説明

バルブ装置

【課題】 バックラッシュ吸収の機能を果たすバネ手段、またはリターンスプリングの機能を果たすバネ手段を搭載するバルブ装置の体格を小型化する。
【解決手段】 EGR弁体3の回動中心に、EGR弁体3を所定開度へ戻すトーションバー5を配置する。このように、バックラッシュ吸収の機能とリターンスプリングの機能を果たすバネ手段が、EGR弁体3の回動中心に配置されたトーションバー5であるため、EGRバルブ装置1の体格を小型化できる。また、トーションバー5は、共振周波数が非常に高いため、車両振動等が与えられてもトーションバー5が共振する不具合がなく、共振による摩耗や折損を回避することができ、EGRバルブ装置1の信頼性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体通路内に配置された弁体を回動させることで、流体通路の開閉、あるいは流体通路の通路面積の可変を行なうバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体通路内に配置された弁体を回動させることで、流体通路の開閉、あるいは流体通路の通路面積の可変を行なうバルブ装置(EGRバルブ装置等)が広く用いられている。
弁体は、電動アクチュエータ、流体アクチュエータ、手動等を駆動源とした駆動手段によって回動駆動されるものであり、駆動源と弁体との間には、ギヤ機構、リンク機構などよりなる動力伝達手段が介在される。なお、本発明では、駆動源と動力伝達機構を合わせて駆動手段と称する。
【0003】
バルブ装置には、駆動手段におけるバックラッシュの吸収を行なうためのネジリコイルバネ、あるいは弁体を初期位置(例えば、全閉位置、全開位置、中間開度位置など)へ戻すためのネジリコイルバネを搭載するものが知られている。
このネジリコイルバネは、巻き径を有する。このため、バルブ装置にネジリコイルバネを搭載することでバルブ装置の体格が大きくなる不具合があった。
【0004】
具体的な例として、図10に示すEGRバルブ装置1を参照して従来技術の問題点を説明する。なお、符号は後述する実施例等に合わせて、同一機能物に同一符号を付したものである。
図10に示すEGRバルブ装置1は、駆動手段4の出力軸、および駆動シャフト7の外周を覆うようにネジリコイルバネNCを配置している。しかるに、駆動手段4の出力軸、および駆動シャフト7の外周に、径の大きいネジリコイルバネNCを配置することで、EGRバルブ装置1の体格が大きいものになってしまう(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
一方、ネジリコイルバネNCは、巻き径を有するために共振周波数(固有振動数)が比較的低い。このため、EGRバルブ装置1に用いられるネジリコイルバネNCは、車両振動等によって共振しやすい。共振が生じてしまうと、ネジリコイルバネNCにおける線間摩耗が生じたり、折損等が生じる懸念がある。そこで、従来のEGRバルブ装置1では、トライアンドエラーを繰り返してネジリコイルバネNCを設計しなければならないという不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−233063号公報
【特許文献2】特開2007−24242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、少なくともバックラッシュ吸収の機能、あるいはリターンスプリングの機能を果たすためのバネ手段を搭載するバルブ装置の体格を小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔請求項1の手段〕
請求項1の手段のバルブ装置は、弁体の回動中心(軸芯)に配置されたトーションバーによって、弁体の開度を所定開度へ戻す構成を採用する。これにより、トーションバーが、少なくともバックラッシュ吸収の機能、あるいはリターンスプリングの機能を果たす。 このように、バックラッシュ吸収の機能、あるいはリターンスプリングの機能を果たすバネ手段が、弁体の回動中心に配置されたトーションバーであるため、バルブ装置の体格を小型化することができる。
