説明

ナビゲーション装置、プログラム、及び地図スクロール方法

【課題】ユーザのスライド操作に応じて、様々なパターンで地図スクロールを行うことが可能なナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】地図を表示する画面を有する表示部と、画面に対する押下操作を検出する検出部と、検出部により検出された押下操作の押下開始位置座標及び押下終了位置座標を記憶する記憶部と、押下操作に基づいて地図を画面においてスクロールさせる制御部と、を備え、検出部により検出された押下操作の開始時から終了時までの押下時間を測定する計時手段を更に有し、押下開始位置座標、押下終了位置座標、及び押下時間から、当該押下操作位置の移動距離、移動方向及び移動速度を算出し、当該算出された押下操作位置の移動距離及び移動速度に対応させたパターンで、移動方向へと地図を慣性的にスクロールさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザのスライド操作に応じた地図スクロールを行うことが可能なナビゲーション装置、プログラム、及び地図スクロール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS衛星からの電波を利用した車両の現在位置の測位と、角度センサ、距離センサ等を利用した車両の相対的な移動量の測定とによって車両の移動軌跡を求め、この移動軌跡をCD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体、又は無線通信等を介して接続されるサーバ装置に格納された地図データの道路形状と比較することにより地図上の現在位置を測位して、現在位置とその周辺地図とを液晶ディスプレイに表示することができるナビゲーション装置が知られている。
【0003】
例えば、車載用のナビゲーション装置の場合、目的地を入力すると、現在地から目的地までの案内経路を自動的に探索して、当該経路を液晶ディスプレイの道路上に表示することにより、初めて行く目的地でも迷わずに短時間で行くことができる。液晶ディスプレイ上には、自車の現在位置と探索された案内経路が表示され、縮尺を変えることにより、遠距離にある目的地でも現在位置と同じ画面に表示することができる。また、スクロールキーや液晶ディスプレイ上に設けられたタッチパネルを操作することにより地図画面をスクロールさせて、所望の場所を表示することができる。
【0004】
タッチパネルを利用したスクロール方法として、画面上で押下した位置を画面の中心に移動させるスクロール方法(以下、ワンタッチスクロール方法)や、画面の中心位置を基準として押下した位置の方向に連続して移動するスクロール方法(以下、スムーズスクロール方法)等が存在する。
例えば、特許文献1には、上記ワンタッチスクロール方法とスムーズスクロール方法とを組み合わせた技術が開示されている。具体的には、タッチパネルの押下位置が表示画面の中心になるようにスクロールさせるとともに、その押下がそのまま継続された場合には、押下が解除されるまで当該押下方向にスクロールを継続する。従って、画面を複数回タッチせずとも、所望の位置まで地図を移動させることができる。
【特許文献1】特開2002−323850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、特に遠距離に地図をスクロールさせる際、必ずしもユーザにとって便利であるとはいえなかった。具体的には、ワンタッチスクロール方法は画面に表示されている任意の位置を押下して当該押下位置を画面の中央に移動させるものであり、画面に入っていない領域を表示させるためには押下操作を複数回繰り返すか、又は所望する領域が画面上に含まれるよう地図の縮尺を調整し、ワンタッチスクロール実行後に地図の縮尺を元に戻す等の処理が必要となり、煩雑な操作となる。また、スムーズスクロール方法の場合、画面を継続して押下し続ける必要があり、画面の中心から遠い位置を表示させるためにはタッチパネルを押下し続けるか、又はワンタッチスクロール方法と同様に縮尺の調整を併せて行う等の煩雑な操作が必要となっていた。
上記した課題は特許文献1のようにワンタッチスクロール方法とスムーズスクロール方法とを組み合わせた場合においてもまったく解決されていない。そのため、特に車載用のナビゲーション装置においては、操作が煩雑であり、運転中に前方への注意を削がれてしまう。
【0006】
