説明

ハイブリッド車両の変速制御装置

【課題】伝達トルク容量が変更可能な摩擦要素が他の摩擦要素と重なって選定された場合に、ショック防止効果の高い伝達トルク容量の摩擦要素を選定できるハイブリッド車両の変速制御装置を提供すること。
【解決手段】制御手段(統合コントローラ10)は、エンジンの始動中にモータと駆動輪との間に設けられた複数の摩擦要素(CL2要素)のうちから自動変速機ATの各ギヤ変速時でのショック遮断が可能なものを選定するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動系にエンジンとモータと自動変速機を備えたハイブリッド車両の変速制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のハイブリッド車両としては、エンジンおよびモータ/ジェネレータ間に伝達トルク容量を変更可能な第1クラッチを介在させると共に、モータ/ジェネレータおよび駆動車輪間に伝達トルク容量を変更可能な第2クラッチを介在させたものがある。
【0003】
このようなハイブリッド車両の変速制御装置としては、エンジン始動を伴うモード切り換えや、変速による伝動状態の切り替えを、滑らかに、且つ、高応答に行わせて、エンジン始動時のショックを遮断するために、第2クラッチを各変速段に応じて選定するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−261498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のハイブリッド車両の変速制御装置にあっては、変速時の切り替えや第2クラッチ(摩擦要素)と変速クラッチ(摩擦要素)が重なった場合にショックが発生するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、伝達トルク容量が変更可能な摩擦要素が他の摩擦要素と重なって選定された場合に、ショック防止効果の高い伝達トルク容量の摩擦要素を選定できるハイブリッド車両の変速制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のハイブリッド車両の変速制御装置は、エンジンと、前記エンジンの始動と駆動輪の駆動を行わせるモータと、前記エンジンの出力軸と前記モータとの間に設けられてハイブリッド車モードと電気自動車モードとの切替を行わせる第1クラッチを有する。また、変速制御装置は、前記モータと前記駆動輪との間に介装され、変速比が異なる複数の変速段を有する自動変速機と、前記モータと前記駆動輪との間に設けられた複数の摩擦要素と、を有する。更に、変速制御装置は、前記自動変速機の変速制御、前記第1クラッチ,前記摩擦要素の締結制御、前記エンジンの制御を行わせる制御手段を有する。しかも、前記制御手段は、前記エンジンの始動中に前記複数の摩擦要素のうちから前記自動変速機の各ギヤ変速時でのショック遮断が可能なものを選定するようになっている。
【発明の効果】
【0008】
この構成によれば、伝達トルク容量が変更可能な摩擦要素が他の摩擦要素と重なって選定された場合に、ショック防止効果の高い伝達トルク容量の摩擦要素を選定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の制御装置が適用された後輪駆動によるFRハイブリッド車両(ハイブリッド車両の一例)を示す全体システム図である。
【図2】実施例1のATコントローラ7に設定されている自動変速機ATのシフトマップの一例を示す図である。
【図3】実施例1の統合コントローラ10のモード選択部に設定されているEV-HEV選択マップの一例を示す図である。
【図4】実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両に搭載された自動変速機ATの一例を示すスケルトン図である。
【図5】実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両に搭載された自動変速機ATでの変速段ごとの各摩擦要素の締結状態を示す締結作動表である。
【図6】自動変速機ATの各摩擦要素から第2クラッチCL2を選定する方法を説明するための現変速段(CurGp)と次変速段(NextGp)での摩擦要素選定表を示すCL2要素選定図である。
【図7】(a)は自動変速機ATの各摩擦要素における変速クラッチのUP変速時の第2クラッチCL2を選定する方法を説明するためのCL2要素選定図、(b)は自動変速機ATの各摩擦要素における変速クラッチのDOWN変速時の第2クラッチCL2を選定する方法を説明するためのCL2要素選定図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のハイブリッド車両の変速制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。図1は、実施例1の制御装置が適用された後輪駆動によるハイブリッド車両を示す全体システム図である。
【0012】
実施例1におけるFRハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEngと、フライホイールFWと、第1クラッチCL1(モード切り替え手段)と、モータ/ジェネレータMG(モータ)と、第2クラッチCL2と、自動変速機ATと、変速機入力軸INと、メカオイルポンプM-O/Pと、サブオイルポンプS-O/Pと、プロペラシャフトPSと、ディファレンシャルDFと、左ドライブシャフトDSLと、右ドライブシャフトDSRと、左後輪RL(駆動輪)と、右後輪RR(駆動輪)と、を有する。なお、FLは左前輪、FRは右前輪である。
【0013】
