説明

ナビゲーション装置及びナビゲーション用プログラム

【課題】より誤マッチングを少なくすると共に、誤マッチングから早期に回復する。
【解決手段】推測航法により求めた推測位置P1に対し、推測方位の信頼度とGPS方位の信頼度の高い方の信頼度に基づく想定方位誤差を求め、信頼度が高い方の方位と、最適候補地点に推測位置P1を補正した場合の進行方向の方位との方位差θが想定方位誤差の範囲内にない場合には推測位置P1を補正しない。推測軌跡方位の信頼度は、前回の信頼度、想定累積方位誤差、ジャイロ左右感度学習状態から、GPS方位の信頼度は、推測方位一致度、GPS速度、DOPから決定する。これにより、画面表示では最適候補地点に車両マークを移動させることで誤マッチングであっても、実際の推測位置P1は補正させず、未補正の推測位置P1を基準に次の推測位置P2を求めるので、次回以降のマッチング処理で、より早く正しい道路に車両マーク及び推測位置を復帰させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーション装置及びナビゲーション用プログラムに係り、詳細にはナビゲーションにおけるマップマッチングに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されて目的地までの走行経路を探索して車両を案内するナビゲーション装置が広く普及している。
このナビゲーション装置では、車両の現在位置を推測し、マップマッチング処理により、現在走行している道路を特定しながら、車両の現在位置を地図上に表示したり、走行の案内をしたりしている。
【0003】
図9は、マップマッチング処理について概念的に表したものである。
図9(a)に示すように、例えば、実際の車両位置Rに対して、走行距離や方位から推測した車両の位置が推測位置P1であった場合に、この推測位置P1周辺に存在する道路A、B上の候補地点A1、B1のいずれかにマッチングさせることで、地図上の道路に車両の現在位置をマッチングさせるようにしている。
候補地点A1、B1へのマッチングを行う場合には、例えば、推測位置P1からの距離や、進行方向の方位と各道路の方位との差などから決定している。
【0004】
しかし、図9(a)のような分岐点を通過した後推測位置P1におけるマッチング処理で候補地点A1に誤ってマッチングしてしまうと、図9(b)に示すように、その後の走行が直進に近い道路の場合、次のマッチング地点での推測位置P2は誤マッチングした道路A上の道路へのマッチングが続いてしまうことになる。
そして、図9(c)に示されるように、実際の走行道路Bの方向が大きく変化した推測位置P3において、道路B上の候補地点B3にマッチングした時点で誤マッチングから修正され、正しい道路上の候補地点B3に現在位置が修正されることになる。
このように、特に狭い角度で分岐する道路を通過時に誤マッチングが行われると、正しい道路へのマッチングが遅れる場合がある。
【0005】
そこで、従来では、分岐後は誤マッチングしている可能性が高いため、分岐から走行した距離で閾値を設定し、その閾値を走行するまでの間は、マップマッチングを遅らせるようにしている。
また、特許文献1記載技術では、分岐点における各道路の幅員や、各道路の開き具合を考慮してマップマッチングを行う技術について記載されている。
【0006】
しかし、分岐からの走行距離で誤マッチングを防ぐ方法の場合、その閾値を越えた後、必ず正解道路にマッチングしているとは限らなかった。
一方、特許文献1記載技術では、道路形状を考慮しているが、道路データの誤差等により実際の道路と形状が違う場合には、誤マッチングの可能性がある。
いずれにしても、一度誤マッチングしてしまうと、誤マッチング状態が長く続いてしまい、実際の走行方位が大きく変化するまで正しい道路にマッチングされないという問題があった。
【0007】
また、実際の道路と道路データとが異なっている場合、例えば、トンネル内では実際の道路がカーブしている場合でも道路データとしては直線で構成される場合がある。
このような場合において、車両位置を無理に道路データにマッチングさせた場合も誤マッチングになると共に、正確でない走行軌跡データが保存されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−114632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、より誤マッチングを少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)請求項1記載の発明では、前回の車両位置を基準とし、その後の移動に伴う車両の推定地点を算出する推定地点算出手段と、前記推定地点周辺の道路上に設定された候補地点から、前記推定地点とのマッチング処理により最適候補地点を選択する選択手段と、前記推定地点に対応する車両の方位とその信頼度を算出し、該信頼度に対応する想定方位誤差を取得する想定方位誤差取得手段と、前記車両の方位と、前記推定地点を前記最適候補地点に補正した場合の方位との方位差θが、前記想定方位誤差内か否かを判断する判断手段と、前記方位差θが前記想定方位誤差内である場合に前記最適候補地点を前記推定地点に対する補正後の車両位置とし、前記方位差θが想定方位誤差内でない場合に前記推定地点を車両位置とする車両位置決定手段と、を具備したことを特徴とするナビゲーション装置を提供する。
(2)請求項2記載の発明では、前記推定地点は、前回の車両位置を基準とする推測航法によって推測した推測位置とし、前記想定方位誤差取得手段は、前記推測位置における推測方位を車両の方位とし、前記推測方位の信頼度に対応する想定方位誤差を取得する、ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置を提供する。
(3)請求項3記載の発明では、前記推定地点は、前回の車両位置を基準とする推測航法によって推測した推測位置とし、前記想定方位誤差取得手段は、前記推測位置における推測方位の信頼度と、前記推測位置に対応して測定されるGPSによるGPS方位の信頼度を算出し、信頼度の大きい方を前記車両の方位とし、車両の方位の信頼度に対応する想定誤差を取得する、ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置を提供する。