本発明は、ユーザのスライド操作に応じて、様々なパターンで地図スクロールを行うことが可能なナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、ナビゲーション装置において、地図を表示する画面を有する表示部と、前記画面に対する押下操作を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記押下操作の押下開始位置座標及び押下終了位置座標を記憶する記憶部と、前記押下操作に基づいて前記地図を前記画面においてスクロールさせる制御部と、を備え、前記制御部は、前記検出部により検出された前記押下操作の開始時から終了時までの押下時間を測定する計時手段を更に有し、前記押下開始位置座標、前記押下終了位置座標、及び前記押下時間から、当該押下操作位置の移動距離、移動方向及び移動速度を算出し、前記算出された押下操作位置の移動距離及び移動速度に対応させたパターンで、前記移動方向へと前記地図を慣性的にスクロールさせることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のナビゲーション装置において、前記押下操作位置の移動距離及び移動速度に対応する複数のスクロールパターンが予め記憶された記憶部を備え、前記制御部は、前記算出された移動距離と移動速度に対応するスクロールパターンを前記記憶部から選択的に読み出し、当該読み出したスクロールパターンに従って前記地図をスクロールさせることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のナビゲーション装置において、前記スクロールパターンは、前記地図のスクロール速度が、初期において徐々に加速され、最大速度を超えた後、徐々に減速することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載のナビゲーション装置において、前記制御部は、前記地図のスクロール過程において、地図の縮尺を変更して表示させることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項にナビゲーション装置において、前記制御部は、前記地図画面をスクロール中に前記検出部により新たな押下操作が検出された場合、当該実行中のスクロールを中止させることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、地図を画面上に表示させ、当該画面に対する押下操作を検出させ、当該検出された押下操作の押下開始位置座標及び押下終了位置座標を記憶させ、当該検出された押下操作の開始時から終了時までの押下時間を測定し、当該押下開始位置座標、当該押下終了位置座標、及び当該押下時間から、当該押下操作位置の移動距離、移動方向及び移動速度を算出し、当該算出された押下操作位置の移動距離及び移動速度に対応させたパターンで、当該移動方向へと当該地図を慣性的にスクロールさせることを特徴とする地図スクロール方法である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、コンピュータに、地図を画面上に表示させる機能と、当該画面に対する押下操作を検出させる機能と、当該検出された押下操作の押下開始位置座標及び押下終了位置座標を記憶させる機能と、当該検出された押下操作の開始時から終了時までの押下時間を測定する機能と、当該押下開始位置座標、当該押下終了位置座標、及び当該押下時間から、当該押下操作位置の移動距離、移動方向及び移動速度を算出する機能と、当該算出された押下操作位置の移動距離及び移動速度に対応させたパターンで、当該移動方向へと当該地図を慣性的にスクロールさせる機能と、を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ユーザのスライド操作に応じて、様々なパターンで地図スクロールを行うことが可能なナビゲーション装置を提供することができる。
これにより、ユーザは、より直感的な地図スクロールを実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係るナビゲーション装置100の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、ナビゲーション装置100は、表示部1と、操作部2と、音声出力部3と、記憶部4と、現在位置検出部5と、制御部6と、を備えて構成される。
【0017】
表示部1は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイを備え、当該ディスプレイ上には、ユーザによる操作(例えば、手指やタッチペン等による押下)を検出する操作部2としての機能を有したタッチパネルが載置されている。
表示部1は、制御部6から出力された表示用データ(地図データ等)に基づいて、各種情報(例えば、地図画面やアイコン、経路案内等のナビゲーション用の表示情報、自車の現在位置を示す自車マーク等)を表示する。
また、ユーザによるタッチパネル操作が検出されると、当該検出された位置の座標(押下座標)が制御部6に入力される。
【0018】
音声出力部3は、D/A変換器、アンプ、スピーカ等を備えて構成され、制御部6から出力された音声データをアナログの音声信号に変換して音声出力する。
【0019】
