFBI

【0098】
穴開きカーボングリッド上に未使用の上澄み20μlをピペットで2滴とって、透過型電子顕微鏡(TEM)用のグラフェンの試料を調製した。グラフェンシートの断片のTEM画像を図11に示す。試料はフィルター紙の上にのせ、フィルターに余分な溶液を吸収させた。グラフェン層と、その種々の部分から測定した回析パターンの例を、図12に示す。大きな折りたたまれたグラフェンの断片を種々の位置で測定した電子回析パターンから、単層のグラフェンシートの証拠が読み取れる。図13は、スポットi3で測定した回析ピークの強度を示し、これはミラー‐ブラヴェ指数{1100}および{2110}で表示できるピークを示す。{1100}と{2110}のピーク強度の比率は、1より大きい値であり、これは、計算によると、グラフェンの単層シートの電子回析と一致する。サイズ範囲が同じで同様の特性の部分が、サンプル上の全てに認められ、グラフェン剥離の効果的な方法であることを示した。また、複数層のグラフェンおよびグラファイトからなる部分が、ある程度存在した。
【0099】
ハイドロフォビン部分と、生体分子認識能または他の結合能を有する官能基を有する別の部分とを含む、機能性融合タンパク質を選択することにより、選択した機能性に親和性を有する表面上にグラフェンシートを集めることができる。この方法によれば、選択した機能の自己集合を活用して、例えばパターン化基板の上にグラフェンシートを移動させることができる。
【0100】
(図14の実施例)
キッシュグラファイトおよびHOPGピラーからのグラフェン剥離もまた、実験によって試験した。グラファイト片およびハイドロフォビンタンパク質を水溶液中で40分間、超音波浴(Branson,Bransonic 1510,周波数40kHz)で超音波照射して、グラフェンおよび薄いグラファイトシートの剥離を行った。使用したタンパク質は、野生型HFBIおよびその融合(NCysHBFI)二両体およびHFBI-ZEであった。超純水(Millipore)に0.3〜1ml容積のタンパク質が溶解した、1.0〜3mg/ml溶液中で剥離を行った。化学的に精製したキッシュグラファイトは、タンパク質溶液中に入れて上記のように処理した顆粒として加えた。HOPGから製造した、リソグラフィー処理したウェーハを、マイクロピラーおよび支持グラファイトウェーハを含むプレートレットとして溶液中に浸し、超音波浴中にて超音波処理した。
【0101】
剥離後、剥離材料の遠心分離によって、過剰なタンパク質を溶液から除去した。まず、処理に影響されなかったグラファイトの大きい断片は、ミニ遠心機(National Labnet Co.,Mini centrifuge C-1200)で穏やかな遠心分離によって、分散した材料から分離した。この後、上澄みは室温で14000rpm(Eppendorf,Centrifuge 5417R)で5分間遠心分離し、その後溶液は未使用の超純水に置換した。この洗浄を反復して3回行った。
【0102】
銀エポキシ樹脂を有するSi基板に小さい断片上に切断した後に接着した高配向熱分解グラファイト(HOPG)(SPIサプライヤー、SPI-1グレード)から、HOPGマイクロピラーを調製した。PECVDで120nmの厚みのSi層を200℃で堆積させた。ネガティブレジスト(Micro Resist Technology, ma-N1410)による光リソグラフィーおよび現像(ma-D533s)は、BHF溶液による窒化物層のウェットエッチング後に行った。レジストマスクは、アセトンおよびイソプロパノールで除去した。残留したSi構造は、HOPGのOICPエッチパターニング中にハードマスクとなった。最終的に、窒化物マスクはHF緩衝溶液中で除去した。
【0103】
そして、試料はラマン研究用に調製した。まず、剥離したグラフェン溶液のpHを、pH3のマッキルヴェイン緩衝液10mMを加えて調整した。酸化シリコンウェーハの断片を溶液に17時間浸漬し、その間グラフェンの小さい断片が反対の電荷をもっているためシリコン酸化物に付着した。表面は超純水でリンスして、ラマン測定前に窒素で乾燥させた。
【0104】
これらの工程のあと、試料をラマン測定法によって測定した。図14は種々のグラファイトの材料からのラマン信号の比較を示す。図14aは、HOPG(実線)、薄く剥離したHOPGマイクロピラー(破線)および剥離したグラフェン断片(点線)から測定したラマンシフトスペクトルを示す。直線のバックグラウンドは、全てのスペクトルから差し引き、スペクトルはD’ピークの強度によって規格化した。
【0105】
図14bは剥離したグラフェン断片の光学顕微鏡画像であり、図14cは同じグラフェン断片から測定したD’ピークの強度マップである。図14dは剥離したHOPGピラーの光学顕微鏡画像であり、図14eは同じピラーから測定したD’ピークの強度マップである。
【0106】
図14の例では、532nmレーザーの共焦点ラマン顕微鏡法でのラマン測定のために、タンパク質剥離グラフェン断片およびHOPGピラーを、厚さ90nmのSiO表面を有するSiウェーハ上に固定した。断片周辺のエリアスキャンを行い、対象の断片の寸法および構成を分析した。選択したスペクトルにピークフィットを行い、グラフェンD’ピークの組成、および、ラマンシフトスペクトルのグラフェンD’ピークとGピークとの強度比率に基づいて、グラフフェン断片の分類を行った(更なる情報のために参照:Graf Dら(2007)Spatially resolved Raman spectroscopy of single- and few- layer grapheme. Nano Lett 7:238-242)。
