説明

テストパターンの印刷方法、補正値の取得方法、補正値の取得装置

【課題】単色にて印刷されたテストパターンに歪みが生じた場合の、印刷画像の濃度ムラを抑制する効果への影響を低減する。
【解決手段】第一インクを吐出するための第一ノズルから、ある色のインクを吐出させて、媒体上に第一サブパターンを印刷するステップと、前記第一インクよりも淡い第二インクを吐出するための第二ノズルから、前記ある色のインクを吐出させて、媒体上の、前記第一サブパターンの形成位置よりも中央側に、第二サブパターンを印刷するステップと、を有するテストパターンの印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テストパターンの印刷方法、補正値の取得方法、及び、補正値の取得装置に関する。特に、ある色のインクを吐出させて印刷されたサブパターンを複数有するテストパターンの印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーインクジェットプリンタ等のように、複数色のインクを媒体に吐出して多色印刷が可能な印刷装置は既に知られている。このような印刷装置には、インクを吐出するためのノズルが、インク毎に設けられている。また、このような印刷装置の中には、同系統の色のインクであって、互いに濃淡が異なるインクを使用する装置もある。すなわち、この種の印刷装置においては、ある色の第一インクと、第一インクと同系統色であり、該第一インクより淡い第二インクとが吐出される。そして、第一インク及び第二インクを用いて、これらのインクの色に関する階調表現をより細かく設定することが可能となる。
【0003】
ところで、前記ノズルの加工精度のばらつき等が影響して、前記印刷装置が画像を印刷する際、吐出されたインク(より正確には、インク滴)の媒体上における着弾位置が、理想の着弾位置と相違することがある。この結果、印刷画像に縞状の濃度ムラが生じる。そこで、この濃度ムラを抑制するために、各ノズルから吐出されるインクに関して濃度補正(すなわち、インクの吐出量の調整)が行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平2−54676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この濃度補正を行うにあたって、当該濃度補正の対象装置となる印刷装置にて、テストパターンを媒体に印刷することが行われている。また、濃度補正は、前記印刷装置が使用するインク毎に行われる必要があるため、前記テストパターンは、印刷装置が使用する各インクに対応付けて印刷された領域(以下、サブパターンと言う)を備えていることが好ましい。本来、前記各サブパターンは、当該各サブパターンと対応した各インクを用いて印刷される。但し、前述したように、インク毎にノズルが設けられているため、前記サブパターンは、各ノズルと対応付けられて印刷される。すなわち、各サブパターンを印刷するためにインクを吐出するノズルは、サブパターン毎に決められる。この結果、各サブパターンは、当該各サブパターンに対応するインクを用いて印刷されるほか、同一のインクを用いて印刷されることもある(すなわち、テストパターンが単色印刷される)。かかる場合、各インクに関する濃度補正は、各インクに対応したノズルから吐出されるインクによって印刷されたサブパターンの濃度等に基づいて行われることとなる。
【0005】
一方、テストパターン印刷中、媒体が搬送方向に対して傾いて搬送される現象(所謂、スキュー)等が生じ、前記テストパターンが歪んで印刷されることがある。このテストパターンの歪みは、テストパターンが有する各サブパターンの歪みを意味する。また、サブパターンの歪みは、当該サブパターンと対応するインクに関して、濃度補正の精度を低下させる。さらに、画像印刷上、より重要なインクであるほど、そのインクに関する濃度補正が低下することにより、濃度ムラに対する抑制効果が損なわれることとなる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、単色にて印刷されたテストパターンの歪みが及ぼす、印刷画像の濃度ムラを抑制する効果への影響を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
主たる発明は、第一インクを吐出するための第一ノズルから、ある色のインクを吐出させて、媒体上に第一サブパターンを印刷するステップと、前記第一インクよりも淡い第二インクを吐出するための第二ノズルから前記ある色のインクを吐出させて、媒体上の、前記第一サブパターンの形成位置よりも中央側に、第二サブパターンを印刷するステップと、を有することを特徴とするテストパターンの印刷方法である。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
===開示の概要===
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
【0010】
第一インクを吐出するための第一ノズルから、ある色のインクを吐出させて、媒体上に第一サブパターンを印刷するステップと、前記第一インクよりも淡い第二インクを吐出するための第二ノズルから、前記ある色のインクを吐出させて、媒体上の、前記第一サブパターンの形成位置よりも中央側に、第二サブパターンを印刷するステップと、を有するテストパターンの印刷方法。
【0011】
同系統の色のインクである第一インクと第二インクとを使用する印刷装置においては、第一インクを吐出するための第一ノズルと、第二インクを吐出するための第二ノズルとが、それぞれ設けられている。一方、前記第二インクは前記第一インクよりも淡く、印刷画像の中間調部分を印刷する際に多用されるため、使用頻度も高く、画像印刷上、前記第一インクより重要なインクとなる傾向にある。このため、テストパターンを、あるインクを用いて単色印刷する場合には、前記第一ノズルから前記ある色のインクを吐出させて印刷される第一サブパターンより、前記第二ノズルから前記ある色のインクを吐出させて印刷される第二サブパターンの方が、より適切に印刷されなければならない。
【0012】
ここで、上記の印刷方法によりテストパターンを印刷すると、該テストパターンに歪みが生じた場合でも、前記第二サブパターンの歪み度合いは、前記第一サブパターンの歪み度合いより軽減されることになる。この結果、前記テストパターンの歪みに起因する、第二インクに関する濃度補正の精度の低下は抑制される。この結果、テストパターンの歪みが濃度ムラを抑制する効果に対して及ぼす影響を低減することが可能となる。
【0013】
また、前記第一サブパターンは、前記第一ノズルから前記ある色のインクを媒体に吐出させる動作と、前記媒体を搬送方向に搬送する動作とが複数回繰り返し行われることにより印刷され、前記第二サブパターンは、前記第二ノズルから前記ある色のインクを媒体に吐出させる動作と、前記媒体を搬送方向に搬送する動作とが複数回繰り返し行われることにより印刷されることとしてもよい。
このような処理動作によって画像を印刷する印刷装置では、前述したスキューが生じ、媒体の搬送量が制御上の搬送量と異なる場合がある。かかる場合には、テストパターンは歪んで印刷されるため、前記第一サブパターン及び前記第二サブパターンも歪んでしまう。また、前記印刷装置では、スキューの発生を完全に除去することは困難である。したがって、テストパターンの歪みが、濃度ムラを抑制する効果に対して及ぼす影響を低減する効果が、より有意義なものとなる。
【0014】
また、前記テストパターンは、前記第一サブパターンと前記第二サブパターンとを含んだ少なくとも2つのサブパターンから構成され、各前記サブパターンは、前記ある色のインクを用いて印刷され、かつ、前記搬送方向と交差する方向に並ぶこととしてもよい。
このようなテストパターンでは、当該テストパターンが歪んで印刷された場合、媒体の搬送方向と交差する方向において、端側に形成されるサブパターンであるほど、そのサブパターンの歪み度合いは大きくなる。逆に、中央側に形成されるサブパターンであるほど、そのサブパターンの歪み度合いは小さくなる。このため、第二サブパターンの歪み度合いが第一サブパターンの歪み度合いよりも小さくなるような形成位置に、前記第二サブパターンを印刷することが可能となる。
【0015】
また、前記第一ノズルと前記第二ノズルとを備え、テストパターン印刷時に前記搬送方向と交差する移動経路を移動する印刷ヘッドの、前記移動経路の中央部を移動するときの移動速度は、前記移動経路の端部を移動するときの移動速度より安定していることとしてもよい。
このような場合、移動方向において、印刷ヘッドの位置がより中央側にあるほど、前記印刷ヘッドからのインクの吐出が、より安定した状態で行われる。そして、第二ノズルから前記ある色のインクが吐出されるときの印刷ヘッドの位置は、前記移動方向において、第一ノズルから前記ある色のインクが吐出されるときの印刷ヘッドの位置よりも中央側にある。この結果、第二サブパターンは、第一サブパターンよりも安定して印刷されることとなる。
【0016】
また、シアンインクを吐出するためのシアンインクノズルと、ライトシアンインクを吐出するためのライトシアンインクノズルとを含む複数のノズルから、それぞれ、前記ある色のインクを吐出させて前記テストパターンを印刷するとき、前記シアンインクは第一インクに、前記ライトシアンインクは第二インクに属し、前記シアンインクノズルは第一ノズルに、前記ライトシアンインクノズルは第二ノズルに属することとしてもよい。
シアン系統のインクであって、互いに濃淡が異なる2種類のインクを用いて画像を印刷する印刷装置に関し、テストパターンの歪みが濃度ムラを抑制する効果に対して及ぼす影響を低減することが可能となる。
【0017】
また、マゼンタインクを吐出するためのマゼンタインクノズルと、ライトマゼンタインクを吐出するためのライトマゼンタインクノズルとを含む複数のノズルから、それぞれ、前記ある色のインクを吐出させて前記テストパターンを印刷するとき、前記マゼンタインクは第一インクに、前記ライトマゼンタインクは第二インクに属し、前記マゼンタインクノズルは第一ノズルに、前記ライトマゼンタインクノズルは第二ノズルに属することとしてもよい。
マゼンタ系統のインクであって、互いに濃淡が異なる2種類のインクを用いて画像を印刷する印刷装置に関し、テストパターンの歪みが濃度ムラを抑制する効果に対して及ぼす影響を低減することが可能となる。
【0018】
また、前記ある色のインクは、前記第二インクに属するインクであることとしてもよい。
第二インクは、前述したように、印刷画像の中間調部分を印刷するために多用されるインクであり、第一インクよりも吐出量が良好に制御される。この結果、テストパターン印刷時に、各サブパターンが適切に印刷されるため、各インクに関する濃度補正の精度が向上することとなる。
【0019】
また、第一インクを吐出するための第一ノズルから、ある色のインクを吐出させて、媒体上に第一サブパターンを印刷するステップと、前記第一インクよりも淡い第二インクを吐出するための第二ノズルから、前記ある色のインクを吐出させて、媒体上の、前記第一サブパターンの形成位置よりも中央側に、第二サブパターンを印刷するステップと、を有し、前記第一サブパターンは、前記第一ノズルから前記ある色のインクを媒体に吐出させる動作と、前記媒体を搬送方向に搬送する動作とが複数回繰り返し行われることにより印刷され、前記第二サブパターンは、前記第二ノズルから前記ある色のインクを媒体に吐出させる動作と、前記媒体を搬送方向に搬送する動作とが複数回繰り返し行われることにより印刷され、前記テストパターンは、前記第一サブパターンと前記第二サブパターンとを含んだ少なくとも2つのサブパターンから構成され、各前記サブパターンは、前記ある色のインクを用いて印刷され、かつ、前記搬送方向と交差する方向に並び、前記第一ノズルと前記第二ノズルとを備え、テストパターン印刷時に前記搬送方向と交差する移動経路を移動する印刷ヘッドの、前記移動経路の中央部を移動するときの移動速度は、前記移動経路の端部を移動するときの移動速度より安定しており、シアンインクを吐出するためのシアンインクノズルと、ライトシアンインクを吐出するためのライトシアンインクノズルとを含む複数のノズルから、それぞれ、前記ある色のインクを吐出させて前記テストパターンを印刷するとき、前記シアンインクは第一インクに、前記ライトシアンインクは第二インクに属し、前記シアンインクノズルは第一ノズルに、前記ライトシアンインクノズルは第二ノズルに属し、マゼンタインクを吐出するためのマゼンタインクノズルと、ライトマゼンタインクを吐出するためのライトマゼンタインクノズルとを含む複数のノズルから、それぞれ、前記ある色のインクを吐出させて前記テストパターンを印刷するとき、前記マゼンタインクは第一インクに、前記ライトマゼンタインクは第二インクに属し、前記マゼンタインクノズルは第一ノズルに、前記ライトマゼンタインクノズルは第二ノズルに属し、前記ある色のインクは、前記第二インクに属するインクであるテストパターンの印刷方法、も実現可能である。