(4)請求項4記載の発明では、前記車両位置に対応する地図を表示する地図表示手段と、前記表示した地図上に車両の現在位置マークを表示する現在位置マーク表示手段と、を備え、前記現在位置マーク表示手段は、車両位置決定手段で決定した車両位置にかかわらず、前記最適候補地点に対応する前記地図上の地点に現在位置マークを表示する、ことを特徴とする請求項1,請求項2、又は請求項3に記載のナビゲーション装置を提供する。
(5)請求項5記載の発明では、前回の車両位置を基準とし、その後の移動に伴う車両の推定地点を算出する推定地点算出機能と、前記推定地点周辺の道路上に設定された候補地点から、前記推定地点とのマッチング処理により最適候補地点を選択する選択機能と、前記推定地点に対応する車両の方位とその信頼度を算出し、該信頼度に対応する想定方位誤差を取得する想定方位誤差取得機能と、前記車両の方位と、前記推定地点を前記最適候補地点に補正した場合の方位との方位差θが、前記想定方位誤差内か否かを判断する判断機能と、前記方位差θが前記想定方位誤差内である場合に前記最適候補地点を前記推定地点に対する補正後の車両位置とし、前記方位差θが想定方位誤差内でない場合に前記推定地点を車両位置とする車両位置決定機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とするナビゲーション用プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前回の車両位置を基準として算出した推定地点に対応する車両の方位の信頼度に対応する想定方位誤差を取得し、車両の方位と、推定地点を最適候補地点に補正した場合の方位との方位差θが、前記想定方位誤差内か否かによって前記最適候補地点又は推定地点を車両位置に決定するので、より誤マッチングを少なくすると共に、誤マッチングがあった場合でも早期に回復することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態におけるナビゲーション装置のシステム構成図である。
【図2】信頼度の定義と要素について概念的に表した説明図である。
【図3】推測方位と距離の信頼度を決定する各要素についての説明図である。
【図4】GPS方位と距離の信頼度を決定する各要素についての説明図である。
【図5】マップマッチング処理のフローチャートである。
【図6】推測位置確定処理についてフローチャートである。
【図7】推測位置確定処理における状態説明図である。
【図8】推測位置確定処理における他の状態説明図である。
【図9】従来のマップマッチング処理について概念的に表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のナビゲーション装置及びナビゲーション用プログラムにおける好適な実施の形態について、図1から図8を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
ナビゲーション装置のマップマッチング処理では、距離センサと方位センサにより車両の移動距離と走行の方位を検出し、地図データ上の現在位置(推測位置)を推定する推測航法が採用されている。また、推定位置から所定距離範囲内に存在する各道路上に候補地点を設定し、各候補地点についても車両の移動距離に応じて移動させている。
そして、推定位置から各候補地点までの距離や方位などをパラメータとして最適な候補地点を求め、推測位置を最適候補地点に一致するように補正している。
【0014】
本実施形態のマップマッチング処理では、推測航法で求めた推測軌跡による方位の信頼度と、GPSの測定による方位の信頼度を求め、大きい方の信頼度に基づく想定方位誤差を取得する。
この信頼度は、方位の値がどの程度の誤差範囲で正しいと推定できるかを表す値であり、推測航法とGPSによる方位の測定が行われた各状態に応じて決定される。
【0015】
そして、推測位置を最適な候補地点に補正した場合の方位(最適候補地点の道路による方位)が、取得した想定方位誤差の範囲内であれば、推測位置を最適候補地点に変更することで推測位置の補正を行う。その結果、表示装置に表示する地図上の車両位置としては最適な候補地点が現在位置として表示される。
一方、補正した場合の方位が取得した想定方位誤差の範囲内でなければ、誤補正となる可能性が高いので、推測位置の補正(最適航法地点への変更)を行わない。但し、表示装置に表示する地図上の車両位置としては最適な候補地点が現在位置として表示される。そして、次のマップマッチング処理では、補正していない推測位置からの推測軌跡に基づいて行う。
【0016】
このように、信頼度に基づく想定方位誤差の範囲内である場合に限り補正を行い、そうでない場合には推測位置の補正を行わないため、より誤マッチングを少なくすることができる。
また、分岐道路、特に狭角分岐の場合に誤マッチングしていたとしても、正解道路へ復帰するまでの距離を短くすることができる。
さらに、実際の道路と道路データが異なっている場合に、強制的に道路データにマッチングしないので、誤マッチングが減ると共に、より正確な走行軌跡データを記録することが可能になる。
【0017】
本実施形態において、推測軌跡方位の信頼度は、前回の信頼度、想定累積方位誤差(方位変化量)、ジャイロ感度学習状態、から決定する。
GPS方位の信頼度は、GPS・推測軌跡方位一致度(GPSと推測軌跡の方位変化量の比較)、GPS速度、DOPから決定する。
【0018】
(2)実施形態の詳細
図1は本実施形態が適用されるナビゲーション装置のシステム構成図である。
このナビゲーション装置は、車両に搭載され、この図1に示すように、現在位置検出装置10、情報処理制御装置20、入出力装置40及び情報記憶装置50とを備えている。
【0019】
現在位置検出装置10は、以下のような構成を有している。
方位センサ12は、基準角度(絶対方位)に対して、相対的に変化した角度を検出する手段であり、本実施形態では、角速度を利用して角度の変化を検出するジャイロセンサを使用している。なお、ハンドルの回転部に取り付けた光学的な回転センサや回転型の抵抗ボリューム或いは車輪部に取り付ける角度センサでもよい。また、方位センサ12として、例えば、磁石に基づいてN方向の検出から、車両がいずれの方向に位置するかを検出する地磁気センサであり、絶対方位を検出する手段であってもよい。
