説明

デジタル放送の送出装置、受信装置およびデジタル放送システム

【課題】移動体向けのデジタル放送では、電波の受信状態に応じ階層を切り替えた時に映像の連続的な再生が保証されないため、視聴者は違和感を持つ。
【解決手段】デジタル放送の送出装置100は、複数のサイマル放送で送出するストリームを同一の同期信号発生装置101で符号化して送出する。受信装置200の切替判定部208は、複数のサイマル放送のストリームを受信状態(弱階層/強階層)によって切り替え、同期調整部207は受信した同期信号に基づき、映像を途切れずに、連続して表示する。この切り替え時に、一方のストリームから徐々に他方のストリームに切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデジタル放送システムに係り、特にその送出装置および受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビジョン放送のデジタル化が進んでいる。CS、BS、地上波のデジタル放送では、固定受信向け放送が既に開始されているが、今後、デジタル放送では、移動体向けの放送サービスが開始される予定である。
【0003】
移動体での放送受信では、移動中に生じる電波のシャドウイング、フェージング、周波数のドップラーシフト等の要因により、固定受信に比べて、受信状態の変動が大きくなる。このため、移動体で固定受信と同じ高品質な映像や音声を受信しようとしても、電界強度が劣化する場所を通過中には、受信仕切れない場合がある。このように、移動体受信では、移動中に変動する電波の受信状態に対応し、いかにして放送サービスが途切れないようにするかということが、重要な課題である。
【0004】
デジタル放送では、映像情報はデジタル化され、ビットストリーム化して送出される。さらに、その他の情報(例えば音声や、チャンネル情報、番組情報など)のビットストリームとともに多重化され、RF変調を施して、アンテナから放送電波として放送される。これらのビットストリームは以下では単にストリームと呼ぶ。また必要に応じて、映像をビットストリーム化したものを映像ストリーム、音声をストリーム化したものを音声ストリームと呼ぶことにする。
【0005】
デジタル放送には階層伝送という方式がある。階層伝送は、放送における無線チャネル内の帯域を分割し、分割した帯域毎に異なる伝送方式で送信する。弱階層と呼ばれる帯域では、確保可能なダイナミックレンジが狭く、移動受信には弱いが、広帯域を使用して高いビットレートで高品質の映像を送信できる。一方、強階層と呼ばれる帯域では、低いビットレートで低品質の映像となるが、移動受信に強い伝送方式で送信できる。
【0006】
携帯端末の2〜3インチ程度の画面サイズであれば、弱階層で送信できる品質の映像でも、画面が小さいために視聴者は気にならない。しかし、車載端末に搭載される、たとえば7インチ以上の画面サイズでは、従来のアナログテレビ品質であるSDTV(Standard Definition)品質の映像もしくはそれ以上のHDTV(High Definition)品質の映像で見たいという要求がある。
【0007】
従来技術の送出側では、特許文献1に開示されているように、同じコンテンツから高品質の映像ストリームと低品質の映像ストリームを生成し、それぞれ弱階層および強階層によって送出する放送形態(サイマル放送と呼ばれる)が知られている。また、受信側では、電波の受信状態が良い時には弱階層の高品質映像ストリームを表示し、電波の受信状態が悪くなった時には強階層の低品質映像ストリームに切り替えることで、高品質の映像を表示しつつ、電波状態の変動に対応して映像がフリーズしないように表示する方法が知られている。
【0008】
【特許文献1】特開2003−143503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の技術では、ストリームを切り替えた時に、映像が真に途切れなく連続的に表示されることが保証されていなかった。すなわち、強階層用の映像ストリームの符号化と、弱階層用の映像ストリームの符号化に要する処理時間は、それぞれ異なり、さらに揺らぎが発生する。映像コンテンツの入力が同時であっても、出力時には、両者に数ミリ秒から数秒以上のずれが発生する。さらに、放送以外の伝送路を使用する場合には、それ以上のずれが発生する可能性もある。このため、ストリームを多重化して放送し、受信装置で受信した時には、両者にずれが発生している可能性が高い。このように時間的なずれが発生しているストリームを切り替えた場合には、その切り替えの瞬間に映像に映像の進み・戻り、音飛びなどのギャップが生じることになる。
【0010】
特に、移動中は、電界強度が短時間で急激に変動し易く、電界強度が閾値付近にある場合には切り替え判定結果がめまぐるしく変動する。このような状態では、階層の切り替えが頻繁に発生し、時間ずれのある映像が短時間で切り替わるので、映像の連続性が保たれないため視聴者に与える違和感が非常に大きくなる。特許文献1では、切り替えた後、再度他方へ戻る際には、一定時間以上経過しないと戻らない、という手段を用いてこの問題を解決しようとしているが、映像の連続性については何ら保証されない。
【0011】
また、切り替え時には、高品質映像と低品質映像の切り替えが発生する。しかし、弱階層で受信可能な映像は、SDTVもしくはHDTV品質の映像であり、HDTV品質の1080iと呼ばれる映像フォーマットの画素数は、1440x1080となる。一方、強階層で受信可能な映像は、携帯端末等の小さな画面での視聴の場合、QVGA(320x240)もしくはそれ以下のQCIF(176x144)等の小さな画素数となる。このため、両者の切り替え時には大きな画素数のギャップが発生し、視聴者に大きな違和感を与える要因となる。
【0012】
また、車載用の受信装置では、連続性がなく画面が切り替わった瞬間は、運転者の注意を引く要因となり、安全性の低下にもつながる。
【0013】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、切り替えの際に映像が途切れなく連続的に表示できるデジタル放送システム、そのための送出装置と受信装置を提供することにある。これにより、切り替えによって、視聴者に与える違和感を大幅に低減できる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明は、同じ映像コンテンツから生成された高品質の第1の映像符号と低品質の第2の映像符号がそれぞれ同期信号を含んで多重化されている放送信号を受信し、映像の表示を行う映像表示部を有するデジタル放送の受信装置において、 前記放送信号に多重化されたデータを分離する分離処理部と、前記第1の映像符号とその同期信号の復元を行う第1の復号部と、前記第2の映像符号とその同期信号の復元を行う第2の復号部と、復号化された高品質映像信号を保持する第1のバッファと、復号化された低品質映像信号の映像を保持する第2のバッファと、該第2のバッファから低品質映像信号を取り出して拡大処理を行う拡大処理部と、前記高品質映像信号の受信状態を監視してその良否を判定する切替判定部と、前記切替判定部の判定結果が良の場合は前記第1のバッファから高品質映像信号を取り出し、判定結果が否の場合は前記拡大処理部から拡大処理された低品質映像信号を取り出し、前記同期信号のうち遅れている方の同期信号に合わせて前記映像表示部に出力する同期調整部を備えることを特徴とする。
