説明

ハイブリッド駆動装置のトルク制御のための装置及び該装置の製造方法

【課題】容易に且つ低経費でハイブリッド車輛システムの燃料効率の向上を十分に活用するように従来の車輛をハイブリッド車輛へ転換する。
【解決手段】装置が、変速機(14)の入力側に結合されているエンジン(12)と、変速機(14)の出力側に結合されている電気機械装置(30)とを含んでいる。装置はまた、電気機械装置の出力側(30)に結合されている差動装置(16)と、電気機械装置(30)に結合されている制御器(44)とを含んでいる。制御器(44)は、走行範囲推定値を受け取り、エンジン(12)の動作特性を監視し、変速機(14)の動作特性を監視する。制御器(44)はさらに、電気機械装置(30)の動作特性を監視し、走行範囲推定値、エンジン(12)の動作特性、変速機(14)の動作特性、及び電気機械装置(30)の動作特性に基づいて電気機械装置(30)の動作を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の各実施形態は一般的には、ハイブリッド車輛及び電気車輛を含む電気駆動システム、並びに過渡負荷又はパルス負荷を受ける定置駆動装置に関し、さらに具体的には、車輛又は駆動装置の電気的貯蔵装置と車輛又は駆動装置の外部の電源との間でエネルギを伝達することに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気車輛は、内燃機関と、トラクション・バッテリのようなエネルギ貯蔵装置によって給電される電気モータとを組み合わせて車輛を駆動することができる。典型的には、電気モータが内燃機関と変速機との間に結合されて、変速機を介してトルク増大を利用する。かかる組み合わせは、燃焼機関及び電気モータが各々効率をそれぞれの範囲で高めて動作することを可能にすることにより、全体的な燃料効率を高めることができる。例えば電気モータは、静止始動からの加速時に効率がよく、燃焼機関は、高速道路運転時のように持続的な一定のエンジン動作時に効率がよいと言える。電気モータを設けて初期加速を強化することにより、ハイブリッド車輛の燃焼機関を小型化して燃料効率を高めることが可能になる。
【0003】
プラグ・イン・ハイブリッド車輛は、外部電源からの電気エネルギを用いてトラクション・バッテリに再充電するように構成されている。かかる車輛の例としては、一般道路走行用車輛及び一般道路外走行用車輛、ゴルフ・カート、近距離用電気車輛、フォークリフト、並びに小型トラック等がある。これらの車輛は、オフ・ボードの定置型バッテリ充電器又はオン・ボードのバッテリ充電器の何れかを用いて、公共電力供給網又は回生型エネルギ源からの電気エネルギを車輛のオン・ボード・トラクション・バッテリへ伝達することができる。
【0004】
ハイブリッド車輛は多くの利点を提供するが、従来の内燃型車輛には存在しない付加的な構成要素も含む。従来の車輛をハイブリッド車輛へ転換するためには、車輛のシャシ及び車輛制御システムに大幅な変更を加えなければならない。例えば、ハイブリッド車輛は、車輪を駆動することが可能であり、また車輪によって駆動されるときには発電器として動作することが可能なモータを含んでいる。ハイブリッド車輛はまた、モータとエネルギ貯蔵装置との間の動力の流れを制御する制御器を含んでいる。ハイブリッド車輛制御器はまた、従来の内燃機関車輛の制御及び/又はハイブリッド動作モードに関係する付加的な入力の制御のために用いられる運転手からの命令を受け取る場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第20070163819号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の車輛をハイブリッド車輛へ転換する一つの方法は、ハイブリッド構成要素を制御するのに用いられる制御器をエンジン制御器に一体化することを含んでいる。この方法は、改造後のエンジン制御器がエンジン構成要素及びモータ構成要素の両方を制御することを可能にするが、エンジン制御器は典型的には、エンジン作用及び車輛作用を制御するためのマイクロプロセッサを含んでいるため、エンジン又はエンジン制御器の改造は困難であり、高経費である。マイクロプロセッサを改造するためには、一般に車輛製造者が独占する特殊な器具及び知識が必要とされる。さらに、空間的制約のため、エンジンと変速機との間に電気駆動システムを結合する能力が制限され得る。結果として、ハイブリッド車輛システムの燃料効率の向上を十分に活用するように従来の車輛をハイブリッド車輛に改造することは、困難であり、極めて高経費になる場合がある。
【0007】
