説明

パターン形成方法及びパターン形成装置並びにパターン構造

【課題】基材の表面にバルジを誘導するためのパターンを形成せずに組成物の液滴を付与して線状パターンを形成する場合に比べ、線状パターンに生じるバルジの方向が制御されるパターン形成方法を提供する。
【解決手段】基材の表面に組成物の液滴を線状に付与して線状パターン12A,12Bを形成する線状パターン形成工程と、線状パターンを形成すると共に又は線状パターンを形成する前に、液滴を付与して、前記線状のパターンの幅方向における片側の縁で接触するバルジ誘導用パターン10A,10B,10Cを形成するバルジ誘導用パターン形成工程と、を含む。バルジ誘導用パターンを形成した後、線状パターンを形成することが望ましく、予めパターン形成領域外に組成物の液滴を付与してバルジ発生位置を確認するためのバルジ確認用パターンを形成する工程をさらに含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法及びパターン形成装置並びにパターン構造に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上にパターンを形成する方法として、例えば、基板の片面全体に導電膜等、目的に応じた機能性膜を形成した後、フォトリソグラフィ法によってパターニングする方法が一般的である。また、近年では、機能性材料を含むインク等の組成物をインクジェット方式でパターニングする方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、液滴吐出法を用いて基板上に所定のパターンの機能性膜を形成するパターン形成法であって、前記機能性膜の設計パターンについて、当該設計パターンを分割する複数の副領域を設定し、且つ、当該複数の副領域をお互いに隣接しない複数のグループに分類する副領域設定工程と、前記副領域設定工程で分類された第1のグループに属する副領域を描くように、前記液状体を配置する第1描画工程と、前記副領域設定工程で分類された第2のグループに属する副領域を描くように、前記液状体を配置する第2描画工程と、を有していて、前記第1描画工程と前記第2描画工程との間に、前記第1描画工程において配置された液状体を固化させる固化工程を有していることを特徴とするパターン形成方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、機能液を基板上に配置して線状の膜パターンを形成する手法であって、前記機能液に対して溌液性の溌液性膜を、所定のパターン形状で前記基板上に形成する工程と、前記溌液性膜によって区画された領域に前記機能液を配置する工程とを有し、前記溌液性膜によって区画された領域は、部分的に幅が広く形成されていることを特徴とする膜パターン形成方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、基板上に液滴吐出法を用いて機能液を吐出して所定のパターンを形成する方法であって、前記基板上に、前記機能液の飛翔径より大きな幅を有する第1領域と当該第1領域よりも狭い幅を有する第2領域とが配置されるようにバンクを形成する工程と、前記第2領域に、前記機能液に含まれる溶媒を吐出する工程と、前記第1領域に前記機能液を吐出して前記第2領域に前記機能液を流れ込ませる工程とを有することを特徴とするパターン形成方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−116417号公報
【特許文献2】特開2004−356320号公報
【特許文献3】特開2006−114930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、基材の表面にバルジを誘導するためのパターンを形成せずに組成物の液滴を付与して線状パターンを形成する場合に比べ、線状パターンに生じるバルジの方向が制御されるパターン形成方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
請求項1の発明は、基材の表面に組成物の液滴を線状に付与して線状のパターンを形成する線状パターン形成工程と、前記線状のパターンを形成すると共に又は前記線状のパターンを形成する前に、液滴を付与して、前記線状のパターンの幅方向における片側の縁で接触するバルジ誘導用パターンを形成するバルジ誘導用パターン形成工程と、を含むパターン形成方法。
