説明

バルブ装置

【課題】大きなコストアップや大型化を招くことなく、閉弁状態において弁室内の流体が所定圧以上となった場合に、当該バルブ装置を含むシステムに破損等が生じないように、弁室から流体を自動的に逃がすことのできるバルブ装置を提供する。
【解決手段】主弁座部材62は軸方向に移動可能とされるとともに、弁室21に主弁座部材62が接離する逃がし弁口66を有する逃がし弁座65が設けられ、該逃がし弁座65と、主弁座部材62と、該主弁座部材62を逃がし弁口66を閉じる方向に付勢するばね部材67とで、主弁口63が弁体部24により閉じられている全閉状態で、弁室21内の流体圧力が所定圧以上となった場合に、弁室21内の圧力を第2入出口12へ自動的に逃がす逃がし弁60が構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式冷暖房システム等に組み込まれて使用されるバルブ装置に係り、特に、閉弁状態において弁室内の流体が高圧となった場合に、該流体を逃がすことのできる逃がし弁の機能を備えた電動弁や電磁弁等のバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヒートポンプ式冷暖房システムとして、圧縮機、室外熱交換器、室内熱交換器、四方切換弁等の他、省エネ効率等を向上させるため、通常は一つでよい膨張弁を二つ備え、さらに、圧力損失を可及的に低減するため、それら二つの膨張弁にそれぞれ並列に逆止弁を組み込んだもの(逆止弁付き膨張弁としたもの)が知られている(例えば、下記特許文献1の図6を参照)。
【0003】
また、最近では、その二つの逆止弁付き膨張弁のうちの少なくとも一方を電子制御式電動弁に置き換えることが考えられている(下記特許文献2を参照)。
【0004】
かかる逆止弁付き膨張弁として働く電子制御式電動弁を備えたヒートポンプ式冷暖房システムの一例を図11に示す。図示例のヒートポンプ式冷暖房システム100は、圧縮機101、四方切換弁102、室外熱交換器103、室内熱交換器104の他、上記二つの逆止弁付き膨張弁の一方である逆止弁106B付き膨張弁106、上記二つの逆止弁付き膨張弁の他方として働く電子制御式電動弁10’、ディストリビュータ108、冷媒回収用タンク120、メンテナンス用のサービスバルブ(手動操作)121、122を備えている。
【0005】
詳細には、二つのサービスバルブ121、122(通常は全開状態)より右側の室外側(室外熱交換器103側)に電動弁10’及び冷媒回収用タンク120が配置され、二つのサービスバルブ121、122より左側の室内側(室内熱交換器104側)に逆止弁106B付き膨張弁106配置されている。逆止弁付き膨張弁106の膨張弁106Aとしては感温式(機械式)のものが用いられており、この膨張弁106Aに並列に逆止弁106Bが配置されている。
【0006】
この冷暖房システム100においては、冷房運転時には、圧縮機101で圧縮された冷媒は、図の実線矢印で示される如くに、四方切換弁102(のポートa→d)を介して室外熱交換器103に導入され、ここで外気と熱交換して凝縮し、この凝縮した冷媒がディストリビュータ108、電動弁10’(このときは最大開度)、及びサービスバルブ121を介して膨張弁106に流入し、ここで断熱膨張した後、室内熱交換機104に流入し、室内熱交換機104にて室内空気と熱交換して蒸発し、室内を冷房する。室内熱交換機104を出た冷媒は、サービスバルブ122及び四方切換弁102(のポートb→c)を介して圧縮機101に吸入される。
【0007】
それに対し、暖房運転時には、圧縮機101で圧縮された冷媒は、図の破線矢印で示される如くに、四方切換弁102(のポートa→b)、サービスバルブ122を介して室内熱交換器104に導入され、ここで室内空気と熱交換して凝縮し、室内を暖房した後、逆止弁106Bを通って(膨張弁106Aをバイパスして)、電動弁10(このときは冷媒温度に応じて開度調整)に流入し、ここで減圧された後、ディストリビュータ108を介して室外熱交換器103に導入され、ここで蒸発した後、四方切換弁102(のポートd→c)を介して圧縮機101に吸入される。
【0008】
