説明

パターン形成方法、識別コード形成方法、液滴吐出装置、電気光学装置の製造方法及び電気光学装置

【課題】 所望のパターン形成領域に整合したパターンを形成することによって生産性を向上したパターン形成方法、識別コード形成方法、液滴吐出装置、電気光学装置の製造方法及び電気光学装置を提供する。
【解決手段】 液滴吐出ノズルから吐出した微小液滴がデータセルに着弾する前に、制御部が加熱手段としての加熱ヒータ24を制御し、基板2(コード形成領域Z)の実基板温度を、着弾した微小液滴が隣接するデータセルに食み出さない温度であって、かつ突沸を起こさない温度、すなわち目標基板温度に維持するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法、識別コード形成方法、液滴吐出装置、電気光学装置の製造方法及び電気光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置(有機EL表示装置)等の電気光学装置には、画像を表示するための透明ガラス基板(以下単に、基板という。)が備えられている。この種の基板には、品質管理や製造管理を目的として、その製造元や製品番号等の製造情報をコード化した識別コード(例えば、2次元コード)が形成されている。こうした識別コードは、配列された多数のパターン形成領域(データセル)の一部に、パターンとしてのコードパターン(例えば、有色の薄膜や凹部)を備え、そのコードパターンの有無によって前記製造情報をコード化している。
【0003】
その識別コードの形成方法には、金属箔にレーザ光を照射してコードパターンをスパッタ成膜するレーザスパッタ法や、研磨材を含んだ水を基板等に噴射してコードパターンを刻印するウォータージェット法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
しかし、上記レーザスパッタ法では、所望するサイズのコードパターンを得るために、金属箔と基板の間隙を、数〜数十μmに調整しなければならない。つまり、基板と金属箔の表面に対して非常に高い平坦性が要求され、しかも、これらの間隙をμmオーダの精度で調整しなければならない。その結果、識別コードを形成できる対象基板が制限されて、その汎用性を損なう問題を招いていた。また、ウォータジェット法では、基板の刻印時に、水や塵埃、研磨剤等が飛散するため、同基板を汚染する問題があった。
【0005】
近年、こうした生産上の問題を解消する識別コードの形成方法として、インクジェット法が注目されている。インクジェット法は、金属微粒子を含む微小液滴を液滴吐出装置から吐出し、その液滴を乾燥させることによってコードパターンを形成する。そのため、識別コードを形成する基板の対象範囲を拡大することができ、同基板の汚染等を回避して識別コードを形成することができる。
【特許文献1】特開平11−77340号公報
【特許文献2】特開2003−127537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記インクジェット法では、基板に着弾した液滴を乾燥することによってコードパターンを形成するため、以下の問題を招いていた。
すなわち、着弾した液滴が基板上で濡れ広がると、コードパターンが、対応するデータセルから食み出し、コードパターンを形成しない隣接データセル内まで広がる。その結果、コードパターンの有無が誤って読み取られ、基板情報を損なうといった識別コードの製造不良を招き、識別コードの生産性、ひいては電気光学装置の生産性を損なう問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、所望のパターン形成領域に整合したパターンを形成することによって生産性を向上したパターン形成方法、識別コード形成方法、液滴吐出装置、電気光学装置の製造方法及び電気光学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパターン形成方法は、基板に設けられたパターン形成領域にパターン形成材料を含む液滴を吐出し、前記パターン形成領域に着弾した前記液滴を定着することによって前記パターン形成領域にパターンを形成するようにしたパターン形成方法において、前記液滴が着弾する前に、予め前記基板を加熱するようにした。