記憶部4は、例えば、半導体メモリで構成され、地図データ41、音声データ42等を格納している。地図データ41には、例えば、広域をカバーした地図情報(複数縮尺に対応)、道路情報、施設、海、川等の各種シンボル情報等が記憶されている。また、音声データ42には、例えば、経路案内に必要な、単語や文節等からなるメッセージのデータ等が予め記憶されている。なお、地図データ41及び音声データ42は、ナビゲーション装置100に着脱自在に装着されるCD−ROM(Compact Disk ROM)、DVD−ROM(Digital Versatile Disc ROM)等の磁気的、光学的記録媒体や、無線通信等を介して接続されるサーバ装置から取得されるようにしてもよい。
【0020】
現在位置検出部5は、GPSモジュール、自律航法ユニット等を備えて構成されている。
GPSモジュールは、図示しないGPSアンテナ等を備えて構成される。このGPSアンテナは、地球低軌道に打ち上げられた複数のGPS衛星から送信されるGPS信号を受信する。GPSアンテナは、少なくとも3個のGPS衛星から送信されるGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両の絶対的な現在位置(緯度、経度)を検出して、制御部6に出力する。
自律航法ユニットは、角度センサ、距離センサ等を備える。角度センサは、車の角速度(単位時間あたりの水平方向への回転角度)を検出して、移動方位の変化量を算出する。距離センサは、車輪の回転に応じて出力されるパルス信号を検出して、車両の移動量を算出する。自律航法ユニットは、これら角速度信号および車速パルス信号により、車両の相対的な位置変化を算出して制御部6に出力する。
【0021】
制御部6は、例えば、CPU(Central Processing Unit)61、RAM(Random Access Memory)62、ROM(Read Only Memory)63等を備えて構成され、ナビゲーション装置100の各部を制御する。
CPU61は、ROM63に格納された処理プログラム等を読み出して、RAM62に展開して実行することにより、ナビゲーション装置100全体の制御を行う。
RAM62は、CPU61により実行された処理プログラム等を、RAM62内のプログラム格納領域に展開するとともに、入力データや上記処理プログラムが実行される際に生じる処理結果等をデータ格納領域に格納する。
ROM63は、例えば、半導体メモリで構成され、処理プログラムやデータ等が予め記憶されている。ROM63には、例えば、ユーザのスライド操作(スライド量とスライド速度)に基づいて地図画面をスクロールさせる地図スクロールプログラム、スライド操作とスクロールパターンを予め関連付けたプロファイル等が記憶されている。
【0022】
CPU61は、スライド操作の開始位置座標、終了位置座標、操作時間から、当該スライド操作の移動距離、移動方向及び移動速度を算出し、算出された移動距離、移動方向及び移動速度によって決定されるスクロールパターンに基づいて地図画面をスクロールさせる。
【0023】
このように、本実施形態に係るナビゲーション装置100は、地図を表示する画面を有する表示部(表示部1)と、画面に対する押下操作を検出する検出部(操作部2)と、検出部により検出された押下操作の押下開始位置座標及び押下終了位置座標を記憶する記憶部(記憶部4)と、押下操作に基づいて地図を画面においてスクロールさせる制御部(制御部6)と、を備える。
ナビゲーション装置100は、上記構成に加え、検出部により検出された押下操作の開始時から終了時までの押下時間を測定する計時手段を更に備えることにより、押下開始位置座標、押下終了位置座標、及び押下時間から、当該押下操作位置の移動距離、移動方向及び移動速度を算出し、当該算出された押下操作位置の移動距離及び移動速度に対応させたパターンで、当該移動方向へと地図を慣性的にスクロールさせることができる。
これにより、ユーザは、スライド操作に応じて様々なパターンで地図スクロールを行うことができるので、例えば、大きなスライド操作を行った場合に遠距離のスクロールを行うようパターンを設定しておけば、遠距離の地図スクロールを直感的かつ容易に行うことができる。
【0024】
なお、本発明の好ましい実施形態における地図スクロールの態様は次の通りである。
すなわち、まず、指先で画面上の任意の位置を押下操作し、その押下状態を保ったままで所望の方向に所望の速度で指先を移動させる。すると、画面上に表示された地図が指示された方向にスクロールされる。
このとき、従来一般のナビゲーション装置では、表示中の地図の縮尺下において指先の移動距離と地図のスクロール距離とは1対1で対応する。換言すると、地図は指先を移動させた分の距離だけしかスクロールせず、指先の押下操作を終了させた位置で停止してしまう。