このようなテストパターンの印刷方法によれば、既述のほぼ総ての効果を奏するため、本発明の目的が最も有効に達成される。
【0020】
また、第一インクを吐出するための第一ノズルから、あるインクを吐出させて媒体上に印刷された第一サブパターンと、前記第一インクよりも淡い第二インクを吐出するための第二ノズルから、前記あるインクを吐出させて、媒体上の、前記第一サブパターンの形成位置よりも中央側に印刷された第二サブパターンと、を含み、少なくとも2つのサブパターンから構成されるテストパターン、を印刷するステップと、該テストパターンを読み取り、各前記サブパターンの濃度を測定するステップと、各前記サブパターンの濃度の測定値に基づき、各前記サブパターンと対応付けられている各インクに関して、印刷濃度の補正値を算出するステップと、を有する補正値の取得方法、も実現可能である。
【0021】
また、第一インクを吐出するための第一ノズルと、該第一インクよりも淡い第二インクを吐出するための第二ノズルと、を備えた印刷装置であって、前記第一ノズルから、あるインクを吐出して媒体上に印刷される第一サブパターンと、前記第二ノズルから、前記あるインクを吐出して、媒体上の、前記第一サブパターンの形成位置よりも中央側に印刷される第二サブパターンと、を含み、少なくとも2つのサブパターンから構成されるテストパターン、を印刷するための印刷装置と、該テストパターンを読み取り、各前記サブパターンの濃度を測定するためのスキャナと、各前記サブパターンの濃度の測定値に基づき、各前記サブパターンと対応付けられている各インクに関して、濃度の補正値を算出するためのプログラム、を実行するためのコンピュータと、を有する補正値の取得装置、も実現可能である。
【0022】
===印刷システムの構成===
<印刷システムの概要>
図1は、印刷システム100の外観構成を示した説明図である。ここで、印刷システムとは、印刷装置と、この印刷装置の動作を制御する印刷制御装置とを少なくとも含むシステムのことである。本実施の形態に係る印刷システム100は、印刷装置の一例としてのカラーインクジェットプリンタ1(以下、単にプリンタ1)と、印刷制御装置としてのコンピュータ110と、表示装置120と、入力装置130と、記録再生装置140とを備えている。そして、プリンタ1は、複数色のインク(インクの種類等については後述する。)を吐出して用紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷することが可能である。なお、以下の説明では、代表的な媒体である用紙S(図3Aを参照)を例に挙げて説明する。
【0023】
コンピュータ110は、プリンタ1と通信可能に接続されている。そして、プリンタ1に画像を印刷させるため、コンピュータ110は、その画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。このコンピュータ110にはプリンタドライバがインストールされている。プリンタドライバは、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換する機能を実現させるためのプログラムであり、各種の機能を実現するためのコードから構成されている。
【0024】
<プリンタ>
(1)プリンタの概要
本実施の形態に係るプリンタ1は、6種類のインクを吐出して画像を印刷することが可能である。具体的に説明すると、プリンタ1は、シアンインク(C)、マゼンタインク(M)、イエローインク(Y)、及びブラックインク(K)の基本色インクとともに、ライトシアンインク(LC)及びライトマゼンタインク(LM)を用いて画像を印刷する。すなわち、本実施の形態に係るプリンタ1は、シアン系統の色とマゼンタ系統の色について、それぞれ、互いに濃淡が異なる第一インクと第二インクを使用している。そして、この2種類のインクのうち、より淡い第二インクは、画像の中間調部分を印刷するために多用されるインクである。そして、前記6種類のインク中、シアンインク(C)及びマゼンタインク(M)は第一インクに属し、ライトシアンインク(LC)及びライトマゼンタインク(LM)は第二インクに属している。
【0025】
(2)プリンタの構成例について
図2は、本実施形態のプリンタ1の全体構成のブロック図である。また、図3Aは、本実施形態のプリンタ1の全体構成の概略図である。また、図3Bは、本実施形態のプリンタ1の全体構成の横断面図である。以下、これらの図を参照して、本実施形態のプリンタ1の基本的な構成について説明する。
【0026】
プリンタ1は、図3A及び図3Bに示すように、搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40、センサ群50、及びコントローラ60を有する。外部装置であるコンピュータ110から印刷信号を受信したプリンタ1は、コントローラ60によって各ユニットを制御する。コントローラ60は、コンピュータ110から受信した印刷データに基づき、各ユニットを制御し、用紙Sに画像を印刷する。このとき、プリンタ1内の状況はセンサ群50の各センサにより監視されており、各センサは、検出結果をコントローラ60に出力する。各センサからの検出結果を受けたコントローラ60は、その検出結果に基づいて各ユニットを制御する。
【0027】
搬送ユニット20は、用紙Sを搬送方向(図3A参照)に搬送する機構である。この搬送ユニット20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された用紙Sをプリンタ1内に給紙するためのローラである。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって送られてきた用紙Sを、印刷可能な領域まで搬送するためのローラであり、搬送モータ22によって制御される。プラテン24は、印刷中の用紙Sを、この用紙Sの裏面側から支持する部材である。また、排紙ローラ25は、印刷が終了した用紙Sを搬送するためのローラであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。この排紙ローラ25は、搬送ローラ23と同期して回転する。
【0028】
キャリッジユニット30は、ヘッドユニット40が取り付けられたキャリッジ31を、移動方向(図3A参照。)に移動させる機構である。このキャリッジユニット30は、前記キャリッジ31、キャリッジモータ32、及びガイド軸33等を有する。
【0029】
キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持した状態で、移動方向に移動する。キャリッジモータ32は、キャリッジ31を移動させるための駆動源に相当し、コントローラ60によって、その動作が制御される。ガイド軸33は、キャリッジ31を移動可能な状態で支持する部材である。このため、ガイド軸33は移動方向に沿って取り付けられている。そして、前記キャリッジ31は、前記ガイド軸33における所定の経路(以下、キャリッジ移動経路という。)上を往復移動することとなる。なお、キャリッジ31がキャリッジ移動経路の端部を移動する間に、該キャリッジ31の移動速度(すなわち、キャリッジモータ32の回転速度)は増加(減少)する。他方、キャリッジ31がキャリッジ移動経路の中央部を移動する間には、前記移動速度はほぼ一定となる。
【0030】
ヘッドユニット40は、用紙Sにインクを吐出させるためのものである。ヘッドユニット40は、印刷ヘッドとしてのヘッド41を有する。このヘッド41は、各色のインクを断続的に吐出するために、複数のノズルを有している。また、前述したように、ヘッド41はキャリッジ31に設けられている。このため、キャリッジ31が移動方向に移動すると、ヘッド41も移動方向に移動する。より正確には、キャリッジ31はキャリッジ移動経路を往復移動するため、ヘッド41も所定の範囲(以下、ヘッド移動経路)を移動することとなる。そして、ヘッド41がヘッド移動経路上を移動している間に、インクが断続的に吐出されることにより、移動方向に沿ったラスタライン(ラスタラインの詳細については、後述する。)が用紙Sに形成される。
【0031】
また、当然ながら、ヘッド41の移動速度はキャリッジ31の移動速度と同一であるため、ヘッド41がヘッド移動経路の端部を移動しているとき、前記ヘッド41の移動速度は増加(減少)している。他方、ヘッド41がヘッド移動経路の中央部を移動するときにはほぼ一定となる。すなわち、ヘッド41がヘッド移動経路の中央部を移動しているときの移動速度は、ヘッド移動経路の端部を移動しているときの速度よりも安定している。ここで、ヘッド41の移動速度が安定しているとは、当該移動速度における単位時間当たりの変動が小さいことを意味する。なお、以下の説明において、ヘッド移動経路のうち、ヘッド41が一定の速度にて移動する領域を定速移動領域と、前記ヘッド41が加速(減速)しながら移動する領域を加減速移動領域と言う。
【0032】
図4は、ヘッド41の下面におけるノズルの配列を示す説明図である。ヘッド41の下面には、ブラックインクノズル列Nkと、マゼンタインクノズル列Nmと、ライトシアンインクノズル列Nlcと、ライトマゼンタインクノズル列Nlmと、シアンインクノズル列Ncと、イエローインクノズル列Nyとが形成されている。各ノズル列は、各色のインクを吐出するためのノズルを、n個(例えば、n=180)備えている。このように、ヘッド41は、プリンタ1が使用可能な各インクに対応したノズル(すなわち、ノズル列)を有する。なお、マゼンタインクノズル列Nm中の各マゼンタインクノズル、及び、シアンインクノズル列Nc中の各シアンインクノズルは、第一ノズルに属している。他方、ライトマゼンタインクノズル列Nlm中の各ライトマゼンタインクノズル、及び、ライトシアンインクノズル列Nlc中の各ライトシアンインクノズルは、第二ノズルに属している。
【0033】
各ノズル列のノズルは、搬送方向に沿って、一定の間隔(ノズルピッチ:k・D)で設けられている。ここで、Dは、搬送方向における最小のドットピッチ、つまり、用紙Sに形成されるドットの最高解像度での間隔である。また、kは、1以上の整数である。例えば、ノズルピッチが180dpi(1/180インチ)であって、搬送方向のドットピッチが720dpi(1/720インチ)である場合、k=4である。各ノズル列のノズルは、下流側のノズルほど若い番号が付されている(♯1〜♯180)。また、各ノズルには、それぞれインクチャンバ(不図示)とピエゾ素子(不図示)が設けられており、ピエゾ素子の駆動によってインクチャンバが伸縮・膨張されて、ノズルからインク滴が吐出される。
【0034】
図5は、ヘッド41の移動速度の変化とインクの吐出動作との関係を示す図である。ヘッド41からのインクの吐出動作は、図5に示すように、ヘッド41が前記定速移動領域を移動する期間、及び、前記加減速移動領域の一部を移動する期間に実行される。そして、ヘッド41が移動方向に移動する際、所定周期(ヘッド41が180dpiに相当する距離を移動する時間であって、図5中、記号Tにて示す)毎に、リニア式エンコーダ51からは、キャリッジ31の位置(すなわち、ヘッド41の位置)を示す信号が出力される。ここで、インクの吐出周期(より正確には、移動方向において、ヘッド41から所定回数分のインクを吐出するための周期)はエンコーダ出力の周期Tよりも短い。このため、エンコーダ出力は、コントローラ60にて逓倍され、インクの吐出タイミングを定めるためのタイミング信号として用いられる。このとき、コントローラ60は、前回の周期Tにおけるエンコーダ出力を逓倍して、今回の周期Tに対するタイミング信号を生成する。したがって、n番目の周期Tにおける吐出タイミングは、n−1番目の周期Tにおけるエンコーダ出力基づいて決定される。
【0035】
センサ群50は、プリンタ1の状況を監視するためのものである。このセンサ群50には、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、紙検出センサ53、及び光学センサ54等が含まれている。リニア式エンコーダ51は、キャリッジ31の移動方向における位置を検出するためのものである。また、前述したように、このリニア式エンコーダ51から発せされるエンコーダ出力に基づいて、インクの吐出タイミングが定められる。ロータリー式エンコーダ52は、搬送ローラ23の回転量を検出するためのものである。紙検出センサ53は、印刷される用紙Sの先端位置を検出するためのものである。光学センサ54は、キャリッジ31に取り付けられている。光学センサ54は、発光部から紙に照射された光の反射光を受光部が検出することにより、紙の有無を検出する。
【0036】
コントローラ60は、プリンタ1の制御を行うものである。このコントローラ60は、インターフェース61と、CPU62と、メモリ63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェース61は、外部装置であるコンピュータ110とプリンタ1との間に介在し、データの送受信を行う。CPU62は、プリンタ全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM、ROM等の記憶素子によって構成される。そして、CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従い、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0037】