また、弁体の回動中心に配置されるトーションバーは、棒状を呈するバネであるため、従来用いられていたネジリコイルバネに比較して共振周波数が高い。このため、ネジリコイルバネを用いた場合に共振するような環境下(例えば、車両搭載の環境下)においても、トーションバーでは共振する不具合がなく、共振による摩耗や折損等を回避することができ、バルブ装置の信頼性を高めることができる。
【0009】
〔請求項2の手段〕
請求項2の手段のバルブ装置における流体通路は、エンジンの排気ガスの一部を吸気側へ戻すEGR流路であり、弁体はエンジンに戻されるEGR量の調整を行なうEGR弁体である。
【0010】
〔請求項3の手段〕
請求項3の手段のバルブ装置における流体通路は、エンジンに燃焼用の空気を導く吸気通路であり、弁体はエンジンに吸い込まれる吸気量を調整するスロットル弁体、あるいは吸気通路の内部に負圧を発生させるための吸気弁体である。
【0011】
〔請求項4の手段〕
請求項4の手段のバルブ装置は、2つの弁体を備え(例えば、低圧EGR弁体と吸気弁体)、駆動手段に搭載された1つの電動モータの出力により、2つ設けられた弁体をそれぞれ回動操作するものである。そして、各弁体のそれぞれの回動中心には、それぞれの弁体を、それぞれの所定開度へ戻すトーションバーが配置されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】EGRバルブ装置の概略断面図である(実施例1)。
【図2】EGR弁体をEGR流路の上流側より見た図、およびEGR弁体におけるプレス成形品の展開図である(実施例1)。
【図3】EGR弁体の回転角度と、開度(Q)との関係を示すグラフである。
【図4】EGR弁体を片持ち支持するタイプのEGRバルブ装置の断面図である(実施例2)。
【図5】EGR弁体を両持ち支持するタイプのEGRバルブ装置の断面図である(実施例3)。
【図6】2つの弁体(EGR弁体と吸気弁体)を駆動手段に搭載された1つの電動モータにより駆動するバルブ装置の断面図である(実施例4)。
【図7】リンク機構の説明図である(実施例4)。
【図8】エンジンの吸排気システムの概略図である。
【図9】EGR弁体の回転角度に応じたEGR弁体の開度(Q)と、吸気弁体の開度(Q)との関係を示すグラフである(実施例4)。
【図10】EGRバルブ装置の断面図である(従来例)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して[発明を実施するための形態]を説明する。
EGRバルブ装置1(バルブ装置の一例)は、EGRガス(流体の一例)を吸気側へ戻すEGR流路2(流体通路の一例)の内部において回動可能に支持され、回動によりEGR流路2の開閉、あるいは開度調整を行なうEGR弁体3(弁体の一例)と、このEGR弁体3を駆動する駆動手段4(例えば、電動モータ+歯車減速機構等)とを具備する。
そして、EGR弁体3の回動中心には、EGR弁体3を全閉位置(所定開度の一例)へ戻すトーションバー5が配置される。
【実施例1】
【0014】
次に、本発明を車両エンジンに搭載されるEGR装置のEGRバルブ装置1に適用した実施例1を、図1〜図3を参照して説明する。なお、本実施例において、上記[発明を実施するための形態]と同一符号は、同一機能物を示すものである。
〔EGR装置の説明〕
EGR装置は、エンジンの排出した排気ガスの一部をEGRガスとしてエンジンの吸気側に戻すことで、吸気の一部に不燃ガスであるEGRガスを混入させてエンジン燃焼室の燃焼温度を抑え、効果的に窒素酸化物(NOx)の発生を抑える装置である。
EGR装置は、排気通路を流れる排気ガスの一部を吸気通路へ戻すEGR流路2と、このEGR流路2の開度調整を行なうEGRバルブ装置1とを少なくとも備えるものであり、このEGRバルブ装置1が車両の走行状態に応じてECU(エンジン・コントロール・ユニットの略)によって開度制御される。
【0015】
