説明

テレビ用受信機の受信増幅器、および、その使用方法

【課題】広い周波数範囲に亘って狭帯域システムの利点を有する受信増幅器を提示する。
【解決手段】受信増幅器が、接続接点6と接続接点7とを有する半導体基板2、および、増幅回路1を含んでいる。増幅回路1は、少なくとも1つの電界効果トランジスタと、第1入力部12と、第2入力部13とを備えている。増幅回路1の入力部同士の間には、容量素子Cinが配置されている。増幅回路の上流には、共振周波数が調整可能な同調回路が設けられている。この同調回路は、半導体基板2に集積された、可変容量素子CTを含み、増幅回路1の容量素子Cinに対して並列に接続されている。さらに、2つの誘導素子L1´、L1が設けられている。第1誘導素子L1´は、接続接点6に接続されており、第2誘導素子L1は、接続接点7に接続されている。これにより、共振周波数での電圧が高い直列同調回路が形成され、受信増幅器の入力信号の信号対雑音比が改善される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、テレビ信号の処理に適した受信増幅器に関するものである。本発明はまた、このような受信増幅器の使用に関するものである。
【0002】
近年のワイヤレスデータ伝送システムにおいて、受信増幅器の感度に対する要求は、ますます高くなっている。これは、一方では、隣接するチャネル間の干渉、さらには、他の移動式データ伝送システムとの干渉を防止するために、伝送信号の電界強度が弱くなっているためである。他方では、伝送される情報の量が、ますます多くなっているためである。これにより、一方では、伝送された信号のスペクトルの広がりが生じる。つまり、伝送された信号に対する広い帯域幅が必要となる。広帯域移動無線規格の典型的な一例が、802.11a(W-LAN)規格または802.11b(W-LAN)規格である。802.11a(W-LAN)規格または802.11b(W-LAN)規格の信号は、それぞれ、搬送周波数が2.4GHzまたは5.2GHzで、約20MHzの帯域幅を有している。デジタルテレビ(デジタルビデオ地上波放送(DVB-T)、デジタルビデオ衛星放送(DVB-S))用のデータ伝送方法には、数百メガヘルツとより広い帯域幅が用いられる。
【0003】
他方では、変調方法は、ますます著しく複雑になっており、その質はますます高くなっている。例えば、振幅揺らぎ、および、位相揺らぎの影響をあまり受けないFSK(周波数シフトキーイング)変調方法が、GSM移動無線規格に用いられ、一方、802.11a移動無線規格、802.11b移動無線規格、およびDVB-Tテレビ規格には、いわゆるOFDM(直交周波数分割多重)変調方法が用いられている。これらの規格は、受信信号の雑音成分に対して非常に高感度に反応する。
【0004】
受信信号の雑音は、一方では、受信信号の周波数帯域における雑音成分から生じる。この雑音成分は、例えば、空電、または、伝送された他の信号の干渉によって生じる。他方、この雑音はまた、用いる受信素子から生じる成分を含んでいる。例えば、基本的には、受信器の受信回路における全ての能動素子および受動素子が、一定量の自己雑音を有している。この受信回路の素子、およびここでは特に受信増幅器は、それらの自己雑音の雑音成分を受信信号に加え、それによって、有効信号と望ましくない雑音信号との比を変える。これらの素子によって生じた雑音の成分を示す該素子の1つの特性変数が、雑音指数である。この雑音指数は、素子の入力部での信号の信号対雑音比を、素子の出力部での信号対雑音比で割った値である。
【0005】
受信器については、特に、受信回路に含まれる第1増幅器の雑音指数は著しく低くなければならず、したがって、受信信号の雑音は、ほんの僅かでなければならない。さらに、受信増幅器は、広い帯域幅において十分によい感度を有している必要がある。
【0006】
この課題を解決するために、上流に外部「トラッキングフィルタ」を接続している受信増幅器もある。このトラッキングフィルタは、基本的に、トラッキング帯域通過フィルタである。該トラッキング帯域通過フィルタは、有効信号帯域幅の外側の望ましくないスペクトル成分を抑圧するものである。雑音によっては、こうして抑圧されるものもある。しかし、このようなトラッキングフィルタの不都合は、周波数を規定する素子(例えば、バラクタダイオード)に、調整電圧を与える必要がある点である。この調整電圧は、受信ユニットにおいて用いられる電圧制御発振器から引き出されるものである。この結果、コストが高くなり、所要面積が増加するとともに、続くキャリブレーション手順が複雑になる。
【0007】
本発明は、広い周波数範囲に亘って狭帯域システムの利点を有する受信増幅器を提示することに係る。ここでの目的は特に、良好な雑音指数、高い利得、および、相互変調積および副次的な周波数帯域の十分な抑圧を達成することである。