次に、上記した如くの冷暖房システム100に用いられる電子制御式電動弁10’の一例を図10を参照しながら説明する。図示例の電動弁10’は、下部大径部25aと上部小径部25bを有し、前記下部大径部25aの下端部に特定形状(それぞれ所定の中心角を持つ二段の逆円錐台状)の弁体部24が一体に設けられた弁軸25と、弁室21を有する弁本体20と、この弁本体20にその下端部が密封接合されたキャン40と、このキャン40の内周に所定の間隙αをあけて配在されたロータ30と、このロータ30を回転駆動すべく前記キャン40に外嵌されたステータ50と、前記ロータ30と前記弁体部24との間に配在され、前記ロータ30の回転を利用して前記弁体部24を前記弁口22aに接離させるねじ送り機構とを備え、弁体部24のリフト量を変化させることにより冷媒の通過流量を調整するようになっている。
【0009】
前記弁本体20の弁室21には、前記弁体部24が接離する弁口(オリフィス)22aが形成された弁座22が設けられ、側方に導管継手からなる第1入出口11が設けられ、また、弁本体20の下部には、前記弁口22aに連なって導管継手からなる第2入出口12が設けられている。
【0010】
前記ステータ50は、ヨーク51、ボビン52、ステータコイル53,53、及び樹脂モールドカバー56等で構成され、前記ロータ30やステータ50等でステッピングモータが構成され、該ステッピングモータやねじ送り機構等で前記弁口22aに対する前記弁体部24のリフト量(=弁開度)を調整するための昇降駆動機構が構成される。なお、ステータ50の下端部には回り止め具46が設けられるとともに、弁本体20の側部には前記回り止め具46を係止するため管状係止具47が固着されている。
【0011】
前記ロータ30には、支持リング36が一体的に結合されるとともに、この支持リング36に、前記弁軸25及びガイドブッシュ26の外周に配在された下方開口で筒状の弁軸ホルダ32の上部突部がかしめ固定され、これにより、ロータ30、支持リング36及び弁軸ホルダ32が一体的に連結されている。
【0012】
前記ねじ送り機構は、弁本体20に設けられた嵌合穴42にその下端部26aが圧入固定されるとともに、弁軸25(の下部大径部25a)が摺動自在に内挿された筒状のガイドブッシュ26の外周に形成された固定ねじ部(雄ねじ部)28と、前記弁軸ホルダ32の内周に形成されて前記固定ねじ部28に螺合せしめられた移動ねじ部(雌ねじ部)38とから構成されている。
【0013】
また、前記ガイドブッシュ26の上部小径部26bが弁軸ホルダ32の上部に内挿されるとともに、弁軸ホルダ32の天井部中央(に形成された通し穴)に弁軸25の上部小径部25bが挿通せしめられている。弁軸25の上部小径部25bの上端部にはプッシュナット33が圧入固定されている。
【0014】
また、前記弁軸25は、該弁軸25の上部小径部25bに外挿され、かつ、弁軸ホルダ32の天井部と弁軸25における下部大径部25aの上端段丘面との間に縮装された圧縮コイルばねからなる閉弁ばね34によって、常時下方(閉弁方向)に付勢されている。弁軸ホルダ32の天井部上でプッシュナット33の外周には、コイルばねからなる復帰ばね35が設けられている。
【0015】
前記ガイドブッシュ26には、前記ロータ30が所定の閉弁位置まで回転下降せしめられた際、それ以上の回転下降を阻止するための回転下降ストッパ機構の一方を構成する下ストッパ体(固定ストッパ)27が固着され、弁軸ホルダ32には前記ストッパ機構の他方を構成する上ストッパ体(移動ストッパ)37が固着されている。
【0016】
なお、前記閉弁ばね34は、弁体部24が弁口22aに着座する閉弁状態において所要のシール圧を得るため(漏れ防止)、及び、弁体部24が弁口22aに衝接した際の衝撃を緩和するために配備されている。
【0017】
このような構成とされた電動弁10’にあっては、ステータコイル53,53に第1態様で通電励磁パルスを供給することにより、弁本体20に固定されたガイドブッシュ26に対し、ロータ30及び弁軸ホルダ32が一方向に回転せしめられ、ガイドブッシュ26の固定ねじ部28と弁軸ホルダ32の移動ねじ部38とのねじ送りにより、例えば弁軸ホルダ32が下方に移動して弁体部24が弁口22aに押し付けられて弁口22aが閉じられる(全閉状態)。
【0018】