従って、上述の欠点を克服して従来の車輛をハイブリッド車輛へ転換する装置及び方法を提供し得ると望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の各実施形態は、ハイブリッド駆動装置のトルク制御のための装置、及び該装置を製造する方法を提供する。
【0009】
本発明の一観点によれば、装置が、変速機と、変速機の入力側に結合されているエンジンと、変速機の出力側に結合されている電気機械装置とを含んでいる。この装置はまた、電気機械装置の出力側に結合されている差動装置と、電気機械装置に結合されている制御器とを含んでいる。制御器は、走行範囲推定値を受け取り、エンジンの動作特性を監視し、変速機の動作特性を監視するようにプログラムされている。制御器はさらに、電気機械装置の動作特性を監視して、走行範囲推定値、エンジンの動作特性、変速機の動作特性、及び電気機械装置の動作特性に基づいて電気機械装置の動作を制御するようにプログラムされている。
【0010】
本発明のもう一つの観点によれば、ハイブリッド車輛を製造する方法が、内燃機関(ICE)と、変速機と、変速機の出力に結合されている少なくとも1本の駆動シャフトとを含むICE推進システムを設けるステップを含んでいる。この方法はまた、モータ/発電器ユニットを変速機に結合するステップと、ICEのトルク出力の実質的に全てがモータ/発電器ユニットを介して差動装置まで伝達されるように第一の駆動シャフトを介してモータ/発電器ユニットを差動装置に結合するステップと、ICEの動作状態を監視する第一のセンサ・システムを設けるステップとを含んでいる。この方法はさらに、モータ/発電器ユニットの動作状態を監視する第二のセンサ・システムを設けるステップと、制御器をモータ/発電器ユニットに結合するステップとを含んでいる。制御器は、操作者から走行範囲推定値を受け取り、第一のセンサ・システムの出力及び第二のセンサ・システムの出力を受け取って、走行範囲推定値、並びに第一及び第二のセンサ・システムの出力に基づいてモータ/発電器ユニットを動作させるようにプログラムされている。
【0011】
本発明のもう一つの観点によれば、改造キットが、内燃型車輛の変速機と差動装置との間に機械的に結合可能な電気モータと、電気モータに電気的に結合可能なエネルギ貯蔵システムと、電気モータに電気的に結合可能な制御システムとを含んでいる。制御システムは、予測運転範囲に対応する走行推定値を受け取り、電気モータ及び内燃型車輛の動作状態を監視して、走行推定値及び監視されている動作状態に基づいて電気モータを動作させるように構成されている。
【0012】
他の様々な特徴及び利点は以下の詳細な説明及び図面から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面は本発明を実施するために現状で思量される各実施形態を示す。
【図1】本発明の一実施形態によるハイブリッド制御システムを含むハイブリッド車輛の概略図である。
【図2】本発明のもう一つの実施形態によるハイブリッド制御システムを含むハイブリッド車輛の概略図である。
【図3】本発明の一実施形態によるハイブリッド制御システムの概略図である。
【図4】本発明の一実施形態によるハイブリッド車輛の制御法の単純化した動作図である。
【図5】本発明の一実施形態による自動変速機を含むハイブリッド車輛の概略図である。
【図6】本発明の一実施形態によるハイブリッド車輛の制御法の単純化した動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、例えば自動車、トラック、バス、又は一般道路外走行用車輛のようなハイブリッド車輛10を示す。車輛10は、熱エンジン12、エンジン12に結合されている変速機14、差動装置16、及び変速機14と差動装置16との間に結合されている駆動シャフト・アセンブリ18を含んでいる。様々な実施形態によれば、エンジン12は、例えば内燃型ガソリン・エンジン、内燃型ディーゼル・エンジン、外燃機関、又はガス・タービン・エンジンであってよい。エンジン12の動作を制御するためにエンジン制御器20が設けられている。一実施形態によれば、エンジン制御器20は、エンジン12の動作状態を感知するように構成されている1又は複数のセンサ22を含んでいる。センサ22の例としては、RPMセンサ、トルク・センサ、酸素センサ、及び温度センサ等がある。このようなものとして、エンジン制御器20は、エンジン12との間でデータを授受するように構成されている。車輛10はまた、エンジン12のクランク・シャフト速度を測定するエンジン速度センサ24を含んでいる。一実施形態によれば、速度センサ24は、タコメータ(図示されていない)から秒当たりのパルス単位でエンジンのクランク・シャフト速度を測定することができ、この速度を分当たり回転数(RPM)信号へ変換することができる。
【0015】