【0008】
本発明は、受信増幅器において、雑音が著しく少ない増幅回路と、周波数を規定する同調可能素子とを、半導体基板に集積回路として構成することを提案する。
【0009】
一形態として、受信増幅器が、第1入力端子、および、第1ノードと少なくとも1つの第2ノードとを有する半導体基板を含む形態が可能である。この半導体基板には、増幅回路が集積されており、この増幅回路は、少なくとも1つのトランジスタ、第1入力部、第2入力部、および、該第1入力部と該第2入力部との間に配置された容量素子を有している。集積された増幅回路の雑音指数を改善するために、共振周波数が調整可能な同調回路が設けられている。この同調回路は、半導体基板に集積された可変容量素子を含んでいる。この素子は、制御入力部を有している。該可変容量素子の端子は、第1ノードと第2ノードとの間に接続されている。また、該可変容量素子は、集積された増幅回路の容量素子に対して並列に接続されている。さらに、少なくとも1つの第1誘導素子が設けられている。第1誘導素子は、第1端子によって第1ノードに接続されており、第2端子によって第1入力端子に接続されている。
【0010】
共振周波数が調整可能な同調回路が、部分的に、半導体基板内に形成されていることが、1つの好ましい形態である。特に、周波数を規定する可変容量素子は、半導体基板内に形成される。これにより、キャリブレーション手順が非常に簡単になる。
【0011】
同様に、集積された増幅回路の利得を最適化できるので、他の調整を非常に簡単に行うことができる。共振周波数が調整可能な同調回路によって、共振周波数の範囲において、電圧ピークが著しく上がり、信号対雑音比が改善される。同時に、調整可能な同調回路は、トラッキングフィルタとして機能し、有効信号帯域外の信号成分を抑圧する。この有効信号帯域は、共振周波数によって選択される。
【0012】
さらに、集積された増幅回路内に配置された容量素子は、共振構造の一部でもある。特に、該容量素子は、可変容量素子に対して並列に接続されている。増幅回路に配置された容量素子を調整可能な同調回路の一部として能動的に用いることにより、増幅回路内の寄生容量素子を修正することができる、あるいは、寄生容量素子を同調回路の構成に有効に用いることができる。
【0013】
また、本発明は、他に、受信増幅器が第2入力端子を含むものに係る。共振周波数が調整可能な同調回路は、さらに、第2誘導素子を含んでいる。この誘導素子の第1端子は、第2ノードに結合されている。また、該誘導素子の第2端子は、第2入力端子に結合されている。これにより、対称な同調回路設計が得られ、共振応答が改善される。
【0014】
他の形態として、集積された増幅回路中のトランジスタが、電界効果トランジスタとして構成されていてもよい。さらに他の形態として、集積された増幅回路の第1入力部と第2入力部とに、バイポーラ技術によって実現されたトランジスタが接続されないものがある。実際、増幅回路には、電界効果トランジスタ技術(例えば、MOSまたはMES技術)が用いられている。
【0015】
本発明の受信増幅器を、広い周波数範囲に亘って分配された信号を受信するために用いることができる。本発明では、調整可能な同調回路の共振周波数は、この場合、所望の周波数に同調され、つまり、受信される信号の周波数範囲に同調される。同時に、同調回路によって、所望の周波数帯域外の信号を十分に抑圧することができる。
【0016】
本発明は、他に、半導体基板の形態に関する。ここで、第1ノードが半導体基板の表面の第1接点を構成し得るとともに、第2ノードが半導体基板の表面の第2接点を構成し得る。この形態では、第1誘導素子および第2誘導素子は、半導体基板外に配置される。また、第1入力端子と第2入力端子との間に、第3誘導素子を接続することも可能である。該第3誘導素子と可変容量素子とは、本形態では、並列な同調回路を構成している。
【0017】
本発明の一形態として、可変容量素子が、少なくとも1つのバラクタダイオードを備えているものが挙げられる。このバラクタダイオードの容量を、可変容量素子の制御入力部の制御信号によって連続的な変化で調整することができる。したがって、本形態では、バラクタダイオードの容量を連続的な変化で調整することにより、共振周波数を変えることができる。
【0018】
本発明の他の形態として、可変容量素子が、並列に配置された複数の電荷格納デバイスを含んでいるものが挙げられる。該電荷格納デバイスの第1端子は、それぞれ、第1接点に接続されており、第2端子は、制御入力部の信号によって駆動されるスイッチング装置を介して、第2接点に接続されている。本形態では、この可変容量素子の容量を、制御入力部の信号を介して、値離散的に調整することができる。したがって、調整可能な同調回路の共振周波数を、離散値のステップで変えることができる。
