説明

ターボチャージャーの可変ノズル制御装置

【課題】モータの出力軸が機械的ストッパに突き当てられモータの動作が停止したことを速やかに判定する。
【解決手段】可変ノズルを持つターボチャージャーを備えたエンジンの駆動を制御するエンジン制御装置からの制御信号に基づいてモータの回転軸の回転角度を制御することによりターボチャージャーが備える可変ノズルのベーンの開度を制御する電子制御アクチュエータを備えたターボチャージャーの可変ノズル制御装置であって、回転軸の回転角度を検出する角度センサと、所定時間後に、一定速度で回転しているモータの回転軸の回転角度が到達しているべき回転角度を算出する到達予定位置演算手段と、所定時間後に、角度センサの出力値と、到達予定位置演算手段により算出した到達しているべき回転角度の値を比較して、一致していなければ、回転軸が機械的ストッパに突き当たり停止していると判定する判定手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載されたターボチャージャーの可変ノズルのベーンの開度をエンジン制御装置からの制御信号によって、電子制御アクチュエータで制御するターボチャージャーの可変ノズル制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術に於ける一例としては特許文献1に開示された内燃機関の可変ノズルターボチャージャー制御装置が知られている。図5は、従来技術による可変ノズルターボチャージャー制御装置の構成を示す図である。図5において、1はターボチャージャーであって、センターハウジング、コンプレッサハウジング及びタービンハウジングを備えている。ターボチャージャー1には、空気が導入される吸気入口1aと、ターボチャージャー1によって圧縮された空気をエンジン2に供給する圧縮空気供給孔1bとが設けられ、更に、エンジン2から排気が供給される排気ガス吸入口1cと、排気ガスを排出する排出口1dとが設けられている。ターボチャージャー1内に備えられた可変ノズル(図示せず)は、センターハウジングとタービンハウジングとの間に配設されている。
【0003】
3はステッピングモータであり、このステッピングモータ3の駆動により操作片4が操作され、可変ノズルに備えたリングプレートを同方向に押圧し、相互の可変ノズルのベーン間の隙間の大きさを調整し、タービンホイールへ吹き付けられる排気ガスの流速が調節される。5はエンジンのECU(電子制御ユニット)であり、エンジンに設けられた各種のセンサの検出出力を入力し、これらの検出出力に基づいて、エンジンの運転状態を識別してステッピングモータ3を駆動制御し、これによって、可変ノズルの各ノズルのベーンの開度を開閉制御し、タービンホイールへ吹き付けられる排気ガスの流速を調節し、併せて、燃焼のために強制的に送り込まれる空気の量も調整される。6はラジエターであり、エンジン2に接続され、エンジン2の冷却水が該ラジエター6を循環して冷却される。
【0004】
この従来技術によれば、内燃機関の可変ノズルターボチャージャー制御装置の異常発生時又は冷間始動時、若しくはアイドル時には、可変ノズルの全開位置を可変ノズルの初期位置として設定することにより全開位置近傍での各ノズルベーンの位置制御を行なうことができる。
【0005】
また、ターボチャージャーの可変ノズル制御装置おいて、可変ノズルのベーンの通常作動領域以外の作動角範囲にあるノズルリング表面には煤が固着又は滞留することがあり、この煤を除去するため、イグニションスイッチのオフによるエンジンの停止に基づくエンジンECUからのステータス指示情報により当該可変ノズルのベーンの全作動領域に於いて全閉位置を少なくとも1回経由して全開位置までベーンを動作させて、いわゆる煤ばらいを実行することができる可変ノズル制御装置も知られている。(例えば、特許文献2参照)。この煤ばらいを行う動作をワイピング動作という。ワイピング動作は、イグニッションキーがOFFになると、エンジンECUからワイピング指令が出力される。これを受けて、可変ノズルのベーンが全閉側の機械的ストッパに突き当たるまで動作させ、その後、全開側の機械的ストッパに突き当たるまで動作させて止まる。このワイピング動作が終了すると、電源OFF許可信号が出力されて可変ノズル制御装置の電源がOFFになる。この動作によって、エンジンの停止後に煤ばらいを実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−107738号公報