【0009】
本発明のパターン形成方法によれば、予め基板を加熱する分だけ、着弾した液滴の濡れ広がりを抑制することができ、パターン形成領域外への液滴の食み出しを低減することができる。その結果、パターン形成領域に対するパターンの位置整合性を向上することができ、パターンの生産性を向上することができる。
【0010】
このパターン形成方法は、前記液滴が着弾する前に、前記液滴の濡れ広がりを前記パターン形成領域内に抑制する所定の温度まで前記基板の温度を昇温し、着弾した前記液滴を前記パターン形成領域内に定着するようにした。
【0011】
このパターン形成方法によれば、着弾した液滴の濡れ広がりをパターン形成領域内に抑制するため、パターン形成領域に整合したパターンを、確実に形成することができる。
このパターン形成方法は、前記基板を載置する載置台を加熱して、前記基板を予め加熱するようにした。
【0012】
このパターン形成方法によれば、基板を載置する載置台を加熱するため、液滴が着弾する直前まで、確実に基板を加熱することができる。その結果、パターン形成領域に整合したパターンを、より確実に形成することができる。
【0013】
このパターン形成方法は、前記基板に光を照射して、前記基板を予め加熱するようにした。
このパターン形成方法によれば、光の照射によって加熱するため、加熱源を基板に接触させることなく加熱することができる。その結果、基板の形状に依存することなく、所望の温度まで確実に基板を加熱することができる。従って、パターン形成領域に整合したパターンを、より確実に形成することができる。
【0014】
本発明の識別コード形成方法は、基板の一側面にコード形成領域を設け、前記コード形成領域を分割する複数のデータセル内にコードパターンを形成することによって前記基板の識別コードを形成するようにした識別コード形成方法において、前記コードパターンを、上記パターン形成方法によって形成するようにした。
【0015】
本発明の識別コード形成方法によれば、データセルからはみ出すことなく、同データセルに整合したコードパターンからなる識別コードを形成することができる。従って、識別コードの生産性を向上することができる。
【0016】
本発明の液滴吐出装置は、基板に設けられたパターン形成領域にパターン形成材料を含む液滴を吐出する液滴吐出手段を備えた液滴吐出装置において、前記基板を加熱する加熱手段と、前記基板の温度を検出する温度検出手段と、前記液滴が前記パターン形成領域に着弾する前に、前記温度検出手段の検出した温度に基づいて前記加熱手段を制御し、前記液滴の濡れ広がりを前記パターン形成領域内に抑制する所定の温度まで前記基板の温度を昇温して、着弾した前記液滴を前記パターン形成領域に定着する温度制御手段と、を備えた。
【0017】
本発明の液滴吐出装置によれば、着弾した液滴の濡れ広がりをパターン形成領域内に抑
制するため、液滴をパターン形成領域内からはみ出すことなく、同パターン形成領域に整合したパターンを形成することができる。従って、パターンの生産性を向上することができる。
【0018】
この液滴吐出装置において、前記加熱手段は、前記基板を載置する載置台である。
この液滴吐出装置によれば、基板を載置する載置台を加熱するため、液滴が着弾する直前まで、確実に基板を加熱することができる。その結果、パターン形成領域に整合したパターン形成を、より確実に形成することができる。
【0019】
この液滴吐出装置において、前記加熱手段は、前記基板に光を照射する光源である。
この液滴吐出装置によれば、光を照射することによって基板を加熱するため、加熱源を基板に接触させることなく加熱することができる。その結果、基板の形状に依存することなく、同基板を、確実に所望の温度まで加熱することができる。従って、パターン形成領域に整合したパターンを、より確実に形成することができる。
【0020】
この液滴吐出装置において、前記パターン形成領域は、前記基板の識別コードを形成するためのコード形成領域を分割する複数のデータセルであって、前記パターンは、前記データセルに形成されて前記識別コードを構成するコードパターンである。
【0021】
この液滴吐出装置によれば、データセルからはみ出すことなく、対応するデータセルに整合したコードパターンからなる識別コードを形成することができる。