前記エンジンEngは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、エンジンコントローラ(エンジン制御手段)1からのエンジン制御指令に基づいて、エンジン始動制御やエンジン停止制御やスロットルバルブのバルブ開度制御やフューエルカット制御等が行われる。なお、エンジン出力軸には、フライホイールFWが設けられている。
【0014】
前記第1クラッチCL1は、前記エンジンEngとモータ/ジェネレータMGの間に介装されたクラッチであり、第1クラッチコントローラ(クラッチ制御手段)5からの第1クラッチ制御指令に基づき第1クラッチ油圧ユニット6により作り出された第1クラッチ制御油圧により、締結・半締結状態・解放が制御される。この第1クラッチCL1としては、例えば、ダイアフラムスプリングによる付勢力にて完全締結を保ち、ピストン14aを有する油圧アクチュエータ14を用いたストローク制御により、完全締結〜スリップ締結〜完全解放までが制御されるノーマルクローズの乾式単板クラッチが用いられる。
【0015】
前記モータ/ジェネレータMGは、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータ/ジェネレータであり、モータコントローラ(モータ制御手段)2からの制御指令に基づいて、インバータ3により作り出された三相交流を印加することにより制御される。このモータ/ジェネレータMGは、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(力行)、ロータがエンジンEngや駆動輪から回転エネルギーを受ける場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能し、バッテリ4を充電することもできる(回生)。なお、このモータ/ジェネレータMGのロータは、自動変速機ATの変速機入力軸INに連結されている。
【0016】
前記第2クラッチCL2は、前記モータ/ジェネレータMGと左右後輪RL,RRの間に介装されたクラッチであり、ATコントローラ(AT制御手段)7からの第2クラッチ制御指令に基づき第2クラッチ油圧ユニット8により作り出された制御油圧により、締結・スリップ締結・解放が制御される。この第2クラッチCL2としては、例えば、比例ソレノイドで油流量および油圧を連続的に制御できるノーマルオープンの湿式多板クラッチや湿式多板ブレーキが用いられる。なお、第1クラッチ油圧ユニット6と第2クラッチ油圧ユニット8は、自動変速機ATに付設される油圧コントロールバルブユニットCVUに内蔵している。
【0017】
前記自動変速機ATは、有段階の変速段を車速やアクセル開度等に応じて自動的に切り替える有段変速機であり、実施例1では前進7速/後退1速の変速段を持つ有段変速機としている。そして、実施例1では、前記第2クラッチCL2として、自動変速機ATとは独立の専用クラッチとして新たに追加したものではなく、自動変速機ATの各変速段にて締結される複数の摩擦要素のうち、所定の条件に適合する摩擦要素(クラッチやブレーキ)を選択している。
【0018】
前記自動変速機ATの変速機入力軸IN(=モータ軸)には、変速機入力軸INにより駆動されるメカオイルポンプM-O/Pが設けられている。そして、車両停止時等でメカオイルポンプM-O/Pからの吐出圧が不足するとき、油圧低下を抑えるために電動モータにより駆動されるサブオイルポンプS-O/Pが、モータハウジング等に設けられている。なお、サブオイルポンプS-O/Pの駆動制御は、後述するATコントローラ7により行われる。
【0019】
前記自動変速機ATの変速機出力軸には、プロペラシャフトPSが連結されている。そして、このプロペラシャフトPSは、ディファレンシャルDF、左ドライブシャフトDSL、右ドライブシャフトDSRを介して左右後輪RL,RRに連結されている。
【0020】
このFRハイブリッド車両は、駆動形態の違いによる走行モードとして、電気自動車モード(以下、「EVモード」という。)と、ハイブリッド車モード(以下、「HEVモード」という。)と、駆動トルクコントロールモード(以下、「WSCモード」という。)と、を有する。
【0021】
前記「EVモード」は、第1クラッチCL1を解放状態とし、モータ/ジェネレータMGの駆動力のみで走行するモードであり、モータ走行モード・回生走行モードを有する。この「EVモード」は、要求駆動力が低く、バッテリSOCが確保されているときに選択される。
【0022】
前記「HEVモード」は、第1クラッチCL1を締結状態として走行するモードであり、モータアシスト走行モード・発電走行モード・エンジン走行モードを有し、何れかのモードにより走行する。この「HEVモード」は、要求駆動力が高いとき、あるいは、バッテリSOCが不足するようなときに選択される。
【0023】
前記「WSCモード」は、モータ/ジェネレータMGの回転数制御により、第2クラッチCL2をスリップ締結状態に維持し、第2クラッチCL2を経過するクラッチ伝達トルクが、車両状態や運転者操作に応じて決まる要求駆動トルクとなるようにクラッチトルク容量をコントロールしながら走行するモードである。この「WSCモード」は、「HEVモード」の選択状態での停車時・発進時・減速時等のように、エンジン回転数がアイドル回転数を下回るような走行領域において選択される。
【0024】
次に、FRハイブリッド車両の制御系を説明する。実施例1におけるFRハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、インバータ3と、バッテリ4と、第1クラッチコントローラ5と、第1クラッチ油圧ユニット6と、ATコントローラ7と、第2クラッチ油圧ユニット8と、ブレーキコントローラ(ブレーキ制御手段)9と、統合コントローラ(統合制御手段)10と、を有して構成されている。なお、各コントローラ1,2,5,7,9と、統合コントローラ10とは、情報交換が互いに可能なCAN通信線11を介して接続されている。