車輛10はまた、差動装置16のそれぞれの端部に結合されている少なくとも2個の車輪26を含んでいる。一実施形態では、車輛10は、差動装置16が車輛10の後端の近くに配置されているよう後輪駆動車輛として構成され、車輪26の少なくとも一方を駆動するように構成されている。選択随意で、車輛10は前輪駆動車輛として構成されていてもよい。
【0016】
一実施形態では、変速機14は、エンジン12から受け取る入力トルクが複数のギア比を介して乗算されて、駆動シャフト・アセンブリ18を通して差動装置16へ伝達されるような複数のギアを含む手動操作型変速機である。かかる実施形態によれば、車輛10は、エンジン12及び変速機14を選択的に接続したり解除したりするように構成されているクラッチ28を含んでいる。
【0017】
車輛10はまた、駆動シャフト・アセンブリ18に沿って変速機14と差動装置16との間に結合されている電気モータ又は電気モータ/発電器ユニット30のような電気機械装置を含んでおり、エンジン12によって発生される実質的に全てのトルクが、変速機14、及び電気モータ又は電気モータ/発電器ユニット30を介して差動装置16へ伝達されるようにしている。速度センサ32が含まれており、電気モータ30の動作速度を監視する。
【0018】
一実施形態によれば、電気モータ30は変速機14に直接結合され、駆動シャフト・アセンブリ18は、熱エンジン12のトルク出力の実質的に全てが電気モータ30を介して差動装置16まで通過するように、単一の当該駆動シャフトの各々の端部に位置する対を成す一対の自在継手34、36を介して差動装置16に結合されている1本の車軸又は駆動シャフトを含んでいる。電気モータ30と自在継手34との間でトルクを結合するために、スプライン・インタフェイス又はスプライン結合38が設けられる。当業者は、スプライン結合38を電気モータ30に堅固に取り付けてもよいし、又はスプライン結合38を可動にして、車輛10の懸架システムがその行程幅の全体を移動するときの車軸構成要素の運動を収容してもよいことを認められよう。
【0019】
代替的には、図2に示すように、電気モータ30が、駆動シャフト・アセンブリ18の多数の駆動シャフト40、42の間に結合されて、各々の駆動シャフト40、42が各々の端部に位置する対を成す一対の自在継手34、36を含んでいてもよい。すなわち、駆動シャフト40は変速機14と電気モータ30との間に結合され、駆動シャフト42は電気モータ30と差動装置16との間に結合される。図示のように、電気モータ30はスプライン結合38を介して自在継手34に結合される。代替的には、電気モータ30は、当該電気モータ30の片側又は両側でスプライン結合を介さずに自在継手34に結合されていてもよい。
【0020】
さらにもう一つの実施形態によれば、車輛の形式に依存して、3個以上の駆動シャフト・アセンブリ区画を用いて最低地上高を最大化し、又は懸架システムが移動両端の間を移行するときに自在継手が動作しなければならない最大角度を最小化することができる。3個以上の駆動シャフト・アセンブリ又は区画を備えたかかる実施形態は、例えばトラックに用いられ得る。
【0021】
再び図1を参照して述べると、電気モータ30の動作を制御するハイブリッド駆動装置制御システム44が設けられており、このシステム44は、駆動制御46、エネルギ貯蔵システム48、及び利用者インタフェイス50を含んでいる。駆動制御46はモータ/発電器ユニット30に結合されており、トルク制御52及び実効ギア比計算アルゴリズム54を含んでいる。エネルギ貯蔵システム48は駆動制御46に結合されており、例えばナトリウム−ハロゲン化金属バッテリ、ナトリウム−ニッケル塩化物バッテリ、ナトリウム硫黄バッテリ、ニッケル−金属水素化物バッテリ、リチウム・イオンバッテリ、リチウム・ポリマー・バッテリ、ニッケル−カドミウム・バッテリ、複数のウルトラ・キャパシタ・セル、ウルトラ・キャパシタとバッテリとの組み合わせ、又は燃料電池のような複数のエネルギ貯蔵ユニットを含んでいる。利用者インタフェイス50もまた、トルク制御52を介してモータ/発電器ユニット30に結合されている。利用者インタフェイス50は、利用者入力56及び利用者表示58を含んでおり、これらの構成要素の実施形態については図3に関して後に詳述する。
【0022】
また、車輛10にはアクセル・ペダル60及びブレーキ・ペダル62が含まれている。アクセル・ペダル60は、エンジン制御器20及び駆動制御46にスロットル命令信号又はアクセル・ペダル信号64を送るように構成されている。ブレーキ・ペダル62は、トルク制御52に制動圧信号又はブレーキ・ペダル位置信号66を送る。
【0023】