上記の構成をとることにより、本発明のデジタル放送の受信装置はサイマル放送の複数のストリームを、それぞれの受信状態によって切り替え、同期信号に基づき映像を途切れずに、連続して表示することが可能となる。
【0015】
また本発明は、同じ映像コンテンツから生成された高品質の第1の映像符号と低品質の第2の映像符号がそれぞれ同期信号を含み、多重化して送出するデジタル放送の送出装置において、 同期信号を発生する同期信号発生装置と、 映像コンテンツを分配する映像分配装置と、 分配された映像コンテンツの一つを前記同期信号に同期してエンコードし、前記第1の映像符号と該映像符号に同期した同期符号を生成する第1の映像符号化装置と、分配された映像コンテンツの別の一つを前記同期信号に同期して、前記第1の映像符号化装置とは異なる品質でエンコードし、第2の映像符号と該映像符号に同期した同期符号を生成する第2の映像符号化装置と、前記第1の映像符号と第1の同期符号を遅延させる第1の遅延装置と、前記第2の映像符号と第2の同期符号を遅延させる第2の遅延装置と、前記第1の映像符号および第1の同期符号と、前記第2の映像符号および第2の同期符号を、所定時間以下の時間ずれで多重化する多重化装置を備えることを特徴とする。
【0016】
上記の構成をとることにより、本発明に係るデジタル放送の送出装置は、サイマル放送で送出する2つのストリームを、同一の同期信号で符号化して送出することが可能となり、2つのストリームの時間ずれを所定の時間以下に抑えることが可能となる。
また本発明は、同じ映像コンテンツから生成された高品質の第1の映像符号と低品質の第2の映像符号がそれぞれ同期信号を含んで多重化し、放送信号として送出する送出装置と、前記放送信号を受信し映像の表示を行う受信装置を備えるデジタル放送システムにおいて、 前記送出装置に上記に記載のデジタル放送の送出装置、前記受信装置に上記に記載のデジタル放送の受信装置を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるデジタル放送の送出装置および受信装置によれば、ストリーム切り替えの際に、映像が途切れなく連続的に表示される効果がある。
【0018】
本発明によるデジタル放送の送出装置および受信装置によれば、ストリーム切り替えの際に、映像の解像度が変更されても、その切り替えが視聴者に認識されにくいという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態となるデジタル放送の送出装置および受信装置、ならびにその両者を用いたデジタル放送システムについて図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の一実施例によるデジタル放送システムの構成を示すブロック図である。(a)は送出装置100、(b)は受信装置200の構成を示す。
【0021】
送出装置100は放送局に設置され、放送用の映像ストリームを送出するものである。送出装置100は同期信号発生装置101、映像分配装置106、高品質用エンコーダ102、低品質用エンコーダ103、遅延装置120、遅延装置121から構成される。送出装置100は多重化処理装置104、放送装置105と組み合わせることにより、放送装置として利用される。
【0022】
映像分配装置106は、映像コンテンツの入力を受け、該映像コンテンツをデジタル化し、さらにデジタル化した映像コンテンツを分配し、それぞれ高品質用エンコーダ102および低品質用エンコーダ103へ提供する。
【0023】
同期信号発生装置101は、一定周期でクロックパルスを生成し、パルスのカウント値を、エンコーダ102、103に提供する。デジタル放送では、27MHzのクロックパルスが標準的に用いられる。
【0024】
高品質エンコーダ102および低品質エンコーダ103は、映像分配装置106からの映像コンテンツと、同期信号発生装置101からのカウンタ値を取得する。
【0025】
各エンコーダは前記カウンタ値を元に相互に同期を取り、同じカウンタ値の映像フレームからエンコードを開始し、映像符号および同期信号をビットストリーム化して出力する。これらの映像符号、同期信号のビットストリーム(以下同期符号と呼ぶ)は、それぞれ固有のID値を持ち、区別することができる。映像符号には、フレームレート、タイムスタンプをデータブロック毎に付加する。受信側では、タイムスタンプと、同期信号値を比較してフレームレートに従って各フレームを表示することにより、映像の同期を取ることができる。
【0026】
出力された映像符号および同期符号は、多重化処理装置104によって多重化され、放送装置105によって、変調、周波数変換され、無線信号として送出する。
【0027】
この際、一般的には、高品質の映像符号化と低品質の映像符号化に要する時間が異なり、その変換時間には揺らぎを持つため、放送装置105によって送出される時点では、両者に時間的なずれが生じる。このずれは数ミリ秒から数百ミリ秒以上のずれとなる。
【0028】
本実施例による送出装置100では、高品質用エンコーダ102の出力する高品質映像符号と同期符号を一時的に保持し、所定の時間後に多重化処理装置104に送出する遅延装置120を備えている。さらに、低品質用エンコーダ103の出力する低品質用映像符号と同期符号を一時的に保持し、所定の時間後に多重化処理装置104に送出する遅延装置121を備え、上記の時間ずれを吸収することが可能となる。
【0029】
図2に、映像コンテンツから、多重化処理後のストリームを生成する際の概念図を示す。図の横方向は左から右へ時間が進行していく様子をあらわす。1501は、元の映像コンテンツの各フレームを示す。F1〜F7の7枚のフレームにのみ番号を付しているが、その前後にもフレームは存在する。通常、映像コンテンツは1秒間に30フレーム程度の情報量を持つが、図では表しきれないためその一部のみを示している。
【0030】
1502は、同期信号を示す。時刻に対して一定間隔でパルスが生成され、そのカウント値をT1,T10,T20で代表して表す。T1は、映像コンテンツのフレームF1に対応する同期信号のカウント値を示し、T10はF4に、T20はF7にそれぞれ対応するものとする。
【0031】