【0020】
距離センサ13は、車両の移動距離を計測できる手段であり、例えば、車輪の回転を検出して計数するものや、加速度を検出して2回積分するものを使用する。
GPS(グローバル・ポジショニング・システム)受信装置14は、人工衛星からの信号を受信する装置であり、信号の発信時刻、受信装置の位置情報、受信装置の移動速度、受信装置の進行方向など様々な情報を得ることができる。
【0021】
次に、情報処理制御装置20は、現在位置検出装置10、入出力装置40から入力される情報及び情報記憶装置50に格納された情報に基づいて演算及び制御を行うとともに、演算結果をディスプレイ42、プリンタ43またはスピーカ44等の出力手段に出力するように制御する手段である。
【0022】
この情報処理制御装置20は、以下のような構成を有している。
中央処理装置(CPU)21は、ナビゲーション装置全体の総括的な演算及び制御を行う。
ROM22は、目的地までの経路の探索、表示案内や音声案内等のナビゲーションに関するプログラムや、本実施形態による、推測方位とGPS方位の信頼度に基づくマップマッチング処理プログラム等の各種プログラムを格納している。なお、ROM22を第1ROMと第2ROMの2つに分け、第2ROMに音声案内に関するナビゲーションプログラムを格納し、他のプログラムを第1ROMに格納するようにしてもよい。
本実施形態のマップマッチングプログラムにおいて、後述する信頼度データが定義されているが、プログラムとは独立した信頼度データの参照テーブルを設けプログラムの実行過程で信頼度データを参照するようにしてもよく、また、後述する情報記憶装置50に信頼度データファイルを保存するようにしてもよい。
【0023】
RAM24は、入力装置41により入力された目的地の情報、通過地点の情報等の利用者が入力した情報を記憶すると共に、利用者の入力情報に基づいてCPU21により演算された結果や、経路探索された結果、または情報記憶装置50から読み込まれた地図情報を格納するための記憶手段である。
また、RAM24には、本実施形態のマップマッチングで使用する、推測位置及び候補地点が一時保存される。
【0024】
通信インターフェイス25は、伝送路45を介して各種情報の入出力するための手段である。具体的には、伝送路45を介して、GPS受信装置14、入力装置41、プリンタ43、情報記憶装置50が接続される。
時計28は、時刻を刻む。
その他、CPU21で処理されたベクトル情報を画像情報に処理するための画像処理専用の画像プロセッサ、画像プロセッサで処理された画像情報を格納する画像メモリ、情報記憶装置50から読み込まれた音声情報を処理しスピーカ44に出力する音声処理専用の音声プロセッサを配設するようにしてもよい。
【0025】
入出力装置40は、利用者により目的地、通過地点、探索条件等のデータを入力する入力装置41、画像を表示するディスプレイ42、情報を印刷するプリンタ43、音声を出力するスピーカ44より構成される。
入力装置41は、例えば、タッチパネル、タッチスイッチ、ジョイスティック、キースイッチ等で構成される。
ディスプレイ42には、現在地周辺の地図や、目的地までの走行経路が表示される。
なお、入出力装置40は、プリンタ43を有しない構成としてもよい。
【0026】
情報記憶装置50は、伝送路45を介して情報処理制御装置20に接続される。
情報記憶装置50は、地図データファイル51、その他のデータファイル52を格納している。
この情報記憶装置50は、一般的には、光学的記憶媒体であるDVD−ROM、CD−ROMや磁気的記憶媒体であるハードディスクなどで構成されるが、光磁気ディスク、各種半導体メモリなどの各種情報記憶媒体で構成してもよい。
なお、書き換えが必要な情報については、書き換え可能なハードディスク、フラッシュメモリなどで構成し、その他の固定的な情報についてはCD−ROM、DVD−ROMなどのROMを使用するようにしてもよい。
【0027】
地図データファイル51には、ナビゲーションにおける地図表示、経路探索、経路案内に必要な各種データとして、地図データ、道路データ、目的地データ、案内地点データ、その他のデータが記憶されている。
地図データとしては、全国道路地図、各地域の道路地図または住宅地図等が記憶されている。道路地図は、主要幹線道路、高速道路、細街路等の各道路と地上目標物(施設等)から構成される。住宅地図は、地上建造物等の外形を表す図形及び、道路名称等が表示される市街図である。細街路とは、例えば、国道、県道以下の道幅が所定値以下の比較的狭い道路である。
地図データは、車両現在位置やユーザに指定された地点を含む、所定縮尺による一定範囲の地図がディスプレイ42に表示される。この地図上には、車両の現在位置や指定された地点が表示される。
【0028】
道路データは、各道路の位置と種類及び車線数及び各道路間の接続関係等の道路に関するデータで、ノードデータとリンクデータで構成される。この道路データは、経路探索やマップマッチングに使用されると共に、探索した走行経路を地図データ上に重ねて表示する場合にも使用される。
ノードデータは、地図上において経路探索に利用される各ノードの地理座標データ等を表したデータである。
例えば、交差点などの道路の接続点はノードにより表され、接続点の間の道路(即ち道路の内分岐しない領域)はリンクによって表される。このように、ノードデータ経路の接続関係を表した経路データとして機能している。
なお、進入禁止や一方通行など、交通規制により走行が制限されるものに関しては、これを表す属性が、各リンクに付与されているが、これらの属性については、交差点ノードに付与するようにしてもよい。
ノードデータは、各交差点に対して常に設定される交差点ノードと共に、各交差点間の特徴的な点(例えば、カーブの開始、中間、終了の各地点や、高度が変化する地点など)に補助的に設定される場合がある補助ノードが存在する。交差点ノードには、交差点の地理的位置座標や名称等の交差点に関する情報が含まれる。
【0029】
