説明

データ処理装置

【課題】 刺繍縫目を生かしつつ、刺繍では表現できない多彩でリアルな表現やグラデーション表現を、印刷により補足的に行えるようにすること。
【解決手段】 イメージスキャナで読み込んだカラー画像の画像データから複数の刺繍領域を画定する領域データを作成すると共に、複数の刺繍領域の各々に刺繍する為の刺繍データを作成し(S11〜S12)、複数の刺繍領域のうちから印刷対象刺繍領域を指定する為に、刺繍データに含まれる複数の糸色のうちから任意の糸色を指定し(S15)、指定された印刷対象刺繍領域に対応する一部の画像データからその印刷対象刺繍領域に印刷する為の印刷データを作成し(S16)、刺繍データに基づいて刺繍処理し(S18)、その後、印刷データに基づいて印刷処理する(S19)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍ミシンに用いる刺繍データとプリンタに用いる印刷データとを処理するデータ処理装置に関し、特に布地に刺繍を施した後に更に刺繍の少なくとも一部に重ねて印刷を施すことにより、刺繍では表現できないリアルな彩りやグラデーション表示を実現するようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多数の針落ち点データ(所謂、ステッチデータ)からなる刺繍データを用いて、布地に刺繍ミシンにより刺繍するだけでなく、最近では、刺繍データからビットマップデータである印刷データに展開し、刺繍模様をプリンタで印刷できるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の多機能刺繍システムは、刺繍データに基づいて、刺繍領域の輪郭線を抽出し、更に、その輪郭線で規定される領域全体に亙ってビットマップデータに展開することにより、刺繍データから画像データを作成する技術が開示されている。
【0004】
この場合の刺繍データには、刺繍領域毎の刺繍データの先頭部に刺繍を行う際の糸色を指定する色指定データ(糸色データ)が夫々含まれており、その色指定データを画像データに付随させることにより、刺繍領域(輪郭線内の領域)を実際に縫製する際の色でカラー表示させたり、プリンタによりカラー印刷できるようにしてある。
【0005】
ところで、近年、加工布に印刷が可能なプリンタが実用化されてきている。そこで、例えば、Tシャツ等の布地にプリンタを用いて印刷すると共に、刺繍ミシンにより刺繍を施すことにより、刺繍の良さと印刷の良さとを融合させて、風合いの有るTシャツを作成したいという要望がある。
【特許文献1】特開平11−76662号公報 (第9頁、図13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、風合いのある布製品を作成するために、画像データに基づいて印刷を行い、更に刺繍データに基づいて刺繍縫いを行うに際して、前述した特許文献1に記載の多機能刺繍システムの印刷技術を用いた場合、刺繍データに基づいて刺繍領域の輪郭線を抽出し、その輪郭線内の刺繍領域を色指定データに基づいてベタ塗り状に印刷するだけであるため、刺繍を施す刺繍部分と印刷を行う印刷部分との区別が明確化されず、刺繍領域の全てに亙って印刷が行われることになる。
【0007】
それ故、プリンタで使用する印字用インクを無駄に消費するだけでなく、刺繍と印刷の混在による満足のできる立体感や風合い感、更にはリアル感を何ら表現することができないこと、等の問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係るデータ処理装置は、刺繍可能なミシンにより刺繍する刺繍データと、その刺繍領域により刺繍された領域の少なくとも一部に重ねてプリンタで印刷する印刷データとを処理するデータ処理装置であって、カラー画像の画像データから複数の刺繍領域を画定する領域データを作成すると共に、複数の刺繍領域の各々に刺繍する為の刺繍データを作成する刺繍データ作成手段と、複数の刺繍領域のうちから印刷対象刺繍領域を指定する為に、刺繍データに含まれる複数の糸色のうちから任意の糸色を指定する色指定手段と、色指定手段で指定された印刷対象刺繍領域に対応する一部の画像データからその印刷対象刺繍領域に印刷する為の印刷データを作成する印刷データ作成手段とを備えたものである。
【0009】
カラー画像の画像データに基づいて、複数の刺繍領域を画定する領域データを作成するとともに、その複数の刺繍領域の各々に刺繍する為の刺繍データを作成する。更に、複数の刺繍領域のうちから印刷対象刺繍領域を指定する為に、刺繍データに含まれる複数の糸色のうちから任意の糸色を指定すると、指定された印刷対象刺繍領域に対応する一部の画像データからその印刷対象刺繍領域に印刷する為の印刷データが作成される。そこで、刺繍データに基づいて刺繍した後、印刷データに基づいて、刺繍に重ねて印刷される。
【0010】
請求項2に係るデータ処理装置は、請求項1の発明において、前記印刷データ作成手段は、印刷対象刺繍領域の印刷色の濃さを、その刺繍領域に刺繍される刺繍糸の糸色の分だけ低減するように印刷データを補正処理する色補正手段を有するものである。
【0011】
請求項3に係るデータ処理装置は、刺繍可能なミシンにより刺繍する刺繍データと、その刺繍領域により刺繍された領域の少なくとも一部に重ねてプリンタで印刷する印刷データとを処理するデータ処理装置であって、刺繍データに基づいて糸色の異なる複数の刺繍領域を画定する領域データを作成する領域データ作成手段と、刺繍データと領域データを受けて、同系色の色別に刺繍領域をメッシュ分割し、各メッシュ領域の糸色の平均色のデータを作成する平均色データ作成手段と、領域データと平均色データを受けて、同系色の色毎に各メッシュ領域をそれに隣接するメッシュ領域に亙って色が段階的に変化するように、各メッシュ領域を細分化した細分化領域データと細分化領域色データとを作成する細分化データ作成手段と、細分化データ作成手段で作成された細分化領域データと細分化領域色データとに基づいて、刺繍領域に印刷する印刷データを作成する印刷データ作成手段とを備えたものである。