(3)印刷動作について
図6は、印刷時の動作のフローチャートである。以下に説明される各動作は、コントローラ60が、メモリ63内に格納されたプログラムに従って、各ユニットを制御することにより実行される。このプログラムは、各動作を実行するためのコードを有する。
【0038】
印刷命令受信(S001):コントローラ60は、コンピュータ110からインターフェース61を介して、印刷命令を受信する。この印刷命令は、コンピュータ110から送信される印刷データのヘッダに含まれている。そして、コントローラ60は、受信した印刷データに含まれる各種コマンドの内容を解析し、各ユニットを制御して、以下の給紙動作、ドット形成動作、搬送動作、排紙処理等を行う。
【0039】
給紙動作(S002):次に、コントローラ60は、給紙動作を行う。給紙動作とは、印刷対象となる用紙Sを移動させ、印刷開始位置(所謂、頭出し位置)に位置決めする処理である。コントローラ60は、搬送ローラ23を回転させ、給紙ローラ21から送られてきた用紙Sを印刷開始位置に位置決めする。
【0040】
ドット形成動作(S003):次に、コントローラ60は、ドット形成動作を行う。ドット形成動作とは、移動方向に沿って移動するヘッド41に備えられた各ノズル列からインクを断続的に噴射させ、用紙Sにドットを形成する動作である。コントローラ60は、キャリッジモータ32を駆動し、キャリッジ31を移動方向に移動させる。また、コントローラ60は、キャリッジ31の移動中に、印刷データに含まれる画素データに基づいてヘッド41からインクを吐出させる。そして、ヘッド41から吐出されたインクが用紙S上に着弾すると、用紙S上にドットが形成される。そして、移動方向に移動するヘッド41から各色のインクが断続的に吐出されるので、用紙S上には移動方向に沿った複数のドットからなるドット列(すなわち、ラスタライン)が形成される。
【0041】
搬送動作(S004):次に、コントローラ60は、搬送動作を行う。搬送動作とは、ヘッド41に対して用紙Sを、搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。コントローラ60は、搬送ローラ23を回転させて用紙Sを搬送方向に搬送する。この搬送動作により、ヘッド41は、先程のドット形成動作によって形成されたドットの位置とは異なる位置に、次のドット形成動作時にドットを形成することが可能になる。そして、ドット形成動作と搬送動作とを複数回繰り返し行うことにより、前述したラスタラインが搬送方向に複数形成され、用紙Sに画像が印刷される。
【0042】
排紙判断(S005):次に、コントローラ60は、印刷中の用紙Sについて排紙の判断を行う。この判断時において、印刷中の用紙Sに印刷するためのデータが残っていれば、排紙は行われない。すなわち、ドット形成動作が行われる。そして、コントローラ60は、印刷するためのデータがなくなるまでドット形成動作と搬送動作とを交互に繰り返し、ドットから構成される画像を徐々に用紙Sに印刷する。
【0043】
排紙処理(S006):前述の排紙判断にて「排紙」と判断された場合、コントローラ60は、印刷が終了した用紙Sを排出する排紙処理を行う。この排紙処理において、コントローラ60は、排紙ローラ25を回転させることにより、印刷した用紙Sを外部に排出する。
【0044】
印刷終了判断(S007):次に、コントローラ60は、印刷を続行するか否かの判断を行う。次の用紙Sに印刷を行うのであれば、前述の給紙動作に戻って印刷を続行し、次の用紙Sの給紙動作を開始する。次の用紙Sに印刷を行わないのであれば、印刷動作を終了する。
【0045】
(4)ラスタラインの形成について
まず、通常印刷について説明する。本実施形態の通常印刷は、インターレース印刷と呼ばれる印刷方法により行われる。ここで、『インターレース印刷』とは、1回のパスで記録されるラスタライン間に、記録されないラスタラインが挟まれるような印刷を意味する。また、『パス』とはドット形成処理を指し、『パスn』とはn回目のドット形成処理を意味する。『ラスタライン』とは、移動方向に並ぶドットの列であり、ドットラインともいう。
【0046】
図7A及び図7Bは、通常印刷の説明図である。図7Aは、パスn〜パスn+3におけるヘッド41の位置とドットの形成の様子を示し、図7Bは、パスn〜パスn+4におけるヘッド41の位置とドットの形成の様子を示している。
【0047】
説明の便宜上、複数あるノズル列のうちの一つのノズル列のみを示し、ノズル列のノズル数も少なくしている。また、ヘッド41(又はノズル列)が紙に対して移動しているように描かれているが、同図はヘッド41と紙との相対的な位置を示すものであって、実際には紙が搬送方向に移動される。また、説明の都合上、各ノズルは数ドット(図中の丸印)しか形成していないように示されているが、実際には、移動方向に移動するノズルから間欠的にインク滴が吐出されるので、移動方向に多数のドットが並ぶことになる(このドットの列がラスタラインである)。もちろん、画素データに応じて、ドットが非形成のこともある。また、同図において、黒丸で示されたノズルはインクを吐出可能なノズルであり、白丸で示されたノズルはインクを吐出不可なノズルである。また、同図において、黒丸で示されたドットは、最後のパスで形成されるドットであり、白丸で示されたドットは、それ以前のパスで形成されたドットである。
【0048】
このインターレース印刷では、紙が搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで記録されたラスタラインのすぐ上のラスタラインを記録する。このように搬送量を一定にして記録を行うためには、(1)インクを吐出可能なノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあること、(2)搬送量FはN・Dに設定されること、が条件となる。ここでは、N=7、k=4、F=7・Dである(D=1/720インチ)。
但し、この通常印刷のみでは、搬送方向に連続してラスタラインを形成できない箇所がある。そこで、先端印刷及び後端印刷と呼ばれる印刷方法が、通常印刷の前後に行われる。
【0049】
図8は、先端印刷及び後端印刷の説明図である。最初の5回のパスが先端印刷であり、最後の5回のパスが後端印刷である。
【0050】
先端印刷では、印刷画像の先端付近を印刷する際に、通常印刷時の搬送量(7・D)よりも少ない搬送量(1・D又は2・D)にて、紙が搬送される。また、先端印刷では、インクを吐出するノズルが一定していない。後端印刷では、先端印刷と同じように、印刷画像の後端付近を印刷する際に、通常印刷時の搬送量(7・D)よりも少ない搬送量(1・D又は2・D)にて、紙が搬送される。また、後端印刷では、先端印刷と同じように、インクを吐出するノズルが一定していない。これにより、先頭ラスタラインから最終ラスタラインまでの間に、搬送方向に連続して並ぶ複数のラスタラインを形成することができる。
【0051】
通常印刷だけでラスタラインが形成される領域を「通常印刷領域」と呼ぶ。また、通常印刷領域よりも紙の先端側(搬送方向下流側)に位置する領域を「先端印刷領域」と呼ぶ。また、通常印刷領域よりも後端側(搬送方向上流側)に位置する領域を「後端印刷領域」と呼ぶ。先端印刷領域には、30本のラスタラインが形成される。同様に、後端印刷領域にも、30本のラスタラインが形成される。これに対し、通常印刷領域には、紙の大きさにもよるが、およそ数千本のラスタラインが形成される。
【0052】
通常印刷領域のラスタラインの並び方には、搬送量に相当する個数(ここでは7個)のラスタライン毎に、規則性がある。図8の通常印刷領域の最初から7番目までのラスタラインは、それぞれ、ノズル♯3、ノズル♯5、ノズル♯7、ノズル♯2、ノズル♯4、ノズル♯6、ノズル♯8、により形成され、次の8番目以降の7本のラスタラインも、これと同じ順序の各ノズルで形成されている。一方、先端印刷領域及び後端印刷領域のラスタラインの並びには、通常印刷領域のラスタラインと比べると、規則性を見出し難い。
【0053】
===濃度ムラの補正(概略)===
<濃度ムラ(バンディング)について>
ここでは、説明の簡略化のため、単色印刷された画像中に生じる濃度ムラの発生原因について説明する。なお、多色印刷の場合、以下に説明する濃度ムラの発生原因がインク色毎に生じている。
【0054】
以下の説明において、「単位領域」とは、紙等の媒体上に仮想的に定められた矩形状の領域を指し、印刷解像度に応じて大きさや形が定められる。例えば、印刷解像度が720dpi(移動方向)×720dpi(搬送方向)の場合、単位領域は、約35.28μm×35.28μm(≒1/720インチ×1/720インチ)の大きさの正方形状の領域になる。また、印刷解像度が360dpi×720dpiの場合、単位領域は、約70.56μm×35.28μm(≒1/360インチ×1/720インチ)の大きさの長方形状の領域になる。理想的にインク滴が吐出されると、この単位領域の中心位置にインク滴が着弾し、その後インクが媒体上で広がって、単位領域にドットが形成される。なお、一つの単位領域には、画像データを構成する一つの画素が対応している。また、各単位領域に画素が対応付けられるので、各画素の画素データも、各単位領域に対応付けられることになる。
【0055】
また、以下の説明中、「列領域」とは、移動方向に並ぶ複数の単位領域によって構成される領域をいう。例えば印刷解像度が720dpi×720dpiの場合、列領域は、搬送方向に35.28μm(≒1/720インチ)の幅の帯状の領域になる。移動方向に移動するノズルから理想的にインクが断続的に吐出されると、この列領域にラスタラインが形成される。なお、列領域には、移動方向に並ぶ複数の画素が対応付けられることになる。
【0056】
図9Aは、理想的にドットが形成されたときの様子の説明図である。同図では、理想的にドットが形成されているので、各ドットは単位領域に正確に形成され、ラスタラインは列領域に正確に形成される。図中、列領域は、点線に挟まれる領域として示されており、ここでは720dpiの幅の領域である。各列領域には、その領域の着色に応じた濃度の画像片が形成されている。ここでは、説明の簡略化のため、ドット生成率が50%となるような一定濃度の画像を印刷するものとする。
【0057】
図9Bは、ノズルの加工精度のばらつきの影響の説明図である。ここでは、ノズルから吐出されたインク滴の飛行方向のばらつきにより、2番目の列領域に形成されたラスタラインが、3番目の列領域側(搬送方向上流側)に寄って形成されている。また、5番目の列領域に向かって吐出されたインクのインク量が少なく、5番目の列領域に形成されるドットが小さくなっている。
【0058】
本来であれば同じ濃度の画像片が各列領域に形成されるべきであるにもかかわらず、加工精度のばらつきのため、列領域に応じて画像片に濃淡が発生する。例えば、2番目の列領域の画像片は比較的淡くなり、3番目の列領域の画像片は比較的濃くなる。また、5番目の列領域の画像片は、比較的淡くなる。
そして、このようなラスタラインからなる印刷画像を巨視的に見ると、キャリッジ31の移動方向に沿う縞状の濃度ムラ(所謂、バンディング)が視認される。この濃度ムラは、印刷画像の画質を低下させる原因となる。
【0059】
図9Cは、本実施形態の印刷方法によりドットが形成されたときの様子の説明図である。本実施形態では、濃く視認されやすい列領域に対しては、淡く画像片が形成されるように、その列領域に対応する画素の画素データ(プリンタ1が使用可能な6種類のインク色についての多階調データ)の階調値を補正する。また、淡く視認されやすい列領域に対しては、濃く画像片が形成されるように、その列領域に対応する画素の画素データの階調値を補正する。例えば、図中の2番目の列領域のドットの生成率が高くなり、3番目の列領域のドットの生成率が低くなり、5番目の列領域のドットの生成率が高くなるように、各列領域に対応する画素の画素データの階調値が補正される。これにより、各列領域のラスタラインのドット生成率が変更され、列領域の画像片の濃度が補正されて、印刷画像全体の濃度ムラが抑制される。
【0060】
ところで、図9Bにおいて、3番目の列領域に形成される画像片の濃度が濃くなる理由は、3番目の列領域にラスタラインを形成するノズルの影響によるものではなく、隣接する2番目の列領域にラスタラインを形成するノズルの影響によるものである。このため、3番目の列領域にラスタラインを形成するノズルが別の列領域にラスタラインを形成する場合、その列領域に形成される画像片が濃くなるとは限らない。つまり、同じノズルにより形成された画像片であっても、隣接する画像片を形成するノズルが異なれば、濃度が異なる場合がある。このような場合、単にノズルに対応付けた補正値では、濃度ムラを抑制することができない。そこで、本実施形態では、列領域毎に設定される補正値に基づいて、画素データの階調値を補正している。