目的地データは、主要観光地や建物、電話帳に記載されている企業・事業所等の目的地になる可能性の高い場所や施設等の位置と名称等のデータである。
案内地点データは、道路に設置されている案内表示板の内容や分岐点の案内等、案内が必要とされる地点の案内データである。
【0030】
その他のデータファイル52には、例えば、各種施設や観光地、または主要な交差点等の視覚的表示が要求される場所を写した写真の画像データや、設定した走行経路を音声により案内する場合の音声データ等が記憶されている。
【0031】
次に本実施形態のマップマッチングプログラムにおいて、定義されている信頼度データについて説明する。
図2は、信頼度の定義と要素について概念的に表したものである。
図2(a)は、本実施形態の信頼度に対する、方位と距離についての想定誤差が規定されている。すなわち、方位に関し、想定方位誤差が1度以内である場合を信頼度5、想定方位誤差が3度以内である場合を信頼度4、想定方位誤差が10度以内である場合を信頼度3、想定方位誤差が45度以内である場合を信頼度2、想定方位誤差が不明である場合を信頼度1と規定している。
【0032】
また距離に関し、想定距離誤差が5m以内である場合を信頼度5、想定距離誤差が10m以内である場合を信頼度4、想定距離誤差が25m以内である場合を信頼度3、想定距離誤差が50m以内である場合を信頼度2、想定距離誤差が不明である場合を信頼度1と規定している。
【0033】
このように本実施形態では、方位、距離ともに信頼度が5段階に規定されているが、より詳細に規定(例えば、10段階)するようにしてもよい。
なお、想定誤差(方位、距離)については、後述する信頼度の各要素に対する値と、その場合の誤差を実測することで予め規定しておく。
【0034】
図2(b)は、推測方位と推測距離の信頼度と、GPSによる方位と距離の信頼度を決定するための要素について表したものである。
この図に示されるように、推測信頼度(方位、距離)を決定する要素としては、前回信頼度、想定累積方位誤差、ジャイロ感度学習状態、推測方位信頼度、距離係数学習状態があり、GPS信頼度(方位、距離)を決定する要素としては、GPS・推測軌跡方位一致度、速度、DOP、座標間距離によるGPS・推測軌跡位置一致度、座標間方位によるGPS・推測軌跡位置一致度がある。
【0035】
そして図2(b)に示される通り、推測方位の信頼度は、前回信頼度、想定累積方位誤差、ジャイロ感度学習状態から決定する。
推測距離の信頼度は、前回信頼度、推測方位信頼度、距離係数学習状態から決定する。
また、GPS方位信頼度は、GPS・推測軌跡方位一致度、速度、DOPから決定する。
GPS距離の信頼度は、DOP、座標間距離によるGPS・推測軌跡位置一致度、座標間方位によるGPS・推測軌跡位置一致度から決定する。
【0036】
図3は、推測方位と距離の信頼度を決定する各要素について規定したものである。
前回信頼度は、図3に示すように、前回のマップマッチングにおいて算出した推測方位の信頼度と、推測距離の信頼度をそのまま使用する。
これは、推測航法により求めた推測方位の信頼度は、ジャイロの故障を除き、急激に変化する場合はないと考えられるため、前回の信頼度をそのまま使用するものである。
【0037】
通常、ナビゲーション装置の左右が水平に取り付けられていれば、ジャイロセンサの左右感度はほぼ等しくなる。このため、ジャイロセンサの左右感度がずれている場合、左右感度の学習が間違っている可能性が高く、方位変化時に誤差がでると考えられる。
そこで、想定累積方位誤差は、所定区間(例えば、10m)を走行する間の方位変化に対して、方位誤差は累積して大きくなると考えられるため、累積方位誤差(度)が大きくなるほど信頼度は小さくなるように規定されている。
本実施形態では、方位誤差率として、左右感度差1°に対して、0.1%の割合で設定されている。従って、ジャイロセンサの左右感度差α°に0.001を乗じた値を所定区間の走行毎に累積する。
なお、左右感度差は、次に説明するジャイロ感度学習による補正後の左右感度差が使用される。
【0038】
ジャイロ感度学習状態は、ジャイロセンサに対する感度学習の回数を表し、感度学習の回数が少ない場合には推測方位の精度が低く、学習回数が多い場合に精度が高いと考えられるため、学習回数の増加に応じて信頼度が高くなるように設定されてる。
なお、本実施形態におけるジャイロセンサの感度学習の回数は、左折に対する学習と、右折に対する学習のセットで1回カウントされる。
【0039】
ここで、ジャイロの感度学習は、右折及び左折に対するジャイロセンサの感度を補正するもので、周知の各種方法により行われる。
例えば、右左折時においてジャイロセンサから求めた角度を、GPS測位による走行軌跡から求めた角度によって補正する。この学習は、GPS測位による精度が低い場合には補正により感度が悪化する可能性があるので、GPS測位の精度が高い場合における右左折時に行われる。
例えば、GPS速度が30km/h以上であり、DOPから求まる誤差円の直径が100m以内であることを学習開始条件として、学習が行われる。なお、学習開始条件としては、さらに、車両現在位置の周辺に所定以上の高度のビルが存在しないことを条件に追加するようにしてもよい。
【0040】
推測方位信頼度は、推測距離の信頼度を求めるために使用するもので、推測方位の信頼度が高ければ、推測距離の精度も高いと考えられるので推測方位信頼度(各要素から求めた最終値)をそのまま使用する。
【0041】
距離係数学習状態は、距離に対する学習回数を示し、学習回数が多ければ、距離係数の精度は高い(推測距離の精度が高い)と考えられるので、推測距離の信頼度も高く規定されている。
ここで距離に対する学習も、ジャイロの感度学習と同様に、周知の各種方法を使用することができる。
例えば、GPS測位により算出した車両の移動距離を基準とし、車両の走行距離を計測する距離センサで出力される距離パルスの回数を計数することで距離パルス1回に対する移動距離を算出した回数を学習回数とする。距離パルス1回当たりの移動距離は、各学習で求めた移動距離の分布から最も多い値に基づいて統計的に決定する。
なお、距離に対する学習も、ジャイロの学習と同様にGPSの精度が高い場合に行われ、車両が所定距離だけ移動する間で学習開始条件を満たしている必要がある。