【特許文献2】特開2004−293537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に示すターボチャージャーの可変ノズル制御装置にあっては、出力軸が機械的ストッパに突き当てられ、モータがロックした(回転しようとしているが、回転できない状態)ことを検知する方法としては、モータ回転数が「0」になったところでロックと判定していた。パルス波形等の間欠的な信号入力を行うことによりモータ回転数を検出する場合、このような判定方法では、回転数が低いほど信号入力頻度が少なくなるため、モータ回転数が「0」の状態になったことを確定するためには、誤検知を防ぐためのフィルタ時間等を考慮すると実際にモータ回転数が「0」に到達してから一定時間の判定時間が必要となる。この判定時間内は、まだモータが回転していると認識するため、モータ駆動電流が供給し続けられることになり、モータ本体、モータ駆動回路及び回転軸を減速するギア等に悪影響を与える恐れがあるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、モータの出力軸が機械的ストッパに突き当てられモータの動作が停止したことを速やかに判定することができるターボチャージャーの可変ノズル制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、可変ノズルを持つターボチャージャーを備えたエンジンの駆動を制御するエンジン制御装置からの制御信号に基づいてモータの回転軸の回転角度を制御することにより前記ターボチャージャーが備える可変ノズルのベーンの開度を制御する電子制御アクチュエータを備えたターボチャージャーの可変ノズル制御装置であって、前記回転軸の回転角度を検出する角度センサと、所定時間後に、一定速度で回転している前記モータの回転軸の回転角度が到達しているべき回転角度を算出する到達予定位置演算手段と、所定時間後に、前記角度センサの出力値と、前記到達予定位置演算手段により算出した前記到達しているべき回転角度の値を比較して、一致していなければ、前記回転軸が機械的ストッパに突き当たり停止していると判定する判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明は、前記判定手段により、前記回転軸が機械的ストッパに突き当たり停止していると判定された場合に、前記モータの駆動を停止することを特徴とする。
【0011】
本発明は、可変ノズルを持つターボチャージャーを備えたエンジンの駆動を制御するエンジン制御装置からの制御信号に基づいてモータの回転軸の回転角度を制御することにより前記ターボチャージャーが備える可変ノズルのベーンの開度を制御するために、前記回転軸の回転角度を検出する角度センサを有する電子制御アクチュエータを備えたターボチャージャーの可変ノズル制御装置上で動作する可変ノズル制御プログラムであって、所定時間後に、一定速度で回転している前記モータの回転軸の回転角度が到達しているべき回転角度を算出する到達予定位置演算ステップと、所定時間後に、前記角度センサの出力値と、前記到達予定位置演算ステップにより算出した前記到達しているべき回転角度の値を比較して、一致していなければ、前記回転軸が機械的ストッパに突き当たり停止していると判定する判定ステップとをコンピュータに行わせることを特徴とする。
【0012】
本発明は、前記判定ステップにより、前記回転軸が機械的ストッパに突き当たり停止していると判定された場合に、前記モータの駆動を停止させるステップをさらにコンピュータに行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、所定時間後の到達予定位置に対して現在の位置が到達しているか否かを判定することにより、モータの出力軸が機械的ストッパに突き当てられモータの動作が停止したことを速やかに判定することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示す構成図である。
【図2】図1に示す電子制御アクチュエータ13の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示すマイコン130の処理動作を示すフローチャートである。
【図4】モータの出力軸が機械的ストッパに突き当てられたか否かを判定するタイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】ターボチャージャーの可変ノズル制御装置の従来例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態によるターボチャージャーの可変ノズル制御装置を説明する。図1は同実施形態の構成を示す構成図である。この図において、8はターボチャージャーであって、エンジンへの吸入空気を過給するシステムであり、コンプレッサホイールを有するコンプレッサ及び該コンプレッサと同軸上にロータシャフトにより結合されて、排気ガスにて回転駆動される該ターボチャージャー8のタービンホイールを有するタービンが設けられている。該ターボチャージャー8の空気通路7にはエンジンの吸入空気の吸気圧力、つまり、ブースト圧を検出する圧力センサ9をホース10を介して接続している。また、ターボチャージャー8のタービン内には、タービンホイールを取巻くように、可変ノズル部材が配置されている。可変ノズル部材には、ノズル内を流れる流体の流量を制御するために、開閉するベーンが備えられている。可変ノズル制御装置は、このベーンの開閉を制御するものである。
【0016】