請求項2の発明は、前記バルジ誘導用パターンを形成した後、前記線状のパターンを形成する請求項1に記載のパターン形成方法。
請求項3の発明は、前記バルジ誘導用パターン形成工程及び前記線状のパターン形成工程を行う前に、前記基材の表面において前記バルジ誘導用パターンと前記線状パターンを形成する予定のパターン形成領域外に前記組成物の液滴を付与してバルジ確認用パターンを形成する工程をさらに含み、前記バルジ確認用パターンに発生したバルジの位置に応じて前記バルジ誘導用パターン形成工程及び前記線状パターン形成工程を行う請求項1又は請求項2に記載のパターン形成方法。
請求項4の発明は、基材の表面に液滴を付与してパターンを形成するパターン形成手段と、前記パターン形成手段により前記基材の表面に組成物の液滴を線状に付与して線状パターンを形成すると共に又は前記線状パターンを形成する前に、液滴を付与して、前記線状のパターンの幅方向における片側の縁で接触するバルジ誘導用パターンを形成するように前記パターン形成手段を制御する制御手段と、を有するパターン形成装置。
請求項5の発明は、前記制御手段が、前記バルジ誘導用パターンを形成した後、該バルジ誘導用パターンと接触する前記線状パターンを形成するように前記パターン形成手段を制御する請求項4に記載のパターン形成装置。
請求項6の発明は、前記制御手段が、前記パターン形成手段により前記バルジ誘導用パターンと前記線状パターンを形成する前に、前記基材の表面において前記バルジ誘導用パターンと前記線状パターンを形成する予定のパターン形成領域外に前記インクの液滴を付与してバルジ確認用パターンを形成し、前記バルジ確認用パターンに発生したバルジの位置に応じて前記バルジ誘導用パターンと前記線状パターンを形成するように前記パターン形成手段を制御する手段である請求項4又は請求項5に記載のパターン形成装置。
請求項7の発明は、前記パターン形成手段が、前記バルジ誘導用パターンを形成するための前記液滴を付与する第1液滴付与手段と、前記線状パターンを形成するための前記組成物の液滴を付与する第2液滴付与手段とを有する請求項4〜請求項6のいずれか一項に記載のパターン形成装置。
請求項8の発明は、線状の第1のパターンと、前記第1のパターンの幅方向における片側の縁に接触し、前記第1のパターンの長手方向における長さが前記第1のパターンの長さよりも短く、かつ前記第1のパターンの幅よりも長い第2のパターンと、を含むパターン構造。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、液滴を付与してバルジ誘導用パターンを形成せずに線状パターンを形成する場合に比べ、容易に線状パターンを形成するパターン形成方法が提供される。
請求項2の発明によれば、バルジ誘導用パターンと同時に線状パターンを形成する場合に比べ、線状パターンに生じるバルジが確実に制御されるパターン形成方法が提供される。
請求項3の発明によれば、バルジ確認用パターンを形成しない場合に比べ、線状パターンに生じるバルジがより確実に制御されるパターン形成方法が提供される。
請求項4の発明によれば、液滴を付与してバルジ誘導用パターンを形成せずに線状パターンを形成する場合に比べ、容易に線状パターンを形成するパターン形成装置が提供される。
請求項5の発明によれば、制御手段が、バルジ誘導用パターンと同時に線状パターンを形成するようにパターン形成手段を制御する場合に比べ、線状パターンに生じるバルジが確実に制御されるパターン形成装置が提供される。
請求項6の発明によれば、制御手段が、バルジ確認用パターンを形成せずにバルジ誘導用パターン及び線状パターンを形成するようにパターン形成手段を制御する場合に比べ、線状パターンに生じるバルジがより確実に制御されるパターン形成装置が提供される。
請求項7の発明によれば、パターン形成手段が、バルジ誘導用パターンを形成するための液滴と、線状パターンを形成するための組成物の液滴を同じ液滴付与手段から付与する場合に比べ、バルジ誘導用パターンとともに線状パターンが迅速に形成されるパターン形成装置が提供される。
請求項8の発明によれば、第1のパターンと第2のパターンが本構成を有さない場合に比べて、近接して配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】基材の表面に形成した複数の機能性線状パターンを示す図である。
【図2】実施形態に係るパターン形成方法により形成するバルジ誘導用パターンと線状パターンの配置の一例を示す概略図である。