【0042】
図4、GPS方位と距離の信頼度を決定する各要素について規定したものである。
GPS・推測軌跡方位一致度は、GPSによる軌跡の形状と推測軌跡の形状の一致度を判定するものである。推測方位の変化量とGPS方位の変化量が近ければ(差が小さければ)、GPS方位の精度は高いと考えられることから、図4に示すように、両方位の一致度が高いほど、GPS方位の信頼度が高く規定されている。
【0043】
ここで、GPS・推測軌跡方位一致度は次のようにして算出する。
(a)GPS信頼度算出位置(最新GPS測位点)を基点とする。
同様に推測軌跡は、GPSの基点と同mの推測軌跡位置(同期した位置)を基点とする。
【0044】
(b)基点から、測位点間隔でGPS測位点を最大20点取得し、基点方位からの方位変化量を各測位点毎に取得する。この時、GPSの連続性(測位間隔)を5秒以内とする(2、3秒非測位になっても処理が動く)。
同様に、推測軌跡も基点方位からの方位変化量を、各測位点に対応する点毎に取得する(推測軌跡座標はGPS測位m位置と同期をとること)。
【0045】
(c)取得したGPSと推測軌跡の各方位変化量に対して、対応する測位点間の差分を算出し、その和をとり平均値を算出する(相関値)。この相関値が図4平均方位差(°)となる。
なお、取得するGPS方位は、GPS方位信頼度が2以上のもののみとする。
【0046】
GPS速度が速ければ、GPS方位の精度は高くなると考えられるので、図4に示すように、信頼度も高く規定されている。
【0047】
DOP(Dilution Of Precision)は、GPS衛星の配置から計算される測位精度を示す値(精度低下率)で、DOPが小さければGPS距離、GPS方位も比較的高いと考えられるので、図4に示すように、信頼度も高く規定されている。なお、DOP値は1.0が最もよい値である。
DOPには、幾何学的精度低下率HDOP、水平精度低下率PDOP、位置精度低下率RDOP等があり、本実施形態ではHDOPを使用するが、他を使用し、また、他を併用してもよい。
DOPは、GPS受信装置14で算出される。
【0048】
座標間距離によるGPS・推測軌跡位置一致度は、図4で規定される。推測軌跡との距離の一致度が高ければ、GPS距離の精度も高いと考えられるので、座標間距離によるGPS・推測軌跡位置一致度の信頼度も高く規定されてる。
【0049】
この座標間距離によるGPS・推測軌跡位置一致度は、次のようにして算出する。
(a)GPS信頼度算出位置(最新GPS測位点)を基点とする。
同様に推測軌跡は、GPSの基点に対応して測定される推測軌跡位置を基点とする。
(b)GPS基点位置から10m以上間の間隔でGPS測位点を10点取得し、基点からの座標間距離を算出する。
同様に、推測軌跡について、推測軌跡位置の基点から、GPSの各測位点に対応する各位置までの座標間距離を算出する。
(c)(b)で算出した、対応するGPS位置(測位点)と推測位置までの両座標間距離の差分を、各測位点毎に算出し、2乗の和をとり平均値を算出する(相関値)。
この相関値から信頼度を決定する。
【0050】
座標間方位によるGPS・推測軌跡位置一致度は、図4で規定されている。すなわち、推測軌跡との座標間の方位の一致度が高ければ、GPS方位の精度も高いと考えられるので、座標間方位によるGPS・推測軌跡位置一致度の信頼度も高く規定されてる。
【0051】
この座標間方位によるGPS・推測軌跡位置一致度は、次のようにして算出する。
(a)GPS信頼度算出位置(最新GPS測位点)から、10m以上の間隔でGPS測位点を最大10点取得し、隣どうしの2点間の座標から、当該2点間に対する方位を算出する。なお、本実施形態では、比較する点間の間隔が小さいと、少しのずれでも方位が大きく成ってしまうため10m以上の間隔に設定している。
同様に、推測軌跡についても、GPS測位点に対応する各位置に対し、隣どうしの2点間の座標から、当該2点間に対する方位を算出する。
(b)GPS測位点に基づき算出した各方位に対して、隣同士の方位の差分を算出し、推測方位変化量を算出する。
同様に、推測軌跡についても、各点に基づき算出した各方位に対して、隣同士の方位の差分を算出し、方位変化量を算出する。
【0052】
(c)(b)で算出した、対応するGPSの方位変化量と推測方位変化量の差分を、各点毎に算出し、2乗の和をとり平均値を算出する(相関値)。
この相関値から信頼度を決定する。
【0053】
以上により各要素毎に信頼度を求め、最終的な推測方位と距離、GPS方位と距離の各信頼度は、要素毎の信頼度の平均値として算出する。
例えば、推測方位の信頼度は、推測方位の前回信頼度が4、想定累積方位誤差の信頼度が3、ジャイロ感度学習状態の信頼度が3であれば、これら3要素の信頼度の平均値が3.33となる。
図2(a)で示した想定方位誤差を求める場合には、求めた平均値3.33を四捨五入した値3を信頼度とする。これにより信頼度3に対応する想定方位誤差は10度以内となる。
なお、より精度を高めるため、求めた平均値を五捨六入、六捨七入、…としても良く、また小数点以下を切り捨てするようにしてもよい。
【0054】
また、各要素の信頼度に対して重み付けをするようにしてもよい。
この場合、重み付けとしては、前回信頼度の重み付けを他の要素よりも高くする。
例えば、前回信頼度を1.5倍、想定累積方位誤差の信頼度を0.8倍、ジャイロ感度学習状態の信頼度を0.7倍する。
更に、各要素毎に算出した信頼度に基づき、ファジィ制御により最終的な信頼度を決定するようにしてもよい。
【0055】
このように構成されたナビゲーション装置では、次のようにして経路案内が行われる。
ナビゲーション装置は、現在位置検出装置10で現在位置を検出し、情報記憶装置50の地図データファイル51から現在位置周辺の地図情報を読み込みディスプレイ42に表示する。
そして、入力装置41から目的地が入力されると、情報処理制御装置20は、現在位置から目的地に至る走行経路の候補を複数探索(演算)し、ディスプレイ42に表示した地図上に表示し、運転者がいずれかの走行経路を選択すると、選択した走行経路をRAM24に格納することで、走行経路を取得する(走行経路取得手段)。
【0056】