【0012】
刺繍データに基づいて糸色の異なる複数の刺繍領域を画定する領域データを作成し、その刺繍データと領域データに基づいて、同系色の色別に刺繍領域をメッシュ分割し、各メッシュ領域の糸色の平均色のデータを作成する。更に、領域データと平均色データとに基づいて、同系色の色毎に各メッシュ領域をそれに隣接するメッシュ領域に亙って色が段階的に変化するように、各メッシュ領域を細分化した細分化領域データと細分化領域色データとを作成し、その細分化領域データと細分化領域色データとに基づいて、刺繍領域に印刷する印刷データが作成される。そこで、刺繍データに基づいて刺繍した後、印刷データに基づいて、刺繍に重ねて印刷される。
【0013】
請求項4に係る刺繍データ処理装置は、請求項3の発明において、前記同系色の色には、濃い色と淡い色とを含むものである。
【0014】
請求項5に係るデータ処理装置は、刺繍可能なミシンにより刺繍する刺繍データと、その刺繍領域により刺繍された刺繍領域の一部又は全部に重ねてプリンタで印刷する印刷データとを処理するデータ処理装置であって、印刷用の複数種の図柄パターンを予め記憶したパターン記憶手段と、パターン記憶手段に記憶された複数種の図柄パターンのうちから任意の図柄パターンを指定するパターン指定手段と、刺繍データに基づいて複数の刺繍領域を画定する領域データを作成する領域データ作成手段と、複数の刺繍領域のうちの任意の刺繍領域を指定する領域指定手段と、領域データ作成手段で画定された複数の刺繍領域の領域データを受けて、パターン指定手段で指定された図柄パターンを、領域指定手段で指定された刺繍領域に適用し印刷する為の印刷データを作成する印刷データ作成手段とを備えたものである。
【0015】
刺繍データに基づいて複数の刺繍領域を画定する領域データを作成し、複数の刺繍領域のうちの任意の刺繍領域を指定するとともに、パターン記憶手段には、印刷用の複数種の図柄パターンが予め記憶されているので、複数種の図柄パターンのうちから任意の図柄パターンを指定すると、複数の刺繍領域の領域データに基づいて、指定された図柄パターンを、指定された刺繍領域に適用して印刷する為の印刷データが作成される。そこで、刺繍データに基づいて刺繍した後、印刷データに基づいて、刺繍に重ねて印刷される。
【0016】
請求項6に係るデータ処理装置は、請求項5の発明において、前記パターン記憶手段が予め設定された複数種のグラデーションパターンを記憶し、前記印刷データ作成手段は、パターン指定手段で指定されたグラデーションパターンを、領域指定手段で指定された刺繍領域に適用して印刷する為の印刷データを作成するように構成されたものである。
【0017】
請求項7に係るデータ処理装置は、請求項6の発明において、前記パターン記憶手段に格納された複数種のグラデーションパターンは、モノクロの階調パターンのデータと色指定データとで夫々設定されているものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、刺繍可能なミシンにより刺繍する刺繍データと、その刺繍領域により刺繍された領域の少なくとも一部に重ねてプリンタで印刷する印刷データとを処理するデータ処理装置であって、刺繍データ作成手段と、色指定手段と、印刷データ作成手段とを設けたので、カラー画像の画像データに基づいて作成された刺繍データの複数の刺繍領域のうちから、印刷対象刺繍領域を糸色により指定するだけで、その指定された印刷対象刺繍領域に関する印刷データが部分的に作成されるので、刺繍データに基づいて刺繍しただけでは、少ない糸色によりリアル感や風合い感が十分に表現できないが、その後に、刺繍に重ねてカラー画像に近い印刷データでカラフルに印刷することで、刺繍模様にリアル感や風合い感を十分に表現することができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、前記印刷データ作成手段は、印刷対象刺繍領域の印刷色の濃さを、その刺繍領域に刺繍される刺繍糸の糸色の分だけ低減するように印刷データを補正処理する色補正手段を有するので、印刷された色の濃さは刺繍糸の糸色の濃さに影響されることがなく、元の画像の風合いと同じ風合い表現が可能になる。その他請求項1と同様の効果を奏する。
【0020】
請求項3の発明によれば、刺繍可能なミシンにより刺繍する刺繍データと、その刺繍領域により刺繍された領域の少なくとも一部に重ねてプリンタで印刷する印刷データとを処理するデータ処理装置であって、領域データ作成手段と、平均色データ作成手段と、細分化データ作成手段と、印刷データ作成手段とを設けたので、刺繍データと、刺繍データから作成された領域データに基づいて、同系色の色別に刺繍領域をメッシュ分割する一方、各メッシュ領域の糸色の平均色のデータを作成するとともに、各メッシュ領域を細分化した細分化領域データと細分化領域色データとに基づいて印刷データが作成される。
【0021】
そこで、刺繍データに基づく刺繍の後、細分化領域毎に補正された印刷データに基づいて、刺繍に重ねて印刷されるので、同系色の刺繍領域に関して、グラデーションのように色を段階的に変化するように滑らかに印刷でき、リアル感や風合い感を十分に表現することができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、前記同系色の色には、濃い色と淡い色とを含むので、色の濃淡に関して滑らかに表現することができ、リアル感や風合い感の表現効果をより高めることができる。その他請求項3と同様の効果を奏する。
【0023】