1511および1512は、高品質用エンコーダ102によって、符号化されたデータを示す。ここでは、1511はフレームF1,F2,F3を符号化し、一つのパケットにまとめたものを示す。1512はフレームF4,F5,F6をまとめたパケットである。パケット1511および1512には、それぞれタイムスタンプとしてT1およびT10をパケット内の情報として付加する。デジタル放送では、このパケットのフォーマットにはPES(Paketized Elementary Stream)が用いられることが一般的である。
【0032】
1581は、実際の映像コンテンツの入力から、パケット1511が生成されるまでの時間遅れを示している。この時間遅れは数秒程度になる。
【0033】
1521〜1525は、パケット1511をさらに細分化したパケットに分割した様子を示す。デジタル放送では、この細分化パケットには、TSP(Transport Stream Packet)が用いられることが一般的である。同様に、1531〜1535は、パケット1512を細分化したパケットを示す。これらのパケット列により高品質映像ストリーム1520が構成される。
【0034】
1541〜1545を含む高品質映像用同期符号ストリーム1540は、高品質用同期符号として、パケットに同期信号のカウント値が収められている。同期符号は、受信機内で同期信号を発生する際のリファレンスとなるものであるため、最終的に多重化したストリーム内で、その時間間隔は十分小さい時間ずれで収められる必要がある。また、受信機内のバッファリングのための時間を考慮し、同じカウント値をタイムスタンプとして持つ細分化パケットよりも一定時間以上遅らせることが一般的である。
【0035】
パケット1591および1592は、低品質エンコーダ103によって符号化されたデータをパケット化したものを示す。1591はフレームF1およびF3の符号化結果とタイムスタンプT1を含み、1592はフレームF4およびF6の符号化結果とタイムスタンプT10を含む。フレームF2およびF5を含んでいないのは、高品質映像に比べてフレームレートを落としていることを示す。ここでは、フレームレートを半分にしている例を示している。
【0036】
1551〜1553および1561〜1563は、それぞれパケット1591および1592を細分化パケットに分割したパケットを示す。また、1550は、これらの細分化パケットから構成される低品質映像ストリームを示す。
【0037】
1571〜1575は、低品質用同期符号として、同期信号のカウント値が収められている同期符号のパケットを示す。1550は低品質用同期符号ストリームを示す。
【0038】
1582は、実際の映像コンテンツの入力から、低品質のパケット1591が生成されるまでの時間遅れを示している。この時間遅れは、高品質のパケット1511の時間遅れ1581と同様に数秒程度になるが、両者は、必ずしも一致せず、さらにはそれぞれ揺らぎが生じる。このため、高品質映像ストリームと、低品質映像ストリームには、同じ時刻の映像コンテンツを符号化した場合に、1583のような時間ずれが生じることになる。
【0039】
1595および1596は、以上の高品質映像ストリーム1520、高品質用同期符号ストリーム1540、低品質映像ストリーム1550、低品質用同期符号ストリーム1570を多重化したストリームを示す。
【0040】
ストリーム1596は、高品質用エンコーダおよび低品質用エンコーダの符号化に要する時間ずれ1583を考慮せず多重化した場合である。ストリーム1596では、同じ時刻の映像コンテンツのフレームが低品質用と、高品質用で大きくずれてしまうため、受信機において相互に切り替えた場合に、映像が連続的に再生するためには大きなバッファが必要となる。一方、ストリーム1595では、両者のずれを吸収し、所定時間内に両者の同時刻のフレームが収められるため、受信機側で持つバッファ容量が少なくて済む。
【0041】
受信機側に十分なバッファを持っていれば、一つの同期信号に基づいてエンコードすることにより、元の映像コンテンツの同じフレームが同じ同期信号のカウント値によるタイムスタンプを持つため、両者を切り替える際に、どちらかの同期符号に基づいて各フレームを表示することで、連続した映像を表示することが可能となる。
【0042】
本実施例による送出装置では、各エンコーダは同一のクロックに従い、同時刻のフレームに対してエンコードを行う。このため、高品質映像のフレームレートは、低品質映像のフレームレートの整数倍となることが望ましい。
【0043】
また、高品質映像の符号化方法にMPEG2、低品質映像の符号化方法にMPEG4を使用する場合、互いのIピクチャのフレーム位置を一致させることが望ましい。
【0044】
次に、デジタル放送の受信装置を説明する。図1(b)の受信装置200は、無線によって放送された放送信号に対して、同調・受信・復調・誤り訂正を行い、TS(トランスポートストリーム)データを取り出す受信処理部201を備える。
【0045】
分離処理装置202は、受信したTSに多重化された高品質の映像符号と、これに同期した同期信号ストリームと、低品質の映像符号とこれに同期した同期信号ストリームとを取り出し、それぞれ高品質映像デコーダ203、低品質映像デコーダ205に振り分ける。
【0046】
高品質用デコーダ203は、高品質の映像ストリームから表示するべき画像フレームと、当該画像フレームのタイムスタンプをデコードし、バッファ204に出力する。低品質用デコーダ205は、低品質の映像ストリームから表示するべき画像フレームと、当該画像フレームのタイムスタンプをデコードし、バッファ206に出力する。
【0047】
切替判定部208は、弱階層データの受信状態を監視し、弱階層データが受信可能な状態から受信不可の状態となったときに、弱階層受信不可の情報を、同期調整処理部207に送信する。
【0048】
また、切替判定部208は、受信処理部の受信状態を監視し、高品質用映像符号が良好な受信状態にあるか否かを判断し、受信状態が不良の場合は、同期調整処理部207に通知する。また、受信状態が不良から良に戻った場合にも、その旨を同期調整処理部207に通知する。
【0049】
切替判定部208における受信状態の監視には、受信処理部201での弱階層受信における受信電力強度やC/N比(搬送波(Carrier)と雑音(Noise)の電力比)、もしくは、受信処理部201での弱階層受信におけるBER(Bit Error Rate)などを用いることが可能である。
【0050】
もしくは、切替判定部208において、受信処理部の情報ではなく、バッファ204に出力される画像フレームを復元した際のノイズの混入率などを用いて、判定を実施しても良い。
【0051】
同期信号発生部209は、固有の周期でクロックパルスを発生し、そのカウンタ値を出力する。また、同期信号を入力とし、同期信号に含まれるカウンタ値に同期し、同期したカウンタ値を出力する機能を持つ。
【0052】