本発明の電気光学装置の製造方法は、表示用基板の一側面に識別コードを形成するようにした電気光学装置の製造方法において、前記識別コードを、上記識別コード形成方法によって形成するようにした。
【0022】
本発明の電気光学装置の製造方法によれば、識別コードの生産性を向上して、電気光学装置の生産性を向上することができる。
本発明の電気光学装置は、電気光学装置の製造方法によって製造した。
【0023】
本発明の電気光学装置によれば、電気光学装置の生産性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
まず、本発明を具体化した電気光学装置としての液晶表示装置について説明する。図1は、液晶表示装置を示す正面図である。
図1に示すように、液晶表示装置1は、表示用基板としての透明ガラス基板(以下単に、基板2という。)を備えている。基板2の表面2aには、液晶分子を封入した四角形状の表示部3が形成され、その表示部3の外側には、走査線駆動回路4及びデータ線駆動回路5が形成されている。そして、液晶表示装置1は、走査線駆動回路4の供給する走査信号とデータ線駆動回路5の供給するデータ信号に基づいて前記液晶分子の配向状態を制御し、図示しない照明装置から照射された平面光を、前記液晶分子の配向状態で変調することによって、表示部3に、所望の画像を表示するようになっている。
【0025】
次に、前記基板2に形成される前記基板2の識別コードについて説明する。図2及び図3は、液晶表示装置の裏面に形成された識別コードを示す正面図及び側面図であって、図4は、同識別コードの構成を説明するための説明図である。
【0026】
図1に示すように、基板2の裏面2bの右側上端には、該液晶表示装置1の製造元や製造番号等の製造情報をコード化した識別コード10が形成されている。図2に示すように、識別コード10は、コード形成領域Z内に形成された複数のコードパターン11によって構成されている。
【0027】
コード形成領域Zは、図4に示すように、正方形の領域であって、16行×16列のパターン形成領域(データセルC)に、均等に仮想分割されている。詳述すると、コード形成領域Zは、そのサイズが1.12mm×1.12mmで形成され、データセルCは70μm×70μmで形成されている。尚、本実施形態では、各データセルCに対して、図4の上側から順に、1行目のデータセルC、2行目のデータセルC、・・・、16行目のデータセルCとする。
【0028】
コードパターン11は、図2及び図3に示すように、パターン形成材料としての金属微粒子(例えば、マンガン微粒子)を焼成することによって形成された略半球状の薄膜パターンであって、基板2に密着するように形成されている。そして、前記製造情報のコード化に基づいて選択されたデータセルC内に、所定のサイズ(例えば、データセルCの面積の70%以上を占有する大きさ)のコードパターン11が形成されることによって、前記製造情報を読み取り可能にする識別コード10が形成されている。つまり、本実施形態における識別コード10は、コードパターン11の形成されたデータセルC(黒セルC1)と、コードパターン11の形成されないデータセルC(白セルC0)とからなる、いわゆる2次元コードである。
【0029】
次に、上記識別コード10の形成方法について以下に説明する。まず、識別コードを形成するために使用する液滴吐出装置20の構成について説明する。図5は、液滴吐出装置を示す斜視図であって、図6は、図5のA−Aに沿う概略断面図である。
【0030】
図5に示すように、液滴吐出装置20は、支持台21を有し、この支持台21には、搬送台22が設けられている。搬送台22は、支持台21の長手方向(図5に示すY矢印方向)に、Y軸駆動機構(Y軸モータMY:図9参照)によって往復直線移動するようになっている。その搬送台22の上面(載置面22a)には、基板2が、その裏面2b、すなわちコード形成領域Zを上側にして載置されている。尚、裏面2bに形成されたコード形成領域Zは、各データセルCの列方向がY矢印方向に沿うように設定され、かつ1行目のデータセルCが最もY矢印方向側となるように配置形成されている。
【0031】
図6に示すように、その載置面22a上であってコード形成領域Zの直下には、基板温度検出器23が配設され、基板2(コード形成領域Z)の温度を検出するようになっている。また、搬送台22の内部には、加熱ヒータ24が備えられ、搬送台22(載置面22a)を介して、載置された基板2(コード形成領域Z)を加熱するようになっている。