図3は、図1のハイブリッド駆動装置制御システム44のようなハイブリッド駆動装置制御システム68の一実施形態を示す。図3に示すように、制御システム68は、利用者インタフェイス70及び駆動制御72を含んでいる。駆動制御72は、車輛速度、エンジン速度及びエンジン燃料噴射器の負荷サイクル、駆動シャフト速度、モータ速度、並びにモータ・トルクのようなエンジンの動作特性に対応する信号74を受け取る。一実施形態によれば、駆動制御72は、エンジン・マップ、並びに正味燃料消費率、エンジン速度、及び燃料噴射器負荷サイクルについてのルックアップ・テーブルのような熱エンジンの動作及び効率に対応する記憶されているエンジン・データ76を参照する。同様に、駆動制御72は、例えばモータ速度及びモータ・トルクを含めた電気モータ/発電器ユニットの動作特性に対応するモータ信号78を受け取る。駆動制御72はまた、電気駆動システム効率マップ、並びに駆動効率、モータ速度、トルク、及び直流リンク電圧についてのルックアップ・テーブルのような電気モータ/発電器ユニットの動作に対応する記憶されているモータ・データ80を参照する。モータ・マップ及びエンジン・マップ、並びに各ルックアップ・テーブルから参照されるデータは、車輛速度データ84と共にハイブリッド制御器82に入力される。
【0024】
ハイブリッド制御器82はまた、1又は複数の利用者選択可能な設定を有する利用者入力86を含む利用者インタフェイス70と対話する。一実施形態によれば、利用者入力86は、毎日の通勤等の開始時の利用者推定の運転距離のような走行推定値又は推定走行範囲に対応する入力を受け取る。例えば、利用者は、町中の運転のための短距離設定、中距離走行のための中距離設定、及びさらに長距離の走行のための長距離設定のように一日の推定運転距離に対応する一定数の範囲設定の間を多重位置スイッチ又はダイヤルで選択することができる。代替的には、利用者は、次回のバッテリ充電事象(すなわち次回にエネルギ貯蔵システムがプラグ充電されるとき)までの推定運転距離に基づいて距離設定を選択することもできる。範囲設定又は距離設定の数は本書に記載されるものとは異なっていてもよく、例えば所望の精度水準に依存し得ることが思量される。利用者入力86はまた、車輛が従来の燃焼車輛として動作するようにハイブリッド駆動装置を利用者が手動で非作動にすることを可能にする設定を含み得る。さらに、利用者入力86は、例えば加速性能を最大化する「スポーツ・モード」及びバッテリ寿命を延ばし且つ/又は燃料消費を最小化するようにピーク動力消費を最小化する「省エネ・モード」のように利用者が一定数の運転モード設定の間で選択することを可能にする運転モード設定を含んでいてもよい。利用者が選択した設定は利用者入力86からハイブリッド制御器82へ伝達される。
【0025】
ハイブリッド制御器82は、利用者が選択した設定に関する受け取った情報、車輛速度情報、及びモータ・マップ及びエンジン・マップ、並びにルックアップ・テーブルから参照されるデータを用いて、シフト命令を決定する。シフト命令は表示器88に伝達されて視覚型インジケータ90を点灯させ、車輛変速機を「シフト・アップ」させるのか「シフト・ダウン」させるのかを利用者に知らせる。本発明の各実施形態によれば、表示88はまた、故障インジケータ92、及びハイブリッド駆動装置の入/切状態に対応し得る視覚型インジケータ94を含んでいてよい。当業者は、表示88が車輛動作状態又は車輛設定に対応する任意の数の付加的な又は代替的な視覚型インジケータ又は聴覚型インジケータを含み得ることを直ちに認められよう。
【0026】
図4は、図1のハイブリッド車輛10のハイブリッド駆動装置制御システム44のようなハイブリッド車輛の制御システムについての制御法96の単純化した動作図である。図4に示すように、制御法96は、エンジン速度信号98、電気モータ信号100、アクセル・ペダル信号102、及びブレーキ・ペダル信号104を含めた車輛の動作状態に関する一定数の入力を受け取る。制御法96はまた、例えば図3の利用者入力86等から、車輛がプラグ・イン・ハイブリッド車輛(PHEV)である場合にはエネルギ貯蔵システムの次回の予測される再充電までの操作者予測の日間走行範囲推定値又は推定運転範囲に対応し得る操作者入力信号106を受け取る。電気モータ信号100は、例えばモータの速度及び方向に関する情報を含み得る。電気モータ信号100はモータ計算ブロック108を通過し、ここでスケーリングされ且つ/又は定数値を加算される。計算ブロック110では、エンジン速度信号98及びモータ計算ブロック108からの出力112を用いて、車輛の実効ギア比114を算出する。算出された実効ギア比114は低域通過フィルタ116を通過した後にトルク・リミッタ118に入力されて、トルク・リミッタ118が車輛運動の方向及び算出された実効ギア比114に基づいてハイブリッド駆動装置に加えるべきトルク出力120を決定する。
【0027】