【0107】
異なる厚みのグラフェンシートは、それらのラマンスペクトルで特有のはっきりした特長を有するので、特定の断片中の層の数が明らかになる(更なる情報のために参照:Ferrari AC, ら(2006)Raman spectrum of graphene and grapheme layers. Phys Rev Lett 97: 187401/1-187401/4)。図14は、異なる厚みのバルクグラファイトおよびグラフェン試料のラマンスペクトルの比較を示す。試料は、高配向の熱分解グラファイト(HOPG)、タンパク質剥離グラフェンシート、および数層のグラフェンからなるタンパク質剥離HOPGマイクロピラーである。図14bは光学画像であり、剥離したグラフェン断片および剥離した薄いHOPGマイクロピラー用のグラフェンスペクトラムD’ピークのラマン強度プロットを示す。HOPGマイクロピラーはラマンスペクトル中のHOPGと同じ特性を有する。剥離した小さな断片のラマンスペクトラムはグラファイトよりもグラフェンのラマンスペクトラムにより似ている。一番薄い剥離したグラフェン試料中のグラフェン層の数は、GピークとD’ピークとの相対強度およびGピークの位置を比較することによってラマンスペクトラムから決定した。結果は、観測したグラフェン断片が2層または単層のグラフェンであった。
【0108】
(図15〜18の実施例)
数層厚のグラフェン層の電気特性に対するハイドロフォビンタンパク質の効果を、ボトムゲート電界効果トランジスタのセットアップ上で測定した。図15は数層グラフェンFETの横断面を表す概要図である。基板は、300nmのSiO層を有する高ドープp型シリコンウェーハとした。高pドープ基板は背面ゲートとして使用し、300nmSiOはゲート酸化物として機能した。グラフェンはセロテープ(登録商標)法により基板に移し、共焦点ラマン顕微鏡法を用いてグラフェンシートの2重層特性を測定した。Au上部コンタクトはグラフェンの最上部上に蒸着し、パターニングした。Pt接着層を用いて、表面上での金の接着を向上させた。
【0109】
デバイスの電気特性評価は、タンパク質を有し、煮沸アセトン中でのトランジスタの洗浄後の、初期状態のデバイスで行った。ハイドロフォビンタンパク質、HFBIの層はグラフェンおよびSiOの疎水性-親水性コントラストによってグラフェン上に移し、これはD.Graf,',F.Molitor,,K. Ensslin,, C. Stampfer,, A. Jungen,, C. Hierold, and, L. Wirtz, Nano Letters 2007 7 (2), 238-24に記載するのと同じ方法で行った。2点モードで上部電極間の電流のゲート依存性を測定した。上部電極は一定の10mVのソース-ドレイン電圧を有し、そのゲート電圧は−100V〜100Vの間で掃引した。使用した電圧は厚いゲート誘電体に起因して高い。電気特性はタンパク質単層の移動の前後と、煮沸アセトンによるタンパク質単層の除去後に測定した。
【0110】
図16は、図15のトランジスタに関する測定結果に基づいて算出された電子移動度を示す。算出において、グラフェンのキャリア濃度に対してリニアのゲート電圧依存を推定する。電流の2点測定であることから、算出した値は正確ではないかもしれない。しかしながら、初期洗浄のカーブと、タンパク質単層被覆のカーブと、タンパク質除去後のカーブとの間で、移動度に相対的変化が見られる。測定量を初期状態と比較すると、HFBIタンパク質単層が電子の移動を減少させることがわかる。
【0111】
異なる化学的特性および静電的特性を剥離断片に与えるために、HFBIの2つの異なる改変体を用いた。これらは(NCysHFBI)二量体およびHFBI-ZEであった。前者は2つのHFBIドメインを表面で結合させる反応性S-S基を有し、後者は相補性ペプチドZRを認識し結合するペプチド断片を有する(更なる情報のために参照:Zhang K, Diehl MR & Tirrell DA (2005) Artificial polypeptide scaffold for protein immobilization. J Am Chem Soc 127: 10136-10137)。グラフェン表面に吸着したタンパク質層の機能を明らかにするために、(NCysHFBI)によって剥離した断片は、メルカプトコハク酸(MSA)で被覆した3nm金ナノ粒子で標識した(更なる情報のために参照:Chen S & Kimura K (1999) Synthesis and characterization of carboxylate-modif ed gold nanoparticle powders dispersible in water. Langmuir 15: 1075-1082)。HFBI-ZEによって剥離した断片は、ZRペプチドで被覆した15nm金ナノ粒子で標識した。MSAナノ粒子は、加えたジスルフィド基とある程度の静電相互作用を介してNCysHFBIに結合する。ペプチドZRおよびペプチドZEの結合は疎水性相互作用によるが、ペプチド間で強い静電相互作用があるので、pHを低い値に調整してこれを阻害することができる。
【0112】
グラフェンシートの標識付けは、興味のあるナノ粒子での剥離グラフェンの分散を組み合わせることによって行った。ナノ粒子溶液のpHは溶液を組み合わせる前に所望の値に調整した。ナノ粒子およびグラフェンは、TEM画像のサンプルを取る少なくとも2時間前に相互に作用させた。