【0032】
そして、この搬送台22が、基板2を載置した状態で、同基板2(コード形成領域Z)を加熱しながら、Y矢印方向及び反Y矢印方向に搬送するようになっている。尚、本実施形態では、搬送台22の配置位置であって、図5に示すように、支持台21の最も手前側に配置する位置を往動位置とし、最も奥側に配置する位置(図5及び図6に示す2点鎖線)を復動位置とする。
【0033】
図5に示すように、支持台21には、門形の支持フレーム25が、Y矢印方向(反Y矢印方向)に移動する搬送台22を跨ぐように、Y矢印方向と直交する方向(X矢印方向)に沿って架設されている。支持フレーム25には、X矢印方向に延びる上下一対のガイドレール26a,26bが配設されている。上下一対のガイドレール26a,26bには、キャリッジ27が摺動可能に設けられ、X軸駆動機構(X軸モータMX:図9参照)により、同ガイドレール26a,26bに沿って往復直線移動するようになっている。このキャリッジ27の下面には、液滴吐出手段としての液滴吐出ヘッド28が一体的に設けられている。また、支持フレーム25の上側には、前記金属微粒子を分散媒に分散させた機能液L(図8参照)を収容する収容タンク25tが配設され、前記液滴吐出ヘッド28内に
機能液Lを供給するようになっている。
【0034】
図7は、前記液滴吐出ヘッド28の下面を上側にした斜視図であって、図8は、液滴吐出ヘッド28の概略断面図である。液滴吐出ヘッド28は、その下側にノズルプレート29を備え、その下面が、搬送台22に載置した基板2の裏面2b(コード形成領域Z)に対して平行に対峙するように配設されている。そのノズルプレート29には、コードパターン11を形成するための16個の液滴吐出ノズル30が長手方向(X矢印方向:識別コード10の行方向)に一列となって等間隔に貫通形成されている。
【0035】
尚、本実施形態の液滴吐出ノズル30は、そのピッチ幅が、データセルCの形成ピッチ(本実施形態では70μm)と同じ大きさで形成されている。つまり、各液滴吐出ノズル30は、基板2(コード形成領域Z)がY矢印方向に沿って往復直線移動するときに、それぞれ列方向に沿うコードパターン11と対峙するように配置形成されている。
【0036】
図8に示すように、ノズルプレート29の上側であって各液滴吐出ノズル30と相対する位置には、前記収容タンク25tに連通して、機能液Lを各液滴吐出ノズル30に供給可能にするキャビティ31が形成されている。キャビティ31の上側には、上下方向に振動してキャビティ31内の容積を拡大縮小する振動板32と、上下方向に伸縮して振動板32を振動させる圧電素子33が配設されている。
【0037】
そして、液滴吐出ヘッド28が圧電素子33を駆動制御するための信号(吐出信号)を受けると、対応する圧電素子33が伸張してキャビティ31内の容積を縮小し、縮小した容積分の機能液Lが、対応する液滴吐出ノズル30から微小液滴35として吐出される。
【0038】
次に、上記のように構成した液滴吐出装置20の電気的構成を図9に従って説明する。
図9において、温度制御手段としての制御部40は、CPU、RAM、ROM等を備え、ROM等に格納された制御プログラム、識別コード作成プログラムに従って、搬送台22を移動させて基板2の搬送処理動作及び液滴吐出ヘッド28(圧電素子33)を駆動させて液滴吐出処理動作を行う。
【0039】
ROMには、基板2に識別コード10を作成するためのビットマップデータBMDが予め格納されている。このビットマップデータBMDは、製造元や製造番号等の製造情報を、公知の方法で16行×16行の2次元コード形式にコード化し、そのコード化したデータを、16本の液滴吐出ノズル30に相対させてビットマップ化したデータである。すなわち、ビットマップデータBMDは、基板2(コード形成領域Z)がY矢印方向に移動するときに、各液滴吐出ノズル30が対峙する16個の列方向のデータセルCに対して、それぞれ微小液滴35を吐出するか否かを示すデータである。
【0040】