拡大処理部221は、バッファ206に保持された低品質用デコーダによって復号された低品質映像を取り出し、これを高品質映像と同じサイズとなるように拡大処理を施し、同期調整処理部207に提供する。拡大処理部221は、同期調整処理部207の要求に応じてバッファ206から低品質映像を取り出して拡大後、同期調整処理部207に渡す。あるいは、低品質用デコーダ205によって復号された低品質映像を拡大処理部221によって拡大処理を施した後に、バッファ206に保持するようにしても良い。
【0053】
同期調整処理部207は強階層に含まれる同期信号と、弱階層に含まれる同期信号のうち、カウンタ値が遅れている方に合わせて、映像の表示処理を行い、映像表示部211により映像を表示する。この際、同期信号発生部209により得られた、遅く到着する方の同期信号に同期したカウンタ値を得、このカウンタ値によって提示すべき映像のフレームをバッファ204から選び出し、これを提示する。
【0054】
映像フレームを選択する際には、映像フレームに割り当てられたタイムスタンプおよびフレームレートによって選択することが可能である。すなわち、バッファ204に保持された古いフレームから探索し、フレームに付加されたタイムスタンプとフレームレートから、当該フレームを提示すべきカウンタ値を割り出し、この値が現在のカウンタ値以前のものを破棄していく。これにより、現在のカウンタ値において最も近いフレームを取得することが可能である。
【0055】
同様に、同期調整処理部207はバッファ206に含まれる映像フレームに対しても、現在のカウンタ値に最も近いフレームを取得し、それ以前のフレームを破棄する処理をおこなう。
【0056】
初期状態では、上記のように取得したバッファ204に保持される弱階層に含まれる映像を表示する。さらに、切替判定部208から、弱階層データが受信不可状態となった通知を受け取ると、同期調整処理部207はバッファ206から取得した映像フレームを表示する。その一方で、バッファ204から取得した映像フレームは破棄する。
【0057】
以上のような処理を行うことで、同一の同期信号に同期した2つの映像フレームの表示を切り替えることが可能になり、時間的にずれて送られてきた2つの映像を切り替えても、切れ目なく映像を切り替えて表示することが可能になる。
【0058】
図3は、弱階層から強階層の映像に切り替わる様子を示す説明図である。上から下へ、時刻t0、t1、t2、t3、t4と、時刻が進んでいく様子を示している。301〜305は、弱階層で伝送される高品質の映像のデコードされた各時刻におけるフレームを示す。311から313は、強階層で伝送される低品質の映像のデコードされた各時刻のフレームを示す。高品質映像と、低品質映像では、画素数、フレームレートが異なる。
【0059】
いま、図3において、時刻t2において、高階層が受信不可であると判定されたものとして説明する。
【0060】
時刻t0、t1では、同期調整処理部206は高品質映像301および302をバッファ204から取得して表示映像として出力し、低品質映像311はバッファ206から取り出して破棄する。
【0061】
時刻t2において、切替判定部208から弱階層の受信不可判定を受け取ると、時刻t2以降は弱階層の高品質映像303〜305を破棄し、強階層の低品質映像312および313を、それぞれt2およびt4の時刻に、表示映像333および334として画像を拡大して表示する。この場合、時刻t3には、低品質映像のフレームレートが高品質映像よりも落ちるため、この時刻の映像は存在しない。このため時刻t3では、表示映像の更新は行わず、時刻t2の表示映像333と同じ映像が表示される。
【0062】
本実施例によれば、同じ映像コンテンツ(たとえばサイマル放送)から作成された放送の複数のストリームを、高品質映像の受信状態によって切り替え、同期信号に基づき、映像を途切れずに、連続的に表示することが可能となる。
【実施例2】
【0063】
実施例1では、映像の切り替え時に、高品質映像から低品質映像へ、もしくは低品質映像から高品質映像へ、1フレーム分の時間だけで切り替えたが、実施例2では、この切り替えの際に生じるギャップを低減する例を説明する。
【0064】
図4は、本実施例に係るデジタル放送の受信装置の構成を示すブロック図である。図4での構成では、図1の構成に加えて、合成比率生成部1601を含むことを特徴とする。
【0065】
合成比率発生部1601は、同期調整処理部207の要求に従い、0.0〜1.0の間で任意の合成比率を生成する機能を持つ。この際に、開始予定時刻における合成比率の初期値と、終了予定時刻における合成比率の終了値を同期調整処理部207において指定し、この指定に従って合成比率生成部1601は、開始予定時刻から終了予定時刻までの間の合成比率を生成する。
【0066】
図5は、本発明に係る受信端末による映像の表示例である。図3と同様、時刻t0からt4まで、上から下に各時刻に対応した高品質映像401〜405、低品質映像411〜413、低品質映像の拡大映像421〜423および表示映像431〜435を示す。
【0067】
同期調整処理部207は、予め定めた所定時間だけ遅延を持って表示映像を定める。ここでは、現在の時刻がt4である場合には、所定時間前の時刻t0における映像を表示する。
【0068】
時刻t3からt4の間に弱階層が受信不可となると判定された場合には、同期調整処理部207は時刻t0から時刻t3では、高品質映像401〜404および低品質映像411〜413の拡大映像421〜425との所定の比率による画像合成を実施して、表示映像431〜435を生成する。
【0069】
すなわち、時刻t0では、高品質映像401を比率1とし、同時刻における低品質映像411を拡大して画素数を映像401と一致させた拡大映像421の比率を0として、表示映像431を生成する。この場合は、比率は1:0となるため、映像431は、映像401に一致する。
【0070】
時刻t1では、対応する低品質映像が存在しないため、映像432は映像431と同じ映像とする。時刻t2では、映像403と映像423との合成比率を0.5:0.5として合成して、表示映像433を生成する。時刻t3では、時刻t2と同様に、映像434は映像433と同じ映像を表示する。時刻t4では、時刻t0とは逆に、映像405と拡大映像425との合成比率を0:1とし、表示映像435を生成する。この場合は、表示映像435は、拡大映像425と同一となる。
【0071】
以上のような処理を行うことで、映像の解像度が急激に変化せずに、徐々に変化させることが可能となる。たとえば、サイマル放送の複数のストリームを、それぞれの受信状態によって切り替え、切り替え時に、一方のストリームから徐々に他方のストリームに切り替えることが可能である。
【0072】
本実施例の画像フレームの合成においては、低品質映像を拡大した画像フレームと高品質映像の画像フレームを、それぞれ別のプレーンに描画し、上のプレーンに表示した映像の透過率を、合成比率に変換して表示することも可能である。
【実施例3】
【0073】