請求項5の発明によれば、刺繍可能なミシンにより刺繍する刺繍データと、その刺繍領域により刺繍された刺繍領域の一部又は全部に重ねてプリンタで印刷する印刷データとを処理するデータ処理装置であって、パターン記憶手段と、パターン指定手段と、領域データ作成手段と、領域指定手段と、印刷データ作成手段とを設けたので、刺繍データに基づいて画定された複数の刺繍領域のうちの任意の刺繍領域を指定しておき、所望の図柄パターンを指定するだけで、指定された図柄パターンを、指定された刺繍領域に適用して印刷する為の印刷データが作成され、刺繍データに基づいて刺繍した後、刺繍に重ねて図柄パターンを印刷することにより、刺繍模様に所望の図柄パターンを印刷でき、バリエーションに富んだ風合い感を表現することができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、前記パターン記憶手段に予め設定された複数種のグラデーションパターンが記憶されており、所望のグラデーションパターンを指定することにより、指定されたグラデーションパターンを刺繍領域に適用して印刷する為の印刷データが作成され、刺繍データに基づいて刺繍した後、刺繍に重ねてグラデーションパターンを印刷することにより、刺繍模様の色合いが段階的に変化するように滑らかに印刷でき、リアル感や風合いを十分に表現することができる。その他請求項5と同様の効果を奏する。
【0025】
請求項7の発明によれば、前記パターン記憶手段に格納された複数種のグラデーションパターンは、モノクロの階調パターンのデータと色指定データとで夫々設定されているので、グラデーションパターンに適用する色を任意に指定することができ、グラデーションパターンによる色表現に応用性を持たせることができる。その他請求項6と同様の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本実施例におけるデータ処理装置は、刺繍可能なミシンにより刺繍される刺繍模様による色表現における貧弱さを、多彩な色を用いたカラー印刷により容易に補足できるようにしてある。
【実施例】
【0027】
先ず、図1に示すように、データ処理装置1に、インクジェットプリンタ3を備えた刺繍ミシン2が電気的に接続され、この刺繍ミシン2に接続された枠駆動装置4は、各種の形状の刺繍枠5を着脱可能に装着し、刺繍縫いに際してだけでなく、インクジェットプリンタ3による印刷に際して、その刺繍枠5を直交する2方向(X方向とY方向)に移動駆動できるようになっている。
【0028】
データ処理装置1は、図2に示すパーソナルコンピュータからなり、制御全体を司る制御装置10、この制御装置10に接続されたマウス11と、キーボード12と、イメージスキャナ13と、カラーのディスプレイ14等を備えている。制御装置10は、CPU21とROM22とRAM23とこれらを接続するバス24とを含むマイクロコンピュータと、バス24に接続されハードディスク(HD)25を備えたハードディスクドライブ(HDD)26と、入出力インターフェース27等を有する。
【0029】
また、バス24には、フレキシブルディスクの為のフレキシブルディスクドライブ(FDD)28と、CD−ROMの為のCD−ROMドライブ29も接続されている。入出力インターフェース27には、キーボード12と、マウス11と、イメージスキャナ13と、ディスプレイ14を駆動する為の表示駆動回路30と、通信用インターフェース(通信用I/F)31を介して刺繍ミシン2とが夫々接続されている。
【0030】
ROM22には、パーソナルコンピュータの電源ON時に、パーソナルコンピュータを起動させる起動プログラム等が格納されている。RAM23には、イメージスキャナ13やフレキシブルディスクやCD−ROMから読み込んだ印刷図柄の為の画像データを格納する画像データメモリ、刺繍模様の為の刺繍データを格納する刺繍データメモリ、CPU21で演算処理した演算結果を収容する各種メモリ、バッファ、ポインタ、カウンタ等が必要に応じて設けられている。
【0031】
一方、ハードディスク25には、OS(オペレーティング・システム)や、マウス11とキーボード12とイメージスキャナ13とディスプレイ14等を使用可能とする為の各種のドライバ、アプリケーションプログラム等が組み込まれると共に、イメージスキャナ13やフレキシブルディスクやCD−ROMから記録されている画像データや刺繍データを読み込む読込み制御プログラム、その読み込まれた画像データや刺繍データを画像データメモリや刺繍データメモリに格納するデータ入力制御プログラム、画像データから印刷データを作成する印刷データ作成制御や画像データから刺繍データを作成する刺繍データ作成制御の制御プログラム、刺繍データから印刷データを作成する印刷データ作成制御プログラム、後述のデータ処理制御の為の制御プログラム(図4参照)等、各種の制御プログラムも格納されている。
【0032】
図3に示すように、刺繍ミシン2の刺繍ミシン本体2aには、通信用インターフェース(通信用I/F)41介してデータ処理装置1に接続された制御ユニット42、各種操作スイッチ43、主軸位置検出センサ44、ミシンモータ45及びその駆動回路46等が設けられている。ミシンモータ45により主軸(図示略)が回転駆動されて針棒上下駆動機構(図示略)により針棒が上下に往復駆動され、その針棒に取付けられた縫針と、ベッド部に設けられた糸捕捉機構(図示略)とが協動して、刺繍枠5に保持された布地Wに刺繍縫目が形成される。
【0033】
インクジェットプリンタ3には、制御ユニット51、各種操作スイッチ52、4色(シアン,マゼンタ,イエロー,ブラック)の為の4列のインクノズルをユニット化したプリントヘッド53、ヘッド昇降モータ54、パージ駆動モータ55、パージ移動モータ56、プリントヘッド53とモータ54〜56の為の駆動回路57〜60が設けられている。プリントヘッド53は、制御ユニット51から印字指令を受けると、圧電セラミックアクチュエータの撓みによりインクを下側の布地Wに向けてインクノズルから噴射する。
【0034】
枠駆動装置4には、キャリッジ位置検出センサ61、枠駆動装置4る装着された刺繍枠5をX方向に移動させるX方向駆動モータ62とその駆動回路63、刺繍枠5をY方向に移動させるY方向駆動モータ64とその駆動回路65等が設けられている。枠駆動装置4は、刺繍ミシン本体2aの制御ユニット42やインクジェットプリンタ3の制御ユニット51から枠移動信号を受けると、X方向駆動モータ62とY方向駆動モータ64を駆動させて刺繍枠5をX方向とY方向とに移動させる。