11はエンジンECUであって、エンジンに設けられた各種センサ、例えばエンジン水温を検出するための水温センサ、エンジンの回転数を検出するためのものであって、一定のクランク角度毎にパルス信号を出力する回転数センサ、エアフローメーターによる吸入空気量やドライバーのアクセルペダルの踏込み操作量を検出して負荷量を算出するアクセルセンサから、それぞれ水温信号、回転信号及び負荷信号の検出出力を導入する。なお、図1には示していないが、その他、排気ガスの酸素濃度に応じて異なる電圧信号を出力する酸素センサ、エンジン燃焼室内の圧力を検出するための筒内圧センサを備えることもある。
【0017】
電子制御アクチュエータ13は、制御信号線を介してエンジンECU11に接続されている。エンジンECU11は、検出出力に基づいてエンジンの運転状態を識別して、制御信号線を介して、電子制御アクチュエータ13を駆動制御する。電子制御アクチュエータ13は、レバー19及びロッド20を連結しており、その動作により、ターボチャージャー8に備えたベーンの開閉を制御するために、各ベーンに連結されたベーン操作片21の動作を制御する。
【0018】
なお、電子制御アクチュエータ13は、例えば、ターボチャージャー8に取付けられる。また、電子制御アクチュエータ13の構成を図1、図2を参照して説明するに際して、電子制御アクチュエータ13が普通に有する公知の機能・構成については、本発明の説明に直接関わりがない限り、その説明及び構成の図示を省略する。
【0019】
次に、図2を参照して、図1に示す電子制御アクチュエータ13の詳細な構成を説明する。図2は、図1に示す電子制御アクチュエータ13の詳細な構成を示すブロック図である。図2において、130は、電子制御アクチュエータ13の動作を統括して制御するマイクロコンピュータ(以下、マイコンという)である。14は、マイコン130から出力する駆動信号に基づいて、ステッピングモータ(以下、モータという)15を駆動するモータドライバである。モータ15は、モータドライバ14から出力する信号に基づいて回転角度が制御されるステッピングモータである。16は、モータ15の回転軸に接続され、モータの回転軸を減速するギヤである。17は、ギヤ16によって減速された出力軸である。18は、出力軸17の回転角度を検出して出力する角度センサである。角度センサ18の出力は、マイコン130へ入力する。
【0020】
131は、エンジンECU11から出力されるベーンの目標位置(開度)信号を入力し、この目標位置信号をマイコン130内で扱う角度信号に変換して出力する角度信号変換部である。132は、角度信号変換部131が出力する目標位置の角度信号と、角度センサ18が出力する角度信号(現在のベーンの角度(開度))とを比較して、比較結果信号を出力する角度信号比較部である。133は、角度信号比較部132が出力する比較結果信号を入力して、モータに与えるべき信号のデューティ比を演算によって求めて出力するモータ駆動Duty演算部である。134は、モータ駆動Duty演算部133が出力するデューティ比の信号を入力して、モータに与えるべきロジック信号を求めて出力するモータ駆動ロジック生成部である。135は、角度センサ18が出力する角度信号をエンジンECU11へ送信するための通信信号に変換して出力する通信信号変換部である。通信信号変換部135が出力する角度の情報が現在のベーンの実位置情報となる。
【0021】
136は、角度センサ18の出力値を読み込み、所定時間(例えば、10ms)の制御周期後に出力軸が到達しているべき回転角度を、現在の回転角度(読み込んだ角度センサ18の出力値)と、既知であるモータの回転速度と、制御周期とから演算によって求める到達予定位置演算部である。137は、制御周期の時間だけ遅らせて、次回の制御タイミング(制御周期後)と同時刻に到達予定位置演算部136が求めた出力軸が到達しているべき回転角度値の出力を行う遅延処理部である。138は、制御周期毎に角度センサ18の出力値と、遅延処理部137から出力される出力軸が到達しているべき回転角度値とを読み込み、一致しているか否かを判定し、この判定結果に基づいて、モータ駆動Duty演算部133に対して、モータ15への通電を停止するように指示を出す停止判定部である。
【0022】
次に、図2を参照して、図2に示す電子制御アクチュエータ13の基本動作を説明する。エンジンECU11から目標位置信号が出力されると、角度信号変換部131は、目標位置信号をマイコン130内で扱う角度信号に変換して出力する。角度信号比較部132は、角度信号変換部131が出力する目標位置の角度信号と、角度センサ18が出力する角度信号(現在のベーンの角度)とを比較して、現在のベーンの角度を目標位置にするべくモータ駆動のデューティを演算によって求めて出力する。これを受けて、モータ駆動ロジック生成部134は、モータ駆動Duty演算部133が出力するデューティの信号を入力して、モータドライバ14に与えるべきロジック信号(モータ駆動信号)を求めて出力する。
【0023】
モータドライバ14は、モータ駆動ロジック生成部134から出力されるモータ駆動信号に基づいてモータ15を駆動する。モータの回転軸は、ギヤ16によって減速されて、出力軸17に伝達する。出力軸17の回転運動は、レバー19、ロッド20を介して、ベーン操作片21へ伝達する。ベーン操作片21が、出力軸17と連動して動作することにより、ノズルベーンの開閉制御動作が行われることになる。一方、角度センサ18が検出した出力軸17の回転角度の情報は、通信信号変換部135を経由して、エンジンECU11へ通知される。エンジンECU11は、この出力軸の回転角度(ノズルベーンの開度)情報を参照して、ターボチャージャー8の動作の制御を行う。