図6は、本実施例に係るデジタル放送の受信機の構成を示すブロック図である。図6では、図4の構成に加えて、補間処理部1610を含むことを特徴とする。
【0074】
補間処理部1610は同期調整処理部207の指示により、バッファ206から低品質映像の連続した2つのフレームを取り出し、同期調整処理部207の指定した時間間隔によって2つのフレーム間の補間映像を生成する機能を持つ。
【0075】
図7に、本実施例の受信装置による映像の表示例を示す。本実施例では、切り替えの際に生じるギャップの低減するために、フレームレートの補間を行っている。
【0076】
図3と同様に、時刻t0からt4まで、上から下に各時刻に対応した高品質映像501〜505、低品質映像511〜513、低品質映像の拡大映像521〜525および表示映像531〜535を示す。
【0077】
実施例1との違いは、同期調整処理部207によって、低品質映像のフレームが存在しない時刻t1およびt3における拡大映像を、その前後の時刻のフレームから生成しているところである。すなわち、時刻t1のフレームにおける低品質映像の拡大映像522は、その前の時刻t0の低品質映像511と時刻t2の低品質映像512を用いて生成する。時刻t3のフレームにおける低品質映像の拡大映像524は、その前の時刻t0の低品質映像512と時刻t2の低品質映像513を用いて生成する。
【0078】
この際に、拡大映像522の生成においては、低品質映像511および512の間で、映像の符号化を実施し、その間の予測を時間で補間することにより合成画像を得る。拡大映像524の生成も同様である。
【0079】
例えば、511と512の間で、映像の相関値を取得する。この相関値によって、2つのフレーム間で、静止している領域(いずれか一方のフレームにしか存在しない領域も含む)と、移動している領域を検出する。静止している領域は、情報をそのまま用い、移動している領域は、時刻t0から時刻t2までの時間をt1の時刻で移動距離と伸縮率を補間する。以上の情報を元に、静止している領域と、移動している領域とをそれぞれ合成することにより、時刻t1の領域を求めることが可能となる。
【実施例4】
【0080】
図8は、本実施例のデジタル放送受信装置の構成を示すブロック図である。図8では、実施例3(図6)の構成に対して、補間処理部1610が、高品質デコーダ203および低品質デコーダ205から、デコード情報(Iピクチャ、Bピクチャ、Pピクチャ)を取得する。
【0081】
補間処理部1610は同期調整処理部207の指示により、高品質デコーダ203および低品質デコーダ205からデコード情報を取得し、以下に示す処理を実施する。
【0082】
実施例2,3では、各時刻のフレームの低品質映像および高品質映像は、そのまま表示映像として表示できる映像であるものとして説明した。本実施例の受信装置においては、必ずしもこのような場合だけでなく、圧縮して送信された映像情報でもよい。
【0083】
本実施例の受信装置で使用する映像は、高品質映像および低品質映像とも、圧縮符号化されていてもよい。たとえば、一般に映像の圧縮符号化方式として用いられるMPEG−2符号化方式が、高品質映像に利用可能である。また、MPEG−4方式や、ISO/IECの規格によって規定されるH.264符号化方式などが、低品質映像に利用可能である。
【0084】
動画情報の圧縮符号化方式では一般に、静止画と、その静止画との差分情報を伝送する方式が用いられることが多い。すなわち、映像フレーム中の適当な間隔で静止画を送り、静止画と静止画の間は差分情報をのみを送ることにより、伝送する情報量を圧縮するものである。
【0085】
この静止画はIピクチャと呼ばれる。Iピクチャはもとの映像をその他のフレームの情報を用いずに圧縮したフレームであり、単独でフレームを復元できる。
【0086】
差分情報のみが伝送されるフレームは、特性の違いによってPピクチャもしくはBピクチャと呼ばれる。Pピクチャは、その前に送られた過去のフレームとの差分情報によって復元される。一方、Bピクチャは、過去のフレームだけでなく、未来のフレームとの差分情報によって復元される。
【0087】
図9に、低品質映像と高品質映像の各フレーム列の例を示す。図9では、左から右に対し、時間が進んでいく様子を示している。601〜612は、高品質映像の各フレームを示す。631〜637は低品質映像の各フレームを示す。
【0088】
黒く塗りつぶしたフレーム601,609,631,635はIピクチャであることを示す。白色のフレーム602,603,607,608,610,611、632,633,634,636,637はPピクチャを示す。網目のハッチングを施した604,605,606,611,612はBピクチャを示す。低品質映像にはBピクチャを用いていない例である。
【0089】
図10に、高品質映像から低品質映像へ、および高品質映像から低品質映像に切り替わる様子を示す。ここでは、時刻t0、t1、t2における3フレームで高品質映像から低品質映像へ、あるいは高品質映像から低品質映像に切り替わる。
【0090】
図10(a)で、フレーム601は時刻t0における移動領域661と静止領域662である。フレーム602は、フレーム601と比較して、移動領域661が663(661)から664へ移動したことを示す。フレーム603は、フレーム602と比較して、移動領域665(664)から666へ移動したことを示す。
【0091】
図10(b)の低品質映像においても、フレーム631の671は移動領域であり、672は静止領域である。フレーム632では、フレーム631と比較して、移動領域673(671)から674へ移動したことを示す。同様に、フレーム633では、フレーム632と比較して、移動領域675(674)から676へ移動したことを示す。
【0092】
図10(c)のフレーム641〜643は、高品質映像から低品質映像へ切り替えた場合の表示映像である。ここでは、3フレームで切り替える場合を示す。フレーム641はフレーム601と同一であり、フレーム643はフレーム633と同一である。フレーム642では、静止領域682は高品質映像のフレーム601の静止領域662を用い、移動領域681は低品質映像フレーム632の移動領域674を用いて生成している。
【0093】
図10(d)のフレーム651〜653は、低品質映像から高品質映像へ切り替えた場合の表示映像である。ここでも、3フレームで切り替える場合を示す。フレーム651はフレーム631と同一であり、フレーム653はフレーム603と同一である。
【0094】
フレーム652は、静止領域692は低品質映像のフレーム631の静止領域672を用い、移動領域691は高品質映像フレーム602の移動領域664を用いて生成している。
【0095】
本実施例では、さらに多くのフレームを用いて、合成比率生成部1601の合成比率によって、移動領域毎もしくは静止領域毎に合成処理を行うことも可能である。
【0096】