【0061】
このために、本実施形態では、プリンタ製造工場の検査工程において、プリンタ1にて、各インクと対応付けられた複数のサブパターン、により構成されるテストパターンを印刷させ、各サブパターンを後述のスキャナ150で読み取り、各サブパターンにおける各列領域の濃度に基づいて、各列領域に対応する補正値を算出する処理(以下、補正値取得処理と言う)が行われる。この補正値は、ユーザ等が購入したプリンタ1における濃度ムラの特性を反映したものであり、プリンタ1のメモリ63に記憶される。一方、補正値が記憶されたプリンタ1を購入したユーザの下において、プリンタドライバが、プリンタ1から補正値を読み取り、画素データの階調値を補正値に基づいて補正し、補正された階調値に基づいて印刷データを生成する。そして、プリンタ1は印刷データに基づいて画像印刷(以下、本印刷とも言う)を行う。
【0062】
===補正値取得システムについて===
以下、補正値取得処理に用いる補正値の取得システム(以下、補正値取得システム105)について、図10を用いて説明する。図10は、当該補正値取得システム105の全体構成を示すブロック図である。
【0063】
補正値取得システム105は、印刷画像の濃度を補正するための補正値を取得し、取得した補正値を所定の記憶先(本実施の形態では、プリンタ1のメモリ63)に記憶させるためのシステムである。このため、補正値取得システム105は、補正値の取得装置を含んでいると言える。なお、本実施の形態に係る補正値取得システム105は、プリンタ製造工場にて構築される。また、当該補正値取得システム105は、テストパターンを印刷するための印刷装置としてのプリンタ1、コンピュータ110、表示装置120、入力装置130、記録再生装置140、及びスキャナ150により構成されている。ここで、プリンタ1は補正値取得システム105の構成要素であると同時に、補正値取得処理の対象装置でもある。なお、既に説明した構成装置の構成等については、説明を省略する。
【0064】
補正値取得システム105において、コンピュータ110は、ホスト側コントローラ180を有する。このホスト側コントローラ180は、第一インターフェース181、第二インターフェース182、CPU183、メモリ184を有する。そして、メモリ184には、CPU183によって実行されるコンピュータプログラムとして、テストパターンをプリンタ1に印刷させるためのプリンタドライバと、後述のスキャナ150を制御するためのスキャナドライバと、スキャナ150から読み取ったサブパターンの画素データに対して画像処理や解析等を行うための補正値取得プログラムとが記憶されている。ここで、補正値取得プログラムは、サブパターンの濃度の測定値に相当する前記画素データに基づき、各サブパターンと対応付けられたインクに関して、濃度の補正値を算出するためのプログラムの一例である。なお、本実施の形態では、補正値取得システム105を構成するコンピュータ110としては、製造工場に備えられたコンピュータが用いられる。
【0065】
<スキャナについて>
スキャナ150は、テストパターンを読み取って、当該テストパターンを構成するサブパターンの濃度を測定するための装置である。ここで、スキャナ150の構造を図11A及び図11Bを用いて説明する。図11Aは、スキャナ150の縦断面図である。図11Bは、上蓋151を外した状態のスキャナ150を示す図である。スキャナ150は、上蓋151と、原稿5が置かれる原稿台ガラス152と、この原稿台ガラス152を介して原稿5と対面しつつ副走査方向に移動する読取キャリッジ153と、読取キャリッジ153を副走査方向に案内する案内部材154と、読取キャリッジ153を移動させるための移動機構155と、スキャナコントローラ190(図10参照)とを備えている。そして、スキャナコントローラ190はインターフェース191、CPU192、メモリ193、スキャナ制御ユニット194を有している。読取キャリッジ153には、原稿5に光を照射する露光ランプ157と、主走査方向(図5Aにおいて紙面に垂直な方向)のラインの像を検出するラインセンサ158と、原稿5からの反射光をラインセンサ158へ導くための光学系159とが設けられている。図中の読取キャリッジ153の内部の破線は、光の軌跡を示している。
【0066】
原稿5の画像を読み取るとき、検査員は、上蓋151を開いて原稿5を原稿台ガラス152に置き、上蓋151を閉じる。そして、スキャナコントローラ190が、露光ランプ157を発光させた状態で読取キャリッジ153を副走査方向に沿って移動させ、ラインセンサ158により原稿5の表面の画像を読み取る。スキャナコントローラ190は、読み取った画像データをコンピュータ110のスキャナドライバへ送信し、これにより、コンピュータ110は、原稿5の画像データ(より正確には、画像の濃度を示す濃度データ)を取得する。すなわち、画像の濃度が測定される。
【0067】
===補正値取得処理について===
次に、補正値を取得する方法に関する工程、すなわち、補正値取得処理について、図12を用いて説明する。図12は、補正値取得処理のフローチャートである。
【0068】
まず、補正値取得処理を行うにあたり、プリンタの検査員(以下、単に検査員)は、補正値が記憶されるプリンタ1を、コンピュータ110に接続して、補正値取得システム105を構築する。以下、補正値取得処理の各ステップについて説明する。
【0069】
<テストパターンを印刷するステップについて>
プリンタ1を接続したならば、テストパターンCPの印刷するステップが行われる(S101)。このステップにおいて、コンピュータ110に記憶されたコンピュータドライバは、テストパターン用の印刷データをプリンタ1へ送信する。そして、コンピュータ110からの印刷データに基づき、プリンタ1は、用紙Sに所定の解像度(本実施の形態においては、720dpi(移動方向)×720dpi(搬送方向))でテストパターンCPを印刷する。このテストパターンCPの印刷は、前述した印刷動作に則って行われる(図6参照)。すなわち、移動方向に移動するヘッド41からインクを用紙Sに向けて吐出して、用紙S上にドットを形成するドット形成動作と、用紙Sを搬送方向に搬送する搬送動作とを、印刷データに応じて複数回繰り返して行うことにより、テストパターンCPは印刷される。さらに、本実施の形態では、テストパターンCPは、該テストパターンCPの印刷コストの低減を図るため、単一のインクによって印刷される。なお、テストパターンCPの単色印刷については後述する。
【0070】
本ステップによって、図13に示すような印刷されたテストパターンCPが用紙Sに印刷される。ここで、図13は、テストパターンCPを説明するための図である。図14は、テストパターンCP中のサブパターンSPを説明するための図である。
【0071】
図13に示すように、テストパターンCPには、プリンタ1が使用する各インクと対応付けられた複数のサブパターンSP(本実施の形態では、6つのサブパターンSP)が形成されている。各インクには、前述したように、当該各インクに対応したノズル列が設けられている。このため、各サブパターンSPは、決められたノズル列から吐出されるインクによって印刷される。すなわち、サブパターンSPは、各ノズル列に対応して印刷され、例えば、シアンインク(C)についてのサブパターンは、シアンインクノズル列Ncから吐出されたインクによって印刷されることになる。このため、各サブパターンSPは、当該各サブパターンSPと対応したインクを用いて印刷されるほか、ある色のインクのみを用いて印刷することが可能となる。すなわち、テストパターンCPは、単色にて印刷可能である。なお、本実施の形態では、テストパターンCPを単色印刷する際に用いる、ある色のインクの一例として、ライトマゼンタインク(LM)が用いられる。したがって、前記6つのサブパターンSPは、いずれもライトマゼンタインク(LM)にて印刷されることとなる。さらに、前記6つのサブパターンSPの中には、第一ノズルからライトマゼンダインク(LM)を吐出させて印刷された第一サブパターンと、第二ノズルから前記ライトマゼンダインク(LM)を吐出させて印刷された第二サブパターンとが含まれている。
【0072】
このように印刷されたテストパターンCPにおいて、サブパターンSP毎に濃度ムラ(濃度のばらつき)の評価が行われる。
【0073】
また、各サブパターンSPは、図14に示すように、異なる所定濃度で印刷された帯状パターンBDと、上罫線ULと、下罫線DLと、左罫線LLと、右罫線RLとにより構成されている。帯状パターンBDは、異なる濃度で印刷された領域に相当し、搬送方向に長い帯状になっている。本実施形態の帯状パターンBDは、それぞれが一定の階調値の画像データに基づいて印刷された3種類のパターンBD(30)、BD(50)、及びBD(70)で構成されている。そして、図14に示すように、これらの帯状パターンBD(30)、BD(50)、BD(70)は、移動方向に並んだ状態で印刷されている。具体的には、図14において、左端の帯状パターンBDから順に、階調値76(濃度30%)、階調値128(濃度50%)、階調値179(濃度70%)となり、右側に位置するほど、濃い濃度で印刷されている。また、これらの帯状パターンBD(30)、BD(50)、BD(70)は、互いに隣接した状態で印刷されている。なお、これらの3種類の階調値(濃度)は、制御上の印刷指令値に相当する。このため、これらの階調値(濃度)を「指令階調値(指令濃度)」と呼ぶこととし、符号Sa(階調値76)、符号Sb(階調値128)、符号Sc(階調値179)のように表す。
【0074】
各帯状パターンBDは、先端処理、通常処理及び後端処理により印刷されるため、先端印刷領域のラスタラインと、通常印刷領域のラスタラインと、後端印刷領域のラスタラインとから構成されている。通常の印刷では通常印刷領域に数千個のラスタラインが形成されるが、サブパターンSPの印刷では、通常印刷領域には8周期分のラスタラインが形成される。ここでは説明の簡略化のため、図8の印刷によってサブパターンSPが印刷されるものとして、帯状パターンBDが、先端印刷領域の30個のラスタライン、通常印刷領域の56個(7個×8周期)のラスタライン、及び、後端印刷領域の30個のラスタラインの計116個のラスタラインにより構成されるものとする。そして、上罫線ULは、帯状パターンBDを構成する1番目のラスタライン(搬送方向最下流側のラスタライン)により形成される。他方、下罫線DLは、帯状パターンを構成する最終ラスタライン(搬送方向最上流側のラスタライン)により形成される。
【0075】
また、図13に示すように、各サブパターンSPは用紙Sの搬送方向と交差する方向、すなわち、移動方向(より正確には、印刷時の用紙Sに対するキャリッジ31の移動方向)に並ぶように印刷される。特に、本実施の形態では、各サブパターンSPは、互いに隣接した状態で印刷されている。但し、これに限定されるものではなく、例えば、各サブパターンSPの間に間隔が設けられていてもよい。
【0076】
<テストパターンCPを読み取るステップについて>
次に、スキャナ150に前記テストパターンCPを読み取らせて、該テストパターンCPが有する各サブパターンSPについて濃度を測定する(S102)。このステップに先立ち、検査員は、スキャナ150に原稿(テストパターンCPが印刷された用紙S)をセットする。より具体的には、各サブパターンSPのラスタラインの方向(印刷時の用紙Sに対するキャリッジ31の移動方向)がスキャナ150の副走査方向になり、複数のラスタラインの並ぶ方向がスキャナ150の主走査方向になるように、プリンタ1によってテストパターンCPが印刷された用紙Sを原稿台ガラス152上に置き、上蓋151を閉めて、スキャナ150にセットする。そして、検査員は、コンピュータ110のスキャナドライバを介して、スキャナ150にテストパターンCPを読み取らせる。本実施の形態では、各サブパターンSPをスキャナ150の読取キャリッジ153の移動方向(副走査方向)について720dpiの解像度で読み取らせ、スキャナ150のラインセンサ158の列方向(主走査方向)について2880dpiの解像度で読み取らせる。
【0077】
なお、主走査方向について、印刷解像度の4倍の解像度で読み取ることとしているのは、列領域の範囲の特定を容易にするためである。また、副走査方向について720dpiの解像度にまで読み取り解像度を下げているのは、読み取るデータ量を削減し、読み取り速度を上げるためである。
【0078】
以下、シアンインク(C)についてのサブパターンSP(C)(より正確には、シアンインクノズル列Ncからライトマゼンタインク(LM)を吐出させて印刷されたサブパターンSPであり、以下、単にサブパターンSP(C)ともいう)の読み取りについて説明する。なお、他のインクについてのサブパターンSPの読み取りも同様に行なわれる。
【0079】