しかし、本発明の好ましい実施形態によれば、画面に指先を押下して(例えば、接触させて)移動させた後、押下を止めたとしても(例えば、指先を画面から離したとしても)、画面上の地図は依然としてスクロールを続け、パターンで規定された距離分だけスクロールした後、停止する。その結果、地図は指先の移動距離の何倍かの距離分だけ多く自動的にスクロールされることとなる。この表示態様では、直観的には、地図の動きに慣性力が作用したような動き、すなわち慣性的なスクロールパターンが観察されることとなる。
【0025】
図2は、地図スクロールを行う際のユーザによるタッチパネル操作の一例について示した説明図である。
図2に示すように、ユーザは表示部1上に設けられた操作部2(タッチパネル)上を画面右下から左上に向かってなぞる(スライドさせる)操作を行っている。
このような操作が行われると、表示部1に表示されていた地図画面は左上方向にスクロールされ、当初画面の右下方向の地図が表示されることとなる。
以下、ユーザによるスライド操作から地図スクロールが行われるまでの具体的な処理の流れを図3に示す。
【0026】
図3は、本実施形態に係るナビゲーション装置100内で行われる地図スクロール処理の一例について示したフローチャートである。この地図スクロール処理は、ユーザによりタッチパネルが押下操作されたことを契機に、CPU61がROM63に格納されている地図スクロールプログラムを実行することにより実現される。
図3に示すように、ステップS1では、ユーザによりタッチパネルが押下操作された位置の座標(押下開始座標)が記憶される。
ステップS2では、タイマがスタートされる。当該タイマは、ユーザによるタッチパネルの押下時間を計時する。なお、当該タイマはスクロール処理の終了とともに数値がリセットされ、タッチパネルへの押下を検出するたびに、初期化されたタイマによる計時が開始される。
ステップS3では、ユーザによるタッチパネルの押下操作が継続されているか否かが判定される。タッチパネルの押下操作が継続されていた場合(ステップS3でYES)は、ステップS4へと移行し、タッチパネルの押下操作が継続されていなかった場合(ステップS3でNO)、すなわち、タッチパネルの押下操作が終了した場合は、次のステップS7へと移行する。
【0027】
ステップS4では、タッチパネルの押下座標に変化があるか否か、すなわち、ユーザによりタッチパネル上をなぞる(スライドさせる)操作が行われたか否かが判定される。押下座標に変化がなかった場合(ステップS4でYES)は、次のステップS5へと移行し、押下座標に変化があった場合(ステップS4でNO)は、ステップS3へと移行する。
ステップS5では、ステップS2でタイマがスタートしてから所定時間が経過したか否かが判定される。所定時間が経過していた場合(ステップS5でYES)は、次のステップS6へと移行し、所定時間が経過していなかった場合(ステップS5でNO)は、ステップS3へと移行する。
ステップS6では、タイマが再スタートされる。ここで、タイマのリセットを行うのは、後述するように本案ではタッチパネル上の移動距離と押下時間とからスクロールの量や速さを特定するため、ユーザが押下位置を動かしはじめる(スライド操作を行う)までの時間を速度計算に含めてしまうと、実際のスライド操作にかかった時間よりも大きな時間で速度計算されてしまい、ユーザの意図するスクロールが行われなくなる恐れがあるためである。タイマが再スタートされると、ステップS3へと移行する。
【0028】
一方、ステップS7(ステップS3でNO)では、ステップS2でスタートされたタイマがストップされる。当該タイマが計時した時間が、ユーザによるタッチパネルの押下時間となる。
ステップS8では、タッチパネルの押下操作が終了した位置の座標(押下終了座標)が記憶される。
ステップS9では、ユーザによりはじめにタッチパネルが押下された位置(ステップS1で記憶された押下開始座標)と押下操作が終了した位置(ステップS8で記憶された押下終了座標)との座標間の距離が算出される。また、押下開始座標と押下終了座標との位置関係から押下位置の移動方向が算出される。
ステップS10では、ステップS7で計時された時間とステップS9で算出された距離(スライド量)から速度(スライド速度)が算出される。
ステップS11では、スライド量とスライド速度からスクロールのプロファイルが決定される。ここで、プロファイルとは、スライド量とスライド速度に基づいて設定されるスクロールパターンのことである(詳しくは後述する図4参照)。
ステップS12では、ステップS11で決定されたプロファイルとステップS9で算出された押下位置の移動方向に基づいて地図スクロールが行われる。
【0029】
ステップS13では、地図スクロール中にユーザによる新たな押下を検出したか否かが判定される。新たな押下が検出された場合(ステップS13でYES)は、次のステップS14へと移行し、新たな押下が検出されなかった場合(ステップS13でNO)は、ステップS15へと移行する。
ステップS14では、ステップS12で実行された地図スクロールが停止される。ここでのスクロール停止とは、ステップS12で実行されているスクロール処理が中断されることを意味する。