弁口22aが閉じられた時点では、上ストッパ体37は未だ下ストッパ体27に衝接しておらず、弁体部24が弁口22aを閉じたままロータ30及び弁軸ホルダ32はさらに回転下降する。この場合、弁軸25(弁体部24)は下降しないが、弁軸ホルダ32は下降するため、閉弁ばね34が所定量圧縮せしめられ、その結果、弁体部24が弁口22aに強く押し付けられるとともに、弁軸ホルダ32の回転下降により、上ストッパ体37が下ストッパ体27に衝接し、その後ステータコイル53,53に対するパルス供給が続行されても弁軸ホルダ32の回転下降は強制的に停止される。
【0019】
一方、ステータコイル53,53に第2態様で通電励磁パルスを供給すると、弁本体20に固定されたガイドブッシュ26に対し、ロータ30及び弁軸ホルダ32が前記と逆方向に回転せしめられ、ガイドブッシュ26の固定ねじ部28と弁軸ホルダ32の移動ねじ部38とのねじ送りにより、今度は弁軸ホルダ32が上方に移動する。この場合、弁軸ホルダ32の回転上昇開始時点(パルス供給開始時点)では、閉弁ばね34が前記のように所定量圧縮せしめられているので、閉弁ばね34が前記所定量分伸長するまでは、前記弁体部24が弁口22aからは離れず閉弁状態(リフト量=0)のままである。そして、閉弁ばね34が前記所定量分伸長した後、弁軸ホルダ32がさらに回転上昇せしめられると、前記弁体部24が弁口22aから離れて弁口22aが開かれ、冷媒が弁口22aを通過する。この場合、ロータ30の回転量により弁体部24のリフト量、言い換えれば、弁口22aの実効開口面積(=弁開度)を任意に細かく調整することができ、ロータ30の回転量は供給パルス数により制御されるため、冷媒流量を高精度に制御することができる(詳細は、下記特許文献1等を参照)。
【0020】
したがって、かかる構成の電動弁10’を前記ヒートポンプ式冷暖房システム100に逆止弁付き膨張弁に代えて組み込む場合には、冷媒が一方向に流されるとき(冷房運転時)は、圧力損失を可及的に低減すべく最大開度(最大リフト量)とされ、冷媒が他方向に流されるとき(暖房運転時)は、流量制御を行なうべくその開度(リフト量)を所定値以下の特定範囲で細かく制御するようにされる(詳細は下記特許文献2を参照)。
【0021】
ところで、上記した如くの電動弁10’を備えたヒートポンプ式冷暖房システム100では、メンテナンス時において冷媒が室内側へ漏洩すると、システム内の全冷媒が室内に洩れ、酸欠状態になるおそれがあるので、メンテナンス時には、次のような操作を行う。
【0022】
すなわち、メンテナンス時には、サービスバルブ121を閉じ、サービスバルブ122を開いたままとし、四方切換弁102を冷房運転時と同じ状態(a→d、b→c)、電動弁10’を全閉状態(非通電状態)として、圧縮機101を起動し、室内側から冷媒を吸い出して室外側へ吐出させる。これにより、室外側配管内の冷媒圧力が大きくなり、この冷媒圧力(高圧)が電動弁10’の第2入出口12から弁軸25(弁体部24)に作用し、弁軸25(弁体部24)が閉弁ばね34の付勢力に抗して押し上げられ、冷媒の一部は、電動弁10’の第2入出口12→弁口22a→弁室21→第1入出口11を通って冷媒回収用タンク120に回収される(このとき電動弁10’は逃がし弁のように働く)。略全冷媒がタンク120を含む室外側(サービスバルブ122と121との間)に集められたら、サービスバルブ122を閉じ、圧縮機101を停止し、所要のメンテナンス作業を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2010−249246号公報
【特許文献2】特開2009−14056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
上記した如くにして、メンテナンス時にタンク120に冷媒を回収した後において、外気温度が上昇すると、タンク120内の冷媒圧力が増大する。この場合、タンク120の出口側は、サービスバルブ121と電動弁10’により閉塞されているため、タンク120内の冷媒圧力が増大すると、冷媒が外部に漏出する等の不具合が発生するおそれがある。これを避けるには、例えば、電動弁10’をパイパスする流路を設け、該流路に所定圧以上で開く逃がし弁(リリーフ弁)を介装する方策が考えられるが、かかる方策では、配管や継手類などの部品の点数が増大するとともに、配管接続作業にも多大な手間と時間がかかり、システムのコストアップを招くとともに、その逃がし弁を含む電動弁の占有スペースが増大し、実質的に電動弁の大型化を招くことになる。
