説明

ハイブリッド自動車

【課題】少なくとも一つの電動機を有する電動機装置が接続された駆動電圧系の電圧を昇圧コンバータによって状況に応じてより適正に変化させる。
【解決手段】モータ運転モードで走行している最中にエンジンの始動要求がなされた走行中始動要求時でないときには比較的小さな所定値ΔV1を昇圧レートΔVに設定し(S130)、走行中始動要求時には所定値ΔV1より大きな所定値ΔV2や所定値ΔV3を昇圧レートΔVに設定し(S160,S170)、設定した昇圧レートΔVで高電圧系電力ラインの電圧VHが目標電圧VHtagに向けて上昇するよう昇圧コンバータを制御する(S180,S190)。これにより、走行中始動要求時には、高電圧系電力ラインの電圧VHを迅速に変化させることができ、走行中始動要求時でないときには、モータの制御性を確保しながら高電圧系電力ラインの電圧VHを変化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、エンジンと、エンジンに連結された第1のモータジェネレータ(MG1)と、駆動輪に連結された第2のモータジェネレータ(MG2)と、バッテリと、モータジェネレータMG1およびモータジェネレータMG2とバッテリとに接続された昇圧コンバータと、を備え、モータジェネレータMG2による駆動輪の駆動中にエンジンの始動指示を受けたときには、バッテリの電池出力に基づいて定めた昇圧レートで昇圧コンバータの出力電圧が最大電圧まで上昇するよう昇圧コンバータを駆動制御し、昇圧コンバータの出力電圧が最大電圧に到達してからモータジェネレータMG1によってエンジンをモータリングして始動するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド自動車では、このようにエンジンを始動することにより、バッテリから過大な電力が出力されるのを抑制しながらエンジンを始動できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO 2005/081395 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたハイブリッド自動車では、昇圧コンバータの出力電圧を最大電圧まで上昇させる際において、小さなレートで上昇させると、モータジェネレータMG1,MG2の制御性を確保できるものの昇圧コンバータの出力電圧が最大電圧に到達するまでの時間が長くなり、大きなレートで上昇させると、昇圧コンバータの出力電圧を迅速に上昇させることができるもののモータジェネレータMG1,MG2の制御性が低下しやすいため、これらを踏まえて、昇圧コンバータの出力電圧をより適正に上昇させることが望まれている。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車は、少なくとも一つの電動機を有する電動機装置が接続された駆動電圧系の電圧を昇圧コンバータによって状況に応じてより適正に変化させることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
内燃機関と、少なくとも一つの電動機を有し前記内燃機関をモータリング可能であると共に走行用の動力を出力可能な電動機装置と、二次電池と、前記二次電池が接続された電池電圧系と前記電動機装置が接続された駆動電圧系とに接続されて前記駆動電圧系の電圧を前記電池電圧系の電圧以上の範囲内で調節すると共に前記電池電圧系と前記駆動電圧系との間で電力のやりとりを行なう昇圧コンバータと、を備え、運転停止中の前記内燃機関の前記電動機装置によるモータリングを伴った始動と運転中の前記内燃機関の運転停止とを伴って走行するハイブリッド自動車であって、
前記駆動電圧系の電圧を目標電圧に向けて上昇させる際、走行中に前記内燃機関の始動要求がなされた走行中始動要求時には、該走行中始動要求時でないときに比して大きな昇圧レートで前記駆動電圧系の電圧が前記目標電圧に向けて上昇するよう前記昇圧コンバータを制御する昇圧制御手段、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド自動車では、少なくとも一つの電動機を有し内燃機関をモータリング可能であると共に走行用の動力を出力可能な電動機装置が接続された駆動電圧系の電圧を目標電圧に向けて上昇させる際において、走行中に内燃機関の始動要求がなされた走行中始動要求時には、走行中始動要求時でないときに比して大きな昇圧レートで駆動電圧系の電圧が目標電圧に向けて上昇するよう昇圧コンバータを制御する。これにより、走行中始動要求時には、駆動電圧系の電圧を目標電圧に向けて迅速に上昇させることができ、走行中始動要求時でないときには、電動機装置が有する少なくとも一つの電動機の制御性を確保しながら駆動電圧系の電圧を目標電圧に向けて上昇させることができる。即ち、状況に応じた昇圧レートで駆動電圧系の電圧を目標電圧に向けて上昇させることができる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド自動車において、前記昇圧制御手段は、前記走行中始動要求時において、走行に要求される要求トルクが予め定められた所定トルク以上のときには、前記要求トルクが前記所定トルク未満のときに比して大きな昇圧レートで前記駆動電圧系の電圧が前記目標電圧に向けて上昇するよう制御する手段である、ものとすることもできる。こうすれば、走行中始動要求時には、要求トルクに応じた昇圧レートで駆動電圧系の電圧を目標電圧に向けて上昇させることができる。
【0010】
また、本発明のハイブリッド自動車において、前記走行中始動要求時には、前記駆動電圧系の電圧が前記目標電圧以上に至ってから前記電動機装置による前記内燃機関のモータリングが開始されて該内燃機関が始動されるよう前記内燃機関と前記電動機装置とを制御する始動時制御手段、を備えるものとすることもできる。この場合、上述したように、走行中始動要求時に、走行中始動要求時でないときに比して大きな昇圧レートで駆動電圧系の電圧を目標電圧に向けて上昇させることにより、電動機装置による内燃機関のモータリングをより早いタイミングで開始することができ、内燃機関を迅速に始動することができる。