なお、情報処理制御装置20は、情報処理センタに車両現在位置(又は入力された出発地)と目的地を送信し、情報処理センタで探索された目的地までの走行経路を受信することにより走行経路を取得するようにしてもよい。この場合、目的地や走行経路の通信は通信インターフェイス25を介して、無線通信により行う。
また、自宅等のパーソナルコンピュータ等の情報処理装置を使用して、出発地から目的地までの走行経路を探索し、USBメモリ等の記憶媒体に格納し、該記憶媒体読取り装置を介して取得するようにしてもよい。この場合の記憶媒体読取装置は伝送路45を介して情報処理制御装置20に接続される。
【0057】
車両が走行すると、現在位置検出装置10によって検出された現在位置を追跡することにより、経路案内を行う。
経路案内は、探索した走行経路に対応する道路データと現在位置検出装置10で検出される現在位置とのマップマッチングにより地図上の車両位置を特定し、車両現在位置周辺の地図をディスプレイ42に表示し、探索した走行経路を地図上に表示すると共に、車両の現在位置を示す現在位置マークを地図上に表示する。
また、探索した走行経路と現在位置との関係から、案内の必要性、すなわち直進が所定距離以上続く場合、所定の進路変更地点等の走行経路の案内、及び方面案内が必要か否か等について判断し、必要である場合にはディスプレイ42の表示及び音声による案内を実行する。
【0058】
次に、このように構成されたナビゲーション装置による、マップマッチング処理について説明する。
図5は、本実施形態におけるマップマッチング処理のフローチャートである。
情報処理制御装置20は、現在位置検出装置10等で検出される各種センサ情報を取得する(ステップ1)。
そして、情報処理制御装置20は、取得したセンサ情報に基づいて、推測位置の算出と確定を行う(ステップ2)。すなわち、推測航法に基づく推測位置を求め、後述するように、信頼度に基づく想定方位誤差範囲から推測位置を決定する。
【0059】
そして、情報処理制御装置20は、ディスプレイ42に表示している地図上の現在位置マークを移動させて(ステップ3)処理を終了する。この場合、推測位置が後述する最適候補地点に補正されるか否かに拘わらず、現在位置マークは最適候補地点に移動する。
【0060】
つぎに、推測位置確定処理について、図6のフローチャート、及び図7、図8の状態図に従って説明する。
情報処理制御装置20は、推測位置補正後の方位について、次の手順により算出する(ステップ20)。
なお、図7(a)において、点P0(A0)は、前回のマップマッチング処理により確定した推測位置(候補地点A0に補正後の推測位置)である。
(i)前回の推測位置P0を基準とし、車両の移動距離と方位とに基づいて推測位置P1と、推測軌跡に基づき推測位置P1における推測方位(進行方向)を求める。
【0061】
(ii)推測位置P1に対する各候補地点を特定する。
この候補地点は、推測位置P1から所定距離Lm以内に存在する道路に対して特定され、前回の推測位置P0でマッチングした各始点候補を、車両の移動距離分だけ道路に沿って移動させた地点を推測位置P1に対する候補地点とする。
なお、前回の候補地点P0を車両の移動距離分だけ道路に沿って移動させた結果、推測位置P1から所定距離Lm以内に存在しない場合には、その候補地点は候補対象外となる。
また、推測位置P1から所定距離の範囲内に、前回マップマッチング時の各候補地点が存在する道路と連続する道路で、分岐や交差点等による新たな道路が存在する場合には、各道路に対して、前回推測位置P0から車両移動距離分だけ移動させた地点を候補地点とする。図7(a)に示した例の場合、分岐による新たな道路上にも候補地点B1が新たに設定される。
更に、推測位置P1から所定距離の範囲に、前回マップマッチング時の各候補地点が存在するいずれの道路とも連続しない新たな道路が存在する場合には、推測位置P1から当該道路に引いた垂線と交わる点を新たな候補地点として設定する。
【0062】
(iii)推測位置P1に対応する各候補地点に対するコスト計算により、最適候補地点を求める。
この各候補地点に対するコスト計算は、本実施形態では、推測位置P1との距離差、方位差、走行状態、過去の候補の状態によって計算される。
但し、距離だけに基づいて計算したり、距離と方位に基づいて計算したり、他の要素を考慮して計算したりすることも可能である。
【0063】
コスト計算の考え方は次の通りである。
距離差、方位差共に値が小さい候補ほど、最適な候補である可能性が高いと考えられる。
また、車速等の走行状態としては、高速(例えば、100km/h)で走行しているのであれば、高速道路を走行している可能性が高いと考えられる。
過去の状態は、近い過去に一般道(高速)を走行しているのであれば、一般道(高速)を走行している可能性が高いと考えられる。
過去の候補の状態としては、1つ前の候補地点におけるコストの1/2が使用される。
【0064】
上記の各状態を点数化(距離差、方位差はその値を点数にする)し、その合計値を各候補地点のコスト合計として算出する。そして、コスト合計が最も小さい候補地点を最適候補地点とする。
例えば、車両が時速100km/hで走行しているものとする。
そして、一般道上に設定された候補地点Xについて、距離差が5m、方位差が5度、走行状態が10(車速100km/hなので一般道を走行している可能性は低いため)、前回のコストが50であるとする。
この場合、候補地点Xのコスト合計は、5+5+10+(50×1/2)=45となる。
【0065】
一方、高速道路上に設定された候補地点Yについて、距離差が10m、方位差が3度、走行状態が0(車速100km/hなので高速道路を走行している可能性が高いため)、前回のコストが40であるとする。
この場合、候補地点Yのコスト合計は、10+3+0+(40×1/2)=33となる。
【0066】
以上の計算により、コスト合計が最小である候補地点Yが最適な候補地点として特定される。
なお、上記の計算例は、コスト合計についての考え方を示したものであり、実際の係数や加算の方法は、最適なものが採用される。
【0067】
(iv)以上のコスト計算により特定した最適候補地点が存在する道路(道路データ)の進行方向の方位を求め、これを推測位置補正後の方位とする。
【0068】