【図3】実施形態に係るパターン形成装置の主要部の構成を示す概略図である。
【図4】比較例及び実施例において機能性線状パターンの中間部分に生じたバルジを示す図である。(A)比較例1 (B)実施例1 (C)実施例2
【図5】端部に生じたバルジがバルジ誘導用パターンによって片縁側に誘導された機能性線状パターンを示す図である。
【図6】機能性インクを付与して形成した線状パターンに生じたバルジと分裂を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を適宜参照して実施形態について詳細に説明する。
従来の工業用インクジェットなどの液滴吐出法において、基板上に配置された液状の機能性インク等の組成物(単に「組成物」と称する場合がある。)は、基板の表面/界面の動力学的な(例えば、表面張力や濡れ性)影響を受ける。幅が数十μm程度の微細な線状のパターン(単に「線状パターン」と称する場合がある。)を作製する場合、複数の液滴が基板上で重なり合うように作製すると、この動力学的な影響を受け、基板上に着弾した組成物は表面エネルギーを最小化しようと変形や分裂を起こす。この現象により線状パターンに生じた膨らんだ部分(膨部)はバルジとも呼ばれる。
【0012】
例えば、インクジェット方式にて細長いパターン(線状パターン)を作製するとき、最初に作製した部分は後から作製した部分に比べ先に乾燥する。すると、マランゴニ対流により、後から作製した部分から最初に作製した部分に組成物が移動する。このため端部(最初に作製した部分)に存在する組成物の量が多くなり、結果として幅が膨らむ。また、インクジェット方式でインクを吐出した最後の部分は、線状パターンの中央部分(端部よりも内側の部分)に比べ乾燥しやすく、最初に作製した部分よりは影響は少ないものの、同様に幅が膨らむ。
【0013】
端部に近い部分では、端部に向って組成物の移動が起こるが、ある程度端部から距離が離れると組成物の移動する量は少なくなる。端部から距離が離れた部分では、線状パターンの幅以上に供給された組成物は表面エネルギーを最小化しようと変形して球形状となる。その結果、図6に示すように、バルジが発生したり、線状パターンが分裂したりする。
【0014】
本発明者は、機能性インク等の組成物を用いて線状パターンを、分裂が発生せず、かつ、狭い間隔で形成する手段について研究を重ねたところ、線状パターンを形成すると共に、又は線状パターンを形成する以前に、線状パターンに発生するバルジを予め定めた方向に誘導するためのバルジ誘導用パターンを形成することでバルジの方向を制御し、線状パターンの分裂の発生を抑制するとともに、線状パターンの間隔を狭くすることを見出した。
【0015】
<パターン形成方法>
本実施形態に係るパターン形成方法は、基材の表面に組成物の液滴を線状に付与して線状パターンを形成する線状パターン形成工程と、前記線状パターンを形成すると共に又は前記線状パターンを形成する前に、液滴を付与して、前記線状パターンの幅方向における片側の縁で接触するバルジ誘導用パターンを形成するバルジ誘導用パターン形成工程と、を含む。前記バルジ誘導用パターンは、前記線状パターンの膨らむ部分を前記片縁側に誘導する作用を有する。
また、本実施形態に係るパターン形成方法は、バルジ誘導用パターン形成工程及び線状パターン形成工程を行う前に、バルジ発生位置を確認するためのバルジ確認用パターンを形成するバルジ確認用パターン形成工程をさらに含んでもよい。
また、線状パターンを形成した後、必要に応じて加熱工程を含んでもよい。
以下、各工程について説明する。
【0016】
線状パターンを形成するための基材としては、ガラス、セラミックス、樹脂、金属などの基材が挙げられる。形成すべき線状パターンの用途、線状パターンの形成に使用する組成物、例えば導電性、半導電性、又は絶縁性などの各種機能を有する機能性インク(単に「インク」と称する場合がある。)の種類などを考慮し、目的に応じて基材を選択すればよい。
【0017】
−バルジ確認用パターン形成工程−
図1は基材の表面に組成物を付与して形成した複数の線状パターンを示している。バルジの発生は機能性インクと基材表面のそれぞれの性質に依存するため、同じ組成物により同じ基材の表面に線状パターンを形成すれば、ほぼ決まった位置にバルジが発生する。そこで、バルジ誘導用パターン形成工程及び線状パターン形成工程を行う前に、バルジ確認用パターン形成工程では、線状パターンの形成に用いる組成物を用い、基材の表面においてバルジ誘導用パターンと線状パターンを形成する予定のパターン形成領域外に組成物の液滴を付与してバルジ確認用パターン(ダミーパターン)を形成する。