【0011】
さらに、本発明のハイブリッド自動車において、前記電動機装置は、動力を入出力可能な第1電動機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記第1電動機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、前記駆動軸に動力を入出力可能な第2電動機と、を有する装置である、ものとすることもできる。また、本発明のハイブリッド自動車において、前記電動機装置は、前記内燃機関をモータリング可能であると共に走行用の動力を出力可能な一つの電動機を有する装置である、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】モータMG1,MG2を含む電機駆動系の構成の概略を示す構成図である。
【図3】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される昇圧制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される始動許可ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図5】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料とするエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22のクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動輪63a,63bにデファレンシャルギヤ62を介して連結された駆動軸32にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸32に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、インバータ41,42をスイッチング制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52と、インバータ41,42が接続された電力ライン(以下、高電圧系電力ラインという)54aとバッテリ50が接続された電力ライン(以下、電池電圧系電力ラインという)54bとに接続されて高電圧系電力ライン54aの電圧VHを電池電圧系電力ライン54bの電圧VLから最大許容電圧VHmaxの範囲内で調節すると共に高電圧系電力ライン54aと低電圧系電力ライン54bとの間で電力のやりとりを行なう昇圧コンバータ55と、車両全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット70と、を備える。ここで、最大許容電圧VHmaxは、後述のコンデンサ57の耐圧よりも若干低い値などを用いることができる。
【0015】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも永久磁石が埋め込まれたロータと三相コイルが巻回されたステータとを備える周知の同期発電電動機として構成されている。インバータ41,42は、図2のモータMG1,MG2を含む電機駆動系の構成図に示すように、6つのトランジスタT11〜T16,T21〜26と、トランジスタT11〜T16,T21〜T26に逆方向に並列接続された6つのダイオードD11〜D16,D21〜D26と、により構成されている。トランジスタT11〜T16,T21〜T26は、それぞれ高電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線とに対してソース側とシンク側になるよう2個ずつペアで配置されており、対となるトランジスタ同士の接続点の各々にモータMG1,MG2の三相コイル(U相,V相,W相)の各々が接続されている。したがって、高電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線との間に電圧が作用している状態で対をなすトランジスタT11〜T16,T21〜T26のオン時間の割合を制御することにより三相コイルに回転磁界を形成でき、モータMG1,MG2を回転駆動することができる。インバータ41,42は、高電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線とを共用しているから、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータに供給することができる。高電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線とには平滑用のコンデンサ57が接続されている。
【0016】
モータECU40は、図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他にROMやRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流,インバータ41,42に取り付けられた図示しない温度センサからのインバータ温度などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜26へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からのモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0017】