【0025】
前記エンジンコントローラ1は、エンジン回転数センサ12からのエンジン回転数情報と、統合コントローラ10からの目標エンジントルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、エンジンEngのスロットルバルブアクチュエータ等へ出力する。
【0026】
前記モータコントローラ2は、モータ/ジェネレータMGのロータ回転位置を検出するレゾルバ13からの情報と、統合コントローラ10からの目標MGトルク指令および目標MG回転数指令と、他の必要情報を入力する。そして、モータ/ジェネレータMGのモータ動作点(Nm,Tm)を制御する指令をインバータ3へ出力する。なお、このモータコントローラ2では、バッテリ4の充電容量をあらわすバッテリSOCを監視していて、このバッテリSOC情報を、CAN通信線11を介して統合コントローラ10へ供給する。
【0027】
前記第1クラッチコントローラ5は、油圧アクチュエータ14のピストン14aのストローク位置を検出する第1クラッチストロークセンサ15からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの目標CL1トルク指令と、他の必要情報を入力する。そして、第1クラッチCL1の締結・半締結・解放を制御する指令を油圧コントロールバルブユニットCVU内の第1クラッチ油圧ユニット6に出力する。
【0028】
前記ATコントローラ7は、アクセル開度センサ16と、車速センサ17と、他のセンサ類18等からの情報を入力する。そして、Dレンジを選択しての走行時、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点が、図2に示すシフトマップ上で存在する位置により最適な変速段を検索し、検索された変速段を得る制御指令を油圧コントロールバルブユニットCVUに出力する。前記シフトマップとは、図2に示すように、アクセル開度APOと車速VSPに応じてアップ変速線とダウン変速線を書き込んだマップをいう。この変速制御に加えて、統合コントローラ10から目標CL2トルク指令を入力した場合、第2クラッチCL2のスリップ締結を制御する指令を油圧コントロールバルブユニットCVU内の第2クラッチ油圧ユニット8に出力する第2クラッチ制御を行う。
【0029】
前記ブレーキコントローラ9は、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ19と、ブレーキストロークセンサ20からのセンサ情報と、統合コントローラ10からの回生協調制御指令と、他の必要情報を入力する。そして、例えば、ブレーキ踏み込み制動時、ブレーキストロークBSから求められる要求制動力に対し回生制動力だけでは不足する場合、その不足分を機械制動力(液圧制動力やモータ制動力)で補うように、回生協調ブレーキ制御を行う。
【0030】
前記統合コントローラ10は、車両全体の消費エネルギーを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、モータ回転数Nmを検出するモータ回転数センサ21や他のセンサ・スイッチ類22からの必要情報およびCAN通信線11を介して情報を入力する。そして、エンジンコントローラ1へ目標エンジントルク指令、モータコントローラ2へ目標MGトルク指令および目標MG回転数指令、第1クラッチコントローラ5へ目標CL1トルク指令、ATコントローラ7へ目標CL2トルク指令、ブレーキコントローラ9へ回生協調制御指令を出力する。
【0031】
この統合コントローラ10には、アクセル開度APOと車速VSPにより決まる運転点が、図3に示すEV-HEV選択マップ上で存在する位置により最適な走行モードを検索し、検索した走行モードを目標走行モードとして選択するモード選択部を有する。このEV-HEV選択マップには、EV領域に存在する運転点(APO,VSP)が横切ると「EVモード」から「HEVモード」へと切り替えるEV⇒HEV切替線と、HEV領域に存在する運転点(APO,VSP)が横切ると「HEVモード」から「EVモード」へと切り替えるHEV⇒EV切替線と、「HEVモード」の選択時に運転点(APO,VSP)がWSC領域に入ると「WSCモード」へと切り替えるHEV⇒WSC切替線と、が設定されている。前記HEV⇒EV切替線と前記HEV⇒EV切替線は、EV領域とHEV領域を分ける線としてヒステリシス量を持たせて設定されている。前記HEV⇒WSC切替線は、自動変速機ATが1速段のときに、エンジンEngがアイドル回転数を維持する第1設定車速VSP1に沿って設定されている。但し、「EVモード」の選択中、バッテリSOCが所定値以下になると、強制的に「HEVモード」を目標走行モードとする。
【0032】
図4は、実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両に搭載された自動変速機ATの一例を示すスケルトン図である。
【0033】
前記自動変速機ATは、前進7速後退1速の有段式自動変速機であり、エンジンEngとモータ/ジェネレータMGのうち、少なくとも一方からの駆動力が変速機入力軸Inputから入力され、4つの遊星ギアと7つの摩擦要素とによって回転速度が変速されて変速機出力軸Outputから出力される。
【0034】