アクセル・ペダル信号102は、アクセル・ペダル入力をスケーリングする又は制限する勾配関数122を通過する。関数122からの出力は利得フィルタ124に入力され、利得フィルタ124は操作者入力信号106に基づいて最終的なアクセル入力126を決定する。例えば、利得フィルタ124は、操作者によって入力される日間の範囲又は総マイル数の推定値に基づいてハイブリッド駆動装置制御のための最終的なアクセル入力126を決定するように構成され得る。トルク出力120及び最終的なアクセル入力126を用いて、制御法96はハイブリッド駆動装置アクセル・トルク128を決定し、アクセル・トルク128は電気モータ・トルク・リミッタ130に入力される。動作について述べると、操作者が次回の予測される再充電事象までの予測される相対的に短い日間範囲又は小さい総マイル数を指示すると、ハイブリッド駆動装置制御は、電気モータ・トルクのレベルを高めることを許容し、従って操作者によって比較的長い予測日間範囲又は大きい総マイル数が入力された場合に比較して、オン・ボード貯蔵エネルギの相対的に急速な消耗を許容する。
【0028】
制御法96は、ブレーキ・ペダル信号104をスケーリングして、スケーリング後のブレーキ信号104をブレーキ・トルク・リミット132に渡す。リミット後のブレーキ・トルク信号134及びリミット後のアクセル・トルク信号136を用いて、ハイブリッド駆動装置トルク命令138を算出する。
【0029】
図5は、自動変速機142がトルク・コンバータ146を介して熱エンジン144に結合されている本発明の一実施形態によるハイブリッド車輛140を示す。エンジン制御器148が、熱エンジン144の動作を制御する。アクセル・ペダル150及びブレーキ・ペダル152が車輛システム制御154に電子的に結合されており、車輛システム制御154は信号をエンジン制御148との間で伝達し合い、また一実施形態によれば車輛システム制御154はコンピュータ・エリア・ネットワーク(CAN又はCANバス)を装備し得る。ハイブリッド車輛140はまた、差動装置158に結合されている少なくとも2個の車輪156を含んでいる。電気モータ160が自動変速機142と差動装置158との間で少なくとも1本の駆動シャフト・アセンブリ162に沿って結合されている。一実施形態によれば、駆動シャフト・アセンブリは、当該駆動シャフト・アセンブリの各々の端部に位置する対を成す一対の自在継手(図示されていない)を含んでいる。1又は複数の駆動シャフト・アセンブリを用いて、自動変速機142及び差動装置158を結合することができる。ハイブリッド車輛140はまた、図1のセンサ24、32と同様の態様で構成され得る熱エンジン速度センサ164及び電気モータ速度センサ166を含んでいる。
【0030】
電気モータ160の動作を制御するために、ハイブリッド駆動装置システム168が設けられる。操作者インタフェイス170がハイブリッド駆動装置システム168に結合され、図1の利用者インタフェイス50及び図3の利用者インタフェイス70と同様の態様で構成される。ハイブリッド駆動装置システム168は、ハイブリッド・トルク制御172、実効ギア比計算174、及びエネルギ貯蔵システム176を含んでいる。ハイブリッド車輛140はさらに、ハイブリッド・トルク制御172から信号180を受け取って自動変速機142、トルク・コンバータ146、及び車輛システム制御154とそれぞれの双方向信号182、184、及び186を介して連絡し合う変速機制御ユニット178を含んでいる。
【0031】
動作について述べると、ハイブリッド駆動装置システム168はエンジン速度信号188及び変速機出力速度信号190を受け取って、これらの信号を実効ギア比174を算出するのに用いる。ハイブリッド駆動装置システム168はまた、アクセル・ペダル信号192、並びに制動圧及び/又はブレーキ・ペダル位置に関する情報を含み得るブレーキ信号194を車輛システム制御154から受け取る。ハイブリッド・トルク制御172は、受け取ったアクセル信号及びブレーキ信号192、194、実効ギア比計算174、操作者インタフェイス170から受け取った入力、並びにエネルギ貯蔵システム176の充電状態に基づいて、電気モータ160を動作させる。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、ハイブリッド駆動装置制御168は、回生制動事象時には増大したレベルのエネルギが電気駆動システムに捕獲され得るようにトルク・コンバータ146の動作を変更することができる。例えば、回生制動時に、利用可能な電気モータ・トルク及び関連するエネルギ電荷貯蔵状態(SOC)が適当な水準の範囲内にある場合には、ハイブリッド駆動装置トルク制御172から変速機制御ユニット178への信号180によってトルク・コンバータ146を「ロック解除(unlock)する」ように命令することができる。トルク・コンバータ146をロック解除すると熱エンジン144からの圧縮制動効果を減少させて電気回生トルクの増大が可能になり、これによりエネルギ捕獲が増大して石油燃料消費が少なくなる。