【0025】
また、上記図示例とは逆に電動弁10’の第2入出口12をタンク120に接続し、第1入出口11をディストリビュータ108に接続すれば、タンク120内の冷媒圧力が高くなったとき、電動弁10’を自動的に開かせてタンク120内の冷媒(圧力)を室外側に逃がすことが可能となるが、このようにすると、冷媒回収時及び冷房運転時とは逆流れの暖房運転時において細やかな流量制御を行うことが難しくなる(低圧力で開弁してしまうため)。
【0026】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、大きなコストアップや大型化を招くことなく、閉弁状態において弁室内の流体が所定圧以上となった場合に、当該バルブ装置を含むシステムに破損等が生じないように防護すべく、該弁室から流体を自動的に逃がすことのできる電動弁や電磁弁等のバルブ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
前記の目的を達成すべく、本発明に係るバルブ装置は、基本的には、第1入出口、弁室、及び第2入出口が設けられた弁本体と、該弁本体における前記弁室と第2入出口との間に配在された主弁口を有する主弁座部材と、前記弁室から前記主弁口を介して前記第2入出口へ流れる流量を調整すべく前記弁室内に配在された弁体部を有する弁軸と、前記流量調整を行うべく前記弁体部を昇降させる昇降駆動機構とを備え、前記主弁座部材は軸方向に移動可能とされるとともに、前記弁室に前記主弁座部材が接離する逃がし弁口を有する逃がし弁座が設けられ、該逃がし弁座と、前記主弁座部材と、該主弁座部材を前記逃がし弁口を閉じる方向に付勢するばね部材とで、前記主弁口が前記弁体部により閉じられている全閉状態で、前記弁室内の流体圧力が所定圧以上となった場合に、前記弁室内の圧力を前記第2入出口へ自動的に逃がす逃がし弁が構成される。
【0028】
好ましい態様では、前記主弁座部材に逆止弁口が形成されるとともに、前記弁室内に前記逆止弁口を開閉可能なフロート型の逆止弁体が軸方向に移動可能に配在され、前記主弁座部材に形成された逆止弁口と前記逆止弁体とで、前記第1入出口から第2入出口への流れは阻止するが前記第2入出口から第1入出口への流れは許容する逆止弁が構成される。
【0029】
この場合、好ましい態様では、前記弁室に前記逆止弁体の軸方向位置を規制するストッパが設けられ、前記弁室内の流体圧力が所定圧以上となった場合に、前記主弁座部材が前記逆止弁体から離れて前記逆止弁口が開かれるようにされる。
【0030】
他の好ましい態様では、前記主弁口が前記逆止弁体に設けられ、前記逆止弁体の動作が前記弁体部の位置に依存するようにされる。
【0031】
前記昇降駆動機構は、好ましくは、前記弁体部のリフト量を制御するためのロータ及びステータ等からなるステッピングモータと、前記ロータの回転を前記弁軸の昇降運動に変換するねじ送り機構とを備える。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係るバルブ装置では、逃がし弁座と、主弁座部材と、該主弁座部材を逃がし弁口を閉じる方向に付勢するばね部材とで逃がし弁が構成されているので、弁口が弁体部により閉じられている全閉状態で、弁室の圧力が所定圧以上となったときは、上記逃がし弁が開き、第1入出口からの流体を第2入出口へ逃がすことができ、大型化を招くことなく、逃がし弁の機能を低コストで付加することができる。
【0033】
また、逃がし弁は弁本体内に設けられるので、当該バルブ装置をパイパスするように逃がし弁を設ける場合等に比して、逃がし弁を含む電動弁の大きさ(占有スペース)を小さくすることができるとともに、追加の配管部品や配管接続作業が不要となり、システムのコストを抑えることができる。
【0034】
さらに、前述した図11に示されるヒートポンプ式冷暖房システムにおいて、従来の電動弁に代えて用いることにより、メンテナンス時にタンクに冷媒を回収した後において、外気温度が上昇して、タンク内の冷媒圧力が増大しても、タンク内の冷媒圧力を電動弁内の逃がし弁で自動的に逃がすことができ、冷媒が外部に漏出する等の不具合の発生を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るバルブ装置(電動弁)の第1実施例を示す主要部断面図。