【0019】
また、可変容量素子を、連続的な変化で調整可能な素子と、値離散的に調整可能な素子とを組み合わせることによって構成するような形態も可能である。
【0020】
1つの形態として、並列に配置された複数の電荷格納デバイスの容量値が、それぞれ同じであるものが挙げられる。また、それに代わる他の形態として、並列に配置された少なくとも2つの電荷格納デバイスの容量値が、1:2の比率で異なるものが挙げられる。類似の一形態として、並列に配置された複数の電荷格納デバイスが、バイナリの重みを有している。
【0021】
本発明の他の形態として、増幅回路が、第1電界効果トランジスタと第2電界効果トランジスタとを備えた差動増幅器を含んでいるものが挙げられる。これら2つの電界効果トランジスタのゲート端子は、集積された増幅回路の第1入力部および第2入力部を構成している。1つの形態として、増幅回路の容量素子が、第1電界効果トランジスタと第2電界効果トランジスタとのゲート−ドレイン間の容量、または、第1電界効果トランジスタと第2電界効果トランジスタとのゲート−ソース間の容量を含んでいるものが挙げられる。本形態では、寄生効果、特に増幅回路に用いられる電界効果トランジスタのゲート−ドレイン間の容量とゲート−ソース間の容量とは、共振周波数が調整可能な同調回路にも用いられる。これにより、増幅回路の入力インピーダンスへの整合の改善が達成されることが利点である。信号対雑音比が改善され、雑音指数は低減する。
【0022】
本発明の他の形態として、受信増幅器が、半導体基板を取り囲むハウジングを含んでいるものが挙げられる。このハウジングの表面には、接続パッドが設けられている。また、接続手段が設けられている。この接続手段は、ハウジングの接続パッドを半導体基板の表面の接続接点に結合しており、帯域消去特性を有している。これにより、接続手段によって、望ましくない周波数成分をさらに抑圧できることが利点である。特に、接続手段を適切に配置することにより、通常望ましくない信号成分が占める周波数範囲において、帯域消去を実現することができる。この目的を達成するために、これらの接続手段は、ボンディングワイヤ、はんだボール、または、バンプとして構成されている。
【0023】
以下では、図面を参照しながら、本発明について詳述する。
【0024】
図1は、本発明の第1実施形態を示す図である。
【0025】
図2は、本発明の第2実施形態を示す図である。
【0026】
図3は、本発明の第3実施形態を示す図である。
【0027】
図4は、本発明の第4実施形態を示す図である。
【0028】
図5は、本発明の第5実施形態を示す図である。
【0029】
図6は、ハウジング内について第4実施形態を示す側面図である。
【0030】
図7は、図6に示した実施形態を示す平面図である。
【0031】
図8は、図3に示した実施形態に基づいた、周波数に対する雑音指数と周波数応答とを示すためのグラフである。
【0032】
図1は、本発明の原理を示すための、本発明の第1実施形態を示している。受信増幅器は、半導体基板2を含んでいる。半導体基板2の表面には、複数の接点があり、それらのうちの2つ(接点6・7)をここに図示する。これらの接点は、半導体基板2に集積された素子の接続接点である。
【0033】
半導体基板2には、低雑音増幅器1が集積回路として構成されている。この集積された増幅回路1は、第1入力部12と、第2入力部13と、出力タップ10・11とを含んでいる。集積された増幅回路1はまた、容量素子Cinを含んでいる。この容量素子Cinは、入力端子12・13に接続されている。容量素子Cinは、キャパシタまたは電荷格納デバイスとして構成されている。該容量素子Cinは、入力端子12と入力端子13との間に並列に接続された2つの寄生キャパシタと、可能であれば、例えば低雑音増幅器1の他の信号処理回路の入力端子インピーダンスを整合させるための、所望の入力キャパシタとを含んでいる。
【0034】
入力端子12は、可変容量素子CTの第1端子に接続されている。低雑音増幅器1の第2入力端子13は、可変容量素子CTの第2端子に接続されている。本実施形態では、可変容量素子CTは、バラクタダイオードである。該バラクタダイオードは、容量を調整するために、制御信号を入力するための制御入力部90を有している。
【0035】
さらに、低雑音増幅器1の2つの入力端子12・13は、半導体基板の表面の接点6・7に接続されている。これらの接点は、2つの誘導素子(ここではコイルL1およびL1´)に接続されている。コイルL1とL1´との間には、他のコイルLpが接続されている。図1から分かるように、該他のコイルLpは、可変容量素子CTに対して並列に配置されている。コイルLpの端子は、同時に、本発明の受信増幅器の第1入力部8および第2入力部9である。