なお、実施例1に示すEGRバルブ装置1は、吸気通路における高負圧発生範囲(スロットル弁体の吸気下流側)へEGRガスを戻す高圧EGR装置(図8の符号H参照)に搭載される高圧EGRバルブ装置であっても良いし、吸気通路における低負圧発生範囲(スロットル弁体の吸気上流側:例えばターボチャージャ搭載車両であればコンプレッサの吸気上流側)へEGRガスを戻す低圧EGR装置(図8の符号L参照)に搭載される低圧EGRバルブ装置であっても良い。
【0016】
次に、図1を参照して、EGRバルブ装置1を説明する。なお、以下では、図1におけるEGR流路2を基準として駆動手段4が配置される側(図1の上側)を上、駆動手段4が配置される側とは異なる側(図1の下側)を下と称して説明するが、この上下は実施例の説明のための方向であり、限定されるものではない。
EGRバルブ装置1は、EGR流路2の内部に配置されるEGR弁体3と、このEGR弁体3を駆動する駆動手段4と、EGR流路2を形成するハウジング6と、EGR弁体3を支持する駆動シャフト7および従動シャフト8とを備える。
【0017】
EGR弁体3は、バタフライ弁であり、回動位置に応じてEGR流路2を開閉可能であるとともに、EGR流路2の開口面積を可変可能であり、EGR流路2の開口面積を可変することで吸気通路へ戻されるEGR量の調整を行なうものである。
駆動手段4は、ハウジング6の上部に固定されて、駆動シャフト7を回動駆動するものであり、通電により回転動力を発生する周知の電動モータ21(符号、図4参照)と、この電動モータ21の回転を減速して出力トルクを増大化させる歯車減速機構22(符号、図4参照)とを組み合わせてなる。
【0018】
ハウジング6の主要部は、アルミニウム合金のダイキャスト製であり、高温のEGRガスが流れるEGR流路2の内壁が耐熱性、耐腐食性に優れた部材(例えば、ステンレス鋼)によって設けられている。
ここで、この実施例1のEGRバルブ装置1は、図1に示すように、EGR流路2の中心線と、EGR弁体3を駆動する駆動シャフト7の中心線とが傾斜配置されるものである。
【0019】
従来のEGRバルブ装置1では、EGR弁体3の回動に伴う開度変化の特性をサイン曲線よりも直線特性に近づける目的と(図3の破線A参照)、バルブ精度を高める目的とで、図10に示すように、EGR弁体3が総切削(削出し)に近い制作技術によって作られてEGR弁体3の板厚が厚く設けられるとともに、駆動シャフト7がEGR流路2の中心部まで深く挿入配置されていた。
このため、図10に示す従来のEGRバルブ装置1では、全開時において、厚いEGR弁体3と、深く挿入配置された駆動シャフト7とにより、EGR流路2を塞ぐ面積が大きくなってしまい、通気抵抗の増大(圧力損失が大きい)によって全開時のEGR量が低下してしまう。
【0020】
この実施例1は、上記の問題点を解決するために、以下に示す技術を採用している。
駆動シャフト7の下端をEGR弁体3の上端に連結させて、EGR流路2の内部に挿入される駆動シャフト7の挿入量を極力小さくする。
同様に、従動シャフト8の上端をEGR弁体3の下端に連結させて、EGR流路2の内部に挿入される従動シャフト8の挿入量を極力小さくする。
即ち、図1に示すように、駆動シャフト7と従動シャフト8とが、EGR流路2の内部で離れた状態で配置される。
【0021】
EGR弁体3は、駆動シャフト7と従動シャフト8の間に支持されるものであって、EGR流路2を開閉可能な円板弁10と、この円板弁10の上部において駆動シャフト7の下端に連結される第1弁支持部11と、円板弁10の下部において従動シャフト8の上端に連結される第2弁支持部12とからなり、円板弁10の板面に沿う方向から見て(図1参照)、円板弁10、第1、第2弁支持部11、12の3者によって略Z字形状を成すものである。
【0022】
この円板弁10、第1、第2弁支持部11、12の3者は、1枚の金属板からプレス加工によって形成されたものである。このように、プレス成形品で設けることで、EGR弁体3の精度が総切削に近い従来品に比較して低下してしまう。そこで、プレス成形した円板弁10の周囲にシールリング13を設けて、EGR弁体3の精度低下を無くすように設けられている。