【0113】
改変タンパク質(NCys-HFBI)と3nm金ナノ粒子とを用いる機能化タンパク質被覆グラフェン断片を、図17aおよび17bに示す。図中、表面に結合した金ナノ粒子を表すことにより、剥離し標識した断片の詳細を見ることができる。図17cは、疎水性ポリマー表面上のNCysHBIの標識された単層を示す対照実験である。
【0114】
図17aおよび17bは(NCysHFBI)ナノ粒子層で被覆されたグラフェン断片の詳細を表す。ナノ粒子は、グラフェン断片上で非常に選択的に結合する単層を形成し、ナノ粒子表面被覆は断片ごとに様々である。これは、グラフェン表面上の不十分なタンパク質層を意味しうる。比較として、ナノ粒子の完全な表面被覆を有するNCysHFBI単層の画像を、図17cに示す。HFBI-ZE被覆グラフェンシートは、ZE機能化ナノ粒子と、pH3および5で反応させた(図18)。ナノ粒子は、ペプチドが相互に反発するpH3では断片に結合しないため、異なるpHにおけるZEとZRとの相互作用の違いは明らかに現れていた。一方、pH5では、グラフェン断片はナノ粒子で明白に標識されなかった。この実施例は、グラフェン断片がハイドロフォビン融合で機能化させることができたこと、および、タンパク質膜はその機能性を保持したことを明らかに表している。図18は、HFBIとHFBI-ZEの混合によってKishグラファイトから剥離し、ZR機能化Auナノ粒子により標識したグラフェン/グラファイトシートを示し、それぞれ、pH3(静電反発力)(図18a)およびpH5(静電引力)(図18b)である。
【0115】
(更なる実施例)
酸化還元酵素/ハイロドロフォビン融合タンパク質(ラッカーゼおよびグルコース酸化酵素)を調製したところ、それは疎水性表面に接着することができ、特異的な基板と選択的に反応する。グルコース酸化酵素は糖尿病の診断および治療への応用において特に興味深い。これらのタンパク質は上記実施形態においても使用できる。
【0116】
従って、上述の実施形態および実施例は顕著な利益を提供する。例えば、グラフェン剥離の迅速な1ステップ法を構築することができる。さらに、実施形態によれば、強い化学材料または高温を必要としないため、安全な方法を提供することができる。実施形態は、有害なナノ粉末も必要ではないため、溶液分散中の材料を安全かつ容易に取り扱うことができる。電子構造および特徴を妨げることなく、グラフェンを機能化させることができる実施形態もある。かような実施形態で、幅広い種類の機能性が得られる。さらに、生体分子認識およびシリコン技術を組合せることができる実施形態がある。また、生物的材料と電気的材料との界面を作製することができ、いくつかの実施形態により、所望の場所でタンパク質を自己集合させることにより用いられるデバイスを得ることもできる。
【0117】
上記の記載は発明を例示するのみであり、請求項に規定する保護範囲を制限するものではない。請求項はこれらの均等物を含むものであり、文字通りに解釈するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物的材料および電気的材料並びに該生物的材料と該電子的材料との界面を含む電子デバイスの製造方法であって、
該電子デバイスを製造する際、所望の位置でタンパク質の自己組織化を利用することを特徴とする、電子デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記電子的材料がシリコン技術によって調製され、前記タンパク質は生体分子の認識に利用される、請求項1に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記生物的材料はHFBIの単層膜を含み、該単層膜はエレクトロニクスで使用する従来材料と界面で結合する、請求項1に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記所望の位置は、前記電子デバイスの一部を形成し、疎水性の表面を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記電子デバイスは、基板と、疎水性領域および非疎水性領域を有する前記基板の表面と、を含み、前記疎水性領域が前記所望の位置を形成し、前記タンパク質が前記所望の位置で選択的に自己組織化する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記電子デバイスは、基板と、疎水性領域および親水性領域を有する前記基板の表面と、を含み、前記疎水性領域が前記所望の位置を形成し、前記タンパク質が前記所望の位置で選択的に自己組織化する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記タンパク質は前記所望の位置で層を形成する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記タンパク質は前記所望の位置で単層を形成する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項9】
タンパク質の前記層が前記電子デバイスに機能的誘電体として含まれる、請求項7に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項10】
タンパク質の前記単層が前記電子デバイスに機能的誘電体として含まれる、請求項8に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項11】