【0024】
このように、角度センサ18により可変ノズルのベーンに連結された出力軸17の回転角度を検出して出力軸17の実角度信号を出力し、角度信号変換部131によりエンジンECU11からの可変ノズルのベーンの開度指示(目標位置信号)を出力軸17の目標角度信号に変換し、この両信号を比較して該両信号の差に応じて、出力軸17の回転角度を制御することにより、可変ノズルのベーンが目標位置になるように制御されることになる。
【0025】
次に、図3を参照して、図2に示すマイコン130がワイピングを含む初期化動作を実施する制御動作を説明する。図3は、図2に示すマイコン130が初期化動作を実施する制御動作を示すフローチャートである。まず、ワイピングを含む初期化動作実施の指令を受けると、モータ駆動Duty演算部133は、一定のモータ駆動Duty値をモータ駆動ロジック生成部134へ出力する(ステップS1)。モータ駆動ロジック生成部134は、モータ駆動Duty演算部133が出力するデューティの信号を入力して、モータドライバ14に与えるべきロジック信号(モータ駆動信号)を求めて出力する。モータドライバ14は、モータ駆動ロジック生成部134から出力されるモータ駆動信号に基づいてモータ15を駆動する。これにより、出力軸17が一方向へ一定速度で回転する。
【0026】
この処理動作と並行して、到達予定位置演算部136は、角度センサ18の出力値を読み取ることにより、現在の出力軸17の回転角度を特定する(ステップS2)。続いて、到達予定位置演算部136は、既知であるモータの一定回転速度に制御周期の時間を乗算して、制御周期後に出力軸が到達しているべき相対回転角度値を演算によって算出し、この相対回転角度値と現在の回転角度値とを加算することにより、制御周期後に出力軸が到達しているべき絶対回転角度値を求める(ステップS3)。そして、到達予定位置演算部136は、求めた絶対回転角度値(出力軸位置)を遅延処理部137へ出力する。遅延処理部137は、制御周期の時間だけ遅らせて、停止判定部138が行う判定処理のタイミング(制御周期後)と同時刻に到達予定位置演算部136が求めた絶対回転角度値の出力を行う。
【0027】
一方、停止判定部138は、判定処理のタイミングで角度センサ18の出力値を読み取るともに、遅延処理部137から出力する絶対回転角度値を読み取る。そして、停止判定部138は、角度センサ18の出力値(現在の出力軸17の回転角度)と、読み込んだ絶対回転角度値(到達予定の回転角度)とが一致するか否かを判定する(ステップS4)。この判定の結果、一致していれば、出力軸17は回転動作中であり、可変ノズルのベーンが全閉側または全開側の機械的ストッパに突き当たっていないと見なして、ステップS1に戻り、出力軸17が一方向へ一定速度で回転するように制御する。
【0028】
ステップS4の判定の結果、角度センサ18の出力値(現在の出力軸17の回転角度)と、読み込んだ絶対回転角度値(到達予定の回転角度)とが一致していなければ、停止判定部138は、可変ノズルのベーンが全閉側または全開側の機械的ストッパに突き当たって出力軸17が停止したと見なして、出力軸17が停止したことを示す情報をモータ駆動Duty演算部133へ出力する。これを受けて、モータ駆動Duty演算部133は、出力するDuty値を0として出力する(ステップS5)。これにより、モータ15に対する通電が停止することになる。そして、停止判定部138は、この時点で読み込んだ角度センサ18の出力値を機械的ストッパ位置であると判定する(ステップS6)。この後、例えば、モータ15の回転を逆回転に設定し、他方の機械的ストッパに突き当たるまで出力軸17の回転制御を行う。
【0029】
次に、図4を参照して、図3に示す動作のタイミングを説明する。図4は、モータの出力軸が機械的ストッパに突き当てられたか否かを判定するタイミングを示すタイミングチャートである。図4において、実線で示すように、出力軸の回転角度(位置データ)が徐々に小さい値(例えば、回転角度が0度に近づいている)になり、所定の回転角度で可変ノズルのベーンが全閉側の機械的ストッパに突き当たると、出力軸の回転角度は一定の値になる。実線は、角度センサ18の出力値に相当する。一方、機械的なストッパがなければ、破線で示すように、回転角度はさらに小さい値へ変化していく。破線は、到達予定位置演算部136が求めた絶対回転角度値に相当する。到達しているべき回転角度(破線)の値が角度センサ18から出力されるべきなのに、角度センサ18から出力された回転角度の値(実線)が異なるときに、ノズルのベーンが全閉側の機械的ストッパに突き当たったと判定する。これにより、モータ15に対する通電が停止するため、モータが回転していると認識してモータ駆動電流が供給し続けられることを防止することができる。特に、制御周期毎にこの判定を行うことにより、速やかにノズルのベーンが全閉側の機械的ストッパに突き当たったことを判定することが可能となるため、モータ15に対する通電も機械的ストッパに突き当たった後に速やかに通電を停止することが可能となる。