【0035】
次に、データ処理装置1の制御装置で実行されるデータ処理制御のルーチンについて、図4のフローチャートに基づいて説明する。但し、図中の符号Si(i=11、12、13・・・)は各ステップである。
【0036】
カラー画像を描いた用紙Yをイメージスキャナ13にセットし、ディスプレイ14に表示されたメインメニューのうちの「データ処理」を選択すると、例えば、図6に示すように、「データ処理メニュー」が表示されるので、作業者がポインタにより、或いはカーソルにより最初の「第1グラデーション処理」を選択すると、図4に示す第1データ処理制御が開始される。
【0037】
この制御が開始されると、先ず、イメージスキャナ13にセットされたカラー画像の画像データが読み込まれる(S11)。次に、その読み込まれたカラーの画像データに基づいて、刺繍データ作成制御プログラムにより刺繍データを作成する刺繍データ作成処理が実行される(S12)。次に、その刺繍データに基づいて、サテン縫目やタタミ縫目等の縫目形式や糸色で指定される刺繍領域を求める為に、刺繍データの解析処理が実行される。(S13)。
【0038】
その解析処理について簡単に説明すると、先ず、刺繍データに含まれる各針落ち点(合計n個とする)を、縫製順にPi(i=1,2,・・・,n)とする。変数iに初期値「1」をセットし、針落ち点Piを原点として直交座標系を設定する。図5−1,図5−2に示すように、針落ち点Piから針落ち点Pi+1 へ至る方向にX軸を設け、X軸に対して針落ち点Piを中心に反時計回りに90°回転した方向にY軸を設け、針落ち点Pi+1 の座標(Xi+1 ,0)と針落ち点Pi+2 の座標(Xi+2 ,Yi+2 )を読み込み、RAM23の座標メモリに記憶する。
【0039】
次に、Xi+1 とXi+2 との値を比較し、Xi+1の方が大きい場合には、針落ち点Pi+1 の属性を仮輪郭に設定し、Xi+2 ≧Xi+1 の場合には、針落ち点Pi+1 の属性を仮走りとして設定する。ここで、図5−1に示すように、針落ち点Pi+1 が輪郭点である場合、その両側のステッチSi,Si+1 に折り返しが発生する。この場合、Xi+2 の値はXi+1 の値よりも小さくなる(Xi+2 <Xi+1 )。
【0040】
そこで、この場合、針落ち点Pi+1 の属性を、輪郭点と推定できるという意味で仮輪郭とし、針落ち点Pi+1 が走り点である場合、図5−2に示すように、Xi+2 ≧Xi+1 となる。そこで、この場合、針落ち点Pi+1 の属性を、走り点と推定できるという意味で仮走りとする。尚、針落ち点P1 ,Pn には、強制的に仮走りの属性を付与する。
【0041】
このように、変数iの値を順次増加させながら、これらの処理を繰り返し実行し、i+1=nとなった場合、つまりi+1=2〜n−1の全ての針落ち点Pi+1 に対して仮輪郭または仮走りの属性を付与したことになる。そこで、次のように縫目形式の分類を行う。先ず、変数iに1,2,3,・・・を順次セットしながら、針落ち点Pi+1 に仮輪郭の属性が付与されているか否かを判断する。Pi+1 が仮走りの場合は、変数iに次の大きな値をセットして再度判断する。
【0042】
一方、針落ち点Pi+1 が仮輪郭の場合、その針落ち点Pi+1 が、仮走りの属性を付与された針落ち点と隣接しているか否か、すなわち、針落ち点Pi又はPi+2 の何れかが仮走りであるか否かを判断する。仮走りと隣接している場合、その針落ち点Pi+1 に仮輪郭の属性を付与したループで記憶したYi+2 を読み出す。
【0043】
その針落ち点Piの前後に配設される仮輪郭の針落ち点に対して同様に記憶されたYi+2 と異符号である場合には、針落ち点Pi+1 の縫目属性を仮タタミ輪郭とし、同符号である場合には、針落ち点Pi+1 の縫目属性を仮走りとする。
【0044】
一方、仮輪郭の針落ち点Pi+1 が仮走りの針落ち点と隣接していない場合であって、Yi+2 の符号が前後の仮輪郭で交互に入れ替わっている場合、その針落ち点Pi+1 を仮サテン輪郭とし、Yi+2 の符号が交互に入れ替わっていない場合は、その針落ち点Pi+1 を仮走りとする。
【0045】
そして、最終的に、仮タタミ輪郭の属性を付与された全ての針落ち点のデータについて、前後の針落ち点の形状や、糸密度、タタミパタン等を検出し、それに基づいて刺繍模様の輪郭を確定する処理を実行し、タタミ縫いを行うタタミ刺繍領域を確定する。
【0046】
また、仮サテン輪郭の属性を付与された全ての針落ち点のデータについて、前後の針落ち点の形状,糸密度等を検出し、それに基づいて刺繍模様の輪郭を確定する処理を実行し、サテン縫いを行うサテン刺繍領域を確定する。
【0047】
最後に、これら仮タタミ輪郭や仮サテン輪郭として確定されなかった残りの針落ち点のデータに対し、その針落ち点を走り点として縫目ピッチと形状に従った確定を行い、走り縫いを行う走り刺繍領域を確定する。
【0048】
次に、刺繍データの解析結果に基づいて、刺繍模様の刺繍領域が縫目表示を伴ってディスプレイ14にカラー表示される(S14)。次に、このようにカラー表示された刺繍領域について、作業者によりポインタを用いて印刷対象とする刺繍領域を糸色で指定する色指定処理が実行される(S15)。
【0049】
次に、解析処理により求められた複数の刺繍領域のうち、糸色で指定された刺繍領域に対応する一部の画像データからその印刷対象刺繍領域に印刷する為の印刷データを作成する印刷データ作成処理が実行される(S16)。次に、このように、作成された印刷データについて、印刷対象刺繍領域に印刷色の濃さを、その刺繍領域に刺繍される刺繍糸の糸色の分だけ低減するように印刷データを補正する印刷データの色補正処理が実行される(S17)。
【0050】