【0018】
例えば、シリコンウエハー(SiO)の表面においてバルジ誘導用パターンと線状パターンを形成する予定のパターン形成領域の外側に位置するいずれかの領域に組成物を付与してバルジ確認用パターンを形成する。線状パターンの形成に用いる組成物を付与してバルジ確認用パターンを形成することでほぼ同一の位置にバルジが発生するため、バルジ確認用パターンを形成すべき位置及び範囲が容易に確認される。組成物については後述する。
【0019】
バルジ確認用パターンに発生したバルジの位置及び範囲に応じて線状パターンに発生し易いバルジの位置を予測してバルジ誘導用パターン形成工程及び線状パターン形成工程を行えば、線状パターンに対してバルジ誘導用パターンを形成すべき位置がより正確に把握され、線状パターンに発生するバルジを誘導する精度が向上する。
【0020】
−バルジ誘導用パターン形成工程−
バルジ誘導用パターン形成工程では、基材の表面に液滴を付与して、線状パターンの幅方向における片側の縁で接触し、線状パターンの膨らむ部分(バルジ)を線状のパターンの片側の縁に誘導するためのバルジ誘導用パターンを形成する。例えば、図2に示すように、平行な2本の線状パターン12A,12Bを形成する場合は、各線状パターン12A,12Bの中央部分と両端部において各線状パターン12A,12Bの外側(線状パターン同士が向き合っている側とは反対側)で接触するようにバルジ誘導用パターン10A,10B,10Cを形成する。
【0021】
バルジ誘導用パターン10A,10B,10Cを形成するための液滴は特に限定されず、水、有機溶媒、及び機能性インクなどの組成物が用いられる。
また例えば、両パターンを同じ機能性インクによって形成する場合は、バルジ誘導用パターンを形成するための専用の液滴付与手段を設ける必要はなく、例えば一般的なインクジェット方式のパターン形成装置(インクジェット装置)を用いてバルジ誘導用パターンと線状パターンが形成される。
【0022】
バルジ誘導用パターンは、線状パターンを形成する予定の領域に隣接し、線状パターンを形成したときにバルジが発生し易い位置に形成する。例えば、図2に示したように、形成すべき線状パターン12A,12Bの中央部分や端部に相当する箇所が挙げられるが、前述したバルジ確認用パターン形成工程を行っていれば、確認されたバルジの位置に応じてバルジ誘導用パターンを形成する。
【0023】
バルジ誘導用パターンは1ドット以上の長さ(線状パターンの幅以上の長さ)のパターンとし、線状パターンに生じるバルジを予め定めた方向(片縁側)に誘導し易いように、線状パターンの片縁側でバルジ誘導用パターンの半分程度の領域が重なるように形成することが望ましい。
線状パターンの長さ、幅、形状などを考慮し、線状パターンに発生すると考えられるバルジを予め定めた方向に誘導し易い形状、方向、及び大きさにバルジ誘導用パターンを形成すればよい。
【0024】
−線状パターン形成工程−
線状パターン形成工程では、基材の表面に機能性インク等の組成物の液滴を線状に付与して、片縁側でバルジ誘導用パターン10A,10B,10Cと接触する線状パターン12A,12Bを形成する。
線状パターンの形成は、バルジ誘導用パターンを形成すると共に又はバルジ誘導用パターンを形成した後に行えばよいが、バルジを予め定めた方向に誘導し易くする観点から、バルジ誘導用パターンを形成した後に線状パターンを形成することが望ましい。
【0025】
ここで組成物について説明する。本実施形態で用いる組成物は、少なくとも、前記線状パターン及びバルジ誘導用パターンを形成する材料であるパターン形成材料、及び溶媒を含んで構成される。組成物中においてパターン形成材料が粒子として存在する場合には、さらに分散剤を含んで構成されていても良い。
【0026】
組成物に含まれるパターン形成材料は、基材の表面に形成すべき線状パターンに要求される機能を有する材料で構成されたものを採用する。例えば、基材上に導電性の線状パターンを形成する場合は、パターン形成材料としてAg、Au、Cuなどの金属粒子を含むパターン形成材料が用いられる。また、形成すべき線状パターンに要求される機能に応じて、SiOやAlなどの絶縁性セラミック材料、ポリイミドやポリイミド前駆体であるポリアミック酸などの樹脂材料、ペンタセンなどの半導体材料などを含むパターン形成材料を用いてもよい。
【0027】
