説明

ハイブリッド電気自動車の制御装置

【課題】パラレル式ハイブリッド電気自動車の制御装置に関し、低コストで製造できるようにしながら、エンジンと電動機とをより効率よく作動させることができるようにする。
【解決手段】エンジン11の出力軸11aと電動発電機12の回転軸12aとの間に介装されたマニュアル式のクラッチ13と、電動発電機12と駆動輪18との間に介装され、電動発電機12の回転軸12aに入力軸14aを結合されたマニュアル式変速機14と、電動発電機12に電力を供給し、電動発電機12の発電電力を充電されるバッテリ19と、を備え、クラッチ状態検出手段32aにより検出されたクラッチ13の操作状態と、アクセル状態検出手段31aにより検出されたアクセルの操作状態と、充電率検出手段23により検出されたバッテリ19の充電率とに基づいて、電動機トルクを算出し、該電動機トルクが発生するように電動発電機12を制御する制御手段24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動変速機を介してエンジン及び電動機の出力トルクを駆動輪に伝達して車両を駆動すること、及び、エンジンを切り離して電動機の出力トルクを駆動輪に伝達して車両を駆動することが可能な、パラレル式ハイブリッド電気自動車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジン(原動機)及び電動機の両方の出力トルクによって車両を駆動しうるパラレル式ハイブリッド電気自動車が開発されており、シリーズ式のものに比べて車両の駆動トルクを大きく確保できることから、トラックやバス等の大型車を含めて実用化されている。
このようなパラレル式ハイブリッド電気自動車には、図4に示すように、エンジン1の出力軸(エンジン回転軸)に電動機(通常、電動発電機)2が装備され、電動機2の出力軸(エンジン回転軸)にクラッチ3を介して変速機4が接続されたものが開発されている(特許文献1参照)。ここでは、変速機4の出力軸はプロペラシャフト5,ディファレンシャル6,及びドライブシャフト7を介して駆動輪8に接続されている。このような構成の場合、エンジン1,クラッチ3,変速機4の順で動力伝達されるように構成された既存のパワートレインのエンジン1の回転軸に、電動機2を追加するだけで、パラレル式ハイブリッド電気自動車を構成することができる。
【0003】
特に、トラックやバス等の大型車の場合、通常、手動変速機の入力軸に手動クラッチを介してエンジンの出力軸が接続されるため、手動変速機及び手動クラッチについては既存のものを利用しながら、エンジンの出力軸部分に電動機を追加するだけで構成できるのは、コストメリットが大きい。ただし、エンジンと電動機とは同一軸で接続されこれらを切り離すことができないため、運転パターンが制約される。逆に言えば、運転パターンが制約されるため、変速機やクラッチを自動にするメリットも少ない。
【0004】
一方、図5に示すように、エンジン1の出力軸にクラッチ3を介して電動機2の回転軸が装備され、電動機2の回転軸に変速機4の入力軸が直結されたものも開発されている(特許文献2参照)。この場合も、変速機4の出力軸はプロペラシャフト5,ディファレンシャル6,及びドライブシャフト7を介して駆動輪8に接続されている。このような構成の場合、クラッチ3と変速機4の間に電動機2を装備するため、既存のパワートレインに対する構成変更は大きい。しかし、エンジン1と電動機2とを切り離して、電動機2のみの駆動力で走行することが可能となるため、様々な運転パターンを実現することができ、これによるメリットが生じる。例えば、エンジン1を用いないで静かで滑らかに始動することや、エンジンブレーキを生じさせないで電動機2を発電状態とする回生制動のみを生じさせて回生効率を上げることなどが可能になる。変速機やクラッチを自動にすることによりこのメリットをより生かすことができる。
【0005】
ところで、いずれの構成のパラレル式ハイブリッド電気自動車も、要求される車両駆動トルク(負荷トルク)をエンジン1と電動機2とで分担するため、エンジン1及び電動機2の出力制御が必要になる。
図4のエンジン1と電動機2とが同一軸で接続された構成に関する特許文献1には、要求される車両駆動トルクに対してバッテリの充電率(残存容量)に応じた一定の割合でエンジン出力と電動機出力とで分担させる技術が記載されている。つまり、通常はエンジン1と電動機2とで負荷トルクを50%ずつ分担し、バッテリの充電率が少なくなったらエンジン1の負荷トルクの分担を75%として電動機2の分担を25%に減らしている。
【0006】
図5のエンジン1と電動機2との間にクラッチ3が介装された構成の特許文献2のものでは、変速機4には機械式自動変速機4Aが、クラッチ3には電動モータで駆動される自動クラッチ3Aが、それぞれ採用され、エンジン1と電動機2と機械式自動変速機4Aと自動クラッチ3Aとが連携して制御される。また、バッテリ充電率が十分あれば、発進時に車両駆動に要求される要求トルクを電動機2により発生可能なトルクを可能な限り用いるようにしている。
【0007】
前述のように、図5の構成のものは、電動機2のみの駆動力で走行することも可能であり、様々な制御パターンを実現できることから、トラックやバス等の大型車の場合、上記の特許文献2のもののように、変速機4には機械式自動変速機4Aを、クラッチ3には電動モータで駆動される自動クラッチ3Aを、それぞれ用いて、これらをエンジン1及び電動機2と連携して制御し、エンジン1と電動機2との間にクラッチ3が介装された優位性を有効に利用している。
【0008】
しかしながら、機械式自動変速機や自動クラッチは、マニュアル式変速機やマニュアル式クラッチに比較して大幅なコスト増を招く。このため、マニュアル式変速機やマニュアル式クラッチを利用しながら、より低コストで製造でき、エンジンと電動機との間にクラッチが介装された方式の利点を得ることができるパラレル式ハイブリッド電気自動車の開発も要望される。