【0036】
バラクタダイオードとして構成されている可変容量素子CTと、2つのコイルL1およびL1´とは、該ダイオードのキャパシタによって共振周波数を調整することができる、直列同調回路を構成している。さらに、コイルLpと、低雑音増幅器1のバラクタダイオードCTに対して並列に配置された容量素子Cinとは、同調回路の周波数を規定している。コイルL1、L1´、Lpのインダクタンスと、素子Cinのキャパシタンスとを含む同調回路は、バラクタダイオードCTによって共振周波数が調整可能である。また、電圧Vinを、バラクタダイオードCTを介して引き出すことができる。該共振周波数では、電圧Vinは非常に明瞭に現れ、これにより、バラクタダイオードCTを介した信号対雑音比は非常に良好になる。次に、この電圧Vinは、高くなった状態で、低雑音増幅器1の入力端子に与えられる。
【0037】
直列同調回路の共振応答によるこの電圧上昇によって、低雑音増幅器1の入力部の信号レベルが高くなる。これにより、低雑音増幅器1の入力部の信号対雑音比を出力部の信号対雑音比で割った値を示す雑音指数が改善される。
【0038】
同様に、この同調回路は、低雑音増幅器の入力インピーダンスに整合する。特に、同調可能であることの利点は、全周波数範囲に対して整合できる点にある。この点は重要である。半導体基板内に共振周波数を調節できる素子を実装することにより、キャリブレーションを簡略化することができ、例えば受信チャネルを新しい周波数に変換するプロセスを高速化することができる。
【0039】
この事は、特に、非常に広い周波数範囲を対象とする必要のある受信増幅器に有効である。例えば、DVB-T(デジタルビデオ地上波放送)テレビ規格、または、DVB-S(デジタルビデオ衛星放送)テレビ規格などのデジタルテレビの受信増幅器に適している。これらの規格では、データは、信号対雑音比が劣化している場合に非常に感度の高いOFDM変調方法を用いて伝送されるか、または、QPSK(4相位相変調)またはQAM(直交振幅変調)変調方法によって伝送される。この場合、信号対雑音比は、共振周波数において電圧が上昇することによって改善される。
【0040】
さらに、低雑音増幅器の動作を、テレビチャネル用の伝送帯域幅に最適に設定することができる。第1テレビチャネルから第2テレビチャネルに変更する場合、容量素子CTを調節することによって、同調回路の共振周波数を適切に調整する。これにより、上流の整合回路網の共振周波数を調節することによって広帯域に亘るテレビチャネルの比較的狭い周波数範囲においてのみ非常に良好な特性を示す、低雑音増幅器を使用することができる。
【0041】
図2は、本発明の他の実施形態を示している。同じ効果および/または機能を有する素子には、同じ参照符号を付している。
【0042】
本実施形態では、可変容量素子CTは、並列に配置された複数のキャパシタC〜Cmによって構成されている。これらのキャパシタC〜Cmの第1端子が、低雑音増幅器1の第2入力端子13と、第2ノード5とに接続されている。キャパシタC〜Cmの各第2端子は、それぞれ、スイッチS1〜Smを介して、低雑音増幅器1の第1入力端子12と、第1ノード4とに接続されている。スイッチS1〜Smは、制御入力部90から入力されるmビットのデジタル制御信号によって駆動される。スイッチS1〜Smは、この制御信号に応じてOFF状態およびON状態となり、さらに、入力端子12・13またはノード4・5に対して各キャパシタC〜Cmが並列に接続されている。本実施形態では、全てのキャパシタの容量は、同じである。
【0043】
コイルL1は、ノード4と、半導体基板の表面に位置する接続接点6との間に配置されている。コイルL1´は、ノード5と、半導体基板2の表面に位置する接続接点7との間に配置されている。これら2つのコイルは、半導体基板2内の集積素子として構成されている。接続接点6・7は、外部に配置されたコイルLpを介して互いに結合されている。さらに、これらの接続接点6・7は、本発明の受信増幅器の入力端子8・9に接続されている。
【0044】
図3は、本発明のまた別の実施形態を示している。2つのコイルL1、L1´は、本実施形態でも、半導体基板2の外側に位置する外部コイルとして構成されている。本実施形態では、低雑音増幅器1は、MOS(金属酸化膜半導体)技術を用いた差動増幅器として構成されており、2つの電界効果トランジスタT1、T2を含んでいる。これらの電界効果トランジスタT1、T2のドレイン端子は、共に、電流源16に接続されている。また、ソース端子は、各抵抗器18、18´を介して、電源電位VDDに接続されている。これら2つの電界効果トランジスタT1、T2のソース端子と、2つの抵抗器18、18´との間には、タップが設けられており、低雑音増幅器1の出力部10・11を構成している。