パターン形成材料が粒子である場合、該粒子としては、通常はいわゆるナノサイズの粒子(ナノ粒子)が用いられる。具体的には、体積平均粒子径が50nm以下であることが望ましく、20nm以下のナノ粒子がより望ましい。なお体積平均粒子系は小さい方が好ましい。このようなナノ粒子を含む組成物(以下「機能性インク」と称する場合がある。)であれば、例えばインクジェット方式によって機能性インクの液滴を吐出して線状パターンを描画する際、インクジェットヘッド(ノズル)の詰まりが防がれるとともに、微細パターンが高精細に描画される。
【0028】
また、ナノ粒子であれば、比表面積が大きいため、基材の表面に滴下されたナノ粒子は凝集し易い。また、比表面積が大きいことで表面張力の影響が大きくなり、ナノ粒子は塊(バルク)に比べて融点が低くなる。ナノ粒子の融点は表面エネルギー相当分だけ低下するため、金属でも径を小さくすると融点は急激に低下する。そのため、金属粒子を含む組成物を用いて導電性パターンを形成する場合、線状パターンを構成する機能性インクには、金属粒子、溶媒、及び分散剤が含まれており、加熱によって、溶媒及び金属粒子を囲って保護している分散剤を除去するとともに、金属粒子同士を融合又は融着させて導電性パターンを形成するが、比較的低温でも金属粒子同士が融合して連続した導電性パターンを形成し易い。
【0029】
溶媒はパターン形成材料を溶解又は分散させるためのものであり、有機溶媒又は水が用いられる。
特に好ましい溶液は、3−フルオロベンゾトリフルオリド、ベンゾトリフルオリド、ジオキサン、トリフルオロメトキシベンゼン、4−フルオロベンゾトリフルオリド、3−フルオロピリジン、トルエン、2−フルオロトルエン、2−フルオロベンゾトリフルオリド、3−フルオロトルエン、ピリジン、4−フルオロトルエン、2,5−ジフルオロトルエン、1−クロロ−2,4−ジフルオロベンゼン、2−フルオロピリジン、3−クロロフルオロベンゼン、1−クロロ−2,5−ジフルオロベンゼン、4−クロロフルオロベンゼン、クロロベンゼン、2−クロロフルオロベンゼン、p−キシレン、m−キシレン、o−キシレン、2,6−ルチジン、2−フルオロ−m−キシレン、3−フルオロ−o−キシレン、2−クロロベンゾトリフルオリド、ジメチルホルムアミド、2−クロロ−6−フルオロトルエン、2−フルオロアニソール、アニソール、2,3−ジメチルピラジン、ブロモベンゼン、4−フルオロアニソール、3−フルオロアニソール、3−トリフルオロメチルアニソール、2−メチルアニソール、フェネトール、ベンゾジオキソール、4−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−フルオロ−3−メチルアニソール、1,2−ジクロロベンゼン、2−フルオロベンゾニトリル、4−フルオロベラトロール、2,6−ジメチルアニソール、アニリン、3−フルオロベンゾニトリル、2,5−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、ベンゾニトリル、3,5−ジメチルアニソール、N,N−ジメチルアニリン、1−フルオロ−3,5−ジメトキシベンゼン、フェニルアセテート、N−メチルアニリン、メチルベンゾエート、N−メチルピロリドン、モルホリン、1,2−ジヒドロナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、3,4−ジメチルアニソール、o−トルニトリル、ベラトロール、エチルベンゾエート、N,N−ジエチルアニリン、プロピルベンゾエート、1−メチルナフタレン、ブチルベンゾエート、2−メチルビフェニル、2−フェニルピリジン及び2,2’−ビトリルから選択される1以上の溶媒を、溶媒として含む。
インクジェット方式での吐出性を考慮した場合、表面張力は、好ましくは、20〜60dyn/cmの範囲、特に好ましくは、25〜50dyn/cmの範囲がよい。また、粘度の範囲は1〜25mPa・s、望ましくは約1〜15mPa・sがよい。この範囲の有機溶剤の例として、テトラデカン(粘度:2.0〜2.3(20℃)、表面張力25.7dyn/cm)が挙げられる。但し、有機溶剤と機能性材料を混合した場合、有機溶剤の物性だけでは表面張力や粘度は決まらない。
【0030】