昇圧コンバータ55は、図2に示すように、2つのトランジスタT31,T32とトランジスタT31,T32に逆方向に並列接続された2つのダイオードD31,D32とリアクトルLとからなる昇圧コンバータとして構成されている。2つのトランジスタT31,T32は、それぞれ高電圧系電力ライン54aの正極母線と高電圧系電力ライン54aおよび電池電圧系電力ライン54bの負極母線とに接続されており、その接続点にリアクトルLが接続されている。また、リアクトルLと高電圧系電力ライン54aおよび電池電圧系電力ライン54bの負極母線とにはそれぞれ高圧バッテリ50の正極端子と負極端子とが接続されている。したがって、トランジスタT31,T32をオンオフ制御することにより、電池電圧系電力ライン54bの電力を昇圧して高電圧系電力ライン54aに供給したり、高電圧系電力ライン54aの電力を降圧して電池電圧系電力ライン54bに供給したりすることができる。リアクトルLと高電圧系電力ライン54aおよび電池電圧系電力ライン54bの負極母線とには平滑用のコンデンサ58が接続されている。
【0018】
バッテリECU52は、図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他にROMやRAM,入出力ポート,通信ポートを備える。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電池電圧系電力ライン54bに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度などが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)を演算したり、演算した残容量(SOC)と電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量(SOC)に基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0019】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、コンデンサ57の端子間に取り付けられた電圧センサ57aからのコンデンサ57の電圧(高電圧系電力ライン54aの電圧)VHやコンデンサ58の端子間に取り付けられた電圧センサ58aからのコンデンサ58の電圧(電池電圧系電力ライン54bの電圧)VL,イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32へのスイッチング制御信号などが出力ポートを介して出力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0020】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸32に出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力が駆動軸32に出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されて駆動軸32に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力が駆動軸32に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力を駆動軸32に出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードと充放電運転モードは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力が駆動軸32に出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するモードであるから、両者を合わせてエンジン運転モードとして考えることができる。
【0021】
エンジン運転モードでは、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accと車速センサ88からの車速Vとに基づいて駆動軸32に出力すべき要求トルクTr*を設定し、設定した要求トルクTr*に駆動軸32の回転数Nr(例えば、モータMG2の回転数Nm2や車速Vに換算係数を乗じて得られる回転数)を乗じて走行に要求される走行用パワーPdrv*を計算すると共に計算した走行用パワーPdrv*からバッテリ50の残容量(SOC)に基づいて得られるバッテリ50の充放電要求パワーPb*(バッテリ50から放電するときが正の値)を減じてエンジン22から出力すべきパワーとしての要求パワーPe*を設定し、要求パワーPe*を効率よくエンジン22から出力することができるエンジン22の回転数NeとトルクTeとの関係としての動作ライン(例えば燃費最適動作ライン)を用いてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定し、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で、エンジン22を目標回転数Ne*で回転させるための回転数フィードバック制御によりモータMG1から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm1*を設定すると共にモータMG1をトルク指令Tm1*で駆動したときにプラネタリギヤ30を介して駆動軸32に作用するトルクを要求トルクTr*から減じてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とについてはエンジンECU24に送信し、トルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40に送信する。そして、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによってエンジン22が運転されるようエンジン22における吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などを行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜T26のスイッチング制御を行なう。
【0022】
このエンジン運転モードでは、エンジン22の要求パワーPe*がエンジン22を効率よく運転するためにエンジン22を運転停止した方がよいとして定められた閾値Pstop未満に至ったときなどに、エンジン22の運転停止要求がなされているとして、エンジン22の運転を停止してモータ運転モードに移行する。