【0045】
可変容量素子CTは、並列に配置されたキャパシタC1、C2、および、C3から構成されている。各キャパシタC1、C2、および、C3の一方の端子は、第2入力端子13と、半導体基板2の表面に位置する第2接続接点7とに接続されている。キャパシタC1の第2端子は、第1スイッチS1を介して低雑音増幅器1の第1入力端子12と、第1接続接点6とに接続されている。同様に、スイッチS2、S3は、キャパシタC2、C3の各第2端子を、接続接点6と第1入力端子12とに接続している。
【0046】
2つのトランジスタC1とC2と、または、C2とC3との容量は、それぞれ、1:2の比率で異なる。例えば、キャパシタC1の容量は、キャパシタC2の容量の2倍である。したがって、キャパシタC1〜C3は、バイナリの重みを有しており、制御入力部90の2値の制御信号によって、スイッチS1〜S3を介して、適切に駆動される。
【0047】
さらに、低雑音増幅器が動作している間、トランジスタT1のゲート端子と、そのドレイン端子との間には、わずかな寄生容量が生じる。このようなゲート−ドレイン間の容量が、差動増幅器の第2電界効果トランジスタT2にも存在している。これらの寄生容量を、点線で示したキャパシタによって示す。ゲート−ドレイン間の容量は、増幅回路に配置された容量素子Cinを構成しており、同調回路の一部を示している。したがって、寄生容量は、整合および共振周波数の生成にも用いられる。この共振周波数を、離散値のステップで、制御入力部90の制御信号によって調整することができる。最大共振周波数は、差動増幅器の寄生容量によって予め決定される。
【0048】
ゲート−ドレイン間の容量に加えて、電界効果トランジスタのゲート−ソース間の容量も、同調回路の一部として用いられる。このことは、差動増幅器が適切に設計されており、例えば、電界効果トランジスタT1、T2の電荷キャリアの型を入れ替え、電流源16と電源電位VDDとの極性を入れ替えることによって、行われる。
【0049】
図4は、本発明の他の実施形態を示している。この場合、半導体基板2は、プラスチック製のハウジング2a内で実装されている。このプラスチック製のハウジング2aは、接続パッド20、21を備えている。該接続パッド20、21は、それぞれ、コイルL1、L1´に接続されている。接続接点6、7に接触するために、接続手段が、半導体基板2の表面に、ボンディングワイヤとして設けられている。これらの接続手段に対応している端子パッド20、21は、ハウジング2a内に設けられている。ボンディングワイヤの、回路特性および信号伝達特性を、等価回路Bに示す。例えば、接続接点6と接続パッド20との間のボンディングワイヤは、抵抗R1´と、インダクタンスLB´と、第2抵抗R2´とを備えている。つまり、ボンディングワイヤは、2つの抵抗器R1´、R2´と、インダクタンスを有するコイルLB´とを含んだ直列回路として示されている。同様に、接続接点7と接続パッド21との間の接続手段は、2つの抵抗器R1、R2とインダクタンスLBとを含んだ直列回路によって構成されている。
【0050】
これら2つのボンディングワイヤ間には、空間的な配置が原因で、他にも容量的な関係が存在し、これがここでは2つのキャパシタンスで示されている。これらのキャパシタCB2は、例えば、半導体基板の表面に接点6、7が位置していることに起因する寄生容量である。コイルLp、Lp´とキャパシタンスCB、CB´とを含んだ図示した配置は、特定の周波数の信号に対する帯域消去フィルタを構成している。
【0051】
接続接点6、7と接続パッド20、21との間の接続手段を適切に構成することにより、周波数帯域が十分に規定された、帯域消去フィルタが得られる。これにより、様々な移動無線規格に対応した信号成分を特に抑圧することができる。デジタル地上テレビ(DVB-T)の受信増幅器の場合、870MHz〜950MHzの周波数範囲を抑圧するための他のフィルタを用いることが有効である。このことは、GSM900移動無線規格がこの周波数範囲を使用するので、重要である。
【0052】
図7は、図4の実施形態にかかる、ハウジング2aの中に配置された半導体基板2の平面図を示している。ハウジング2aの外側に位置する接続パッド20、21は、同様に、それぞれコイルL1´、L1に接続されている。接続パッド20から半導体基板2の表面に位置する接続接点6までは、ボンディングワイヤB´によって接続されている。同様に、ハウジング2aに位置する接続パッド21は、第2ボンディングワイヤBを介して、半導体基板表面の接続接点7に接続されている。図示したように、2つのボンディングワイヤB´とBとを平行かつ物理的に近接して配置することにより、誘導結合および容量結合が生じる。例えば、ボンディングワイヤB、B´の長さと、互いの間隔と、可能であれば用いた材料との適切な幾何学的配置を行うことによって、図4に示した帯域通過フィルタ/帯域消去フィルタを形成することができる。