図6に戻り、推測位置補正後の方位を算出(ステップ20)すると、情報処理制御装置20は、推測方位の信頼度を取得する(ステップ21)。
すなわち、情報処理制御装置20は、図3で説明したように、推測方位の各要素(前回信頼度、想定累積方位誤差、ジャイロ感度学習状態)に基づく各信頼度を算出し、これらの平均値を算出することで推測方位の信頼度を算出する。
【0069】
更に情報処理制御装置20は、GPS方位の信頼度を取得する(ステップ22)。
すなわち、情報処理制御装置20は、図4で説明したように、GPS方位に対する各要素(GPS・推測軌跡方位一致度、速度、DOP)に基づく各信頼度を算出し、これらの平均値を算出することでGPS方位の信頼度を算出する。
【0070】
次に情報処理制御装置20は、ステップ21、22で求めた両信頼度を比較する(ステップ23)。
推測方位の信頼度がGPS方位の信頼度以上である場合(ステップ23;Y)、情報処理制御装置20は、図2で説明した信頼度の定義に従い、推測方位の信頼度に応じた想定方位誤差を取得する(ステップ24)。
【0071】
そして、情報処理制御装置20は、取得した想定方位誤差の範囲内に、推測軌跡補正後の方位が収まるか否かを判断する(ステップ25)。
すなわち、ステップ20で求めた推測位置P1における推測方位と推測位置補正後の方位との差(図7(b)のθ1)が、想定方位誤差以下であるかを判断する。
【0072】
方位差θ1が想定方位誤差以下である場合(ステップ25;Y)、情報処理制御装置20は、推測位置を最適候補地点に補正し(ステップ26)、メインルーチンにリターンする。
図7(b)を例に説明すると、推測位置P1に対して最適候補地点が候補地点A1であった場合、最適候補地点A1上の道路の進行方向が補正後の方位になり、この補正後の方位と、推測軌跡から求めた推測方位(補正前の方位)との差がθ1で、このθ1が想定方位誤差以下であれば、推定方位P1を最適候補位置A1に補正(変更)する。
【0073】
一方、方位差θ1が想定方位誤差よりも大きい場合(ステップ25;N)、情報処理制御装置20は、推測位置を最適候補地点に補正せずにメインルーチンにリターンする。
すなわち、図8(b)における候補地点A1は他の候補地点B1よりも最適ではあるが、方位差θ1が想定方位誤差よりも大きいので誤マッチングになる可能性が高いため、推測位置P1を最適候補地点A1に変更することなく、メインルーチンにリターンする。
【0074】
このように、方位差θ1が想定方位誤差よりも大きい場合には、推測位置P1を道路上の最適候補地点A1に補正することによる誤マッチングが回避される。
そして、8(c)に示すように、次のマップマッチングでは、補正がされていない推測位置P1から次の推測位置P2が求まるため、推測位置P2を正しい候補地点B2に早い時点で復帰させることができる。これに伴い、ディスプレイ42に表示されている車両の現在位置マークも早期に正しい道路上に復帰させることができる。
【0075】
一方、GPS方位の信頼度が推測方位の信頼度以上である場合(ステップ23;N)、情報処理制御装置20は、図2で説明した信頼度の定義に従い、GPS方位の信頼度に応じた想定方位誤差を取得する(ステップ27)。
【0076】
そして、情報処理制御装置20は、取得した想定方位誤差の範囲内に、推測軌跡補正後の方位が収まるか否かを判断する(ステップ28)。
すなわち、図8(b)に示すように、GPSの移動軌跡Gから求めたGPS方位と、ステップ20で求めた推測位置補正後の方位との差θ2が、想定方位誤差以下であるかを判断する。
【0077】
方位差θ2が想定方位誤差以下である場合(ステップ28;Y)、情報処理制御装置20は、図7(b)で説明したと同様に、推測位置P1を最適候補地点A1に補正し(ステップ29)、メインルーチンにリターンする。
【0078】
一方、方位差θ2が想定方位誤差よりも大きい場合(ステップ28;N)、情報処理制御装置20は、推測位置P1を最適候補地点A1に補正せずにメインルーチンにリターンする。
すなわち、図8(b)における候補地点A1は他の候補地点B1よりも最適ではあるが、方位差θ2が想定方位誤差よりも大きいので誤マッチングになる可能性が高いため、推測位置P1を最適候補地点A1に変更することなく、メインルーチンにリターンする。
【0079】
このように、方位差θ2が想定方位誤差よりも大きい場合には、推測位置P1を道路上の最適候補地点A1に補正することによる誤マッチングが回避される。
そして、図8(c)に示すように、次のマップマッチングでは、補正がされていない推測位置P1から次の推測位置P2が求まるため、推測位置P2を正しい候補地点B2に早い時点で復帰させることができる。これに伴い、ディスプレイ42に表示されている車両の現在位置マークも早期に正しい道路上に復帰させることができる。
【0080】
以上説明したように本実施形態のナビゲーション装置によれば、推測航法により求めた推測位置P1に対し、推測方位の信頼度とGPS方位の信頼度の高い方の信頼度に基づく想定方位誤差を求め、信頼度が高い方の方位と、最適候補地点に推測位置P1を補正した場合の進行方向の方位との方位差θが想定方位誤差の範囲内にない場合には推測位置P1を補正しない。
これにより、ディスプレイ42の表示では最適候補地点に車両の現在位置マークを移動させることで誤マッチング状態となっていても、実際の推測位置P1は補正(移動)させず、未補正の推測位置P1を基準に次の推測位置P2を求めるので、次回以降のマッチング処理において、より早く正しい道路に現在位置マーク及び推測位置を復帰させることができる。
【0081】
以上、本発明のナビゲーション装置及びナビゲーション用プログラムにおける1実施形態について説明したが、本発明は説明した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲において各種の変形を行うことが可能である。
例えば、説明した実施形態では、推測方位の信頼度とGPS方位の信頼度の大きい方の信頼度から想定方位誤差を求めたが、推測方位の信頼度から想定方位誤差を求め、方位差θ1が想定誤差範囲内か否かにより推測位置を最適候補地点に補正するか否かを決定するようにしてもよい。
【0082】