また、静止領域および移動領域のフレーム内における面積比を求め、面積が小さい物体から優先的に遷移させる方法も可能である。
【実施例5】
【0097】
図11に、本発明の他の実施例によるデジタル放送システムの構成を示す。(a)は送出装置、(b)は受信装置のブロック図である。
【0098】
送出装置700では、遅延装置120が図1に示した実施例と異なり、遅延装置121に対して大きな時間差(例えば数分間など)の遅延を生じさせる機能を持つ。これにより、低品質映像ストリームを、高品質用ストリームよりも数分間早く送出することが可能となる。
【0099】
放送装置105は、低品質用エンコーダによる映像符号および同期信号と、そこから所定の時間だけ遅延させた高品質用エンコーダによる映像符号および同期信号と、を多重化した信号を放送する。
【0100】
受信装置800は遅延装置801を持つ。受信装置800は受信した低品質用映像符号および同期信号を遅延装置801に保持する。一方、高品質用映像符号を高品質用同期信号により再生し、表示する。同期調整処理部207は遅延装置801から、高品質映像用の同期信号と同じタイムスタンプを持つ映像符号を検索し、切替判定部208によって、弱階層の受信不可状態となったときに、遅延装置801から低品質用デコーダ205により復号化され、バッファ206に蓄えられている低品質用映像に切り替える。
【0101】
以上のような構成とすることにより、高品質映像と低品質映像を時間的に大きくずらして伝送することが可能となる。例えば、トンネルの中に入って小さなバッファでは足りなくなってしまうような場合でも、タイムシフト再生として映像を視聴することが可能となる。
【実施例6】
【0102】
図12に、本発明のさらに他の実施例によるデジタル放送システムを示す。(a)はデジタル放送の送出装置、(b)は受信装置のブロック図である。送出装置900および受信装置1000は、それぞれ通信装置901および通信装置1001を持つ。
【0103】
通信装置901は、低品質用エンコーダ109によって符号化された映像符号および同期信号を、通信によって受信装置1000に送信する。この際、映像符号は多重化処理装置104へ出力されるものと同じ信号でもよいが、通信装置901の帯域が不足する場合は、符号化パラメタを変更し、通信装置901の送信可能な帯域以下となるように符号のビットレートを変更する。
【0104】
送出装置900は、実施例5(図11)の遅延装置120および121に加えて、遅延装置780を備える。遅延装置780は、遅延装置120および121に比べて遅延時間が最小となるようにする。
【0105】
通信装置901は、受信装置1000の通信装置1001と通信を行い、映像符号および同期信号を送る。受信装置1000の切替判定部208は、弱階層の受信可否判定のほかに、強階層の受信可否判定を実施し、弱階層および強階層の両方が受信不可となった場合は、通信装置1001から受信した映像符号および同期信号を元に再生する低品質映像に切り替える。
【0106】
以上の構成とすることにより、放送電波がまったく受信できなくなった場合でも、通信を介して受信した映像を再生することが可能となる。また、実施例5で示したように、各階層および通信装置により受信した映像符号および同期信号を蓄積装置を経由して送出もしくは受信することで、タイムシフト再生を行うことも可能である。
【実施例7】
【0107】
図13に本発明に係るデジタル放送の受信装置のさらに他の実施例を示す。本実施例では、同期補正部1101を有することにより、送出側において、第1の映像信号と第2の映像信号がずれていても、受信装置側でこれを補正し、ずれなく表示することが可能となる。
【0108】
受信装置1100は、高品質用デコーダ203の出力から第1の映像の特徴量を抽出する特徴量抽出部1102と、抽出された特徴量を時系列に保持するバッファ1104を具備する。また、低品質用デコーダ205の出力から第2の映像の特徴量を抽出する特徴量抽出部1103と、抽出された特徴量を時系列に保持するバッファ1105を具備する。同期補正部1101は、各バッファに保持された特徴量の時系列データを比較し、時刻のずれ量を検出する。
【0109】
図14に時刻ずれ量の検出概念図を示す。1201は、第1の映像から検出された特徴量を時系列にプロットしたグラフである。1202は、第2の映像から検出された特徴量を時系列にプロットしたグラフである。時刻ずれ量1203を変化パラメタとして両者の差分が最小となるようにした値を時刻ずれ量として求める。たとえば、差分の最小二乗和を求める方法や、相関係数を求める方法がある。
【0110】
同期補正部1101は、検出した時刻ずれ量によって、第1の映像、第2の映像に対する同期信号発生部209からの同期信号を補正し、→Okその補正した値を同期調整処理部207に渡し、同期調整処理部207は補正された同期信号によって処理を実施する。
【0111】
たとえば、先に送られてきている映像の同期信号を時刻ずれ量だけ遅延させて同期調整処理部207に渡せばよい。
【0112】
本実施例により、送出側で、2つの映像の同期を厳密にあわせて送出しなくても、受信側での同期調整により、2つの映像のずれを補正して表示することが可能となる。
【0113】
特徴量としては、各フレーム画像そのものを用いることが可能である。MPEG圧縮方式を用いた場合には、特徴量として、すべてのフレーム画像ではなく、Iピクチャ画像のみを用いる方法が可能である。
【0114】
また、特徴量として、映像におけるシーンの切り替わりを検出し、その時間間隔を用いることが可能である。または、MPEG圧縮方式を用いた場合には、特徴量として、動きベクトルを画像サイズで正規化した値を用いることが可能である。
本実施例の受信装置によれば、複数のストリームの時間ずれが所定の時間より大きいときも、自動的にそのずれを検出して、そのずれを吸収することにより、切り替えても連続して映像を表示することが可能となる。
【実施例8】
【0115】
図15に本発明におけるデジタル放送受信装置のさらに他の実施例を示す。本実施例での同期補正部1101は、放送事業者毎テーブル1301を持つ。放送事業者毎テーブル1301は、放送事業者毎に第1の映像と第2の映像の時刻ずれ量をあらかじめ記録しておくデータテーブルである。
【0116】
同期補正部1101は、受信チャンネル情報に従い、受信している放送事業者を特定し、当該放送事業者に対応する、時刻ずれ量を放送事業者毎テーブル1301から検索して取り出し、この取得した時刻ずれ量に基づき、実施例7に示した処理を行う。
【0117】
放送事業者毎に時刻ずれ量がほぼ一定である場合には、送出側で2つの映像の同期を厳密にあわせて送出しなくとも、受信側での同期調整により2つの映像のずれを補正して表示することが可能となる。
【0118】