【0009】
なお、特許文献3には、手動変速装置を搭載した車両をハイブリッド化した技術が記載されている。この技術では、ギヤを抜くときには、エンジンのトルクと同じ大きさで逆向きのトルクを発生させ、ギヤを入れるときには、手動変速装置の入力軸回転数を要求するギヤ段に応じた回転数にするように、電動発電機の運転状態を制御することにより、エンジン及び電動発電機及び手動変速装置の入力軸を直結した状態で手動変速操作に対応できるようにしている。
【0010】
この技術では、エンジンと電動発電機との間、或いは、電動発電機と手動変速装置との間にクラッチは必須ではないが、これらの各間に、いずれもクラッチを介装した構成も記載されている(特許文献3の図8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−252904号公報
【特許文献2】特開2007−261415号公報
【特許文献3】特開2001−352605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の特許文献3の技術では、手動変速装置を搭載した車両をハイブリッド化しているが、特に、変速機だけでなくクラッチにもマニュアル式のものを用いる場合を考慮した技術は記載されていない。
前述のように、パラレル式ハイブリッド電気自動車をより様々な運転パターンを実現できるようにしながらより低コストに製造するには、図5に示すものにおいて、変速機だけでなくクラッチにもマニュアル式のものを用いて、エンジン1と電動機2との間にマニュアル式のクラッチ3を介装し、電動機2とマニュアル式の変速機4との間は直結した構成としながら、エンジン1と電動機2との間にクラッチ3が介在する利点をより有効にできるようなエンジン1や電動機2の制御が必要になる。
【0013】
本発明は、かかる課題を解決すべく創案されたものであり、ハイブリッド電気自動車を低コストで製造できるようにしながら、エンジンと電動機とをより効率よく作動させることができるようにした、パラレル式ハイブリッド電気自動車の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上述の目的を達成すべく創案されたものであって、本発明のパラレル式ハイブリッド電気自動車の制御装置は、車両に搭載されたエンジンと、前記車両に搭載された電動発電機と、前記エンジンの出力軸と前記電動発電機の回転軸との間に介装されたマニュアル式のクラッチと、前記電動発電機と駆動輪との間に介装され、前記電動発電機の回転軸に入力軸を結合されて、前記エンジン及び/又は前記電動発電機の駆動力を前記駆動輪に伝達するマニュアル式変速機と、前記電動発電機が電動機として作動するときに前記電動発電機に電力を供給し、前記電動発電機が発電機として作動するときに前記電動発電機の発電電力が充電されるバッテリと、を備えたパラレル式ハイブリッド電気自動車の制御装置であって、前記クラッチの操作状態を検出するクラッチ状態検出手段と、前記車両のアクセルの操作状態を検出するアクセル状態検出手段と、前記バッテリの充電率を検出する充電率検出手段と、前記クラッチ状態検出手段により検出された前記クラッチの操作状態と、前記アクセル状態検出手段により検出された前記アクセルの操作状態と、前記充電率検出手段により検出された前記バッテリの充電率とに基づいて、前記電動発電機が発生すべき電動機トルクを算出し、該電動機トルクが発生するように前記電動発電機を制御する制御手段と、を備えていることを特徴としている。
【0015】
前記制御手段は、前記クラッチの操作状態に基づいてクラッチ対応トルク係数を設定し、前記アクセルペダルの操作状態に基づいてアクセル対応トルク係数を設定し、前記バッテリの充電率に基づいて充電率対応トルク係数を設定し、前記電動発電機が発生しうる最大トルクに対して、前記クラッチ対応トルク係数,前記アクセル対応トルク係数,及び前記充電率対応トルク係数を何れも乗算することにより、前記電動機トルクを算出することが好ましい。
【0016】
この場合、前記アクセル対応トルク係数は、前記アクセルが非操作状態であっても0にならないように設定されていることが好ましい。
また、前記制御手段は、前記アクセルペダルの踏み込み状態に基づいて車両要求トルクを算出し、前記電動機トルクでは前記車両要求トルクが不足する場合には、該不足する分のエンジントルクが発生するように前記エンジンを制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかるパラレル式ハイブリッド電気自動車によれば、マニュアル式のクラッチが接続されると、エンジンと電動発電機との双方の出力トルクがマニュアル式変速機を介して変速され駆動輪に伝達される。このため、エンジン及び電動発電機の両出力トルクを利用して大きな車両駆動力を確保することができる。
一方、マニュアル式のクラッチが解放されると、エンジンと電動発電機との間の動力伝達は遮断され、電動発電機のみがマニュアル式変速機を介して変速され駆動輪と駆動連結される。したがって、例えば発進時に、クラッチを解放して電動発電機のみの出力トルクを利用してエンジンを作動させないで静かに且つ排ガスを放出しないで発進することが可能になる。また、例えば制動時に、クラッチを解放してエンジンブレーキを作動させないで電動発電機を発電機とした発電負荷により大きな回生制動力を発揮させて最大限エネルギ回収しながら制動することが可能になる。
【0018】
そして、本発明のパラレル式ハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、制御手段が、クラッチの操作状態と、アクセルの操作状態と、バッテリの充電率とに基づいて、電動発電機が発生すべき電動機トルクを算出し、この電動機トルクが発生するように電動発電機を制御するので、効率良く且つフィーリング良く、電動発電機を電動機として作動させることが可能になる。