変速ギア機構は、変速機入力軸Input側から変速機出力軸Output側までの軸上に、順に第1遊星ギアG1と第2遊星ギアG2による第1遊星ギアセットGS1及び第3遊星ギアG3と第4遊星ギアG4による第2遊星ギアセットGS2が配置されている。また、摩擦要素として第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3及び第1ブレーキB1、第2ブレーキB2(Fwd/B)、第3ブレーキB3(BR1)、第4ブレーキB4(Rev/B)が配置されている。また、第1ワンウェイクラッチF1と第2ワンウェイクラッチF2が配置されている。
【0035】
前記第1遊星ギアG1は、第1サンギアS1と、第1リングギアR1と、第1ピニオンP1と、第1キャリアPC1と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。前記第2遊星ギアG2は、第2サンギアS2と、第2リングギアR2と、第2ピニオンP2と、第2キャリアPC2と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。前記第3遊星ギアG3は、第3サンギアS3と、第3リングギアR3と、第3ピニオンP3と、第3キャリアPC3と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。前記第4遊星ギアG4は、第4サンギアS4と、第4リングギアR4と、第4ピニオンP4と、第4キャリアPC4と、を有するシングルピニオン型遊星ギアである。
【0036】
前記変速機入力軸Inputは、第2リングギアR2に連結され、エンジンEngとモータージェネレータMGの少なくとも一方からの回転駆動力を入力する。前記変速機出力軸Outputは、第3キャリアPC3に連結され、出力回転駆動力を、ファイナルギア等を介して駆動輪(左右後輪RL,RR)に伝達する。
【0037】
前記第1リングギアR1と第2キャリアPC2と第4リングギアR4とは、第1連結メンバM1により一体的に連結される。前記第3リングギアR3と第4キャリアPC4とは、第2連結メンバM2により一体的に連結される。前記第1サンギアS1と第2サンギアS2とは、第3連結メンバM3により一体的に連結される。
【0038】
前記第1クラッチC1(=インプットクラッチI/C)は、変速機入力軸Inputと第2連結メンバM2とを選択的に断接するクラッチである。前記第2クラッチC2(=ダイレクトクラッチD/C)は、第4サンギアS4と第4キャリアPC4とを選択的に断接するクラッチである。前記第3クラッチC3(=H&LRクラッチH&LR/C)は、第3サンギアS3と第4サンギアS4とを選択的に断接するクラッチである。前記第2ワンウェイクラッチF2(=1&2速ワンウェイクラッチ1&2OWC)は、第3サンギアS3と第4サンギアS4の間に配置されている。前記第1ブレーキB1(=フロントブレーキFr/B)は、第1キャリアPC1の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。前記第1ワンウェイクラッチF1(=1速ワンウェイクラッチ1stOWC)は、第1ブレーキB1と並列に配置されている。前記第2ブレーキB2(=ローブレーキLOW/B)は、第3サンギアS3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。前記第3ブレーキB3(=2346ブレーキ2346/B)は、第1サンギアS1及び第2サンギアS2を連結する第3連結メンバM3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。前記第4ブレーキB4(=リバースブレーキR/B)は、第4キャリアPC3の回転をトランスミッションケースCaseに対し選択的に停止させるブレーキである。
【0039】
前記第2クラッチC2(=ダイレクトクラッチD/C)には、第1制御油圧室に供給される油圧で第1ピストンを加圧制御することにより、第1ピストンで小クラッチの締結・スリップ・開放制御をさせると共に、第2制御油圧室に供給される油圧で第2ピストンを加圧制御することにより、第2ピストンで大クラッチの締結・スリップ・開放制御をさせるようにした、ダブルピストン式のダブルクラッチが用いられている。このダブルクラッチでは、小クラッチと大クラッチの締結・スリップ・開放制御を行うことで、伝達トルク容量を「大」,「小」,「大+小」に変更できるようになっている。この構造には周知の構成を採用できるので、その詳細な図示と構成および説明は省略する。
【0040】
また、前記第2ブレーキB2(=ローブレーキLOW/B)には、第1ブレーキ制御油圧室に供給される油圧で第1ブレーキピストンを加圧制御することにより、第1ブレーキピストンで小ブレーキの締結・スリップ・開放制御をさせると共に、第2ブレーキ制御油圧室に供給される油圧で第2ブレーキピストンを加圧制御することにより、第2ブレーキピストンで大ブレーキの締結・スリップ・開放制御をさせるようにした、ダブルピストン式のダブルクブレーキが用いられている。このダブルブレーキでは、小ブレーキと大ブレーキの締結・スリップ・開放制御を行うことで、ブレーキトルク容量を「大」,「小」,「大+小」に変更できるようになっている。
【0041】
図5は、実施例1の制御装置が適用されたFRハイブリッド車両に搭載された自動変速機ATでの変速段ごとの各摩擦要素の締結状態を示す締結作動表である。尚、図5において、○印はドライブ状態で当該摩擦要素が油圧締結であることを示し、(○)印はコースト状態で当該摩擦要素が油圧締結(ドライブ状態ではワンウェイクラッチ作動)であることを示し、無印は当該摩擦要素が解放状態であることを示す。
【0042】
この図5において、ローブレーキLow/B(第2ブレーキB2)のブレーキトルク容量は、インプットクラッチI/C(第1クラッチC1)が抜けている(開放状態にある)場合に「大+小」となり、I/Cが抜けていると共にダイレクトクラッチD/C(第2クラッチC2)が締結状態にある場合に「小」となるようにATコントローラ7で制御されるようになっている。