図13において、サブパターンSP(C)を囲む破線の範囲が、当該サブパターンSP(C)を読み取る際の読み取り範囲X(C)である。また、この読み取り範囲Xcは、サブパターンSP(C)よりも一回り大きい短形状の範囲である。この範囲を特定するためのパラメータSX1、SY1、SW1及びSH1は、補正値取得プログラムによって予めスキャナドライバに設定されている。この範囲をスキャナ150に読み取らせれば、テストパターンが多少ずれてスキャナ150にセットされても、サブパターンSP(C)全体を読み取ることができる。この処理により、図中の読み取り範囲の画像が、2880×720dpiの解像度の長方形の画像データとして、コンピュータ110に読み取られる。そして、この画像データを構成する画素毎に、該画素の濃度が測定されることになる。また、測定された各画素の濃度に関するデータ(すなわち、画素データ)は濃度を示す階調値によって構成される。
【0080】
なお、本実施の形態では、前述したように、各サブパターンSPの読み取り範囲Xは、各サブパターンSPよりも一回り大きくなるように設定される。このため、隣接し合うサブパターンSPについては、当該サブパターンSPの読み取り範囲Xの一部が、移動方向において重なるようになる。
【0081】
<傾きを検出するステップ、及び、回転処理を行うステップについて>
次に、コンピュータ110の補正値取得プログラムは、画像データに含まれるサブパターンSPの傾きθを検出し(S103)、画像データに対して傾きθに応じた回転処理を行う(S104)。
【0082】
図15Aは、傾き検出の際の画像データの説明図である。本図において、上罫線ULは移動方向に沿う基準線(図中、一点鎖線にて示す)に対してθだけ傾いている(換言すれば、サブパターンSP全体がθだけ傾いている)。なお、説明を分かり易くするために、上罫線ULの傾きは実際の傾きよりも大きくしている。図15Bは、上罫線ULの位置の検出の説明図である。図15Cは、回転処理後の画像データの説明図である。補正値取得プログラムは、読み取られた画像データの中から、左からKX1の画素であって上からKH個の画素の画素データと、左からKX2の画素であって上からKH個の画素の画素データと、を取り出す。このとき取り出される画素の中に上罫線ULが含まれ右罫線RL及び左罫線がLL含まれないように、パラメータKX1、KX2、KHが予め定められている。そして、補正値取得プログラムは、上罫線ULの位置を検出するため、取り出されたKH個の画素データの階調値の重心位置KY1、KY2をそれぞれ求める。そして、補正値取得プログラムは、パラメータKX1、KX2、及び、重心位置KY1、KY2に基づき、次式によりサブパターンSPの傾きθを算出し、算出された傾きθに基づいて、画像データの回転処理を行う。
θ = tan−1{(KY2−KY1)/(KX2−KX1)}
【0083】
<トリミングするステップについて>
次に、コンピュータ110の補正値取得プログラムは、画像データの中から不要な画素をトリミングする(S105)。
【0084】
図16Aは、トリミングの際の画像データの説明図である。図16Bは、上罫線ULでのトリミング位置の説明図である。ステップS104での処理と同様に、補正値取得プログラムは、回転処理された画像データの中から、左からKX1の画素であって上からKH個の画素の画素データと、左からKX2の画素であって上からKH個の画素の画素データと、を取り出す。そして、補正値取得プログラムは、上罫線ULの位置を検出するため、取り出されたKH個の画素データの階調値の重心位置KY1、KY2をそれぞれ求め、2つの重心位置の平均値を算出する。そして、重心位置から列領域の幅の1/2だけ上側の位置において最も近い画素の境界をトリミング位置に決定する。なお、本実施形態では、Y方向の画像データの解像度が2880dpiであり、列領域の幅は720dpiであるので、列領域の幅の1/2は2画素分の幅に相当する。そして、補正値取得プログラムは、決定されたトリミング位置よりも上側の画素を切り取り、トリミングを行なう。
【0085】
図16Cは、下罫線DLでのトリミング位置の説明図である。上罫線UL側とほぼ同様に、補正値取得プログラムは、回転処理された画像データの中から、左からKX1の画素であって下からKH個の画素の画素データと、左からKX2の画素であって下からKH個の画素の画素データと、を取り出し、下罫線DLの重心位置を算出する。そして、重心位置から列領域の幅の1/2だけ下側の位置において最も近い画素の境界をトリミング位置に決定する。そして、補正値取得プログラムは、トリミング位置よりも下側の画素を切り取り、トリミングを行なう。
【0086】
<解像度変換するステップについて>
次に、コンピュータ110の補正値取得プログラムは、Y方向の画素数が116個(サブパターンSPを構成するラスタラインの数と同数)になるように、トリミングされた画像データを解像度変換する(S106)。
【0087】
図17は、解像度変換の説明図である。仮に、プリンタ1が720dpiの116個のラスタラインからなるサブパターンSPを理想的に形成し、スキャナ150がサブパターンSPを2880dpi(サブパターンSPの4倍の解像度)で理想的に読み取れば、トリミング後の画像データのY方向の画素数は、464個(=116×4)になるはずである。しかし、実際には印刷時や読み取り時のズレの影響があって、画像データのY方向の画素数が464個にならないことがあり、ここでは、トリミング後の画像データのY方向の画素数は470個である。コンピュータ110の補正値取得プログラムは、Y方向においてのみこの画像データに対して、116/470(=[サブパターンSPを構成するラスタラインの数]/[トリミング後の画像データのY方向の画素数])の倍率で解像度変換(縮小処理)を行なう。ここでは解像度変換にバイキュービック法が用いられる。これにより、解像度変換後の画像データのY方向の画素数が116個になる。言い換えると、2880dpiのサブパターンSPの画像データが、720dpiのサブパターンSPの画像データに変換される。この結果、Y方向に並ぶ画素の数と列領域の数とが同数になり、X方向の画素列と列領域とが、一対一で対応することになる。例えば、一番上に位置するX方向の画素列は1番目の列領域に対応し、その下に位置する画素列は2番目の列領域に対応する。なお、X方向の解像度については、データ取り込み時より720dpiで取り込んでいるため、X方向の解像度変換(縮小処理)は行われなくてもよい。
【0088】
<列領域毎の濃度を取得するステップについて>
次に、コンピュータ110の補正値取得プログラムは、サブパターンSPの各列領域における3種類の帯状パターンBDについて、それぞれの濃度を取得する(S107)。以下、1番目の列領域における階調値76(濃度30%)で形成された左側の帯状パターンBD(30)における濃度取得について説明する。なお、他の列領域における濃度取得も同様に行なわれる。また、他の帯状パターンBDの濃度取得も同様に行なわれる。
【0089】
図18Aは、左罫線LLの検出の際の画像データの説明図である。図18Bは、左罫線LLの位置の検出の説明図である。図18Cは、1番目の列領域の濃度30%の帯状パターンBD(30)の濃度の取得範囲を説明するための図である。補正値取得プログラムは、解像度変換された画像データの中から、上からH2の画素であって、左からKX個の画素の画素データを取り出す。このとき取り出される画素の中に左罫線LLが含まれるように、パラメータKXが予め定められている。そして、補正値取得プログラムは、左罫線LLの位置を検出するため、取り出されたKX個の画素の画素データの階調値の重心位置を求める。この重心位置(左罫線LLの位置)からX2だけ右側に、幅W3の濃度30%の帯状パターンBDが存在していることは、サブパターンSPの形状から既知になっている。そこで、補正値取得プログラムは、重心位置を基準にして、帯状パターンBD(30)の左右W4の範囲を除いた点線の範囲の画素データを抽出し、この範囲の画素データの階調値の平均値を、1番目の列領域に対する濃度30%の取得値(以下、取得濃度とも言う)とする。なお、1番目の列領域の濃度30%の帯状パターンBD(30)の濃度を取得する場合、図中の点線の範囲の1画素下の範囲の画素データを抽出する。このようにして、補正値取得プログラムは、3種類の帯状パターンBD(30)、BD(50)、BD(70)の濃度を列領域毎にそれぞれ取得する。
【0090】
図19は、シアンインク(C)についてのサブパターンSP(C)に関して、3種類の帯状パターンBD(30)、BD(50)、BD(70)の取得濃度をまとめた取得濃度テーブルである。このように、コンピュータ110の補正値取得プログラムは、列領域毎に、3種類の帯状パターンBD(30)、BD(50)、BD(70)の取得濃度を対応付けて、取得濃度テーブルを作成する。他のサブパターンSPと対応するインクについても、取得濃度テーブルが作成される。なお、以下の説明では、ある列領域について、階調値Sa、Sb、及びScの帯状パターン(すなわち、帯状パターンBD(30)、BD(50)、BD(70))の取得濃度をそれぞれCa〜Ccとしている。
【0091】
図20は、シアンインク(C)についてのサブパターンSP(C)における、3種類の帯状パターンBD(30)、BD(50)、BD(70)の取得濃度に関するグラフである。各帯状パターンBDは、それぞれの指令階調値で一様に形成されたにもかかわらず、列領域毎に濃淡が生じている。この列領域毎の濃淡差が、印刷画像の濃度ムラの原因である。
【0092】
濃度ムラをなくすためには、各帯状パターンBDの取得濃度が一定になることが望ましい。そこで、階調値Sb(濃度50%)の帯状パターンの取得濃度を一定にするための処理について検討する。ここでは、階調値Sbの帯状パターンBDの全列領域の取得濃度の平均値Cbtを、濃度50%の目標値と定める。この目標値Cbtよりも取得濃度が淡い列領域iでは、取得濃度が目標値Cbtに近づくためには、階調値を濃くする方へ補正すればよいと考えられる。一方、目標値Cbtよりも取得濃度が濃い列領域jでは、取得濃度が目標Cbtに近づくためには、階調値を淡くする方へ補正すればよいと考えられる。
【0093】
そこで、コンピュータ110の補正値取得プログラムは、列領域に対応する補正値を算出する(S108)。ここでは、ある列領域における指令階調値Sbに対する補正値の算出について説明する。以下に説明するように、図20の列領域iの指令階調値Sb(濃度50%)に対する補正値は、階調値Sb及び階調値Sc(濃度70%)の取得濃度に基づいて算出される。一方、列領域jの指令階調値Sb(濃度50%)に対する補正値は、階調値Sb及び階調値Sa(濃度30%)の取得濃度に基づいて算出される。
【0094】
図21Aは、列領域iにおける指令階調値Sbに対する目標指令階調値Sbtの説明図である。この列領域では、指令階調値Sbで形成された帯状パターンの取得濃度Cbは、目標値Cbtよりも小さい階調値を示す(この列領域では、濃度50%の帯状パターンBD(50)の平均濃度よりも淡い)。仮に、プリンタドライバが、この列領域に目標値Cbtの濃度のパターンをプリンタに形成させるならば、次式(直線BCに基づく直線補間)により算出される目標指令階調値Sbtに基づいて指令すればよい。
Sbt=Sb+(Sc−Sb)×{(Cbt−Cb)/(Cc−Cb)}
【0095】
図22Bは、列領域jにおける指令階調値Sbに対する目標指令階調値Sbtの説明図である。この列領域では、指令階調値Sbで形成された帯状パターンBD(50)の取得濃度Cbは、目標値Cbtよりも大きい階調値を示す(この列領域では、濃度50%の帯状パターンBD(50)の平均濃度よりも濃い)。仮に、プリンタドライバが、この列領域に目標値Cbtの濃度のパターンをプリンタに形成させるならば、次式(直線ABに基づく直線補間)により算出される目標指令階調値Sbtに基づいて指令すればよい。
Sbt=Sb−(Sb−Sa)×{(Cbt−Cb)/(Ca−Cb)}
このようにして目標指令階調値Sbtを算出した後、補正値取得プログラムは、次式により、この列領域における指令階調値Sbに対する補正値Hbを算出する。
Hb = (Sbt−Sb)/Sb
そして、コンピュータ110の補正値取得プログラムは、列領域毎に、階調値Sb(濃度50%)に対する補正値Hbを算出する。
【0096】
一方、階調値Sa(濃度30%)に対する補正値Haは、各列領域の取得濃度Caと、取得濃度Cbとに基づいて列領域毎に算出される。補正値Haを算出するにあたっては、指令階調値Saで形成された帯状パターンBD(30)の、各列領域の取得濃度Caと目標値Catとの大小関係に関係なく、次式(直線ABに基づく直線補間)により目標指令階調値Satが算出される。
Sat=Sa+(Sb−Sa)×{(Cat−Cb)/(Cb−Ca)}
このようにして目標指令階調値Satを算出した後、補正値取得プログラムは、次式により、この列領域における指令階調値Saに対する補正値Haを算出する。
Ha = (Sat−Sa)/Sa
【0097】
また、同様に、補正値取得プログラムは、階調値Sc(濃度70%)に対する補正値Hcを、各列領域の取得濃度Ccと、取得濃度Cbとに基づいて列領域毎に算出する。なお、補正値Hcを算出するにあたっては、指令階調値Scで形成された帯状パターンBD(70)の各列領域の取得濃度Ccと目標値Cctとの大小関係に関係なく、直線BCに基づく直線補間が適用される。さらに、他のサブパターンSPに対応しているインクについても、列領域毎に、3つの補正値(Ha、Hb、Hc)を算出する。