以上の実施例では、複数の階層からなる放送形態について記載しているが、高品質映像と低品質映像は同一階層で伝送してもよい。この場合、変調方式による伝搬障害に対する耐性は同等となるが、周波数ダイバーシティと同等の効果が期待できる。また、デジタル放送の送出装置および受信装置による実施例で記載しているが、地上デジタル放送や、衛星を用いたデジタル放送のいずれでも適用可能である。一方、通信方式に依存するものではないため、放送に限らず携帯電話やPHS、無線LAN等各種の無線を用いた通信方式において、伝送経路を複数持ちうる映像の配信に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の実施例1によるデジタル放送システムの構成図。
【図2】実施例1による多重化処理後のストリームを生成する際の概念図。
【図3】実施例1で弱階層から強階層の映像への切り替えを示す説明図。
【図4】本発明の実施例2によるデジタル放送の受信機の構成図。
【図5】実施例2の映像の切り替えを示す説明図。
【図6】本発明の実施例3によるデジタル放送の受信機の構成図。
【図7】実施例3の映像の切り替えを示す説明図。
【図8】本発明の実施例4によるデジタル放送の受信機の構成図。
【図9】実施例4の映像の切り替え方式を示す説明図。
【図10】実施例4の映像の切り替えを示す説明図。
【図11】本発明の実施例5によるデジタル放送システムの構成図。
【図12】本発明の実施例6によるデジタル放送システムの構成図。
【図13】本発明の実施例7によるデジタル放送の受信機の構成図。
【図14】時刻ずれ量の検出概念図。
【図15】本発明の実施例8によるデジタル放送の受信機の構成図。
【符号の説明】
【0120】
100…デジタル放送の送信装置、101…同期信号発生装置、102…高品質用エンコーダ、103…低品質用エンコーダ、104…多重化処理装置、105…放送装置、200…デジタル放送の受信装置、201…受信処理部、202…分離処理部、203…高品質用デコーダ、204…バッファ、205…低品質用デコーダ、206…バッファ、207…同期調整処理部、208…切替判定部、209…同期信号発生部、211…映像表示部、301〜305…高品質映像フレーム、311〜313…低品質映像フレーム、331〜334…表示映像フレーム、401〜405…高品質映像フレーム、411〜413…低品質映像フレーム、421〜425…低品質映像の拡大フレーム、432〜435…表示映像フレーム、501〜505…高品質映像フレーム、511〜513…低品質映像フレーム、521〜525…低品質映像の拡大フレーム、531〜535…表示映像フレーム、601〜612…高品質映像フレーム、631〜637…低品質映像フレーム、661,663〜666…高品質映像の移動領域、662…静止領域、671,673〜676…低品質映像の移動領域、641〜643…高品質映像から低品質映像への切り替え表示映像、651〜653…低品質映像から高品質映像への切り替え表示映像、681…拡大された低品質映像の移動領域、682…高品質映像の静止領域、691…高品質映像の移動領域、692…拡大された低品質映像の静止領域、700…デジタル放送の送信装置、701…送出用蓄積装置、800…デジタル放送の受信装置、801…受信用蓄積装置、900…デジタル放送の送信装置、901…送出用通信装置、1000…デジタル放送の受信装置、1001…受信用通信装置、1100…デジタル放送の受信装置、1101…同期補正部、1102…特徴量抽出部、1103…特徴量抽出部、1104…バッファ、1105…バッファ、1201…第1の映像の特徴量、1202…第2の映像の特徴量、1203…時刻ずれ量、1301…放送事業者毎時刻ずれテーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ映像コンテンツから生成された高品質の第1の映像符号と低品質の第2の映像符号がそれぞれ同期信号を含んで多重化されている放送信号を受信し、映像の表示を行う映像表示部を有するデジタル放送の受信装置において、
前記放送信号に多重化されたデータを分離する分離処理部と、前記第1の映像符号とその同期信号の復元を行う第1の復号部と、前記第2の映像符号とその同期信号の復元を行う第2の復号部と、復号化された高品質映像信号を保持する第1のバッファと、復号化された低品質映像信号の映像を保持する第2のバッファと、該第2のバッファから低品質映像信号を取り出して拡大処理を行う拡大処理部と、前記高品質映像信号の受信状態を監視してその良否を判定する切替判定部と、前記切替判定部の判定結果が良の場合は前記第1のバッファから高品質映像信号を取り出し、判定結果が否の場合は前記拡大処理部から拡大処理された低品質映像信号を取り出し、前記同期信号のうち遅れている方の同期信号に合わせて前記映像表示部に出力する同期調整部を備えることを特徴とするデジタル放送の受信装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記同期調整部は高品質映像の表示と低品質映像の表示を切り替える際に、予め定めた所定時間の間に、前記高品質映像から前記低品質映像へ、もしくは、前記低品質映像から前記高低品質映像へ、徐々に切り替えることを特徴としたデジタル放送の受信装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1のバッファおよび前期第2のバッファは、少なくとも前記所定時間分の映像フレーム画像を保持し、
前記同期調整部は、前記第1のバッファに保持する映像フレーム画像と前記第2のバッファに保持する映像フレーム画像とを、所定の合成比率で合成処理し、
前記切替判定部が切替指示を出した時から前記所定時間後までに、前記合成比率を、切替指示が出された時点の合成比率から最終の合成比率まで、フレーム表示毎に徐々に変更することを特徴としたデジタル放送の受信装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記高品質映像の表示から前記低品質映像の表示に切り替える際には、
前記最終の合成比率は、前記高品質映像の割合を0、前記低品質映像の割合を1とすることを特徴とするデジタル放送の受信装置。
【請求項5】
請求項3または4において、
前記低品質映像の表示から前記高品質映像の表示に切り替える際には、
前記最終の合成比率は、前記低品質映像の割合を0、前記高品質映像の割合を1とすることを特徴としたデジタル放送の受信装置。
【請求項6】
請求項3、4または5において、
前記合成処理は、解像度の高い方の画素数に合わせ、画素毎に前記合成比率に従った加重平均を取ることを特徴とするデジタル放送の受信装置。
【請求項7】
請求項3、4または5において、
前記高品質映像の符号化にはMPEG2符号化を用い、
前記低品質映像の符号化にはMPEG4符号化を用い、
前記合成処理には、マクロブロック単位で比率を調整することを特徴とするデジタル放送の受信装置。
【請求項8】
請求項3、4または5において、
前記高品質映像の符号化にはMPEG2符号化を用い、