【0023】
モータ運転モードでは、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸32に出力すべき要求トルクTr*を設定し、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定すると共にバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸32に出力されるようモータMG2のトルク指令Tm2*を設定してこれらをモータECU40に送信する。そして、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようインバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜26のスイッチング制御を行なう。
【0024】
このモータ運転モードでは、要求トルクTr*に駆動軸32の回転数Nrを乗じて得られる走行用パワーPdrv*からバッテリ50の充放電要求パワーPb*を減じて得られるエンジン22の要求パワーPe*がエンジン22を効率よく運転するためにエンジン22を始動した方がよいとして定められた閾値Pstart以上に至ったときや、バッテリ50の残容量(SOC)がバッテリ50の過放電を抑制するためにエンジン22を始動した方がよいとして定められた閾値Slo未満に至ったときなどに、エンジン22の始動要求がなされているとして、エンジン22を始動してエンジン運転モードに移行する。
【0025】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。以下、説明の都合上、まず、高電圧系電力ライン54aの電圧を上昇させる際の昇圧制御について説明し、その後、モータ運転モードで走行している最中にエンジン22の始動要求がなされた走行中始動要求時にエンジン22の始動を許可する様子について説明する。なお、走行中始動要求時としては、モータ運転モードで走行している最中にエンジン22の始動要求がなされてからエンジン22の始動完了までを考えることができる。
【0026】
図3は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される昇圧制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。
【0027】
昇圧制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、駆動軸32に出力すべき要求トルクTr*や、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,電圧センサ57aからの高電圧系電力ライン54aの電圧VH,走行中始動要求時には値1が設定されると共に走行中始動要求時でないときには値0が設定される走行中始動要求フラグFsなど制御に必要なデータを入力する(ステップS100)。ここで、要求トルクTr*やモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*,走行中始動要求フラグFsは、上述の駆動制御の処理で設定されたものを入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。
【0028】
こうしてデータを入力すると、走行中始動要求フラグFsの値を調べ(ステップS110)、走行中始動要求フラグFsが値0のとき、即ち、走行中始動要求時でないときには、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*と回転数Nm1,Nm2とに基づいて高電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagを設定すると共に(ステップS120)、高電圧系電力ライン54aの電圧VHを上昇させるときの昇圧レートΔVに比較的小さな所定値ΔV1を設定する(ステップS130)。ここで、高電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagは、実施例では、モータMG1の目標動作点(トルク指令Tm1*,回転数Nm1)でモータMG1を駆動できる電圧とモータMG2の目標動作点(トルク指令Tm2*,回転数Nm2)でモータMG2を駆動できる電圧とのうち大きい方の電圧を設定するものとした。また、所定値ΔV1は、モータMG1,MG2の制御性を十分に確保できる(トルク指令に応じて正常にモータを駆動できる)範囲内の値として実験や解析などによって定められ、例えば、モータMG1,MG2やインバータ41,42の仕様などに基づいて定められる。
【0029】
こうして昇圧レートΔVを設定すると、設定した昇圧レートΔVを前回の高電圧系電力ライン54aの電圧指令(前回VH*)に加えたものと目標電圧VHtagとのうち小さい方を高電圧系電力ライン54aの電圧指令VH*に設定し(ステップS180)、設定した電圧指令VH*を用いて昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング制御を行なって(ステップS190)、本ルーチンを終了する。こうした制御により、走行中始動要求時でないときには、高電圧系電力ライン54aの電圧VHを比較的小さな昇圧レートΔV(所定値ΔV1)で目標電圧VHtagに向けて上昇させることになる。したがって、モータMG1,MG2の制御性を確保しつつ高電圧系電力ライン54aの電圧VHを目標電圧VHtagに向けて上昇させることができる。
【0030】
ステップS110で走行中始動要求フラグFsが値1のとき、即ち、走行中始動要求時には、モータMG1,MG2の目標動作点に拘わらず最大許容電圧VHmaxを高電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagに設定する(ステップS140)。これは、走行中にモータMG1によってエンジン22をモータリングして始動する際に、モータMG1,MG2をそれぞれの目標動作点で駆動できる電圧(走行中始動要求時でないときの目標電圧VHtagに相当する電圧)、特に、モータMG1を目標動作点で駆動できる電圧が急上昇しても対応できるようにするためである。