【0019】
つまり、通常のエンジンのみを備えた車両では、エンジンから駆動輪の側に出力される駆動トルクは、クラッチが操作される(解放操作)とその操作状態に応じて変化する。これに対して、本ハイブリッド電気自動車は、電動発電機の回転軸がマニュアル式変速機の入力軸に結合されているので、電動発電機の駆動トルクが発生していると、クラッチを操作しても、マニュアル式変速機がニュートラル状態でない限りは、電動機トルクがそのままマニュアル式変速機を介して駆動輪の側に出力されてしまい、違和感を与える。
【0020】
この点、クラッチ操作状態に応じて、例えばクラッチが切り離し側に操作されるほど電動機トルクが小さくなるように設定することにより、駆動輪の側に出力されるトルクを通常のエンジンのみを備えた車両と同様に変化させることができ、通常のエンジンのみを備えた車両と同様なトルクフィーリングとなる。同時に、不要な電動機トルクを抑えることにもなる。
【0021】
また、アクセルの操作状態に応じて、例えばアクセルがトルク要求側に操作されるほど電動機トルクが大きくなるように設定することにより、電動機トルクを適切な大きさに設定することができ、効率良く且つフィーリング良く、電動発電機を電動機として作動させることが可能になる。
さらに、バッテリの充電率に応じて、例えばバッテリの充電率が小さくなるほど、電動機トルクが小さくなるように設定することにより、バッテリの充電率の過剰な低下を抑えて、バッテリの保護を図りながら電動機トルクを利用することが可能になる。
【0022】
また、クラッチの操作状態に基づくクラッチ対応トルク係数、アクセルペダルの操作状態に基づくアクセル対応トルク係数、バッテリの充電率に基づく充電率対応トルク係数をそれぞれ設定し、電動発電機が発生しうる最大トルクに対して各係数を何れも乗算することにより電動機トルクを算出すれば、シンプルなロジックで容易に且つ適切に電動機トルクを算出することができる。
【0023】
アクセル対応トルク係数は、アクセルが非操作状態であっても0にならないように設定することにより、アクセル操作なしにクラッチ操作のみで微速走行を行なうことができ、例えば渋滞の微速走行を容易に行なうことができ、発進時の微動操作性も向上する。
さらに、アクセルペダルの踏み込み状態に基づいて車両要求トルクを算出し、電動機トルクでは車両要求トルクが不足する場合には、不足する分だけエンジントルクが発生するようにエンジンを制御することにより、ドライバのトルク要求に応じた車両の駆動トルクを発生させることができ、車両のドライバビリティを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の係るパラレル式ハイブリッド電気自動車の制御装置をパワートレインと共に示す模式的な構成図である。
【図2】本発明の一実施形態の係るパラレル式ハイブリッド電気自動車の制御装置の機能構成を説明するブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態の係るクラッチストロークを説明する図である。
【図4】従来の第1のパラレル式ハイブリッド電気自動車のパワートレインの模式的な構成図である。
【図5】従来の第2のパラレル式ハイブリッド電気自動車のパワートレインの模式的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面により、本発明の一実施形態に係るパラレル式ハイブリッド自動車の制御装置について説明する。
〔車両のパワートレインの構成〕
図1は本実施形態に係るパラレル式ハイブリッド電気自動車の制御装置をパワートレインと共に示す模式的な構成図である。図1に示すように、本ハイブリッド自動車は、エンジン(原動機)11の出力軸(回転軸)11aにクラッチ13を介して電動発電機(以下、単に「電動機」とも言う)12の回転軸12aが装備され、電動機12の回転軸12aに変速機14の入力軸14aが直結されたパラレル式ハイブリッド自動車として構成されている。また、クラッチ13にはマニュアル式クラッチが、変速機14にはマニュアル式変速機が、それぞれ用いられている。また、変速機14の出力軸14bはプロペラシャフト15,ディファレンシャル16,及びドライブシャフト17を介して左右の駆動輪18に接続されている。
【0026】
したがって、クラッチ13が接続されているときには、エンジン11の出力軸11aと電動機12の回転軸12aの双方が駆動輪18と機械的に接続され、クラッチ13が切断されているときには電動機12の回転軸12aのみが駆動輪18と機械的に接続された状態となる。
電動機12は、バッテリ19に蓄えられた直流電力がインバータ20によって交流電力に変換されて供給されることにより電動機(モータ)として作動し、その駆動力が変速機14によって適切な速度に変速された後に駆動輪18に伝達される。また、車両減速時には、電動機12が発電機として作動し、駆動輪18の回転による運動エネルギが変速機14を介し電動機12に伝達されて交流電力に変換されることにより回生制動力を発生する。そして、この交流電力はインバータ20によって直流電力に変換された後、バッテリ19に充電され、駆動輪18の回転による運動エネルギが電気エネルギとして回収される。
【0027】
一方、エンジン11の駆動力は、クラッチ13が接続されているときに電動機12の回転軸12aを経由して変速機14に伝達され、適切な速度に変速された後に駆動輪18に伝達されるようになっている。従って、エンジン11の駆動力が駆動輪18に伝達されているときに電動機12がモータとして作動する場合には、エンジン11の駆動力と電動機13の駆動力とがそれぞれ駆動輪18に伝達される。即ち、車両の駆動のために駆動輪18に伝達されるべき駆動トルクの一部がエンジン11から供給されると共に、残部が電動機12から供給される。
【0028】