具体的に、この実施例では、シールリング13が円板弁10の外周縁をインサート成形することで、プレス成形品よりなるEGR弁体3の精度低下を無くしている。即ち、プレス成形品に生じた精度誤差を無くすようにシールリング13を形成することで、閉弁時にシールリング13の外周縁がEGR流路2の内周壁に一致するように設けられている。
【0023】
この実施例のシールリング13は、耐熱性樹脂により形成されるものであり、図2(a)に示すように、円板弁10の外周縁を全周に亘って樹脂の内部にインサートするものである。
円板弁10には、図2(b)に示すように、樹脂固定用穴14が多数形成されており、プレス成形品よりなる円板弁10と樹脂製のシールリング13との結合力を高めることで、長期に亘って円板弁10からシールリング13が分離しないように設けられている。
【0024】
駆動シャフト7は、耐熱性、耐腐食性に優れた部材(例えば、ステンレス鋼)よりなる円柱棒状を呈し、ハウジング6の上側において上下方向に延びて配置されるものであり、ハウジング6に取り付けられた軸受15によって回転自在に支持されるものである。なお、軸受15は、ボールベアリング、ローラベアリング等の転がりベアリング、あるいはメタルベアリング等の滑りベアリングであり、ハウジング6に形成されたベアリング収容筒の内部に圧入等の結合手段によって固定されて、内周に挿通された軸材を回転自在に支持する。
【0025】
駆動シャフト7の下端は、EGR弁体3の上部(具体的には、第1弁支持部11)と一体に回転するように連結されるものである。具体的な連結手段として、この実施例では、回り止め嵌合(例えば、2面幅嵌合やキー溝嵌合など)と、溶接技術(またはサークリップ等の他の固定手段でも良い)とを用いて、駆動シャフト7の下端とEGR弁体3とが一体に回転するように連結される。
【0026】
従動シャフト8は、耐熱性、耐腐食性に優れた部材(例えば、ステンレス鋼)よりなる円柱棒状を呈するものであり、ハウジング6の下側において上下方向に延びて配置され、EGR弁体3の下部(具体的には、第2弁支持部12)を回転自在に支持するものである。
この実施例における従動シャフト8は、圧入によってハウジング6に固定され、従動シャフト8と第2弁支持部12との連結部分に軸受構造を設けたものである。なお、この実施例では、第2弁支持部12にバーリングによって摺動筒16を形成して、従動シャフト8と第2弁支持部12との接触面積を増やし、軸受部分の摩耗を抑えている。
【0027】
この実施例1では、上述したように、駆動シャフト7および従動シャフト8によりEGR流路2内へのシャフト挿入量を抑える技術と、プレス成形品よりなる略Z字形状を呈するEGR弁体3を用いる技術とにより、全開時にEGR流路2の開口面積をEGR弁体3が塞ぐ割合を極めて小さく抑えることができ、全開時における流路抵抗を極めて小さくできる。即ち、全開時におけるEGRバルブ装置1の圧力損失を極めて小さくすることができる。
具体的には、駆動シャフト7の回動変化により、EGR流路2の開口面積が、全開側において図3の実線Bに示すように変化する。
これによって、全開側でEGRガスを大量に流すことができ、EGRバルブ装置1を超低圧損化することができる。あるいは、全開時の開口面積を大きくできるため、EGRバルブ装置1を小型化することができる。
【0028】
〔実施例1の特徴技術〕
この実施例1に示す超低圧損のEGRバルブ装置1では、上述したように、駆動手段4を介してEGR弁体3が駆動されるものであり、電動モータ21の回転出力が、歯車減速機構22を介して駆動シャフト7に伝達されて、駆動シャフト7と一体にEGR弁体3が回動する構造を採用している。
EGRバルブ装置1には、動作可能な機械要素(例えば、歯車減速機構22の歯車列など)を動かすためのバックラッシュ(隙間)が存在する。しかし、振動等により反転した回転トルクが加えられた時には、バックラッシュにより機械要素に衝撃が生じることがある。