【0030】
なお、前述した説明においては、判定動作を初期化動作中に行う例を説明したが、前述の判定動作は、可変ノズル制御装置の電源が「入」になった時点から電源が「切」になるまでの間のどのタイミングで行うようにしてもよい。例えば、ノズルベーンの開閉動作中に機械的ストッパに突き当たったと判定された場合は、速やかにモータ15に対する通電を停止するようにしてもよい。
【0031】
このように、モータの出力軸が機械的ストッパに突き当てられモータの動作が停止したことを速やかに判定することができる判定する方法として、到達予定位置に対して現在の位置が到達しているか否かで判定するようにしたため、モータの出力軸が機械的ストッパに突き当てられモータの動作が停止したことを速やかに判定することができる。また、この判定結果に基づいて、モータに対する通電を停止するようにしたため、機械的ストッパに突き当て後、速やかにモータに対する通電を停止することができ、機械的ストッパに突き当たっているにもかかわらず、モータ駆動電流が供給し続けられることを防止することができる。
【0032】
なお、図2に示すマイコン130の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより可変ノズル制御処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0033】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
11・・・エンジンECU、13・・・電子制御アクチュエータ、130・・・マイクロコンピュータ(マイコン)、131・・・角度信号変換部、132・・・角度信号比較部、133・・・モータ駆動Duty演算部、134・・・モータ駆動ロジック生成部、135・・・通信信号変換部、136・・・到達予定位置演算部、137・・・遅延処理部、138・・・停止判定部、14・・・モータドライバ、15・・・モータ、16・・・ギヤ、17・・・出力軸、18・・・角度センサ、19・・・レバー、20・・・ロッド、21・・・ベーン操作片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変ノズルを持つターボチャージャーを備えたエンジンの駆動を制御するエンジン制御装置からの制御信号に基づいてモータの回転軸の回転角度を制御することにより前記ターボチャージャーが備える可変ノズルのベーンの開度を制御する電子制御アクチュエータを備えたターボチャージャーの可変ノズル制御装置であって、
前記回転軸の回転角度を検出する角度センサと、
所定時間後に、一定速度で回転している前記モータの回転軸の回転角度が到達しているべき回転角度を算出する到達予定位置演算手段と、
所定時間後に、前記角度センサの出力値と、前記到達予定位置演算手段により算出した前記到達しているべき回転角度の値を比較して、一致していなければ、前記回転軸が機械的ストッパに突き当たり停止していると判定する判定手段と
を備えたことを特徴とするターボチャージャーの可変ノズル制御装置。
【請求項2】
前記判定手段により、前記回転軸が機械的ストッパに突き当たり停止していると判定された場合に、前記モータの駆動を停止することを特徴とする請求項1に記載のターボチャージャーの可変ノズル制御装置。
【請求項3】
可変ノズルを持つターボチャージャーを備えたエンジンの駆動を制御するエンジン制御装置からの制御信号に基づいてモータの回転軸の回転角度を制御することにより前記ターボチャージャーが備える可変ノズルのベーンの開度を制御するために、前記回転軸の回転角度を検出する角度センサを有する電子制御アクチュエータを備えたターボチャージャーの可変ノズル制御装置上で動作する可変ノズル制御プログラムであって、
所定時間後に、一定速度で回転している前記モータの回転軸の回転角度が到達しているべき回転角度を算出する到達予定位置演算ステップと、
所定時間後に、前記角度センサの出力値と、前記到達予定位置演算ステップにより算出した前記到達しているべき回転角度の値を比較して、一致していなければ、前記回転軸が機械的ストッパに突き当たり停止していると判定する判定ステップと
をコンピュータに行わせることを特徴とする可変ノズル制御プログラム。
【請求項4】
前記判定ステップにより、前記回転軸が機械的ストッパに突き当たり停止していると判定された場合に、前記モータの駆動を停止させるステップをさらにコンピュータに行わせることを特徴とする請求項3に記載の可変ノズル制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−223200(P2010−223200A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74683(P2009−74683)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】