ステップS15では、ステップS12で実行された地図スクロールが終了したか否かが判定される。地図スクロールが終了した場合(ステップS15でYES)は、次のステップS16へと移行し、地図スクロールが終了していなかった場合(ステップS15でNO)は、ステップS13へと移行し、スクロール処理が終了するか、又はユーザによりスクロールの中断処理が実行されるまで、ループ処理が行われる。
ステップS16では、タイマのリセットが行われる。
【0030】
なお、本実施形態では、地図スクロール中に新たな押下が検出された場合に、地図スクロールを停止する処理を行わせるようにしているが、当該処理は本発明に必須ではない。
【0031】
図4は、スライド量及びスライド速度とプロファイルとの対応付けの一例について示した説明図である。
図4に示すように、本実施形態に係るナビゲーション装置100には、スライド量とスライド速度に基づいて決定されるスクロールパターンを予め定めた6つのプロファイルが用意され、ROM63に記憶されている。操作部2においてユーザによるスライド操作が検出されると、図3に示した地図スクロール処理が行われ、この地図スクロール処理にて算出されたスライド量とスライド速度に基づいてスクロールのプロファイルが決定される。プロファイルが決定されると、当該プロファイルに基づいた地図スクロールが行われることとなる。
【0032】
本実施形態では、上述の地図スクロール処理にて算出されたスライド量Dが予め定められたDref1以下の値であり、かつ算出されたスライド速度Vが予め定められたV1以下の値であった場合は、プロファイル1が設定される。プロファイル1に基づいたスクロールは、短い距離をゆっくりと動くスクロールである。そして、スライド量DがDref1以下の値であり、かつスライド速度VがV1の値を超えている場合は、プロファイル2が設定される。プロファイル2に基づいたスクロールは、短い距離を素早く動くスクロールである。
また、スライド量DがDref1より大きくDref2より小さい場合であり、かつスライド速度VがV1以下の値である場合は、プロファイル3が設定される。プロファイル3に基づいたスクロールは、中距離をゆっくりと動くスクロールである。そして、スライド量DがDref1より大きくDref2より小さい場合であり、かつスライド速度VがV1の値を超えている場合は、プロファイル4が設定される。プロファイル4に基づいたスクロールは、中距離を素早く動くスクロールである。
また、スライド量DがDref2以上の値であり、かつスライド速度VがV1以下の値であった場合は、プロファイル5が設定される。プロファイル5に基づいたスクロールは、長い距離をゆっくりと動くスクロールである。そして、スライド量DがDref2以上の値であり、かつスライド速度VがV1よりも大きな値であった場合は、プロファイル6が設定される。プロファイル6に基づいたスクロールは、長い距離を素早く動くスクロールである。また、スライド量DがDref2以上の値である場合(プロファイル5及びプロファイル6)、実行される地図スクロール処理におけるスクロール速度が所定の速度(後述する図7のS)を超えている間は、地図画面の縮尺の変更が行われる。
【0033】
このように、スライド量とスライド速度からプロファイルが選択され、当該プロファイルごとに予め定められたパターンでスクロールが行われる。これにより、ユーザは、スライド操作に応じて様々なパターンで地図スクロールを行うことができる。また、図4で示したように、例えば、スライド量が多ければスクロールの距離が大きくなり、又スライド速度が速ければスクロールの速度が速くなるため、ユーザのスライド感覚に応じた直感的な地図スクロールを容易に行うことができる。さらに、このような地図スクロール処理においては、ユーザがタッチパネルから指を離した(押下終了)後も慣性的にスクロールが持続されるため、特に長い距離をスクロールさせたい場合において、ユーザが常にタッチパネルを押下し続ける必要がない。
【0034】
図5は、プロファイル1〜6で定められたスクロール動作における(経過)時間とスクロール速度との関係を示すグラフである。同図は、横軸に時間を、縦軸にスクロール速度を示している。なお、プロファイル1〜6では、グラフにおける絶対的な値は異なるものの、形状は同じである。
図5に示すように、時間a(原点)を起点とした当該グラフは曲線(例えばサインカーブ)で描かれており、時間a〜eは、横軸上に等間隔で配置されている。当該グラフは、ab間でゆっくり速度を速め、bc間でさらに加速していく。そして、スクロール速度がピーク(時間c)に達すると、今度は逆に速度が落とされていく。cd間で比較的早く速度が落とされ、de巻でゆっくりと速度が落とされていく。そして速度が0となり停止する(時間e)。なお、当該グラフは、曲線に限定されるものではなく、例えば、階段状に細かく刻みながら曲線を描くようにしてもよい。また、直線で描くようにしてもよい。