次に、前述したS12で作成された刺繍データに基づいて、刺繍ミシン2により刺繍処理が実行されるとともに(S18)、S17により求められた補正後の印刷データに基づいて、インクジェットプリンタ3により印刷処理が実行され(S19)、この制御を終了する。ここで、データ処理制御の特にS12等から刺繍データ作成手段が構成され、データ処理制御の特にS15等から色指定手段が構成され、データ処理制御の特にS17等から色補正手段が構成され、データ処理制御の特にS16等から印刷データ作成手段が構成されている。
【0051】
次に、第1データ処理の作用及び効果について説明する。
作業者が、先ず、図7に示すように、カラー画像である「花籠」を描いた用紙Yをイメージスキャナ13にセットし、図6に示す「データ処理メニュー」から、作業者がポインタPにより最初の「第1グラデーション処理」を選択すると、その花籠のカラー画像データが読み込まれ、更に、そのカラー画像「花籠」の画像データに基づいて、刺繍データが作成される。
【0052】
その刺繍データ作成処理においては、カラー画像の画像データから複数の刺繍領域を画定する領域データを作成するとともに、複数の刺繍領域の各々に刺繍する為の刺繍データが作成される。この刺繍データについては、例えば、図8に示すように、輪郭の為の枠模様、花模様、籠模様の各々について、刺繍ミシン2により刺繍を行う際の糸の色を示す糸色コード及び針落ち点(送り量)を示す縫目データ等より構成され、多数の縫目データが糸切りコードで区切られた複数の刺繍領域として格納される。但し、例えば、サテン縫目で形成される花模様の糸色として、濃い桃色や薄い桃色等の桃色に関する同系色、濃い橙や淡い橙等の橙に関する同系色の色が格納されている。
【0053】
次に、図9に示すように、刺繍模様の刺繍領域がカラー表示されるので、作業者がポインタPにより花模様の「桃色」を指定すると、その桃色に対応する刺繍領域が指定され、図10に示すように、桃色の刺繍領域だけが抽出されて、選択的にディスプレイ14に表示される。このとき、カラーの画像データのうちの桃色の刺繍領域に関する一部の画像データから印刷データが作成される。
【0054】
このように、刺繍データと印刷データが夫々作成されたので、作業者が指示した刺繍処理により、図11に示すように、刺繍枠5にセットされた布地Wに花籠が刺繍される。この場合、図8に示す刺繍データに基づいて、特に花模様に関しては濃い桃色や淡い桃色からなる少ない糸色の刺繍糸により刺繍されているだけなので、「花びら」にはリアル感や風合い感が十分に表現されてはいない。
【0055】
そこで、次に、作業者が指示した印刷処理により、図12に示すように、刺繍枠5にセットされた布地Wに花模様だけが、刺繍に重ねて印刷される。この場合、印刷データは元のカラー画像の画像データであるため、複数色からなる花模様がカラフルに印刷されるので、「花びら」のリアル感や風合い感を十分に発揮できるため、花籠全体をリアル的に表現することができる。
【0056】
尚、上述した色指定処理においては、刺繍模様中の1色を指定して印刷データを作成する例を示したが、これに限らず、必要に応じて複数の色の指定や、全ての色の指定を可能にし、これら指定された複数の色の領域に対して印刷データを作成するうよに構成しても良い。
【0057】
次に、図6に示す「データ処理メニュー」のうちから、作業者がポインタPにより「第2グラデーション処理」を選択すると、図13に示す第2データ処理制御が開始される。この制御が開始されると、CD−ROMやRAM23に格納された複数の刺繍データのうちから予め選択された刺繍データが読み込まれる(S21)。次に、複数の刺繍領域を画定する為に、領域データ作成処理(刺繍データの解析処理)が実行される(S22)。
【0058】
この領域データ作成処理については、図5−1,図5−2に基づいて前述したのと同様である為、その説明を省略する。次に、領域データ作成処理による解析結果に基づいて、先ず、走り縫いにより縁取りされた輪郭データが削除され(S23)、同系色毎に刺繍データが抽出される(S24)。即ち、例えば、濃い桃色や薄い桃色については桃色と同系色であるので、これら濃い桃色と薄い桃色を含む桃色に関する刺繍データが抽出される。
【0059】
次に、同系色の色別の全ての刺繍領域をメッシュ分割したメッシュ領域毎に平均色データを作成する平均色データ作成制御(図14参照)が実行される(S25)。この制御が開始されると、先ず、同系色の色別の全ての刺繍領域について、細かいメッシュ状に分割し、多数のメッシュ領域を設けるメッシュ領域化処理が実行され(S31)、次に、各メッシュ領域毎に含まれる刺繍領域毎の色濃度値が演算される(S32)。
【0060】
次に、これら刺繍領域毎の色濃度値を平均化した平均色が演算され(S33)、この制御を終了して第2データ処理制御のS26にリターンする。第2データ処理制御において、同系色の色毎に各メッシュ領域をそれに隣接するメッシュ領域に亙って色が段階的に変化するように、各メッシュ領域を細分化する細分化データ作成制御(図15参照)が実行される(S26)。
【0061】
この制御が開始されると、先ず、相互に隣接するメッシュ領域の各々について、各メッシュ領域を3分割する第1回目の細分化処理を行い、細分化した細分化領域毎の細分化領域データと各細分化領域の領域色データとが演算される(S41)。次に、S41で細分化された細分化領域の各々について、各細分化領域を更に3分割する第2回目の細分化処理を行い、細分化した細分化領域毎の細分化領域データと各細分化領域の領域色データとが演算される(S42)。
【0062】
更に、S42で細分化された細分化領域の各々について、各細分化領域を更に3分割する第3回目の細分化処理を行い、細分化した細分化領域毎の細分化領域データと各細分化領域の領域色データとが演算され(S43)、この制御を終了して第2データ処理制御のS27にリターンする。第2データ処理制御において、S26で作成された細分化領域毎の細分化領域データと細分化領域色データとに基づいて、刺繍領域に印刷する印刷データが作成される(S27)。
【0063】