【0029】
そこで、バックラッシュ吸収用のバネ手段を搭載したEGRバルブ装置1が知られている。バックラッシュ吸収用のバネ手段は、EGRバルブ装置1に対して一定方向のトルクを付与して、付勢力により機械要素を当接させることで、バックラッシュを吸収するものである。
【0030】
具体的に、図10に示すように、従来のEGRバルブ装置1でも、バックラッシュ吸収用のバネ手段を搭載するものが提案されていた。従来技術のバネ手段は、ネジリコイルバネNCを用いたものであるため、ネジリコイルバネNCの配置位置を工夫しても、EGRバルブ装置1の体格が大きくなる不具合があった。
また、ネジリコイルバネNCは、共振周波数が比較的低いため、車両振動等によって共振しやすく、共振により線間摩耗が生じたり、折損等が生じる懸念がある。そこで、従来のEGRバルブ装置1では、トライアンドエラーを繰り返してネジリコイルバネNCを設計しなければならなかった。
【0031】
この実施例1は、上記の不具合を解決するために、次の技術的手段を採用している。
実施例1のEGRバルブ装置1が採用するバックラッシュ吸収用のバネ手段は、EGR弁体3の回動中心に配置された直線棒状を呈するトーションバー5(ネジリ棒バネ)である。
このトーションバー5は、EGR弁体3の回動中心に配置されるものであり、トーションバー5の上端が駆動シャフト7(または駆動手段4の出力軸)にカシメまたは溶接技術により固定され、トーションバー5の下端がハウジング6に圧入固定された従動シャフト8にカシメまたは溶接技術により固定されるものである。このようにトーションバー5が結合されることで、トーションバー5の復元力により回動したEGR弁体3の開度が所定開度へ戻される。
【0032】
ここで、トーションバー5は、リターンスプリングとしても作用する。この実施例1では、EGRバルブ装置1がノーマリクローズタイプ(通電停止時にEGR弁体3がEGR流路2を閉じるタイプ)となるように、トーションバー5がEGR弁体3を全閉位置(所定開度の一例)へ戻すように、トーションバー5の下端が固定されている。
【0033】
また、トーションバー5は、有効長が極力長くなるように設けられている。
具体的にこの実施例では、駆動シャフト7の上端部とトーションバー5の上端が結合し、その結合部の下側の駆動シャフト7の内側には、トーションバー5が挿通される上部挿通穴17が形成されている。
また、従動シャフト8の下端部とトーションバー5の下端が結合し、その結合部の上側の従動シャフト8の内側には、トーションバー5が挿通される下部挿通穴18が形成されている。
【0034】
さらに、図2(b)に示すように、円板弁10の中心部には、トーションバー5を挿通配置するための打抜穴19が形成されている。この打抜穴19は、図2(a)に示すように、円板弁10に固着された閉塞部材20により閉塞される。この閉塞部材20は、打抜穴19内においてトーションバー5と円板弁10との間の隙間を埋める部材であり、シールリング13を形成する樹脂によってシールリング13と一体に形成されるものである。そして、閉塞部材20の中心部には、トーションバー5が挿通配置される挿通穴20aが形成されている。この挿通穴20aとトーションバー5との間には、微細な摺動クリアランスのみが形成されるものであり、トーションバー5の挿通部からのEGRガスの漏れが防がれる。
【0035】
(実施例1の効果)
この実施例1のEGRバルブ装置1は、上述したように、EGR弁体3の回動中心に配置されたトーションバー5によって、EGR弁体3の開度が全閉位置へ戻る構成を採用する。これにより、トーションバー5が、バックラッシュ吸収の機能とリターンスプリングの機能を果たす。
このように、バックラッシュ吸収の機能とリターンスプリングの機能を果たすバネ手段が、EGR弁体3の回動中心に配置されたトーションバー5であるため、EGRバルブ装置1の体格を小型化することができる。