また、ROMには、微小液滴35が裏面2b(コード形成領域Z)に着弾する前の基板2(コード形成領域Z)の温度情報(目標基板温度Tp)が格納されている。本実施形態の目標基板温度Tpは、データセルC(黒セルC1)に着弾した微小液滴35(図8に示す2点鎖線)が、当該黒セルC1内で定着する温度、すなわち着弾した微小液滴35が隣接するデータセルCに食み出さない温度であって、かつ突沸を起こさない温度に設定されている。尚、本実施形態では、その目標基板温度Tpを、各種試験等に基づいて50℃と設定するが、この目標基板温度Tpは、裏面2bに対する微小液滴35の接触角(濡れ性)や微小液滴35の表面張力、さらには微小液滴35の分散媒の沸点等によって異なるため、これに限られるものではない。
【0041】
制御部40は、X軸モータ駆動回路41が接続されて、X軸モータ駆動回路41にX軸モータ駆動制御信号を出力するようになっている。X軸モータ駆動回路41は、制御部4
0からのX軸モータ駆動制御信号に応答して、前記キャリッジ27を往復移動させるX軸駆動機構中のX軸モータMXを正転又は逆転させるようになっている。そして、例えば、X軸モータMXを正転させると、キャリッジ27はX矢印方向に移動し、逆転させるとキャリッジ27は反X矢印方向に移動するようになっている。
【0042】
制御部40は、Y軸モータ駆動回路42が接続されて、Y軸モータ駆動回路42にY軸モータ駆動制御信号を出力するようになっている。Y軸モータ駆動回路42は、制御部40からのY軸モータ駆動制御信号に応答して、前記搬送台22を往復移動させるY軸駆動機構中のY軸モータMYを正転又は逆転させるようになっている。例えば、Y軸モータMYを正転させると、搬送台22はY矢印方向に移動し、逆転させると搬送台22は反Y矢印方向に移動する。
【0043】
制御部40は、ノズル駆動回路43が接続されている。制御部40は、微小液滴35を吐出する所定のタイミングで吐出タイミング信号を生成し、同タイミング信号に基づいて、ノズル駆動回路43に吐出信号を出力する。ノズル駆動回路43は、制御部40からの吐出信号に基づいて、液滴吐出ヘッド28に設けた各圧電素子33のうち、吐出信号に応じた圧電素子33を通電して駆動させる。そして、その圧電素子33に対応する液滴吐出ノズル30から微小液滴35を吐出させる。
【0044】
制御部40は、加熱ヒータ駆動回路44が接続されて、加熱ヒータ駆動回路44に加熱ヒータ駆動制御信号Shを出力する。加熱ヒータ駆動回路44は、制御部40からの加熱ヒータ駆動制御信号Shに基づいて、加熱ヒータ24を通電して駆動させ、搬送台22(載置面22a)に載置された基板2(コード形成領域Z)を加熱する。
【0045】
制御部40には、入力装置45が接続されている。入力装置45は、起動スイッチ、停止スイッチ等の操作スイッチを有し、各スイッチの操作による操作信号を制御部40に出力する。
【0046】
制御部40には、X軸モータ回転検出器46が接続されて、X軸モータ回転検出器46からの検出信号が入力される。制御部40は、X軸モータ回転検出器46からの検出信号に基づいて、X軸モータMXの回転方向及び回転量を検出し、液滴吐出ヘッド28に対する基板2のX矢印方向の移動方向及び移動量を演算する。
【0047】
制御部40には、Y軸モータ回転検出器47が接続されて、Y軸モータ回転検出器47からの検出信号が入力される。制御部40は、Y軸モータ回転検出器47からの検出信号に基づいて、Y軸モータMYの回転方向及び回転量を検出し、液滴吐出ヘッド28に対する基板2のY矢印方向の移動方向及び移動量を演算する。
【0048】
制御部40には、基板位置検出器48が接続されている。基板位置検出器48は、基板2の端縁を検出可能な撮像機能等を備え、制御部40によって液滴吐出ヘッド28の直下を通過する基板2の位置を算出する際に利用される。
【0049】
制御部40は、温度検出手段としての基板温度検出器23が接続されて、基板温度検出器23の検出信号Stに基づいて基板2(コード形成領域Z)の実基板温度Taを算出する。また、制御部40は、算出した実基板温度TaとROMに格納する目標基板温度Tpに基づいて、実基板温度Taを目標基板温度Tpにするための前記加熱ヒータ駆動制御信号Shを生成する。
【0050】
次に、液滴吐出装置20を使って識別コード10を形成する方法について説明する。
まず、図5及び図6に示す状態、すなわち搬送台22が往動位置に位置する状態で、基