【0031】
続いて、要求トルクTr*を予め定められた閾値Trefと比較し(ステップS150)、要求トルクTr*が閾値Tref未満のときには前述の所定値ΔV1より大きな所定値ΔV2を昇圧レートΔVに設定し(ステップS160)、要求トルクTr*が閾値Tref以上のときには所定値ΔV2より大きな所定値ΔV3を昇圧レートΔVに設定し(ステップS170)、設定した昇圧レートΔVと前回の高電圧系電力ライン54aの電圧指令(前回VH*)と目標電圧VHtagとを用いて高電圧系電力ライン54aの電圧指令VH*を設定し(ステップS180)、設定した電圧指令VH*を用いて昇圧コンバータ55のスイッチング制御を行なって(ステップS190)、本ルーチンを終了する。ここで、閾値Trefは、エンジン22の始動要求が運転者の加速要求(アクセルペダル83の踏み込み)によるものであるか否かを判定するために用いられる閾値であり、車両の仕様などに基づいて定められる。また、所定値ΔV2や所定値ΔV3は、モータMG1,MG2を目標動作点で駆動したときにバッテリ50からの電力の入出力が入出力制限Win,Woutの範囲内に収まる値として実験や解析などによって定められ、例えば、モータMG1,MG2やインバータ41,42の仕様などに基づいて定められる。こうした制御により、走行中始動要求時には、走行中始動要求時でないときに比して大きな昇圧レートΔV(所定値ΔV2または所定値ΔV3)で高電圧系電力ライン54aの電圧VHを目標電圧VHtagに向けて上昇させることになる。したがって、高電圧系電力ライン54aの電圧VHを目標電圧VHtagに向けて迅速に上昇させることができる。しかも、要求トルクTr*に応じて所定値ΔV2または所定値ΔV3を昇圧レートΔVに設定するから、要求トルクTr*に応じた昇圧レートΔVで高電圧系電力ライン54aの電圧VHを目標電圧VHtagに向けて上昇させることができる。
【0032】
以上、高電圧系電力ライン54aの電圧VHを上昇させる際の昇圧制御について説明した。次に、モータ運転モードで走行している最中にエンジン22の始動要求がなされた走行中始動要求時にエンジン22の始動を許可する様子について説明する。図4は、走行中始動要求時にハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される始動許可ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【0033】
始動許可ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、高電圧系電力ライン54aの電圧VHと目標電圧VHtagを入力すると共に(ステップS200)、入力した高電圧系電力ライン54aの電圧VHを目標電圧VHtagと比較し(ステップS210)、高電圧系電力ライン54aの電圧VHが目標電圧VHtag未満のとき(到達していないとき)には、ステップS200に戻り、高電圧系電力ライン54aが目標電圧VHtag以上のとき(到達したとき)に、エンジン22の始動許可を行なって(ステップS220)、本ルーチンを終了する。即ち、走行中始動要求時において、エンジン22の始動許可がなされるまでは、エンジン22を運転停止した状態でバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*が駆動軸32に出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御し、エンジン22の始動許可がなされると、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で、モータMG1によってエンジン22がモータリングされて始動されながら要求トルクTr*が駆動軸32に出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するのである。これは、エンジン22の始動時に、モータMG1,MG2を目標駆動点で駆動できないことによってドライバビリティが悪化するのを抑制するためである。このように、走行中始動要求時に高電圧系電力ライン54aの電圧VHが目標電圧VHtag以上に至ってからエンジン22を始動するものでは、前述したように、走行中始動要求時でないときに比して大きな昇圧レートΔVで高電圧系電力ライン54aの電圧VHを目標電圧VHtagに向けて上昇させることにより、モータMG1によるエンジン22のモータリングをより早タイミングで開始することができ、エンジン22をより迅速に始動することができる。
【0034】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、モータ運転モードで走行している最中にエンジン22の始動要求がなされた走行中始動要求時でないときには比較的小さな所定値ΔV1を昇圧レートΔVに設定し、走行中始動要求時には所定値ΔV1より大きな所定値ΔV2や所定値ΔV3を昇圧レートΔVに設定し、設定した昇圧レートΔVで高電圧系電力ライン54aの電圧VHが目標電圧VHtagに向けて上昇するよう昇圧コンバータ55を制御するから、走行中始動要求時には、高電圧系電力ライン54aの電圧VHを目標電圧VHtagに向けて迅速に上昇させることができ、走行中始動要求時でないときには、モータMG1,MG2の制御性を確保しながら高電圧系電力ライン54aの電圧VHを目標電圧VHtagに向けて上昇させることができる。即ち、状況に応じた昇圧レートΔVで高電圧系電力ライン54aの電圧VHを目標電圧VHtagに向けて上昇させることができる。しかも、走行中始動要求時には、要求トルクTr*に応じて所定値ΔV2または所定値ΔV3を昇圧レートΔVに設定するから、要求トルクTr*に応じた昇圧レートΔVで高電圧系電力ライン54aの電圧VHを目標電圧VHtagに向けて上昇させることができる。
【0035】