【図2】第1実施例の電動弁において弁室の圧力が所定圧より高い状態を示す主要部断面図。
【図3】第2実施例の電動弁の全閉状態を示す主要部断面図。
【図4】第2実施例の電動弁の第1流れ方向全開状態を示す主要部断面図。
【図5】第2実施例の電動弁の第2流れ方向全開状態を示す主要部断面図。
【図6】第2実施例の電動弁において弁室の圧力が所定圧より高い状態を示す主要部断面図。
【図7】第3実施例の電動弁の全閉状態を示す主要部断面図。
【図8】第3実施例の電動弁において弁室の圧力が所定圧より高い状態を示す主要部断面図。
【図9】第4実施例の電動弁の全閉状態を示す主要部断面図。
【図10】従来の電動弁の一例を示す縦断面図。
【図11】ヒートポンプ式冷暖房システムの一例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るバルブ装置の第1実施例を示す主要部断面図である。図示実施例のバルブ装置(電動弁10A)は、図11に示されるヒートポンプ式冷暖房システム100において従来例の電動弁10’に代えて用いられるもので、その基本構成は、前述した図10に示される従来例の電動弁10’と略同じであるので、ここでは、図10に示される従来例の電動弁10’の各部に対応する部分には同一の符号を付して重複説明を省略し、以下は、主要部(特徴部分)を中心に説明する。
【0037】
図示第1実施例の電動弁10Aは、第1入出口11、弁室21、及び流通口12aを有する第2入出口12が設けられた弁本体20と、この弁本体20における弁室21と第2入出口12との間に配在された主弁口63を有する主弁座部材62と、弁室21から主弁口63を介して第2流出口12へ流れる流量を調整すべく弁室21内に配在された弁体部24を有する弁軸25と、を備える。
【0038】
前記主弁座部材62は、概略鍔状部付き円筒状とされ、弁室21の下方に設けられた下部室61内を軸方向(上下方向)に摺動可能に配在されている。
【0039】
弁室21の下部には、主弁座部材62の円錐状外周面部62aが接離する逃がし弁口66を有するリング状の逃がし弁座65が圧入等により固着されている。
【0040】
ここでは、前記逃がし弁座65と、主弁座部材62と、この主弁座部材62を逃がし弁口66を閉じる方向(上向き)に付勢する圧縮コイルばね67とで逃がし弁60が構成されている。
【0041】
かかる逃がし弁60では、図1に示される如くに、主弁口63が弁体部24により閉じられている全閉状態で、弁室21内の流体(冷媒)圧力が所定圧以上となると、図2に示される如くに、それを構成する主弁座部材62が弁室21内の圧力によって圧縮コイルばね67の付勢力に抗して押し下げられる(逃がし弁60では、主弁座部材62が弁体のように動作する)。
【0042】
これにより、図2(B)に拡大図示されているように、弁室21内の高圧は、主弁座部材62の円錐状外周面部62aと逃がし弁座65(逃がし弁口66)との間に形成される隙間や下部室61壁面と主弁座部材62の鍔状部外周面との摺動面隙間を通って第2入出口12へ自動的に逃がされるとともに、弁体部24と主弁口63との間に形成される隙間も通って第2入出口12へ自動的に逃がされる。
【0043】
このように、本実施例の電動弁10Aでは、逃がし弁座65と、主弁座部材62と、コイルばね67とで逃がし弁60が構成されているので、主弁口63が弁体部24により閉じられている全閉状態で、弁室21の圧力が所定圧以上となったときは、上記逃がし弁60が開き、第1入出口11からの流体を第2入出口12へ逃がすことができ、大型化を招くことなく、逃がし弁の機能を低コストで付加することができる。
【0044】
また、逃がし弁60は弁本体20内に設けられるので、当該電動弁10Aをパイパスするように逃がし弁を設ける場合等に比して、逃がし弁を含む電動弁の大きさ(占有スペース)を小さくすることができるとともに、追加の配管部品や配管接続作業が不要となり、システムのコストを抑えることができる。
【0045】
さらに、前述した図11に示されるヒートポンプ式冷暖房システム100において、従来の電動弁10’に代えて用いることにより、メンテナンス時にタンク120に冷媒を回収した後において、外気温度が上昇して、タンク120内の冷媒圧力が増大しても、タンク120内の冷媒圧力を電動弁10A内の逃がし弁60で自動的に逃がすことができ、冷媒が外部に漏出する等の不具合の発生を未然に防ぐことができる。