板2を、その裏面2bが上側になるように搬送台22に配置固定する。この状態から、入力装置45に識別コード10を形成するための操作信号を入力すると、制御部40は、ROMに格納した識別コード作成プログラムを読み出し、基板温度検出器23の検出信号Stに基づいて、基板2の実基板温度Taを算出する。続いて、制御部40は、ROMに格納した目標基板温度Tpを読み出し、算出した実基板温度Taと読み出した目標基板温度Tpに基づいて、基板2の温度(実基板温度Ta)を目標基板温度Tpにするための加熱ヒータ駆動制御信号Shを生成して加熱ヒータ駆動回路44に出力する。そして、制御部40は、加熱ヒータ駆動回路44を介して、基板2の実基板温度Taを目標基板温度Tpにする。
【0051】
尚、制御部40は、コード形成領域Zの全黒セルC1に微小液滴35が着弾し終わるまで、上記加熱ヒータ駆動制御信号Shを生成し、こうした基板2の温度制御によって、実基板温度Taを目標基板温度Tpに維持する。
【0052】
実基板温度Taが目標基板温度Tpになると、制御部40は、Y軸モータMYを駆動制御し、搬送台22(基板2)をY矢印方向に搬送させる。やがて、基板位置検出器48が基板2のY矢印方向側の端縁を検出すると、制御部40は、X軸モータMXを駆動制御し、キャリッジ27(液滴吐出ノズル30)をコード形成領域Zの移動経路直上(Y矢印方向直上)に配置する。また、制御部40は、ROMに格納した当該基板2に対するビットマップデータBMDを読み出し、同ビットマップデータBMDに基づいた吐出信号を出力するためのタイミングを待つ。すなわち、制御部40は、基板2をY矢印方向に搬送させながら、Y軸モータ回転検出器47からの検出信号に基づいて、コード形成領域Z(1行目のデータセルC)が液滴吐出ヘッド28(液滴吐出ノズル30)の直下に搬送されたか否かを判断する。
【0053】
そして、制御部40は、1行目のデータセルCが液滴吐出ノズル30の直下に搬送されるタイミングで吐出タイミング信号を生成し、前記ビットマップデータBMDの中から1行目のデータセルCに相対するデータを抽出する。そして、黒セルC1と対峙する液滴吐出ノズル30に微小液滴35を吐出させる吐出信号を生成してノズル駆動回路43に出力する。これによって、1行目のデータセルCであって黒セルC1にのみ微小液滴35が吐出される。
【0054】
このとき、黒セルC1に吐出された微小液滴35は、実基板温度Taが目標基板温度Tpに維持されるため、対応する黒セルC1内から食み出ることなく、当該黒セルC1内で定着する。
【0055】
以後同様にして、制御部40は、各行のデータセルCが液滴吐出ノズル30の直下に搬送されるタイミングで吐出タイミング信号を生成し、順次各行に相対する吐出信号をノズル駆動回路43に出力して、全黒セルC1に微小液滴35を吐出する。
【0056】
コード形成領域Z(黒セルC1)にコードパターン11を形成するための微小液滴35が吐出されると、液滴吐出装置20による識別コード10を形成するための液滴吐出動作を終了する。そして、制御部40は、Y軸モータMYを制御して、基板2を、液滴吐出ヘッド28の下方位置から往動位置に退出する。
【0057】
識別コード10を形成するための液滴吐出工程が終了すると、基板2を所定の乾燥・焼成炉等に移載し、微小液滴35の分散媒を蒸発させ、続いて金属微粒子を焼成させる。これによって、黒セルC1内に固着した半球状のコードパターン11からなる識別コード10を基板2上に形成する。
【0058】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、黒セルC1と対峙する液滴吐出ノズル30から吐出した微小液滴35が黒セルC1に着弾する前に、制御部40が加熱手段としての加熱ヒータ24を制御し、基板2(コード形成領域Z)の実基板温度Taを、着弾した微小液滴35が隣接するデータセルCに食み出さない温度であって、かつ突沸を起こさない温度、すなわち目標基板温度Tpに維持するようにした。
【0059】
その結果、着弾した微小液滴35を黒セルC1内から食み出だすことなく、当該黒セルC1内に定着させることができる。従って、データセルCに対するコードパターン11の位置整合性を向上することができ、コードパターン11の生産性、ひいては識別コード10の生産性を向上することができる。
【0060】