パターン形成材料が前記金属粒子等のように溶媒に不溶な粒子である場合、分散剤を使用してもよい。分散剤は金属粒子等が室温で凝集しないように組成物中に含まれるものであり、粒子の表面が分散剤で保護されることにより溶媒中で独立して分散させた状態が保たれる。金属粒子の分散剤としては、例えば、金粒子の分散剤(保護膜)として、ドデカンチオール、1−オクタンチオール、トリフェニルホスフィン、リビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、銀粒子の分散剤(保護膜)として、ドデシルアミン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミンなどが挙げられ、銅粒子の分散剤(保護膜)として、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。また、パターン形成材料としてセラミック材料や樹脂材料が使用される場合にも、各種公知の分散剤が使用される。
【0031】
基材の表面に、パターン形成材料、及び溶媒を含む組成物を、例えば、インクジェットヘッドやディスペンサーによって付与して線状パターンを描画する。このとき、線状パターンは、バルジ誘導用パターンと片縁側で接触するように線状パターンを形成する。バルジ誘導用パターンを予め形成しておけば、付与された組成物は先に付与されたバルジ誘導用パターンに移動し、バルジ誘導用パターンが形成されていない側でのバルジの発生が抑制されることになる。
【0032】
例えば、図2に示したように、各線状パターン12A,12Bがバルジ誘導用パターン10A,10B,10Cと接触する部分では、組成物がバルジ誘導用パターン10A,10B,10Cに移動してバルジが各線の外側に誘導され、各線の内側(線状パターン同士が向き合っている側)では組成物が集まって線状パターンが膨らむことが抑制される。本実施形態によれば、線状パターン(第1のパターン)12A,12Bと、バルジ誘導用パターン(第2のパターン)10A,10B,10Cを含み、バルジ誘導用パターン10A,10B,10Cが、線状パターン12A,12Bの幅方向における片側の縁に接触し、線状パターン12A,12Bの長手方向におけるバルジ誘導用パターン10A,10B,10Cの長さが線状パターン12A,12Bの長さよりも短く、かつ、線状パターン12A,12Bの幅よりも長いパターン構造が形成される。そのため、バルジ誘導用パターン10A,10B,10Cを形成しない場合に比べ、2本の平行な線状パターン12A,12Bの間隔を狭く形成しても線状パターン12A,12Bの接触が抑制される。
【0033】
−加熱工程−
線状パターン形成工程の後、必要に応じて、基材の表面に形成されているパターンを加熱して残留溶媒を除去する。また分散剤を含む組成物の場合は分散剤を除去する。加熱温度と雰囲気は、組成物の種類に応じて選択すればよい。
金属粒子と炭化水素系の分散剤を含む機能性インクを用いて導電性パターンを形成する場合は、酸素を含む雰囲気中で加熱を行う。例えば、線状パターン形成工程後の基材を室温のステンレスパットに載せて、予め定めた温度に設定された送風炉内で数分〜数時間保持する。これにより分散剤は溶媒残渣とともに蒸散する。
【0034】
パターン中に含まれる分散剤を加熱によって除去することで、分散剤で被覆されていた金属粒子同士が接触し、加熱によって融合又は融着する。これにより基材の表面に連続した導電性のパターンが形成される。
【0035】
なお、加熱(酸化)後、必要に応じて還元を行う。例えば、銅粒子を含む組成物は、金粒子を含む組成物や銀粒子を含む組成物に比べ、低価格であり、マイグレーション耐性及び耐ガス腐食性において信頼性が高い。その反面、銅粒子は酸化の影響が大きいため、銅を含む組成物を用いて導電性パターンを形成する場合には酸化を防ぐ対策又は還元する対策が必要である。
【0036】
例えば、大気中で400℃の予備加熱で有機成分(残留溶媒、分散剤)を飛ばし、その後、300℃以上の水素還元雰囲気で酸化した銅を還元させる。水素の還元力を高めるため、例えばホットワイヤ法(真空チャンバ内に熱線を入れ、ガスを活性化させる方法)を用いて還元を行ってもよい。水素を含有する化合物の気体を加熱された触媒体(例えばタングステン)に接触させて接触分解反応により原子状水素が生じ、原子状水素により金属表面の酸化膜を還元することで銅の線状パターンが得られる。
【0037】
<パターン形成装置>
次に、本実施形態に係るパターン形成装置について説明する。