前記低品質映像の符号化にはMPEG4符号化を用い、
前記合成処理には、前記合成比率の設定が大きい方のMPEG符号のIピクチャを用い、
前記合成比率に応じて、PピクチャもしくはBピクチャは、他方のMPEG符号のピクチャを用いてデコードを行うことを特徴としたデジタル放送の受信装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記合成比率の設定が大きい方のMPEG符号のIピクチャを用い、
PピクチャもしくはBピクチャは、前記合成比率に応じて、マクロブロック単位で合成処理してデコードを行うことを特徴としたデジタル放送の受信装置。
【請求項10】
請求項7、8または9において、
前記同期調整処理部は、前記映像符号の切り替えの際には、前記合成比率の小さい方の映像に対し、前記PピクチャもしくはBピクチャの占める面積もしくはデータ量が大きい場合に前記合成処理を行うことを特徴とするデジタル放送の受信装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかにおいて、
受信用蓄積装置を有し、少なくとも前記第1の映像符号および同期信号と、前記第2の映像符号および同期信号と、前記切替判定部の判定情報を表す判定信号を前記受信用蓄積装置に蓄積し、
受信後に前記受信用蓄積装置から再生する場合に、前記判定信号を用いて、前記受信用蓄積装置から再生した前記第1の映像符号と、前記第2の映像符号を切り替えることを特徴としたデジタル放送の受信装置。
【請求項12】
同じ映像コンテンツから生成された高品質の第1の映像符号と低品質の第2の映像符号がそれぞれ同期信号を含み、多重化して送出するデジタル放送の送出装置において、
同期信号を発生する同期信号発生装置と、 映像コンテンツを分配する映像分配装置と、
分配された映像コンテンツの一つを前記同期信号に同期してエンコードし、前記第1の映像符号と該映像符号に同期した同期符号を生成する第1の映像符号化装置と、
分配された映像コンテンツの別の一つを前記同期信号に同期して、前記第1の映像符号化装置とは異なる品質でエンコードし、第2の映像符号と該映像符号に同期した同期符号を生成する第2の映像符号化装置と、
前記第1の映像符号と第1の同期符号を遅延させる第1の遅延装置と、前記第2の映像符号と第2の同期符号を遅延させる第2の遅延装置と、
前記第1の映像符号および第1の同期符号と、前記第2の映像符号および第2の同期符号を、所定時間以下の時間ずれで多重化する多重化装置を備えることを特徴とするデジタル放送の送出装置。
【請求項13】
同じ映像コンテンツから生成された高品質の第1の映像符号と低品質の第2の映像符号がそれぞれ同期信号を含んで多重化し、放送信号として送出する送出装置と、前記放送信号を受信し映像の表示を行う受信装置を備えるデジタル放送システムにおいて、
前記送出装置に請求項12に記載の送出装置、前記受信装置に請求項1−11の何れかに記載の受信装置を用いることを特徴とするデジタル放送システム。
【請求項14】
請求項13において、
前記送出装置は、前記第1の映像符号および同期信号を蓄積する送出用蓄積装置を有し、該送出用蓄積装置は所定の時間だけ遅延した前記第1の映像符号および同期信号を前記多重化装置に出力し、
前記受信装置は、前記第2の映像符号および同期信号を蓄積する受信用蓄積装置を有し、前記第2の映像符号および同期信号として、前記受信用蓄積装置に蓄えた符号および信号を用いることを特徴とするデジタル放送システム。
【請求項15】
請求項12に記載のデジタル放送システムにおいて、
前記送出装置は、送出用通信装置を有し、第3の映像符号および同期信号を送出用通信装置を介して送信し、
前記受信装置は、受信用通信装置を有し、前記第3の映像符号および同期信号を受信用通信装置を介して受信し、
前記切替判定部の判定により前記第1の映像符号が受信不可の状態となった場合に、前記第2の映像符号もしくは前記第3の映像符号に切り替えることを特徴としたデジタル放送システム。
【請求項16】
同じ映像コンテンツから生成された高品質の第1の映像符号と低品質の第2の映像符号がそれぞれ同期信号を含んで多重化されている放送信号を受信するデジタル放送の受信装置において、
前記放送信号に多重化されたデータを分離する分離処理部と、
前記第1の映像符号と第1の同期信号からの復元を行う第1の復号部と、
前記第2の映像符号と第2の同期信号からの復元を行う第2の復号部と、
復号化された第1の映像を保持する第1のバッファと、
復号化された第2の映像を保持する第2のバッファと、
第1の映像の放送信号の受信状態もしくは受信時のビットエラーレート、または復号状態を監視し、第1の映像の表示もしくは非表示を判定する切替判定部と、
復号された前記第1の映像もしくは前記第2の映像を表示する映像表示部と、
前記第1の映像の同期信号と前記第2の映像の同期信号とのずれを検出し、前記第1の映像もしくは第2の映像のうち先行する映像を、前記ずれの分だけ遅延させることにより、前記ずれを補正する同期補正部とを備え、
前記切替判定部の判定結果に基づき、前記第1の映像と前記第2の映像を切り替えることを特徴としたデジタル放送の受信装置。
【請求項17】
請求項16において、
前記同期補正部は、前記第1の映像の特徴量を抽出する第1の特徴抽出部と、特徴量の時系列データである第1の特徴データを保持する第3のバッファと、
前記第2の映像の特徴量を抽出する第2の特徴抽出部と、特徴量の時系列データである第2の特徴データを保持する第3のバッファと、を具備し、
前記第1の特徴データと前記第2の特徴データの時間的相関を解析することにより、同期信号のずれを検出することを特徴としたデジタル放送の受信装置。
【請求項18】
請求項17において、
前記特徴データとして、デコードされた画像を用いるデジタル放送の受信装置。
【請求項19】
請求項17において、
前記映像の特徴量として、Iピクチャ画像を用いるデジタル放送の受信装置。
【請求項20】
請求項17において、
前記映像の特徴量として、映像の切り替わり情報を用いるデジタル放送の受信装置。
【請求項21】
請求項17において、
前記映像の特徴量として、正規化した動きベクトル値を用いるデジタル放送の受信装置。
【請求項22】
請求項16において、
前記同期補正部は、放送事業者毎に前記第1の同期信号と前記第2の同期信号のずれを補正するためのテーブルを保持し、該テーブルの情報によって、前記同期のずれを補正することを特徴としたデジタル放送の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−115264(P2006−115264A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301068(P2004−301068)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】