(2)上記実施形態では、搬送台22に加熱ヒータ24を設けることによって、基板2(コード形成領域Z)を目標基板温度Tpに維持するようにした。その結果、微小液滴35が着弾する直前まで、実基板温度Taを、確実に目標基板温度Tpにすることができる。その結果、データセルCに位置整合したコードパターン11を、より確実に形成することができる。
【0061】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、加熱手段を加熱ヒータ24に具体化した。これに限らず、例えば、基板2によって光熱変換可能な波長の光(例えば、赤外波長領域の光)を、ランプ(例えば、赤外線ランプ)やレーザ(例えば、赤外線レーザ)によってコード形成領域Zに照射するようにしてもよい。
【0062】
これによれば、コード形成領域Zを非接触で加熱することができるため、基板2の形状(例えば、裏面2bや表面2aの凹凸形状)に依存することなく、コード形成領域Zを、目標基板温度Tpまで、確実に昇温することができる。従って、黒セルC1に整合したコードパターン11を、より確実に形成することができる。
【0063】
・上記実施形態では、液滴吐出動作を終了した後に、基板2を所定の乾燥・焼成炉等に移載して、微小液滴35の本乾燥と、金属微粒子の焼成を行うようにした。
これを変更し、微小液滴35を乾燥して金属微粒子を焼成可能なレーザ光(例えば、波長が800nm近傍のレーザ光)を照射するレーザ光源をキャリッジ27に搭載し、同レーザ光を、1行目の黒セルC1(微小液滴35)から16行目の黒セルC1に対して順次照射し、コードパターン11を形成するようにしてもよい。
【0064】
これによれば、基板2を移載する時間等を省くことができ、識別コード10の生産性を、さらに向上することができる。
・上記実施形態では、コードパターン11を金属微粒子で構成するようにしたが、これに限らず、例えば顔料で形成してもよく、コードリーダで読み取ることができるものであればよい。
【0065】
・上記実施形態では、各コードパターン11を一滴の微小液滴35で形成する構成にしたが、これに限らず、複数滴の微小液滴35で形成するようにしてもよい。
・上記実施形態では、コードパターン11を平面視方向から見て円形状に形成したが、これに限らず、例えば楕円形状や線状であってもよく、その形状に限定されるものではない。
【0066】
・上記実施形態では、パターンを2次元コード(識別コード10)に具体化したが、これに限らず、例えばバーコード、文字、数字、記号等であってもよい。さらには、金属配
線等のパターンであってもよく、吐出した微小液滴35をパターン形成領域内に定着させるパターンであればよい。
【0067】
・上記実施形態では、液滴吐出動作の前に裏面2bの表面処理を施さない構成にしたが、これに限らず、例えばコードパターン11と裏面2bの密着性を向上させる表面処理(酸素プラズマ等による洗浄処理等)を施すようにしてもよい。あるいは、微小液滴35の濡れ広がりを抑制する表面処理(フッ素系樹脂からなる塗布膜形成等)を施すようにしてもよい。これによれば、黒セルC1に密着して位置整合したコードパターン11を、より確実に形成することができる。
【0068】
・上記実施形態では、識別コード10を形成するための基板を透明ガラス基板2に具体化したが、これに限らず、例えば液晶表示装置1に使用するフレキシブル基板やリジッド回路基板等であってもよい。
【0069】
・上記実施形態では、電気光学装置を液晶表示装置1に具体化した。これに限らず、例えば有機エレクトロルミネッセンス表示装置であってもよく、あるいは平面状の電子放出素子を備え、同素子から放出された電子による蛍光物質の発光を利用した電界効果型装置(FEDやSED等)を備えた電気光学装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】液晶表示装置を示す正面図。
【図2】識別コードを示す正面図。
【図3】識別コードを示す側面図。
【図4】識別コードの構成を説明する説明図。
【図5】液滴吐出装置を示す概略斜視図。
【図6】液滴吐出装置を示す概略断面図。
【図7】液滴吐出ヘッドを示す概略斜視図。
【図8】液滴吐出ヘッドを示す概略断面図。
【図9】液滴吐出装置の電気的構成を説明するブロック図。
【符号の説明】
【0071】