【0035】
図6は、図5のグラフに基づいて行われる地図スクロールの一例について示した説明図である。同図は、図2に示したように、ユーザが操作部2(タッチパネル)上を画面右下から左上に向かってスライド操作を行ったときのスクロールについて示している。また、同図は、地図と表示画面との相対的な移動をわかりやすく表現するため、地図を固定し表示画面を移動する表現を採用している。
図6に示すように、表示部1に表示される画面は(a)〜(e)の順にスクロールする。なお、図6(a)〜(e)は、図5の時間a〜eにそれぞれ対応している。図6(a)(b)間は、スクロール速度が比較的ゆっくりであるため、スクロール距離は小さい。図6(b)(c)間は、スクロール速度が比較的速く、スクロール距離もその分大きくなる。速度がピークを示す図6(c)に到達すると、スクロールは減速をはじめる。図6(c)(d)間は、比較的速い速度を保っているので、スクロール距離は大きい。一方、(d)(e)間は、速度がかなり落ちているので、スクロール距離は小さくなる。
このように、本実施形態におけるスクロールは、徐々に加速した後、徐々に減速していくので、ユーザのスライド感覚に応じた操作を行うことが可能となる。
【0036】
図7は、プロファイル5、6で定められたスクロール動作における(経過)時間とスクロール速度との関係を示すグラフである。同図は、横軸に時間を、縦軸にスクロール速度を示している。
図7に示すように、時間a(原点)を起点とした当該グラフは曲線(例えばサインカーブ)で描かれている。また、スクロール速度が所定の速度Sに達すると、縮尺スケールが変更されることが示されている。例えば、a地点、c地点における速度はSに達していないので、縮尺スケールは100mである。一方、b地点における速度はSに達しているので、縮尺スケールは200mである。
【0037】
図8は、図7のグラフに基づいて行われる地図スクロールの一例について示した説明図である。また、図9は、図8に示した(a)〜(c)の各地点における表示画面を抽出して示した説明図である。図8は、図2に示したように、ユーザが操作部2(タッチパネル)上を画面右下から左上に向かってスライド操作を行ったときのスクロールについて示している。また、図8は、地図と表示画面との相対的な移動をわかりやすく表現するため、地図を固定し表示画面を移動する表現を採用している。
図8に示すように、表示部1に表示される画面は(a)〜(c)の順にスクロールする。なお、図8(a)〜(c)は、図7の時間a〜cにそれぞれ対応している。図8(a)における表示画面には、図9(a)に示されているような、縮尺スケールが100mの地図画面が表示されている。図8(b)における表示画面は、図7の時間bに対応しており、図9(b)に示されているような、縮尺スケールが200mの地図が表示されている。図8(c)における表示画面には、図9(c)に示されているような、縮尺スケールが100mの地図画面が表示されている。
このように、本実施形態におけるスクロールは、徐々に加速した後、徐々に減速していくので、ユーザのスライド感覚に応じた操作を行うことが可能となる。
また、プロファイル5、6に基づいたスクロールは、スクロール速度に応じて縮尺スケールが、例えば100mから200mに変更され、表示部1に表示される地図範囲が拡大されるので、短時間でより大きなスクロールの距離を稼ぐことができ、長距離のスクロールにはより好適となる。さらに、地図の縮尺の調整は自動的に行われ、自動的に元の縮尺に復帰するため、ユーザが縮尺の調整を行う必要がなく、より快適に長距離スクロールを実行することが可能となる。
【0038】
以上、本発明に係る実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、縮尺スケールを100mと200mで変更を行っているが、例えば100mと1000mで変更を行ってもよいし、当該縮尺での地図データ41が記憶部4に記憶されている限りで自由に変更可能である。
【0040】
また、上記実施形態では、地図の移動方向を地図から見て右下の方向に移動させるように示しているが、移動方向については特に制限はない。
【0041】
また、上記実施形態では、6つのプロファイルを予め用意して、6パターンのスクロールを行えるようにしているが、プロファイルの数に特に制限はない。すなわち、スライド量の設定は小、中、大の3パターンに限られず、またスライド速度の設定は遅く、速くの2パターンに限られない。
また、上記実施形態では、スライド量の設定が大のときに縮尺の変更が行われるようにしているが、この限りでない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態に係るナビゲーション装置100の概略構成を示すブロック図である。
【図2】地図スクロールを行う際のユーザによるタッチパネル操作の一例について示した説明図である。