【0043】
また、図5において、ダイレクトクラッチD/C(第2クラッチC2)の伝達トルク容量は、インプットクラッチI/C(第1クラッチC1)が抜けている(開放状態にある)場合に「小」となり、インプットクラッチI/C(第1クラッチC1)が締結状態にある場合に「大」となるようにATコントローラ7で制御されるようになっている。
【0044】
上記のように構成された変速ギア機構に設けられた各摩擦要素のうち、締結していた1つの摩擦要素を解放し、解放していた1つの摩擦要素を締結するという架け替え変速を行うことで、下記のように、前進7速で後退1速の変速段を実現することができる。
【0045】
すなわち、「1速段」では、第2ブレーキB2のみが締結状態となり、これにより第1ワンウェイクラッチF1及び第2ワンウェイクラッチF2が係合する。「2速段」では、第2ブレーキB2及び第3ブレーキB3が締結状態となり、第2ワンウェイクラッチF2が係合する。「3速段」では、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3及び第2クラッチC2が締結状態となり、第1ワンウェイクラッチF1及び第2ワンウェイクラッチF2はいずれも係合しない。「4速段」では、第3ブレーキB3、第2クラッチC2及び第3クラッチC3が締結状態となる。「5速段」では、第1クラッチC1、第2クラッチC2及び第3クラッチC3が締結状態となる。「6速段」では、第3ブレーキB3、第1クラッチC1及び第3クラッチC3が締結状態となる。「7速段」では、第1ブレーキB1、第1クラッチC1及び第3クラッチC3が締結状態となり、第1ワンウェイクラッチF1が係合する。「後退速段」では、第4ブレーキB4、第1ブレーキB1及び第3クラッチC3が締結状態となる。
【0046】
図6は、CurGp(現変速段)とNextGp(次変速段)との関係を示したものである。そして、前記CL2要素選定部71dは、各変速段においては、図6に示すように、自動変速機ATの摩擦要素の中から、1速ではLow/B、2速ではLow/B、3速ではD/C、4速ではH/C、5速ではH/C、6速ではI/C、7速ではI/C、というように、CL2要素を選定する。そして、図7におけるNからN+1へのアップ変速(N→N+1)では、アップ変速後のN+1にてCL2要素を決める。これは、N+1速始動として扱い、始動制御中にアップ回転変化を同時に行なうためである。
【0047】
また、図7におけるN+1からNへのダウン変速(N+1→N)では、ダウン変速前のN+1にてCL2要素を決める。これは、N+1速始動として扱い、回転が低い状態で始動を行なうためである。但し、3→2ダウン変速は、例外として、CL2要素をダウン変速後のLow/Bとする。これは、トルク分担比が2速と3速で差異が大きく、2速で設定する方が、ショック感度が良いためである。
【0048】
上述したように第2クラッチC2(=ダイレクトクラッチD/C)は、それぞれ第1,第2制御油圧室の油圧で作動制御される第1,第2ピストンにより、伝達トルクが小の小クラッチと 伝達トルクが大の大クラッチの締結・スリップ・開放制御をさせて、伝達トルク容量を「大」,「小」,「大+小」に変更できるようになっている。また、上述したように第2ブレーキB2(=ローブレーキLOW/B)は、それぞれ第1,第2ブレーキ制御油圧室の油圧で作動制御される第1,第2ブレーキピストンを加圧制御される第1,第2ブレーキピストンにより、ブレーキトルク容量が小の小ブレーキとブレーキトルク容量が大の大ブレーキとの締結・スリップ・開放制御をさせることにより、ブレーキトルク容量を「大」,「小」,「大+小」に変更できるようになっている。
【0049】
図7(a),図7(b)に示した変速表では、上述したローブレーキLow/B(第2ブレーキB2)のブレーキトルク容量及びダイレクトクラッチD/C(第2クラッチC2)の伝達トルク容量を、「大+小」,「大」,「小」と略して説明する。
【0050】
そして、図7(a)はアップ変速(N→N+1)における摩擦要素の制御を示し、図7(b)はダウン変速(N→N-1(=N+1→N))における摩擦要素の制御を示したものである。この摩擦要素のうちCL2要素として選定されたものは作動中にスリップすることが基本となっている。尚、上述したように、摩擦要素としては、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第3クラッチC3及び第1ブレーキB1、第2ブレーキB2(Fwd/B)、第3ブレーキB3(BR1)、第4ブレーキB4(Rev/B)がある。
【0051】
また、図7(a)においてCL2要素は、NextGp(次変速段)Mapによって決定される。この図7(a)において、「○」は摩擦要素のうち選定されたCL2要素を示し、波線の枠は摩擦要素のうち選定された開放要素を示し、実線の枠は摩擦要素のうち選定された締結要素を示し、「●」は摩擦要素のうち選定された締結状態を示し、空欄は摩擦要素の開放状態を示す。
【0052】
また、ダウン変速時において、自動変速機ATが(N+1)の変速段にある状態から変速段(N)に変速切り替えは、(N+1)の変速段のギヤ状態から変速段(N)のギヤ状態に移行する際、モータ/ジェネレータMG(モータ)による切り替え時のトルクフェーズ,慣性により回転しているイナーシャフェーズ,このイナーシャフェーズから変速段(N)のギヤ状態に収束移行する収束フェーズの3つに分けて考えることができる。この収束フェーズは、現在の変速段から次の変速段へ収束することを意味する。
【0053】