1…電気光学装置としての液晶表示装置、2…基板、10…識別コード、11…パターンとしてのコードパターン、20…液滴吐出装置、23…温度検出手段としての基板温度検出器、28…液滴吐出手段としての液滴吐出ヘッド、40…温度制御手段としての制御部、C…パターン形成領域としてのデータセル、Z…コード形成領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に設けられたパターン形成領域にパターン形成材料を含む液滴を吐出し、前記パターン形成領域に着弾した前記液滴を定着することによってパターンを形成するようにしたパターン形成方法において、
前記液滴が着弾する前に、予め前記基板を加熱するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成方法において、
前記液滴が着弾する前に、前記液滴の濡れ広がりを前記パターン形成領域内に抑制する所定の温度まで前記基板を昇温し、着弾した前記液滴を前記パターン形成領域内に定着するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパターン形成方法において、
前記基板を載置する載置台を加熱して、前記基板を予め加熱するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のパターン形成方法において、
前記基板に光を照射して、前記基板を予め加熱するようにしたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項5】
基板の一側面にコード形成領域を設け、前記コード形成領域を分割する複数のデータセル内にコードパターンを形成することによって前記基板の識別コードを形成するようにした識別コード形成方法において、
前記コードパターンを、請求項1〜4のいずれか1つに記載のパターン形成方法によって形成するようにしたことを特徴とする識別コード形成方法。
【請求項6】
基板に設けられたパターン形成領域にパターン形成材料を含む液滴を吐出する液滴吐出手段を備えた液滴吐出装置において、
前記基板を加熱する加熱手段と、
前記基板の温度を検出する温度検出手段と、
前記液滴が前記パターン形成領域に着弾する前に、前記温度検出手段の検出した温度に基づいて前記加熱手段を制御し、前記液滴の濡れ広がりを前記パターン形成領域内に抑制する所定の温度まで前記基板の温度を昇温して、着弾した前記液滴を前記パターン形成領域内に定着する温度制御手段と、
を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液滴吐出装置において、
前記加熱手段は、前記基板を載置する載置台であることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
請求項6に記載の液滴吐出装置において、
前記加熱手段は、前記基板に光を照射する光源であることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1つに記載の液滴吐出装置において、
前記パターン形成領域は、前記基板の識別コードを形成するためのコード形成領域を分割する複数のデータセルであって、
前記パターンは、前記データセルに形成されて前記識別コードを構成するコードパターンであることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項10】
表示用基板の一側面に識別コードを形成するようにした電気光学装置の製造方法において

前記識別コードを、請求項6に記載の識別コード形成方法によって形成するようにしたことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の電気光学装置の製造方法によって製造した電気光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−239899(P2006−239899A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55111(P2005−55111)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】