【0098】
ところで、通常印刷領域には、56個のラスタラインがあるが、7個のラスタライン毎に規則性がある。通常印刷領域の補正値の算出では、この規則性が考慮される。
【0099】
補正値取得プログラムは、通常印刷領域の1番目の列領域(印刷領域全体の31番目の列領域)における補正値を算出するとき、前述の測定値Caには、通常印刷領域の1、8、15、22、29、36、43、50番目の8個の列領域の列領域の濃度30%に対する取得濃度の平均値が用いられる。同様に、通常印刷領域の1番目の列領域(印刷領域全体の31番目の列領域)における補正値を算出するとき、前述の取得濃度Cb、Ccには、通常印刷領域の1、8、15、22、29、36、43、50番目の8個の列領域の列領域の各濃度の測定値の平均値がそれぞれ用いられる。そして、このような取得濃度Ca、Cb、Ccに基づいて、前述の通りに、通常印刷領域の1番目の列領域の補正値(Ha、Hb、Hc)が算出される。このように、通常印刷領域の列領域の補正値は、7個おきの8個の列領域の各濃度に対する取得濃度の平均に基づいて、算出される。この結果、通常印刷領域では、1番目〜7番目の7個の列領域に対してだけ補正値が算出され、8番目〜56番目の列領域に対する補正値の算出は行なわれない。言い換えると、通常印刷領域の1番目〜7番目の7個の列領域に対する補正値が、8番目〜56番目の列領域に対する補正値にもなる。
【0100】
<補正値を記憶するステップについて>
次に、コンピュータ110の補正値取得プログラムは、補正値をプリンタ1のメモリ63に記憶する(S109)。そして、補正値が各列領域に対応して記憶されると、プリンタ1のメモリ63に、補正値テーブルが作成される。
【0101】
図22は、シアンの補正値テーブルの説明図である。より正確に説明すると、図22中の補正値テーブルは、シアンインクノズルNcから吐出されるインクに関するものである。この補正値テーブルには、先端印刷領域用、通常印刷領域用、後端印刷領域用の3種類ある。各補正値テーブルには、3つの補正値(Ha、Hb、Hc)が、列領域毎に対応付けられている。例えば、各列領域のn番目のラスタラインには、3つの補正値(Ha_n、Hb_n、Hc_n)が対応付けられている。また、補正値(Ha_n、Hb_n、Hc_n)は、それぞれ、Sa(=76)、Sb(=128)、Sc(=179)に対応する。なお、他のインクに対する補正値テーブルも同様である。
【0102】
プリンタ1のメモリ63に補正値を記憶させた後、補正値取得処理は終了する。その後、プリンタ1とコンピュータ110との接続が外され、プリンタ1に対する他の検査を終えて、プリンタ1が工場から出荷される。プリンタ1には、プリンタドライバを記憶したCD−ROMも同梱される。
【0103】
<ユーザ等の下での処理について>
プリンタ1を購入したユーザ等は、当該ユーザ等が所有するコンピュータ110(もちろん、プリンタ製造工場のコンピュータとは別のコンピュータ)に、プリンタ1を接続して、前述した印刷システム100を構築する。また、印刷システム100を構築する際、ユーザ等は、プリンタ1に同梱されたCD−ROMによりプリンタドライバを、コンピュータ110に記憶させる。
【0104】
印刷システム100が構築されると、プリンタドライバが、プリンタ1に対して補正値の送信を要求する。そして、プリンタ1が、要求に応じて、メモリ63に記憶された補正値テーブルをコンピュータ110へ送信する。プリンタドライバは、送信された補正値をコンピュータ110のメモリ184に記憶する。これにより、コンピュータ110のメモリ184に補正値テーブルが作成される。ここまでの処理を終えた後、プリンタドライバは、ユーザ等からの印刷命令があるまで、待機状態になる。そして、ユーザ等からの印刷命令を受けると、プリンタドライバは、補正値に基づいて印刷データを生成し、印刷データをプリンタ1に送信する。そして、プリンタ1は、印刷データに基づいて本印刷動作を行う。なお、本印刷は、テストパターンの印刷と異なり、多色印刷となる。
【0105】
図23は、印刷データ生成処理のフロー図である。これらの処理は、プリンタドライバによって行われる。
【0106】
まず、プリンタドライバは、解像度変換処理を行う(S201)。解像度変換処理は、アプリケーションプログラムから出力された画像データ(テキストデータ、イメージデータ当)を、用紙に印刷する際の解像度に変換する処理である。例えば、用紙に画像を印刷する際の解像度が720×720dpiに指定されている場合、アプリケーションプログラムから受け取った画像データを720×720dpiの解像度の画像データに変換する。なお、解像度変換処理後の画像データは、RGB色空間により表される256階調のデータ(RGBデータ)である。
【0107】
次に、プリンタドライバは、色変換処理を行う(S202)。色変換処理は、RGBデータをプリンタ1が使用する6種類のインク色についての多階調データ(以下、6色の多階調データ)に変換する処理である。この色変換処理は、RGBデータの階調値と6色の多階調データの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブルLUT)をプリンタドライバが参照することによって行われる。この色変換処理により、各画素についてのRGBデータが、インク色に対応する多階調データに変換される。なお、色変換処理後のデータは、256階調で示される6色の多階調データである。
【0108】
次に、プリンタドライバは、濃度補正処理を行う(S203)。濃度補正処理は、インク色毎に、各画素データの階調値を、その画素データの属する列領域の対応する補正値に基づいて補正する処理である。
【0109】
図24は、シアンのn番目の列領域の濃度補正処理の説明図である。同図は、シアンのn番目の列領域に属する画素の画素データの階調値S_inを補正する様子を示している。なお、補正後の階調値はS_outである。
【0110】
仮に補正前の画素データの階調値S_inが指令階調値Sbと同じであれば、プリンタドライバは、階調値S_inを目標指令階調値Sbtに補正すれば、その画素データの対応する単位領域に目標濃度Cbtの画像を形成することができる。つまり、補正前の画素データの階調値S_inが指令階調値Sbと同じであれば、指令階調値Sbに対応する補正値Hを用いて、階調値S_in(=Sb)をSb×(1+H)に補正するのが良い。
【0111】
これに対し、補正前の階調値S_inが指令階調値とは異なる場合、図に示すような直線補間によって、出力すべき階調値S_outが算出される。図中の直線補間では、各指令階調値(Sa、Sb、Sc)に対応する補正後の各階調値S_out(Sat、Sbt、Sct)の間を直線補間している。但し、これに限られるものではない。例えば、各指令階調値に対応する各補正値(Ha、Hb、Hc)の間を直線補間して階調値S_inに対応する補正値Hを算出し、算出された補正値Hに基づいて補正後の階調値をS_in×(1+H)として算出してもよい。
【0112】
先端印刷領域の1番目〜30番目の各列領域の画素データに対しては、プリンタドライバは、先端印刷領域用の補正値テーブルに記憶されている1番目〜30番目の各列領域に対応する補正値に基づいて、濃度補正処理を行う。例えば、先端印刷領域の1番目の列領域の画素データに対しては、プリンタドライバは、先端印刷用の補正値テーブルの1番目の列領域の補正値(Ha_1、Hb_1、Hc_1)に基づいて、濃度補正処理を行う。
【0113】
同様に、通常印刷領域の1番目〜7番目の各列領域(印刷領域全体の31番目〜38番目の各列領域)の画素データに対しては、プリンタドライバは、通常印刷領域用の補正値テーブルに記憶されている1番目〜7番目の各列領域に対応する補正値に基づいて、濃度補正処理を行う。但し、通常印刷領域には数千個の列領域が存在するが、通常印刷領域用の補正値テーブルには、7個分の列領域に対応する補正値しか記憶されていない。そこで、通常印刷領域の8番目〜14番目の各列領域の画素データに対しては、プリンタドライバは、通常印刷領域用の補正値テーブルに記憶されている1番目〜7番目の各列領域に対応する補正値に基づいて、濃度補正処理を行う。このように、通常印刷領域の列領域に対しては、プリンタドライバは、7個の列領域毎に、1番目〜7番目の各列領域に対応する補正値を繰り返して用いる。通常印刷領域では7個の列領域毎に規則性があるため、濃度ムラの特性も同じ周期で繰り返されると考えられるため、同じ周期で補正値を繰り返し用いることにより、記憶すべき補正値のデータ量を削減している。
【0114】
なお、各サブパターンSPの通常印刷領域の列領域は56個であったが、ユーザ等の下で印刷される印刷画像の通常印刷領域の列領域の数は、これよりも多く、数千個にも及ぶ。このような通常印刷領域の搬送方向上流側(紙の後端側)に30個の列領域からなる後端印刷領域が形成される。
【0115】
後端印刷領域では先端印刷領域と同様に、後端印刷領域の1番目〜30番目の各列領域の画素データに対しては、プリンタドライバは、後端印刷領域用の補正値テーブルに記憶されている1番目〜30番目の各列領域に対応する補正値に基づき、濃度補正処理を行う。
【0116】
以上の濃度補正処理により、濃く視認されやすい列領域に対しては、その列領域に対応する画素の画素データ(6色の多階調データのうち、シアンの多階調データ)の階調値が低くなるように補正される。逆に、淡く視認されやすい列領域に対しては、その列領域に対応する画素の画素データの階調値が高くなるように補正される。なお、他のインク色の他の列領域に対しても、プリンタドライバは、同様に補正処理を行う。
【0117】
次に、プリンタドライバは、ハーフトーン処理を行う(S204)。ハーフトーン処理は、高階調数のデータを、プリンタが形成可能な階調数のデータに変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、2階調を示す1ビットデータや4階調を示す2ビットデータに変換される。ハーフトーン処理では、ディザ法・γ補正・誤差拡散法などを利用して、プリンタがドットを分散して形成できるように画素データを作成する。プリンタドライバは、ハーフトーン処理を行うとき、ディザ法を行う場合にはディザテーブルを参照し、γ補正を行う場合にはガンマテーブルを参照し、誤差拡散法を行う場合は拡散された誤差を記憶するための誤差メモリを参照する。ハーフトーン処理されたデータは、前述のRGBデータと同等の解像度(例えば720×720dpi)を有している。
【0118】
本実施の形態では、プリンタドライバは、濃度補正処理によって補正された階調値の画素データに対して、ハーフトーン処理が行われることになる。この結果、濃く視認されやすい列領域では、その列領域の画素データの階調値が低くなるように補正されているので、その列領域のラスタラインを構成するドットのドット生成率が低くなる。逆に、淡く視認されやすい列領域では、ドット生成率が高くなる。
【0119】
次に、プリンタドライバは、ラスタライズ処理を行う(S205)。ラスタライズ処理は、マトリクス状の画像データを、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更する処理である。ラスタライズ処理されたデータは、印刷データに含まれる画素データとして、プリンタ1に出力される。
【0120】
このようにして生成された印刷データに基づいてプリンタが印刷処理を行えば、図9Cに示すように、各列領域のラスタラインのドット生成率が変更され、列領域の画像片の濃度が補正されて、印刷画像全体の濃度ムラが抑制される。また、以上の説明では、説明の簡略化のためノズル数や列領域の数(ラスタラインの数)を少なくしているが、実際には、ノズル数は180個であり、例えば先端印刷領域の列領域の数は360個になる。但し、補正値取得プログラムやプリンタドライバ等が行なう処理は、ほぼ同様である。
【0121】
===本実施の形態におけるテストパターンの印刷方法について===
<テストパターンの歪みについて>
本実施の形態では、プリンタ1がテストパターンCPを印刷する際、既述のスキューが発生することがある。このスキューが発生すると、用紙Sが搬送方向に対して曲がり、制御上の搬送量とは異なる搬送量にて搬送される結果、テストパターンCPが歪んで印刷されてしまう。また、テストパターンCPの歪みに伴って、該テストパターンCP中の各サブパターンSPも歪んで印刷されることになる。このことを、図25乃至図26Bを用いて説明する。図25は、スキューによって歪んで印刷されたテストパターンCPを説明する図である。図26Aは、図25のテストパターンCPのうち、移動方向において、一端側に印刷されたサブパターンSPを示す。図26Bは、図25のテストパターンCPのうち、他端側に印刷されたサブパターンSPを示す。なお、説明を分かり易くするため、図25乃至図26B中、各サブパターンSPの歪み度合いは、実際よりも大きくしている。
【0122】