図7(b)において、「○」は摩擦要素のうち変速切り替え時の収束フーズ以外のCL2要素を示し、「△」は摩擦要素のうち変速切り替え時の収束フェーズを有するCL2要素を示し、「−」はCL2要素のトルク容量を現在の変速段において「0」の状態へ移行する際に示す。また、図7(b)において、波線の枠は摩擦要素のうちの開放要素を示し、実線の枠は摩擦要素のうちの締結要素を示し、「●」は摩擦要素のうちの締結状態を示し、空欄は開放状態を示す。
<アップ変速(N→N+1)>
図7aに示したアップ変速(N→N+1)では、CL2要素は次のように選定される。
・1→2アップ変速時
この1→2アップ変速時において、I/C(第1クラッチC1)およびD/C(第2クラッチC2)を開放状態(抜けている状態)にすると共に、Low/B(第2ブレーキB2)をCL2要素として選定して、Low/B(第2ブレーキB2)のブレーキトルク容量を「大+小」に設定する。
・2→3アップ変速時
2→3アップ変速時においては、CL2要素としてD/C(第2クラッチC2)を選定すると共に、D/C(第2クラッチC2)の伝達トルク容量を「小」に設定する。この際、L第2ブレーキB2(Fwd/B)は締結状態にある。
・3→4アップ変速時
3→4アップ変速時において、CL2要素として第3クラッチ(=H/C=H&LRクラッチH&LR/C)を選定する。この変速時には、D/C(第2クラッチC2)及び2346ブレーキ2346B(第3ブレーキB3)は締結状態にある。この際、Low/B(第2ブレーキB2)への伝達トルク容量を「小」にする。
・4→5アップ変速時
4→5アップ変速時において、CL2要素として第3クラッチ(=H/C=H&LRクラッチH&LR/C)を選定する。この変速時には、D/C(第2クラッチC2)は締結状態にある。
・5→6,5→7アップ変速時
5→6,5→7アップ変速時において、CL2要素としてI/C(第1クラッチC1)を選定する。この変速時には、第3クラッチ(=H/C=H&LRクラッチH&LR/C)が締結状態(H/C)になっている。また、D/C(第2クラッチC2)への伝達トルク容量を「小」に設定する。
【0054】
尚、5−7アップ変速はしない設定であるので、図6の5−7変速段は「−」の表示になる。しかし、5−7アップ変速をする場合には、図6の5−7変速段は「I/C」の表示になる。
・6→7アップ変速時
6→7アップ変速時において、CL2要素としてI/C(第1クラッチC1)を選定する。この変速時には、第3クラッチ(=H&LRクラッチH&LR/C)が締結状態(H/C)になっている。
・2→4アップ変速時
2→4アップ変速時において、CL2要素としてLow/B(第2ブレーキB2)を選定する。この際、Low/B(第2ブレーキB2)への伝達トルク容量を「大+小」に設定する。この変速時には、I/C(第1クラッチC1)および第3ブレーキB3である2346ブレーキ2346/Bは締結状態にある。
<ダウン変速(N+1→N)>
・7→5ダウン変速時
7→5ダウン変速時においては、CL2要素としてI/C(第1クラッチC1)を選定して、I/Cをスリップ状態から締結状態に制御させる。この変速時には、第3クラッチ(=H/C=H&LRクラッチH&LR/C)を7速の変速段の締結状態から次の5速の変速段に収束制御させる。この状態においては、D/C(第2クラッチC2)の伝達トルク容量を「小」から「大+小」に制御する。
・5→4ダウン変速時
5→4ダウン変速時においては、CL2要素として第3クラッチ(=H/C=H&LRクラッチH&LR/C)を選定、または次の4速の変速段への収束状態を選定する。この変速時には、D/C(第2クラッチC2)が締結状態となっている。
・4→3ダウン変速時
4→3ダン変速時においては、CL2要素である第3クラッチ(=H/C=H&LRクラッチH&LR/C)を選定して、選定したH/Cの伝達トルク容量をスリップ状態から「0」の状態に制御させる。この変速時には、D/C(第2クラッチC2)を4速の締結状態から次の3速の変速段へ収束状態にさせる。この際、 D/C(第2クラッチC2)の伝達トルク容量を「小」にすると共に、Low/B(第2ブレーキB2)ブレーキトルク容量を「大+小」から「小」にする。
・3→2ダウン変速時
3→2ダウン変速時においては、CL2要素であるD/C(第2クラッチC2)を選定すると共に、選定したD/Cの伝達トルク容量を「小」に設定して、選定したD/Cの伝達トルク容量を「小」の状態から「0」状態に制御させる。この変速時には、第3ブレーキB3である2346ブレーキ2346/Bは締結状態になっている。また、Low/B(第2ブレーキB2)は、締結状態から次の2速の変速段に収束させる。この際、Low/B(第2ブレーキB2)への伝達トルク容量を「大+小」に選定選定する。
・2→1ダウン変速時
2→1ダウン変速時においては、CL2要素であるLow/B(第2ブレーキB2)を選定し、または現在の2速の変速段から次の1速の変速段への収束状態を選定させる。この際、このLow/Bの伝達トルク容量を「△大+小」に設定する。
・7→6ダウン変速時
7→6ダウン変速時においては、CL2要素としてI/C(第1クラッチC1)を選定、またはI/Cを収束状態に選定する。この変速時には、第3クラッチ(=H/C=H&LRクラッチH&LR/C)を締結状態になっている。
・6→5ダウン変速時
6→5ダウン変速時においては、CL2要素としてI/C(第1クラッチC1)を選定して、選定したI/Cをスリップ状態から締結状態に制御する。この際、CL2要素である第3クラッチ(=H/C=H&LRクラッチH&LR/C)を6速の変速段の締結状態から次の5速の変速段に収束させる。この変速時には、D/C(第2クラッチC2)の伝達トルク容量を「小」から「大+小」に選定する。
・4→2ダウン変速時