次に、S21で読み込んだ刺繍データに基づいて、刺繍糸による刺繍処理が実行される(S28)。但し、この刺繍に際して、同系色のうち、淡い糸色の刺繍糸により刺繍が施される。次に、作業者が指示した印刷処理により、S27で作成された印刷データに基づいてインクジェットプリンタ3により、刺繍に重ねて印刷が行われる(S29)。
【0064】
ここで、第2データ処理制御の特にS22等により領域データ作成手段が構成され、第2データ処理制御の特にS25等により平均色データ作成手段が構成され、第2データ処理制御の特にS26等により細分化データ作成手段が構成され、第2データ処理制御の特にS27等により印刷データ作成手段が構成されている。
【0065】
次に、第2データ処理の作用及び効果について説明する。
作業者が、図6に示す「データ処理メニュー」から、作業者がポインタPにより「第2グラデーション処理」を選択すると、予め選択した刺繍模様「花籠」の刺繍データが読み込まれ、タタミ縫目やサテン縫目等の縫目形式や糸色で画定される刺繍領域の領域データが求められ、輪郭データが削除される。
【0066】
その後、同系色毎の刺繍データとして、例えば、図16に示すように、桃色の刺繍データが抽出され、その桃色の刺繍領域について、例えば、図17に示すように、5mm 間隔の枡目状のメッシュ領域に分割され、メッシュ領域毎の平均色データが演算される。例えば、図18に示す2つのメッシュ領域M35,M36について説明する。このメッシュ領域M35,M36には、濃い桃色の刺繍領域M35a,M36aと淡い桃色の刺繍領域M35b,M36bとが混在している。
【0067】
ところで、ROM22には、図19に示す平均色濃度値テーブルT1と、図20に示す細分化処理テーブルT2とが夫々格納されている。平均色濃度値テーブルT1においては、メッシュ領域における濃い糸色が占める領域の割合(100 %、80%、60%、40%、0 %)である濃度判定値に基づいて、そのメッシュ領域の平均色の濃度値D( 5、4、3、2、1)とを対応させてある。
【0068】
更に、細分化処理テーブルT2においては、平均色の濃度値Dと1回目の細分化データとを対応させてある。但し、この細分化処理テーブルT2には、2回目の細分化データと、3回目の細分化データとを対応させたデータとが格納されているが、同様なので図示を省略するものとする。
【0069】
そこで、図18に示すメッシュ領域M35の平均色の濃度値Dは、濃い糸色が占める領域の割合(60%)に対応する「3」に、メッシュ領域M36の平均色の濃度値Dは、濃い糸色が占める領域の割合(40%)に対応する「2」に設定される。それ故、3分割された1回目の細分化データとして、メッシュ領域M35について、左側の細分化領域については細分化領域色データ「3.5 」、中央の細分化領域については細分化領域色データ「3.0 」、右側の細分化領域については細分化領域色データ「2.5 」が設定される。
【0070】
また、メッシュ領域M36について、左側の細分化領域については細分化領域色データ「2.5 」、中央の細分化領域については細分化領域色データ「2.0 」、右側の細分化領域については細分化領域色データ「1.5 」が設定される。但し、各メッシュ領域M35,M36の各々について、上下に隣接するメッシュ領域同士についても平均色データ作成処理及び細分化処理が実行されるが、同様である為、その説明を省略する。最終的に、このように作成された細分化領域毎の細分化領域データと細分化領域色データとに基づいて、刺繍領域Ea、Ebに印刷する印刷データが作成される。
【0071】
そして、読み込まれた刺繍データに基づいて、刺繍処理が施される。但し、この刺繍に際して、同系色の糸色のうち、淡い糸色で刺繍される。例えば、桃色の同形色については、淡い桃色の刺繍糸で刺繍される。その後、作成された印刷データに基づいて印刷処理が実行(図12参照)される。
【0072】
このように、刺繍データと、刺繍データから作成された領域データに基づいて、同系色の色別に刺繍領域をメッシュ分割する一方、各メッシュ領域の糸色の平均色のデータを作成するとともに、各メッシュ領域を細分化した細分化領域データと細分化領域色データとに基づいて印刷データが作成される。そこで、刺繍データに基づく刺繍の後、平均色に補正された印刷データに基づいて、刺繍に重ねて印刷するだけで、同系色の刺繍領域に関して、グラデーションのように色を段階的に変化するように滑らかに印刷でき、リアル感や風合い感を十分に表現することができる。
【0073】
尚、上述した細分化処理については一例を示すものであり、これに限らず、必要に応じて適宜変更したものを採用することもできる。例えば、図20に示す細分化処理テーブルT2においては、均等幅の細分化領域とした例を示したが、これを異なる幅を有する細分化領域(例えば、中央の細分化領域の幅を全体の2分の1の幅とし、左右の細分化領域の幅を夫々全体の4分の1の幅とした細分化領域)とすることもできる。
【0074】
また、同図における細分化領域色データにより示される値についても、適宜変更したものを使用することができる。更に、メッシュ領域の分割に関しても、上述の3分割処理に限らず、2分割処理や4分割処理とすることも可能である。
【0075】
ところで、図6に示す「データ処理メニュー」のうちから、作業者がポインタPにより「第3グラデーション処理」を選択すると、図21に示す第3データ処理制御が開始される。この制御が開始されると、先ず、CD−ROMやRAM23に格納された複数の刺繍データのうちから予め選択された刺繍データがが読み込まれる(S51)。次に、複数の刺繍領域を画定する為に、刺繍データの解析処理が実行される(S52)。この領域データ作成処理については前述したので、ここではその詳しい説明を省略する。
【0076】
次に、ディスプレイ14に、複数の刺繍領域のカラー表示と、複数種類のグラデーションパターン及びその色パレットが表示される(S53)。これら複数種類のグラデーションパターンは、予めROM23に格納されているものとする。そこで、作業者は、ポインタを移動させながらグラデーションパターンを適用する刺繍領域と、グラデーションパターンと、グラデーションに用いる色を夫々指定する指定処理が実行される(S54)。