また、バッテリ19の充電率(以下SOCという)が低下してバッテリ19を充電する必要があるときには、電動機12が発電機として作動すると共に、エンジン11の駆動力の一部を用いて電動機12を駆動することにより発電が行われ、発電された交流電力をインバータ20によって直流電力に変換した後にバッテリ19に充電する。
【0029】
〔パワートレインにかかる制御系統の構成〕
エンジン11を制御するためにエンジンECU21が、インバータ20を制御するためにインバータECU22が、バッテリ1を制御するためにバッテリECU23がそれぞれ設けられ、これらのエンジンECU21,インバータECU22,及びバッテリECU23を通じて車両を統合制御するために、車両ECU24が設けられている。なお、各ECU21〜24は、メモリ(ROM,RAM)及びCPU等で構成されるコンピュータである。
【0030】
車両ECU(制御手段)24は、車両やエンジン11の運転状態、及びエンジンECU21、インバータECU22並びにバッテリECU23からの情報などに応じて、これらの制御状態や車両の発進、加速、減速など様々な運転状態に合わせてエンジン11や電動機12を適切に運転するための統合制御を行なう。
この際、車両ECU24は、エンジン11が発生すべきトルク(エンジントルク)及び電動機12が発生すべきトルク(電動機トルク)を設定する。なお、電動機12が発生すべきトルクは、電動機12をモータ作動させる場合には正の値となり、発電機作動させる場合には負の値となる。
【0031】
エンジンECU21は、エンジン11の始動・停止制御やアイドル制御、或いは排ガス浄化装置(図示せず)の再生制御など、エンジン11自体の運転に必要な各種制御を行うと共に、車両ECU24によって設定されたエンジン11に必要とされるトルク(エンジントルク)をエンジン11が発生するよう、エンジン11の燃料の噴射量や噴射時期などを制御する。
【0032】
インバータECU22は、車両ECU24によって設定された電動機12が発生すべきトルク(電動機トルク)に基づきインバータ20を制御することにより、電動機12をモータ作動または発電機作動させて運転制御する。
バッテリECU(バッテリ充電率検出手段)23は、バッテリ19の温度や、バッテリ19の電圧、インバータ20とバッテリ19との間に流れる電流などを検出すると共に、これらの検出結果からバッテリ19のSOCを求め、求めたSOCを検出結果と共に車両ECU24に送出する。
【0033】
また、アクセルの操作状態、即ち、アクセルペダル31の踏み込み量(アクセル開度)APを検出するアクセルペダルポジションセンサ(アクセル状態検出手段、以下、「APS」とも言う)31aと、クラッチの操作状態、即ち、クラッチペダル32の踏み込み量(クラッチストローク)CSを検出するクラッチストロークセンサ(クラッチ状態検出手段)32aとが、更に備えられており、APS31a及びクラッチストロークセンサ32aから各検出情報と、バッテリ充電率検出手段としてのバッテリECU23からのSOC情報とが、車両ECU24に送られるようになっている。
【0034】
車両ECU24では、車両の駆動時には、図1,2に示すように、アクセル開度APと、クラッチストロークCSと、充電率SOCとに基づいて、電動機トルクTm及びエンジントルクTeを算出し、算出した各トルクをエンジンECU21及びインバータECU22に出力する。
ここで、車両ECU24による電動機トルクTm及びエンジントルクTeの算出について説明する。車両ECU24は、アクセル開度APに基づいて、アクセル開度APの増大に対応して(例えば比例するように)車両に必要なトルク(車両要求トルク)Taを算出する機能要素(車両要求トルク算出部)24aを備えている。
【0035】
また、車両ECU24では、電動機12が発生しうる最大トルクTmMAXと、クラッチストロークCSと、アクセル開度APと、充電率SOCとに基づいて、電動機トルクTmを算出する。つまり、車両ECU24は、クラッチストロークCSの増大に応じて(即ち、クラッチペダルが踏み込まれ、クラッチが切り離し側への操作量が増大するのに応じて)減少するクラッチ対応トルク係数CCSを算出する機能要素(クラッチ対応トルク係数算出部)24bと、アクセル開度APに基づいてアクセル開度APの増大に応じて増大するアクセル対応トルク係数CAPを算出する機能要素(アクセル対応トルク係数算出部)24cと、充電率SOCの減少に応じて減少する充電率対応トルク係数CSOCを算出する機能要素(充電率対応トルク係数算出部)24dと、を備えている。
【0036】
なお、クラッチ対応トルク係数CCSについては、クラッチストロークCSが0%(最大踏み込み量)のときに「1」とされ、クラッチストロークCSが大きくなる(即ち、クラッチペダル32が踏み込まれ、クラッチの係合が弱まっていく)にしたがって減少し、クラッチストロークCSが100%(最大踏み込み量)のときに「0」となるように設定されている。
【0037】
ただし、クラッチストロークCSが0%の付近及び100%の付近には「遊び」が設けられており、実際には、クラッチペダル32が僅かだけ踏み込まれた場合には、クラッチ13は完全係合状態を保持し、クラッチペダル32が最大まで踏み込まれる前にクラッチ13は係合を完全に解除された状態になる。そこで、クラッチストロークセンサ32aもこれと対応するように、クラッチペダル32が僅かだけ踏み込まれてもクラッチ13は完全係合状態を保持する領域は、クラッチストロークCSとして0%を出力し、クラッチペダル32の最大ストロークよりも所定量だけ手前からクラッチストロークCSとして100%を出力する。なお、クラッチストロークCSについては更に後述する。
【0038】
また、アクセル対応トルク係数CAPについては、アクセルペダル31が踏み込まれなければ「0」、アクセルペダル31が踏み込まれていくに従って増加し、アクセルペダル31が最大踏み込み量の近傍まで踏み込まれると「1」とされる。この場合も、アクセル開度の最小領域(開度0%)及び最大領域(開度100%)には「遊び」が設けられ、アクセルペダル31が僅かに踏み込まれただけではアクセル対応トルク係数CAPは「0」、アクセルペダル31が最大踏み込み量に達する僅かに手前で「1」とされる。