【0033】
もう一つの実施形態では、電気モータ160によって供給されるトルクに比較した熱エンジン144によって供給される相対トルク、及び関連するハイブリッド駆動装置制御168が、車輛140の日間範囲推定値に基づいて割り当てられて、自動変速機142の運転ギア比に影響を与える。かかる実施形態では、エンジン制御器148は、当該エンジン制御148と変速機制御ユニット178との間で選択随意要素の変速機制御信号196(破線で示す)を介した自動変速機142の制御のレベルを提供するように構成される。変速機制御信号196によって、変速機制御ユニット178は、トルク・コンバータ・ロックアップ作用を実行し、且つ/又は自動変速機142へギア・シフト命令を伝達する。例えば、操作者インタフェイス170が短距離走行を示し、且つ「省エネ」モードが選択されている場合には、ハイブリッド駆動装置トルク制御172が変速機シフト命令を伝達すると自動変速機142が「ニュートラル」位置にシフトされ、トルク・コンバータ146に「ロック解除する」命令を与えて、このようにしてハイブリッド車輛140の動作が電気駆動の速度及びトルク限度の範囲内で完全電気モードにおいて実行されることを可能にする。動作時に、操作者の必要が速度又は加速トルクを所定の限度よりも増大させることを要求する場合には、変速機制御ユニット178は自動変速機142及び/又はトルク・コンバータ146に対し、熱エンジン144がアクセル入力及びブレーキ入力150、152を介して操作者の要求を満たすような車輛性能を提供することが可能になるように、本来の構成に復帰するように命令することができる。
【0034】
図6を参照して、本発明の一実施形態による図5の車輛システム制御154のような車輛システム制御器を有するハイブリッド車輛用制御システムの制御法198の単純化した動作図について記載する。図6に示すように、制御法198は、図5のアクセル150からのもののようなアクセル・ペダル信号204に加え、図5のセンサ164、166等からのエンジン速度信号200及び変速機出力シャフト又はモータ速度信号202を受け取る。
【0035】
エンジン速度信号200及びモータ速度信号202を用いて、制御法198は、図4の実効ギア比114に関して記載したのと同様の態様で実効ギア比206を決定する。実効ギア比206は低域通過フィルタ208に渡されて、トルク・リミット関数210に入力される。制御法198は、トルク・リミット関数210からの出力212に基づいて電気駆動部に加えるべきトルクを決定する。
【0036】
制御法198は、勾配関数214及び可変の定数216を用いてアクセル・ペダル信号204を修正する。得られる修正後アクセル信号218及びトルク・リミット関数210からの出力212に基づいて、制御法198はアクセル・ペダル・トルク220を算出し、トルク220は車輛システム制御器へ伝達されて元のアクセル・ペダル信号を置き換える。
【0037】
一実施形態では、例えば内燃機関(ICE)及び変速機、並びにICEに結合されている少なくとも1本の推進用車軸及びICEに結合されていない少なくとも一つの非推進用車軸を含む従来のICE推進システムを有する車輛のようなエンジン駆動式車輛を改造するキットが提供される。このキットは、車輛の推進用車軸に結合し又は車輛の推進用車軸を置換し得る電気モータを含んでいる。このキットはまた、電気モータにエネルギを供給し、またICE及び外部の電力供給網の少なくとも一方からエネルギを受け取る電気モータに結合されているエネルギ貯蔵装置を含んでいる。また、キットにはハイブリッド制御システムが含まれている。ハイブリッド制御システムは、電気モータの動作を監視する第一のセンサ・システムと、ICEの動作を監視する第二のセンサ・システムとを含んでいる。代替的には、ハイブリッド制御システムは、ICE推進システムの内部に設けられたセンサから情報を受け取るように構成されていてもよい。
【0038】
この改造キットはまた、操作者が推定日間走行範囲又はエネルギ貯蔵ユニットを再び充電するまでの推定走行範囲を入力することのできる利用者インタフェイスを含んでいる。この距離推定値に基づいて、ハイブリッド制御システムは、電気モータにトルク命令を伝達する。一実施形態によれば、ハイブリッド制御システムは、変速機シフト命令を決定して、このシフト命令を利用者インタフェイスに表示する。利用者インタフェイスは選択随意で、例えば省エネ・モード及びスポーツ・モードのように一定数の異なる動作モードの間でハイブリッド制御システムの動作を制御する利用者選択可能なスイッチを含んでいてもよい。
【0039】