本実施形態に係るパターン形成装置は、基材の表面に液滴を付与してパターンを形成するパターン形成手段と、前記パターン形成手段により前記基材の表面に組成物の液滴を線状に付与して線状パターンを形成すると共に又は前記線状パターンを形成する前に、液滴を付与して、前記線状のパターンの幅方向における片側の縁で接触するバルジ誘導用パターンを形成するように前記パターン形成手段を制御する制御手段と、を有する。前記バルジ誘導用パターンは、前記機能性線状パターンの膨らむ部分を前記片縁側に誘導する作用を有する。
【0038】
図3は本実施形態に係るパターン形成装置の構成例を概略的に示している。本実施形態に係るパターン形成装置100は、パターン形成手段30と、パターン形成手段30を制御する制御手段40と、を有する。
【0039】
−パターン形成手段−
パターン形成手段30は、バルジ誘導用パターン10Aを形成するための組成物の液滴10を付与する第1液滴付与手段31と、線状パターン12Aを形成するための組成物の液滴12を付与する第2液滴付与手段32とを有する。
なお、本実施形態に係るパターン形成装置は、パターン形成手段30が液滴を付与する手段として組成物の液滴のみを付与する液滴付与手段を備えて、バルジ誘導用パターン10A,10B,10Cと線状パターン12A,12Bを順次形成する構成としてもよい。
【0040】
パターン形成手段30は、ディスペンサー等によって組成物を塗布してもよい。微細なパターンを高精度に描画する観点から、インクジェット方式によって組成物を付与する手段が望ましい。
【0041】
−制御手段−
制御手段40は、パターン形成手段30により基材16の表面に組成物の液滴12を線状に付与して線状パターン12Aを形成すると共に又は線状パターン12Aを形成する前に、線状パターン12Aの片縁側で接触し、線状パターン12Aの膨らむ部分を片縁側に誘導するためのバルジ誘導用パターン10Aを形成するようにパターン形成手段30を制御する。
【0042】
なお、制御手段40は、パターン形成手段30によりバルジ誘導用パターン10Aと線状パターン12Aを形成する前に、基材16の表面においてバルジ誘導用パターン10Aと線状パターン12Aを形成する予定のパターン形成領域外に組成物の液滴を付与してバルジの発生位置を確認するためのバルジ確認用パターンを形成し、バルジ確認用パターンに発生したバルジの位置に応じてバルジ誘導用パターン10Aと線状パターン12Aを形成するようにパターン形成手段30を制御してもよい。
【0043】
上記のように、本実施形態に係るパターン形成装置100を用いて、必要に応じて前述したバルジ確認用パターン形成工程を行った後、バルジ誘導用パターン形成工程及び線状パターン形成工程を行う。さらに、必要に応じて加熱工程を行う。
【0044】
このような工程を経て、線状パターンが形成される。例えば、有機半導体を用いて薄膜トランジスタ(TFT)のチャンネル層を形成する場合に本実施形態を適用すれば、チャネルの中央部におけるバルジの方向が任意に制御され、その結果、短チャネルなTFTデバイスの作製が実現される。
【実施例】
【0045】
以下、実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
<比較例1>
Agナノメタルインク(アルバックマテリアル株式会社製、「L−Ag1TeH」、平均粒子サイズ:3〜7nm、溶媒:テトラデカン)をインクジェット法によってガラス面上に付与して2本の平行な線状パターン(幅:約25μm、線間隔:約70μm)を形成した。
その結果、上記図4(A)に示すように、線状パターンにバルジが発生した。
【0047】
<実施例1>
Agナノメタルインク(アルバックマテリアル株式会社製、「L−Ag1TeH」、平均粒子サイズ:3〜7nm、溶媒:テトラデカン)をインクジェット法によってガラス面上に付与して、比較例1においてバルジが発生した位置で平行となるように2本のバルジ誘導用パターン(幅:約25μm、長さ:約150μm、線間隔:約100μm)を形成した。
次いで、上記Agナノメタルインクをインクジェット法によってガラス面上に付与して、外縁側でバルジ誘導用パターンと接するように2本の平行となる線状パターン(幅:約25μm、線間隔:約70μm)を形成した。
その結果、上記図4(B)に示すように、線状パターンの中央部分に発生したバルジは外縁側に誘導された。
【0048】
<実施例2>
Agナノメタルインク(アルバックマテリアル株式会社製、「L−Ag1TeH」、平均粒子サイズ:3〜7nm、溶媒:テトラデカン)をインクジェット法によってガラス面上に付与して、比較例1においてバルジが発生した位置及び端部において、2本の平行となる線状パターン(幅:約25μm、線間隔:約70μm)を形成した。