【0039】
なお、アクセル操作に対応したトルク補正は、アクセル操作が少ないほど電動機トルクを制限すると見ることができるので、このような観点からは、アクセル対応トルク係数CAPに対応する係数(1−CAP)をトルク制限係数と呼ぶこともできる。
充電率対応トルク係数CSOCについては、バッテリ16が満充電のSOCを100%とすると、バッテリのSOCが例えば30%以下の領域では、バッテリ19が過放電状態であるため、バッテリ19の放電不可の領域として、充電率対応トルク係数CSOCを「0」とする。また、バッテリ19のSOCが例えば70%以上の領域では、バッテリ19が過充電状態となる可能性があるため、バッテリ19を放電すべき領域として、充電率対応トルク係数CSOCを「1」とする。SOCが30%から70%の間にある場合、SOCが大きくなるほど充電率対応トルク係数CSOCを大きくする。
【0040】
そして、車両ECU24は、下式(1)に示すように、電動機12が発生しうる最大トルクTmMAXに、これらの各係数CCS,CAP,CSOCを乗算して、電動機トルク算出値TmCを算出する機能要素(電動機トルク算出部)24eを更に備えている。なお、電動機12が発生しうる最大トルクTmMAXは電動機12の使用により既知の値である。
TmC=TmMAX×CCS×CAP×CSOC ・・・(1)
さらに、車両ECU24は、電動機トルクTm及びエンジントルクTeを設定する機能(トルク設定部)24fを備え、トルク設定部24fでは、電動機トルク算出値TmCを車両要求トルクTaと比較して、電動機トルク算出値TmCが車両要求トルクTaを上回る場合には、電動機トルクTmを車両要求トルクTaに制限し(Tm=Ta)、電動機トルク算出値TmCが車両要求トルクTaを上回らない場合には、電動機算出値トルクTmCを電動機トルクTmに設定する(Tm=TmC)。
【0041】
また、トルク設定部24fでは、電動機トルク算出値TmCが車両要求トルクTaを上回らない場合には、車両要求トルクTaからこのとき設定される電動機トルクTm(=TmC)を減算した値をエンジントルクTe(=Ta−Tm)とする。
なお、バッテリ19のSOCが十分にある(例えば70%以上)ことを前提条件に、アクセル開度APが予め設定された所定開度AP以下である場合に要求される車両要求トルクTaについては、通常、電動機トルク算出値TmCがこの車両要求トルクTaを満たすものとする。
【0042】
このように、車両ECU24によって設定された電動機トルクTmはインバータECU22に出力され、設定された電動機トルクTmが発生するようにインバータECU22が電動機12を制御する。また、車両ECU24によって設定されたエンジントルクTeはエンジンECU21に出力され、設定されたエンジントルクTeが発生するようにエンジンECU21がエンジン11を制御する。
【0043】
ところで、本実施形態では、クラッチペダル32の最大踏み込み領域付近に、従来の「遊び」に更なる「遊び」が設けられている。つまり、クラッチペダルは踏み込み量(即ち、クラッチストロークCS)が0の完全結合した状態(完全係合状態)から踏み込んでいくと(即ち、クラッチストロークCSを与えていくと)、完全結合から滑りを伴って係合する半クラッチ状態(半係合状態)になり、更に、クラッチストロークCSが大きくなるほど、半クラッチ状態のすべりが大きくなって、やがて結合が完全に解除された状態(係合解除状態、又は、クラッチ断状態)になる。
【0044】
通常、このように係合解除状態まで踏み込んでも更にある程度クラッチペダルを踏み込めるように「遊び」が設けられ、クラッチの経時的な変化に対してもクラッチ断の状態を確実に実現できるように設定されているが、本実施形態では、図3に示すように、この「遊び」の領域を通常よりも拡大しており、この「遊び」の領域をドライバが使用して特定の運転操作ができるようになっている。
【0045】
つまり、クラッチストロークセンサ32aは、この追加した「遊び」の領域では、実際には、クラッチ13は係合解除状態にあるもののクラッチストローク100%よりも少ないものとして、この追加した「遊び」の領域から従来から設けられている「遊び分」の領域に達したところで、クラッチストローク100%を出力するように設定されている。したがって、この追加した「遊び」の領域では、クラッチストロークが100%未満になって、クラッチ対応トルク係数CCSが0よりも大の値として発生する。
【0046】
なお、この追加した「遊び」の領域に対応したクラッチストロークは例えば70〜100%とする。そして、このクラッチストロークがこの追加した「遊び」の領域に対応した値(70〜100%)にある時には、車両ECU24は、エンジン11を停止若しくはアイドリング運転とするように、エンジンECU21に制御信号を出力する。この場合、例えば、SOCが十分にあること(SOCが70%以上)を前提条件に、アクセル開度APが予め設定された所定開度AP以下で且つアクセル開度増加量(単位時間当たりの増加量)ΔAPが予め設定された所定増加量ΔAP以下の場合には、エンジン11を停止し、そうでなければ、エンジン11をアイドリング運転とすることが考えられる。この場合の所定開度APは、前述の所定開度APと同一若しくは前述の所定開度APよりも小さな値とする。
【0047】
なお、車両ECU24では、車両の制動時には、ブレーキ操作(例えば、ブレーキペダルの踏み込み操作やブレーキ液圧等)を検出する図示しないブレーキセンサからの情報に基づいて制動操作中であることを検知し、制動操作中には、インバータECU22を通じて、電動機12を発電機作動させて、ブレーキ操作量(例えば、ブレーキペダルの踏み込み量)を検出する図示しないブレーキ操作量センサからの情報に基づいて、ブレーキ操作量に応じた回生制動力を発生させる。この際、回生制動で得られる発電電力によりバッテリ19を充電する。