また、トーションバー5は、従来用いられていたネジリコイルバネNCに比較して共振周波数が非常に高い。このため、車両振動等が与えられてもトーションバー5が共振する不具合がなく、共振による摩耗や折損等を回避することができ、EGRバルブ装置1の信頼性を高めることができる。
【実施例2】
【0036】
実施例2を図4を参照して説明する。なお、以下の実施例において、上記実施例1と同一符号は、同一機能物を示すものである。
上記の実施例1では、EGR流路2中へのシャフト挿入量を極力減らし、且つEGR弁体3をプレス成形品を用いて薄型化した超低圧損のEGRバルブ装置1に本発明を適用する例を示した。
これに対し、この実施例2は、EGR弁体3を従来技術と同様、総切削に近い制作技術によって製造するとともに、EGR弁体3を上側の駆動シャフト7のみで片持ち支持するEGRバルブ装置1に本発明を適用するものである。
【0037】
なお、この実施例のトーションバー5は、駆動シャフト7の中心に挿通配置されるものであり、トーションバー5の上端が駆動シャフト7の上端(または駆動手段4の出力軸)に固定され、トーションバー5の下端がハウジング6に圧入された圧入部材23を介して固定されるものである。もちろん、EGR弁体3に対してトーションバー5が相対変位できるように、EGR弁体3とトーションバー5の間には微細な摺動クリアランスが設けられるものである。
【実施例3】
【0038】
実施例3を図5を参照して説明する。
上記の実施例2では、EGR弁体3を片持ち支持するEGRバルブ装置1に本発明を適用する例を示した。
これに対し、この実施例3は、下方まで延ばした駆動シャフト7によりEGR弁体3を両持ち支持するEGRバルブ装置1に本発明を適用したものである。具体的には、EGR弁体3に駆動力を付与する駆動シャフト7が、EGR弁体3の上下にそれぞれ配置された軸受15によって回転支持される構造のEGRバルブ装置1に本発明を適用するものである。
【実施例4】
【0039】
実施例4を図6〜図9を参照して説明する。
この実施例4は、エンジンに燃焼用の空気を導く吸気通路32の内部に負圧を発生させるための吸気バルブ装置31にも、本発明を適用するものである。
この実施例4では、低圧EGRバルブ装置1’と吸気バルブ装置31とを1つの駆動手段4により駆動する複合バルブ装置を示す。なお、低圧EGRバルブ装置1’は、上述したEGRバルブ装置1と同一の機能を果たすものである。
【0040】
具体的に、この実施例4は、駆動手段4に搭載された1つの電動モータ21の出力により、低圧EGRバルブ装置1’に搭載される低圧EGR弁体3’と、吸気バルブ装置31に搭載される吸気弁体33とをそれぞれ回動操作するものであり、図6に示すように、低圧EGR弁体3’の回動中心に低圧EGR弁体3’の開度を全閉位置へ戻す付勢力を与える低圧EGRバルブ用のトーションバー5を配置するとともに、吸気弁体33の回動中心に吸気弁体33の開度を全開位置へ戻す付勢力を与える吸気バルブ用のトーションバー5’を配置するものである。
【0041】
次に、この実施例4のバルブ装置の適用例を、図8、図9を参照して説明する。
車両用のエンジンの吸排気システムには、高圧EGR装置Hとは別に、低圧EGR装置Lを搭載するものが提案されている。
高圧EGR装置Hは、排気圧の高い排気通路34の排気上流側と、吸気負圧の大きい吸気通路32の吸気下流側とを接続して、多量のEGRガスをエンジンへ戻すことを得意とする排気ガス再循環装置である。
【0042】
低圧EGR装置Lは、排気圧の低い排気通路34の排気下流側と、吸気負圧の小さい吸気通路32の吸気上流側とを接続して、少量のEGRガスをエンジンに戻すことを得意とする排気ガス再循環装置であり、排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路32の吸気上流側に戻す低圧EGR流路2’を備えている。低圧EGR流路2’の具体的な一例としては、DPF34aより排気下流側の排気通路34と、ターボチャージャのコンプレッサ32aより吸気上流側の吸気通路32とを接続するものである。
【0043】
実施例4の低圧EGR弁体3’は、低圧EGR流路2’の開閉および開度調整を行なうものである。