4→2ダウン変速時においては、CL2要素である第3クラッチ(=H/C=H&LRクラッチH&LR/C)を選定して、選定したH/Cの伝達トルク容量をスリップ状態から「0」の状態に制御する。この変速時には、第3ブレーキB3である2346ブレーキ2346/Bは締結状態になっている。また、Low/B(第2ブレーキB2)は現在の4速の変速段から次の2速の変速段に収束状態に設定される。この際、Low/B(第2ブレーキB2)への伝達トルク容量を「△大+小」にする。
【0055】
以上説明したように、この発明の実施の形態のハイブリッド車両の変速制御装置は、エンジンEngと、前記エンジンEngの始動と駆動輪(左後輪RLと、右後輪RR)の駆動を行わせるモータ(モータモータ/ジェネレータMG)と、前記エンジンEngの出力軸と前記モータ(モータモータ/ジェネレータMG)との間に設けられてハイブリッド車モードと電気自動車モードとの切替を行わせる第1クラッチCL1を有する。また、変速制御装置は、前記モータ(モータモータ/ジェネレータMG)と前記駆動輪(左後輪RLと、右後輪RR)との間に介装され、変速比が異なる複数の変速段を有する自動変速機ATと、前記モータ(モータモータ/ジェネレータMG)と前記駆動輪(左後輪RLと、右後輪RR)との間に設けられた複数の摩擦要素(CL2要素)と、を有する。更に、変速制御装置は、前記自動変速機ATの変速制御、前記第1クラッチCL1,前記摩擦要素(CL2要素)の締結制御、前記エンジン1の制御を行わせる制御手段(統合コントローラ20)を有する。しかも、前記制御手段(統合コントローラ20)は、前記エンジン1の始動中に前記複数の摩擦要素(CL2要素)のうちから前記自動変速機ATの各ギア変速時でのショック遮断が可能なものをスリップ要素として選定するようになっている。
【0056】
この構成によれば、伝達トルク容量が変更可能な摩擦要素が他の摩擦要素と重なって選定された場合に、ショック防止効果の伝達トルク容量の摩擦要素を選定できるので、エンジン始動時のショックを遮断できる。
【0057】
また、この発明の実施の形態のハイブリッド車両の変速制御装置において、前記制御手段(ATコントローラ7,統合コントローラ10)は、アップ変速時に次の変速段の摩擦要素(第2クラッチCL2、第1〜第3クラッチC1〜C3、第1〜第4ブレーキB1〜B4)に切り替え、ダウン変速時に変速終了より前の変速段の摩擦要素(第2クラッチCL2、第1〜第3クラッチC1〜C3、第1〜第4ブレーキB1〜B4)に切り替えるようになっている。
【0058】
この構成によれば、自動変速機ATび変速操作とエンジン始動とが同時に行われた場合でも、エンジン始動時に摩擦要素の第2クラッチCL2をスリップさせることができるので、自動変速機ATがエンジンEngに連動している状態で、自動変速機ATの変速操作が行われても、第2クラッチCL2を速くスリップさせることができる。また、自動変速機ATのアップ変速とエンジンEngの同時制御処理時に、第2クラッチCL2のスリップ収束と回転変化の制御を同時に行うことができる。更に、自動変速機ATのダウン変速とエンジンEngの同時制御処理時に、回転が低い状態でモード切り替え手段(第1クラッチCL1)と自動変速機ATとを同期させて、モータ(モータモータ/ジェネレータMG)の出力軸に大きな負荷が瞬時に作用しないようにして、極力モータ出力制限によるトルク制限がかからないようにできる。
【0059】
更に、この発明の実施の形態のハイブリッド車両の変速制御装置において、前記摩擦要素はエンジン始動時のスリップ要素(第2クラッチCL2、第1〜第3クラッチC1〜C3、第1〜第4ブレーキB1〜B4)と前記自動変速機の変速クラッチ(第1〜第3クラッチC1〜C3)を備えると共に、前記エンジン始動時の変速段の前記摩擦要素のうちのスリップ要素(第2クラッチCL2、第1〜第3クラッチC1〜C3、第1〜第4ブレーキB1〜B4)と前記自動変速機の変速クラッチ(第1〜第3クラッチC1〜C3)が重なる場合に、前記制御手段(ATコントローラ7,統合コントローラ10)は前記変速段でのギア変速時のショック遮断が可能なスリップ要素を前記重なるクラッチ要素以外の前記摩擦要素から選定するようになっている。
【0060】
この構成によれば、自動変速機ATの変速操作とエンジンEngの始動が同時に行われて、スリップ要素(第2クラッチCL2、第1〜第3クラッチC1〜C3、第1〜第4ブレーキB1〜B4)と前記自動変速ATの変速クラッチ(第1〜第2クラッチC1〜C3)の締結が重なる場合でも、ショックが発生するのを防止できる。
【0061】
また、この発明の実施の形態のハイブリッド車両の変速制御装置において、前記スリップ要素は第1,第2のピストンで伝達トルク容量を切り替え可能な大小の摩擦クラッチ(図示せず)を備え、前記制御手段(ATコントローラ7,統合コントローラ10)は前記第1,第2のピストンを作動制御して各変速段でのギア変速時のショック遮断を可能な伝達トルク容量となる大小の摩擦クラッチの締結状態を選定するようになっている。
【0062】
この構成によれば、自動変速機ATの変速操作とエンジンEngの始動が同時に行われて、前記摩擦クラッチ(第2クラッチCL2)と前記自動変速ATの変速クラッチ(第1〜第2クラッチC1〜C3)の締結が重なる場合でも、摩擦クラッチ(第2クラッチCL2)の切替によりショックが発生するのを防止できる。
【0063】
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0064】
実施例では、エンジン始動制御と変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があったときの例を示した。しかし、エンジン停止制御と変速制御のうち、一方の制御中に他方の制御要求があった場合にも勿論、本発明の協調制御を用いることができる。