次いで、上記Agナノメタルインクをインクジェット法によってガラス面上に付与して、外縁側でバルジ誘導用パターンと接するように2本の平行となる線状パターン(幅:約25μm、線間隔:約30μm)を形成した。
その結果、上記図4(C)及び図5に示すように、線状パターンの中央部分及び端部に発生したバルジは外縁側に誘導された。
【0049】
以上、本実施形態及び実施例について説明したが、本実施形態は上記説明に限定されない。例えば、ポリイミドなどの絶縁性材料を含む機能性インクを用いれば絶縁性の線状パターンが形成される。
【符号の説明】
【0050】
10A、10B,10C バルジ誘導用パターン
10 液滴
12A、12B 線状パターン
12 液滴
16 基材
30 パターン形成手段
31 液滴付与手段
32 液滴付与手段
40 制御手段
100 パターン形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に組成物の液滴を線状に付与して線状のパターンを形成する線状パターン形成工程と、
前記線状のパターンを形成すると共に又は前記線状のパターンを形成する前に、液滴を付与して、前記線状のパターンの幅方向における片側の縁で接触するバルジ誘導用パターンを形成するバルジ誘導用パターン形成工程と、
を含むパターン形成方法。
【請求項2】
前記バルジ誘導用パターンを形成した後、前記線状のパターンを形成する請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記バルジ誘導用パターン形成工程及び前記線状のパターン形成工程を行う前に、前記基材の表面において前記バルジ誘導用パターンと前記線状パターンを形成する予定のパターン形成領域外に前記組成物の液滴を付与してバルジ確認用パターンを形成する工程をさらに含み、前記バルジ確認用パターンに発生したバルジの位置に応じて前記バルジ誘導用パターン形成工程及び前記線状パターン形成工程を行う請求項1又は請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
基材の表面に液滴を付与してパターンを形成するパターン形成手段と、
前記パターン形成手段により前記基材の表面に組成物の液滴を線状に付与して線状パターンを形成すると共に又は前記線状パターンを形成する前に、液滴を付与して、前記線状のパターンの幅方向における片側の縁で接触するバルジ誘導用パターンを形成するように前記パターン形成手段を制御する制御手段と、
を有するパターン形成装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記バルジ誘導用パターンを形成した後、該バルジ誘導用パターンと接触する前記線状パターンを形成するように前記パターン形成手段を制御する請求項4に記載のパターン形成装置。
【請求項6】
前記制御手段が、前記パターン形成手段により前記バルジ誘導用パターンと前記線状パターンを形成する前に、前記基材の表面において前記バルジ誘導用パターンと前記線状パターンを形成する予定のパターン形成領域外に前記インクの液滴を付与してバルジ確認用パターンを形成し、前記バルジ確認用パターンに発生したバルジの位置に応じて前記バルジ誘導用パターンと前記線状パターンを形成するように前記パターン形成手段を制御する手段である請求項4又は請求項5に記載のパターン形成装置。
【請求項7】
前記パターン形成手段が、前記バルジ誘導用パターンを形成するための前記液滴を付与する第1液滴付与手段と、前記線状パターンを形成するための前記組成物の液滴を付与する第2液滴付与手段とを有する請求項4〜請求項6のいずれか一項に記載のパターン形成装置。
【請求項8】
線状の第1のパターンと、
前記第1のパターンの幅方向における片側の縁に接触し、前記第1のパターンの長手方向における長さが前記第1のパターンの長さよりも短く、かつ前記第1のパターンの幅よりも長い第2のパターンと、
を含むパターン構造。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−5979(P2012−5979A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145512(P2010−145512)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】