また、実施例4の吸気弁体33は、吸気通路32における低圧EGR流路2’の接続部分の吸気上流の開度を可変するものであり、吸気通路32における低圧EGR流路2’の接続部分に吸気負圧を発生させるためのものである。ここで、吸気弁体33は、吸気通路32を最大に絞った状態であっても、吸気通路32の一部を開放するように設けられるものである(図9の破線Yの最小開度参照)。なお、図9の実線Xは低圧EGR弁体3’の回転角に対する低圧EGR弁体3’の開度を示し、破線Yは低圧EGR弁体3’の回転角に対する吸気弁体33の開度を示すものである。
【0044】
低圧EGR装置Lは、少量のEGRガスをエンジンに戻すことを得意とする。しかるに、低圧EGR装置Lを用いて多量のEGRガスをエンジンへ戻したい運転領域が存在しても、低吸気負圧発生範囲にEGRガスを戻す構造の低圧EGR装置Lでは多量のEGRガスをエンジンへ戻すことが困難である。
そこで、低圧EGR装置Lは、吸気通路32における低圧EGR流路2’の接続部分に吸気負圧を発生させるための吸気弁体33を設け、低圧EGR装置Lにおいて大きなEGR量を得たい運転領域では、吸気弁体33を閉じる方向(吸気負圧が発生する方向)に開度制御し、低圧EGR装置Lにおいて多量のEGRガスをコントロールする。
【0045】
しかし、吸気弁体33は、低圧EGR装置Lを用いて多量のEGRガスをエンジンへ戻す運転領域でのみ、負圧を発生するべく吸気弁体33の開度を小さくする必要があり、他の運転領域では吸気弁体33が負圧を発生しないように吸気弁体33の開度を最大にする必要がある。
低圧EGR弁体3’と吸気弁体33は、それぞれが別の運転要因に基づいて開度が設定される。
このため、既存の技術では、低圧EGR弁体3’を駆動するための専用の電動アクチュエータと、吸気弁体33を駆動するための専用の電動アクチュエータとが必要となり、コストアップ、体格アップ、重量アップの要因になっていた。
【0046】
そこで、この実施例4では、1つの駆動手段4により、低圧EGR弁体3’に要求される開度と、吸気弁体33に要求される開度とを達成するようにしている。
1つの駆動手段4で低圧EGR弁体3’と吸気弁体33の開度要求を満足するために、駆動手段4は、電動モータ21、歯車減速機構22とは別に、リンク機構Rを搭載している。
低圧EGR弁体3’は、電動モータ21により駆動される歯車減速機構22の出力軸に連結され、歯車減速機構22により駆動される。
吸気弁体33は、低圧EGR弁体3’の回転変位を、吸気弁体33に要求される開度に変換するリンク機構Rによって駆動される。
【0047】
リンク機構Rは、図7に示すものであり、低圧EGR弁体3’と一体に回転するリンクプレート35と、吸気弁体33と一体に回転するリンクレバー36とを備える。リンクプレート35には、カム溝37が形成されており、リンクレバー36にはカム溝37に嵌まり合う噛合ピン38(例えば、回転自在に支持されたローラ等)が設けられている。
【0048】
カム溝37のカムプロフィールは、2つの溝形状を組み合わせたものである。
カム溝37における一方の溝形状は、低圧EGR弁体3’の回転中心と同一中心の円弧溝であり、低圧EGR弁体3’の開度が低圧EGR流路2’を最大に絞る開度(図9のEGR側回転角度=0°)から所定切替開度Zに至る閉弁側開度範囲(開度0°〜開度Zの角度範囲)において、吸気弁体33の開度を最大開度に保つように設けられている。
【0049】
カム溝37における他方の溝形状は、低圧EGR弁体3’の回転中心と同一中心の円弧溝に対して所定の角度で変化する溝(円弧溝、直線溝など)であり、低圧EGR弁体3’の開度が所定切替開度Zから最大開度(図9のEGR側回転角度=90°)に変化するに従い、リンクレバー36を回動させて、吸気弁体33の開度を最大開度から吸気通路32を閉じる方向に回動させるように設けられている。
上記の構成を採用することで、1つの電動モータ21によって低圧EGR弁体3’と吸気弁体33の両方を駆動でき、且つ図9に示すように、低圧EGR弁体3’に要求される特性と吸気弁体33に要求される特性の両方を満足することができる。