【0046】
次に、第2実施例の電動弁10Bを、図3(全閉状態)、図4(第1流れ方向全開状態)、図5(第2流れ方向全開状態)、及び図6(弁室の圧力が所定圧より高い状態)を参照しながら説明する。図3〜図6において、図1及び図2と同一の符号は、同一又は同等部分を示している。本第2実施例の電動弁10Bでは、第1実施例における逃がし弁60の機能に加えて、逆止弁の機能が付加されている。
【0047】
すなわち、前記主弁座部材62に、複数個の逆止弁口72、72、・・・が同一円周上に形成されるとともに、弁室21内に逆止弁口72、72、・・・を開閉可能なフロート型の逆止弁体75が軸方向に摺動自在に配在されている。
【0048】
逆止弁体75は、弁室21壁面に摺接する上部大径部75aと下部小径部75bとを有し、その中央には弁軸25が緩く挿通せしめられる縦貫穴75cが形成され、下部小径部75bには縦貫穴75cと弁室21とを連通するように複数個の横穴75dが放射状に形成されている。第1入出口11から弁室21に流入した流体は、横穴75dや縦貫穴75cを介して弁室天井部21dと逆止弁体75上面との間に形成される背圧室73に導かれる。
【0049】
ここで、流体が第1入出口11から第2入出口12へ流される第1流れ方向のときは、逆止弁体75は主弁座部材62に押し付けられて逆止弁口72、72、・・・を閉じる(図3、図4)。
【0050】
それに対し、流体が第2入出口12から第1入出口11へ流される第2流れ方向のときは、逆止弁体75は主弁座部材62から離れ、弁室天井部21dに接当するまで浮き上がって逆止弁口72、72、・・・を開く(図5)。なお、図5においては、弁軸25は最下降位置であるが、上昇位置にあっても、第2流れ方向のときは逆止弁体75は上昇することができる。
【0051】
したがって、主弁座部材62に形成された逆止弁口72と逆止弁体75とで、第1入出口11から第2入出口12への流れは阻止するが第2入出口12から第1入出口11への流れは許容する逆止弁70が構成されている。
【0052】
なお、本実施例の電動弁10Bでは、弁本体20内に逃がし弁座65’が一体に設けられ、弁本体20の下端部には管継手やばね受け等を兼ねる蓋状部材20Cが螺合せしめられている。
【0053】
かかる構成の電動弁10Bにおいても、図3に示される如くに、主弁口63が弁体部24により閉じられている全閉状態で、弁室21内の流体(冷媒)圧力が所定圧以上となると、図6に示される如くに、それを構成する主弁座部材62が弁室21内の圧力によって圧縮コイルばね67の付勢力に抗して押し下げられる。この場合、逆止弁体75は主弁座部材62と一体的に押し下げられるので逆止弁口72は閉じたままである。
【0054】
これにより、図6(B)に拡大図示されているように、弁室21内の高圧は、主弁座部材62の円錐状外周面部62aと逃がし弁座65(逃がし弁口66)との間に形成される隙間や下部室61壁面と主弁座部材62の鍔状部外周面との摺動面隙間を通って第2入出口12へ自動的に逃がされるとともに、弁体部24と主弁口63との間に形成される隙間も通って第2入出口12へ自動的に逃がされる。
【0055】
このように、本第2実施例の電動弁10Bにおいても、第1実施例と同様な作用効果が得られることに加えて、逆止弁70の機能を備えているので、省エネ効率の向上、圧力損失の低減化等を一層図ることができる。
【0056】
図7、図8は、第3実施例の電動弁10Cを示している。図7及び図8において、図1〜図6と同一の符号は、同一又は同等部分を示している。この電動弁10Cでは、逆止弁体75の軸方向位置(下降位置)を規制すべく、例えば、弁室21の内壁面部に環状溝78が形成されるとともに、該環状溝78にC形止め輪等からなるストッパ79が装着されている。
【0057】
このような構成の電動弁10Cでは、図8に示される如くに、弁室21内の流体圧力が所定圧以上となった場合に、第1、第2実施例と同様に、主弁座部材62が弁室21内の圧力によって圧縮コイルばね67の付勢力に抗して押し下げられるが、逆止弁体75がストッパ79に係止されるため、主弁座部材62が逆止弁体75から離れ、逆止弁口72も開かれる。そのため、弁室21内の高圧は、主弁座部材62の円錐状外周面部62aと逃がし弁座65’(逃がし弁口66)との間に形成される隙間や下部室61壁面と主弁座部材62の鍔状部外周面との摺動面隙間、弁体部24と主弁口63との間に形成される隙間に加えて、逆止弁口72からも第2入出口12へ逃がされることになる。