【0065】
実施例では、第2クラッチCL2を、有段式の自動変速機ATに内蔵した摩擦要素の中から選択する例を示した。しかし、自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設けても良く、例えば、モータ/ジェネレータMGと変速機入力軸との間に自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設ける例や、変速機出力軸と駆動輪の間に自動変速機ATとは別に第2クラッチCL2を設ける例も含まれる。
【0066】
実施例では、自動変速機ATとして、前進7速後退1速の有段式の自動変速機を用いる例を示した。しかし、変速段数はこれに限られるものではなく、変速段として2速段以上の複数の変速段を有する自動変速機であれば良い。
【0067】
実施例では、HEVモードとEVモードを切り替えるモード切り替え手段として、第1クラッチCL1を用いる例を示した。しかし、HEVモードとEVモードを切り替えるモード切り替え手段としては、例えば、プラネタリギア等のように、クラッチを用いることなくクラッチ機能を発揮するような差動装置や動力分割装置を用いる例としても良い。
【0068】
実施例では、制御装置を後輪駆動のハイブリッド車両に対し適用した例を示したが、前輪駆動のハイブリッド車両に対しても適用することができる。要するに、自動変速機が搭載され、走行モードとして、HEVモードとEVモードを有するハイブリッド車両であれば適用できる。
【符号の説明】
【0069】
Eng エンジンCL1第1クラッチ(モード切り替え手段)
MG モータ/ジェネレータ(モータ)
CL2 第2クラッチ
AT自動変速機IN変速機入力軸
M-O/P メカオイルポンプ
S-O/P サブオイルポンプ
RL 左後輪(駆動輪)
RR 右後輪(駆動輪)
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 インバータ
4 バッテリ
5 第1クラッチコントローラ
6 第1クラッチ油圧ユニット
7A Tコントローラ
71a 始動禁止フラグ生成部(始動禁止フラグ設定手段)
8 第2クラッチ油圧ユニット
9 ブレーキコントローラ
10 統合コントローラ
10d 変速禁止判定部(変速禁止フラグ設定手段)
(摩擦要素、スリップ要素、締結要素)
B1・・・第1ブレーキ(フロントブレーキFr/B)
B2・・・第2ブレーキ(ローブレーキLOW/B)
B3・・・第3ブレーキ(2346ブレーキ2346/B)
B4・・・第4ブレーキ(リバースブレーキR/B)
C1・・・第1クラッチ(インプットクラッチI/C)
C2・・・第2クラッチ(ダイレクトクラッチD/C)
C3・・・第3クラッチ(H&LRクラッチH&LR/C)
F1・・・第1ワンウェイクラッチ(1速ワンウェイクラッチ1stOWC)
F2・・・第2ワンウェイクラッチ(1&2速ワンウェイクラッチ1&2OWC)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンの始動と駆動輪の駆動を行わせるモータと、
前記エンジンの出力軸と前記モータとの間に設けられてハイブリッド車モードと電気自動車モードとの切替を行わせる第1クラッチと、
前記モータと前記駆動輪との間に介装され、変速比が異なる複数の変速段を有する自動変速機と、
前記モータと前記駆動輪との間に設けられた複数の摩擦要素と、
前記自動変速機の変速制御、前記第1クラッチ,前記摩擦要素の締結制御、前記エンジンの制御を行わせる制御手段と、を備えるハイブリッド車両の変速制御装置において、
前記制御手段は、前記エンジンの始動中に前記複数の摩擦要素のうちから前記自動変速機の各ギア 変速時でのショック遮断が可能なものをスリップ要素として選定することを特徴とするハイブリッド車両の変速制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の変速制御装置において、前記制御手段は、アップ変速時に次の変速段の摩擦要素に切り替え、ダウン変速時に変速終了より前の変速段の摩擦要素に切り替えることを特徴とするハイブリッド車両の変速制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハイブリッド車両の変速制御装置において、前記摩擦要素はエンジン始動時のスリップ要素と前記自動変速機の変速クラッチを備えると共に、前記エンジン始動時の変速段の前記摩擦要素のうちのスリップ要素と前記自動変速機の変速クラッチが重なる場合に、前記制御手段は前記変速段でのギア変速時のショック遮断が可能なスリップ要素を前記重なるクラッチ要素以外の前記摩擦要素から選定すること特徴とするハイブリッド車両の変速制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載のハイブリッド車両の変速制御装置において、前記スリップ要素は第1,第2のピストンで伝達トルク容量を切り替え可能な大小の摩擦クラッチを備え、前記制御手段は前記第1,第2のピストンを作動制御して各変速段でのギア変速時のショック遮断を可能な伝達トルク容量となる大小の摩擦クラッチの締結状態を選定する特徴とするハイブリッド車両の変速制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−86784(P2012−86784A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237262(P2010−237262)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】