【0050】
そして、上述したように、低圧EGR弁体3’の回動中心に低圧EGR弁体3’の開度を全閉位置へ戻す付勢力を与えるトーションバー5を配置することで、歯車減速機構22のバックラッシュを吸収することができるとともに、吸気弁体33の回動中心に吸気弁体33の開度を全開位置へ戻す付勢力を与えるトーションバー5’を配置することで、リンク機構Rのバックラッシュを吸収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
トーションバー5によって戻される弁体の所定開度は、全閉位置であっても良いし、全開位置であっても良いし、全閉と全開の中間位置(ハーフ開度)であっても良い。
上記の実施例では、本発明をEGRバルブ装置1(低圧EGRバルブ装置1’を含む)または吸気バルブ装置31に適用する例を示したが、エンジンに吸い込まれる吸気量を調整するスロットルバルブ装置に本発明を適用しても良い。さらに、制御対象の流体は排気ガスや吸気に限定されるものではなく、気体流体や液体流体の開閉や、流量または圧力調整を行なう他のバルブ装置に本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 EGRバルブ装置
1’低圧EGRバルブ装置
2 EGR流路(流体通路)
2’低圧EGR流路(流体通路)
3 EGR弁体
3’低圧EGR弁体
4 駆動手段
5 EGRバルブ装置(または低圧EGRバルブ装置)に用いられるトーションバー
5’吸気バルブ装置に用いられるトーションバー
21 電動モータ
22 歯車減速機構
31 吸気バルブ装置
32 吸気通路(流体通路)
33 吸気弁体
R リンク機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が通過可能な流体通路(2、2’、32)の内部において回動可能に支持され、回動により前記流体通路の開閉、あるいは開度調整を行なう弁体(3、3’、33)と、
この弁体を駆動する駆動手段(4)と、
を具備するバルブ装置(1、1’、31)において、
前記弁体における回動中心には、前記弁体の開度を所定開度へ戻すトーションバー(5、5’)が配置されていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブ装置において、
前記流体通路は、エンジンの排気ガスの一部を吸気側へ戻すEGR流路(2)であり、 前記弁体は、前記エンジンに戻されるEGR量の調整を行なうEGR弁体(3)であることを特徴とするバルブ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のバルブ装置において、
前記流体通路は、エンジンに燃焼用の空気を導く吸気通路(32)であり、
前記弁体は、前記エンジンに吸い込まれる吸気量を調整するスロットル弁体、あるいは前記吸気通路(32)の内部に負圧を発生させるための吸気弁体(33)であることを特徴とするバルブ装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のバルブ装置において、
このバルブ装置は、2つの前記弁体(3’、33)を備える複合バルブ装置であり、前記駆動手段(4)に搭載される1つの電動モータ(21)の出力により、2つの前記弁体(3’、33)をそれぞれ回動操作するものであり、
各弁体(3’、33)のそれぞれの回動中心には、それぞれの前記弁体を、それぞれの所定開度へ戻す前記トーションバー(5、5’)が配置されていることを特徴とするバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−265923(P2010−265923A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115612(P2009−115612)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】