【0048】
また、この車両の制動時に、ブレーキ操作と共に、クラッチ13の操作をすると、クラッチ13に滑りが発生するとその滑り分だけエンジンブレーキは利かなくなり、クラッチ13の係合が完全に解除されると、エンジンブレーキは全く利かなくなる。車両ECU24では、このように、ブレーキ操作中にクラッチ13の操作がされると、そのクラッチストロークCSに応じて生じるエンジンブレーキの減少分だけ、回生制動力を増大させるようにインバータECU22を通じて、電動機12の発電機作動の状態を制御する。クラッチストロークCSが、図3に示すような「遊び」の領域(従来の「遊び」の領域及び追加した「遊び」の領域)に調整されれば、クラッチ13の完全係合時に加えられるエンジンブレーキ分が全て回生制動力に置き換えられるので、より効率よく回生制動が行なわれることになる。
【0049】
また、車両ECU24では、SOCが十分な領域(SOCが70%以上)よりも低下すると、所定の条件、例えば、車両要求トルクTaが予め設定された所定値以下で、エンジントルクTeのみでも車両要求トルクTaに対して十分な余裕がある場合において、インバータECU22を通じて、電動機12を発電機作動させて、エンジントルクTeの一部で電動機12を回転駆動して発電を実施する。これにより得られる発電電力によりバッテリ19を充電し、SOCを回復させる。
【0050】
〔作用〕
本発明の一実施形態に係るパラレル式ハイブリッド自動車の制御装置は、このように構成されるので、車両ECU24をはじめとしたECU21〜24の制御を通じて、パラレル式ハイブリッド自動車を以下のように運転することができる。
<発進時>
本ハイブリッド自動車は、クラッチ13及び、変速機14が何れもマニュアル式なので、発進時には、クラッチペダル32を踏み込んでクラッチ13を係合解除状態として、変速機14を発進段に入れて、アクセルペダル31を踏み込みながら、クラッチペダル32の踏み込みを徐々に解除していく。このクラッチペダル32の踏み込みを解除していく際に、上記の追加した「遊び」の領域を利用することにより、クラッチ13は実際には係合解除状態であって、エンジン11は電動機12及び変速機14と切り離されているが、クラッチ対応トルク係数CCSが0よりも大の値として電動機がトルクを発生する。
【0051】
したがって、クラッチペダル32をこの追加した「遊び」の領域に調整しながらアクセルペダル31を踏み込むと、充電率SOCが確保されている限り、クラッチ対応トルク係数CCS,アクセル対応トルク係数CAP,充電率対応トルク係数CSOCの何れも0よりも大となり、電動機トルク算出値TmCが発生する。これにより、電動機14に電動機トルク算出値TmCに応じた電動機トルクTmが指令され、電動機14により発生する電動機トルクTmによって、エンジントルクTeを要することなく発進することができる。
【0052】
なお、この際、バッテリ19のSOCが十分にある(例えば70%以上)場合は、アクセル開度APを所定開度APよりも大きく操作するか或いはアクセル開度APを所定増加量ΔAPよりも大きく急増操作すると、クラッチ13は係合解除状態であるが、エンジン11は低負荷トルクを維持するようエンジントルクを制限し、電動機の発生トルクのみ増加させる。また、バッテリ19のSOCが十分ではない(例えば30%未満)場合は、アクセル開度APに関係なく、エンジントルク制限を解除し、通常の車両と同等のエンジントルクを発生させて発進する。
【0053】
発進時に、クラッチ13の係合操作と共にアクセル開度APの増加操作を行なうと、アクセル開度APが予め設定された所定開度AP以上になったあたりで車両要求トルクTaが大きくなり、電動機トルク算出値TmCがこの車両要求トルクTaを満たせなくなる。しかし、この時には、事前にアイドリング運転されているエンジン11が電動機トルク算出値TmCにより車両要求トルクTaが満たされない分だけのエンジントルクTeを発生するように制御されるので、電動機12とエンジン11とにより協働して車両要求トルクTaが発生され、発進時において、可能な限り電動機トルクTmを利用しながらドライバのトルク要求に答えることができる。
【0054】
<通常走行時>
発進後の走行中には、必要に応じて変速操作、即ち、変速機の変速段の変更操作を、クラッチ13及び変速機14を手動で操作しながら行なう。変更操作を行なわない限り、クラッチ13は操作されない(クラッチストロークは0%)完全係合状態であり、クラッチ対応トルク係数CCSは「1」である。したがって、アクセル対応トルク係数CAP及び充電率対応トルク係数CSOCに応じて、電動機トルク算出値TmCが算出され、電動機トルクTmが設定され、電動機トルクTmを出力するように電動機12が制御される。また、電動機トルクTmで車両要求トルクTaが満たされない場合は、エンジン11がその差分だけのエンジントルクTeを発生するように制御される。これにより、係合状態のクラッチ13を通じてエンジントルクTe及び電動機トルクTmが変速機14を介して所定の速度比で回転速度を変速されて駆動輪18に伝達される。電動機トルク算出値TmCが車両要求トルクTaを満たせば、エンジン11は、前述のように停止又はアイドリング運転状態とされる。
【0055】
また、走行中に、変更操作を行なう時には、まず、クラッチ13が切り離し操作される。これにより、クラッチ対応トルク係数CCSが0となるので、電動機トルク算出値TmCも0となり、電動機トルクTmが0となる。つまり、電動機14は、駆動系に対してトルクを加えることもなく、又、駆動系の負荷となることもない状態に制御される。
次に、変速段の変更操作後に、クラッチ13が接合されていくが、この時には、クラッチ13の接合操作と共にクラッチストロークが減少していくので、クラッチ対応トルク係数CCSは0から1に近づいていく。したがって、アクセル対応トルク係数CAP及び充電率対応トルク係数CSOCに応じて、電動機トルク算出値TmCが算出され、電動機トルクTmが設定され、電動機トルクTmを出力するように電動機12が制御される。