実施例のハイブリッド自動車20では、走行中始動要求時において、要求トルクTr*が閾値Tref未満のときには、所定値ΔV1より大きな所定値ΔV2を昇圧レートΔVに設定し、要求トルクTr*が閾値Tref以上のときには、所定値ΔV2より大きな所定値ΔV3を昇圧レートΔVに設定するものとしたが、要求トルクTr*に拘わらず所定値ΔV1より大きな所定値(例えば、所定値ΔV2や所定値ΔV3など)を昇圧レートΔVに設定するものとしてもよい。
【0036】
実施例のハイブリッド自動車20では、走行中始動要求時において、高電圧系電力ライン54aの電圧VHが目標電圧VHtag以上に至ってからモータMG1によるエンジン22のモータリングを開始してエンジン22を始動するものとしたが、高電圧系電力ライン54aの電圧VHが目標電圧VHtag以上に至る前、例えば、高電圧系電力ライン54aの電圧VHを目標電圧VHtagに向けて上昇させ始めたときなどにモータMG1によるエンジン22のモータリングを開始してエンジン22を始動するものとしてもよい。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20では、停車中にエンジン22の始動要求がなされたときについては説明していないが、このときには、走行中始動要求時でないと判断し、比較的小さな所定値ΔV1を昇圧レートΔVに設定すると共に設定した昇圧レートΔVで高電圧系電力ライン54aの電圧VHが目標電圧VHtagに向けて上昇するよう昇圧コンバータ55を制御すればよい。これは、停車中にエンジン22を始動するときとしては、バッテリ50の残容量(SOC)が低くその充電を必要とするときや、エンジン22を暖機するときなどが想定され、エンジン22の迅速な始動よりもモータMG1,MG2の制御性を確保した方がよいと考えられるためである。
【0038】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2からの動力を駆動輪63a,63bに連結された駆動軸32に出力するものとしたが、図5の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2からの動力を駆動軸32が接続された車軸(駆動輪63a,63bに接続された車軸)とは異なる車軸(図5における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
【0039】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22と、エンジン22のクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動軸32にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、プラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、駆動軸32に接続されたモータMG2と、バッテリ50と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42が接続された高電圧系電力ライン54aとバッテリ50が接続された電池電圧系電力ライン54bとに接続された昇圧コンバータ55と、を備えるものとしたが、プラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2との組み合わせに代えて、エンジン22のクランクシャフト26と駆動軸32とに動力を入出力可能でインバータを介して高電圧系電力ライン54aに接続された一つのモータを用いるものとしてもよい。この場合、エンジン22の始動時には、エンジン22をモータリングするために要するトルクと共に走行に要求されるトルクを駆動軸32に出力するのに要するトルクとをこの一つのモータから出力すればよい。
【0040】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力をプラネタリギヤ30を介して駆動輪63a,63bに連結された駆動軸32に出力すると共にモータMG2からの動力を駆動軸32に出力するいわゆるパラレルタイプのハイブリッド自動車としたが、エンジン22にクランキングおよび発電用のモータMG1を接続すると共に走行用の動力を出力するモータMG2を備えるいわゆるシリーズタイプのハイブリッド自動車としてもよい。
【0041】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1とプラネタリギヤ30とモータMG2とを組み合わせたものが「電動機装置」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、昇圧コンバータ55が「昇圧コンバータ」に相当し、モータMG2からの動力だけを用いて走行するモータ運転モードで走行している最中にエンジン22の始動要求がなされた走行中始動要求時でないときには比較的小さな所定値ΔV1を昇圧レートΔVに設定し、走行中始動要求時には所定値ΔV1より大きな所定値ΔV2や所定値ΔV3を昇圧レートΔVに設定し、設定した昇圧レートΔVで高電圧系電力ライン54aの電圧VHが目標電圧VHtagに向けて上昇するよう昇圧コンバータ55を制御する図3の昇圧制御ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70が「昇圧制御手段」に相当する。また、モータMG1が「第1電動機」に相当し、プラネタリギヤ30が「遊星歯車機構」に相当し、モータMG2が「第2電動機」に相当する。