従って、本発明の一実施形態によれば、装置が、変速機と、変速機の入力側に結合されているエンジンと、変速機の出力側に結合されている電気機械装置とを含んでいる。この装置はまた、電気機械装置の出力側に結合されている差動装置と、電気機械装置に結合されている制御器とを含んでいる。制御器は、走行範囲推定値を受け取り、エンジンの動作特性を監視し、変速機の動作特性を監視するようにプログラムされている。制御器はさらに、電気機械装置の動作特性を監視して、走行範囲推定値、エンジンの動作特性、変速機の動作特性、及び電気機械装置の動作特性に基づいて電気機械装置の動作を制御するようにプログラムされている。
【0040】
本発明のもう一つの実施形態によれば、ハイブリッド車輛を製造する方法が、内燃機関(ICE)と、変速機とを含むICE推進システムを設けるステップを含んでいる。この方法はまた、モータ/発電器ユニットを変速機に結合するステップと、ICEのトルク出力の実質的に全てがモータ/発電器ユニットを介して差動装置まで伝達されるように第一の駆動シャフトを介してモータ/発電器ユニットを差動装置に結合するステップと、ICEの動作状態を監視する第一のセンサ・システムを設けるステップとを含んでいる。この方法はさらに、モータ/発電器ユニットの動作状態を監視する第二のセンサ・システムを設けるステップと、制御器をモータ/発電器ユニットに結合するステップとを含んでいる。制御器は、操作者から走行範囲推定値を受け取り、第一のセンサ・システムの出力及び第二のセンサ・システムの出力を受け取って、走行範囲推定値、並びに第一及び第二のセンサ・システムの出力に基づいてモータ/発電器ユニットを動作させるようにプログラムされている。
【0041】
本発明のもう一つの実施形態によれば、改造キットが、内燃型車輛の変速機と差動装置との間に機械的に結合可能な電気モータと、電気モータに電気的に結合可能なエネルギ貯蔵システムと、電気モータに電気的に結合可能な制御システムとを含んでいる。制御システムは、予測運転範囲に対応する走行推定値を受け取り、電気モータ及び内燃型車輛の動作状態を監視して、走行推定値及び監視されている動作状態に基づいて電気モータを動作させるように構成されている。
【0042】
この書面の記載は、最適な態様を含めて発明を開示し、また任意の装置又はシステムを製造して利用すること及び任意の組み込まれた方法を実行することを含めてあらゆる当業者が本発明を実施することを可能にするように実例を用いている。特許付与可能な発明の範囲は特許請求の範囲によって画定されており、当業者に想到される他の実例を含み得る。かかる他の実例は、特許請求の範囲の書字言語に相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の書字言語と非実質的な相違を有する等価な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0043】
10 ハイブリッド車輛
12 熱エンジン
14 変速機
16 差動装置
18 駆動シャフト・アセンブリ
20 エンジン制御器
22 センサ
24 エンジン速度センサ
26 車輪
28 クラッチ
30 電気モータ/発電器ユニット
32 速度センサ
34、36 自在継手
38 スプライン結合
40、42 駆動シャフト
44 ハイブリッド駆動装置制御システム
46 駆動制御
48 エネルギ貯蔵システム
50 利用者インタフェイス
52 トルク制御
54 実効ギア比計算アルゴリズム
56 利用者入力
58 利用者表示
60 アクセル・ペダル
62 ブレーキ・ペダル
64 アクセル・ペダル信号
66 ブレーキ・ペダル位置信号
68 ハイブリッド駆動装置制御システム
70 利用者インタフェイス
72 駆動制御
74 信号
76 エンジン・データ
78 モータ信号
80 モータ・データ
82 ハイブリッド制御器
84 車輛速度データ
86 利用者入力
88 表示器
90、94 視覚型インジケータ
92 故障インジケータ
96 制御法
98 エンジン速度信号
100 電気モータ信号
102 アクセル・ペダル信号
104 ブレーキ・ペダル信号
106 操作者入力信号
108 モータ計算ブロック
110 計算ブロック
112 出力
114 実効ギア比
116 低域通過フィルタ
118 トルク・リミッタ
120 トルク出力
122 勾配関数
124 利得フィルタ
126 アクセル入力
128 ハイブリッド駆動装置アクセル・トルク
130 電気モータ・トルク・リミッタ
132 ブレーキ・トルク・リミット
134 ブレーキ・トルク信号
136 アクセル・トルク信号
138 ハイブリッド駆動装置トルク命令
140 ハイブリッド車輛
142 自動変速機
144 熱エンジン
146 トルク・コンバータ
148 エンジン制御器
150 アクセル・ペダル
152 ブレーキ・ペダル
154 車輛システム制御
156 車輪
158 差動装置
160 電気モータ
162 駆動シャフト・アセンブリ