【0056】
また、電動機トルク算出値TmCが車両要求トルクTaを上回らない場合には、車両要求トルクTaからこのとき設定される電動機トルクTm(=TmC)を減算した値をエンジントルクTe(=Ta−Tm)とし、設定されたエンジントルクTeも出力され、係合状態となったクラッチ13を通じてエンジントルクTe及び電動機トルクTmが変速機14を介して所定の速度比で回転速度を変速されて駆動輪18に伝達される。電動機トルク算出値TmCが車両要求トルクTaを満たせば、エンジン11は、前述のように停止又はアイドリング運転状態とされる。
【0057】
<微速走行時(渋滞路走行時)>
走行する道路が渋滞していて、微速走行と停止とが繰り返される渋滞路走行時には、ドライバは、変速機14の変速段を低速段に設定して、クラッチ13を図3に示すような追加した「遊び」の領域に調整しながら、微速走行するにはアクセル操作を行ない、クラッチ13の係合は解除したままで、クラッチ対応トルク係数CCSを0よりも大きくして、クラッチ対応トルク係数CCS,アクセル対応トルク係数CAP及び充電率対応トルク係数CSOCに応じて算出される電動機トルク算出値TmCを電動機トルクTmに設定して、電動機トルクTmを出力するように電動機12を制御し、微速走行を行なうことができる。
【0058】
また、停止したい場合には、クラッチ13を図3に示すような追加した「遊び」の領域に調整する状態を保持して、アクセル操作を止めてブレーキ操作を行なうことにより、車両を停止させることができる。このときには、アクセル対応トルク係数CAPが0となるので、電動機トルク算出値TmC、即ち、電動機トルクTmも0となり、電動機14は、駆動系に対してトルクを加えることもなく、又、駆動系の負荷となることもない状態に制御される。エンジン11は、前述のように停止又はアイドリング運転状態とされる。
【0059】
<通常走行中の制動時>
前述のように、車両の制動時には、電動機12を発電機作動させて、ブレーキ操作量に応じた回生制動力を発生させ、この回生制動で得られる発電電力によりバッテリ19が充電されるが、このとき、ブレーキ操作と共に、クラッチ13を操作すると、これに応じて生じるエンジンブレーキの減少分だけ回生制動力を増大させるように、電動機12の発電機作動の状態が制御される。そこで、車両の制動時に、図3に示すような「遊び」の領域(従来の「遊び」の領域及び追加した「遊び」の領域)に調整すれば、クラッチ13の完全係合時に加えられるエンジンブレーキ分が全て回生制動力に置き換えられるので、回生制動力を最大限増大させてより効率よく回生制動が行なわれ、回生制動により発電した電力をバッテリ19に充電させることができる。
【0060】
〔効果〕
このように、クラッチ13が解放されると、エンジン11と電動機12との間の動力伝達は遮断され、電動機12のみが変速機14を介して駆動輪18と駆動連結されるので、上述のように、車両の発進時に、クラッチ13を解放して電動機12のみの出力トルク(電動機トルク)を利用してエンジン11を作動させないで静かに且つ排ガスを放出しない若しくは抑制させて発進することが可能になる。
また、制動時に、クラッチ13を解放してエンジンブレーキを作動させないで電動機12を発電機とした発電負荷により大きな回生製動力を発揮させて最大限エネルギ回収しながら制動することが可能になり、エネルギ効率を向上させることができる。
【0061】
また、クラッチストローク(クラッチ13の操作状態)CSと、アクセル開度(アクセルの操作状態)APと、バッテリ19の充電率SOCと,に基づいて、電動機トルクTmを算出し、この電動機トルクTmが発生するように電動機12を制御するので、効率良く且つフィーリング良く、電動発電機12を電動機として作動させることが可能になる。
つまり、本ハイブリッド電気自動車は、電動機12の回転軸12aが変速機14の入力軸14aに結合されているので、電動機トルクTmが発生していると、クラッチ13を操作しても、変速機14がニュートラル状態でない限りは、電動機トルクTmがそのまま変速機14を介して駆動輪18に出力されてしまい、違和感を与える。しかし、クラッチ操作状態に応じて、クラッチ13が切り離し側に操作されるほど電動機トルクTmが小さくなり、駆動輪28の側に出力されるトルクを通常のエンジンのみを備えた車両と同様に変化させることができ、通常のエンジンのみを備えた車両と同様なトルクフィーリングとなる。同時に、不要な電動機トルクTmを抑えることにもなる。
【0062】
また、アクセルの操作状態に応じて、アクセルペダルが踏み込まれるほど電動機トルクTmが大きくなるので、電動機トルクTmを適切な大きさに設定することができ、この点でも、効率良く且つフィーリング良く、電動発電機12を電動機として作動させることが可能になる。
さらに、バッテリ19の充電率SOCに応じて、充電率SOCが小さくなるほど、電動機トルクTmが小さくなるので、バッテリ充電率SOCの過剰な低下を抑えて、バッテリの保護を図りながら電動機トルクTmを利用することが可能になる。
【0063】
しかも、クラッチ13の操作状態に基づくクラッチ対応トルク係数CCS、アクセルペダル31の操作状態に基づくアクセル対応トルク係数CAP、バッテリ充電率SOCに基づく充電率対応トルク係数CSOCをそれぞれ設定し、電動発電機12が発生しうる最大トルクTmMAXに対して各係数CCS,CAP,CSOCを何れも乗算することにより電動機トルクTmCを算出するので、シンプルなロジックで容易に且つ適切に電動機トルクTmCを算出することができる。
【0064】