【図3】本実施形態に係るナビゲーション装置100内で行われる地図スクロール処理の一例について示したフローチャートである。
【図4】スライド量及びスライド速度とプロファイルとの対応付けの一例について示した説明図である。
【図5】プロファイル1〜6で定められたスクロール動作における(経過)時間とスクロール速度との関係を示すグラフである。
【図6】図5のグラフに基づいて行われる地図スクロールの一例について示した説明図である。
【図7】プロファイル5、6で定められたスクロール動作における(経過)時間とスクロール速度との関係を示すグラフである。
【図8】図7のグラフに基づいて行われる地図スクロールの一例について示した説明図である。
【図9】図8に示した(a)〜(c)の各地点における表示画面を抽出して示した説明図である。
【符号の説明】
【0043】
100 ナビゲーション装置
1 表示部
2 操作部
3 音声出力部
4 記憶部
41 地図データ
42 音声データ
5 現在位置検出部
6 制御部
61 CPU
62 RAM
63 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図を表示する画面を有する表示部と、
前記画面に対する押下操作を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記押下操作の押下開始位置座標及び押下終了位置座標を記憶する記憶部と、
前記押下操作に基づいて前記地図を前記画面においてスクロールさせる制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記検出部により検出された前記押下操作の開始時から終了時までの押下時間を測定する計時手段を更に有し、
前記押下開始位置座標、前記押下終了位置座標、及び前記押下時間から、当該押下操作位置の移動距離、移動方向及び移動速度を算出し、
前記算出された押下操作位置の移動距離及び移動速度に対応させたパターンで、前記移動方向へと前記地図を慣性的にスクロールさせることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記押下操作位置の移動距離及び移動速度に対応する複数のスクロールパターンが予め記憶された記憶部を備え、
前記制御部は、前記算出された移動距離と移動速度に対応するスクロールパターンを前記記憶部から選択的に読み出し、当該読み出したスクロールパターンに従って前記地図をスクロールさせることを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記スクロールパターンは、前記地図のスクロール速度が、初期において徐々に加速され、最大速度を超えた後、徐々に減速することを特徴とする請求項1又は2に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記地図のスクロール過程において、地図の縮尺を変更して表示させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記地図画面をスクロール中に前記検出部により新たな押下操作が検出された場合、当該実行中のスクロールを中止させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項にナビゲーション装置。
【請求項6】
地図を画面上に表示させ、
当該画面に対する押下操作を検出させ、
当該検出された押下操作の押下開始位置座標及び押下終了位置座標を記憶させ、
当該検出された押下操作の開始時から終了時までの押下時間を測定し、
当該押下開始位置座標、当該押下終了位置座標、及び当該押下時間から、当該押下操作位置の移動距離、移動方向及び移動速度を算出し、
当該算出された押下操作位置の移動距離及び移動速度に対応させたパターンで、当該移動方向へと当該地図を慣性的にスクロールさせることを特徴とする地図スクロール方法。
【請求項7】
コンピュータに、
地図を画面上に表示させる機能と、
当該画面に対する押下操作を検出させる機能と、
当該検出された押下操作の押下開始位置座標及び押下終了位置座標を記憶させる機能と、
当該検出された押下操作の開始時から終了時までの押下時間を測定する機能と、
当該押下開始位置座標、当該押下終了位置座標、及び当該押下時間から、当該押下操作位置の移動距離、移動方向及び移動速度を算出する機能と、
当該算出された押下操作位置の移動距離及び移動速度に対応させたパターンで、当該移動方向へと当該地図を慣性的にスクロールさせる機能と、を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−277117(P2009−277117A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129308(P2008−129308)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】