【0042】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「電動機装置」としては、モータMG1とプラネタリギヤ30とモータMG2とを組み合わせたものに限定されるものではなく、少なくとも一つの電動機を有し内燃機関をモータリング可能であると共に走行用の動力を出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「二次電池」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、如何なるタイプの二次電池であっても構わない。「昇圧コンバータ」としては、昇圧コンバータ55に限定されるものではなく、二次電池が接続された電池電圧系と電動機装置が接続された駆動電圧系とに接続されて駆動電圧系の電圧を電池電圧系の電圧以上の範囲内で調節すると共に電池電圧系と駆動電圧系との間で電力のやりとりを行なうものであれば如何なるものとしても構わない。「昇圧制御手段」としては、モータMG2からの動力だけを用いて走行するモータ運転モードで走行している最中にエンジン22の始動要求がなされた走行中始動要求時でないときには比較的小さな所定値ΔV1を昇圧レートΔVに設定し、走行中始動要求時には所定値ΔV1より大きな所定値ΔV2や所定値ΔV3を昇圧レートΔVに設定し、設定した昇圧レートΔVで高電圧系電力ライン54aの電圧VHが目標電圧VHtagに向けて上昇するよう昇圧コンバータ55を制御するものに限定されるものではなく、駆動電圧系の電圧を目標電圧に向けて上昇させる際、走行中に内燃機関の始動要求がなされた走行中始動要求時には、走行中始動要求時でないときに比して大きな昇圧レートで駆動電圧系の電圧が目標電圧に向けて上昇するよう昇圧コンバータを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。また、「第1電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「遊星歯車機構」としては、上述のプラネタリギヤ30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや、複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものなど、車軸に連結された駆動軸と内燃機関の出力軸と第1電動機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続されたものであれば如何なるものとしても構わない。「第2電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。
【0043】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0044】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、ハイブリッド自動車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、30 プラネタリギヤ、32 駆動軸、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、54a 高電圧系電力ライン、54b 電池電圧系電力ライン、55 昇圧コンバータ、57,58 コンデンサ、57a,57b 電圧センサ、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、82 シフトポジションセンサ、84 アクセルペダルポジションセンサ、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、D11〜D16,D21〜D26,D31,D32 ダイオード、L リアクトル、MG1,MG2 モータ、T11〜T16,T21〜T26,T31,T32 トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、少なくとも一つの電動機を有し前記内燃機関をモータリング可能であると共に走行用の動力を出力可能な電動機装置と、二次電池と、前記二次電池が接続された電池電圧系と前記電動機装置が接続された駆動電圧系とに接続されて前記駆動電圧系の電圧を前記電池電圧系の電圧以上の範囲内で調節すると共に前記電池電圧系と前記駆動電圧系との間で電力のやりとりを行なう昇圧コンバータと、を備え、運転停止中の前記内燃機関の前記電動機装置によるモータリングを伴った始動と運転中の前記内燃機関の運転停止とを伴って走行するハイブリッド自動車であって、
前記駆動電圧系の電圧を目標電圧に向けて上昇させる際、走行中に前記内燃機関の始動要求がなされた走行中始動要求時には、該走行中始動要求時でないときに比して大きな昇圧レートで前記駆動電圧系の電圧が前記目標電圧に向けて上昇するよう前記昇圧コンバータを制御する昇圧制御手段、
を備えるハイブリッド自動車。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド自動車であって、
前記昇圧制御手段は、前記走行中始動要求時において、走行に要求される要求トルクが予め定められた所定トルク以上のときには、前記要求トルクが前記所定トルク未満のときに比して大きな昇圧レートで前記駆動電圧系の電圧が前記目標電圧に向けて上昇するよう制御する手段である、
ハイブリッド自動車。
【請求項3】
請求項1または2記載のハイブリッド自動車であって、
前記走行中始動要求時には、前記駆動電圧系の電圧が前記目標電圧以上に至ってから前記電動機装置による前記内燃機関のモータリングが開始されて該内燃機関が始動されるよう前記内燃機関と前記電動機装置とを制御する始動時制御手段、
を備えるハイブリッド自動車。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド自動車であって、
前記電動機装置は、動力を入出力可能な第1電動機と、車軸に連結された駆動軸と前記内燃機関の出力軸と前記第1電動機の回転軸との3軸に3つの回転要素が接続された遊星歯車機構と、前記駆動軸に動力を入出力可能な第2電動機と、を有する装置である、
ハイブリッド自動車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−81847(P2012−81847A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229071(P2010−229071)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】