さらに、アクセルペダル31の踏み込み状態に基づいて車両要求トルクTaを算出し、電動機トルクTmでは車両要求トルクTaが不足する場合には、不足する分だけエンジントルクTeが発生するようにエンジン11を制御することにより、電動機トルクTmを可能な限り利用しながらドライバのトルク要求に応じた車両の駆動トルクを発生させることができ、車両のドライバビリティを向上させることができる。
【0065】
しかも、マニュアル式のクラッチ13とマニュアル式変速機14とを適用しているので、車両の製造コストを抑えながら、ハイブリッド電気自動車に求められている電動機12の使用頻度の向上や、これに伴う種々の実用性能の向上を実現することができる。
〔その他〕
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はかかる実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、かかる実施の形態を適宜変更して実施しうるものである。
【0066】
例えば、上記の実施形態では、アクセル対応トルク係数CAPについては、アクセルが非操作状態、つまり、アクセル開度APが0であれば、アクセル対応トルク係数CAPは0に設定されるが、アクセルが非操作状態であっても、ブレーキ操作が行なわれない限りは、アクセル対応トルク係数CAPを0よりも大きい値(例えば、0.05)にするように設定してもよい。もちろん、この場合も、アクセル対応トルク係数CAPは、アクセルペダル31が踏み込まれていくに従って増加し、アクセルペダル31が最大踏み込み量の近傍まで踏み込まれると「1」とされる。
【0067】
このように構成すれば、アクセル操作しなくても、クラッチストロークCSが100%に達してクラッチ対応トルク係数CCSが0になったり、バッテリ19が過放電状態(バッテリのSOCが例えば30%以下)となって充電率対応トルク係数CSOCが0になったりしない限り、電動機トルク算出値TmCが発生し、電動機トルクTmを有効に設定できる。このため、アクセル操作なしにクラッチ操作のみで微速走行を行なうことができ、例えば渋滞の微速走行を容易に行なうことができ、発進時の微動操作性も向上する。
【符号の説明】
【0068】
11 エンジン(原動機)
11a エンジン11の出力軸(回転軸)
13 マニュアル式クラッチ
12 電動発電機(電動機)
12a 電動発電機12の回転軸
14 マニュアル式変速機
14a 変速機14の入力軸
14b 変速機14の出力軸
15 プロペラシャフト
16 ディファレンシャル
17 ドライブシャフト
18 駆動輪
19 バッテリ
20 インバータ
21 エンジンECU
22 インバータECU
23 バッテリECU(バッテリ充電率検出手段)
24 車両ECU
31a アクセルペダルポジションセンサ(アクセル状態検出手段)
32a クラッチストロークセンサ(クラッチ状態検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたエンジンと、
前記車両に搭載された電動発電機と、
前記エンジンの出力軸と前記電動発電機の回転軸との間に介装されたマニュアル式のクラッチと、
前記電動発電機と駆動輪との間に介装され、前記電動発電機の回転軸に入力軸を結合されて、前記エンジン及び/又は前記電動発電機の駆動力を前記駆動輪に伝達するマニュアル式変速機と、
前記電動発電機が電動機として作動するときに前記電動発電機に電力を供給し、前記電動発電機が発電機として作動するときに前記電動発電機の発電電力が充電されるバッテリと、を備えたパラレル式ハイブリッド電気自動車の制御装置であって、
前記クラッチの操作状態を検出するクラッチ状態検出手段と、
前記車両のアクセルの操作状態を検出するアクセル状態検出手段と、
前記バッテリの充電率を検出する充電率検出手段と、
前記クラッチ状態検出手段により検出された前記クラッチの操作状態と、前記アクセル状態検出手段により検出された前記アクセルの操作状態と、前記充電率検出手段により検出された前記バッテリの充電率とに基づいて、前記電動発電機が発生すべき電動機トルクを算出し、該電動機トルクが発生するように前記電動発電機を制御する制御手段と、を備えている
ことを特徴とする、パラレル式ハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記クラッチの操作状態に基づいてクラッチ対応トルク係数を設定し、前記アクセルペダルの操作状態に基づいてアクセル対応トルク係数を設定し、前記バッテリの充電率に基づいて充電率対応トルク係数を設定し、前記電動発電機が発生しうる最大トルクに対して、前記クラッチ対応トルク係数,前記アクセル対応トルク係数,及び前記充電率対応トルク係数を何れも乗算することにより、前記電動機トルクを算出する
ことを特徴とする、請求項1記載のパラレル式ハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項3】
前記アクセル対応トルク係数は、前記アクセルが非操作状態であっても0にならないように設定されている
ことを特徴とする、請求項2記載のパラレル式ハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記アクセルペダルの踏み込み状態に基づいて車両要求トルクを算出し、前記電動機トルクでは前記車両要求トルクが不足する場合には、該不足する分のエンジントルクが発生するように前記エンジンを制御する
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のパラレル式ハイブリッド電気自動車の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−11721(P2011−11721A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160115(P2009−160115)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】