前記タンパク質は両親媒性タンパク質を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項12】
前記タンパク質はハイドロフォビンを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項13】
前記タンパク質が融合タンパク質を含み、該融合たんぱく質は少なくとも2つの機能部位を含み、該機能部位の少なくとも1つはハイドロフォビンによって形成される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項14】
前記ハイドロフォビンはクラスIIハイドロフォビンである、請求項12または13に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項15】
前記ハイドロフォビンはTrichoderma reesei由来である、請求項12〜14のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項16】
前記タンパク質は、HFBI、融合タンパク質NCysHFBIおよび融合タンパク質HFBI−ZEの少なくとも1つを含む、請求項12〜15のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項17】
前記利用は、前記タンパク質を含む溶液中に前記表面を浸す工程を含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項18】
前記利用は、
前記電子デバイスの外側の前記所望の位置で前記タンパク質の層を形成する工程と、
形成した前記タンパク質の層を前記電子デバイスの表面と接触させて、前記電子デバイスの前記表面上に前記タンパク質の層を接着する工程と、
を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項19】
構造部としてタンパク質層を含み、前記タンパク質層がハイドロフォビンタンパク質を含むことを特徴とする、電子デバイス。
【請求項20】
前記タンパク質層が前記電子デバイスで誘電体層を形成する、請求項19に記載の電子デバイス。
【請求項21】
前記電子デバイスがゲート誘電体を含む電界効果トランジスタであって、前記タンパク質層が前記ゲート誘電体の少なくとも一部を形成する、請求項19に記載の電子デバイス。
【請求項22】
前記タンパク質層に隣接した伝導チャネルを含み、前記タンパク質層が前記チャネルの伝導性を制御する機能化層である、請求項19〜21のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項23】
疎水性表面を含む構造部を有し、前記タンパク質層を前記疎水性表面上に配置する、請求項19〜22のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項24】
前記疎水性表面を含む構造部は、グラフェン、シリコンまたはポリスチレンからなる、請求項23に記載の電子デバイス。
【請求項25】
前記タンパク質層が融合タンパク質を含む、請求項19〜24のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項26】
前記融合タンパク質が第1機能部位および少なくとも1つの第2機能部位を含み、前記第1機能部位がハイドロフォビンによって形成される、請求項25に記載の電子デバイス。
【請求項27】
前記タンパク質層がクラスIIハイドロフォビンを含む、請求項19〜26のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項28】
前記タンパク質層はTrichoderma reesei由来のハイドロフォビンを含む、請求項19〜27のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項29】
前記タンパク質層はHFBIおよび融合タンパク質NCysHFBIの少なくとも1つを含む、請求項19〜29のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項30】
前記タンパク質層はタンパク質の秩序性ネットワークによって形成される、請求項19〜29のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項31】
前記タンパク質層は金属ナノ粒子、半導体ナノ粒子および/または発色団などのナノ粒子を含む、請求項19〜30のいずれか1項に記載の電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2012−518915(P2012−518915A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551508(P2011−551508)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050143
【国際公開番号】WO2010/097518
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(511215207)テクノロジアン テュトキムスケスクス ヴェーテーテー (11)
【氏名又は名称原語表記】Teknologian tutkimuskeskus VTT
【Fターム(参考)】