【0053】
これに関して同様に、望ましくない成分を抑圧することに起因する影響を改善するために、他の素子を設けてもよい。さらに、ハウジング2aの接続パッドと接続接点6、7とは、同様に、帯域通過フィルタ/帯域消去フィルタの特性を作り出す追加的な素子として機能する。これには、特に、使用する材料と、それらの半導体基板2およびハウジング2aの表面上での物理的な広がりに起因する容量効果が含まれる。
【0054】
2つの接続接点6,7に加えて、半導体基板2は、さらに、接続接点61、62〜65を有している。該接続接点61、62〜65は、他のボンディングワイヤB1〜B2を介して、接続パッド22〜26に接続されている。半導体基板2の集積回路が動作している間、様々な信号が接続パッド22〜26に供給される。これらの信号は、接続パッド22、26の電源電圧および/または電源電流である。さらに、制御信号が、接続パッド23から、ボンディングワイヤB4を介して半導体基板2の集積回路に供給される。また、受信増幅器の復調信号が、接続パッド24、25を介して出力される。
【0055】
図6は、集積半導体基板を備えたハウジングの側面図を示している。本実施形態では、ハウジング2aを、カバー2bを用いて閉じることができる。半導体基板2は、ハウジングの凹部の中に配置されている。半導体基板の表面に位置する接続接点6,7は、ボンディングワイヤBを介して、接続パッド20、21に接続されている。各接続パッド20、21は、コイルL1、L1´(図示せず)に接続されている。
【0056】
コイルL1、L1´とコイルLpとを、インダクタンスによって示す。この場合、これらのコイルは、例えば、単純な金属配線で実現されているのが好ましい。このことは特に、同調回路の形成に必要なインダクタンスが非常に小さい(例えば数ナノヘンリ(nH))場合に有効である。
【0057】
図5は、本発明の受信増幅器の一発展形態を示している。本実施形態では、複数の集積された受信増幅器1、100が、半導体基板2に実現されており、該受信増幅器のそれぞれが、nビットの制御信号を入力するための制御入力部101を有している。nビットの制御信号は、2つの低雑音増幅器1、100における利得係数の離散的な値を設定するために用いられる。この利得を、電界強度または入力側に入力された信号の電力に応じて適切に選択することができる。これにより、このような増幅器は、最適な利得を生成するが、ひずみを全く生成しない。さらに、2つの増幅器1、100は、様々な周波数範囲の増幅に対して最適化される。増幅される受信信号の周波数に応じて、2つの信号経路のうちのいずれかが選択される。
【0058】
そのために、2つの受信増幅器1、100のそれぞれは、調整可能な同調回路を備えている。この同調回路は、ここでは、半導体基板の表面に位置する接続接点を介してコイルに接続される可変容量素子CTを備えている。可変キャパシタCTを共に備えた、コイルL1、L1´、および、L2、L2´のインダクタンスが異なっているため、2つの同調回路において、共振周波数は異なっている。この図では、素子CTの容量を同じ値になるように選択する。コイルのインダクタンスが異なっていることにより、信号経路における2つの同調回路の共振周波数は異なっている。同様に、上記素子CTの容量を異なるように構成してもよい。
【0059】
2つの同調回路band1、band2と、それらに接続されている低雑音増幅器1、100とを並列に接続することにより、受信増幅器の周波数調整範囲が著しく広くなる。同時に、個々の低雑音増幅器1、100を、狭い周波数範囲に対してさらに最適化できる。それでもなお、容量素子CTを調整することにより、十分によい整合が得られ、さらに、信号対雑音比を改善するために電圧を高くすることができる。
【0060】
これに関する2つのグラフを、図8に示す。図8Aは、周波数範囲が300MHz〜1GHzの図5に示した受信増幅器の周波数応答を示している。基本的には、2つの異なる曲線のまとまりが見られる。各曲線のまとまりは、複数の個々の曲線を含んでいる。各曲線のまとまりの中の各曲線は、上記素子CTの容量を異なる値に設定した場合の、増幅器を下流に備えた各同調回路の周波数応答を示している。最適な周波数応答は、26dBである。受信される所望の周波数に応じて、2つの信号経路のうちの1つが起動され、可変容量素子CTは、最適な周波数応答を得るように調整される。
【0061】
さらに、約870MHzで際立った抑圧が見られる。この抑圧は、ボンディングワイヤ、または、はんだボールまたはバンプといった他の接続手段を備えた帯域消去フィルタによって生じる。