プリンタ1において、スキューが発生すると、用紙Sの、移動方向両端側にある部分であるほど、実際の搬送量と制御上の搬送量との差が大きくなる。例えば、用紙Sの移動方向の一端に対して他端が相対回転するようなスキューが発生した場合、用紙Sの前記一端側ほど、搬送量が制御上の搬送量より小さくなり、また、前記他端側ほど、搬送量が大きくなる。この結果、テストパターンCPのうち、移動方向において一端側に印刷されたサブパターンSPであるほど、該サブパターンSPの搬送方向における長さが、図26Aに示すように、制御上の長さ(図26A及び図26B中、記号lにて示す)よりも短くなる。換言すると、前記一端側に印刷されたサブパターンSPであるほど、当該サブパターンSPを構成するラスタラインの密度は、スキューが発生しない場合と比較して密になる。このようなサブパターンSPの帯状パターンBDについて、列領域毎に濃度を取得すると、スキューが発生していない場合よりも濃い濃度となる。
【0123】
他方、他端側に印刷されたサブパターンSPであるほど、当該サブパターンSPの搬送方向における長さは、図26Bに示すように、前記制御上の長さlよりも長くなる。すなわち、他端側に印刷されたサブパターンSPであるほど、ラスタラインの密度が、スキューが発生しない場合と比較して疎になる。このようなサブパターンSPの帯状パターンBDについて、列領域毎に濃度を取得すると、スキューが発生していない場合よりも薄い濃度となる。
【0124】
このように、スキューが発生した場合の各サブパターンSPの歪み度合いは、該サブパターンSPの形成位置に依存する。そして、移動方向の端側に印刷されたサブパターンSPであるほど、歪み度合いが大きくなるため、その帯状パターンBDにおける各列領域の濃度が適切に取得することが困難になる。この結果、当該取得濃度に基づいて算出される補正値の精度が低下するため、印刷画像における濃度ムラを抑制する効果が損なわれることになる。そして、画像印刷上、より重要なインクに関する補正値の精度が低下すると、濃度ムラの抑制効果に対して及ぼす影響は顕著になる。
【0125】
そこで、本実施の形態では、第一ノズルからライトマゼンタインク(LM)を吐出させて、媒体上に第一サブパターンを印刷するステップと、第二ノズルから前記ライトマゼンタインク(LM)を吐出させて、用紙S上の、前記第一サブパターンの形成位置よりも中央側に、第二サブパターンを印刷するステップとによって、テストパターンCPを印刷している。以下、この点について具体的に説明する。
【0126】
<本実施の形態におけるテストパターンの印刷方法について>
図27は、用紙S上の、各サブパターンの形成位置を説明するための図である。また、図中、記号Pが付された各破線は、各サブパターンSPの形成位置の境界線を示している。
【0127】
前述したように、テストパターンCPは、ドット形成動作と搬送動作とを印刷データに応じて複数回繰り返して行うことによって、印刷される。そして、ヘッド41が、各サブパターンSPの形成位置の上方を移動するとき、各サブパターンSPに対応するノズル列から、テストパターンCPを単色印刷するために用いるインク、すなわち、ライトマゼンタインク(LM)が吐出される。例えば、移動方向において、ヘッド41に設けられたブラックインクノズル列Nkが、P1からP2までの区間の上方を通過する際、前記ブラックインクノズル列Nkから前記P1からP2までの区間に向けてライトマゼンタインク(LM)が吐出される。同様に、P2からP3の区間ではマゼンタインクノズル列Nmから、P3からP4の区間ではライトマゼンタインクノズル列Nlmから、P4からP5の区間ではライトシアンインクノズル列Nlcから、P5からP6の区間ではシアンインクノズル列Ncから、P6からP7の区間ではイエローインクノズル列Nyから、それぞれライトマゼンタインク(LM)が吐出される。
【0128】
そして、各ノズル列から吐出されたライトマゼンタインク(LM)が、用紙Sの所定の着弾位置に着弾されると、各インクについてのサブパターンSPを構成するラスタラインが、用紙S上の各サブパターンSPの形成位置に印刷される。すなわち、本実施形態のテストパターンCPの印刷方法は、ライトマゼンタインク(LM)を用いて各インクについてのサブパターンSPを印刷するステップ、を有している。例えば、ヘッド41が、用紙SのP1からP2の区間の上方を移動する際は、前記ライトマゼンタインク(LM)を用いて、ブラックインク(K)についてのサブパターンSP(K)を印刷するステップが実行される。同様に、ヘッド41がヘッド移動経路上を移動する間に、ライトマゼンタインク(LM)を用いて、他のインクについてのサブパターンSPを印刷するステップが実行される。すなわち、ヘッド41がヘッド移動経路を一往復する毎に(換言すれば、1パス毎に)、各サブパターンSPを印刷するステップが1回ずつ実行される。そして、テストパターンCPについての印刷データがなくなるまで、各サブパターンSPを印刷するステップが繰り返し実行される。
【0129】
ここで、ライトシアンインク(LC)についてのサブパターンSP(LC)の形成位置(図27中、P3からP4までの区間)は、移動方向(換言すると、用紙Sの短手方向)において、シアンインク(C)についてのサブパターンSP(C)の形成位置(図27中、P5からP6までの区間)よりも用紙Sの中央側にある。換言すれば、ライトシアンインクノズル列Nlcからライトマゼンタインク(LM)を吐出させて印刷されたサブパターンSP(LC)は、シアンインクノズル列Ncから前記ライトマゼンタインク(LM)を吐出して印刷されたサブパターンSP(C)の形成位置より、用紙Sの中央側に形成される。同様に、ライトマゼンタインク(LM)についてのサブパターンSP(LM)の形成位置(図27中、P4からP5の区間)は、マゼンタインク(M)についてのサブパターンSP(M)の形成位置(図27中、P2からP3の区間)より用紙Sの中央側にある。つまり、本実施の形態では、第二ノズルからライトマゼンタインク(LM)を吐出して印刷される第二サブパターンの形成位置が、第一ノズルから前記ライトマゼンタインク(LM)を吐出して印刷される第一サブパターンの形成位置よりも用紙Sの中央側に来るように、テストパターンCPは印刷される。
【0130】
<本実施の形態に係るテストパターンの印刷方法の有効性について>
多色印刷の際に使用されるインクのうち、ライトシアンインク(LC)及びライトマゼンタインク(LM)、すなわち、第二インクは、第一インクと比較して、使用頻度が高く、画像印刷上より重要なインクとなる傾向にある。したがって、濃度補正によって濃度ムラを抑制する効果を有効に発揮するためには、第二インクに関する補正値が、第一インクに関する補正値よりも精度良く取得される必要がある。
【0131】
一方、スキューの発生によりテストパターンが歪んで印刷された場合、移動方向において、端側に印刷されたサブパターンSPほど、歪み度合いが大きくなる。逆に、前記移動方向において、中央側に印刷されたサブパターンSPは、端側に印刷されたサブパターンSPと比較して、歪み度合いが相対的に小さくなる。したがって、用紙Sの、より中央側に印刷されたサブパターンSPであるほど、当該サブパターンSPから取得される濃度に基づいて算出された補正値の精度は高くなる。すなわち、より中央側にあるサブパターンSPと対応したインクほど、当該インクの濃度補正の精度の低下が抑制される。
【0132】
そこで、本実施の形態では、画像印刷上、第一インクよりも重要な第二インクについての第二サブパターンを、用紙S上、第一インクについての第一サブパターンの形成位置よりも中央側に印刷する。これにより、テストパターンCPに歪みが生じた場合であっても、画像印刷上、より重要な第二インクに関する濃度補正の精度の低下は、第一インクに関する濃度補正の精度に優先して、抑制されることになる。この結果、スキューの発生によるテストパターンCPの歪みが、濃度ムラの抑制効果に及ぼす影響を低減することとなる。
【0133】
また、本実施の形態に係るプリンタ1は、ドット形成動作と搬送動作とを印刷データに応じて複数回繰り返して行うことによって、画像を印刷する。この種のプリンタ1では、スキューの発生を完全に防止することは困難である。このため、第二サブパターンを、歪み度合いが相対的に小さくなる形成位置に印刷して、テストパターンCPの歪みが濃度ムラの抑制効果に対して及ぼす影響を低減させる本発明の効果が、より有意義なものとなる。
【0134】
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてプリンタ1を有する補正値取得システム105について記載されているが、その中には、補正値の取得方法や補正の取得装置の開示も含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0135】
<印刷方式について>
プリンタ1の印刷方式は、前述のインターレース方式に限定されず、1つのラスタラインを異なる複数のノズルNzで形成する印刷方式(オーバーラップ方式)であってもよい。
【0136】
<テストパターンにおけるサブパターンの形成位置について>、
上記実施の形態では、テストパターンCP中の各サブパターンSPが、用紙S上、移動方向に並んでいることとした。但し、これに限定されるものではなく、各サブパターンSPの形成位置が移動方向において異なった位置であればよい。このような各サブパターンの形成位置であれば、スキュー等によりテストパターンが歪んで印刷された際、サブパターンの間には歪み度合いの差異が生じる。これにより、第二サブパターンを、第一サブパターンより歪み度合いが小さくなる位置に印刷することが可能となる。
【0137】
<ヘッドの移動速度について>
上記実施の形態では、ヘッド41が定速移動領域を移動する期間、及び、前記加減速移動領域の一部を移動する期間に、前記ヘッド41からインクが吐出されることとした(図5参照)。また、定速移動領域はヘッド移動経路の中央部に、加減速移動領域はヘッド移動経路の端部にある。このため、テストパターンCPの印刷時におけるヘッド41の移動速度は、前記ヘッド41がヘッド移動経路の端部を移動するときより、ヘッド移動経路の中央部を移動するときの方がより安定している。また、前述したように、ある周期Tにおけるインクの吐出タイミングは、直前の周期Tに基づいて決定される。ここで、ヘッド41が定速移動領域を移動する間は、ある周期Tとその直前の周期Tとが同じ長さになっているものとして捉えられるため、インクの吐出間隔も均一になる。しかし、ヘッド41が加減速移動領域を移動する間は、ある周期Tの長さと、その直前の周期Tの長さとは厳密には一致していない。この結果、移動方向の中央側にて印刷されるサブパターンSPは、両端側にて印刷されるサブパターンSPよりも、ヘッド41の移動速度がより安定した状態で印刷される可能性が高くなる。したがって、より用紙Sの中央側にて形成される第二サブパターンは、前記第一サブパターンよりも安定して印刷されることになる。
但し、これに限定されるのではなく、例えば、テストパターンCPの印刷中、ヘッド41の移動速度はほぼ一定であることとしてもよい。
【0138】
<インクの種類について>
上記の実施の形態では、プリンタ1が使用可能なインクの種類は6種類であることとした。これらのインクには、第一インクとしてのシアンインク(C)と、第二インクとしてのライトシアンインク(LC)とが含まれていることとした。かかる場合において、本発明の印刷方法にてテストパターンCPを印刷すると、シアンインク(LC)に関する濃度の補正値の精度が、シアンインク(C)に関する濃度の補正値の精度より高くなる。この結果、テストパターンの歪みが、濃度ムラの抑制効果に対して及ぼす影響を低減される。また、プリンタ1が使用するインクには、第一インクとしてのマゼンタインク(M)と、第二インクとしてのライトマゼンタインク(LM)とが含まれ、マゼンタ系統のインクについても上記と同様の効果を得ることが可能である。
但し、これに限定されるものではなく、例えば、プリンタ1が使用可能なインクには、第一インク及び第二インクが一種類ずつあることとしてもよい。また、上記実施の形態に係るインクに加えて、例えば、グレー色のインクやダークイエロー色のインク等の他のインクが含まれていてもよい。
【0139】
<サブパターンの構成について>
上記実施の形態では、各サブパターンSPは、濃度30%、50%、70%で印刷された3種類の帯状パターンBD(30)、BD(50)、BD(70)を有していることとした。但し、帯状パターンの種類及び数に関しては、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、各サブパターンSPは、濃度10%、30%、50%、70%、90%で印刷された5種類の帯状パターンBDを有していることとしてもよい。かかる場合には、濃度に関するデータを得るための帯状パターンが増える結果、補正値の精度が高くなるため、補正値に基づく濃度補正による濃度ムラの抑制効果が向上する。
【0140】
<テストパターンを単色印刷する際に用いるインクの種類について>