【0077】
次に、指定された色で着色された指定されたグラデーションパターンを、指定された刺繍領域全体に適用する適用処理が実行される(S55)。次に、このように刺繍領域全体にグラデーションパターンにより着色されたカラフルな印刷データが刺繍領域毎に作成される(S56)。そして、S51で読み込んだ刺繍データに基づいて、刺繍糸による刺繍処理が実行される(S57)。但し、この刺繍に際しては、白糸により刺繍が施される。
【0078】
次に、作業者が指示した印刷処理により、S56で作成された印刷データに基づいてインクジェットプリンタ3により、白糸の刺繍に重ねて印刷が行われる(S58)。ここで、データ処理装置1の制御装置10に有するROM22がパターン記憶手段に相当し、第3データ処理制御の特にS54によりパターン指定手段と領域指定手段とが構成され、第3データ処理制御の特にS56により印刷データ作成手段が構成されている。
【0079】
次に、第3データ処理の作用及び効果について説明する。
作業者が、図6に示す「データ処理メニュー」から、作業者がポインタPにより「第3グラデーション処理」を選択すると、予め選択した刺繍模様「花籠」の刺繍データが読み込まれ、タタミ縫目やサテン縫目等の縫目形式や糸色で画定される刺繍領域の領域データが求められる。
【0080】
その後、例えば、図22に示すように、ディスプレイ14には、その右側に刺繍模様「花籠」の刺繍領域がカラー表示されるとともに、その左側に、9種類(No.1〜No.9) のグラデーションパターンが表示され、その下側に複数色のカラーパレットが表示される。ここで、ROM22には、これら9種類のグラデーションパターンが予め格納されている。
【0081】
即ち、グラデーションパターン(No.1〜No.9) の各々は、モノクロの階調パターンデータと色指定データとで設定されている。そこで、作業者は、ポインタPを移動させながら、グラデーションパターンを適用する刺繍領域と、その刺繍領域に適用するグラデーションパターンと、そのグラデーションパターンに適用する色とを指定する。
【0082】
その結果、指定された色を用いて、指定されたグラデーションパターン(例えば、No4)を指定された刺繍領域(花の刺繍領域と籠の刺繍領域)の全体に適用して印刷データが作成される。但し、このように、グラデーションパターンを刺繍領域に適応させる場合、グラデーションパターンを刺繍領域の全体に適用できるように、グラデーションパターンの大きさが刺繍領域の大きさに応じて拡大処理又は縮小処理される。
【0083】
この場合、No4のグラデーションパターンと、「茶色」及び「ピンク」と、「花籠」全体を指定した場合、刺繍枠5にセットされた布地Wに、刺繍データに基づいて、白い刺繍糸により刺繍縫いされた後、印刷データに基づいてカラー印刷されると、図23に示すように、籠の下側と上側の把手部とが色指定した「茶色」で、しかも中央部の「花」については、色指定した「ピンク」でグラデーション印刷される。
【0084】
このように、刺繍データに基づいて画定された複数の刺繍領域のうちの任意の刺繍領域を指定しておき、所望のグラデーションパターンを指定するだけで、指定されたグラデーションパターンを、指定された刺繍領域に適用し印刷する為の印刷データが作成されるので、刺繍した後、刺繍に重ねてグラデーション印刷することにより、刺繍模様を、グラデーションのように色を段階的に変化するように滑らかに印刷でき、リアル感や風合い感を十分に表現することができる。
【0085】
尚、上述の第3データ処理制御においては、刺繍ミシン2による刺繍後、刺繍に重ねる印刷図柄として、グラデーションパターンを重ねる例を示したが、このようなグラデーションパターンに限らず、各種の図柄パターンを刺繍に重ねるように構成しても良い。この場合、刺繍に重ねる為の複数種の印刷用図柄パターンをROM22に記憶し、この記憶された図柄パターンより任意の図柄パターンを指定することにより、当該図柄パターンを刺繍領域に重ねて印刷する為の印刷データが作成されることとなる。
【0086】
これにより、例えば、刺繍ミシン2による刺繍を単一の白色の糸で行った後に、刺繍領域に対して所望の図柄パターンを印刷することができ、バリエーションに富んだ刺繍模様を表現することが可能になる。
【0087】
次に、前記実施の形態の変更形態について説明する。
【0088】
1〕図13に示す第2データ処理制御のS26において、細分化処理は3回に限られるものでもなく、3回以上であってもよく、しかも1回の細分化処理では、4つ以上の細分化領域に細分化するようにしてもよい。
【0089】
2〕データ処理装置1は刺繍ミシン2とは別体に設けたが、刺繍ミシン2の制御ユニット42がデータ処理装置1を兼ね備えるように構成するようにしてもよい。この場合、パーソナルコンピュータからなるデータ処理装置1を別途準備しなくてもよく、刺繍ミシン2を有効活用することができる。
【0090】
3〕本発明は以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、当業者でれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施例に種々の変更を付加して実施することができ、本発明はそれらの変更形態をも包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施例に係るデータ処理装置とインクジェットプリンタを有する刺繍ミシンと枠駆動装置の接続図である。
【図2】データ処理装置の制御系のブロック図である。
【図3】刺繍ミシンとインクジェットプリンタと枠駆動装置の制御系ブロック図である。
【図4】第1データ処理制御のフローチャートである。
【図5−1】折り返し縫目を含む場合の輪郭点の検出原理を説明する説明図である。