164 熱エンジン速度センサ
166 電気モータ速度センサ
168 ハイブリッド駆動装置システム
170 操作者インタフェイス
172 ハイブリッド・トルク制御
174 実効ギア比計算
176 エネルギ貯蔵システム
178 変速機制御ユニット
180 信号
182、184、186 双方向信号
188 エンジン速度信号
190 変速機出力速度信号
192 アクセル・ペダル信号
194 ブレーキ信号
196 変速機制御信号
198 制御法
200 エンジン速度信号
202 変速機出力シャフト又はモータ速度信号
204 アクセル・ペダル信号
206 実効ギア比
208 低域通過フィルタ
210 トルク・リミット関数
212 出力
214 勾配関数
216 可変の定数
218 修正後アクセル信号
220 アクセル・ペダル・トルク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機(14)と、
該変速機(14)の入力側に結合されているエンジン(12)と、
前記変速機(14)の出力側に結合されている電気機械装置(30)と、
該電気機械装置(30)の出力側に結合されている差動装置(16)と、
前記電気機械装置(30)に結合されている制御器(44)と
を備えた装置であって、前記制御器(44)は、
走行範囲推定値を受け取り、
前記エンジン(12)の動作特性を監視し、
前記変速機(14)の動作特性を監視し、
前記電気機械装置(30)の動作特性を監視して、
前記走行範囲推定値、前記エンジン(12)の前記動作特性、前記変速機(14)の前記動作特性、及び前記電気機械装置(30)の前記動作特性に基づいて前記電気機械装置(30)の動作を制御する
ようにプログラムされている、装置。
【請求項2】
前記制御器(44)は、前記エンジン(12)の前記動作特性を監視するようにプログラムされているときに、エンジン速度を監視するようにプログラムされており、
前記制御器(44)は、前記電気機械装置(30)の前記動作特性を監視するようにプログラムされているときに、電気機械装置速度を監視するようにプログラムされている、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御器(44)は、前記エンジン速度及び前記電気機械装置速度に基づいて実効ギア比を決定するようにプログラムされている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御器(44)は、前記走行範囲推定値、前記エンジン(12)の前記動作特性、及び前記電気機械装置(30)の前記動作特性に基づいてギア・シフト命令を発するようにさらにプログラムされている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記制御器(44)に電気的に結合されて前記ギア・シフト命令を操作者に対して表示する表示パネル(58)をさらに含んでいる請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記制御器(44)は、前記電気機械装置(30)の動作を制御するようにプログラムされているときに、エネルギ効率マップに従って前記電気機械装置(30)の動作を制御するようにプログラムされている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記電気機械装置(30)に結合されているエネルギ貯蔵システム(48)をさらに含んでいる請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記変速機(14)は、前記エンジン(12)に結合されているクラッチ(28)を含む手動変速機(14)を含んでいる、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記変速機(14)は、自動変速機(142)及びトルク・コンバータ(146)の少なくとも一方を含んでいる、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記制御器(44)と前記エンジン(12)との間に結合されており、前記自動変速機(142)及び前記トルク・コンバータ(146)の前記少なくとも一方と相互作用するように構成されている変速機制御ユニット(178)をさらに含んでいる請求項9に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−213341(P2011−213341A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65108(P2011−65108)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】