上記実施の形態では、テストパターンCPを単色印刷する際に用いるインクは、ライトマゼンタインク(LM)、すなわち、第二インクに属するインクであることとした。第二インクは、印刷画像の中間調部分を印刷するために多用されるインクであるため、第一インクと比較して、吐出量が良好に制御される。このため、第二インクを用いて印刷されたテストパターンCP、第一インクを用いて印刷されたものより適切に印刷されるため、濃度補正の精度が向上することとなる。但し、これに限定されるものではなく、第一インクを用いてテストパターンCPを単色印刷することとしてもよい。
【0141】
<他の応用例について>
上記実施の形態においては、プリンタ1が説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の記録装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】印刷システム100の外観構成を示した図である。
【図2】本実施形態のプリンタ1の全体構成のブロック図である。
【図3】図3Aは、本実施形態のプリンタ1の全体構成の概略図である。図3Bは、本実施形態のプリンタ1の全体構成の横断面図である。
【図4】ヘッド41の下面におけるノズルの配列を示す説明図である。
【図5】ヘッド41の移動速度の変化とインクの吐出動作との関係を示す図である。
【図6】印刷時の動作のフローチャートである。
【図7】図7A及び図7Bは、通常印刷の説明図であり、図7Aは、パスn〜パスn+3におけるヘッド41の位置とドットの形成の様子を示し、図7Bは、パスn〜パスn+4におけるヘッド41の位置とドットの形成の様子を示している。
【図8】先端印刷及び後端印刷の説明図である。
【図9】図9Aは、理想的にドットが形成されたときの様子の説明図である。図9Bは、ノズルの加工精度のばらつきの影響の説明図である。図9Cは、本実施形態の印刷方法によりドットが形成されたときの様子の説明図である。
【図10】補正値取得システム105の全体構成を示すブロック図である。
【図11】図11Aは、スキャナ150の縦断面図である。図11Bは、上蓋151を外した状態のスキャナ150を示す図である。
【図12】補正値取得処理のフローチャートである。
【図13】テストパターンCPを説明するための図である。
【図14】サブパターンSPを説明するための図である。
【図15】図15Aは、傾き検出の際の画像データの説明図である。図15Bは、上罫線の位置の検出の説明図である。図15Cは、回転処理後の画像データの説明図である。
【図16】図16Aは、トリミングの際の画像データの説明図である。図16Bは、上罫線ULでのトリミング位置の説明図である。
【図17】解像度変換の説明図である。
【図18】図18Aは、左罫線LLの検出の際の画像データの説明図である。図18Bは、左罫線LLの位置の検出の説明図である。図18Cは、1番目の列領域の濃度30%の帯状パターンBD(30)の濃度の取得範囲の説明図である。
【図19】サブパターンSP(C)に関して、3種類の帯状パターンBD(30)、BD(50)、BD(70)の取得濃度をまとめた取得濃度テーブルである。
【図20】シアンの濃度30%、濃度50%及び濃度70%の帯状パターンBD(30)、BD(50)、BD(70)の取得濃度に関するグラフである。
【図21】図21Aは、列領域iにおける指令階調値Sbに対する目標指令階調値Sbtの説明図である。図21Bは、列領域jにおける指令階調値Sbに対する目標指令階調値Sbtの説明図である。
【図22】シアンの補正値テーブルの説明図である。
【図23】印刷データ生成処理のフロー図である。
【図24】シアンのn番目の列領域の濃度補正処理の説明図である。
【図25】スキューによって歪んで印刷されたテストパターンCPの説明図である。
【図26】図26Aは、図25のテストパターンCPのうち、移動方向において、一端側に印刷されたサブパターンSPを示す。図26Bは、図25のテストパターンCPのうち、前記移動方向において、他端側に印刷されたサブパターンSPを示す。
【図27】用紙S上の、各サブパターンSPの形成位置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0143】
1 プリンタ、5 原稿、
20 搬送ユニット、21 給紙ローラ、22 搬送モータ、
23 搬送ローラ、24 プラテン、25 排紙ローラ、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、
32 キャリッジモータ、33 ガイド軸
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、
50 センサ群、51 リニア式エンコーダ、52 ロータリー式エンコーダ、
53 紙検出センサ、54 光学センサ、
60 コントローラ、61 インターフェース、62 CPU、
63 メモリ、64 ユニット制御回路
100 印刷システム、105 補正値取得システム
110 コンピュータ、120 表示装置、130 入力装置、140 記録再生装置、
150 スキャナ、151 上蓋、152 原稿台ガラス、153 読取キャリッジ、
154 案内部材、155 移動機構、157 露光ランプ、
158 ラインセンサ、159 光学系、
180 ホスト側コントローラ、181 第一インターフェース、
182 第二インターフェース、183 CPU、184 メモリ、
190 スキャナコントローラ、191 インターフェース、192 CPU、
193 メモリ、194 スキャナ制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一インクを吐出するための第一ノズルから、ある色のインクを吐出させて、媒体上に第一サブパターンを印刷するステップと、
前記第一インクよりも淡い第二インクを吐出するための第二ノズルから、前記ある色のインクを吐出させて、媒体上の、前記第一サブパターンの形成位置よりも中央側に、第二サブパターンを印刷するステップと、
を有することを特徴とするテストパターンの印刷方法。
【請求項2】
請求項1に記載のテストパターンの印刷方法において、
前記第一サブパターンは、前記第一ノズルから前記ある色のインクを媒体に吐出させる動作と、前記媒体を搬送方向に搬送する動作とが複数回繰り返し行われることにより印刷され、
前記第二サブパターンは、前記第二ノズルから前記ある色のインクを媒体に吐出させる動作と、前記媒体を搬送方向に搬送する動作とが複数回繰り返し行われることにより印刷されることを特徴とするテストパターンの印刷方法。
【請求項3】
請求項2に記載のテストパターンの印刷方法において、
前記テストパターンは、前記第一サブパターンと前記第二サブパターンとを含んだ少なくとも2つのサブパターンから構成され、
各前記サブパターンは、前記ある色のインクを用いて印刷され、かつ、前記搬送方向と交差する方向に並ぶことを特徴とするテストパターンの印刷方法。
【請求項4】
請求項3に記載のテストパターンの印刷方法において、
前記第一ノズルと前記第二ノズルとを備え、テストパターン印刷時に前記搬送方向と交差する移動経路を移動する印刷ヘッドの、
前記移動経路の中央部を移動するときの移動速度は、前記移動経路の端部を移動するときの移動速度より安定していることを特徴とするテストパターンの印刷方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のテストパターンの印刷方法において、
シアンインクを吐出するためのシアンインクノズルと、ライトシアンインクを吐出するためのライトシアンインクノズルとを含む複数のノズルから、それぞれ、前記ある色のインクを吐出させて前記テストパターンを印刷するとき、
前記シアンインクは第一インクに、前記ライトシアンインクは第二インクに属し、
前記シアンインクノズルは第一ノズルに、前記ライトシアンインクノズルは第二ノズルに属することを特徴とするテストパターンの印刷方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のテストパターンの印刷方法において、
マゼンタインクを吐出するためのマゼンタインクノズルと、ライトマゼンタインクを吐出するためのライトマゼンタインクノズルとを含む複数のノズルから、それぞれ、前記ある色のインクを吐出させて前記テストパターンを印刷するとき、
前記マゼンタインクは第一インクに、前記ライトマゼンタインクは第二インクに属し、
前記マゼンタインクノズルは第一ノズルに、前記ライトマゼンタインクノズルは第二ノズルに属することを特徴とするテストパターンの印刷方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のテストパターンの印刷方法において、
前記ある色のインクは、前記第二インクに属するインクであることを特徴とするテストパターンの印刷方法。
【請求項8】
第一インクを吐出するための第一ノズルから、ある色のインクを吐出させて、媒体上に第一サブパターンを印刷するステップと、前記第一インクよりも淡い第二インクを吐出するための第二ノズルから、前記ある色のインクを吐出させて、媒体上の、前記第一サブパターンの形成位置よりも中央側に、第二サブパターンを印刷するステップと、を有し、
前記第一サブパターンは、前記第一ノズルから前記ある色のインクを媒体に吐出させる動作と、前記媒体を搬送方向に搬送する動作とが複数回繰り返し行われることにより印刷され、前記第二サブパターンは、前記第二ノズルから前記ある色のインクを媒体に吐出させる動作と、前記媒体を搬送方向に搬送する動作とが複数回繰り返し行われることにより印刷され、
前記テストパターンは、前記第一サブパターンと前記第二サブパターンとを含んだ少なくとも2つのサブパターンから構成され、各前記サブパターンは、前記ある色のインクを用いて印刷され、かつ、前記搬送方向と交差する方向に並び、
前記第一ノズルと前記第二ノズルとを備え、テストパターン印刷時に前記搬送方向と交差する移動経路を移動する印刷ヘッドの、前記移動経路の中央部を移動するときの移動速度は、前記移動経路の端部を移動するときの移動速度より安定しており、
シアンインクを吐出するためのシアンインクノズルと、ライトシアンインクを吐出するためのライトシアンインクノズルとを含む複数のノズルから、それぞれ、前記ある色のインクを吐出させて前記テストパターンを印刷するとき、前記シアンインクは第一インクに、前記ライトシアンインクは第二インクに属し、前記シアンインクノズルは第一ノズルに、前記ライトシアンインクノズルは第二ノズルに属し、
マゼンタインクを吐出するためのマゼンタインクノズルと、ライトマゼンタインクを吐出するためのライトマゼンタインクノズルとを含む複数のノズルから、それぞれ、前記ある色のインクを吐出させて前記テストパターンを印刷するとき、前記マゼンタインクは第一インクに、前記ライトマゼンタインクは第二インクに属し、前記マゼンタインクノズルは第一ノズルに、前記ライトマゼンタインクノズルは第二ノズルに属し、
前記ある色のインクは、前記第二インクに属するインクであることを特徴とするテストパターンの印刷方法。
【請求項9】
(A)第一インクを吐出するための第一ノズルから、あるインクを吐出させて媒体上に印刷された第一サブパターンと、
前記第一インクよりも淡い第二インクを吐出するための第二ノズルから、前記あるインクを吐出させて、媒体上の、前記第一サブパターンの形成位置よりも中央側に印刷された第二サブパターンと、
を含み、少なくとも2つのサブパターンから構成されるテストパターン、
を印刷するステップと、
(B)該テストパターンを読み取り、各前記サブパターンの濃度を測定するステップと、
(C)各前記サブパターンの濃度の測定値に基づき、各前記サブパターンと対応付けられている各インクに関して、印刷濃度の補正値を算出するステップと、
を有することを特徴とする補正値の取得方法。
【請求項10】
(A)第一インクを吐出するための第一ノズルと、該第一インクよりも淡い第二インクを吐出するための第二ノズルと、を備えた印刷装置であって、
前記第一ノズルから、あるインクを吐出して媒体上に印刷される第一サブパターンと、
前記第二ノズルから、前記あるインクを吐出して、媒体上の、前記第一サブパターンの形成位置よりも中央側に印刷される第二サブパターンと、
を含み、少なくとも2つのサブパターンから構成されるテストパターン、
を印刷するための印刷装置と、
(B)該テストパターンを読み取り、各前記サブパターンの濃度を測定するためのスキャナと、
(C)各前記サブパターンの濃度の測定値に基づき、各前記サブパターンと対応付けられている各インクに関して、濃度の補正値を算出するためのプログラム、を実行するためのコンピュータと、
を有することを特徴とする補正値の取得装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図27】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2008−55728(P2008−55728A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−234488(P2006−234488)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】