【図5−2】折り返し縫目を含まない場合の図12−1相当図である。
【図6】データ処理メニューの表示例を示す図である。
【図7】カラー画像を描いた用紙の平面図である。
【図8】刺繍データのデータ構成を説明する図表である。
【図9】花籠の刺繍領域の表示例を示す図である。
【図10】桃色の刺繍領域を抽出した表示例を示す図である。
【図11】布地に刺繍された刺繍模様「花籠」を示す図である。
【図12】布地に刺繍と印刷された刺繍模様「花籠」を示す図である。
【図13】第2データ処理制御のフローチャートである。
【図14】メッシュ領域毎の平均色データ作成制御のフローチャートである。
【図15】メッシュ領域毎の細分化データ作成制御のフローチャートである。
【図16】刺繍データのうちの桃色同形色による刺繍領域を示す図である。
【図17】桃色同形色の刺繍領域をメッシュ分割したメッシュ領域を示す図である。
【図18】メッシュ領域の拡大説明図である。
【図19】平均色濃度値テーブルのデータ構成を説明する図表である。
【図20】細分化処理テーブルのデータ構成を説明する図表である。
【図21】第3データ処理制御のフローチャートである。
【図22】刺繍領域とグラデーションパターンと色パレットの表示例を示す図である。
【図23】布地に刺繍と印刷された刺繍模様「花籠」を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1 データ処理装置
2 刺繍ミシン
3 インクジェットプリンタ
10 制御装置
22 ROM
W 布地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺繍可能なミシンにより刺繍する刺繍データと、その刺繍領域により刺繍された領域の少なくとも一部に重ねてプリンタで印刷する印刷データとを処理するデータ処理装置であって、
カラー画像の画像データから複数の刺繍領域を画定する領域データを作成すると共に、複数の刺繍領域の各々に刺繍する為の刺繍データを作成する刺繍データ作成手段と、
複数の刺繍領域のうちから印刷対象刺繍領域を指定する為に、前記刺繍データに含まれる複数の糸色のうちから任意の糸色を指定する色指定手段と、
前記色指定手段で指定された印刷対象刺繍領域に対応する一部の画像データからその印刷対象刺繍領域に印刷する為の印刷データを作成する印刷データ作成手段と、
を備えたことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項2】
前記印刷データ作成手段は、前記印刷対象刺繍領域の印刷色の濃さを、その刺繍領域に刺繍される刺繍糸の糸色の分だけ低減するように印刷データを補正処理する色補正手段を有することを特徴とする請求項1に記載のデータ処理装置。
【請求項3】
刺繍可能なミシンにより刺繍する刺繍データと、その刺繍領域により刺繍された領域の少なくとも一部に重ねてプリンタで印刷する印刷データとを処理するデータ処理装置であって、
前記刺繍データに基づいて糸色の異なる複数の刺繍領域を画定する領域データを作成する領域データ作成手段と、
前記刺繍データと領域データを受けて、同系色の色別に前記刺繍領域をメッシュ分割し、各メッシュ領域の糸色の平均色のデータを作成する平均色データ作成手段と、
前記領域データと平均色データを受けて、同系色の色毎に各メッシュ領域をそれに隣接するメッシュ領域に亙って色が段階的に変化するように、各メッシュ領域を細分化した細分化領域データと細分化領域色データとを作成する細分化データ作成手段と、
前記細分化データ作成手段で作成された細分化領域データと細分化領域色データとに基づいて、刺繍領域に印刷する印刷データを作成する印刷データ作成手段と、
を備えたことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項4】
前記同系色の色には、濃い色と淡い色とを含むことを特徴とする請求項3に記載のデータ処理装置。
【請求項5】
刺繍可能なミシンにより刺繍する刺繍データと、その刺繍領域により刺繍された刺繍領域の一部又は全部に重ねてプリンタで印刷する印刷データとを処理するデータ処理装置であって、
印刷用の複数種の図柄パターンを予め設定して格納したパターン記憶手段と、
前記パターン記憶手段に記憶された複数種の図柄パターンのうちから任意の図柄パターンを指定するパターン指定手段と、
前記刺繍データに基づいて複数の刺繍領域を画定する領域データを作成する領域データ作成手段と、
前記複数の刺繍領域のうちの任意の刺繍領域を指定する領域指定手段と、
前記領域データ作成手段で画定された複数の刺繍領域の領域データを受けて、前記パターン指定手段で指定された図柄パターンを、前記領域指定手段で指定された刺繍領域に適用して印刷する為の印刷データを作成する印刷データ作成手段と、
を備えたことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項6】
前記パターン記憶手段は、予め設定された複数種のグラデーションパターンを記憶し、 前記印刷データ作成手段は、前記パターン指定手段で指定されたグラデーションパターンを、前記領域指定手段で指定された刺繍領域に適用して印刷する為の印刷データを作成することを特徴とする請求項5に記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記パターン記憶手段に格納された複数種のグラデーションパターンは、モノクロの階調パターンのデータと色指定データとで夫々設定されていることを特徴とする請求項6に記載のデータ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−205514(P2006−205514A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19852(P2005−19852)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】