【0062】
図8Bは、図5に示した実施形態における2つの信号経路に関する、周波数範囲が300MHz〜1GHzである周波数に対する、受信増幅器の雑音指数を示している。ここでも、同調回路の共振周波数が可変容量素子CTによって選択された場合に、受信増幅器の雑音指数が最小化されることが分かる。
【0063】
また、可変容量素子を適切に選択することによって、広い周波数範囲において受信増幅器の雑音指数を最小化できる。同時に、受信信号に対する感度が著しく改善される。このことは、特に、半導体基板に集積されている増幅回路の入力インピーダンスを、上流の同調回路によって適切に整合することにより、得られる。
【0064】
この場合、半導体基板の増幅回路を、相補形MOS技術のみによって、または、少なくとも電界効果トランジスタ技術によって形成することができる。これにより、電流の流れを用いずに、入力信号を処理できるので、キャパシタおよび可変容量素子の電流負荷を低減することができる。また、同調回路の電流負荷が小さいまたは極わずかであることが、共振特性を改善し、その結果、信号対雑音比が非常によくなり、さらに、受信増幅器の雑音指数は十分に改善される。同時に、同調回路の帯域通過特性は、共振周波数範囲外の望ましくない信号成分を十分に抑圧することができる。したがって、トラッキング能力によって、広い周波数範囲において低雑音増幅器の性能を改善することができる。
【0065】
受信増幅器は、広い周波数範囲において伝送される信号を有する通信規格の使用に、特に適している。例えば、DVB-Tデジタルテレビ規格、および、DVB-Sデジタルテレビ規格、ならびに、2.4GHz帯および5.2GHz帯のWLANといった広帯域移動無線規格である。低周波数範囲の有線通信システム、特に「DSL(デジタル加入者回線)」については、他の応用例がある。各応用例および図示した実施形態を、必要に応じて組み合わせてもよい。
【0066】
〔先行技術文献〕
米国特許第6,342,813号明細書
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す図である。
【図4】本発明の第4実施形態を示す図である。
【図5】本発明の第5実施形態を示す図である。
【図6】ハウジング内について第4実施形態を示す側面図である。
【図7】図6に示した実施形態を示す平面図である。
【図8A】図3に示した実施形態に基づいた、周波数に対する周波数応答を示すためのグラフである。
【図8B】図3に示した実施形態に基づいた、周波数に対する雑音指数を示すためのグラフである。
【符号の説明】
【0068】
1 増幅回路
2 半導体基板
2a ハウジング
6、7 接続接点
8、9 入力部
4、5 ノード
10、11 出力タップ
12、13 入力端子
66、77 接点
90 制御入力部
100 増幅器
101 増幅器の制御入力部
1、L1´、Lp、L2、L2´ 誘導素子、コイル
T 調整可能なキャパシタ
Cin 容量素子
C1、C2、C3、CM キャパシタ
S1、S2、S3 スイッチ
Vin 共振電圧
B、B´ ボンディングワイヤ
B1、B2、…、B5 ボンディングワイヤ
20、21、…、25、26 接続パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力端子(8)と、
第1ノード(4)と少なくとも1つの第2ノード(5)とを有する半導体基板(2)と、
上記半導体基板(2)に集積され、少なくとも1つのトランジスタ、第1入力部(12)、第2入力部(13)、および、上記第1入力部(12)と上記第2入力部(13)との間に配置された容量素子(Cin)を有する、増幅回路(1)と、
共振周波数が調整可能な同調回路と、
上記半導体基板(2)に集積され、制御入力部(90)を有する、上記同調回路に含まれる可変容量素子(CT)であって、上記可変容量素子(CT)の端子は第1ノード(4)と第2ノード(5)との間に接続され、集積された上記増幅回路(1)の上記容量素子(Cin)に対して並列に接続された、上記可変容量素子(CT)と、
少なくとも1つの第1誘導素子(L1´)であって、第1端子によって第1ノード(4)に接続され、第2端子によって第1入力端子(8)に接続された、上記第1誘導素子(L1´)とを含む、テレビ受信機の受信増幅器。
【請求項2】
第2入力端子(9)をさらに含み、共振周波数が調整可能な上記同調回路は第2誘導素子(L1)を備え、上記第2誘導素子(L1)の第1端子は、第2ノード(5)に結合され、上記第2誘導素子(L1)の第2端子は、上記第2入力端子(9)に結合されている、請求項1に記載の受信増幅器。
【請求項3】