【0058】
図9は、第4実施例の電動弁10Dを示している。この電動弁10Dでは、主弁口63が逆止弁体75’に設けられ、逆止弁体75’の動作が弁体部24の位置に依存するようにされている。
【0059】
上記第3、第4実施例の電動弁10C、10Dにおいても、第1、第2実施例と略同様な作用効果が得られる。
【0060】
なお、上記実施例では、本発明に係る電動弁をヒートポンプ式冷暖房システムに組み込んだ場合を例示したが、本発明に係る電動弁の用途は、ヒートポンプ式冷暖房システムに限られないことは勿論である。
【0061】
また、上記の各実施例は、本発明のバルブ装置を電動弁に適用した事例を示したものであるが、本発明は、これのみに限定されることはなく、電磁弁等のバルブ装置にも適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
10 電動弁
11 第1入出口
12 第2入出口
20 弁本体
21 弁室
24 弁体部
25 弁軸
30 ロータ
40 キャン
50 ステータ
60 逃がし弁
62 主弁座部材
63 弁口
65 逃がし弁座
67 圧縮コイルばね
70 逆止弁
72 逆止弁口
75 逆止弁体
79 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入出口、弁室、及び第2入出口が設けられた弁本体と、該弁本体における前記弁室と第2入出口との間に配在された主弁口を有する主弁座部材と、前記弁室から前記主弁口を介して前記第2入出口へ流れる流量を調整すべく前記弁室内に配在された弁体部を有する弁軸と、前記流量調整を行うべく前記弁体部を昇降させる昇降駆動機構とを備えたバルブ装置であって、
前記主弁座部材は軸方向に移動可能とされるとともに、前記弁室に前記主弁座部材が接離する逃がし弁口を有する逃がし弁座が設けられ、該逃がし弁座と、前記主弁座部材と、該主弁座部材を前記逃がし弁口を閉じる方向に付勢するばね部材とで、前記主弁口が前記弁体部により閉じられている全閉状態で、前記弁室内の流体圧力が所定圧以上となった場合に、前記弁室内の圧力を前記第2入出口へ自動的に逃がす逃がし弁が構成されていることを特徴とするバルブ装置。
【請求項2】
前記主弁座部材に逆止弁口が形成されるとともに、前記弁室内に前記逆止弁口を開閉可能なフロート型の逆止弁体が軸方向に移動可能に配在され、前記主弁座部材に形成された逆止弁口と前記逆止弁体とで、前記第1入出口から第2入出口への流れは阻止するが前記第2入出口から第1入出口への流れは許容する逆止弁が構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記弁室に前記逆止弁体の軸方向位置を規制するストッパが設けられ、前記弁室内の流体圧力が所定圧以上となった場合に、前記主弁座部材が前記逆止弁体から離れて前記逆止弁口が開かれるようにされていることを特徴とする請求項2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記主弁口が前記逆止弁体に設けられ、前記逆止弁体の動作が前記弁体部の位置に依存するようにされていることを特徴とする請求項2又は3に記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記昇降駆動機構は、前記弁体部のリフト量を制御するためのロータ及びステータ等からなるステッピングモータと、前記ロータの回転を前記弁軸の昇降運動に変換するねじ送り機構とを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のバルブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−241877(P2012−241877A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115751(P2011−115751)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】