また、推測航法により求めた推測位置を基準にマップマッチングを行う場合について説明したが、GPS測定値から求めたGPS位置を基準にマップマッチングを行うようにしてもよい。
すなわち、GPS位置を最適候補地点に移動した場合の(道路上の)進行方向の方位と、GPS方位との方位差θ2が、信頼度に基づく想定方位誤差の範囲内であれば、GPS位置を最適候補地点に補正し、範囲外であればGPS位置の補正は行わない。
この場合、想定方位誤差を決定するための信頼度としては、GPS方位の信頼度を使用してもよく、GPS方位の信頼度と推測方位の信頼度の大きい方の信頼度を使用してもよい。
【0083】
また本実施形態では、方位差θ2(図8(b)参照)が想定誤差よりも大きい場合に推測位置P1を補正しないが、信頼度が推測方位よりもGPS方位の方が高いのでGPSにより特定されるGPS位置に推測位置P1を補正するようにしてもよい。
推測位置P1は、前回の推測位置P0に対して移動距離と移動方位により特定されるので、移動距離は推測航法による値を使用し、移動方位についてだけGPS方位を使用するようにしてもよい。
【0084】
説明した実施形態及び上記変形例では、車両位置(推測位置又はGPS位置)を補正前後の方位差θが想定誤差範囲内である場合に車両位置の補正を行い、範囲外である場合に補正を行わないこととして説明した。
しかし、走行した軌跡をデータとして使用する場合には、道路から外れた位置を軌跡として保存することになる。例えば、図7(c)の場合、P1は補正せず、P2をB2に補正した場合、走行軌跡としてはP0→P1→B2となってしまう。
そこで、マップマッチングにより最適候補地点に補正しなかった車両位置(推測位置又はGPS位置)については、その後のマップマッチングにおいて車両位置を最適候補地点に補正した場合に、補正した最適候補地点が設定されている道路上の候補地点に未補正の車両位置を補正する。
例えば、図7(c)の上記例の場合、未補正の推測位置P1は、次の推測位置P2が最適候補地点B2に補正された場合に、推測位置P1に対応して設定された、最適候補地点B2が存在する道路上の候補地点B1に補正する。
【0085】
なお、推測航法により算出した推測軌跡を保存する場合には、マップマッチング処理において推測位置を最適候補位置に補正するのではなく、推測位置を最適候補地点に移動した場合の道路上の進行方向の方位に、推測方位を補正するようにしてもよい。
この方位補正は、例えば、前回マップマッチングで確定した推測位置を中心に推測方位を回転させることにより行う。
【符号の説明】
【0086】
10 現在位置検出装置
20 情報処理制御装置
21 CPU
40 入出力装置
50 情報記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前回の車両位置を基準とし、その後の移動に伴う車両の推定地点を算出する推定地点算出手段と、
前記推定地点周辺の道路上に設定された候補地点から、前記推定地点とのマッチング処理により最適候補地点を選択する選択手段と、
前記推定地点に対応する車両の方位とその信頼度を算出し、該信頼度に対応する想定方位誤差を取得する想定方位誤差取得手段と、
前記車両の方位と、前記推定地点を前記最適候補地点に補正した場合の方位との方位差θが、前記想定方位誤差内か否かを判断する判断手段と、
前記方位差θが前記想定方位誤差内である場合に前記最適候補地点を前記推定地点に対する補正後の車両位置とし、前記方位差θが想定方位誤差内でない場合に前記推定地点を車両位置とする車両位置決定手段と、
を具備したことを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
前記推定地点は、前回の車両位置を基準とする推測航法によって推測した推測位置とし、
前記想定方位誤差取得手段は、前記推測位置における推測方位を車両の方位とし、前記推測方位の信頼度に対応する想定方位誤差を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項3】
前記推定地点は、前回の車両位置を基準とする推測航法によって推測した推測位置とし、
前記想定方位誤差取得手段は、前記推測位置における推測方位の信頼度と、前記推測位置に対応して測定されるGPSによるGPS方位の信頼度を算出し、信頼度の大きい方を前記車両の方位とし、車両の方位の信頼度に対応する想定誤差を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載のナビゲーション装置。
【請求項4】
前記車両位置に対応する地図を表示する地図表示手段と、
前記表示した地図上に車両の現在位置マークを表示する現在位置マーク表示手段と、を備え、
前記現在位置マーク表示手段は、車両位置決定手段で決定した車両位置にかかわらず、前記最適候補地点に対応する前記地図上の地点に現在位置マークを表示する、
ことを特徴とする請求項1,請求項2、又は請求項3に記載のナビゲーション装置。
【請求項5】
前回の車両位置を基準とし、その後の移動に伴う車両の推定地点を算出する推定地点算出機能と、
前記推定地点周辺の道路上に設定された候補地点から、前記推定地点とのマッチング処理により最適候補地点を選択する選択機能と、
前記推定地点に対応する車両の方位とその信頼度を算出し、該信頼度に対応する想定方位誤差を取得する想定方位誤差取得機能と、
前記車両の方位と、前記推定地点を前記最適候補地点に補正した場合の方位との方位差θが、前記想定方位誤差内か否かを判断する判断機能と、
前記方位差θが前記想定方位誤差内である場合に前記最適候補地点を前記推定地点に対する補正後の車両位置とし、前記方位差θが想定方位誤差内でない場合に前記推定地点を車両位置とする車両位置決定機能と、
をコンピュータに実現させることを特徴とするナビゲーション用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−197278(P2010−197278A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43790(P2009−43790)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】