上記半導体基板(2)に集積された上記増幅回路(1)の少なくとも1つのトランジスタは、電界効果トランジスタとして構成されている、請求項1または2に記載の受信増幅器。
【請求項4】
上記第1ノード(4)は、上記半導体基板(2)の表面の第1接点(6)であり、上記第2ノード(5)は、上記半導体基板(2)の表面の第2接点(7)である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の受信増幅器。
【請求項5】
上記少なくとも1つの第1誘導素子(L1´、L1)が半導体基板(2)外に配置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の受信増幅器。
【請求項6】
上記第1入力端子(8)と上記第2入力端子(9)との間に、第3誘導素子(Lp)が配置されている、請求項2〜5のいずれか1項に記載の受信増幅器。
【請求項7】
上記可変容量素子(CT)は、並列に配置された複数の電荷格納デバイス(C、C1、C2、C3)を含み、上記電荷格納デバイスの各第1端子が、上記第2ノード(5)に接続され、上記電荷格納デバイスの第2端子が、上記制御入力部の信号によって駆動されるスイッチング装置(Sm、S1、S2、S3)を介して、上記第1ノード(4)に接続されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の受信増幅器。
【請求項8】
上記並列に配置された複数の電荷格納デバイス(C、C1、C2、C3)の容量は、それぞれ同じである、請求項7に記載の受信増幅器。
【請求項9】
上記並列に配置された複数の電荷格納デバイス(C、C1、C2、C3)の中の少なくとも2つの電荷格納デバイスの容量は、1:2の比率で異なっている、請求項7に記載の受信増幅器。
【請求項10】
上記可変容量素子(CT)は、容量を連続的な変化で調整することができるバラクタダイオードを含んでいる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の受信増幅器。
【請求項11】
上記増幅回路(1)は、第1電界効果トランジスタ(T1)と第2電界効果トランジスタ(T2)とを備えた差動増幅器を含み、上記電界効果トランジスタ(T1)のゲート端子は、上記増幅回路(1)の上記第1入力部(12)として構成され、上記電界効果トランジスタ(T2)のゲート端子は、上記第2入力部(13)として構成されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の受信増幅器。
【請求項12】
上記増幅回路(1)の上記可変容量素子(CT)は、上記第1電界効果トランジスタ(T1)と上記第2電界効果トランジスタ(T2)とのゲート−ドレイン間の容量、または、上記第1電界効果トランジスタ(T1)と上記第2電界効果トランジスタ(T2)とのゲート−ソース間の容量を含んでいる、請求項11に記載の受信増幅器。
【請求項13】
上記半導体基板を取り囲み、接続パッド(20、21)を備えたハウジング(2a)と、
上記ハウジング(2a)の上記接続パッド(20、21)を半導体基板(2)の表面の接続接点(6、7)に結合した、帯域消去特性を有する接続手段(B、B1、B1´)とをさらに含んだ、請求項1〜12のいずれか1項に記載の受信増幅器。
【請求項14】
上記接続手段(B、B1、B1´)はボンディングワイヤである、請求項12に記載の受信増幅器。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の受信増幅器を使用する受信増幅器の使用方法であって、
上記容量素子(CT)は、同調回路の共振周波数と、入力端子(8、9)に入力される受信信号の搬送周波数とが同じになるように設定される、受信増幅器の使用方法。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の受信増幅器を使用する受信増幅器の使用方法であって、
ビデオ信号がデジタル信号の形態であるテレビ規格、好ましくはDVB-T規格またはDVB-S規格、の信号を受信するための、受信増幅器の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2007−13948(P2007−13948A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−155653(P2006−155653)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(501209070)インフィネオン テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト (331)
【Fターム(参考)】